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血小板増多で考えられる疾患と原因-見逃さないためのポイントと紹介の目安
血小板増多で考えられる疾患と原因-見逃さないためのポイントと紹介の目安
外来診療で日常的に行う血液検査のなかでも、血小板増多は見過ごされやすい一方で、臨床的に重要なサインとなることがあります。感染症や炎症など比較的頻繁に目にする症状から本態性血小板血症(ET)などの骨髄増殖性疾患や、悪性腫瘍の存在が隠れていることもあります。特にかかりつけ医にとっては、「臨床的にどこまで経過観察可能か」「疾患の鑑別をどのように行うか」が判断に迷うポイントです。本記事では、血小板増多に遭遇した際に想定すべき主な原因と臨床症状などについてまとめています。文責:株式会社エクスメディオ 記事監修:玉井 洋太郎先生(たまい内科クリニック院長/血ミル回答医) プロフィール◆経歴 2003年3月 - 聖マリアンナ医科大学 卒業 2003年4月~2005年3月 - 同愛記念病院 内科 2005年4月~2008年3月 - 静岡がんセンター 血液幹細胞移植科 2008年4月~2009年3月 - 国立国際医療センター 2009年4月~2013年3月 - 東京医科歯科大学大学院 卒業 2013年2月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 2016年4月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 血液内科医長 2018年1月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 血液内科部長 2023年11月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 血液内科主任部長 ◆資格・所属学会 【所属学会】 - 日本血液学会 - 日本内科学会 - 日本輸血・細胞治療学会 - 日本造血免疫細胞療法学会 - 日本臨床腫瘍学会 【資格】 - 日本血液学会専門医・指導医 - 日本内科学会認定医 - 日本輸血・細胞治療学会認定医 - 日本造血免疫細胞療法学会認定医 - 骨髄移植推進財団 移植調整医師 目次 血小板増多は“よくある異常値”だが見逃せない血小板増多の定義と分類反応性血小板増加症の原因と対応本態性血小板血症(ET)の診断と鑑別かかりつけ医が押さえておきたいポイント血小板増多傾向の患者さん対応に迷ったら「血ミル」 血小板増多は“よくある異常値”だが見逃せない健診や外来で「血小板が高め」な患者さんは珍しくありません。感染症や炎症、鉄欠乏などによる一過性の反応性増加が多く、つい「様子見」で済ませてしまいがちです。しかし、血小板増多の背後には、本態性血小板血症(ET)などの骨髄増殖性腫瘍や、悪性腫瘍の存在が隠れていることもあります。特に、血小板数が45万/μLを超えて持続する場合や、他の血球異常を伴う場合は注意が必要です。血小板増多は“よくある異常値”だからこそ、見逃されやすい一方で、重大な疾患の初発所見である可能性もあるため、冷静な鑑別と適切なタイミングでの精査が求められます。 経験豊富な血液内科専門医へ相談してみませんか?※本サービスは医師の方のみご利用いただけます 血小板増多の定義と分類血小板数が45万/μLを超える場合、臨床的には「血小板増多」と判断されます。健診や外来で偶然発見されることも多く、つい軽視されがちですが、背景に骨髄増殖性疾患や悪性腫瘍などの重篤な病態が潜んでいる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。血小板増多は、以下の2つに大別されます。 ① 反応性(二次性)血小板増加症炎症、感染症、外傷、術後、鉄欠乏性貧血、脾摘後、さらには悪性腫瘍(特に肺・消化器・婦人科領域)などが原因となることがあります。これらは一過性であることが多く、原疾患の治療により血小板数が自然に改善するケースも少なくありません。 ② 腫瘍性(一次性)血小板増加症代表的なのが本態性血小板血症(Essential Thrombocythemia:ET)で、骨髄増殖性腫瘍(MPN)の一病型です。持続的な血小板高値や他の血球異常を伴う場合は腫瘍性を疑い、JAK2、CALR、MPL変異の有無や骨髄所見の評価が診断の鍵となります。 血小板増多は「よくある異常値」だからこそ見逃されやすい一方で、反応性か腫瘍性かの鑑別が診療の質を左右します。背景疾患の可能性を常に意識し、必要に応じて血液内科との連携を図ることが重要です。 反応性血小板増加症の原因と対応 血小板増多の多くは、反応性(二次性)血小板増加症によるものです。これは骨髄の腫瘍性疾患ではなく、生理的または病的な刺激に対する一過性の反応として生じるものであり、背景疾患の把握と経過観察が重要です。 ◆主な原因 症状 疑われる疾患 急性・慢性炎症 感染症(肺炎、尿路感染など)、膠原病など 鉄欠乏性貧血 特に若年女性や消化管出血を伴う症例で頻度が高い 外傷・術後 組織損傷に伴う一過性の反応 脾摘後 血小板の貯留・破壊が減少するため 悪性腫瘍 特に消化器系、肺、婦人科系腫瘍ではサイトカイン刺激による血小板増加がみられる ◆対応のポイント反応性血小板増加症では、まず原因疾患の特定と治療が最優先です。血小板数が高値でも、症状がなければ経過観察で十分なケースが多く、血小板数そのものを直接下げる治療は通常不要です。ただし、以下のようなケースでは慎重な対応が求められます。血小板数が極端に高値(>100万/μL):後天性von Willebrand病による出血傾向のリスクあり血栓症の既往がある場合:低用量アスピリンの使用を検討悪性腫瘍が疑われる場合:画像検査や腫瘍マーカーによる追加評価が必要反応性か腫瘍性かの鑑別が困難な場合や、血小板数が持続的に高値を示す場合は、血液内科への紹介を検討すべきタイミングです。その際、貧血がなくても鉄とフェリチンが低下していないことは確認しておくと良いです。 血液内科への紹介のタイミングに悩んだら血ミル! 本態性血小板血症(ET)の診断と鑑別本態性血小板血症(Essential Thrombocythemia:ET)は、骨髄増殖性腫瘍(MPN)の一病型であり、持続的な血小板増多を呈する慢性疾患です。反応性血小板増加症とは異なり、血栓症や出血のリスクが高く、早期診断とリスク評価が重要です。 WHO2016診断基準(要約)ETの診断には、以下の主要項目すべてと副項目のうち少なくとも1つを満たす必要があります。 【主要項目】・ 血小板数 ≥ 45万/μLが持続・ 骨髄生検で巨核球の増加と異形成(他の系統は正常)・ BCR-ABL陰性、PV・PMFなど他のMPNを除外・ JAK2、CALR、MPL遺伝子変異のいずれか陽性 【副項目】・ 鉄欠乏、炎症、悪性腫瘍など他の原因による血小板増加が除外されている 鑑別のポイント1. 反応性血小板増加症との鑑別が最重要。特に鉄欠乏性貧血や悪性腫瘍による高値との区別は臨床上しばしば難しい2. JAK2 V617F変異はETの約半数に認められ、診断の大きな手がかりとなる3. 骨髄検査の実施は、血小板数の持続性や他の血球異常の有無を踏まえて慎重に判断する かかりつけ医が押さえておきたいポイント血小板増多は日常診療でよく遭遇する異常値ですが、反応性か腫瘍性かの鑑別が診療の質を左右します。一過性の高値であっても、持続性や他の血球異常を伴う場合は精査が必要です。反応性血小板増加症では、感染、炎症、鉄欠乏、悪性腫瘍などの背景疾患を丁寧に評価することが基本です。一方、血小板数が50万/μL以上で持続する場合や、血栓症の既往・症状(頭痛、視覚異常など)がある場合は、腫瘍性疾患の可能性を念頭に置き、早期に血液内科への紹介を検討することが望まれます。本態性血小板血症(ET)を疑う場合は、JAK2/CALR/MPL変異の有無や骨髄所見の確認が診断の鍵となります。「血小板高値=経過観察」ではなく、背景疾患の見極めと適切なタイミングでの精査が重要です。なお、鑑別に迷う場合や紹介前の相談には、血液内科専門医にオンラインで相談できる「血ミル」などのツールを活用するのも有効です。 血ミルで無料で相談してみる 血小板増多傾向の患者さん対応に迷ったら「血ミル」 血小板増多は大きく「反応性」と「腫瘍性」に分かれます。よくある異常値ですが、注意してみておきたいですね。増多傾向が気になる場合は、血液内科専門医へ紹介することも必要でしょう。紹介する前や、少し悩ましい血算値がありましたら、ぜひ「血ミル」をご活用ください。紹介するよりも気軽に使えるサービスです。オンラインコンサルトの機能で、フォームより血算値などを入力するだけで、血液内科専門医に無料相談ができます。紹介するかどうかの基準に迷われた方など、ぜひお役立てください。 今すぐ会員登録して相談※ヒポクラは医師限定サービスです。一般の方のご利用はできません。
高齢者に多い血小板減少 ― 見逃さないためのポイントと紹介の目安
高齢者に多い血小板減少 ― 見逃さないためのポイントと紹介の目安
【かかりつけ医のための血算の診かた(第1回)】高齢者に多い血小板減少 ― 見逃さないためのポイントと紹介の目安高齢者では、血液検査で偶然「血小板減少」が見つかることが少なくありません。軽度で無症状のこともありますが、重篤な血液疾患や全身疾患のサインである場合もあります。本記事では、クリニックの外来で血小板減少を認めた際に考えるべき代表的な疾患や、紹介を検討すべき状況について整理します。 <監修> プロフィール◆経歴 2003年3月 - 聖マリアンナ医科大学 卒業 2003年4月~2005年3月 - 同愛記念病院 内科 2005年4月~2008年3月 - 静岡がんセンター 血液幹細胞移植科 2008年4月~2009年3月 - 国立国際医療センター 2009年4月~2013年3月 - 東京医科歯科大学大学院 卒業 2013年2月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 2016年4月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 血液内科医長 2018年1月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 血液内科部長 2023年11月~ - 湘南鎌倉総合病院血液内科 血液内科主任部長 ◆資格・所属学会 【所属学会】 - 日本血液学会 - 日本内科学会 - 日本輸血・細胞治療学会 - 日本造血免疫細胞療法学会 - 日本臨床腫瘍学会 【資格】 - 日本血液学会専門医・指導医 - 日本内科学会認定医 - 日本輸血・細胞治療学会認定医 - 日本造血免疫細胞療法学会認定医 - 骨髄移植推進財団 移植調整医師 目次 ① 血小板減少がある代表的な疾患② 紹介が必要となる血小板減少のサイン③ クリニックでの対応の流れ④ 紹介すべきか迷ったら ― 血液内科専門医へのオンラインコンサルト 「血ミル」 ① 血小板減少がある代表的な疾患 骨髄由来の疾患 • 骨髄異形成症候群(MDS):高齢者に最も多い。汎血球減少を伴いやすい。 • 急性白血病:発症は急激。出血傾向や感染症に注意。 • 再生不良性貧血:やや若年者に多いが高齢発症もある。 実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~一般内科編~実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~呼吸器内科編~ 免疫学的要因 • 薬剤性血小板減少症:抗菌薬、抗血小板薬、抗凝固薬など高齢者が使いやすい薬剤に注意。 • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP):高齢発症例もあり。2万/µL前後で紫斑や出血傾向を伴う。 • SLEなどの膠原病に伴う二次性ITP(比較的稀だが高齢でも発症あり) 血小板の消費・破壊によるもの • 播種性血管内凝固症候群(DIC):感染症・悪性腫瘍に続発しやすい。 • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS):まれだが重症。 その他 • 肝硬変・脾機能亢進:慢性肝疾患の背景に多い。 • 感染症に伴う一過性の血小板減少:敗血症、ウイルス感染(EBウイルス、HIV、COVID-19など) • 悪性腫瘍の骨髄転移 ② 紹介が必要となる血小板減少のサイン  • 血小板数 ③ クリニックでの対応の流れ  • 採血で血小板減少を認めたら → 薬剤歴・肝機能・感染兆候を確認する • 血小板数の傾向を確認 → 重度・急速な低下あれば速やかに血液内科紹介する • 経過観察可能なケース → 膠原病など造血器疾患以外の原因も並行して精査していく ④ 紹介すべきか迷ったら ― 血液内科専門医へのオンラインコンサルト 「血ミル」 血小板減少の背景には、再生不良性貧血や温式自己免疫性溶血性貧血をはじめ、多様な疾患が存在します。血小板数のみならず、白血球や赤血球など血算全体に異常が認められる場合は、より系統的な鑑別が必要です。その際には『ヒポクラ』が提供する 「血ミル」をご活用ください。血液内科専門医がオンラインで無料相談に応じ、日常診療での判断をサポートします。血算値の解釈や対応に迷うケースがあれば、ぜひご相談ください。 今すぐ会員登録して相談 ※ヒポクラは医師限定サービスです。一般の方のご利用はできません。
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~消化器内科編~
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~消化器内科編~
<監修> 消化器内科的症状を持つ血液疾患 血液検査値の異常や検査結果について経験豊富な専門医へ相談できるオンラインコンサルトサービス「血ミル」を開始しました。消化器内科の診療現場で日々よく遭遇する、胃部不快感や食欲低下、腹部膨満感――。一見、消化器内科的な所見に合致するこれらの症状の中には、実は血液内科的疾患が潜んでいることがあります。鑑別がつきにくい症例では、初期診断の遅れが患者の予後に大きく影響することも少なくありません。今回、「血ミル」回答医である玉井先生監修のもと、消化器内科的症状を持つ血液疾患の症例を紹介いたします。 症例:腹痛と貧血を主訴に受診した血液疾患の患者※本症例は実際の症例ではなく、仮想の症例となっております。 ■患者情報年齢 :58歳女性既往歴:高血圧、脂質異常症、胃潰瘍の既往あり主訴 :数か月続く胃部不快感・食欲低下・腹部膨満感 ■経過最近、めまい・立ちくらみが悪化し、明らかな貧血症状を自覚皮膚蒼白が目立つものの、明らかな出血源はなし体重減少(2か月で3kg減)、軽度の黄疸 ■服薬歴降圧薬(ARB)PPI(胃潰瘍の既往により処方) 鉄剤(Hb低下を理由に1年以上継続使用)ビタミンB12補充(鉄剤の効果が乏しいため処方されたが改善せず) ■血液検査値① 白血球数:3,200/μL(軽度低下)② 赤血球数:2.8×10⁶/μL(低下)③ ヘモグロビン:9.2 g/dL(貧血)→ 鉄・ビタミンB12投与で改善せず推移④ ヘマトクリット:30.1%(低下)⑤ 血小板数:20万/μL(正常範囲) ■診断と経過当初の診断: 消化器症状を主訴とし、胃潰瘍や消化器疾患を疑われた。Hb低下に対して鉄剤・ビタミンB12補充を行うも改善せず推移。血液検査により異常が判明: 白血球と赤血球が低下し、出血源がないにもかかわらず貧血の進行を認めた。白血球分画は正常であったが血液内科で精査を行った結果、末梢血で造血器腫瘍を示唆するWT-1が400copyと軽度上昇し、骨髄検査で3系統の異形成を認めた。芽球の増加はなかった。骨髄異形成症候群(MDS)と診断。造血細胞の異常による慢性的な貧血とその緩徐な進行が主な症状と考えられた。 ■治療・経過低リスクのMDSに対する治療としてルスパタセプト(商品名レブロジル)の投与が開始となった。速やかに貧血の改善が得られた。 MDSは高齢者に多い疾患であり、慢性腎不全があるなどすると特に診断が遅れることが多いです。昨今、低リスク(芽球の増加を認めないレベル)のMDSに対し、既存治療のエリスロポイエチン製剤に加えて新薬のルスパタセプトが登場したため治療成績が向上しました。MDSでは芽球の増加が少ないと血液検査では軽度の貧血のみであることも多く、ビタミンB12や亜鉛などの微量元素の検索を行っても貧血の鑑別が付かない場合には、積極的に骨髄検査を実施して診断を確定させる必要です。 血液検査値で悩むことがあれば血ミルへご相談ください 整形外科疾患と思っていても、実は血液内科疾患だったという事例はあります。血液検査値で悩まれた場合は血ミルまでご相談ください。 血ミルは血液内科専門医にオンラインで24時間無料で相談できるサービスです。ぜひお気軽にご利用ください。 少しでも気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください!「24時間」「匿名」「専門医と1対1」で、相談可能 ① 血ミルへアクセス ② 患者情報、主な検査値を入力 ③ 直接、専門医から回答が返却 ご相談はこちらから
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~一般内科編~
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~一般内科編~
<監修> 一般内科的症状を持つ血液疾患 血液検査値の異常や検査結果について経験豊富な専門医へ相談できるオンラインコンサルトサービス「血ミル」を開始しました。一般内科の診療現場で日々よく遭遇する、発熱や倦怠感、めまい――。一見、一般内科的な所見に合致するこれらの症状の中には、実は血液内科的疾患が潜んでいることがあります。鑑別がつきにくい症例では、初期診断の遅れが患者の予後に大きく影響することも少なくありません。今回、「血ミル」回答医である玉井先生監修のもと、一般内科的症状を持つ血液疾患の症例を紹介いたします。 症例:倦怠感と発熱を主訴に受診した血液疾患患者※本症例は実際の症例ではなく、仮想の症例となっております。 ■患者情報年齢 :50歳男性既往歴:高血圧、脂質異常症、過去にピロリ菌除菌歴あり ■経過2か月前から続く労作時の息切れと全身倦怠感軽度のめまいと食欲低下あり最近、動悸を感じることが増えた風邪症状はなし ■服薬歴降圧薬(ARB)スタチン(脂質異常症の管理) ■血液検査値① 白血球数:3,100/μL(低下)② 赤血球数:2.8×10⁶/μL(低下)③ ヘモグロビン:7.4 g/dL(貧血)④ ヘマトクリット:27.1%(低下)⑤ 血小板数:48,000/μL(減少) ■診断当初はウイルス感染症や慢性疲労症候群が疑われたが、血液検査を実施すると汎血球減少が確認された。骨髄検査をはじめとした精査を行った結果、再生不良性貧血(Aplastic Anemia)と診断された。 倦怠感や動悸は赤血球減少による酸素運搬能低下と考えられる。 ■治療・経過血液内科へ転科し、免疫抑制療法(ATG+シクロスポリン)を開始。輸血による支持療法も併用しながら経過観察中。 些細な症状でも血液検査を行うことが肝要です。本症例中では触れませんでしたが、汎血球減少症では急性前骨髄球性白血病が鑑別に挙がるため、凝固検査の提出が必須です。フィブリノーゲン値の低下やFDP、D-ダイマーの上昇を認めたら一刻も早く血液内科のある病院に紹介してください。 血液検査値で悩むことがあれば血ミルへご相談ください 整形外科疾患と思っていても、実は血液内科疾患だったという事例はあります。血液検査値で悩まれた場合は血ミルまでご相談ください。 血ミルは血液内科専門医にオンラインで24時間無料で相談できるサービスです。ぜひお気軽にご利用ください。 少しでも気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください!「24時間」「匿名」「専門医と1対1」で、相談可能 ① 血ミルへアクセス ② 患者情報、主な検査値を入力 ③ 直接、専門医から回答が返却 ご相談はこちらから
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~呼吸器内科編~
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~呼吸器内科編~
<監修> 呼吸器内科的症状を持つ血液疾患 血液検査値の異常や検査結果について経験豊富な専門医へ相談できるオンラインコンサルトサービス「血ミル」を開始しました。呼吸器内科の診療現場で日々よく遭遇する、咳や息切れ――。一見、呼吸器内科的な所見に合致するこれらの症状の中には、実は血液内科的疾患が潜んでいることがあります。鑑別がつきにくい症例では、初期診断の遅れが患者の予後に大きく影響することも少なくありません。今回、「血ミル」回答医である玉井先生監修のもと、呼吸器内科的症状を持つ血液疾患の症例を紹介いたします。 症例:慢性の咳と息切れを主訴に受診した血液疾患患者※本症例は実際の症例ではなく、仮想の症例となっております。 ■患者情報年齢 :55歳男性既往歴:軽度の喘息、慢性鼻炎、高血圧 ■現病歴3か月以上続く咳と軽度の息切れ階段昇降時の疲労感が増加顔色が悪く、同僚から「最近やつれている」と言われるようになった体重減少(2か月で3kg減) ■服薬歴吸入ステロイド(過去に喘息のため)抗ヒスタミン薬(慢性鼻炎のため)降圧薬(カルシウム拮抗薬) ■血液検査値① 白血球数:3,200/μL(低下)② 赤血球数:2.7×10⁶/μL(低下)③ ヘモグロビン:7.5 g/dL(貧血)④ ヘマトクリット:26.9%(低下)⑤ 血小板数:52,000/μL(減少) ■診断当初は慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息の増悪が疑われたが、血液検査を実施すると汎血球減少が確認された。骨髄検査をはじめとした精査を行った結果、再生不良性貧血(Aplastic Anemia)と診断された。咳や息切れは、貧血による酸素運搬能低下が影響しており、喘息ではなく血液疾患が原因だった。 ■治療・経過血液内科へ転科し、免疫抑制療法(ATG+シクロスポリン)を開始。輸血による支持療法も併用しながら経過観察中。 再生不良性貧血は気管支喘息と同様に免疫疾患ですが明確な関連性は報告されておりません。呼吸器疾患の患者さんでも症状悪化時には血液検査を行うことが肝要です。本症例中では触れませんでしたが、汎血球減少症では急性前骨髄球性白血病が鑑別に挙がるため、凝固検査の追加提出が必須です。フィブリノーゲン値の低下やFDP、D-ダイマーの上昇を認めたら一刻も早く血液内科のある病院に紹介してください。 血液検査値で悩むことがあれば血ミルへご相談ください 整形外科疾患と思っていても、実は血液内科疾患だったという事例はあります。血液検査値で悩まれた場合は血ミルまでご相談ください。 血ミルは血液内科専門医にオンラインで24時間無料で相談できるサービスです。ぜひお気軽にご利用ください。 少しでも気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください!「24時間」「匿名」「専門医と1対1」で、相談可能 ① 血ミルへアクセス ② 患者情報、主な検査値を入力 ③ 直接、専門医から回答が返却 ご相談はこちらから
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~循環器内科編~
実は血液疾患!?症状に潜む血液疾患をケースから学ぶ~循環器内科編~
<監修> 循環器内科的症状を持つ血液疾患 血液検査値の異常や検査結果について経験豊富な専門医へ相談できるオンラインコンサルトサービス「血ミル」を開始しました。循環器内科の診療現場で日々よく遭遇する、動悸や息切れ、立ちくらみ――。一見、循環器内科的な所見に合致するこれらの症状の中には、実は血液内科的疾患が潜んでいることがあります。鑑別がつきにくい症例では、初期診断の遅れが患者の予後に大きく影響することも少なくありません。今回、「血ミル」回答医である玉井先生監修のもと、循環器内科的症状を持つ血液疾患の症例を紹介いたします。 症例:動悸と息切れを主訴に受診した血液疾患患者※本症例は実際の症例ではなく、仮想の症例となっております。 ■患者情報年齢 :62歳男性既往歴:高血圧、軽度の糖尿病、慢性腎臓病(ステージ2) ■現病歴数か月前から動悸を感じることが増え、最近は軽い労作でも息切れする疲労感が抜けず、立ちくらみを頻繁に感じる皮膚に軽度の黄疸あり ■服薬歴降圧薬(ACE阻害薬)糖尿病治療薬(メトホルミン) ■血液検査値① 白血球数:3,500/μL(軽度低下)② 赤血球数:2.6×10⁶/μL(低下)③ ヘモグロビン:7.1 g/dL(貧血)④ ヘマトクリット:25.4%(低下)⑤ 血小板数:55,000/μL(減少) ■診断と経過当初は心不全の増悪や不整脈の出現などの循環器疾患が疑われたが、血液検査で貧血の悪化と白血球・血小板の低下が確認され血液疾患が疑われた。追加検査の結果、温式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断された。 動悸や息切れは、赤血球の破壊亢進による酸素運搬能力低下が原因だった。黄疸も赤血球の溶血に伴う間接ビリルビン増加と関連していた。 ■治療・経過血液内科へ転科し、免疫抑制療法(ATG+シクロスポリン)を開始。 溶血性貧血は循環器疾患のある患者さんではしばしば弁膜症をはじめとした機械的溶血が鑑別となります。心エコーなどを行うとともに、直接クームス、寒冷凝集反応検査などで自己免疫性溶血性貧血の鑑別を並行して行います。寒冷凝集素症では指端紅痛症で循環器内科が初診となることもしばしばです。自己免疫性溶血性貧血の診断が確定すると、原因検索を行います。原因として多いのは悪性リンパ腫や膠原病であり、その場合は原疾患の治療を優先します。 血液検査値で悩むことがあれば血ミルへご相談ください 整形外科疾患と思っていても、実は血液内科疾患だったという事例はあります。血液検査値で悩まれた場合は血ミルまでご相談ください。 血ミルは血液内科専門医にオンラインで24時間無料で相談できるサービスです。ぜひお気軽にご利用ください。 少しでも気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください!「24時間」「匿名」「専門医と1対1」で、相談可能 ① 血ミルへアクセス ② 患者情報、主な検査値を入力 ③ 直接、専門医から回答が返却 ご相談はこちらから
整形外科的症状を持つ血液疾患
整形外科的症状を持つ血液疾患
<監修> 整形外科的症状を持つ血液疾患 血液検査値の異常や検査結果について経験豊富な専門医へ相談できるオンラインコンサルトサービス「血ミル」を開始しました。整形外科の診療現場で日々よく遭遇する、関節痛や腰背部痛、しびれ――。一見、整形外科的な所見に合致するこれらの症状の中には、実は血液内科的疾患が潜んでいることがあります。鑑別がつきにくい症例では、初期診断の遅れが患者の予後に大きく影響することも少なくありません。今回、「血ミル」回答医である玉井先生監修のもと、整形外科的症状を持つ血液疾患の症例を紹介いたします。 症例:慢性関節痛を主訴に受診し、骨髄異形成症候群(MDS)と診断されたケース※本症例は実際の症例ではなく、仮想の症例となっております。 ■患者情報年齢 :72歳男性既往歴:高血圧、2型糖尿病(10年)、関節リウマチの疑いで過去にNSAIDs処方歴あり主訴 :両膝の慢性的な痛み、進行する倦怠感 ■経過1年以上前から両膝関節の疼痛が持続し、整形外科にて変形性膝関節症(疑い)と診断され、NSAIDsを処方された3か月前より倦怠感や立ちくらみが増悪、膝の痛みに加えて疲れやすさを自覚皮膚蒼白があり、最近は軽度の動悸も認める ■服薬歴降圧薬(カルシウム拮抗薬)糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬)NSAIDs(関節痛のため)鉄剤・ビタミンB12補充(Hb低下を理由に数か月前より処方されたが改善せず) ■血液検査値① 白血球数:3,000/μL(軽度低下)② 赤血球数:2.9×10⁶/μL(低下)③ ヘモグロビン:9.2 g/dL(貧血)→ 鉄・ビタミンB12投与で改善せず推移④ ヘマトクリット:30.5%(低下)⑤ 血小板数:20万/μL(正常範囲) ■診断と経過当初は変形性膝関節症や関節リウマチの悪化が疑われ、慢性炎症に伴う貧血と解釈されていた。数か月にわたる鉄剤・ビタミンB12投与にもかかわらずHbの改善が見られず、倦怠感が増強。血液検査で白血球・赤血球が低下し、出血源のない貧血の進行が確認された。骨髄検査の結果、骨髄異形成症候群(MDS)が診断され、造血不全による貧血が主因であったことが判明。 ■治療・経過血液内科へ転科し、低リスクMDSに対する支持療法(輸血など)と適切な薬物療法が開始。 膝関節の一因はMDSに伴う非特異的な炎症と推測された。 血液検査値で悩むことがあれば血ミルへご相談ください 整形外科疾患と思っていても、実は血液内科疾患だったという事例はあります。血液検査値で悩まれた場合は血ミルまでご相談ください。 血ミルは血液内科専門医にオンラインで24時間無料で相談できるサービスです。ぜひお気軽にご利用ください。 少しでも気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください!「24時間」「匿名」「専門医と1対1」で、相談可能 ① 血ミルへアクセス ② 患者情報、主な検査値を入力 ③ 直接、専門医から回答が返却 ご相談はこちらから
造血幹細胞移植後の晩期合併症~脂肪萎縮症~肥満が無いのに高度な耐糖能異常、脂質代謝異常を示す移植後患者を診ていませんか?
造血幹細胞移植後の晩期合併症~脂肪萎縮症~肥満が無いのに高度な耐糖能異常、脂質代謝異常を示す移植後患者を診ていませんか?
造血幹細胞移植後の晩期合併症~脂肪萎縮症~肥満が無いのに高度な耐糖能異常、脂質代謝異常を示す移植後患者を診ていませんか? 先日開催された第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会にて、広島大学大学院医系科学研究科 小児科学 岡田 賢先生が「造血幹細胞移植(HSCT)関連部分性脂肪萎縮症 肥満が無いのに高度な耐糖能異常、脂質代謝異常を示す移植後患者を診ていませんか?」というテーマで、講演されました。脂肪萎縮症は比較的新しい疾患概念であること、移植後の晩期合併症として血液内科の先生方にも参考になる内容になっているかと思いますので、ぜひご一読いただけますと幸いです。 小児がん経験者(CCS)は治癒後も合併症に悩まされている 小児がんは長期生存が期待できる時代になってきており、日本では20歳から39歳の成人の約700人に1人がCCSの患者さんと言われています。新幹線のぞみが約1300席ありますが、満席だとしたら2人ぐらいはCCSのこの年齢(20~39歳)の患者さんと例えられます。米国ではもっと多く、40万人を超えるCCSの患者さんがいらっしゃって、そのうち73%は何らかの長期的な問題を抱えており、しかもその42%は、それは非常にシビアであるということが分かっています。CCSの患者さんは様々な合併症に悩まされますが、本日はこの内分泌異常に着目して話を進めていきます。 HSCTを受けた小児の内分泌障害 移植後の内分泌障害は高い頻度で、多彩な形で出てきます。小児期の造血幹細胞移植を受けた152人について、約10年後の内分泌疾患の発症率を調べたコホート調査(※)の結果をによると、成長ホルモン分泌不全や甲状腺機能低下症は2割程度、そして甲状腺結節も起こってきます。性腺機能低下症はもっと多く、1/3ぐらいの患者さんが罹患します。一方でACTH、副腎機能に関しては比較的保たれることが多く、異常症が起こる頻度は少ないです。代謝異常については、脂質代謝異常が2割ぐらい、耐糖能異常が1割ぐらいの頻度で起こります。※ Figueiredo AA., et al. Clin Endocrinol. 2023 Feb;98(2):202-211. 脂肪萎縮症とは? 脂肪萎縮症には先天性と後天性の脂肪萎縮症があり、全身的、あるいは部分的に脂肪組織が減少します。レプチンは脂肪組織から分泌され、視床下部に作用して、糖の取り込みを促進したり、中性脂肪の蓄積を減少させる作用があります。こういった働きをするレプチンの分泌が障害されることによって、糖尿病、高トリグリセリド(TG)血症、脂肪肝などが起こってきます。 HSCT関連部分性脂肪萎縮症の身体的特徴-満月様顔貌だがBMIが低い- HSCT関連脂肪萎縮症の患者の多くは、ぽっちゃりとした満月様顔貌を示します。ただ、このようにぽっちゃり顔にも関わらずBMIが低く、肥満ではありません。また、四肢・臀部の脂肪が萎縮しているという方もいます。本症の特徴としては、顔はぽっちゃりしているのに肥満ではなく、四肢・臀部など一部の脂肪が萎縮していること。そして脂肪肝がありTGが高く、一部の患者さんは糖尿病を発症しているという点があげられます。 HSCT関連部分性脂肪萎縮症の一例 ここで典型的な症例を紹介します。この方は1歳の時に急性骨髄性白血病を発症しています。2回骨髄移植を受けてその後、3回目に全身放射線照射(TBI)を含む骨髄移植を受けて長期寛解に至ります。合併症としては、慢性GVHD、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症、GH分泌不全などがあります。身体/検査所見で言うと、高TG血症や脂肪肝があり、最終的には部分性脂肪萎縮症と診断されています。経過を見ていきますと、徐々に耐糖能異常が増悪し、HbA1cが上がっています。一般的な糖尿病内服治療を行うものの改善は認めず、部分性脂肪萎縮症という診断のもと、メトレレプチンによる治療を開始することでHbA1cも徐々に改善しました。正しく診断し、正しく介入することが大事であると考えています。 HSCT関連部分脂肪萎縮症の実態解明のために 本邦におけるHSCT関連部分脂肪萎縮症の病態を明らかにしていくという目的のもと、3学会(日本小児内分泌学会、日本内分泌学会、日本小児血液・がん学会)の評議員を対象とした調査を行いました。一次調査、二次調査という形で進めていますが、一番初めに調査した日本小児内分泌学会の二次調査の結果を主にご紹介します。 二次調査の結果(n=23) 二次調査で得られた23例の結果を示しています。BMIの平均は18.5と低い値となっている一方で、8割の患者が糖尿病の診断がついています。TGの数値はそこまで高くない方もいますが、500を超えるような極めて高い高TG血症を示す患者も存在し、脂肪肝も多くの患者で認められます。非肥満であるにもかかわらず、インスリン抵抗性や高TG血症、脂肪肝を呈する患者さんが一定数いることが分かります。 結語 まとめのメッセージとなりますが、脂肪萎縮症は比較的新しい疾患概念だと思いますので、まずはこういった疾患があるということを認識していただけたらと思います。HSCT関連脂肪萎縮症を発症した患者の多くは、幼少期、特に就学前にHSCTを受けている傾向がありました。 そして、全身放射線照射は、耐糖能異常リスク因子になる可能性があります。移植後に肥満がないにもかかわらず、耐糖能異常、高脂血症、脂肪肝が顕著な患者さんは脂肪萎縮症を鑑別疾患に考える必要があると思われます。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければアンケートにご協力をお願いいたします。アンケートへ 脂肪萎縮症のコンサルトサービスヒポクラのコンサルトサービスは、24時間いつでも専門医にご相談ができるため、とても好評をいただいております。匿名かつ、専門医の先生と1対1でご相談できますので、少しでも気になる症状の患者さんがいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。 ご利用方法① https://hpcr.jp/v/consult/form/lipodystrophy へアクセス ② 患者情報、主な検査値を入力 ③ 回答医より返答(回答例)背景疾患から、●●合併の疑いがありますが、△△検査で確認済みでしょうか?あとは★★の疑いもありますので、××を確認してみてください。★★の疑いが認められるならば、内分泌の専門医に紹介してください。 今すぐコンサルトする
睡眠時無呼吸症候群の診療のポイント(2)
睡眠時無呼吸症候群の診療のポイント(2)
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」等の内容を踏まえながら、SASの病態・検査・治療について概略する。 ■SASの病態1.SASの定義SASは、睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返される疾患である。通常、いびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と、呼吸努力を伴わない中枢性睡眠時無呼吸(CSA)に分けられるが、ここでは圧倒的に患者数の多いOSAについて解説する。 2. 原因OSAの主な原因は、上気道の閉塞や狭窄である。肥満や特定の生活習慣があると、気道閉塞を引き起こしやすくなる(後述)。また、顎が小さい、扁桃肥大、鼻中隔彎曲などの解剖学的要因も関与する6) 3. 健康リスクOSAの重大な問題は、睡眠の質の低下にとどまらず、全身の健康リスクを著しく増大させる点にある。米国の研究では、SAS患者は高血圧の発症リスクが約2倍、虚血性心疾患のリスクが約3倍、脳血管疾患のリスクが3~5倍に上昇すると報告されている 7)。さらに、OSA は 2 型糖尿病発症のリスク因子であることや 8)、睡眠時間中に心原性突然死をきたすリスクになると指摘されている9) 。 ■SASの検査と診断SASの検査には、腕時計タイプの機械を用いる簡易検査と、さらに詳しく調べるための終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)がある。 1. SAS簡易検査簡易検査は、睡眠中のSpO2を測定する検査で、機器をレンタルして自宅で検査することもできる。後述するPSG検査は専門施設でないと実施できないが、簡易検査は一般診療所でも実施可能で、最近ではSAS簡易検査装置を自宅に直接届けるサービスが広がったこともあり、実施数が増加している。 2. PSG検査PSG検査は、睡眠中の呼吸状態や睡眠の質を詳細に調べるため、入院が必要になる。いびきやSpO2の他、脳波、眼球運動、心電図、筋電図、呼吸曲線などを一晩にわたって測定・記録し、無呼吸のタイプや重症度を評価する。解析は専門の医師や臨床検査技師が行う。 3. 診断のアルゴリズムSAS診断のアルゴリズムは以下の通りである 10)。なお、診断に用いられるAHI(無呼吸低呼吸指数)とは呼吸イベント(無呼吸および低呼吸)の総数を 総睡眠時間(TST) で 割ったものである。無呼吸数、低呼吸数それぞれについて指数を算出したものを、それぞれ無呼吸指数 (AI)、低呼吸指数(HI)とよぶ 11)。 ■SASの治療1. AHIによる重症度分類SAS治療においては、AHI指数を用いて、以下のように重症度が分類される 12)。 ・軽症:AHI 5~15未満・中等症:AHI 15~30未満・重症:AHI 30以上 軽症のSASであれば、睡眠時のポジショニング、体重コントロール、マウスピースの使用、生活習慣の改善などを指導する。中等症以上であれば、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が選択される。AHIが簡易検査で40回/時以上、PSG検査で20回/時以上であれば保険適用となる13) 。 2. CPAP療法CPAPは、睡眠中に鼻マスクを装着し、適切な圧力の空気を気道に送り込むことで気道の閉塞を防ぎ、無呼吸や低呼吸の発生を抑える治療法である。CPAP患者へのアンケート(86名)によると、何らかの自覚症状の改善をみたのは92%にのぼっていた14) 。 合併症に対するCPAPの効果としては、OSA患者の血圧が低下し、減量や高圧薬に上乗せの高圧効果が期待できること、適切な使用状況が確保できていれば、心血管イベントを抑制する可能性がある15) 。 近年、CPAP装置は小型化・軽量化が進んでおり、旅行先などへも容易に持ち運びできるようになった。また、無呼吸のタイプを検出して適切な圧力をかける機能や、加湿調整機能、静音設計など、より快適に治療を継続できる工夫が施されたモデルも登場している。 3. CPAP療法に関する診療報酬と算定要件CPAP療法に関連する診療報酬は以下の通りである16) 。 ① 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料:月1回、外来での指導管理に対して算定可能② 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算:CPAP装置の貸与に対する加算で、3カ月に3回まで算定可能③ 在宅持続陽圧呼吸療法材料加算:CPAP療法に必要な消耗品に対する加算で、3カ月に3回まで算定可能 これらを算定するためには、患者がCPAP装置を継続的に使用していることや、医療機関が適切な指導管理を行っていることが条件となる。また、IT機器を用いた診療(オンライン診療)でも、一定の条件下で指導管理料を算定できる。 ■引用文献: 6)帝人ヘルスケア株式会社.“なぜ呼吸が止まるのか?”.睡眠時無呼吸なおそう.comhttps://659naoso.com/sas/reason7)岩間義孝. 睡眠時無呼吸症候群:循環器系・代謝内分泌系への影響.順天堂医学.2007;53: 278-287.8) 7. Reutrakul S, Mokhlesi B. Obstructive Sleep Apnea and Diabetes: A State of the Art Review. Chest 2017; 152: 1070- 1086.9) Gami AS, Howard DE, Olson EJ, et al. Day-night pattern of sudden death in obstructive sleep apnea. N Engl J Med 2005; 352: 85 1206-1214.10)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; :ⅶ11)一般社団法人日本循環器学会.2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン.2023:16.12)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; 2-3.13)日本医科大学千葉北総病院. “陽圧呼吸療法(CPAP治療)”.https://www.nms.ac.jp/hokuso-h/section/cardiovascular/arrhythmia_copy/catheter_copy.html14)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; ⅶ.15)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020; xvii-xviii.16)帝人ファーマ株式会社・帝人ヘルスケア株式会社.”令和6年度診療報酬 在宅酸素療法、在宅人工呼吸、在宅持続陽圧呼吸療法、在宅ハイフローセラピー等に関する診療報酬について”.TEIJIN Medical Webhttps://medical.teijin-pharma.co.jp/medicalsystem/ms11.html
睡眠時無呼吸症候群の診療のポイント(1)
睡眠時無呼吸症候群の診療のポイント(1)
編集:株式会社エクスメディオ取材元:帝人ファーマ主催「家族となおそう睡眠時無呼吸」疾患啓発イベントメディア発表会(2025年1月27日開催)/帝人ファーマ株式会社 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の潜在患者数は、国内だけで940万人以上1)と推定されている。SASは、QOLを損なわせるだけでなく、高血圧や心疾患のリスク因子ともなるため、早期診断と病態に応じた治療法のアップデートが必要となる。SASの診療に関する最新の取り組みを取材した。 ■こんな患者がいたら、SASに要注意1.自他覚症状2)SASの患者は、睡眠中に何度も呼吸が止まり、そのたびに脳が覚醒するため、深い眠りが妨げられることになる。その結果、熟睡感が得られず、日中の強い眠気や集中力の低下が引き起こされる。SASの患者によく見られる症状には次のようなものがある。出典:帝人ヘルスケア株式会社.“睡眠時無呼吸症候群とは”.睡眠時無呼吸なおそう.comより作図 2. 生活習慣・身体的特徴3)SASは、特定の生活習慣や身体的特徴を持つ人が発症しやすいとされる。特に肥満者は、首の周囲に脂肪が付くことで気道が狭くなり、無呼吸を起こしやすくなる。また、飲酒は筋肉を緩め、喫煙は気道の炎症を招くため、どちらもSASのリスク因子となる。さらに、加齢、男性であること、睡眠薬の使用も発症リスクを高めるとされている。 3. 合併症 4)SASは他の疾患と密接に関連しており、以下の患者には特に注意が必要となる。これらの疾患を診療する際は、患者の睡眠中の呼吸状態や日中の眠気、いびきの有無などを確認し、SASの可能性を考慮したい。 ① 高血圧SAS患者の多くは高血圧を併発しており、特に治療抵抗性高血圧の場合、SASの可能性を考慮する必要がある。② 心血管疾患SASは、心筋梗塞、心不全、心房細動などのリスクを高めることが知られている。③ 糖尿病2型糖尿病患者はSASの有病率が高く、血糖コントロールが難しい場合はSASのスクリーニングを検討すべきである。④ 肥満特に内臓脂肪型肥満は、SASの主要なリスク因子とされる。⑤ 脳血管疾患脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往がある患者は、SASのリスクが高まる。⑥ 慢性腎臓病SASは腎機能の低下と関連しており、特に原因不明の腎機能悪化が見られるケースではSASの疑いがある。 ■SAS診療の実践メソッド1. 患者が治療の必要性に納得しない。どうするか?行動経済学の専門家である平井啓氏(大阪大学大学院人間科学研究科)は、患者と医療者が見ている世界の違いを指摘し、患者は、「どこに出口があるか、この先に危険なものがあるかを知らないまま眼の前の道を歩んでいる」のに対し、医療者は、「周囲の人からは全体像や将来のリスク、出口がどこにあるかが見えている」状態であるという。両者のすれ違いを解消するためには、「人間の考え方は損失回避的であり、それが自然な反応であることを、医療者も理解が必要である」と述べている。これらを踏まえた具体的手段として、フレーミング効果による「利得フレーム」を用いた説明方法を(表1)のように整理している。 ■ 同じ現象のポジティブな側面(ポジティブ/利得フレーム)とネガティブな側面(ネガティブ/損失フレーム)のどちらに焦点を当てるかで意思決定が変化すること 例)利得フレーム「治療を受けると90%の確率で治ります」損失フレーム「治療を受けないと10%の確率で病気が悪化します」 表1:フレーミング効果による「利得フレーム」を用いた説明方法 出典:帝人ファーマ主催「家族となおそう睡眠時無呼吸」疾患啓発イベント、大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授 公認心理師 平井 啓先生 講演スライド【2025年1月27日】 2. 自施設には、検査・治療体制がない。どうするか?SASの疑いがある患者に対して、簡易検査機器を自宅に配送し検査できるサービスや、PSG検査環境の整備・院内スタッフの教育やデータ解析などを、外部委託できるサービスもある。SAS診療においては、検査・診療体制が整わない場合でも、活用できる外部資源が充実しているため、ぜひ活用いただきたい(参考サイト:医療機関のニーズに応じたテイジンのSAS診療サポート体制)SAS診療において、かかりつけ医は患者の早期発見・早期治療に重要な役割を果たす。日常診療で生活習慣病や関連疾患を診る際、SASの可能性についても考慮し、簡易検査を実施することで、潜在患者の適切な診断・治療につながるだろう。また、簡易検査後、診断が難しい場合や重症が疑われる場合は、専門医へ紹介することが推奨される。専門医は精密検査や治療方針の決定を担当し、治療が安定した患者は再び地域へ戻り、かかりつけ医が継続的な管理を行う。こうして地域全体での質の高い医療提供が可能になる 。5) ■インタビュー:睡眠時無呼吸症候群の早期受診・治療に向けてSASの検査装置・治療器を展開する帝人ファーマは、「SASに関する正しい知識を広めることで、患者さんを取り巻くご家族や周囲の方の協力による早期発見・予防を促していきたい」と語り、いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)に悩む方のためのポータルサイト「無呼吸なおそう.com」を運営している。セルフチェックや専門の医療機関を検索することが可能である。また、医療機関に対しても、SASの検査や治療体制について、まだ十分な理解が得られていないとして、「TEIJIN Medical Web」において、SAS診療のハードル解消に向けた情報を提供している。同社は、SASの治療課題解決に向けて、「糖尿病 ·高血圧などの生活習慣病のように、SASが全国どこでも検査・治療できる環境を目指したい」と意気込みを語った。 ■引用文献:1) Benjafield AV, et al: Lancet Respir Med 2019; 7(8): 687-698.2)帝人ヘルスケア株式会社.“睡眠時無呼吸症候群とは”.睡眠時無呼吸なおそう.comhttps://659naoso.com/sas3)帝人ヘルスケア株式会社.“睡眠時無呼吸症候群患者さんの傾向”.睡眠時無呼吸なおそう.comhttps://659naoso.com/sas/danger4)一般社団法人日本循環器学会.2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン.2023:21-235)帝人ファーマ株式会社・帝人ヘルスケア株式会社.“睡眠時無呼吸症候群患者の地域における診療連携のあり方”https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/sdb/medical_agency/okl8co00000001es-att/202203.pdf ▼SAS病態・検査・治療に関するより詳しい情報はこちらからご覧いただけます▼睡眠時無呼吸症候群の診療のポイント(2)
【紹介?経過観察?】血液検査値以上のケースから考える血液専門医へのコンサルトのポイント
【紹介?経過観察?】血液検査値以上のケースから考える血液専門医へのコンサルトのポイント
<監修> 健診や診療の過程で血液検査の異常が見つかった場合、その対応は患者さんの背景や施設の体制によって変わります。特に、赤血球・白血球・血小板の異常値や骨髄増殖性疾患(MPN)が疑われるケースでは、迅速かつ適切な判断が求められます。本コンテンツでは、血液専門医ではない先生方が臨床の現場で直面しやすいケースを取り上げ、どのようなタイミングで専門医にコンサルトすべきか、またその際に役立つポイントを分かりやすく整理しました。診療にすぐに活かせる実践的な内容となっておりますので、日常診療の参考にしていただければ幸いです。 血液検査異常時の対応ポイント ■赤血球が異常値のケース貧血でまず専門医へのコンサルトが必要なのは血小板も低いときです。初期の再生不良性貧血ではしばしば血小板が先行して低下してきます。ただし、肝硬変の時もこの2系統が低下します。肝疾患は除外した上で血液内科医にご相談ください。一方で、貧血単独で内科医がよく遭遇するのは鉄欠乏性貧血です。鉄やフェリチンが低値であればそれで解決なのですが、正常な時にはサラセミアの可能性があります。遺伝的にヘテロな場合には軽い貧血にとどまることも多く、一度専門医へコンサルトしてみてください。ただし、ほとんどの施設で確定診断のための遺伝子検査はできませんし、治療も要さないので紹介しても患者さんへの説明にとどまることがほとんどです。他には、赤芽球癆(網状赤血球数が参考になります)、萎縮性胃炎に伴うビタミンB12欠乏や腎性貧血です。前者はMCV高値から多くの内科医が疑うと思いますが、腎性貧血だと思って経過をみていた患者さんが、骨髄検査をしてみたら骨髄異形成症候群だったというケースもあります。ESA製剤などに反応が悪い場合には一度血液内科医に相談してみるとよいでしょう。多血の場合にはエリスロポイエチンの測定をまずしてみてください。抑制されているようであれば真性多血症の可能性があります。正常~高値であれば二次性多血症のことがほとんどですので、SGLT2阻害剤や睡眠時無呼吸症候群がないかなど、原因検索を進めてからの相談がよろしいかと思います。 ■白血球が異常値のケース白血球数低値は日常診療でしばしば経験することだと思います。特に感染症を疑って検査をした場合など、ウイルス感染に伴って反応性に低値を示すことが多いです。分画を見ると単球やリンパ球が軽度上昇していると思います。血小板数が正常であれば心配いりませんが、念のため10日前後で再検することを患者さんに勧めるべきです。慢性リンパ性白血病や急性白血病の初期をみていることが稀にあります。持続的に異常を呈している場合や血小板数が低い場合には血液内科医に相談しましょう。急性前骨髄性白血病(APL)は緊急性を要する代表的な疾患ですが、しばしば汎血球減少症を呈します。分画の確認と合わせて注意してください。 ■白血球数高値を呈する典型的な疾患として白血球数高値の場合には慢性骨髄性白血病(CML)が良く知られています。その際、血小板が正常~高値を呈します。また、分画では幼弱血球が出現して好塩基球の割合が高値を示すのが特徴です。それが確認できればその時点でCMLが強く疑われますので血液内科医に紹介すべきですが緊急性はありません。内科医がフィラデルフィア染色体検査を提出して確定診断をすることも良いことだと思うのですが、最終的には他の遺伝子検査をすることも多く診断までに時間を要して、検査が繰り返されて患者さんの費用負担が増す恐れもあります。地域性も考慮してご判断ください。また、分画でリンパ球が高値の場合には慢性リンパ性白血病や悪性リンパ腫の骨髄浸潤の可能性があります。前述の通り、どこまで一般的な内科医がスクリーニングした上で血液内科に紹介するかは施設によっても異なると思いますが、これらも緊急性はないことがほとんどです。唯一急いだほうが良いのは急性白血病の時です。分画に芽球がいる連絡を受けたらすぐに患者さんと連携施設に連絡してください。LDHや凝固の情報があるとより良いですが、何よりもすぐに専門医と相談するべきです。 ■血小板が異常値のケースまず血小板が高値のときですが、鉄欠乏性貧血を否定してください。軽度の上昇でも、骨髄異形成症候群(MDS)や本態性血小板増多症(ET)の可能性があります。ETにおける診断基準はあくまで目安です。持続的に高値の場合には、血栓症が起こる前に血液内科医へご相談ください。CMLの所でも触れましたが、ETやPVなどの骨髄増殖性疾患の診断に必要な遺伝子検査は、診療報酬の請求において施設基準を要するものがあります。それを踏まえても追加検査などせずに血液内科に紹介しても良いです。次に血小板が低値の場合ですが、まず薬剤性を除外します。直近で開始された薬剤などご確認ください。薬剤性や感染後の反応性が除外され、肝疾患がなければ血液疾患の可能性が高いです。免疫性血小板減少症、再生不良性貧血やMDSなどは数値さえ低くなければ緊急性はないですが、急性白血病の可能性にも注意して、白血球分画などをご確認ください。また、高度に血小板が低下して溶血や腎機能障害を伴う血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は時間を争う疾患ですので、夜間でも大学病院や総合病院に躊躇なく連絡をしてください。 以上は日常的にしばしば遭遇する採血異常を中心に説明させていただきました。本文中にも記載しましたが、血液内科医への相談が比較的ハードル低い施設と、電話もなかなか取り次いでもらえないような施設があると思います。へき地や離島で患者さんに受診を促すことも躊躇される場合もあるかもしれません。また、私も開業医として感じていることですが、外来中心に患者さんを診ていると、1人大きな検査異常があっても時間の制約があって説明や方針を決め、大学病院や総合病院に取り次ぐ手続きをするのは大変です。どの程度のことであればコンサルトしてよいのか一律に線引きを決めるのは難しいかもしれませんが、多くの血液内科医が何でも相談してよいよという姿勢を一般の内科医にアピールすることが大事だと思います。一人一人の患者さんのためには、紹介を受け取る側が喜んで患者さんを受け入れる姿勢を常に持ち続けることが大切なのだと思います。 関連コンテンツ▶骨髄増殖性腫瘍~知っておきたい希少疾患 ▶真性多血症~知っておきたい希少疾患 ▶血液検査の結果より気を付けたい症例~巨赤芽球性貧血~
血液検査の結果より気を付けたい症例~巨赤芽球性貧血~
血液検査の結果より気を付けたい症例~巨赤芽球性貧血~
骨髄増殖性腫瘍の早期発見を目指し、血液検査値の異常や検査結果について経験豊富な専門医へ相談できるオンラインコンサルトサービス「血ミル」を開始しました。今回、「血ミル」回答医である照井先生に巨赤芽球性貧血について症例をもとに解説いただきました。 血液領域は、難しいと感じている先生は多いと思います。医師として採血をおこなわない先生はいないと思います。血算で異常な数値をみたときに焦ることがあるかもしれませんが、この血ミルでどのような場合に専門科に紹介するべきかわかることでしょう。 概念巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)は、血液中の赤血球が正常に形成されず、異常に大きな赤血球(巨赤芽球)が骨髄に出現する疾患です。この異常は、DNA合成の障害に起因し、細胞分裂が正常に進まないために発生します。その結果、赤血球の成熟が遅れ、機能不全や数の減少(貧血)が生じます。 原因主な原因は、ビタミンB12または葉酸の欠乏です。これらの栄養素はDNA合成において重要な役割を果たしており、不足すると赤血球の前駆細胞が正常に分裂できなくなります。具体的な原因は以下のように分類されます。 1.ビタミンB12欠乏  ・ 胃の萎縮性胃炎や自己免疫疾患による内因子不足(悪性貧血)  ・ 胃切除術後の内因子分泌低下  ・ 腸疾患(例:クローン病、回腸切除)による吸収不良  ・ 食事中のビタミンB12不足(主にベジタリアンやビーガンに多い) 2.葉酸欠乏  ・ 妊娠や慢性疾患による需要増加  ・ アルコール依存症による摂取不足  ・ セリアック病などの吸収障害  ・ 抗てんかん薬やメトトレキサートなどの薬剤による影響 診断方法診断は、臨床症状、血液検査を組み合わせて行います。ヘモグロビン濃度の低下とともにMCVが101以上の場合は疾患を疑い、ビタミンB12や葉酸を測定します。 1.臨床症状  ・ 貧血症状:疲労感、息切れ、めまい  ・ 神経症状(ビタミンB12欠乏の場合):手足のしびれ、歩行困難、記憶力低下  ・ 消化器症状:舌炎、口内炎 2.血液検査  ・ 血球計算:ヘモグロビン低値(12~18以下、男女含め)  ・ MCV(平均赤血球容積)≧101  ・ 血清ビタミンB12および葉酸濃度の測定 治療ビタミンB12や葉酸を補う服薬の治療を行います。貧血が改善されると正常な赤血球が産生されるため、鉄の不足がおこることがあります。治療中は鉄量に確認と、食事の改善も重要になります。 具体的な薬剤  ・ ビタミンB12:メチコバール  ・ 葉酸:フォリアミン 貧血は、赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態です。つまり血算でHb値が正常値を下回っていることです。そのような患者さんはではめまいや立ちくらみ、頭痛などのさまざまな症状が現れるようになります。貧血(Hb低値)が見られた場合、赤血球恒数のうち重要なのがMCV(mean corpuscular volume; 平均赤血球容積)で、その値によって小球性貧血、正球性貧血、大球性貧血に分類することができます。大球性貧血の場合、巨赤芽球性貧血あるいは骨髄異形成症候群、網状赤血球増加などが考えられます。まずはビタミンB12と葉酸の検査をお勧めしますが、その上で専門医への紹介を検討していただければ幸いです。
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