「リソカブタゲン マラルユーセル[liso-cel](ブレヤンジ)」の記事一覧

日本におけるCAR-T細胞療法の費用対効果分析
日本におけるCAR-T細胞療法の費用対効果分析
公開日:2024年5月13日 Ysutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Apr 10. [Epub ahead of print]  ギリアド・サイエンシズ株式会社のSaaya Tsutsue氏らは、2つ以上の全身療法を行った再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)成人患者の治療に対する3つのCAR-T細胞療法について、費用対効果分析を実施し、比較検討を行った。Future Oncology誌オンライン版2024年4月10日号の報告。  対象製品は、アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)、チサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)の3つのCAR ~T細胞療法。費用対効果分析には、partition survival mixture cure modelを用いた。分析は、ZUMA-1試験に基づき、マッチング調整された間接比較を用いて、JULIET試験およびTRANSCEND試験にあわせて調整を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、生存年数の増加がより大きく、質調整生存年(QALY)の増加が認められた。 【生存年数】 axi-cel vs. tisa-cel:10.87 vs. 7.75(+3.50) axi-cel vs. liso-cel:11.95 vs. 9.11(+2.85) 【QALY】 axi-cel vs. tisa-cel:8.62 vs. 5.96(+2.65) axi-cel vs. liso-cel:9.53 vs. 7.29(+2.24) ・これにより、axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、直接医療費の減少が認められた。 【直接医療費(米ドル)】 axi-cel vs. tisa-cel:280,875.73 vs. 281,852.02(−976.29) axi-cel vs. liso-cel:280,673.52 vs. 280,915.52(−242.00)  著者らは「医療財政の観点から考えると、axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、費用対効果の高い治療選択肢であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ysutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Apr 10. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38597742 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性FLに対するliso-cel〜TRANSCEND FL試験
再発・難治性FLに対するliso-cel〜TRANSCEND FL試験
公開日:2024年6月14日 Morschhauser F, et al. Nat Med. 2024 Jun 3. [Epub ahead of print]  再発・難治性の濾胞性リンパ腫(FL)患者や第1選択の免疫化学療法から24ヵ月以内に疾患が進行する、抗CD20抗体とアルキル化剤の両方に難治性(ダブルリフラクトリー)を示すなどの高リスクの疾患特性を有する患者に対する標準治療は確立されておらず、アウトカム不良であるため、アンメットニーズが存在する。キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)は、2ライン以上の全身療法後の再発・難治性FLの選択肢の1つとして期待されるが、FLの疾患経過におけるCAR-T細胞療法の最適なタイミングについてのコンセンサスはなく、高リスク特性を有する患者の第2選択治療としてのデータもない。 フランス・リール大学のFranck Morschhauser氏らは、再発・難治性FL患者に対するCD19を標的とし、4-1BB共刺激ドメインを有するCAR-T細胞療法薬リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)を評価した第II相試験であるTRANSCEND FL試験の結果を報告した。Nature Medicine誌オンライン版2024年6月3日号の報告。  第II相TRANSCEND FL試験では、FL診断後6ヵ月以内に抗CD20抗体とアルキル化剤による治療を行った後、診断から24ヵ月以内の病勢進行が見られた2ライン以上の患者および/またはmGELF(modified Groupe d'Etude des Lymphomes Folliculaires)基準を満たした患者を対象に、liso-celの評価を行った。主要エンドポイントは、独立審査委員会が評価した全奏効率(ORR)、主な副次的エンドポイントは、完全奏効(CR)率などであった。 主な結果は以下のとおり。 ・データカットオフ時点で、liso-celが投与された患者は130例(フォローアップ期間中央値:18.9ヵ月)。 ・ORRおよびCRは達成された。 ・3ライン以降のFL患者101例では、ORRが97%(95%CI:91.6〜99.4)、CR率が94%(95%CI:87.5〜97.8)であった。 ・2ラインのFL患者23例では、ORRが96%(95%CI:78.1〜99.9)、すべての奏効患者がCRを達成した。 ・サイトカイン放出症候群は58%(グレード3以上:1%)、神経学的イベントは15%(グレード3以上:2%)で発生した。  著者らは「本試験により、高リスクの2ライン以上の再発・難治性FL患者に対するliso-celの有効性と安全性が実証された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Morschhauser F, et al. Nat Med. 2024 Jun 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38830991 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法後の最適なモニタリング期間は
CAR-T細胞療法後の最適なモニタリング期間は
公開日:2024年7月25日 Ahmed N, et al. Blood Adv. 2024 Jul 23. [Epub ahead of print]  CD19を標的としたCAR-T細胞療法として、アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)、チサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)などが承認されたことにより、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)治療は一変し、有効な治療法として確立されつつある。その一方で、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)などの毒性リスクが問題となっている。米FDAは、リスク評価および緩和戦略の一環として、毒性リスクのモニタリングのために患者を治療センターの近隣に4週間滞在することを義務付けている。しかし、このような慎重な対策は、治療費の増加、患者および介護者の負担増加、患者アクセスや社会経済的格差などの課題をもたらす可能性がある。米国・カンザス大学のNausheen Ahmed氏らは、CAR-T細胞療法を行った患者におけるCRS、ICANSの発生や持続期間、非再発死亡率(NRM)の原因を調査した。Blood Advances誌オンライン版2024年7月23日号の報告。  2018〜23年に9施設でaxi-cel、tisa-cel、liso-celによる治療を行った患者475例を対象に、リアルワールドにおけるCAR-T細胞療法実施患者のCRS、ICANSの発生や持続期間、NRMの原因を調査するため、レトロスペクティブ研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・製品間でCRS、ICANSの発生率や持続期間に違いが認められたが、注入後2週間以降で新規に発生したCRS(0%)、ICANS(0.7%)は極めて稀であった。 ・2週間後にCRSの新規発生は認められず、ICANSの新規発生は、3週間後に1例のみで認められた。 ・NRMは、フォローアップ初期にICANS(28日目までで1.1%)、その後3ヵ月間で感染症(1.2%)により発生していた。  著者らは「本研究結果は、CAR-T細胞療法のモニタリングを最適化する上で重要であり、今後は患者の身体的および経済的制約を軽減するための仕組みが求められるであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ahmed N, et al. Blood Adv. 2024 Jul 23. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39042880 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性DLBCLの2ndライン、CAR-T細胞療法が主流となるのか
再発・難治性DLBCLの2ndライン、CAR-T細胞療法が主流となるのか
公開日:2024年8月5日 Asghar K, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1407001.  再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する2ndライン治療としてCAR-T細胞療法と標準治療(SOC)を比較した最近の第III相試験において、これらの結果に一貫性が認められていない。パキスタン・ダウ健康科学大学のKanwal Asghar氏らは、再発・難治性DLBCLの2ndライン治療におけるCAR-T細胞療法の有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Oncology誌2024年7月18日号の報告。  CAR-T細胞療法とSOCの比較を行うため、ランダム効果メタ解析を用いて、推定値をプールした。混合治療の比較では、頻度論的(frequentist)ネットワークメタ解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・3試験、再発・難治性DLBCL患者865例をメタ解析に含めた。 ・CAR-T細胞療法は、SOCと比較し、無イベント生存期間(EFS)、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を示した。 【EFS】HR:0.51、95%CI:0.27〜0.97、I2=92% 【PFS】HR:0.47、95%CI:0.37〜0.60、I2=0% ・CAR-T細胞療法では、全生存期間(OS)の改善傾向が認められたが、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった(HR:0.76、95%CI:0.56〜1.03、I2=29%)。 ・混合治療の比較では、tisa-celと比較し、liso-cel(HR:0.37、95%CI:0.22〜0.61)およびaxi-cel(HR:0.42、95%CI:0.29〜0.61)においてEFSに対するベネフィットが示唆された。  著者らは「再発・難治性DLBCLの2ndラインにおけるCAR-T細胞療法は、SOCと比較し、奏効率が高く、病勢進行を遅らせるうえで効果的な治療法であると考えられる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Asghar K, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1407001.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39091918 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
FLに対する二重特異性抗体 vs. CAR-T細胞療法
FLに対する二重特異性抗体 vs. CAR-T細胞療法
公開日:2024年10月30日 Morabito F, et al. Eur J Haematol. 2024 Oct 27. [Epub ahead of print]  再発・難治性濾胞性リンパ腫(FL)の治療は、CAR-T細胞療法と二重特異性抗体の間で、議論の的となっている。いずれの薬剤も免疫生物学的および分子学的マーカーを標的としているが、臨床試験における直接比較が行われていないため、有効性の比較は不明なままである。イタリア・Gruppo Amici Dell'Ematologia FoundationのFortunato Morabito氏らは、再発・難治性FLに対する二重特異性抗体とCAR-T細胞療法の比較を行うため、文献レビューを実施した。European Journal of Haematology誌オンライン版2024年10月27日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・ZUMA-5試験などの重要な試験において、再発・難治性FLに対してアキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)は、完全奏効(CR)率79%、奏効期間中央値3年以上を達成しており、その有効性が報告されている。 ・同様に、TRANSCEND FL試験において、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)は、CR率94%と報告されており、複数の治療歴を有する(heavily pretreated)患者における良好なアウトカムが示されている。 ・二重特異性抗体mosunetuzumabは、GO29781試験において、有望なアウトカムを示しており、heavily pretreatedの再発・難治性FL患者における全奏効(OR)率は62%であった。 ・CAR-T細胞療法は、1回の輸注で治療効果が得られる可能性があるものの、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、血球減少などの重篤な有害事象のリスクもあるため、専門的なマネジメントおよび患者モニタリングが必要となる。 ・対照的に、二重特異性抗体は、CAR-T細胞療法と比較し、奏効率が低く、頻繁な投与が求められる点でリスク/ベネフィットが相殺されるが、より許容度の高い治療オプションでると考えられる。 ・CAR-T細胞療法と二重特異性抗体では、有効性・安全性プロファイルが異なるため、個別化治療戦略が不可欠である。 ・費用対効果を考慮する際には、両治療法における臨床アウトカムおよびQOLの改善の観点から評価する必要がある。CAR-T細胞療法は、初期費用が高額になるが、長期間寛解の可能性により反復治療や入院に伴う費用が軽減される可能性がある。  著者らは「今後の研究により、耐性メカニズムや最適な治療の順序が明らかになることで、再発・難治性FLのマネジメント戦略は、さらに改善されると考えられる」とまとめている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Morabito F, et al. Eur J Haematol. 2024 Oct 27. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39462177 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら