抗CD38モノクローナル抗体の登場で日本における多発性骨髄腫はどう変わったか
血液内科 Journal Check

抗CD38モノクローナル抗体の登場で日本における多発性骨髄腫はどう変わったか

公開日:2025年2月3日

Iida S, et al. PLoS One. 2025; 20: e0315932.
 日本における多発性骨髄腫(MM)の治療は、プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、そしてダラツムマブなどの抗CD38モノクローナル抗体の承認により大きく変化した。名古屋市立大学の飯田 真介氏らは、大規模データベースを用いて、日本におけるMM患者の患者特性、治療パターン、傾向を評価した。PloS One誌2025年1月23日号の報告。
 本研究では、メディカル・データ・ビジョンの大規模診療データベースを用いた。対象は、2008年4月〜2023年6月にMM診断および疾患コードの記録が2つ以上あり、MM治療の記録が1件以上あった18歳以上の患者2万1,066例。2020年以降に第1選択治療を開始した患者は1+Lコホート、2018年以降に第2選択治療を開始した患者は2+Lコホートに割り当てられた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者2万1,066例のうち、1+Lコホートには6,337例、2+Lコホートには5,964例が含まれた。 ・全体の年齢中央値は74歳、両コホート間で性別の違いは認められなかった(男性の割合:52.4% vs.51.3%)。 ・1+Lコホートでは、ほとんどの患者が移植を行なっておらず(90.8%)、レナリドミドベースの治療を行なっていた患者の割合は51.0%であった。主な治療は、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd療法:15.0%)、レナリドミド+デキサメタゾン(Ld療法:14.0%)であった。 ・非移植患者における第1選択でのDLd療法は、6.0%(2020年1〜6月)から28.0(2023年1〜6月)へ増加していた。 ・2+Lコホートでは、第2選択治療でのレナリドミドベースの治療は、65.0%(2018年1〜6月)から37.0%(2023年1〜6月)に減少しており、ダラツムマブベースの治療が14.0%から39.0%へ増加していた。レナリドミドベースの再治療は44.1%、ダラツムマブベースの再治療は35.2%、イサツキシマブベースの再治療は5.6%で行われていた。
 著者らは「第1選択治療ではレナリドミドベースおよびDLd療法の選択率が高く、第2選択においてもレナリドミドおよび抗CD38モノクローナル抗体による再治療率が高いことから、抗CD38モノクローナル抗体の治療歴の有無に関わらず、レナリドミドベースの治療後に再発したMM患者に対する新たな治療の必要性が示唆された」と結論付けている。


(鷹野 敦夫)

原著論文はこちら Iida S, et al. PLoS One. 2025; 20: e0315932.
https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39847579

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