「血液内科 Journal Check」の記事一覧

80歳以上の日本人DLBCLに対する減量Pola-R-CHP療法、実臨床での有用性は
80歳以上の日本人DLBCLに対する減量Pola-R-CHP療法、実臨床での有用性は
公開日:2025年2月14日 Sato S, et al. Blood Res. 2025; 60: 10.  80歳以上で未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者に対するポラツズマブ ベドチンとR-CHP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン)の併用療法(Pola-R-CHP療法)の有効性および安全性は、ほとんど調査されていない。神奈川県・湘南鎌倉総合病院の佐藤 淑氏らは、高齢者コホートであるPOLARIX試験の結果を拡張し、リアルワールドにおける80歳以上の日本人DLBCL患者における減量Pola-R-CHP療法の有効性および安全性を評価するため、レトロスペクティブに分析を行った。Blood Research誌2025年2月5日号の報告。  対象は、2022年9月〜2024年2月に当院でPola-R-CHP療法を行った80歳以上のDLBCL患者38例。毒性や病勢進行により早期に治療を中止した患者も含め、1コース以上の化学療法を行った。すべての患者の相対用量強度(RDI)をモニタリングした。Pola-R-CHP療法の用量調整は、主治医の裁量で実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は84.3歳(範囲:80〜95)、PS2以上の患者は8例(21%)。 ・MYCおよびBCL2再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫患者1例も対象に含めた。 ・ステージIII〜IVが30例(79%)、IPIの高リスク群16例(42%)、CNS-IPIの高リスク群4例(10%)。 ・治療コース中央値は5コース(範囲:1〜6)、全6コースを完了した患者は24例(63%)。 ・フォローアップ期間中央値は11.6ヵ月(範囲:1〜24)。 ・12ヵ月後の全生存割合(OS)は86.2%(95%CI:70.0〜94.0)、無増悪生存割合(PFS)は78.5%(95%CI:59.2〜89.5)。 ・発熱性好中球減少症の発生率は、比較的高かったものの(32%)、平均RDIが70%未満の患者では、治療強度が低下してもリスク増加が認められた。 ・末梢神経障害のためにポラツズマブ ベドチンの減量が必要であった患者はいなかった。  著者らは「新たにDLBCLと診断された80歳以上の高齢患者に対し、減量Pola-R-CHP療法は、実行可能な効果的な治療選択肢である可能性が示された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Sato S, et al. Blood Res. 2025; 60: 10.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39907880 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
PCNSLに対するイブルチニブ併用HD-MTX+テモゾロミド療法〜第II相試験
PCNSLに対するイブルチニブ併用HD-MTX+テモゾロミド療法〜第II相試験
公開日:2025年2月13日 Gao Y, et al. Blood Cancer Discov. 2025 Feb 6. [Epub ahead of print]  B細胞受容体シグナル伝達の恒常的活性化は、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)で頻繁に発生する。そのため、B細胞受容体シグナル伝達経路を阻害するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬は、PCNSLの有望な治療薬として期待されている。中国・Sun Yat-sen University Cancer CenterのYan Gao氏らは、新たに診断されたPCNSLにおける大量メトトレキサート(HD-MTX)+テモゾロミド療法にBTK阻害薬イブルチニブを併用した際の有効性および安全性を評価するため、多施設共同プロスペクティブコホート第II相試験を実施した。Blood Cancer Discovery誌オンライン版2025年2月6日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・登録患者数35例のうち、33例を解析対象に含めた。 ・導入療法における最良全奏効率(best ORR)は93.9%、完全奏効(CR)率は72.7%であった。 ・2年無増悪生存期間(PFS)は57.6%(95%CI:49.0〜66.2)、全生存期間は84.8%(95%CI:78.6〜91.0)。 ・グレードIII以上の有害事象発生率は27.3%(33例中10例)。 ・ベースライン時の腫瘍および脳脊髄液(CFS)サンプルにおけるターゲットリシーケンスで検査した475個の遺伝子の中で、PIM1、MYD88、BTG2、CD79Bの変異が最も高頻度に認められた。 ・CSFおよびまたは血漿中のctDNA消失は一貫しており、画像診断でもCRが確認された。 ・2コース以降にCSF中のctDNA消失が確認された患者において、PFSの有意な延長が認められた(p=0.044)。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Gao Y, et al. Blood Cancer Discov. 2025 Feb 6. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39913173 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
モスネツズマブはリツキシマブを超えられるか、初発DLBCLに対するモスネツズマブ+Pola-CHP療法/Blood Adv
モスネツズマブはリツキシマブを超えられるか、初発DLBCLに対するモスネツズマブ+Pola-CHP療法/Blood Adv
公開日:2025年2月12日 Westin JR, et al. Blood Adv. 2025 Feb 5. [Epub ahead of print]  抗CD20/CD3二重特異性抗体であるモスネツズマブは、本邦において再発・難治性濾胞性リンパ腫(FL)で承認を取得した。本剤は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する新たな治療選択肢の1つとしても期待され、併用療法による臨床試験も進行している。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJason R. Westin氏らは、DLBCLに対する第1選択治療の1つであるポラツズマブ ベドチン併用R-CHP(Pola-R-CHP)療法とリツキシマブをモスネツズマブに変更したモスネツズマブ+Pola-CHP療法の有効性および安全性を比較するため、第II相試験を実施し、最終結果を報告した。Blood Advances誌オンライン版2025年2月5日号の報告。  対象は、未治療のDLBC患者62例。モスネツズマブ+Pola-CHP群40例、Pola-R-CHP群22例にランダムに割り付けた。21日間6コースでday1に投与を行った。モスネツズマブは、1コース目にステップアップドーズで30mgまで増量した。主要エンドポイントは、独立審査委員会により評価したPET-CT検査による完全奏効(CR)率とした。 主な結果は以下のとおり。 ・CR率は、両群間で同等であった(モスネツズマブ+Pola-CHP群:72.5%、Pola-R-CHP群:77.3%)。 ・治験責任者により評価した24ヵ月無増悪生存期間(PFS)は、モスネツズマブ+Pola-CHP群で70.8%(95%CI:55.6〜86.1)、Pola-R-CHP群で81.8%(95%CI:65.7〜97.9)であった。 ・モスネツズマブ+Pola-CHP群において最も多かった有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS:68.4%)であり、その多くはグレードI(52.6%)、1コース目に限定的に認められた。 ・Pola-R-CHP群で最も多かった有害事象は、好中球減少症/好中球数減少(54.4%)。 ・好中球減少症/好中球数減少は、両群で最も高頻度に認められたグレードIII以上の有害事象であった(モスネツズマブ+Pola-CHP群:36.8%、Pola-R-CHP群:22.7%)。 ・グレードIII以上の有害事象、重篤な有害事象、治療中止に至る有害事象の発生率は、モスネツズマブ+Pola-CHP群の方が、Pola-R-CHP群よりも高かった。  【グレードIII以上の有害事象】モスネツズマブ+Pola-CHP群:86.8%、Pola-R-CHP群:59.1%  【重篤な有害事象】モスネツズマブ+Pola-CHP群:63.2%、Pola-R-CHP群:13.6%  【治療中止に至る有害事象】モスネツズマブ+Pola-CHP群:13.2%、Pola-R-CHP群:0% ・薬理学的変化は、モスネツズマブの作用機序とPola-CHP療法併用を支持するものであった。  著者らは「初発DLBCLに対する第1選択治療として、モスネツズマブ+Pola-CHP療法は有用であったが、この小規模な研究では、Pola-R-CHP療法を上回る臨床的ベネフィットは示されなかった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Westin JR, et al. Blood Adv. 2025 Feb 5. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39908481 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
新たな治療戦略となるか!JAK2経路の選択的阻害でCAR-T細胞療法を強化可能
新たな治療戦略となるか!JAK2経路の選択的阻害でCAR-T細胞療法を強化可能
公開日:2025年2月11日 Mitsuno K, et al. Cancer Immunol Immunother. 2025; 74: 79.  分子標的薬とCAR-T細胞療法の組み合わせは、免疫療法の抗腫瘍効果を高めるための新たな治療戦略である。CD19を標的としたCAR-T細胞療法とヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬は、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)などの特定のB細胞性白血病に対し、それぞれ有効性を示すが、ルキソリチニブなどのJAK1/2阻害薬の併用は、JAK1依存性T細胞活性化経路を阻害することでCAR-T細胞の作用を減弱させるとされている。京都府立医科大学の三野 耕平氏らは、選択的II型JAK2阻害薬であるCHZ868とCD19標的CAR-T細胞療法との併用を検討した。その結果、JAK2変異状態とは無関係に、B細胞腫瘍モデル全体で、抗白血病活性が相乗的に増強されることを報告した。Cancer Immunology, Immunotherapy誌2025年2月1日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・CHZ868によるJAK2阻害は、CAR-T細胞の疲弊化を誘発することなく、抗腫瘍効果が維持された。 ・JAK2阻害耐性白血病細胞を移植したマウスモデルにおいて、生存率の有意な延長が認められた(生存期間中央値:CD19 CAR-T+CHZ868群:32日、CD19 CAR-T+対照群:26日、p=0.0303)。 ・トランスクリプトーム解析では、CH868がCAR-T細胞の分化を阻害しながら、CAR-T細胞の機能維持に重要な要素である増殖能を維持することが示唆された。  著者らは「JAK2経路の選択的阻害は、CAR-T細胞療法を強化し、耐性B細胞性白血病患者に実行可能な治療戦略となりうる可能性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mitsuno K, et al. Cancer Immunol Immunother. 2025; 74: 79.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39891728 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CLLに対する2つのBTK阻害薬、ザヌブルチニブはイブルチニブより優れるのか
CLLに対する2つのBTK阻害薬、ザヌブルチニブはイブルチニブより優れるのか
公開日:2025年2月10日 Fan F, et al. Hematol Oncol. 2025; 43: e70041.  イブルチニブの登場により、慢性リンパ性白血病(CLL)治療は一変した。しかし、有害事象に悩まされることも少なくない。第2世代のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるザヌブルチニブは、安全性の向上に期待される薬剤である。中国・青島大学のFuli Fan氏らは、CLLに対する2つのBTK阻害薬、ザヌブルチニブとイブルチニブの安全性プロファイルの比較を行った。Hematological Oncology誌2025年3月号の報告。  本プロスペクティブコホート研究では、CLL患者200例が登録され、ザヌブルチニブ群(100例)、イブルチニブ群(100例)に割り付けられた。年齢、性別、BMI、ECOGのPS、遺伝学的要因などのベースライン特性を比較した。有害事象および重篤な有害事象のフォローアップおよび分類には、有害事象共通⽤語規準(CTCAE)を用いた。重篤な有害事象およびグレードIII以上の有害事象の予測因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰モデルを実施した。調整オッズ比(aOR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。 ・平均年齢は、ザヌブルチニブ群49.16歳、イブルチニブ群49.65歳(p=0.285)。 ・ザヌブルチニブ群では、ECOGのPS不良な患者の割合が高かった(71% vs.57%、p=0.039)。 ・ザヌブルチニブ群は、重症有害事象(4% vs.9%、p=0.152)および重篤な有害事象(8% vs.17%、p=0.054)の割合が低かった。 ・好中球減少は、イブルチニブ群のみでみられた(3%)。 ・サブグループ解析では、非難治性患者においてザヌブルチニブ群の合併症発生率が高かった(11.40% vs.5.26、p=0.065)。 ・ステージIIIのCLLは、グレードIII以上の有害事象(aOR:0.007、95%CI:0.0003〜0.1829)および重篤な有害事象(aOR:0.015、95%CI:0.0010〜0.1770)の保護因子であった。 ・ECOSのPS状態(2 vs.3)により、重篤な有害事象リスクの低下がみられ、17p欠損が重篤な有害事象の主なリスク因子であることが示唆された(aOR:6.40、95%CI:1.33〜30.79)。  著者らは「ザヌブルチニブは、イブルチニブよりも安全性プロファイルが良好であり、重症有害事象が少なかったことから、CLL患者、とくにBTK阻害薬による合併症リスクが高い患者では、ザヌブルチニブの方が安全な選択肢であると考えられる。しかし、これらの違いは、ベースライン時の臨床特性のばらつきに起因している可能性があるため、解釈には注意が必要である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fan F, et al. Hematol Oncol. 2025; 43: e70041.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39887746 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
Ph陽性ALLにおける同種HSCT後のTKI維持療法、p190とp210の予後の違いは?
Ph陽性ALLにおける同種HSCT後のTKI維持療法、p190とp210の予後の違いは?
公開日:2025年2月7日 Zhen J, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]  中国・中山大学附属第一医院のJiayi Zhen氏らは、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)における同種造血幹細胞移植(HSCT)後のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)維持療法が、BCR::ABL融合遺伝子のタイプであるp190とp210患者の再発率および予後に及ぼす影響を分析するため、多施設共同研究を実施した。Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemia誌オンライン版2025年1月7日号の報告。  HSCTを行ったPh陽性ALL患者58例を対象に、臨床データをレトロスペクティブに分析した。すべての対象患者に対し、移植後TKI維持療法を行った。p190群(43例)およびp210群(15例)の臨床的特徴および予後を比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・臨床的特徴は、両群間で有意な差が認められなかった。 ・多変量解析により、T315I変異が移植後の無再発生存期間(RFS)の独立したリスク因子であることが明らかとなった(HR:5.021、95%CI:1.129〜22.300、p=0.034)。 ・さらに、1年超のTKI維持療法は、RFSの保護因子であることが確認された(HR:0.315、95%CI:0.115〜0.860、p=0.025)。 ・RFS中央値は、p190群で89.4ヵ月、p210群で59.1ヵ月であり、有意な差が認められた(p=0.031)。 ・1年超のTKI維持療法を行った患者におけるサブグループ解析では、RFS中央値は、p190群で95.3ヵ月、p210群で90.5ヵ月であり、有意な差は認められなかった(p=0.080)。  著者らは「Ph陽性ALL患者に対するHSCT後のTKI維持療法における予後は、p190群と比較し、p210群で不良であった。しかし、寛解導入療法後の早期HSCTおよび移植後の長期TKI維持療法により、p210群の予後が改善され、p190群と同程度になる傾向が示された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Zhen J, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39875277 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
LBCLに対するCAR-T細胞療法、2ndと3rdラインで治療結果はどのくらい違うのか?
LBCLに対するCAR-T細胞療法、2ndと3rdラインで治療結果はどのくらい違うのか?
公開日:2025年2月6日 Corona M, et al. Bone Marrow Transplant. 2025 Feb 1. [Epub ahead of print]  CAR-T細胞療法は、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の第2選択治療に利用可能となった。米国・ニューヨークメモリアルスローンケタリングがんセンターのMagdalena Corona氏らは、CAR-T細胞療法を第2選択で実施した患者と第3選択以降で実施した患者における再発リスクおよび進行パターンの比較を行った。Bone Marrow Transplantation誌オンライン版2025年2月1日号の報告。  対象は、アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)またはリソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)で治療を行った再発・難治性LBCL患者354例(axi-cel:71%、liso-cel:29%)。治療ラインの内訳は、CAR-T細胞療法を第2選択で実施した患者(早期治療群)80例(23%)、第3選択以降で実施した患者(後期治療群)274例(77%)。 主な結果は以下のとおり。 ・1年全生存率(OS)は、早期治療群の方が良好であった(82%[95%CI:72〜93] vs.71%[95%CI:66〜77]、p=0.048)。 ・多変量Cox回帰モデルおよび傾向スコアマッチングでは、生存率に対するメリットは持続しなかった。 ・再発の1年累積発生率は同程度であり、1年無増悪生存期間(PFS)も同様であった。  【再発の1年累積発生率】37%(95%CI:24〜50) vs.43%(95%CI:37〜49)、p=0.200  【1年PFS】62%(95%CI:50〜76) vs.50%(95%CI:44〜57)、p=0.140 ・早期治療群では、グレードII以上のサイトカイン放出症候群(CRS)の発生率が低く、重度の好中球減少の累積発生率も低下が認められるなど、毒性プロファイルは良好であった。  【グレードII以上のCRS発生率】26%vs.39%、p=0.031  【重度の好中球減少の累積発生率】41%(95%CI:30〜52) vs.55%(95%CI:49〜60)、p=0.027  著者らは「CAR-T細胞療法は、治療ラインとは無関係に、良好なアウトカムを示すことが確認された。病勢制御の同等性が認められたことから、第1選択治療で再発したLBCLにおいて、CAR-T耐性メカニズムが持続している可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Corona M, et al. Bone Marrow Transplant. 2025 Feb 1. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39893244 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
新規PCNSLに対するHD-MTX療法、最適なレジメンは〜メタ解析
新規PCNSLに対するHD-MTX療法、最適なレジメンは〜メタ解析
公開日:2025年2月5日 Shi H, et al. Medicine (Baltimore). 2025; 104: e41363.  中国・首都医科大学のHan Shi氏らは、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)の治療における大量メトトレキサート(HD-MTX)療法の最適なレジメンを包括的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Medicine誌2025年1月31日号の報告。  8つのデータベース(PubMed、EMBASE、Cochrane Library、WOS、Epistemonikos、CNKI、WAN-FANG Database、CBM)よりPCNSLに関する臨床試験をシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。 ・37件の研究(ランダム化比較試験:6件、単群臨床試験:31件)をメタ解析に含めた。 ・プールされた全奏効率(ORR)は、低用量MTX(3g/m2未満)で78%(95%CI:0.61〜0.91、I2=88.05%、6研究)、中用量MTX(3〜5g/m2)で80%(95%CI:0.75〜0.85、I2=81.40%、26研究)、高用量MTX(5g/m2超)で80%(95%CI:0.71〜0.88、I2=75.53%、10研究)であった。 ・プールされた2年全生存率(OS)は、低用量MTXで52%(95%CI:0.40〜0.64、I2=77.44%)、中用量MTXで60%(95%CI:0.55〜0.65、I2=74.54%)、高用量MTXで71%(95%CI:0.62〜0.79、I2=71.13%)であった。 ・MTX療法が5サイクル未満の患者では、ORRが79%(95%CI:0.72〜0.84、I2=81.46%、21研究)、完全奏効率(CR)が41%(95%CI:0.35〜0.48、I2=78.62%、21研究)、2年OSが59%(95%CI:0.52〜0.66、I2=80.72%)であり、5サイクル以上の患者では、ORRが81%(95%CI:0.75〜0.87、I2=81.54%、21研究)、CRが54%(95%CI:0.48〜0.59、I2=68.20%、20研究)、2年OSが64%(95%CI:0.58〜0.69、I2=73.12%)。 ・プールされたORRは、MTX単剤で71%(95%CI:0.44〜0.92、I2=90.21%、5研究)、2剤併用で70%(95%CI:0.60〜0.79、I2=61.60%、6研究)、3剤併用で81%(95%CI:0.72〜0.88、I2=82.09%、9研究)、4剤併用で85%(95%CI:0.80〜0.90、I2=70.29%、14研究)、多剤併用で80%(95%CI:0.72〜0.87、I2=69.44%、8研究)。 ・プールされた2年OSは、MTX単剤で59%(95%CI:0.45〜0.73、I2=63.00%)、2剤併用で52%(95%CI:0.42〜0.63、I2=62.14%、5研究)、3剤併用で66%(95%CI:0.58〜0.74、I2=74.39%、9研究)、4剤併用で63%(95%CI:0.54〜0.72、I2=84.99%)、多剤併用で60%(95%CI:0.52〜0.68、I2=67.12%)。 ・MTXベースの化学療法にシタラビンを併用することで、CRの改善が認められたが、OSには有意な影響が認められなかった。 ・MTX治療レジメンにリツキシマブを併用すると、治療奏効率やOSに影響を及ぼすことなく、無増悪生存期間(PFS)の改善が認められた。  著者らは「MTX治療戦略は、PCNSL患者の予後や治療効果と関連しており、良好な奏効を得るための用量は、HD-MTX 3.5g/m2で十分であることが示唆された。また、サイクル数の増加は、治療効果や予後を改善し、MTXベースの3剤併用療法で治療された患者のORRおよびCRが良好であることも確認された。さらに、HD-MTX療法の忍容性は、一般的に良好であったが、急性毒性の可能性を考慮し、シタラビンを含む多剤併用療法では、とくに注意が必要である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shi H, et al. Medicine (Baltimore). 2025; 104: e41363.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39889167 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
Flu/Bu4を用いたHSCTは高齢者でも推奨されるか〜国内大規模データベース分析
Flu/Bu4を用いたHSCTは高齢者でも推奨されるか〜国内大規模データベース分析
公開日:2025年2月4日 Shinohara A, et al. Eur J Haematol. 2025 Jan 20. [Epub ahead of print]  高齢者の同種造血幹細胞移植(HSCT)におけるフルダラビンと骨髄破壊的前処置(MAC)量のブスルファンによるFlu/Bu4レジメンは、いまだ十分に検討がなされていない。東京女子医科大学の篠原 明仁氏らは、日本の大規模データベースを用いて、レトロスペクティブに分析を行った。European Journal of Haematology誌オンライン版2025年1月20日号の報告。  対象は、造血器悪性腫瘍に対しFlu/Bu4を用いた初回HSCTを行った成人患者(15歳以上)。対象患者を若年群(60歳未満:1,295例)および高齢群(60歳以上:993例)に分類し、比較を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・高齢群のHSCT後の3年全生存率(OS)は、若年群よりも有意に不良であった(39.9% vs.48.5%、p<0.01)。 ・高齢群の3年間の非再発死亡率(NRM)は、若年群よりも有意に高かった(30.9% vs.23.0%、p<0.01)。 ・3年間の再発累計発生率は、両群間で同程度であった。 ・多変量解析では、60歳以上はOS不良およびNRMの高さと有意に関連していることが示唆された。 ・高齢群のサブグループ解析では、Flu/Bu4に化学療法薬を追加することは、OS不良およびNRMの高さと有意な関連が認められた。 ・全身照射は、NRMの高さおよび類洞閉塞症候群1年発生率との有意な関連が認められたが、OSとの関連は認められなかった。  以上の結果を踏まえ、著者らは「高齢者に対するFlu/Bu4の使用は、慎重に行う必要がある」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shinohara A, et al. Eur J Haematol. 2025 Jan 20. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39834012 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
初発ダブルエクスプレッサーリンパ腫にR-CHOP+ザヌブルチニブが有効〜第II相試験
初発ダブルエクスプレッサーリンパ腫にR-CHOP+ザヌブルチニブが有効〜第II相試験
公開日:2025年2月3日 Yin X, et al. Cancer. 2025; 131: e35697.  ダブルエクスプレッサーリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の他のサブタイプよりも予後不良である。中国・Shandong Cancer Hospital and InstituteのXia Yin氏らは、ステージIII以上のダブルエクスプレッサーリンパ腫に対してR-CHOP療法にザヌブルチニブを併用した際の有効性および安全性を評価するため、多施設プロスペクティブ単群第II相臨床試験を実施した。Cancer誌2025年1月1日号の報告。  対象は、2020年11月〜2022年7月に新たに診断されたダブルエクスプレッサーリンパ腫患者48例。対象患者には、6ヵ月間のザヌブルチニブ(160mg)1日2回およびR-CHOP療法6〜8サイクルを行った。R-CHOP+ザヌブルチニブ併用療法の有効性・安全性の評価および有効性と関連する因子の予備的調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・客観的奏効率(ORR)は89.6%、完全奏効率(CRR)は83.3%であった。 ・フォローアップ期間中央値は29.3ヵ月。 ・無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の中央値は未達。 ・2年PFSは81.25%、2年OSは93.75%であった。 ・グレードIII以上の有害事象は48例中23例(47.9%)で報告された。 ・次世代シーケンシング(NGS)を実施した33例の結果では、最も一般的な遺伝子変異としてTP53、MYD88、PIM1が特定された。 ・多変量解析では、BCL-6遺伝子の再構成は、PFS(ハザード比[HR]:0.247、95%信頼区間[CI]:0.068〜0.900、p=0.034)およびOS(HR:0.057、95%CI:0.006〜0.591、p=0.016)の予後不良因子であることが明らかとなった。 ・また、リンパ節外病変数もOSに有意な影響を及ぼすことが示唆された(HR:15.12、95%CI:1.070〜213.65、p=0.044)。  著者らは「ダブルエクスプレッサーリンパ腫に対するR-CHOP+ザヌブルチニブ併用療法は、効果的な治療選択肢であり、ザヌブルチニブの毒性は許容可能であった」と報告している。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Yin X, et al. Cancer. 2025; 131: e35697.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39748728 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
抗CD38モノクローナル抗体の登場で日本における多発性骨髄腫はどう変わったか
抗CD38モノクローナル抗体の登場で日本における多発性骨髄腫はどう変わったか
公開日:2025年2月3日 Iida S, et al. PLoS One. 2025; 20: e0315932.  日本における多発性骨髄腫(MM)の治療は、プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、そしてダラツムマブなどの抗CD38モノクローナル抗体の承認により大きく変化した。名古屋市立大学の飯田 真介氏らは、大規模データベースを用いて、日本におけるMM患者の患者特性、治療パターン、傾向を評価した。PloS One誌2025年1月23日号の報告。  本研究では、メディカル・データ・ビジョンの大規模診療データベースを用いた。対象は、2008年4月〜2023年6月にMM診断および疾患コードの記録が2つ以上あり、MM治療の記録が1件以上あった18歳以上の患者2万1,066例。2020年以降に第1選択治療を開始した患者は1+Lコホート、2018年以降に第2選択治療を開始した患者は2+Lコホートに割り当てられた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者2万1,066例のうち、1+Lコホートには6,337例、2+Lコホートには5,964例が含まれた。 ・全体の年齢中央値は74歳、両コホート間で性別の違いは認められなかった(男性の割合:52.4% vs.51.3%)。 ・1+Lコホートでは、ほとんどの患者が移植を行なっておらず(90.8%)、レナリドミドベースの治療を行なっていた患者の割合は51.0%であった。主な治療は、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd療法:15.0%)、レナリドミド+デキサメタゾン(Ld療法:14.0%)であった。 ・非移植患者における第1選択でのDLd療法は、6.0%(2020年1〜6月)から28.0(2023年1〜6月)へ増加していた。 ・2+Lコホートでは、第2選択治療でのレナリドミドベースの治療は、65.0%(2018年1〜6月)から37.0%(2023年1〜6月)に減少しており、ダラツムマブベースの治療が14.0%から39.0%へ増加していた。レナリドミドベースの再治療は44.1%、ダラツムマブベースの再治療は35.2%、イサツキシマブベースの再治療は5.6%で行われていた。  著者らは「第1選択治療ではレナリドミドベースおよびDLd療法の選択率が高く、第2選択においてもレナリドミドおよび抗CD38モノクローナル抗体による再治療率が高いことから、抗CD38モノクローナル抗体の治療歴の有無に関わらず、レナリドミドベースの治療後に再発したMM患者に対する新たな治療の必要性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Iida S, et al. PLoS One. 2025; 20: e0315932.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39847579 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
二重特異性抗体エルラナタマブと重症COVID-19リスクとの関連、そのメカニズムは?
二重特異性抗体エルラナタマブと重症COVID-19リスクとの関連、そのメカニズムは?
公開日:2025年1月31日 Li Z, et al. J Transl Med. 2025; 23: 117.  免疫療法は、多発性骨髄腫(MM)患者において重症COVID-19リスク因子である。このメカニズムを理解することは、患者の臨床アウトカム改善にとって重要である。中国・Peking Union Medical College HospitalのZiping Li氏らは、二重特異性抗体、抗CD38モノクローナル抗体、プロテアソーム阻害薬ベースのレジメンで治療を行ったMM患者におけるタンパク質発現を調査した。Journal of Translational Medicine誌2025年1月26日号の報告。  対象は、二重特異性抗体(9例)、抗CD38モノクローナル抗体(10例)、プロテアソーム阻害薬ベースレジメン(10例)で治療を行ったMM患者29例。対象患者における440個のタンパク質発現を調査した。Differentially expressed proteins(DEP)は、バイオインフォマティクス解析を用いて特定および分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・二重特異性抗体群では、重症COVID-19の発生率上昇と関連が認められた。 ・特定されたDEPは、二重特異性抗体群と抗CD38モノクローナル抗体群との間で21、二重特異性抗体群とプロテアソーム阻害薬群との間で29、抗CD38モノクローナル抗体群とプロテアソーム阻害薬群との間で25であった。 ・主成分分析およびクラスタリングにより、二重特異性抗体群とプロテアソーム阻害薬群との間でタンパク質発現プロファイルが異なることが示唆された。 ・遺伝子オントロジー(GO)解析では、二重特異性抗体群とプロテアソーム阻害薬群との間のDEPは、サイトカイン活性および白血球遊走と関連していることが明らかとなった。 ・京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)分析では、これらのDEPは、サイトカインと受容体の相互作用およびJAK-STATシグナル伝達経路に多いことが示唆された。 ・白血病抑制因子(LIF)は、他のDEPと最も相関性が高く、いずれの経路においても重要な役割を果たしている可能性があり、LIFタンパク質レベルは、二重特異性抗体群で最も高かった。  著者らは「二重特異性抗体による治療は、炎症性サイトカインストリームによる重症COVID-19リスクの増加と関連しており、LIFおよびJAK-STAT経路が重要な役割を果たしていると考えられる。LIFおよびJAK-STAT経路を標的とすることで、二重特異性抗体治療を行ったMM患者の重症COVID-19を軽減できる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Li Z, et al. J Transl Med. 2025; 23: 117.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39865264 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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