コロナ時代のFL治療、オビヌツズマブを恐れる必要があるのか
血液内科 Journal Check

コロナ時代のFL治療、オビヌツズマブを恐れる必要があるのか

公開日:2024年10月2日

Choy J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 27. [Epub ahead of print]
 2020年のCOVID-19パンデミック以来、2023年までに世界の感染者は7億7,200万人以上、死者数は約700万人にものぼるといわれている。血液悪性腫瘍患者におけるCOVID-19のアウトカムを評価した研究、大規模メタ解析などが、数多く実施された。中でも、イタリアで行われたURBAN研究は、未治療の進行期濾胞性リンパ腫(FL)患者におけるオビヌツズマブベースの化学療法および維持療法の有効性および安全性を評価した多施設共同観察研究であり、対象患者の組織学的診断が均一であり、治療も比較的均一な研究である。オーストラリア・Sir Charles Gairdner HospitalのJoleen Choy氏らは、URBAN研究でオビヌツズマブベースの化学療法および維持療法を行った未治療の進行期FL患者299例におけるCOVID-19アウトカムを評価するため、URBAN研究サブ解析を実施し、その結果を報告した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年9月27日号の報告。
 本研究は、2019年9月より登録を開始し、2022年1月までのデータを分析したものである。
主な結果は以下のとおり。
・URBAN研究では、主治医の治療選択により、第一選択治療として、オビヌツズマブとの併用によるベンダムスチン(142例、47.5%)、CHOP療法(139例、46.5%)、CVP療法(18例、6%) が行われた。 ・これまでの研究とは対照的に、オビヌツズマブ+ベンダムスチンによる治療を行った患者とCHOP療法またはCVP療法による導入療法を行った患者では、COVID-19、入院、死亡の発生率に統計的に有意な差は認められなかった。 ・同様に、オビヌツズマブ維持療法を開始した患者(266例、88.9%)と開始しなかった患者との間で、COVID-19の発生率に統計的に有意な差は認められなかった。 ・データカットオフ時点で維持療法を完了した患者は少数(10.4%)であった。 ・オビヌツズマブ維持療法を完了した患者と行わなかった患者では、COVID-19による入院率(37.5% vs. 50%、p=0.888)および死亡率(0% vs. 25%、p=0.394)に差は認められなかった。 ・多数の患者(65%)は、維持療法完了前にレジメン変更が行われており、パンデミックに影響された可能性が示唆された。 ・レジメン変更により、ワクチン接種の有効性およびCOVID-19からの回復がより促進された可能性があるものの、詳細な情報は入手できず、不明なままである。 ・本サブ解析は、治療の有効性を評価するために設計されたものではないが、導入療法終了時の有効性は64.6%(193例)、全奏効(OR)は90.7%であり、パンデミック前のランダム化試験(GALLIUM試験)においてオビヌツズマブで治療を行なった患者と同等であった。 ・無増悪生存期間(PFS)またはPOD24イベントに関するデータは入手できず、治療の遅延または変更が治療結果に及ぼす影響は不明である。 ・COVID-19の全体的な発生率は16.1%(48例)であり、より感染力の高いオミクロン変異体が優勢だったパンデミック後期(2021年11月以降)の予測値よりも低かった。 ・ワクチン接種が利用可能になる前の第1波の登録患者数が少なかったため、この研究ではCOVID-19の有害事象の軽減に対するワクチン接種の有効性が過小評価されている可能性が示唆された。
 結果を踏まえ、著者らは「ワクチン接種を行った未治療の進行期FL患者に対するオビヌツズマブによる治療は、COVID-19の臨床アウトカムへの影響が少ないと考えられる」としている。


(鷹野 敦夫)

原著論文はこちら Choy J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 27. [Epub ahead of print]
https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39331693

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