「血液内科 Journal Check」の記事一覧

日本人の初発進行期CHLに対する中間PETの有用性〜日本臨床腫瘍研究グループ
日本人の初発進行期CHLに対する中間PETの有用性〜日本臨床腫瘍研究グループ
公開日:2024年7月26日 Kusumoto S, et al. Cancer Sci. 2024 Jul 22. [Epub ahead of print]  初発進行期古典的ホジキンリンパ腫(CHL)に対する中間PET誘導療法の有用性を評価したリンパ腫グループJCOG1305試験の解析結果を、愛知県がんセンターの楠本 茂氏らが報告した。Cancer Science誌オンライン版2024年7月22日号の報告。  対象は、16〜60歳の新たに診断された進行期CHL日本人患者。対象患者は、ドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジン(ABVD療法)2サイクル後、中間PETスキャン(PET2)により5段階のDeauvilleスケールで中央判定を受けた。PET2陰性の患者は、ABVD療法をさらに4サイクル継続した。PET2陽性の患者は、増量ブレオマイシン+エトポシド+ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プロカルバジン+プレドニゾン(増量BEACOPP療法)の6サイクルに切り替えを行った。主要エンドポイントは、すべての適格基準を満たした患者およびPET2陽性患者における2年無増悪生存割合(PFS)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・2016〜19年に初発進行期CHL患者93例が登録された。 ・1例は、診断ミスのため不適格となった。 ・適格基準を満たした患者(92例)の年齢中央値は35歳(四分位範囲:28〜48)であった。 ・ステージIIIが40例(43%)、ステージIVが43例(47%)であった。 ・残りの9例(10%)は、リスク因子を有するIIB期であった。 ・PET2陽性患者19例(21%)は増量BEACOPP療法を受け、そのうち18例は増量BEACOPP療法6サイクルを完了した。 ・PET2陰性患者73例(79%)はABVD療法を継続し、そのうち70例はABVD療法の追加4サイクルを完了した。 ・フォローアップ期間中央値は41.1ヵ月。 ・2年PFSは、対象患者(92例)で84.8%(80%信頼区間[CI]:79.2〜88.9)、PET2陽性患者(19例)で84.2%(80%CI:69.7〜92.1)であった。 ・いずれの主要エンドポイントも、事前に指定したい閾値で達成された。  著者らは「中間PET誘導療法は、初発進行期CHLの若年患者において、有用な治療選択肢であることを示唆している」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kusumoto S, et al. Cancer Sci. 2024 Jul 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39034771 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法後の最適なモニタリング期間は
CAR-T細胞療法後の最適なモニタリング期間は
公開日:2024年7月25日 Ahmed N, et al. Blood Adv. 2024 Jul 23. [Epub ahead of print]  CD19を標的としたCAR-T細胞療法として、アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)、チサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)などが承認されたことにより、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)治療は一変し、有効な治療法として確立されつつある。その一方で、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)などの毒性リスクが問題となっている。米FDAは、リスク評価および緩和戦略の一環として、毒性リスクのモニタリングのために患者を治療センターの近隣に4週間滞在することを義務付けている。しかし、このような慎重な対策は、治療費の増加、患者および介護者の負担増加、患者アクセスや社会経済的格差などの課題をもたらす可能性がある。米国・カンザス大学のNausheen Ahmed氏らは、CAR-T細胞療法を行った患者におけるCRS、ICANSの発生や持続期間、非再発死亡率(NRM)の原因を調査した。Blood Advances誌オンライン版2024年7月23日号の報告。  2018〜23年に9施設でaxi-cel、tisa-cel、liso-celによる治療を行った患者475例を対象に、リアルワールドにおけるCAR-T細胞療法実施患者のCRS、ICANSの発生や持続期間、NRMの原因を調査するため、レトロスペクティブ研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・製品間でCRS、ICANSの発生率や持続期間に違いが認められたが、注入後2週間以降で新規に発生したCRS(0%)、ICANS(0.7%)は極めて稀であった。 ・2週間後にCRSの新規発生は認められず、ICANSの新規発生は、3週間後に1例のみで認められた。 ・NRMは、フォローアップ初期にICANS(28日目までで1.1%)、その後3ヵ月間で感染症(1.2%)により発生していた。  著者らは「本研究結果は、CAR-T細胞療法のモニタリングを最適化する上で重要であり、今後は患者の身体的および経済的制約を軽減するための仕組みが求められるであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ahmed N, et al. Blood Adv. 2024 Jul 23. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39042880 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療戦略
高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療戦略
公開日:2024年7月24日 Mateos MV, et al. J Clin Oncol. 2024 Jul 22. [Epub ahead of print]  スペイン・サラマンカ大学のMaria-Victoria Mateos氏らは、2年時点での進行リスクが50%超となる高リスクくすぶり型多発性骨髄腫(MM)の移植適応のある患者を対象に、カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(KLd療法)による寛解導入療法6サイクル後、大量メルファランによる自家幹細胞移植(HDM-ASCT)、KLd療法による地固め療法2サイクルおよび維持療法として2年間のLd療法の有効性を評価した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年7月22日号の報告。  主要エンドポイントは、ASCT後のnext-generation flowによる検出不能な測定可能病変(uMRD)の割合とした。副次的エンドポイントは、ASCT4年後時点でのuMRDの継続とした。 主な結果は以下のとおり。 ・2015年6月〜2017年6月、対象患者90例が登録された。登録患者の31%は、CRAB症状を認めた。 ・ASCTの3ヵ月後(フォローアップ期間中央値70.1ヵ月)、ITT集団では、90例中56例(62%)においてuMRDがみられた。4年後、29例(31%)においてuMRDの継続が認められた。 ・MMへ進行した患者は5例、70ヵ月進行率は94%(95%CI:84〜89)であった。 ・CRAB症状は、MMへの進行の予測因子であった(5例中4例、ハザード比:0.12、95%CI:0.14〜1.13、p=0.03)。 ・36例で生化学的進行が認められ、その予測因子は、治療終了時のuMRD未達であった。 ・70ヵ月の全生存率は92%(95%CI:82〜89)であった。 ・治療中に最も発生した有害事象は、好中球減少と感染症であり、治療関連の死亡は、1件報告された。 ・二次原発性悪性腫瘍は、3件報告された。  著者らは「より長期にわたるフォローアップ調査が必要ではあるものの、31%の患者において、4年後もuMRDが継続していることからも本治療法は有望であり、活動性のMMよりも効果的な可能性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mateos MV, et al. J Clin Oncol. 2024 Jul 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39038268 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
低リスクMDSの非輸血依存患者に対する低用量レナリドミド早期介入〜SintraREV試験
低リスクMDSの非輸血依存患者に対する低用量レナリドミド早期介入〜SintraREV試験
公開日:2024年7月23日 Diez-Campelo M, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]  レナリドミドは、5番染色体長腕部欠失(5q欠損)を伴う骨髄異形成症候群(MDS)の輸血依存患者に対する標準治療薬である。非輸血依存の貧血患者に対する2年間の低用量レナリドミド投与による早期介入が、その後の輸血依存を遅延させるかを検討するため、スペイン・サラマンカ大学のMaria Diez-Campelo氏らは、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験であるSintraREV試験を実施した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2024年7月18日号の報告。  SintraREV試験には、スペイン、フランス、ドイツの22施設(大学病院)が参加した。対象は、低リスクまたは中等度1リスクの5q欠損MDS診断され、非輸血依存貧血を呈し、エリスロポエチン未治療、ECOGのPS2以上であった18歳以上の患者。対象患者は、レナリドミド群(2年間、28日サイクルで5mg /日)またはプラセボ群に、電話システムにより2:1でランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、中央判定(BICR)に基づく輸血依存までの期間とした。intent-to-treat(ITT)と評価可能な集団による分析を行った。安全性分析の対象には、1回以上治療を行ったすべての患者を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・2010年2月15日〜2018年2月21日の期間で、61例がレナリドミド群40例(2例は治療を受けなかった)、プラセボ群21例にランダムに割り付けられた。 ・年齢中央値は77.2歳(四分位範囲[IQR]:65.4〜81.9)、女性は50例(82%)、男性は11例(18%)であった。 ・フォローアップ期間中央値は60.6ヵ月(IQR:31.1〜73.9)であった。 ・主要エンドポイントに関しては、輸血依存までの期間中央値は、レナリドミド群で未達であったのに対し、プラセボ群では11.6ヵ月(95%CI:0.00〜30.11)であった(p=0.0046)。 ・レナリドミド群では、輸血依存リスクの有意な減少(69.8%減)が認められた(ハザード比:0.302、95%CI:0.132〜0.692、p=0.0046)。 ・最も頻度の高い治療関連有害事象は、好中球減少であった。レナリドミド群では38例中24例(63%)に発生し(グレード3:17例[45%]、グレード4:1例[3%])、プラセボ群では21例中4例に認められた(グレード3:2例[5%])。 ・レナリドミド群38例中7例(18%)で血小板減少がみられた(グレード3:2例[5%])。 ・非血液毒性に関しては、レナリドミド群で皮膚障害(発疹:38例中9例[23%])の頻度が最も高かった(グレード3:1例[3%])。 ・13例で19件(レナリドミド群:18件、プラセボ群:1例)の重篤な有害事象が報告された。そのうち5件は、試験薬に関連している可能性があった。 ・治療関連の死亡は認められなかった。  著者らは「5q欠損の低リスクMDS に対する2年間の低用量レナリドミドによる早期介入は、輸血依存までの期間を延長し、奏効率や奏効の質の改善が期待でき、マネジメント可能な安全性プロファイルを有していることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Diez-Campelo M, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39033767 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
リツキサン時代における再発・難治性DLBCLの実際の臨床アウトカム〜STRIDER試験
リツキサン時代における再発・難治性DLBCLの実際の臨床アウトカム〜STRIDER試験
公開日:2024年7月22日 Dogliotti I, et al. Cancer Med. 2024; 13: e7448.  R -CHOP療法により、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療成績は大きく改善した。しかし、R-CHOP療法で治療した場合でも、再発率は約40%、難治性率は約15%といわれている。イタリア・A.O.U. Citta della Salute e della ScienzaのIrene Dogliotti氏らは、再発・難治性DLBCLの実際の臨床アウトカムを評価するため、リアルワールドデータのレトロスペクティブ分析を行った。Cancer Medicine誌2024年7月号の報告。  イタリア・トリノの2つの大規模血液センターで治療を行ったDLBCL患者403例を連続登録し、調査した。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値は50ヵ月、診断から5年間の全生存期間(OS)は66.5%、2年の無増悪生存期間(PFS)は68%であった。 ・再発・難治性DLBCLは134例(34.4%)であった。内訳は、再発した患者46例(11.8%)、難治性と判断された患者88例(22.6%)。 ・サルベージ療法で最も多く採用されたのは、プラチナベースのレジメンで38例(28.4%)、次いでレナリドミド14例(10.4%)であった。 ・再発または病勢進行後のOS中央値は6.7ヵ月、PFS中央値は5.1ヵ月であった。 ・再発・難治性DLBCLにおいて、プラチナベースのレジメンで治療された患者と他のレジメンで治療された患者では、全奏効率(OR)、OS、PFSに有意な差は認められなかった。 ・多変量解析により、再発・難治性DLBCLのOSと関連している因子として、次の3つが挙げられた。 ●年齢:60〜80歳 ●起源:胚中心B細胞型 ●転移:リンパ節外転移2ヵ所未満  著者らは「リツキシマブ時代になった今もなお、再発・難治性DLBCLの臨床アウトカムは、不良であることが改めて確認された。これらを改善するためにも、CAR-T細胞療法や二重特異性抗体などの新たな治療法が、第2選択治療として広く承認されることが望まれる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Dogliotti I, et al. Cancer Med. 2024; 13: e7448.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39030982 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
現代の多発性骨髄腫治療における感染症リスク〜大規模集団ベース研究
現代の多発性骨髄腫治療における感染症リスク〜大規模集団ベース研究
公開日:2024年7月19日 Blimark CH, et al. Haematologica. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]  治療法や毒性マネジメントの進歩により、多発性骨髄腫(MM)の生存率は向上した。これに伴い、MMの年齢構成にも変化が生じている。スウェーデン・ヨーテボリ大学のCecilie Hveding Blimark氏らは、一般集団と比較したMM患者の感染症リスクに関する最新の状況を明らかにするため、スウェーデンの大規模集団を対象とした研究を実施した。Haematologica誌オンライン版2024年7月18日号の報告。  スウェーデンの人口ベースレジストリを用いて、2008〜21年に診断されたMM患者8,672例およびマッチさせた対照群3万4,561例を対象に感染症の発生率を調査した。 主な結果は以下のとおり。 ・全体では、MM患者は対照群と比較し、臨床的に重要な感染症発症リスクが約5倍であることが示唆された(ハザード比[HR]:5.30、95%信頼区間[CI]:5.14〜5.47)。 ・MM患者は対照群と比較し、細菌感染症リスクが約5倍(HR:4.88、95%CI:4.70〜5.07)、ウイルスおよび真菌感染症リスクが約7倍であった。 ・MM診断 1年目の感染症リスクは、対照群と比較して約7倍(HR:6.95、95%CI:6.61〜7.30)であり、その後5年目まで高いままであった。 ・2022年までフォローアップ調査を行ったMM患者では、対照群と比較し、感染症リスクが約5倍のままであった。 ・MM診断前では、4年前まで対照群よりも感染症リスクが高かった(HR:1.16、95%CI:1.05〜1.28)。 ・MM患者のうち、8%は診断後2ヵ月以内に死亡しており、全死亡の32%は感染症によるものであった。 ・1年後、MM患者の20%が死亡しており、感染症関連死亡率は27%であった。  著者らは「本研究は、現在のMM治療の時代において、一般集団と比較した感染症リスクに関する最大規模の研究である。MM患者にとって感染症は依然として大きな脅威であり、予防戦略の重要性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Blimark CH, et al. Haematologica. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39021214 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
axi-celによる再発・難治性LBCLの臨床転帰に対する腫瘍減量療法の影響
axi-celによる再発・難治性LBCLの臨床転帰に対する腫瘍減量療法の影響
公開日:2024年7月18日 van Meerten T, et al. Am J Cancer Res. 2024; 14: 2905-2920.  CD19を標的としたCAR-T細胞療法アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)は、ZUMA-1試験のコホート1+2の結果に基づいて、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の治療薬として承認された。サイトカイン放出症候群(CRS)および神経学的イベントの発生率や重症度を軽減することを目的とした安全性マネジメント戦略を調査するため、ZUMA-1試験の拡大コホートが実施された。オランダ・フローニンゲン大学のTom van Meerten氏らは、axi-cel治療患者における免疫化学療法および腫瘍減量療法の影響を評価したプロスペクティブ安全性拡大コホート5の結果を報告した。American Journal of Cancer Research誌2024年6月15日号の報告。  コホート5では、axi-cel治療を行った再発・難治性LBCL患者を対象に、リツキシマブを含む免疫化学療法レジメンおよび放射線療法を含む腫瘍減量療法の影響を評価した。CRSおよび神経学的イベントのマネジメント戦略は、コホート1+2の戦略と並行していた。 主な結果は以下のとおり。 ・コホート5でaxi-cel治療を行った患者50例のうち、40%が3種類以上の化学療法を行なっており、最近の化学療法中に病勢進行が認められた患者は40%であった。 ・腫瘍減量療法が行われていた患者は48例(96%)、放射線療法のみが14例(28%)、全身免疫化学療法が34例(71%)であった。 ・スクリーニング時と比較した腫瘍量減少の中央値は、R-ICE /R-GDPで17.4%、その他の腫瘍減量化学療法で4.3%、放射線療法のみで6.3%であった。 ・すべての患者のフォローアップ期間は、8ヵ月以上であった。 ・CRSは、43例(86%)で報告された。グレード3以上は 1例(2%)のみであった。 ・神経学的イベントは、28例(56%)で報告された。グレード3以上は6例(12%)であった。 ・最も多く認められたグレード3以上の有害事象は、血球減少であった。 【血小板減少】全体:19例(38%)、グレード3以上:18例(36%) 【好中球減少】全体:25例(50%)、グレード3以上:24例(48%) ・全体として、腫瘍減量化学療法を行った患者は、放射線療法のみであった患者よりも、治療中の重篤な有害事象の発生率が高かった。 ・24ヵ月の解析では、客観的腫瘍縮小効果(ORR)は72%、完全奏効(CR)は56%であった。 ・奏効期間中央値は25.8ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は3.1ヵ月、全生存期間(OS)中央値は20.6ヵ月であった。  著者らは「コホート5の本結果は、axi-cel治療前の腫瘍減量療法の実現可能性を示唆しており、現在のリアルワールドでのエビデンスと合わせて、再発・難治性LBCL患者のCRSおよび神経学的イベントの発生や重症度を最低限に抑制するために、腫瘍減量レジメンが役立つ可能性を示唆している。なお、その他の有害事象の発生については、本研究で行われていた腫瘍減量レジメンでは、リスク/ベネフィットプロファイルが改善されなかった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら van Meerten T, et al. Am J Cancer Res. 2024; 14: 2905-2920.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39005691 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
悪性リンパ腫患者のHRQoLはどの程度悪化しているのか〜REALYSAコホート
悪性リンパ腫患者のHRQoLはどの程度悪化しているのか〜REALYSAコホート
公開日:2024年7月17日 Anota A, et al. Eur J Cancer. 2024 Jul 4. [Epub ahead of print]  近年、悪性リンパ腫の治療は、著しく進歩を遂げている。そのため、悪性リンパ腫患者の健康関連QOL(HRQoL)の評価は、臨床研究や日常診療において重要なポイントとなっている。しかし、診断時における悪性リンパ腫特有のHRQoLプロファイルに関するデータは、十分ではない。フランス・Centre Leon BerardのAmelie Anota氏らは、フランスのプロスペクティブ非介入多施設コホートであるREALYSAコホートの登録患者を対象に、新規悪性リンパ腫患者における診断時のHRQoLの評価を行った。European Journal of Cancer誌オンライン版2024年7月4日号の報告。  対象は、REALYSAコホートに含まれる成人悪性リンパ腫患者3,922例。高悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL-HG)患者1,994例、低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL-LG)患者1,053例、ホジキンリンパ腫(HL)患者875例の診断時のHRQoLを評価した。疾患特有のHRQoLを評価するため、3つの検証済みEORTC質問票をそれぞれ用いた(NHL-HG:QLQ-NHL-HG29、NHL-LG:QLQ-NHL-LG20、HL:QLQ-HL27)。 主な結果は以下のとおり。 ・本コホートにおける質問票の完了率は高く、QLQ-HG29の84%からQLQ-HL27の88%にまで達していた。 ・全般的な健康状態が悪化している患者の割合は、T細胞リンパ腫67%、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)62%、バーキットリンパ腫61%、HL 53%、辺縁帯リンパ腫49%、マントル細胞リンパ腫48%、濾胞性リンパ腫(FL)47%であった。 ・DLBCL、FL、HLの多変量回帰分析では、性別、PS、B症状がすべてのHRQoLと独立して関連していることが示唆された。ただし、各サブタイプ間で、年齢とステージによるさまざまな影響が観察された。  著者らは「本研究により、各悪性リンパ腫患者の診断時におけるHRQoLプロファイルが明らかとなった。本研究で使用した最近検証されたEORTC質問票は、今後の研究でHRQoL結果の解釈を促進する上で役立つであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Anota A, et al. Eur J Cancer. 2024 Jul 4. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39002346 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性CNSリンパ腫に対するイブルチニブ単剤療法の長期評価〜第II相試験
再発・難治性CNSリンパ腫に対するイブルチニブ単剤療法の長期評価〜第II相試験
公開日:2024年7月16日 Grommes C, et al. Clin Cancer Res. 2024 Jul 12. [Epub ahead of print]  ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブは、ファーストインクラスの薬剤である。著者らはこれまで、再発・難治性の中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)または二次性中枢神経系リンパ腫(SCNSL)患者20例におけるイブルチニブの安全性と短期的な抗腫瘍活性を報告した。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのChristian Grommes氏らは、イブルチニブの長期的な評価を行うため、用量漸増コホートとの複合コホートの結果を報告した。Clinical Cancer Research誌オンライン版2024年7月12日号の報告。  用量漸増コホートには、再発・難治性PCNSLおよびSCNSL患者26例が登録された。拡大コホートと用量漸増コホートを合わせた46例(PCNSL:31例、SCNSL:15例)の患者を対象に、複合コホートを実施した。イブルチニブの投与量は、用量漸増コホートでは560mg/日または840mg/日、拡大コホートでは840mg/日であった。フォローアップ期間中央値は、PCNSL患者で49.9ヵ月、SCNSL患者で62.1ヵ月であった。イブルチニブ治療前および治療中に採取した腫瘍生検および脳脊髄液(CSF)からDNA配列を決定した。 主な結果は以下のとおり。 ・抗腫瘍活性は、PCNSL患者23例(74%)、SCNSL患者9例(60%)で観察された。 ・完全奏効(CR)は、PCNSL患者12例、SCNSL患者7例で認められた。 ・PCNSL患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は4.5ヵ月(95%CI:2.8〜9.2)、1年PFSは23.7%(95%CI:12.4〜45.1)であった。 ・PCNSLレスポンダー23例における奏効期間(DOR)中央値は5.5ヵ月であった。 ・SCNSL患者のPFS中央値は5.3ヵ月(95%CI:1.3〜14.5)、レスポンダー9例のDOR中央値は8.7ヵ月であった。 ・探索的バイオマーカー分析では、PCNSL患者におけるイブルチニブの長期的な奏効と関連している因子としてTBL1XR1の変異が示唆された(p=0.0075)。 ・CSFからの循環腫瘍DNAクリアランスは、イブルチニブのCRかつ長期的奏効と関連が認められた。  著者らは「長期的なフォローアップ調査により、再発・難治性の中枢神経系リンパ腫に対するイブルチニブ単剤療法の抗腫瘍活性が確認され、奏効に対する分子的な決定因子が特定された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Grommes C, et al. Clin Cancer Res. 2024 Jul 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38995739 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
低リスクの日本人真性多血症に対するロペグインターフェロンアルファ-2bの有用性
低リスクの日本人真性多血症に対するロペグインターフェロンアルファ-2bの有用性
公開日:2024年7月12日 Shimoda K, et al. Int J Hematol. 2024 Jul 1. [Epub ahead of print]  真性多血症(PV)は、クローン性赤血球増多を特徴とするフィラデルフィア染色体陰性骨髄増殖性腫瘍である。日本人PV患者に対するロペグインターフェロンアルファ-2bの忍容性および有効性は、第II相試験において報告されている。宮崎大学の下田 和哉氏らは、この第II相試験の事後分析を行い、血栓症リスクの低いPV患者(低リスクPV)に対するロペグインターフェロンアルファ-2bの有用性を評価した。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年7月1日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、低リスクPV患者20例。 ・ヘマトクリット45%未満の達成率は、24週目で60.0%(12例)、52週目で85.0%(17例)であった。 ・血液学的完全奏効(CHR)率は52週目で60.0%(12例)、奏効期間中央値は11.9ヵ月であった。 ・JAK2 V617F対立遺伝子負荷の平均値は、ベースライン時の75.8%から52週目の53.7%へと減少が認められた。 ・血栓症や出血エピソードは、認められなかった。 ・すべての患者において、ロペグインターフェロンアルファ-2bに関連する治療関連有害事象(TEAE)が認められたが、グレード3以上のTEAEや死亡はなく、新たな安全性上の懸念も見当たらなかった。  著者らは「日本人の低リスクPVにとって、ロペグインターフェロンアルファ-2bは効果的な治療選択肢となる可能性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shimoda K, et al. Int J Hematol. 2024 Jul 1. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38951434 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
未治療の日本人CLLに対するアカラブルチニブ+オビヌツズマブ〜第I相試験
未治療の日本人CLLに対するアカラブルチニブ+オビヌツズマブ〜第I相試験
公開日:2024年7月11日 Takizawa J, et al. Leuk Lymphoma. 2024 Jul 1. [Epub ahead of print]  新潟大学の瀧澤 淳氏らは、未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)の日本人患者を対象に、アカラブルチニブとオビヌツズマブ併用療法の安全性、薬物動態、薬力学、抗腫瘍活性を評価した多施設共同非盲検第I相試験パート3に焦点を当て、報告した。Leukemia & Lymphoma誌オンライン版2024年7月1日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者は、未治療の日本人CLL患者10例(年齢中央値:68歳)。 ・治療期間中央値は27.2ヵ月。 ・治療中に発生した有害事象(AE)は、すべての患者において認められ(グレード3以上:70%)、最も多かったAEは貧血および頭痛であった(各々、40%)。 ・グレード4の好中球減少症が1例で認められた(唯一の用量制限毒性)。 ・薬物動態の結果から、オビヌツズマブの併用は、アカラブルチニブに明らかな影響を及ぼさないことが示唆された。 ・薬力学評価では、併用療法により、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)占有率が98%以上になることが示唆された。 ・全奏効率は100%、奏効期間中央値と無増悪生存期間中央値は未達であった。  著者らは「アカラブルチニブとオビヌツズマブ併用療法は、未治療の日本人CLL患者において、概ね安全かつ有効な治療法であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Takizawa J, et al. Leuk Lymphoma. 2024 Jul 1. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38952054 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
小児免疫原性TTPに対するカプラシズマブ〜英国TTPレジストリ
小児免疫原性TTPに対するカプラシズマブ〜英国TTPレジストリ
公開日:2024年7月10日 Taylor AM, et al. Blood Adv. 2024 Jul 5. [Epub ahead of print]  小児の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、極めて稀な疾患である。免疫原性TTPは、抗ADAMTS13自己抗体によって引き起こされ、ADAMTS13/VWFの不均衡による血栓傾向がみられる。さらに、小児では稀であるが、生命を脅かす可能性もある。微小血栓形成阻害剤カプラシズマブは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児に対し適応を有している薬剤である。英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS Foundation TrustのAlice Maria Taylor氏らは、小児に対するカプラシズマブの使用についてレトロスペクティブに調査を行った。Blood Advances誌オンライン版2024年7月5日号の報告。  英国TTPレジストリより、カプラシズマブで治療を行った18歳未満の患者16例(12歳未満4例を含む)を抽出し、レトロスペクティブに分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・体重40kg未満の患者3例には、カプラシズマブ5mg /日を1日1回投与した。 ・最年少の患者は、診断時33ヵ月齢であった。 ・血漿交換療法(PEX)は、15例に行われており、血小板正常化までに平均5回(範囲:2〜9)のPEXを要した。 ・PEXなしで治療を行った患者は1例のみであった。 ・すべての患者において、血小板数(平均:5.5日[範囲:3〜28])およびADAMTS13活性(平均:35日[範囲:8〜149])の正常化が達成された。 ・入院期間の中央値は、11日(範囲:5〜26)であった。 ・対象患者に、難治性は認められなかった。 ・再発患者は、1例のみで、受診後9ヵ月で再発した。 ・重度の鼻出血を呈した1例では、VWF補充やカプラシズマブの減量を必要とする出血が認められたが、有意な頭蓋内出血や消化管出血は認められなかった。  著者らは「小児に対するカプラシズマブ治療は、成人と同様の有効性および安全性が認められ、主にPEXの減少に有用である可能性が示唆された。このことは、とくに小児医療において、入院の強度および期間に良い影響を与えるであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Taylor AM, et al. Blood Adv. 2024 Jul 5. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38968147 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら