ライブラリー FLに対する二重特異性抗体 vs. CAR-T細胞療法
公開日:2024年10月30日
Morabito F, et al. Eur J Haematol. 2024 Oct 27. [Epub ahead of print]
再発・難治性濾胞性リンパ腫(FL)の治療は、CAR-T細胞療法と二重特異性抗体の間で、議論の的となっている。いずれの薬剤も免疫生物学的および分子学的マーカーを標的としているが、臨床試験における直接比較が行われていないため、有効性の比較は不明なままである。イタリア・Gruppo Amici Dell'Ematologia FoundationのFortunato Morabito氏らは、再発・難治性FLに対する二重特異性抗体とCAR-T細胞療法の比較を行うため、文献レビューを実施した。European Journal of Haematology誌オンライン版2024年10月27日号の報告。
主な結果は以下のとおり。
・ZUMA-5試験などの重要な試験において、再発・難治性FLに対してアキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)は、完全奏効(CR)率79%、奏効期間中央値3年以上を達成しており、その有効性が報告されている。
・同様に、TRANSCEND FL試験において、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)は、CR率94%と報告されており、複数の治療歴を有する(heavily pretreated)患者における良好なアウトカムが示されている。
・二重特異性抗体mosunetuzumabは、GO29781試験において、有望なアウトカムを示しており、heavily pretreatedの再発・難治性FL患者における全奏効(OR)率は62%であった。
・CAR-T細胞療法は、1回の輸注で治療効果が得られる可能性があるものの、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、血球減少などの重篤な有害事象のリスクもあるため、専門的なマネジメントおよび患者モニタリングが必要となる。
・対照的に、二重特異性抗体は、CAR-T細胞療法と比較し、奏効率が低く、頻繁な投与が求められる点でリスク/ベネフィットが相殺されるが、より許容度の高い治療オプションでると考えられる。
・CAR-T細胞療法と二重特異性抗体では、有効性・安全性プロファイルが異なるため、個別化治療戦略が不可欠である。
・費用対効果を考慮する際には、両治療法における臨床アウトカムおよびQOLの改善の観点から評価する必要がある。CAR-T細胞療法は、初期費用が高額になるが、長期間寛解の可能性により反復治療や入院に伴う費用が軽減される可能性がある。
著者らは「今後の研究により、耐性メカニズムや最適な治療の順序が明らかになることで、再発・難治性FLのマネジメント戦略は、さらに改善されると考えられる」とまとめている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Morabito F, et al. Eur J Haematol. 2024 Oct 27. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39462177
血液内科 Pro(血液内科医限定)へ
※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら