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現代の多発性骨髄腫治療における感染症リスク〜大規模集団ベース研究
公開日:2024年7月19日
Blimark CH, et al. Haematologica. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]
治療法や毒性マネジメントの進歩により、多発性骨髄腫(MM)の生存率は向上した。これに伴い、MMの年齢構成にも変化が生じている。スウェーデン・ヨーテボリ大学のCecilie Hveding Blimark氏らは、一般集団と比較したMM患者の感染症リスクに関する最新の状況を明らかにするため、スウェーデンの大規模集団を対象とした研究を実施した。Haematologica誌オンライン版2024年7月18日号の報告。
スウェーデンの人口ベースレジストリを用いて、2008〜21年に診断されたMM患者8,672例およびマッチさせた対照群3万4,561例を対象に感染症の発生率を調査した。
主な結果は以下のとおり。
・全体では、MM患者は対照群と比較し、臨床的に重要な感染症発症リスクが約5倍であることが示唆された(ハザード比[HR]:5.30、95%信頼区間[CI]:5.14〜5.47)。
・MM患者は対照群と比較し、細菌感染症リスクが約5倍(HR:4.88、95%CI:4.70〜5.07)、ウイルスおよび真菌感染症リスクが約7倍であった。
・MM診断 1年目の感染症リスクは、対照群と比較して約7倍(HR:6.95、95%CI:6.61〜7.30)であり、その後5年目まで高いままであった。
・2022年までフォローアップ調査を行ったMM患者では、対照群と比較し、感染症リスクが約5倍のままであった。
・MM診断前では、4年前まで対照群よりも感染症リスクが高かった(HR:1.16、95%CI:1.05〜1.28)。
・MM患者のうち、8%は診断後2ヵ月以内に死亡しており、全死亡の32%は感染症によるものであった。
・1年後、MM患者の20%が死亡しており、感染症関連死亡率は27%であった。
著者らは「本研究は、現在のMM治療の時代において、一般集団と比較した感染症リスクに関する最大規模の研究である。MM患者にとって感染症は依然として大きな脅威であり、予防戦略の重要性が示唆された」としている。
(エクスメディオ 鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Blimark CH, et al. Haematologica. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39021214
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