メラノーマ(悪性黒色腫)の診断ポイントを皮膚がんの専門医が解説②~ダーモスコピーでも鑑別が難しい良性腫瘍、メラノーマと診断できる?~
希少疾患

メラノーマ(悪性黒色腫)の診断ポイントを皮膚がんの専門医が解説②~ダーモスコピーでも鑑別が難しい良性腫瘍、メラノーマと診断できる?~

悪性黒色腫とも呼ばれるメラノーマは、悪性度が高く転移しやすいがんとして知られており、早期発見・治療が重要です。近年ではダーモスコープを用いたダーモスコピー検査の普及により、メラノーマの診断精度は肉眼所見のみと比較して格段に向上していますが、なかにはメラノーマと鑑別が難しい良性腫瘍もあります。
そこで、今回の企画では2記事にわたり、国立がん研究センター東病院 皮膚悪性腫瘍指導専門医 陣内駿一先生に、皮膚科の先生方が知りたいメラノーマ診断のポイントについて、解説いただいています!
こちらの記事では、メラノーマと良性腫瘍との見分け方について説明いただきます。
■監修:陣内駿一 医師 国立がん研究センター東病院 皮膚腫瘍科 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 日本皮膚科学会認定皮膚悪性腫瘍指導専門医 国立がん研究センター東病院 皮膚悪性腫瘍指導専門医 陣内駿一先生
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メラノーマと良性腫瘍の鑑別技術の習得が重要


― メラノーマと間違いやすい皮膚疾患にはどのようなものがありますか?

陣内先生:メラノーマと間違いやすい典型的な良性腫瘍としては、まずは色素性母斑、そして脂漏性角化症、化膿性肉下種などが挙げられます。隆起している腫瘍は鑑別が難しいと感じられる先生が多く、診断精度が下がる印象です。特に脂漏性角化症とメラノーマの診断は難しいようですね。

メラノーマと脂漏性角化症の診断ポイントとは~実際の症例で解説~


― 陣内先生が今まで診断された症例をもとに、メラノーマと脂漏性角化症を鑑別するポイントを教えてください。

陣内先生:脂漏性角化症には1㎝を超える病変もあるため、大きさだけで診断することは難しいです。そのため他のパラメーターを見ながら総合的に判断する必要があります。

脂漏性角化症(良性) メラノーマ(悪性)
肉眼所見脂漏性角化症(良性) メラノーマ(悪性)
特徴中年女性、左腰部 色素斑 約25mm 色むらあり 中年男性、右頬色素斑 約20mm 色むらあり
ダーモスコピー脂漏性角化症(良性)ダーモスコピー メラノーマ(悪性)ダーモスコピー
特徴全体的に境界明瞭
Milia like cyst(※1)あり
全体的に不明瞭
Pseudonetwork(※2)あり
Blue-whitish vei(※3)あり

※1Milia like cyst:稗粒腫様嚢腫ともいい、様々な大きさの白~黄色調の円形袋状の構造物を指す。主に脂漏性角化症に見られるが、ときに乳頭腫状の真皮母斑や先天性母斑、極めてまれにメラノーマでも観察されることがある。
※2Pseudonetwork:偽ネットワークともいい、褐色の線で構成される網目構造のこと。
※3Blue-whitish veil:メラノーマの代表的な所見の一つで、すりガラス様の淡白色調を通じて青色調の色素斑で構成される不均一な無構造領域をさす。病変内の隆起した部分に認められる。

陣内先生:こちらの脂漏性角化症とメラノーマの症例について、一見どちらも臨床的には色むらのある色素斑のため、メラノーマを思わせますが、左の症例はダーモスコピーで脂漏性角化症の所見を認めたため診断することができました。

― その他に陣内先生が重要視されている診断のポイントはありますか?

陣内先生:臨床所見やダーモスコピー所見から病理像をイメージして診断しています。
また、病変全体に良性腫瘍の所見しかなければ、良性と診断してよいと思いますが、少しでも悪性所見を認めたときには、閾値を下げて診察することをお勧めします。メラノーマと診断できなくても、まずは良性か悪性かだけでも判断することが大切です。悪性であれば経過で拡大傾向や隆起を認めてきます。この病変の変化のスピードも診断の一助になります。また、メラノーマは一般的に60代以降の高齢者に多いですが、若年者にも起こりうる疾患です。若年者というだけで、メラノーマをすぐに除外しない方がよいです。いつもニュートラルな頭で診察する必要があります。

メラノーマの診断精度を上げるためには症例の経験数を増やすことが大切


― メラノーマの診断精度を上げるコツはありますか?

陣内先生:症例数をこなすことが大切だと感じます。私は国立がん研究センターに就職してから、数多くの症例を他の先生と一緒に共有していきました。また当院に保存されている皮膚腫瘍画像をすべて見返しました。学会にも足を運び講義を聞くことで学習し、経験を積むことができたと考えています。メラノーマに限らず、基底細胞癌や他の皮膚がんでも、基本的な所見は教科書を見て勉強すれば8割方は診断が可能です。もちろん、患者さんの中には、すぐに診断の難しい症状の方もいらっしゃいますけどね。
自施設での皮膚腫瘍の臨床画像やダーモスコピー画像を掘り起こし、自己学習していくことで診断のスキルが自然と向上してくると思います。

― メラノーマの診断について勉強する上でおすすめの勉強法や書籍はありますか?

陣内先生:個人的には『ダーモスコピーのすべて 改訂第2版(南江堂出版)』や『大原アトラス 1ダーモスコピー(学研メディカル秀潤社出版)』がおすすめです。このような書籍も参考に、典型的なダーモスコピー画像をきちんと頭に入れておくとよいでしょう。もちろん、ダーモスコピー検査ですべて解決されるわけではありません。前回の記事でもお話したように、肉眼所見で見たときの違和感にも気づくことが大切です。
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~ダーモスコピーでも見逃しやすいホクロ、メラノーマと診断できる?~
― 2記事にわたり、メラノーマの診断のポイントについて解説いただきありがとうございました。皮膚悪性腫瘍指導専門医が、豊富な診療経験と高度な技術に基づき、メラノーマを診断されていることがよくわかりました。

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