ライブラリー 
睡眠時無呼吸症候群の診療のポイント(2)
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」等の内容を踏まえながら、SASの病態・検査・治療について概略する。
■SASの病態1.SASの定義SASは、睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返される疾患である。通常、いびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と、呼吸努力を伴わない中枢性睡眠時無呼吸(CSA)に分けられるが、ここでは圧倒的に患者数の多いOSAについて解説する。
2. 原因OSAの主な原因は、上気道の閉塞や狭窄である。肥満や特定の生活習慣があると、気道閉塞を引き起こしやすくなる(後述)。また、顎が小さい、扁桃肥大、鼻中隔彎曲などの解剖学的要因も関与する6)
3. 健康リスクOSAの重大な問題は、睡眠の質の低下にとどまらず、全身の健康リスクを著しく増大させる点にある。米国の研究では、SAS患者は高血圧の発症リスクが約2倍、虚血性心疾患のリスクが約3倍、脳血管疾患のリスクが3~5倍に上昇すると報告されている 7)。さらに、OSA は 2 型糖尿病発症のリスク因子であることや 8)、睡眠時間中に心原性突然死をきたすリスクになると指摘されている9) 。
■SASの検査と診断SASの検査には、腕時計タイプの機械を用いる簡易検査と、さらに詳しく調べるための終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)がある。
1. SAS簡易検査簡易検査は、睡眠中のSpO2を測定する検査で、機器をレンタルして自宅で検査することもできる。後述するPSG検査は専門施設でないと実施できないが、簡易検査は一般診療所でも実施可能で、最近ではSAS簡易検査装置を自宅に直接届けるサービスが広がったこともあり、実施数が増加している。
2. PSG検査PSG検査は、睡眠中の呼吸状態や睡眠の質を詳細に調べるため、入院が必要になる。いびきやSpO2の他、脳波、眼球運動、心電図、筋電図、呼吸曲線などを一晩にわたって測定・記録し、無呼吸のタイプや重症度を評価する。解析は専門の医師や臨床検査技師が行う。
3. 診断のアルゴリズムSAS診断のアルゴリズムは以下の通りである 10)。なお、診断に用いられるAHI(無呼吸低呼吸指数)とは呼吸イベント(無呼吸および低呼吸)の総数を 総睡眠時間(TST) で 割ったものである。無呼吸数、低呼吸数それぞれについて指数を算出したものを、それぞれ無呼吸指数 (AI)、低呼吸指数(HI)とよぶ 11)。
■SASの治療1. AHIによる重症度分類SAS治療においては、AHI指数を用いて、以下のように重症度が分類される 12)。
・軽症:AHI 5~15未満・中等症:AHI 15~30未満・重症:AHI 30以上
軽症のSASであれば、睡眠時のポジショニング、体重コントロール、マウスピースの使用、生活習慣の改善などを指導する。中等症以上であれば、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が選択される。AHIが簡易検査で40回/時以上、PSG検査で20回/時以上であれば保険適用となる13) 。
2. CPAP療法CPAPは、睡眠中に鼻マスクを装着し、適切な圧力の空気を気道に送り込むことで気道の閉塞を防ぎ、無呼吸や低呼吸の発生を抑える治療法である。CPAP患者へのアンケート(86名)によると、何らかの自覚症状の改善をみたのは92%にのぼっていた14) 。
合併症に対するCPAPの効果としては、OSA患者の血圧が低下し、減量や高圧薬に上乗せの高圧効果が期待できること、適切な使用状況が確保できていれば、心血管イベントを抑制する可能性がある15) 。
近年、CPAP装置は小型化・軽量化が進んでおり、旅行先などへも容易に持ち運びできるようになった。また、無呼吸のタイプを検出して適切な圧力をかける機能や、加湿調整機能、静音設計など、より快適に治療を継続できる工夫が施されたモデルも登場している。
3. CPAP療法に関する診療報酬と算定要件CPAP療法に関連する診療報酬は以下の通りである16) 。
① 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料:月1回、外来での指導管理に対して算定可能② 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算:CPAP装置の貸与に対する加算で、3カ月に3回まで算定可能③ 在宅持続陽圧呼吸療法材料加算:CPAP療法に必要な消耗品に対する加算で、3カ月に3回まで算定可能
これらを算定するためには、患者がCPAP装置を継続的に使用していることや、医療機関が適切な指導管理を行っていることが条件となる。また、IT機器を用いた診療(オンライン診療)でも、一定の条件下で指導管理料を算定できる。
■引用文献: 6)帝人ヘルスケア株式会社.“なぜ呼吸が止まるのか?”.睡眠時無呼吸なおそう.comhttps://659naoso.com/sas/reason7)岩間義孝. 睡眠時無呼吸症候群:循環器系・代謝内分泌系への影響.順天堂医学.2007;53: 278-287.8) 7. Reutrakul S, Mokhlesi B. Obstructive Sleep Apnea and Diabetes: A State of the Art Review. Chest 2017; 152: 1070- 1086.9) Gami AS, Howard DE, Olson EJ, et al. Day-night pattern of sudden death in obstructive sleep apnea. N Engl J Med 2005; 352: 85 1206-1214.10)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; :ⅶ11)一般社団法人日本循環器学会.2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン.2023:16.12)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; 2-3.13)日本医科大学千葉北総病院. “陽圧呼吸療法(CPAP治療)”.https://www.nms.ac.jp/hokuso-h/section/cardiovascular/arrhythmia_copy/catheter_copy.html14)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; ⅶ.15)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; xvii-xviii.16)帝人ファーマ株式会社・帝人ヘルスケア株式会社.”令和6年度診療報酬 在宅酸素療法、在宅人工呼吸、在宅持続陽圧呼吸療法、在宅ハイフローセラピー等に関する診療報酬について”.TEIJIN Medical Webhttps://medical.teijin-pharma.co.jp/medicalsystem/ms11.html