「BLd療法」の記事一覧

未治療で移植適応のないMM患者に対するISA+BLd療法〜国際オープンラベル第III相試験
未治療で移植適応のないMM患者に対するISA+BLd療法〜国際オープンラベル第III相試験
公開日:2024年6月12日 Facon T, et al. N Engl J Med. 2024 Jun 3. [Epub ahead of print]  ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(BLd療法)は、未治療MM患者に対する好ましい第1選択治療である。抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ(ISA)のBLd療法への追加が、移植適応のないMM患者の病勢進行または死亡リスクの軽減に寄与するかは、不明である。フランス・リール大学のThierry Facon氏らは、未治療で移植適応のないMM患者に対するISA+BLd療法の有効性を評価するため、国際オープンラベル第III相試験を実施した。NEJM誌オンライン版2024年6月3日号の報告。  本研究は、国際オープンラベル第III相試験として実施した。対象は、未治療で移植適応のない18〜80歳のMM患者446例。対象患者は、ISA+BLd療法群とBLd療法群に3:2でランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは無増悪生存期間(PFS)とし、副次的エンドポイントには完全奏効(CR)またはそれ以上の奏効、CR患者における微小残存病変(MRD)陰性率を含めた。 主な結果は以下のとおり。 フォローアップ期間(中央値:59.7ヵ月)における60ヵ月時点でのPFS推定値は、ISA+BLd療法群で63.2%、BLd療法群で45.2%であった(病勢進行または死亡のハザード比:0.60、98.5%信頼区間:0.41〜0.88、p<0.001)。 ・CR以上の奏効を示した患者の割合は、ISA+BLd療法群の方が、BLd療法群よりも有意に高く(74.7% vs.64.1%、p=0.01)、MRD陰性でCRを示した患者の割合も同様であった(55.5% vs.40.9%、p=0.003)。 ・ISA+BLd療法レジメンでは、新たな安全性シグナルは観察されなかった。 ・治療中の重篤な有害事象発生率および治療中止につながる有害事象発生率は、両群間で同程度であった。  著者らは「移植適応のない18〜80歳の未治療MM患者の初期療法として、ISA+BLd療法は、BLd療法よりも効果的であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tagami N, et al. Int J Hematol. 2024 May 29. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38811413 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
多発性骨髄腫に対する第1選択治療、BLd療法 vs. BCd療法
多発性骨髄腫に対する第1選択治療、BLd療法 vs. BCd療法
公開日:2024年9月25日 Kastritis E, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2024 Aug 21. [Epub ahead of print]  ボルテゾミブ+シクロホスファミド+デキサメタゾン(BCd療法)は、抗腫瘍効果と低毒性の観点から、依然として汎用されているレジメンであるが、欧米では、ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(BLd療法)が広く用いられている。いずれも抗CD38モノクローナル抗体を併用薬として用いているが、十分な検出力を有するプロスペクティブ研究において、BCd療法とBLd療法を直接比較した研究は行われていない。ギリシャ・アテネ国立カポディストリアン大学のEfstathios Kastritis氏らは、リアルワールドにおけるBCd療法とBLd療法で治療を行った患者の臨床アウトカムを比較した。Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemia誌オンライン版2024年8月21日号の報告。  対象は、リアルワールドでBCd療法を行った患者690例、BLd療法を行った患者526例。すべての患者の臨床アウトカムを比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・BCd療法群は、重度の腎機能障害、ISS-III、高カルシウム血症、LDH上昇、貧血、血小板減少、パフォーマンス不良がより多かった。 ・BLd療法群は、より高齢で、自家移植の頻度は低く、維持療法を行う割合は高かったものの、導入期間は同様であった。 ・BLd療法群は、とくに標準リスク群、腎機能障害が認められない患者、高齢者において、導入療法に対する全奏効(OR)および完全奏効(CR)/最良部分奏効(VGPR)率が有意に高く(p<0.001)、単変量解析においても無増悪生存期間(PFS)およびOSの改善が認められた。しかし、多変量解析では、PFSまたはOSについて統計学的に有意な差は認められなかった。 ・主要な予測変数に関して、厳密に1:1でマッチした患者(両群それぞれ188例)では、奏効率および奏効の深さについてBLd療法の優位性が確認されたが、PFSまたはOSについては、有意な差が認められなかった。  著者らは「BLd療法は、BCd療法よりも積極的な導入療法であるが、レナリドミド維持療法は、PFSまたはOSに対するメリットが減少する可能性がある。BCd療法は、特別な状況において、依然として選択肢の1つとなりうる。モノクローナル抗体の導入により、BLd療法を利用できない患者や不耐性の患者では、BCd療法を検討する余地がある」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kastritis E, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2024 Aug 21. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39304364 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本における新規MM患者に対する治療、最も選択される治療は?
日本における新規MM患者に対する治療、最も選択される治療は?
公開日:2024年10月1日 Moribe T, et al. PLoS One. 2024; 19: e0310333.  日本における新たに診断された多発性骨髄腫(MM)に対する治療は、これまで十分に評価されていなかった。また、再発・難治性MMにおいてトリプルクラス曝露患者の予後は不良であり、治療選択肢も限られている。ファイザーの森部 豊輝氏らは、日本におけるMM患者の特徴、治療傾向、トリプルクラス曝露の現状を明らかにするため、レトロスペクティブ非介入研究を実施した。PLoS ONE誌2024年9月30日号の報告。  2015〜22年の日本のレセプトデータよりMM患者のデータを抽出した。本研究では、第1選択治療としてダラツムマブ、レナリドミド、ボルテゾミブを使用した新規MM患者を特定した。患者の特徴および治療傾向は、非移植群と移植群について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・分析対象患者数は1,784例。 ・非移植群1,656例の年齢中央値は75歳(範囲:37〜94)、第1選択の治療レジメンはLd療法(24.7%)、Bd療法(23.8%)、BLd療法(15.6%)の順で実施されていた。 ・移植群128例の年齢中央値は61歳(範囲:35〜73)、第1選択の治療レジメンはBLd療法(49.5%)、Bd療法(18.7%)、DBd療法(8.4%)の順で実施されていた。 ・非移植群に対する治療レジメンは、75歳以上でLd療法、65〜74歳でBd療法、65歳未満でBLd療法が一般的に行われていた。 ・腎機能障害を有する患者ではBd療法、心機能障害を有する患者ではLd療法が一般的であった。 ・移植群では、1stラインでの移植が107例(83.6%)、2ndラインが20例(15.6%)。 ・1stラインでの移植例における上位3つの導入療法は、BLd療法(49.5%)、Bd療法(18.7%)、DBd療法(8.4%)であった。 ・5thラインまでの累積トリプルクラス曝露患者は、非移植群で351例(21.2%)、移植群で56例(43.8%)であった。 ・各ラインでのトリプルクラス曝露率は、1stラインから5thラインにかけて徐々に増加していた(非移植群:11.1〜69.2%、移植群:21.1〜100%)。 ・非移植群のトリプルクラス曝露患者184例に対する第1選択治療は、89.7%でDLd療法、BLd療法、DBd療法を含む治療が行われており、10.3%でD-BLd療法が行われていた。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Moribe T, et al. PLoS One. 2024; 19: e0310333.▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39348401 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
移植適応のない多発性骨髄腫の1stライン、DLd療法 vs. BLd療法
移植適応のない多発性骨髄腫の1stライン、DLd療法 vs. BLd療法
公開日:2024年11月12日 Hansen DK, et al. Cancer Med. 2024; 13: e70308.  未治療で移植適応のない多発性骨髄腫(MM)に対して、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd療法)が推奨されている。しかし、DLd療法とボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(BLd療法)のランダム化直接比較試験は、これまで行われていない。米国H. Lee Moffitt Cancer CenterのDoris K. Hansen氏らは、DLd療法とBLd療法における次回治療までの期間(TTNT)または死亡リスクの比較を行った。Cancer Medicine誌2024年11月号の報告。  1stラインでDLd療法またはBLd療法を行った新規MM患者を、Acentrusデータベース(2018年1月〜2023年5月)より特定した。造血幹細胞移植歴のある患者または65歳未満の患者は、移植適応のない集団の分析を限定するため、除外した。逆確率重み付け法(IPTW)を用いて、ベースラインの患者特性を調整した。両群間のTTNTまたは死亡リスクを比較するため、doubly robust Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・DLd療法群149例、BLd療法群494例。 ・重み付け後(weighted NDLd:302例、weighted NBLd:341例)、両群とも同様のベースライン特性を示した。 ・このうち、その後の治療を受けるまたは死亡した患者の割合は、DLd療法群32.4%(98例)、BLd療法群51.2%(175例)であり、TTNIまたは死亡の中央値は、DLd療法群で37.8ヵ月、BLd療法群で18.7ヵ月であった(ハザード比:0.58、95%CI:0.35〜0.81、p<0.001)。  著者らは「未治療で移植適応のないMM患者に対するDLd療法は、BLd療法と比較し、TTNTまたは死亡リスクが42%低下することから、移植適応のない新規MM患者に対する1stラインとして、DLd療法がより有効であることが裏付けられた」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Hansen DK, et al. Cancer Med. 2024; 13: e70308.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39486091 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ISA-BLd療法による寛解導入療法が未治療で移植適応のある多発性骨髄腫に有用
ISA-BLd療法による寛解導入療法が未治療で移植適応のある多発性骨髄腫に有用
公開日:2024年12月26日 Mai EK, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 9. [Epub ahead of print]  未治療で移植適応のある多発性骨髄腫(MM)患者を対象に、レナリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(BLd療法)にイサツキシマブ(ISA)を併用したISA-BLd療法を評価したGMMG-HD7試験において、寛解導入療法後の微小残存病変(MRD)陰性率が有意に増加したことが報告された。ドイツ・ハイデルベルク大学のElias K. Mai氏らは、GMMG-HD7試験の初回ランダム化から移植までの期間における試験結果を報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年12月9日号の報告。  GMMG-HD7試験の対象は、未治療で移植適応のあるMM患者662例。対象患者は、寛解導入療法においてISA-BLd療法群またはBLd療法群にランダムに割り付けられ、その後シングルまたはタンデム自家移植を行った後、維持療法においてレナリドミド単独群またはISA+レナリドミド群に再度ランダム化された。本報告では、初回ランダム化から移植までの期間における更新された結果を報告した。 主な結果は以下のとおり。 ・2024年1月末の段階で、MRD陰性化率は、移植後も引き続き良好であった(ISA-BLd療法群:66%、BLd療法群:48%)。 ・維持療法の種類にかかわらず、ISA-BLd療法群はBLd療法群と比較し、無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が確認された(ハザード比:0.70、95%CI:0.52〜0.95、p=0.0184)。 ・維持療法においてレナリドミド単独群にランダム化された患者の重み付けリスクセット推定分析では、BLd療法後よりもISA-BLd療法後にレナリドミドによる維持療法を行った方が、統計学的に有意なベネフィットが認められた(層別化加重ログランク検定:p=0.016)。  著者らは「未治療で移植適応のあるMM患者に対して、18週間の寛解導入化学療法後に地固め療法なしで移植を行った場合、維持療法の種類を問わず、ISA-BLd療法による寛解導入療法のPFS延長に対する有意なベネフィットが確認された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mai EK, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 9. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39652594 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
多発性骨髄腫の1stラインにD-BLd療法は支持されるか〜CEPHEUS試験
多発性骨髄腫の1stラインにD-BLd療法は支持されるか〜CEPHEUS試験
公開日:2025年2月18日 Usmani SZ, et al. Nat Med. 2025 Feb 5. [Epub ahead of print]  多発性骨髄腫(MM)の治療において、ダラツムマブをベースとした3剤併用および4剤併用の標準治療レジメンは、未治療MM患者の生存率向上に寄与することが実証されている。現在、未治療で移植適応のないMM患者では、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd療法)またはボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(BLd療法)のいずれかによる3剤併用療法が、標準療法とされている。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのSaad Z. Usmani氏らは、未治療で移植適応のないMM患者または初期治療として移植が計画されていないMM患者を対象に、ダラツムマブ+BLd療法(D-BLd療法)の有用性を評価するため、ランダム化第III相試験であるCEPHEUS試験を実施した。Nature Medicine誌オンライン版2025年2月5日号の報告。  対象は、未治療で移植適応のないまたは初期治療として移植が計画されていないMM患者約395例。D-BLd療法群またはBLd療法群のいずれかにランダムに割り付けられた。8コースのD-BLd療法またはBLd療法を実施した。その後、病勢進行が認められるまでD-Ld療法またはLd療法を継続した。主要エンドポイントは、次世代シーケンサー(NGS)による10−5での全体的な微小残存病変(MRD)陰性化率とした。主な副次的エンドポイントは、完全奏効(CR)以上の割合、無増悪生存期間(PFS)、10−5での持続的なMRD陰性化を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値は58.7ヵ月。 ・MRD陰性化率は、D-BLd療法群で60.9%、BLd療法群で39.4%であった(オッズ比:2.37、95%信頼区間[CI]:1.58〜3.55、p<0.0001)。 ・D-BLd療法群では、BLd療法群よりもCR以上の割合、持続的なMRD陰性化率が有意に高かった。  【CR以上の割合】81.2% vs.61.6%、p<0.0001  【持続的なMRD陰性化率(12ヵ月以上)】48.7% vs. 26.3%、p<0.0001 ・病勢進行または死亡リスクは、D-BLd療法群の方がBLd療法群よりも43%低かった(ハザード比:0.57、95%CI:0.41〜0.79、p=0.0005)。 ・有害事象は、ダラツムマブおよびBLd療法で報告されている既知の安全性プロファイルと一致していた。  著者らは「BLd療法にダラツムマブを併用することで、MRD陰性などの奏効がより深く、持続的にみられることが示された。未治療で移植適応のないまたは初期治療として移植が計画されていないMM患者に対する新たな標準治療として、D-BLd療法による4剤併用は支持されるものである」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Usmani SZ, et al. Nat Med. 2025 Feb 5. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39910273 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら