「Ld療法」の記事一覧

高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療戦略
高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療戦略
公開日:2024年7月24日 Mateos MV, et al. J Clin Oncol. 2024 Jul 22. [Epub ahead of print]  スペイン・サラマンカ大学のMaria-Victoria Mateos氏らは、2年時点での進行リスクが50%超となる高リスクくすぶり型多発性骨髄腫(MM)の移植適応のある患者を対象に、カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(KLd療法)による寛解導入療法6サイクル後、大量メルファランによる自家幹細胞移植(HDM-ASCT)、KLd療法による地固め療法2サイクルおよび維持療法として2年間のLd療法の有効性を評価した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年7月22日号の報告。  主要エンドポイントは、ASCT後のnext-generation flowによる検出不能な測定可能病変(uMRD)の割合とした。副次的エンドポイントは、ASCT4年後時点でのuMRDの継続とした。 主な結果は以下のとおり。 ・2015年6月〜2017年6月、対象患者90例が登録された。登録患者の31%は、CRAB症状を認めた。 ・ASCTの3ヵ月後(フォローアップ期間中央値70.1ヵ月)、ITT集団では、90例中56例(62%)においてuMRDがみられた。4年後、29例(31%)においてuMRDの継続が認められた。 ・MMへ進行した患者は5例、70ヵ月進行率は94%(95%CI:84〜89)であった。 ・CRAB症状は、MMへの進行の予測因子であった(5例中4例、ハザード比:0.12、95%CI:0.14〜1.13、p=0.03)。 ・36例で生化学的進行が認められ、その予測因子は、治療終了時のuMRD未達であった。 ・70ヵ月の全生存率は92%(95%CI:82〜89)であった。 ・治療中に最も発生した有害事象は、好中球減少と感染症であり、治療関連の死亡は、1件報告された。 ・二次原発性悪性腫瘍は、3件報告された。  著者らは「より長期にわたるフォローアップ調査が必要ではあるものの、31%の患者において、4年後もuMRDが継続していることからも本治療法は有望であり、活動性のMMよりも効果的な可能性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mateos MV, et al. J Clin Oncol. 2024 Jul 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39038268 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本における新規MM患者に対する治療、最も選択される治療は?
日本における新規MM患者に対する治療、最も選択される治療は?
公開日:2024年10月1日 Moribe T, et al. PLoS One. 2024; 19: e0310333.  日本における新たに診断された多発性骨髄腫(MM)に対する治療は、これまで十分に評価されていなかった。また、再発・難治性MMにおいてトリプルクラス曝露患者の予後は不良であり、治療選択肢も限られている。ファイザーの森部 豊輝氏らは、日本におけるMM患者の特徴、治療傾向、トリプルクラス曝露の現状を明らかにするため、レトロスペクティブ非介入研究を実施した。PLoS ONE誌2024年9月30日号の報告。  2015〜22年の日本のレセプトデータよりMM患者のデータを抽出した。本研究では、第1選択治療としてダラツムマブ、レナリドミド、ボルテゾミブを使用した新規MM患者を特定した。患者の特徴および治療傾向は、非移植群と移植群について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・分析対象患者数は1,784例。 ・非移植群1,656例の年齢中央値は75歳(範囲:37〜94)、第1選択の治療レジメンはLd療法(24.7%)、Bd療法(23.8%)、BLd療法(15.6%)の順で実施されていた。 ・移植群128例の年齢中央値は61歳(範囲:35〜73)、第1選択の治療レジメンはBLd療法(49.5%)、Bd療法(18.7%)、DBd療法(8.4%)の順で実施されていた。 ・非移植群に対する治療レジメンは、75歳以上でLd療法、65〜74歳でBd療法、65歳未満でBLd療法が一般的に行われていた。 ・腎機能障害を有する患者ではBd療法、心機能障害を有する患者ではLd療法が一般的であった。 ・移植群では、1stラインでの移植が107例(83.6%)、2ndラインが20例(15.6%)。 ・1stラインでの移植例における上位3つの導入療法は、BLd療法(49.5%)、Bd療法(18.7%)、DBd療法(8.4%)であった。 ・5thラインまでの累積トリプルクラス曝露患者は、非移植群で351例(21.2%)、移植群で56例(43.8%)であった。 ・各ラインでのトリプルクラス曝露率は、1stラインから5thラインにかけて徐々に増加していた(非移植群:11.1〜69.2%、移植群:21.1〜100%)。 ・非移植群のトリプルクラス曝露患者184例に対する第1選択治療は、89.7%でDLd療法、BLd療法、DBd療法を含む治療が行われており、10.3%でD-BLd療法が行われていた。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Moribe T, et al. PLoS One. 2024; 19: e0310333.▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39348401 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
抗CD38モノクローナル抗体の登場で日本における多発性骨髄腫はどう変わったか
抗CD38モノクローナル抗体の登場で日本における多発性骨髄腫はどう変わったか
公開日:2025年2月3日 Iida S, et al. PLoS One. 2025; 20: e0315932.  日本における多発性骨髄腫(MM)の治療は、プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、そしてダラツムマブなどの抗CD38モノクローナル抗体の承認により大きく変化した。名古屋市立大学の飯田 真介氏らは、大規模データベースを用いて、日本におけるMM患者の患者特性、治療パターン、傾向を評価した。PloS One誌2025年1月23日号の報告。  本研究では、メディカル・データ・ビジョンの大規模診療データベースを用いた。対象は、2008年4月〜2023年6月にMM診断および疾患コードの記録が2つ以上あり、MM治療の記録が1件以上あった18歳以上の患者2万1,066例。2020年以降に第1選択治療を開始した患者は1+Lコホート、2018年以降に第2選択治療を開始した患者は2+Lコホートに割り当てられた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者2万1,066例のうち、1+Lコホートには6,337例、2+Lコホートには5,964例が含まれた。 ・全体の年齢中央値は74歳、両コホート間で性別の違いは認められなかった(男性の割合:52.4% vs.51.3%)。 ・1+Lコホートでは、ほとんどの患者が移植を行なっておらず(90.8%)、レナリドミドベースの治療を行なっていた患者の割合は51.0%であった。主な治療は、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd療法:15.0%)、レナリドミド+デキサメタゾン(Ld療法:14.0%)であった。 ・非移植患者における第1選択でのDLd療法は、6.0%(2020年1〜6月)から28.0(2023年1〜6月)へ増加していた。 ・2+Lコホートでは、第2選択治療でのレナリドミドベースの治療は、65.0%(2018年1〜6月)から37.0%(2023年1〜6月)に減少しており、ダラツムマブベースの治療が14.0%から39.0%へ増加していた。レナリドミドベースの再治療は44.1%、ダラツムマブベースの再治療は35.2%、イサツキシマブベースの再治療は5.6%で行われていた。  著者らは「第1選択治療ではレナリドミドベースおよびDLd療法の選択率が高く、第2選択においてもレナリドミドおよび抗CD38モノクローナル抗体による再治療率が高いことから、抗CD38モノクローナル抗体の治療歴の有無に関わらず、レナリドミドベースの治療後に再発したMM患者に対する新たな治療の必要性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Iida S, et al. PLoS One. 2025; 20: e0315932.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39847579 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
DLd療法の5年超長期アウトカム結果、移植非適応MMの1stラインで間違いないのか〜MAIA試験長期フォローアップ結果
DLd療法の5年超長期アウトカム結果、移植非適応MMの1stラインで間違いないのか〜MAIA試験長期フォローアップ結果
公開日:2025年3月10日 Facon T, et al. Leukemia. 2025 Feb 27. [Epub ahead of print]  MAIA試験において、未治療で移植適応のない多発性骨髄腫(MM)患者に対するダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用療法(DLd療法)は、Ld療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の改善に寄与することが報告された。フランス・リール大学のThierry Facon氏らは、MAIA試験の長期フォローアップ結果を分析し、最新の有効性および安全性データを報告した。Leukemia誌オンライン版2025年2月27日号の報告。  対象は、未治療で移植適応のないMM患者737例。DLd療法群またはLd療法群に1:1でランダムに割り付けられた。フォローアップ期間中央値は64.5ヵ月。分析には、患者の年齢別(70歳未満、70〜74歳、75歳以上、80歳以上)のサブグループ解析を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・主要エンドポイントであるPFSは、DLd療法群の方がLd療法群よりも良好であった(PFS中央値:61.9ヵ月vs.34.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.45〜0.67、p<0.0001)。 ・OS中央値は、DLd療法群では未達、Ld療法群は65.5ヵ月であり(HR:0.66、95%CI:0.53〜0.83、p=0.0003)、60ヵ月推定OSはDLd療法群で66.6%、Ld療法群で53.6%であった。 ・DLd療法群は、Ld療法群と比較し、完全奏効(CR)以上の割合(51.1%vs.30.1%)、微小残存病変(MRD)陰性化率(32.1%vs.11.1%)、18ヵ月以上のMRD陰性の持続率(16.8%vs.3.3%)が有意に良好であった(各々、p<0.0001)。 ・年齢層全体において、DLd療法の臨床的に意味のある有効性のベネフィットが示された。 ・新たな安全性の懸念は認められなかった。  著者らは「5年超の長期フォローアップ結果より、DLd療法は、未治療で移植適応のないMM患者に対する1stライン治療として、引き続き支持される治療選択肢である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Facon T, et al. Leukemia. 2025 Feb 27. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/40016302 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら