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非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 HFmrEF/HFpEFに有用の可能性
非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 HFmrEF/HFpEFに有用の可能性
Mineralocorticoid receptor antagonists in heart failure: an individual patient level meta-analysis Lancet. 2024 Sep 21;404(10458):1119-1131. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01733-1. Epub 2024 Sep 1. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は心不全で駆出率が低下した患者(HFrEF)の入院や死亡を減少させるが、心不全で駆出率が軽度低下した患者(HFmrEF)や心不全で駆出率が維持された患者(HFpEF)における効果は不明である。我々は、駆出率の範囲にわたって心不全患者を登録した4つの試験でMRAの効果を評価した。 方法:本解析は、HFrEF患者を登録したRALES試験(スピロノラクトン)およびEMPHASIS-HF試験(エプレレノン)、ならびにHFmrEFまたはHFpEF患者を登録したTOPCAT試験(スピロノラクトン)およびFINEARTS-HF試験(ファインレノン)の、事前に規定された個々の患者レベルのメタ解析である。このメタ解析の主要アウトカムは、心不全による初回入院または心血管死までの期間の複合であった。また、この複合項目の構成要素、心不全による入院の合計(初回または反復)(心血管死の有無にかかわらず)、および全死亡に対するMRAの効果を推定した。血清クレアチニン、推算糸球体濾過量、血清カリウム、収縮期血圧などの安全性アウトカムも評価した。これらの集団における効果の不均一性を検討するために、試験と治療との間の交互作用が試験された。本研究はPROSPERO(CRD42024541487)に登録されている。 結果:13 846例が4つの試験に組み入れられた。MRAは心血管死または心不全による入院のリスクを減少させた(ハザード比0-77[95%CI 0-72-0-83])。HFmrEFまたはHFpEF(0-87 [0-79-0-95])と比較してHFrEF(0-66 [0-59-0-73])で有効性が高いため、試験および治療による統計学的に有意な交互作用がみられた(交互作用のp=0-0012)。HFrEF試験(0-63 [0-55-0-72])およびHFmrEFまたはHFpEF試験(0-82 [0-74-0-91])では、心不全による入院が有意に減少した。心血管死の有無にかかわらず、心不全による入院総数についても同じパターンが観察された。心血管死はHFrEF試験で減少した(0-72[0-63-0-82])が、HFmrEF試験やHFpEF試験では減少しなかった(0-92[0-80-1-05])。全死亡もHFrEF試験では減少した(0-73[0-65-0-83])が、HFmrEF試験やHFpEF試験では減少しなかった(0-94[0-85-1-03])。MRAの投与により、高カリウム血症のリスクはプラセボと比較して2倍となったが(オッズ比2-27[95%CI 2-02-2-56])、重篤な高カリウム血症(血清カリウム>6-0mmol/L)の発生率は低かった(2-9% vs 1-4%);低カリウム血症(カリウム<3-5mmol/L)のリスクは半減した(0-51[0-45-0-57];7% vs 14%)。 解釈:ステロイドMRAはHFrEF患者における心血管死または心不全による入院のリスクを減少させ、非ステロイドMRAはHFmrEFまたはHFpEF患者におけるこのリスクを減少させる。 資金提供:なし。 第一人者の医師による解説 SGLT2阻害薬の併用率は14%にとどまっており、追加してなお有用性を示すかどうかは不明 藤本 陽 虎の門病院循環器センター内科医長 MMJ.April 2025;21(1):7 本論文は、左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者を対象としたRALES試験(スピロノラクトン)およびEMPHASIS-HF試験(エプレレノン)、LVEFが軽度低下した心不全(HFmr EF)、または保たれた心不全(HFpEF)患者を対象としたTOPCAT試験( スピロノラクトン)およびFINEARTS-HF試験(フィネレノン)に組み入れられた、合計13,846人の患者を対象にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の心不全に対する有用性を検討したメタ解析の報告である。フィネレノンは非ステロイド型、他2剤はステロイド型MRAである。 主要評価項目である心血管死/心不全入院のリスクはMRA群において有意に低下し(ハザード比[HR], 0. 77;95%信頼区間[CI ], 0. 72〜0. 83)、HFrEFに対してより有効であった(HR, 0 .66;95 % CI, 0 .59 〜0 .73)。HFmrEF/HFpEFに対してはHFrEFよりも効果は劣るものの有意な効果を示した(HR, 0 .87;95% CI, 0 .79 〜0 .95)。HFrEFの試験では心血管死のリスクは有意に低下したが(HR, 0 .72;95% CI, 0 .63 〜0 .82)、HFmrEF/HFpEFの試験では有意な低下は認めなかった(HR, 0 .92;95% CI, 0 .80 〜1.05)。全死亡についても心血管死と同様の結果であった。心不全入院のリスクは、HFrEFの試験(HR, 0.63;95% CI, 0.55〜0.72)、HFmrEF/HFpEFの試験(HR, 0.82;95% CI, 0.74〜0.91)のいずれでも有意に低下した。安全性の評価では、MRA群ではプラセボ群に比べ、高カリウム血症のリスクは2.27倍高かったが、重度の高カリウム血症(血清カリウム 6.0mmol/L超)の発生率は2.9%であった(プラセボ群1.4%)。一方、低カリウム血症(血清カリウム 3.5 mmol/L未満)のリスクはMRA群で半減した(7% 対 14%[プラセボ群]:HR, 0.51;95% CI, 0.45〜0.57)。 非ステロイド型MRAはHFmrEF/HFpEF患者の心血管死/心不全入院リスクを低下させた。しかしながら、それはFINEARTS-HF試験ですでに示された結果であり、ステロイド型MRAの効果を検討した3試験と併せてメタ解析を行う意義はあるのか疑問である。しかも、FINEARTS-HF試験におけるSGLT2阻害薬の併用率は14%にとどまっており、現在その有用性が確立されたSGLT2阻害薬に追加してなお非ステロイド型MRAの有用性は示されるかなどの疑問もある。非ステロイド型MRAはHFmrEF/HFpEF患者の心血管死/心不全入院リスクを低下させるのか? さらなる臨床試験による検討が必要な課題である。
セマグルチドは心不全既往の有無によらず 肥満者の心血管アウトカムを抑制
セマグルチドは心不全既往の有無によらず 肥満者の心血管アウトカムを抑制
Semaglutide and cardiovascular outcomes in patients with obesity and prevalent heart failure: a prespecified analysis of the SELECT trial Lancet. 2024 Aug 24;404(10454):773-786. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01498-3. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドは、過体重または肥満の患者における主要有害心血管イベント(MACE)のリスクを低下させるが、動脈硬化性心血管疾患および心不全患者の転帰に対する効果は不明である。我々は、週1回皮下投与のセマグルチド2-4mgが虚血および心不全の心血管アウトカムに及ぼす影響について事前に規定した解析を行ったので報告する。心不全の既往を有するアテローム性動脈硬化性心血管疾患患者において、セマグルチドがプラセボと比較して有益であるかどうか、駆出率が低下した心不全と比較して駆出率が維持された心不全に指定された患者において転帰に差があるかどうか、心不全患者におけるセマグルチドの有効性と安全性がベースラインの特徴や心不全のサブタイプと関連しているかどうかを検討することを目的とした。 方法:SELECT試験は41ヵ国で行われた無作為化、二重盲検、多施設、プラセボ対照、イベントドリブン第3相試験である。45歳以上でBMIが27kg/m2以上、心血管疾患が確立している成人が試験の対象となった。患者は、二重盲検法にて、対話式ウェブ応答システムを用いて、4つのブロックサイズに無作為に割り付けられ(1:1)、16週間にわたり週1回セマグルチド皮下投与が目標用量の2~4mgまで漸増されるか、またはプラセボが投与された。事前に規定した解析では、登録時に心不全の既往があり、駆出率が維持された心不全、駆出率が低下した心不全、分類不能の心不全に分類された患者において、プラセボと比較したセマグルチドの効果を検討した。エンドポイントはMACE(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合)、心不全複合アウトカム(心血管死、心不全による入院または緊急来院)、心血管死、全死亡。本試験はClinicalTrials.govのNCT03574597に登録されている。 結果:2018年10月31日~2021年3月31日の間に、平均年齢61~6歳(SD 8~9)、平均BMI 33~4kg/m2(5~0)の患者17604例を、セマグルチドを投与する群(8803例[50~0%])とプラセボを投与する群(8801例[50~0%])に無作為に割り付けた。登録時、17604例中4286例(24-3%)が治験責任医師により定義された心不全の病歴を有していた:4286例中2273例(53-0%)が駆出率維持型心不全、1347例(31-4%)が駆出率低下型心不全、666例(15-5%)が分類不能の心不全であった。ベースラインの特徴は心不全のある患者とない患者で類似していた。心不全患者では臨床イベントの発生率が高かった。セマグルチドは無作為割付け時に心不全を有する患者において、心不全を有しない患者と比較してすべてのアウトカム指標を改善した(MACEのハザード比[HR]は0-72、95%信頼区間は0-60-0-87、心不全複合エンドポイントは0-79、0-64-0-98、心血管死は0-76、0-59-0-97、全死亡は0-81、0-66-1-00、すべてpinteraction>0-19)。セマグルチドによる治療は、駆出率が低下した心不全群(MACE:HR 0-65、95%信頼区間:0-49-0-87、心不全複合エンドポイント:0-79、0-58-1-08)と駆出率が維持された心不全群(MACE:0-69、0-51-0-91、心不全複合エンドポイント:0-75、0-52-1-07)の両方で予後を改善したが、駆出率が低下した心不全患者は駆出率が維持された心不全患者よりも絶対的イベント発生率が高かった。MACEと心不全複合エンドポイントに関しては、ベースラインの年齢、性別、BMI、New York Heart Associationのステータス、利尿薬の使用による有益性の有意差はみられなかった。重篤な有害事象は、心不全のサブタイプにかかわらず、プラセボと比較してセマグルチドで少なかった。 解釈:アテローム性動脈硬化性心血管疾患で過体重または肥満の患者において、セマグルチド2〜4mgの投与は、心不全のサブタイプにかかわらず、臨床的心不全の有無にかかわらず、MACEおよび複合心不全エンドポイントをプラセボと比較して減少させた。われわれの知見は、この患者群の処方を容易にし、臨床転帰の改善につながる可能性がある。 資金提供:Novo Nordisk社。 第一人者の医師による解説 心不全既往者に対する抑制効果 大規模試験のサブ解析で初めて示される 植木 浩二郎 国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部長/国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センター長 MMJ.April 2025;21(1):8 SELECT試験は、BMI 27 kg/m2 以上の過体重・肥満があり心血管疾患の既往を持つ17,604人をグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドの2.4mg週1回投与群とプラセボ群に無作為に割り付け、平均39.8カ月の介入でセマグルチドによって主要心血管イベント(MACE)がプラセボに比べ20%抑制された試験であった(1)。本論文では、事前に計画されていた解析として、SELECT試験参加者のうち登録時に心不全の既往があった4 ,286 人を対象に、MACE、複合心不全アウトカム(心血管死、心不全による入院あるいは救急受診)、心血管死、全死亡の複合エンドポイントについてセマグルチドの効果を検証し、心不全の既往がない場合と比較した。また、登録時の心不全病態(左室駆出率が低下した心不全[HFrEF]、保たれた心不全[HFpEF]、どちらにも分類されていない心不全)、登録時の身体所見や検査データなどと、セマグルチドの効果の関連についても検討した。 その結果、心不全既往のある患者では、心不全既往のない患者に比べ、イベント発生率は高かったが、セマグルチドによって複合エンドポイントは28%抑制され、各コンポーネントもすべて抑制された。セマグルチドのイベント抑制効果は、心不全既往のある患者の方が心不全既往のない患者に比べ大きかった。心不全病態別の解析では、HFrEFの方がHFpEFに比べイベント発生率は高かったものの、セマグルチドの抑制効果に関して2群間に差はなかった。また、登録時の年齢、性別、BMI、心不全の病期などとセマグルチドの効果の関連はなかった。 本研究の意義は、これまでのGLP-1受容体作動薬リラグルチドを用いた小規模試験(2)において示されていなかった心不全既往者に対する心不全や心血管イベント抑制効果が大規模試験のサブ解析によって初めて示されたことである。その後実施されたセマグルチドのHFpEFに対する効果を検証した2件の試験でも、心不全症状の改善が認められており(3)、今後、心不全抑制におけるSGLT2阻害薬との使い分けや併用についての検討も行われるものと考えられる。一方、今回の試験ではセマグルチドの最高用量が用いられているが、イベント抑制効果は投与後比較的早期から認められており、体重減少とは直接的な関係は薄いものと想定されることから、心血管イベントや心不全の抑制に関 して最高用量の必要性についても検討が必要ではないかと思われる。 1. Linco AM, et al. N Engl J Med. 2023;389(24):2221-2232. 2. Margulies KB, et al. JAMA. 2016;316(5):500-508. 3. Butler J, et al. Lancet. 2024;403(10437):1635-1648.
線維筋痛症の自己管理型デジタル療法 症状改善評価で症状トラッキング群を有意に上回る
線維筋痛症の自己管理型デジタル療法 症状改善評価で症状トラッキング群を有意に上回る
Self-guided digital behavioural therapy versus active control for fibromyalgia (PROSPER-FM): a phase 3, multicentre, randomised controlled trial Lancet. 2024 Jul 27;404(10450):364-374. doi: 10.1016/S0140-6736(24)00909-7. Epub 2024 Jul 8. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:国際的なガイドラインでは、受容とコミットメント療法(ACT)を含む認知行動療法が線維筋痛症の管理に有効であるとして推奨されている。線維筋痛症の管理に対する12週間の自己指導型スマートフォン配信デジタルACTプログラムの効果を評価することを目的とした。 方法:米国の25のコミュニティサイトで実施されたPROSPER-FM無作為化臨床試験において、線維筋痛症を有する22~75歳の成人参加者を募集し、デジタルACT群と、毎日の症状の追跡とモニタリング、健康関連および線維筋痛症関連の教育資料へのアクセスを提供する積極的対照群に無作為に割り付けた(1対1)。無作為化は、ウェブベースのシステムを用いて、サイトレベルで4つのブロックに順列付けして行った。仮説に基づかないアプローチを用い、参加者には、評価中の2つの効果的と思われる治療法のうち1つに無作為に割り付けられると知らされた。研究スタッフは、中間解析のための統計プログラムを作成する際にマスクされた統計グループを除いて、グループ割り付けについてマスクされなかった。主要エンドポイントは12週目のPGIC(patient global impression of change)反応率であった。解析はintention to treatで行われた。本試験はClinicalTrials.govのNCT05243511に登録された(現在は完全に終了)。 結果:2022年2月8日から2023年2月2日の間に、590人がスクリーニングを受け、そのうち275人(女性257人、男性18人)がデジタルACT群(n=140)と積極的対照群(n=135)に無作為に割り付けられた。12週時点で、ACT群140例中99例(71%)がPGICで改善を報告したのに対し、積極的対照群135例中30例(22%)がPGICで改善を報告し、割合の差は48~4%(95%CI 37-9~58-9、p<0-0001)であった。機器関連の安全性イベントは報告されなかった。 解釈:成人患者における線維筋痛症の管理において、デジタルACTはデジタル症状追跡と比較して安全かつ有効であった。 資金提供:Swing Therapeutics社。 第一人者の医師による解説 日本でも重要な選択肢 国産アプリ開発や保険適用視野の取り組みが望まれる 山野 嘉久 聖マリアンナ医科大学脳神経内科主任教授 MMJ.April 2025;21(1):9 線維筋痛症(fibromyalgia)は、広範な疼痛、疲労、睡眠障害などを特徴とする慢性疾患であり、その管理には多角的アプローチが求められる。本論文に報告されたPROSPER-FM試験は、自己管理型のスマートフォンベースACT(acceptance and commitment therapy:アクセプタンス&コミットメント療法)プログラム「Stanza」(Swing Therapeutics社、米国)を用いて、従来の症状トラッキングアプリとの効果を比較検証した多施設無作為化対照試験である。本試験は線維筋痛症治療におけるデジタル療法の有効性と安全性を明らかにし、日本を含む臨床現場への応用可能性を示唆している。ACTは、痛みを受容しながらも個々の価値に基づいた行動変容を促進する非薬物療法として国際的に推奨されている。しかし、アクセスの制約が多く、患者の実際の利用率はわずか4.5%にとどまる(1)。 本試験では、25施設の患者590人のうち適格基準を満たした275人をデジタルACT群(140人)と症状トラッキング群(135人)に割り付け有効性の比較を行った。主要評価項目は12週時点の患者による全体的な治療改善感(PGIC)評価で、副次評価項目として痛み、疲労、睡眠などの症状スコアも検討された。その結果、デジタルACT群は、PGIC「改善以上」を71%で達成し、対照群の22%を有意に上回った( 群間差48. 4 %、P< 0. 0001)。副次評価でも機能障害、症状スコア、睡眠・疲労指標において一貫した改善が認められた(効果量:中程度~大)。本アプリは患者の心理的柔軟性を高め、従来の認知行動療法(CBT)に比べ、症状緩和と生活の質(QOL)向上に寄与する可能性が示された。 本試験は治療効果を実証したが、参加者はデジタルリテラシーが比較的高く、教育水準も平均以上であった。この点は日本の医療環境への適応に際して注意が必要である。また、12週以降の長期効果や、他の治療法(薬物療法や運動療法)との併用効果は今後の課題である。さらに、ACT特有の治療メカニズムと従来CBTとの比較研究が求められる。 日本においても、線維筋痛症患者は心理療法のアクセスに課題があり、本デジタルACTは重要な選択肢となる可能性がある。特に、遠隔地の患者にとって、治療への時間的・経済的負担を軽減できる点が評価されるであろう。将来的には、国産アプリ開発や保険適用を視野に入れた取り組みが望まれる。本試験は、線維筋痛症治療におけるデジタル療法の可能性を示す重要な一歩である。医療現場での活用が進むことで、多くの患者に新たな治療の機会を提供できるであろう。 1. Vincent A, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2013 May;65(5):786-792.
脳梗塞急性期治療 経静脈的血栓溶解療法に抗血栓療法併用の有効性示されず
脳梗塞急性期治療 経静脈的血栓溶解療法に抗血栓療法併用の有効性示されず
Adjunctive Intravenous Argatroban or Eptifibatide for Ischemic Stroke N Engl J Med. 2024 Sep 5;391(9):810-820. doi: 10.1056/NEJMoa2314779. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:血栓溶解療法は急性虚血性脳卒中の標準的治療法である。静脈内血栓溶解療法とアルガトロバン(抗凝固薬)またはエプチフィバチド(抗血小板薬)の併用療法の有効性と安全性は不明である。 方法:米国内の57施設で第3相3群間適応単盲検無作為化対照臨床試験を行った。発症後3時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性虚血性脳卒中患者を,血栓溶解療法開始後75分以内にアルガトロバン,エプチフィバチド,プラセボの静脈内投与を受ける群に割り付けた。有効性の主要アウトカムである90日後のmodified Rankin scaleスコア(範囲は0~10で、スコアが高いほど転帰が良好である)は、中央判定により評価された。安全性の主要アウトカムは無作為化後36時間以内の症候性頭蓋内出血であった。 結果:合計514例の患者がアルガトロバン群(59例)、エプチフィバチド群(227例)、プラセボ群(228例)に割り付けられた。全例に静脈内血栓溶解療法(70%にアルテプラーゼ,30%にテネクテプラーゼ)が施行され,225例(44%)に血管内血栓除去術が施行された。90日後のutility-weighted modified Rankin scaleスコアの平均(±SD)は、アルガトロバン群で5.2±3.7点、エプチフィバチド群で6.3±3.2点、プラセボ群で6.8±3.0点であった。アルガトロバンがプラセボより優れている事後確率は0.002(実用重み付け修正Rankinスケールスコアの事後平均差、-1.51±0.51)、エプチフィバチドがプラセボより優れている事後確率は0.041(事後平均差、-0.50±0.29)であった。症候性頭蓋内出血の発生率は3群で同程度であった(アルガトロバン4%、エプチフィバチド3%、プラセボ2%)。90日後の死亡率はプラセボ群(8%)よりアルガトロバン群(24%)とエプチフィバチド群(12%)で高かった。 結論発症後3時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性虚血性脳卒中患者において、アルガトロバンまたはエプチフィバチドの静脈内投与による補助療法は脳卒中後の障害を軽減せず、死亡率の上昇と関連していた。(国立神経疾患・脳卒中研究所の助成による。MOST ClinicalTrials.gov番号、NCT03735979)。 第一人者の医師による解説 原因不明だがアルガトロバン併用で 死亡率が高い結果に 上野 祐司 山梨大学大学院総合研究部医学域内科学講座神経内科学教室教授 MMJ.April 2025;21(1):10 選択的トロンビン阻害薬であるアルガトロバンは、発症48時間以内の非心原性・非ラクナ梗塞に適応のある脳梗塞治療薬である。エプチフィバチドはIIb/IIIa受容体拮抗作用を示す抗血小板薬である。今日において、経静脈的血栓溶解療法(IV-tPA)は、脳梗塞急性期の標準的な治療法として確立しているが、アルガトロバンやエプチフィバチドとの併用による効果は明らかではない。 本試験では、発症後3時間以内の急性期脳梗塞患者514人をIV-tPA投与後75分以内にアルガトロバン(59 人)、エプチフィバチド(227 人)、またはプラセボ(228人)を投与する3群に割り付けた。主要有効性評価項目は90日後の機能予後、安全性の主要評価項目は36時間以内の症候性頭蓋内出血とされた。全患者がIV-tPAを受け、225人が経皮的血栓回収術を受けた。90日後の転帰において、機能障害の程度を示すmodified Rankin Scaleに効用加重修正を加えたスコアの平均± SDは、アルガトロバン群5.2±3.7、エプチフィバチド群6.3±3.2、プラセボ群6.8±3.0であった。症候性頭蓋内出血は3群で同程度(アルガトロバン群4%、エプチフィバチド群3%、プラセボ群2%)であった。しかし、90日後の全死亡率はアルガトロバン群24 %、エプチフィバチド群12%、プラセボ群8%であった。 この結果から、IV-tPAを受けた脳梗塞急性期患者では、アルガトロバンやエプチフィバチド併用によって脳卒中後の機能障害は軽減されず、死亡率が上昇する傾向にあった。特に、アルガトロバン群に登録された最初の50人で死亡率が高く、同群へのその後の割り付けは極端に少なくなった。しかし、出血合併症などに関してアルガトロバン投与と死亡の直接的な因果関係は示されなかった。別研究でも、発症4.5時間以内の急性期脳梗塞患者に対するIV-tPA単独とIV-tPA+アルガトロバン併用が比較されたが、アルガトロバン併用による機能障害の軽減効果はなかった(1)。本試験も含めて急性期脳梗塞に対して、IV-tPAへ抗血栓療法を併用する臨床試験がいくつか行われているが、現時点では明らかな有益性のあるエビデンスは構築されていない。 一方、従来のIV-tPA(アルテプラーゼ)を改変したテネクテプラーゼの治療効果が示されており、脳梗塞急性期血栓溶解療法は新時代を迎える可能性がある。 1. Chen HS, et al. JAMA. 2023;329(8):640-50.
非心原性脳梗塞患者へのコルヒチン長期投与 血管イベント再発は低下傾向
非心原性脳梗塞患者へのコルヒチン長期投与 血管イベント再発は低下傾向
Long-term colchicine for the prevention of vascular recurrent events in non-cardioembolic stroke (CONVINCE): a randomised controlled trial Lancet. 2024 Jul 13;404(10448):125-133. doi: 10.1016/S0140-6736(24)00968-1. Epub 2024 Jun 7. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:コルヒチンによる長期抗炎症療法は冠動脈疾患の血管再発を予防した。冠動脈疾患の典型的な原因が動脈硬化であるのとは異なり、虚血性脳卒中は動脈硬化や小血管疾患など多様な機序によって引き起こされるか、原因不明であることが多い。我々は,コルヒチンの長期投与が虚血性脳卒中後の再発イベントを減少させるという仮説を検討することを目的とした。 方法:長期コルヒチン(1日0〜5mg経口投与)+ガイドラインに基づいた通常ケアと通常ケアのみを比較する無作為化並行群間非盲検エンドポイント評価試験を行った。入院中の非重症、非心臓塞栓性虚血性脳卒中または高リスク一過性脳虚血発作患者を対象とした。主要エンドポイントは、初発の致死的または非致死的な虚血性脳卒中、心筋梗塞、心停止、不安定狭心症による入院(入院病棟への入院または救急外来を受診し、24時間以上の入院[入退院時刻が不明な場合は暦日の変更]と定義)の複合とした。有意性のp値は0-048とし、運営委員会と治験責任医師が盲検化されたまま、データモニタリング委員会によって事前に規定された2つの中間解析が行われたことを考慮した。この試験はClinicalTrials.gov(NCT02898610)に登録され、終了した。 結果:3154例の患者が2016年12月19日から2022年11月21日の間に無作為に割り付けられ、最終追跡は2024年1月31日であった。COVID-19パンデミックに起因する予算制約のため、予期されたアウトカム数(367アウトカム予定)を達成する前に試験は終了した。10例の患者がデータ解析の同意を取り下げたため、3144例がintention-to-treat解析の対象となった:1569例(コルヒチンと通常治療)、1575例(通常治療のみ)。主要エンドポイントは、コルヒチンと通常治療に割り付けられた1569例中153例(9-8%)、通常治療のみに割り付けられた1575例中185例(11-7%)の338例で発生した(発生率100人年当たり3-32対3-92、ハザード比0-84;95%CI 0-68-1-05、p=0-12)。ベースライン時にはCRPに群間差はみられなかったが、コルヒチン投与群では28日後、1、2、3年後のCRPが低かった(すべての時点でp<0-05)。重篤な有害事象の発生率は両群で同程度であった。 解釈:一次intention-to-treat解析では統計学的に有意な有益性は認められなかったが、この所見はさらなる無作為化試験における抗炎症療法の根拠を支持する新たな証拠を提供するものである。 資金提供アイルランド保健研究委員会、ドイツ研究財団、ベルギーのFonds Wetenschappelijk Onderzoek Vlaanderen(フランダース研究財団)。 第一人者の医師による解説 コルヒチン群で抗炎症作用を確認 再発予防に有望、さらなる臨床試験が必要 井上 学 国立循環器病研究センター病院脳卒中集中治療科特任部長 MMJ.April 2025;21(1):11 本論文に報告されたCONVINCE試験は、非心原性脳梗塞患者に対するコルヒチンの長期投与が血管イベントの再発予防に寄与するかを検討することを目的とした無作為化対照試験(RCT)である。従来、冠動脈疾患患者においてはコルヒチンの抗炎症作用が心血管イベント再発の抑制に有効であることが示されているが、脳梗塞の再発に関しては根拠が限られていた。本試験では、軽度・中等度の非心原性脳梗塞や高リスクの一過性脳虚血発作(TIA)患者を対象に、コルヒチン群と通常治療群を比較し、再発性脳梗塞、心筋梗塞、心停止、不安定狭心症による入院の複合を主要エンドポイントとして評価した。 結果として、3,144人がITT解析対象となった(コルヒチン群1,569人、通常治療群1,575人)。主要エンドポイントはコルヒチン群では9.8%(153人)、通常治療群では11.7%(185人)に発生し、コルヒチン群でのイベント発生率は通常治療群に比べて低下する傾向はみられたものの、統計学的に有意な差は認められなかった(発生率3.32 対3.92 /100人・年;ハザード比, 0.84[95% CI,0 .68〜1.05];P=0 .12)。しかし、コルヒチン群ではC反応性蛋白(CRP)値が試験期間中一貫して通常治療群より低下しており、抗炎症作用が確認された。これにより、コルヒチンの抗炎症作用が脳 血管疾患再発予防においても有望である可能性が示唆され、今後のさらなる臨床試験が必要であることが示された。 本試験の方法論的な限界としては、予算の制約により追跡期間が短縮され、予定していたアウトカム数に達しなかった点が挙げられる。また、COVID-19の影響により、試験期間中の一部で患者登録が一時中断され、その後も登録ペースはパンデミック前の水準に回復しなかった。さらに、参加者の約95%が白人であったため、他の人種への 適用に慎重な検討が必要である。 この試験のように、従来の薬効とは異なる新たな作用が期待される薬剤は「ドラッグリポジショニング」(または「ドラッグリプロファイリング」)と呼ばれ、既存薬を本来の適応症とは異なる疾患や治療目的で再利用する試みを指している。薬剤の安全性や薬理作用がすでに確立されていることから、開発コストの削減や治療までの時間短縮が期待され、特に新たな治療法が限られている疾患領域で注目されている。日本においても、コルヒチンは入手しやすく経済的な治療薬であり、高齢者が多い脳卒中患者においても副作用が少なく安全に使用できる可能性が示されているため、地域医療や日常診療での広範な適用が期待される。今後は、冠動脈疾患と同様にアテローム性動脈硬化症を有する脳卒中患者に対しての効果を明確にするために、さらに大規模な無作為化試験が求められる。
オシメルチニブがCRT後のEGFR変異陽性NSCLCのPFSを大幅に改善
オシメルチニブがCRT後のEGFR変異陽性NSCLCのPFSを大幅に改善
Osimertinib after Chemoradiotherapy in Stage III EGFR-Mutated NSCLC N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):585-597. doi: 10.1056/NEJMoa2402614. Epub 2024 Jun 2. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:オシメルチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有する進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する推奨治療薬であり、切除されたEGFR変異NSCLCに対する術後補助療法である。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、切除不能なステージIIIのEGFR変異NSCLCにおいて予備的な有効性を示している。 方法:この第3相二重盲検プラセボ対照試験では、切除不能なEGFR変異III期NSCLCで、化学放射線療法中または化学放射線療法後に病勢進行のない患者を、オシメルチニブまたはプラセボ投与群に無作為に割り付け、病勢進行が起こるまで(盲検下独立中央審査による評価)、またはレジメンを中止した。主要エンドポイントは無増悪生存期間とし、盲検化された独立中央審査により評価した。 結果:化学放射線療法を受けた計216人の患者が、オシメルチニブ投与群(143人)とプラセボ投与群(73人)に無作為に割り付けられた。無増悪生存期間中央値はオシメルチニブ投与群で39.1ヵ月、プラセボ投与群で5.6ヵ月であり、病勢進行または死亡のハザード比は0.16(95%信頼区間[CI]、0.10~0.24、P<0.001)であった。12ヵ月時点で生存し無増悪であった患者の割合は、オシメルチニブで74%(95%CI、65~80)、プラセボで22%(95%CI、13~32)であった。中間全生存データ(成熟度、20%)では、36ヵ月全生存率はオシメルチニブ群84%(95% CI、75~89)、プラセボ群74%(95% CI、57~85)であり、死亡のハザード比は0.81(95% CI、0.42~1.56、P = 0.53)であった。グレード3以上の有害事象の発生率は、オシメルチニブ群で35%、プラセボ群で12%であった。放射線肺炎(グレードの大半は1~2)は、それぞれ48%と38%で報告された。安全性に関する新たな懸念は認められなかった。 結論切除不能なIII期のEGFR遺伝子変異NSCLC患者において、オシメルチニブ投与はプラセボ投与よりも無増悪生存期間を有意に延長した。(アストラゼネカの資金提供。LAURA ClinicalTrials.gov番号、NCT03521154)。 第一人者の医師による解説 脳転移も抑制 EGFR変異陽性III期NSCLCに対する新たな治療選択肢に 三ツ村 隆弘 虎の門病院呼吸器センター内科医長 MMJ.April 2025;21(1):12 PACIFIC試験の結果(1)により、切除不能III期非小細胞肺がん(NSCLC)に対する根治的化学放射線療法(CRT)後の抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ投与が標準治療として確立された。しかし、EGFR変異陽性例には免疫チェックポイント阻害薬の効果が限定的であることが知られている。一方、チロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブは、進行EGFR変異陽性NSCLCに対してのみならず、ADAURA試験において切除後のEGFR変異陽性NSCLCに対しても有効性が示された(2)。 本論文に報告されたLAURA試験では、EGFR変異陽性III期NSCLCに対するCRT後のオシメルチニブの効果が示された。オシメルチニブ群の無増悪生存期間(PFS)中央値は39 .1カ月で、プラセボ群の5.6カ月を大きく上回り、12カ月時点の無増悪生存率はオシメルチニブ群で74%、プラセボ群で22%であった。プラセボ群の81%が病勢進行後にオシメルチニブへクロスオーバーしている中での結果であり、オシメルチニブの早期投与が治療機会の損失を防ぐ可能性が示唆された。一方、全生存期間の中間解析では有意差はみられなかったが、打ち切り例も多く今後の追跡が必要である。新規病変発生率はオシメルチニブ群22%、プラセボ群68%であり、脳転移発生率はそれぞれ8%、29%であった。これらの結果から、オシメルチニブが脳転移抑制にも有効であることが示された。 有害事象はオシメルチニブ群の98%、プラセボ群の88%に発生したが、とくに肺毒性は気になるところである。放射線肺臓炎はそれぞれ48%、38%に発生し、このうちオシメルチニブ群では87%が治療を継続または中断後に再開できた。一方、薬剤性肺障害も含まれる間質性肺障害はオシメルチニブ群8%、プラセボ群1%であったが、実臨 床において放射線肺臓炎との鑑別が難しい場合があろう。 本試験は、オシメルチニブがEGFR変異陽性III期NSCLCに対する新たな治療選択肢であることを示している。また、オシメルチニブの重要な効果として脳転移の抑制が挙げられる。一方、今回のプラセボ群のPFSをみても、CRT単独での治癒は困難と考えられ、CRTとオシメルチニブのどちらが主治療となるかの議論が起こることが予想される。さらに、副作用対策や最適な治療戦略の構築にはさらなる臨床試験や実臨床での検討が不可欠である。 1. Antonia SJ, et al. N Engl J Med. 2017 ;377(20):1919-1929. 2. Tsuboi M, et al. N Engl J Med. 2023;389(2):137-147.
進行肺がん患者への段階的緩和ケアは 早期緩和ケアと同等で訪問回数半減
進行肺がん患者への段階的緩和ケアは 早期緩和ケアと同等で訪問回数半減
Stepped Palliative Care for Patients With Advanced Lung Cancer: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2024 Aug 13;332(6):471-481. doi: 10.1001/jama.2024.10398. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 重要性:早期の緩和ケアが転帰を改善するというエビデンスがあるにもかかわらず、緩和ケアの労働力の限界もあって広く実施されていない。 目的:進行がん患者に対して、より少ない資源で患者中心の緩和ケアを提供するための段階的ケアモデルを評価すること。 デザイン、設定、参加者:2018年2月12日~2022年12月15日に、マサチューセッツ州ボストン、ペンシルベニア州フィラデルフィア、ノースカロライナ州ダーラムの3つの学術医療センターにおいて、過去12週間以内に進行肺がんと診断された患者507例を対象に、段階的緩和ケアと早期緩和ケアの無作為化非盲検非劣性試験を実施した。 介入:介入ステップ1では、登録後4週間以内に初回緩和ケア受診を行い、その後はがん治療の変更時または入院後にのみ受診した。ステップ1では、患者は6週間ごとに生活の質(QOL;Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung [FACT-L]、範囲:0~136、スコアが高いほどQOLが良好であることを示す)を測定し、ベースラインから10ポイント以上低下した患者は、4週間ごとに緩和ケアの臨床医と面談するようにステップアップした(介入ステップ2)。早期緩和ケアに割り付けられた患者は、登録後4週間ごとに緩和ケアを受けた。 主要アウトカムと評価基準24週目のFACT-Lにおける患者報告QOLに対する段階的緩和ケアと早期緩和ケアの効果の非劣性(マージン=-4.5)。 結果:サンプル(n = 507)には、ほとんどが進行非小細胞肺がん患者(78.3%;平均年齢66.5歳;女性51.4%;白人84.6%)が含まれていた。第24週までの緩和ケアの平均受診回数は、段階的緩和ケアでは2.4回、早期緩和ケアでは4.7回であった(調整平均差、-2.3;P < 0.001)。24週目における段階的緩和ケア群のFACT-Lスコアは、早期緩和ケアを受けた群のスコアに対して非劣性であった(調整後FACT-L平均スコア、それぞれ100.6 vs 97.8;差、2.9;1側95%信頼下限、-0.1;非劣性についてP < 0.001)。終末期ケアのコミュニケーション率も群間で非劣性であったが、ホスピス滞在日数については非劣性が示されなかった(調整平均、段階的緩和ケア群19.5 vs 早期緩和ケア群34.6;P = 0.91)。 結論と意義:患者のがん軌跡の重要な時点でのみ緩和ケアの受診を行い、QOLの低下をより集中的な緩和ケア受診のきっかけとする段階的ケアモデルは、患者のQOLに対する有益性を低下させることなく、緩和ケアの受診回数を減らす結果となった。段階的緩和ケアはホスピス滞在日数の短縮と関連していたが、患者報告アウトカムを向上させるための早期緩和ケア提供のための、よりスケーラブルな方法である。 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov ID:NCT03337399。 第一人者の医師による解説 段階的緩和ケアは限られたリソース環境でのQOL維持に有用 運用面では課題も 副島 研造 山梨大学大学院総合研究部医学域内科学講座呼吸器内科学教室教授 MMJ.April 2025;21(1):13 早期緩和ケアが、さまざまな進行がん患者の生活の質(QOL)や終末期ケアの質を向上させ、肺がんにおいては生存まで改善することが報告されている(1)。これらの結果を受け、10年以上前から進行がん患者に対して、診断時または余命が限られると見積もられる段階で、専門訓練を受けた臨床医による緩和ケアを提供することがASCOやNCCNのガイドラインでも推奨されている(2),(3) 。しかし緩和ケアの人材不足やリソースの限界により広く普及していないのが現状である。 本論文の著者らは段階的緩和ケア介入モデルを開発し、新規進行肺がん患者を対象に、段階的緩和ケアと早期緩和ケアを比較する無作為化非盲検非劣性試験を米国の3施設で実施した。早期緩和ケア群では4 週間ごとの緩和ケア訪問を受け、入院中も緩和ケアチームによる診療を受けた。一方、段階的緩和ケア群では登録後4 週間以内に初回訪問を行い、その後は治療の変更または入院時にのみ訪問が予定され、FACT-Lスコアがベースラインから10点以上低下した場合は、4週間ごとに訪問する「第2段階」に移行した。その結果、主要評価項目である24週目のFACT-Lスコアにおいて、段階的緩和ケア群は早期緩和ケア群に対して非劣性を示した。段階的緩和ケア群のうち24 週目までに26 .4%、48週目までに36.4%が第2段階に移行した。副次評価項目の24週目までの緩和ケア訪問の平均回数は、段階的緩和ケア群が2 .4回と早期緩和ケア群の4.7回に比べ有意に少なかった。一方、終末期ケアに関する話し合いの頻度に関して段階的緩和ケア群は早期緩和ケア群に対して非劣性であったが(30.4% 対 33.0%)、ホスピス滞在日数は段階的緩和ケア群が短かった(19.5日 対 34.6日)。 がん患者の経過において重要なタイミングでのみ緩和ケア訪問を行い、QOLの低下をきっかけにより集中的な緩和ケアを提供する段階的ケアモデルは、QOLに対する利益を損なうことなく、緩和ケア訪問の回数を減らすことが可能であった。このモデルは、少ない緩和ケア資源を使用して早期緩和ケアを提供する手法として有望だが、治療の変更や入院に関する電子カルテの監視、および患者報告アウトカムの頻繁な実施が必要な点は課題で、専門の緩和ケア人材が少ない日本においては人材育成も大きな課題である。今後、分散化臨床試験(decentralized clinical trial;DCT)の普及により、電子カルテからの自動クエリの開発や、標準的な患者報告アウトカム測定のより広範な実施等が進むことに期待したい。 1. Temel JS, et al. N Engl J Med. 2010;363(8):733-742. 2. Smith TJ, et al. J Clin Oncol. 2012;30(8): 880-887. 3. Levy MH, et al. J Natl Compr Canc Netw. 2014;12(10):1379-1388.
対話型テキストメッセージは 青少年の電子たばこ使用中止率を向上
対話型テキストメッセージは 青少年の電子たばこ使用中止率を向上
A Vaping Cessation Text Message Program for Adolescent E-Cigarette Users: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2024 Sep 3;332(9):713-721. doi: 10.1001/jama.2024.11057. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 重要性:電子タバコは青少年が最もよく使用するタバコ製品である。10代の若者の間でニコチン暴露の害が知られているにもかかわらず、経験的に検証されたベイプによる禁煙介入はない。 目的:青少年におけるニコチンベーピング中止のためのテキストメッセージプログラムの有効性を、評価のみの対照と比較すること。 デザイン、設定、参加者:2021年10月1日から2023年10月18日まで、無作為化から1ヵ月後と7ヵ月後にフォローアップを行う並行2群間二重盲検個別無作為化臨床試験を実施した。参加者はソーシャルメディア広告で募集し、介入はテキストメッセージで行い、評価はオンラインまたは電話で行った。対象となったのは、13~17歳の米国在住者で、過去30日間の電子タバコの使用を報告し、30日以内に禁煙することに関心があり、有効なテキストメッセージプランのある携帯電話を所有している者であった。研究の保持を最適化するために、すべての参加者は、電子タバコの使用に関するテキストメッセージを介して毎月評価を受けた。 介入:評価のみのコントロール(n = 744)は、研究保持のテキストメッセージのみを受信した。介入参加者(n = 759)はまた、認知的および行動的対処スキルトレーニングと社会的支援を提供する、電子タバコをやめるための自動化されたインタラクティブなテキストメッセージプログラムを受けた。 主要アウトカムと測定:主要アウトカムは、intention-to-treatとして分析された7ヵ月時点の自己報告による30日間の点有病率でのベイプ禁煙であり、欠測はベイプ禁煙としてコード化された。 結果:無作為化されたn = 1503人の青年の平均年齢は16.4歳(SD、0.8)であった。サンプルは、女性50.6%、男性42.1%、非バイナリー/その他7.4%;黒人/アフリカ系アメリカ人10.2%、白人62.6%、多民族18.5%、その他の人種8.7%;ヒスパニック16.2%;性的マイノリティ42.5%;76.2%が起床後30分以内にベイプを行っていた。7ヵ月後の追跡調査率は70.8%であった。点有病断薬率は、介入参加者で37.8%(95%CI、34.4%-41.3%)、対照参加者で28.0%(95%CI、24.9%-31.3%)であった(相対リスク、1.35[95%CI、1.17-1.57];P<0.001)。治療と結果の関係を緩和したベースライン変数はなかった。VAPEをやめた青年が可燃性タバコ製品に移行したという証拠はなかった。 結論と意義:ソーシャル・メディア・チャンネルを通じて募集した青少年において、テーラーメードの双方向テキストメッセージ介入により、自己申告によるVAPE禁煙率が上昇した。 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov ID:NCT04919590。 第一人者の医師による解説 デジタルネイティブ世代の臨床研究 ソーシャルメディアやテキストメッセージアプリ活用の有用性を示す論文 菊地 利明 新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野教授 MMJ.April 2025;21(1):14 電子たばこの使用は米国の青少年の間で深刻な健康問題となっており、2023年の米国では高校生の10%、中学生の4.6%が電子たばこを使用している(1)。そこで、たばこ使用防止と禁煙支援を目的に設立された非営利の公衆衛生団体であるTruth Initiativeは、13〜17歳の電子たばこ使用者1,503人を対象に無作為化二重盲検比較試験を行った。対 象者はソーシャルメディアを通じて募集され、介入群には、コーピングスキル(電子たばこの使用欲求や誘惑に対処する実践的方法)のトレーニングや、認知行動療法に基づく自動化された対話型のテキストメッセージプログラムが提供された。このテキストメッセージプログラムは、“TIPS(こつ)”、“FEELS(気分)”、“STRESS(ストレス)”といったキーワードを被験者が送信すると、それに対応した支援メッセージが自動的に送られる仕組みになっていた。一方、対照群には、研究継続のためのテキストメッセージ(毎月の電子たばこ使用状況の確認)のみを送信した。 その結果、主要評価項目である7カ月後の30日間禁煙率は介入群37.8%、対照群28.0%となり、介入群で有意に高い禁煙率が示された(相対リスク,1.35;95%信頼区間, 1.17〜1.57)。なお、この結果を理解する上で重要な参加者の背景としては、平均年齢は16.4歳と若年であること、76.2%が起床後30分以内に電子たばこを使用するような依存度であること、87.3%が過去1年間に禁煙を試みるほど禁煙に前向きであること、そして性的マイノリティ(LGBQ+)の割合が42.5%と一般集団に比べ高いことなどが挙げられる。 また、本研究には以下の方法論的限界も存在する:①禁煙の評価が自己申告のみで行われ、生化学的な検証が実施されていない、②介入群ではテキストメッセージをやりとりする回数が多くなり、社会的に望ましいと考えられる方向に回答が歪められや すい(社会的望ましさバイアス)、③禁煙意思のある参加者のみを対象としている。 本研究の成果をそのまま日本の中高校生にも一般化できるのかはわからないが、少なくとも生まれた時からスマートフォンが当たり前のデジタルネイティブ世代を対象とした臨床研究では、ソーシャルメディアやテキストメッセージアプリの活用がきわめて有用であることを示す論文である。 1. Birdsey J, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023;72(44):1173-1182.
セマグルチド注に2型糖尿病合併CKDの進行抑制効果
セマグルチド注に2型糖尿病合併CKDの進行抑制効果
Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes N Engl J Med. 2024 Jul 11;391(2):109-121. doi: 10.1056/NEJMoa2403347. Epub 2024 May 24. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:2型糖尿病と慢性腎臓病の患者は、腎不全、心血管イベント、死亡のリスクが高い。セマグルチドによる治療がこれらのリスクを軽減するかどうかは不明である。 方法:2型糖尿病と慢性腎臓病(推定糸球体濾過量[eGFR]が1.体表面積73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比[アルブミンはミリグラム、クレアチニンはグラムで測定]が300以上5000未満、またはeGFRが1.73m2あたり毎分25~50ml、尿中アルブミン/クレアチニン比が100以上5000未満)患者を、セマグルチド1.0mgを週1回皮下投与する群とプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付けた。主要アウトカムは主要腎疾患イベントとし、腎不全の発症(透析、移植、またはeGFRが1.73m2あたり毎分15ml未満)、ベースラインからのeGFRの少なくとも50%低下、または腎臓関連または心血管系の原因による死亡の複合とした。事前に規定された確認のための副次的アウトカムは階層的に検証された。 結果:無作為割付けを受けた3533人の参加者(セマグルチド群1767人、プラセボ群1766人)の追跡期間中央値は3.4年で、事前に規定された中間解析で早期の試験中止が推奨された。セマグルチド群ではプラセボ群に比して一次アウトカムイベントのリスクが24%低かった(一次イベント331 vs. 410;ハザード比0.76;95%信頼区間[CI]、0.66~0.88;P = 0.0003)。主要転帰の腎臓に特異的な構成要素の複合(ハザード比、0.79;95%CI、0.66~0.94)および心血管系の原因による死亡(ハザード比、0.71;95%CI、0.56~0.89)についても結果は同様であった。すべての確認副次的アウトカムの結果はセマグルチドに有利であった:平均年間eGFR勾配はセマグルチド群で1.73m2あたり1分間に1.16mlと緩やかであった(減少が緩やかであったことを示す)。001)、主要心血管系イベントのリスクは18%低く(ハザード比、0.82;95%CI、0.68〜0.98;P = 0.029)、あらゆる原因による死亡リスクは20%低かった(ハザード比、0.80;95%CI、0.67〜0.95、P = 0.01)。重篤な有害事象はセマグルチド群でプラセボ群より低い割合で報告された(49.6% vs 53.8%)。 結論セマグルチドは、2型糖尿病と慢性腎臓病を有する患者において、臨床的に重要な腎臓の転帰と心血管系の原因による死亡のリスクを減少させた。(FLOW ClinicalTrials.gov番号、NCT03819153)。 第一人者の医師による解説 FLOW試験:日本人256人が参加 リスクに応じたセマグルチド選択のエビデンスが追加 森 保道 虎の門病院内分泌代謝科部長 MMJ.April 2025;21(1):15 2 型糖尿病(DM)の長期健康障害として心血管病の罹病率上昇と慢性腎臓病(CKD)悪化による末期腎不全・透析導入は、生命予後のみならず生活の質を低下させる点からも重要な課題となっている。GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは2型DMに対して経口剤、また2型DM・肥満症に対して注射剤が上市されている。セマグルチド注の2型DMにおける心血管リスクへの長期的影響を検討した無作為化プラセボ対照試験(RCT)のSUSTAIN6試験では、主要複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中の初回発現)の解析から心血管病の発症抑制効果が確認された(1)。また副次評価項目である腎症の新規発現・悪化はセマグルチド群で有意に減少し、腎症抑制効果も期待される結果であったが、主には顕性アルブミン尿の発症が減少し、腎機能悪化は減少していなかった点から腎症抑制効果の詳細の解明が待たれていた。 今回報告されたFLOW試験は、2型DMに合併するCKDの進展予防効果等を検証することを目的に実施されたRCTである。対象患者はセマグルチド注1.0mg/週群とプラセボ群に分けられ、SGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は両群ともに併用可能とされた。注目すべきは、副次評価項目の1つにeGFR slope(糸球体濾過量の経年的変化)の評価が加えられた点である。主要評価項目は主要腎疾患イベント(腎不全、eGFR 50%以上の持続的な低下、腎関連死または心血管死の複合)とされ、2023年10月の初回中間解析で2群間のイベント発生率の差が明確であったため早期試験中止が勧告された。観察期間の中間値は3.4年間であり、セマグルチド群では主要な腎疾患イベントのハザード比が0 .76と有意に低かった。また副次評価項目のeGFR slope(mL/分/1.73m2 /年)の平均は、セマグルチド群 −2. 19、プラセボ群−3.36とセマグルチド群で腎機能低下が有意に緩徐であった。さらにセマグルチド群において主要心血管イベントのリスクは18%、全死亡リスクは20%低かったことから、セマグルチド注の治療は2型DMに合併するCKDの進行を抑制し、心血管・死亡リスクの低下にも有用であることが示された。 米国では本試験に基づき2025年1月にセマグルチド注を2型DM合併CKD患者における腎疾患の悪化、腎不全、そして心血管死のリスク抑制を目的とする薬剤として適応追加が承認された。日本からも本試験に256人(全体の7.2%)の患者が参加しており、アジア人種での主要評価項目のハザード比は0.86 (95%CI, 0.64〜1.14)であった。個々の患者のリスクに応じて、セマグルチドを選択するエビデンスがまた1つ加わったと考えられる。 1.Marso SP, et al. N Engl J Med. 2016;375(19):1834-1844.
慢性投与中のRAS抑制薬を非心臓系周術期に中止する短期的なメリットは見られない
慢性投与中のRAS抑制薬を非心臓系周術期に中止する短期的なメリットは見られない
Continuation vs Discontinuation of Renin-Angiotensin System Inhibitors Before Major Noncardiac Surgery: The Stop-or-Not Randomized Clinical Trial JAMA. 2024 Sep 24;332(12):970-978. doi: 10.1001/jama.2024.17123. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 重要:手術前に、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RASI)(アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬)を服用している患者を管理する最良の戦略は不明である。エビデンスの欠如が相反するガイドラインの原因となっている。 目的:非心臓大手術前のRASIの継続戦略と中止戦略のどちらが術後28日目の合併症を減少させるかを評価する。 デザイン、設定、参加者フランスの40病院で2018年1月~2023年4月の間に主要非心臓手術を受ける予定の、少なくとも3ヵ月間RASIによる治療を受けていた患者を対象とした無作為化臨床試験。 介入:患者を、手術当日までRASIの使用を継続する群(n=1107)と、手術48時間前にRASIの使用を中止する群(すなわち、手術3日前に最終投与を行う群)(n=1115)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムと評価基準主要転帰は全死亡と術後28日以内の主要術後合併症の複合であった。主な副次的転帰は、手術中の低血圧、急性腎障害、術後臓器不全、術後28日間の入院期間と集中治療室滞在期間であった。 結果:2222例の患者(平均年齢67歳[SD、10歳]、65%が男性)のうち、ベースライン時に46%がアンジオテンシン変換酵素阻害薬による治療を受けており、54%がアンジオテンシン受容体拮抗薬による治療を受けていた。全死亡および術後主要合併症の発生率は、RASI中止群で22%(1115例中245例)、RASI継続群で22%(1107例中247例)であった(リスク比、1.02[95%CI、0.87-1.19];P = 0.85)。手術中の低血圧のエピソードは、RASI中止群では41%、RASI継続群では54%にみられた(リスク比、1.31[95%CI、1.19-1.44])。その他の試験成績に差はみられなかった。 結論と意義:心臓以外の大手術を受けた患者において、手術前のRASIの継続戦略は中止戦略よりも術後合併症の発生率が高いこととは関連していなかった。 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov ID:NCT03374449。 第一人者の医師による解説 非安定期におけるRAS抑制の判断 問題は腎機能だが身体全体や生活環境の把握も必要 菅野 義彦 東京医科大学腎臓内科学分野主任教授 MMJ.April 2025;21(1):17 レニン-アンジオテンシン系(RAS)抑制薬の慢性投与は多くのエビデンスによってその有用性が確立しているといってよいが、高齢化に伴い発生するイベントの際に現場ではその副作用発生の回避が問題になる。術前に手術中の低血圧やそれに伴う合併症を避けるために長期内服していたRAS抑制薬を中止するという考え方を評価するエビデンスは少なかった。本論文は、非心臓系の手術3日前にRAS抑制薬を中止するか継続するかで各群1,000人程度に割り付け、術後28日以内の全死亡・主要術後合併症を主要評価項目として比較したフランスの無作為化対照試験(Stop-or-Not試験)の報告である。術後28日以内の予後調査ではほとんどのアウトカムに有意差を認めなかった。個々の臨床医がRAS抑制薬の中止または継続を判断する際にこの試験結果は大きな影響を与えないという解釈もできるが、英国で行われた同様の試験では中止群で48 時間以内の高血圧性合併症が増加していた(1)。いずれにせよあくまで周術期の合併症やトラブル発生が大きく変わらなかったということである。しかしRAS抑制薬を慢性投与する目的は多くの場合、長期予後に対する期待である。ならば再開すればよいではないか、といかない場合があるのがRAS抑制薬である。問題になるのは腎機能で、高齢者では加齢や高血圧、糖尿病の影響などで潜在的に(本人や医療者も気づかないうちに)腎機能が低下していることが多い。ガイドラインの提唱するRAS抑制薬の慎重投与はわが国では慢性腎臓病(CKD)ステージG4(GFR 30未満)であり、これは25万人程度と見込まれているが、実際に注意が必要なステージG3b(GFR 30〜44)は150万人程度となり、RAS抑制薬の再開には勇気と慎重さが必要になる。Stop-or-Not試験の対象は年齢中央値68歳、血清クレアチニン中央値が0.9mg/dL、糖尿病、CKDの既往はいずれも10%程度であるため再開をためらうことはないと思うが、われわれが自分の患者の決断材料とする際には、中止して失われるRAS抑制薬の長期的な効果についても考慮が必要といえる。腎不全が進行した際に問題になる高カリウム血症などを回避するためにRAS抑制薬を中止するか否かのメタアナリシスでは中止による死亡リスクの上昇が示されている(2)。短期のリスクと長期のベネフィットを選択するのは困難かもしれないが、個々の患者の状態を判断するには一つの臓器を考えるのではなく、身体全体、場合によっては生活環境なども総合して把握する必要があることをこれらの研究から学びたい。 1. Ackland GL, et al. Eur Heart J. 2024;45(13):1146-1155. 2. Nakayama T, et al. Hypertens Res. 2023;46(6):1525-1535.
人工心肺使用心臓手術患者へのアミノ酸製剤静注で 急性腎障害リスクを低減
人工心肺使用心臓手術患者へのアミノ酸製剤静注で 急性腎障害リスクを低減
A Randomized Trial of Intravenous Amino Acids for Kidney Protection N Engl J Med. 2024 Aug 22;391(8):687-698. doi: 10.1056/NEJMoa2403769. Epub 2024 Jun 12. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:急性腎障害(AKI)は心臓手術に伴う重篤かつ一般的な合併症であり、腎灌流の低下はその重要な一因である。アミノ酸の静脈内投与は腎灌流を増加させ、腎機能予備能を回復させる。しかし、心臓手術後のAKIの発生を抑制するアミノ酸の有効性は不明である。 方法:多国籍二重盲検試験において、心肺バイパスを用いた心臓手術を受ける予定の成人患者を無作為に割り付け、1日あたり理想体重1kgあたり2gのアミノ酸をバランスよく混合したものを静脈内投与する群と、プラセボ(リンゲル液)を最大3日間投与する群のいずれかに割り付けた。 主要アウトカムはAKIの発生であった:Improving Global Outcomesのクレアチニン基準に従って定義された。副次的アウトカムは、AKIの重症度、腎代替療法の使用と期間、全死因による30日死亡率などであった。 結果:3ヵ国22施設で3511例の患者をリクルートし、1759例をアミノ酸群に、1752例をプラセボ群に割り付けた。AKIはアミノ酸群で474例(26.9%)、プラセボ群で555例(31.7%)に発生した(相対リスク、0.85;95%信頼区間[CI]、0.77~0.94;P = 0.002)。ステージ3のAKIはそれぞれ29例(1.6%)と52例(3.0%)に発生した(相対リスク、0.56;95%CI、0.35~0.87)。腎代替療法はアミノ酸群で24例(1.4%)、プラセボ群で33例(1.9%)に行われた。その他の副次的転帰や有害事象については、両群間に実質的な差はみられなかった。 結論心臓手術を受けた成人患者において、アミノ酸の注入はAKIの発生を減少させた。(イタリア保健省の助成による。PROTECTION ClinicalTrials.gov番号、NCT03709264)。 第一人者の医師による解説 実臨床でのアミノ酸製剤の腎保護効果 アミノ酸による腎血流増加療法の可能性 岡田 啓 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・生活習慣病予防講座特任講師 MMJ.April 2025;21(1):18 急性腎障害(AKI)は、約20年前からその重要性が認識され始めた病態であり、依然として高い死亡率を伴う(1)。AKIは腎代替療法の必要性を増すだけでなく、慢性腎臓病(CKD)への進行や死亡リスクの上昇にも寄与する。心臓手術の周術期ではAKI発症リスクが高く、特に人工心肺を用いた心臓手術で約4割が発症するという報告がある。腎へのアミノ酸負荷が腎臓の機能的予備能を引き出し、AKIを減少させる可能性は示唆されていたが、無作為化対照試験(RCT)の主要アウトカムとしてAKI発症リスクを抑制させることを示したエビデンスは存在しなかった(2)。 本研究(PROTECTION試験)は、人工心肺を用いた心臓手術患者を対象とした多施設前向き二重盲検RCTである。推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73 m2 未満の患者や腎代替療法を受けているCKD患者は除外された。介入群には手術室入室時から理想体重1 kg当たり1日2 g(最大100 g/日)のアミノ酸製剤を投与し、対照群には同速度でリンゲル液を投与した。投与は開始後72時間経過、集中治療室退室、腎代替療法開始、または死亡のいずれか早い時点で終了した。使用されたアミノ酸輸液は、日本の製剤と配合比率は類似しており、腎不全用製剤ほど分枝鎖アミノ酸の比率は高くないものであった。主要アウトカムは術後1週間以内のKDIGO基準に基づく(クレアチニン値による)ステージ1以上のAKI発症、副次アウトカムはAKIの重症度、入院中の腎代替療法や機械的換気の日数、入院中または割り付け後30、90、180日までの全死亡率と有害事象であった。 最終的に3,511人(対照群1,752人、アミノ酸群1,759 人)が試験に含まれた。全体のAKI発症率は約3割で、対照群31.7%に対し、アミノ酸群26.9%であり、相対リスクは0 .85(95%信頼区間[CI], 0.77〜0.94)と有意に低かった。特にステージ3のAKIに限定すると、相対リスクは0.56(95% CI, 0.35〜0.87)と、重症AKI発症も抑制された。一方、その他の副次アウトカムや有害事象には有意な差は認められなかった。 本研究の結論は、人工心肺を使用する心臓手術患者において、周術期の十分なアミノ酸製剤投与がAKI予防に寄与する可能性を示すものである。死亡率低減の効果や最適な投与量は今後の研究課題であるものの、本研究は腎保護におけるアミノ酸の可能性を示す重要な一歩といえる。なお、進行したCKDの有無にかかわらず効果が認められたこともサブ解析で報告されている(3)。 1. 土井研人. 日内会誌. 2021; 110(5):905-911. 2. Ronco C, et al. Intensive Care Med. 2017;43(6):917-920. 3. Baiardo Redaelli M, et al. Anesthesiology. 2024 Dec 19. doi: 10.1097/ ALN.0000000000005336.
前立腺生検はMRI標的生検のみで必要十分 「臨床的に意義のないがん」の診断を半数以上排除
前立腺生検はMRI標的生検のみで必要十分 「臨床的に意義のないがん」の診断を半数以上排除
Results after Four Years of Screening for Prostate Cancer with PSA and MRI N Engl J Med. 2024 Sep 26;391(12):1083-1095. doi: 10.1056/NEJMoa2406050. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:磁気共鳴画像法(MRI)による前立腺がんスクリーニングの有効性と安全性に関するデータは、追跡スクリーニングの研究から必要とされている。 方法:2015年に開始した集団ベースの試験において、50~60歳の男性に前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングを受けるよう呼びかけた。PSA値が3ng/ml以上の男性は前立腺のMRIを受けた。男性は、系統的生検を受け、MRIで疑わしい病変が見つかった場合は標的生検を受ける系統的生検群と、MRI標的生検のみを受けるMRI標的生検群にランダムに割り付けられた。各診察時に、PSA値に応じて2年後、4年後、8年後の再検査を受けた。主要転帰は臨床的に重要でない(国際泌尿器科病理学会[ISUP]悪性度1)前立腺がんの発見であった;臨床的に重要な(ISUP悪性度2以上)がんの発見は副次的転帰であり、臨床的に進行または高リスク(転移性またはISUP悪性度4または5)がんの発見も評価された。 結果:追跡期間中央値3.9年(各群で約26,000人年)後、MRI標的生検群では6575人中185人(2.8%)に、系統的生検群では6578人中298人(4.5%)に前立腺がんが検出された。系統的生検群と比較してMRI標的生検群で臨床的に重要でないがんが検出される相対リスクは0.43(95%信頼区間[CI]、0.32~0.57;P<0.001)であり、スクリーニングの反復実施時には初回実施時よりも低かった(相対リスク、0.25 vs 0.49);臨床的に重要な前立腺がんの診断の相対リスクは0.84(95%CI、0.66~1.07)であった。発見された進行がんまたは高リスクがん(スクリーニングまたは間隔がんとして)の数は、MRI標的生検群で15例、系統的生検群で23例であった(相対リスク、0.65;95%CI、0.34~1.24)。重篤な有害事象は5件発生した(系統的生検群3件、MRI標的生検群2件)。 結論:この試験では、MRIの結果が陰性であった患者において生検を省略することにより、臨床的に重要でない前立腺がんの診断の半数以上が排除され、スクリーニング時またはインターバルがんとして診断された治癒不能がんの関連リスクは非常に低かった。(Karin and Christer Johansson財団およびその他の資金提供;GÖTEBORG-2 ISRCTN登録番号、ISRCTN94604465)。 第一人者の医師による解説 MRI標的生検は日本では先進的だが 欧米のガイドライン記載の注視が必要 山本 新吾 兵庫医科大学泌尿器科学教室主任教授 MMJ.April 2025;21(1):19 一般に健診で行われている前立腺がんの前立腺特異抗原(PSA)検査では、4 ng/mL以上で泌尿器科専門医に紹介されることが多い。しかし、PSA10 ng/mL未満(グレイゾーン)では「臨床的に意義のない(治療の必要のない)がん(insignificant cancer)」を検出しているとの指摘もある。日本の前立腺がん検診ガイドラインでも、超音波ガイド下系統的生検(通常は12箇所生検)に比較し、MRIで異常が検出されている部位を正確に狙って組織を採取できるMRI標的生検のほうが「臨床的に意義のあるがん」の検出率は高く、「臨床的に意義のないがん」の検出率は低いことから、特に初回生検が陰性であった場合に行われる再生検では、MRI標的生検の施行が推奨されている(1) 。ただし、診断コスト、過剰治療の削減効果を包括した費用効率についてはさらなる検証が必要である、ともされている(1)。 本論文は前立腺がん検診アルゴリズムの有用性を検討することを目的としたGÖTEBORG-2試験からの報告であり、本試験ではスウェーデンの50〜60歳の男性13,153人がPSAスクリーニングを受け、PSA 3 ng/mL以上で前立腺MRIが施行され、系統的生検群(PSA 3 ng/mL以上の男性はすべて系統的生検を受け、さらにMRIで異常がある場合は同時にMRI標的生検も受ける)とMRI標的生検群(MRI標的生検のみ)に無作為に割り付けられた。本試験の参加者はPSA値に応じて2、4、または8年後に再スクリーニングを受けた。中央値3 .9年の追跡調査の後、系統的生検群では6 ,578人中298人(4.5%)に、MRI標的生検群では6,575人中185人(2.8%)に前立腺がんが検出された。「臨床的に意義のないがん(ISUP grades 1:グリソンスコア3+3)」の検出率については、系統的生検群と比較したMRI標的生検群の相対リスク(RR)は0.43(95%信頼区間[CI], 0.32 ~ 0.57;P<0.001)であり、再スクリーニングではさらに相対リスクは低くなり、MRIで異常が指摘された患者のみに対して生検を行うことで、「臨床的に意義のないがん」の診断が半数以上排除された。一方、「臨床的に意義のあるがん(ISUP grades 2 〜 5)」の診断の相対リスクは0.84(95% CI, 0.66 ~ 1.07)と実質的に差がなく、進行がんまたは高リスクがんの検出件数は、系統的生検群で23件、MRI標的生検群で15件(RR, 0.65;95% CI, 0.34 ~ 1.24)で、進行がんまたは高リスクがんが見逃されるリスクも高くならなかった、と結論づけられた。 日本では、「MRIで異常が指摘された患者のみに対してMRI標的生検を行う」ことはまだ先進的であると捉えられているが、欧米のガイドラインが今後どのような記載に変わっていくかも注意深く見守っていく必要がある。 1. 日本泌尿器科学会(編). 前立腺がん検診ガイドライン2018 年版
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