#07 できることをやるしかない
医療を届ける~ジャパンハート 活動の現場から~

#07 できることをやるしかない

発展途上国、日本のへき地離島、大規模災害の被災地……。世の中には「医療の届かないところ」があります。NPOジャパンハートはそんなところに、無償で医療支援を行っています。ボランティアとして参加した医療従事者が、現地での活動内容などを報告します。

#07 できることをやるしかない

長期ボランティア医師(活動地:カンボジア)

約2年間の活動を終えました。充実していましたがあっという間の2年間だったと思います。振り返ると楽しいことも辛いこともありましたが、いろいろなことを含めた全部の経験が、自分が医師として働いていく上で大切にしたいことを強く心に残してくれたと思います。

その中でも一番心に残っていることは「どんな患者さんにも自分のできることに全力を尽くし、患者さんと一緒に病に向き合うこと」です。

カンボジアは医療保険制度が十分ではないため、お金がなくて治療を受けられない患者さんは多いです。そういう人たちが無償で医療が受けられる病院があると聞いてジャパンハートにやってきます。たっくさんの患者さんたちを診てきましたが、覚えているのは救うことができなかった患者さんたちです。

ジャパンハートでは治療できないが大きな病院であれば治療できるかもしれないのに、お金がないために大きな病院へ行けない患者さんや、病気が進行して手遅れな状態の患者さんをジャパンハートで診ることはよくありました。そういう時、私は薬がないことや自分では治療ができないことをよく嘆いていました。

どんな患者さんにも自分のできることに全力を尽くし、患者さんと一緒に病に向き合うこと

しかし、ジャパンハートのスタッフはどんな患者さんに対しても、一生懸命にケアします。ジャパンハートのスタッフは患者さんが辛い時も元気な時も、いつも味方となって頑張っています。
実際患者さんや家族からは、たとえ病気が治らなかったとしても感謝をされ、この病院で看てもらえてよかったと言う人ばかりでした。考えれば、一番悲しいのは患者やその家族であり、私が嘆いたって何も始まりません。できることをやるしかないのです。

一番悲しいのは患者やその家族であり、私が嘆いたって何も始まりません

そんな当たり前のことを何度もスタッフの姿勢から再認識し、今では自然と自分ができることに目を向けることができるようになったと思います。これから患者さんのことで何か困った時には、ジャパンハートでの経験が僕に大切なことを思い出させてくれるはずです。

一方で、自分の力不足を痛感した2年間でもありました。患者さんの中には、経験や技術のある医師ならば治療や手術ができるはずなのに、私にはその力がないために治療できず、大きな病院へ搬送した人もたくさんいました。そういう患者さんに出会った時には、悔しく申し訳ない気持ちになりました。私はこれから自分のできることを増やすために日本で修行したいと思っています。

最後になりますが、一緒に活動した素晴らしいスタッフの方々や、いつも手伝ってくれたカンボジア人スタッフ、また私を送り出してくれた家族に本当に感謝しています。いつかまた自分が成長し、途上国で医療支援ができる日を思い描きながら、また新しい場所で挑戦していきたいと思います。

ジャパンハートでの経験が僕に大切なことを思い出させてくれるはずです

(ジャパンハート 2021年3月22日掲載)


ジャパンハートは、ミャンマー、カンボジア、ラオスで長期ボランティアとして活動してくれる医師を募集しています。 オンライン相談会を実施中です。「医療の届かないところに医療を届ける」活動に関心のある方は、ちょっとのぞいてみてください。

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