「リツキシマブ(リツキサン)」の記事一覧

再発・難治性MCLに対するリツキシマブ+高用量シタラビン+デキサメタゾン+ボルテゾミブ療法〜ランダム化非盲検第III相試験
再発・難治性MCLに対するリツキシマブ+高用量シタラビン+デキサメタゾン+ボルテゾミブ療法〜ランダム化非盲検第III相試験
公開日:2024年5月20日 Fischer L, et al. Leukemia. 2024 Apr 27. [Epub ahead of print]  再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)患者に対する治療は、主要な臨床課題の1つである。ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのLuca Fischer氏らは、自家造血幹細胞移植の適応なしまたは移植後再発した再発・難治性MCL患者に対するリツキシマブ+高用量シタラビン+デキサメタゾン+ボルテゾミブ療法(R-HAD+B)のランダム化非盲検並行群間第III相試験を実施した。Leukemia誌オンライン版2024年4月27日号の報告。  R-HAD+B療法の有効性を評価するため、ボルテゾミブを併用しないR-HADとの比較を行った。主要エンドポイントは、治療成功期間(TTTF)とし、副次的エンドポイントには、奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・128例がR-HAD+B群(64例)またはR-HAD群(64例)にランダムに割り付けられた。 ・TTTF中央値は、R-HAD+B群で12ヵ月、R-HAD群で2.6ヵ月であった(p=0.045、MIPIスコア調整ハザード比[aHR]:0.69、95%CI:0.47〜1.02)。 ・全奏効率は、R-HAD+B群で63%、R-HAD群で45%(p=0.049)であった。 ・完全奏効率は、R-HAD+B群で42%、R-HAD群で19%(p=0.0062)であった。 ・サブグループ解析では、65歳以上の患者(aHR:0.48、95%CI:0.29〜0.79)、自家移植歴のない患者(aHR:0.52、95%CI:0.28〜0.96)において、有意な治療効果が認められた。 ・毒性は、主に血液学的毒性であり、化学療法のバックボーンに起因していた。 ・グレード3以上の白血球減少症およびリンパ球減少症は、R-HAD+B群でより認められたが、両群間で重篤な感染症に差は認められなかった。  著者らは「再発・難治性MCLに対するボルテゾミブと化学療法との併用は、有効である可能性があり、とくにBTK阻害薬による治療が選択肢とならない場合には、さらに評価されるべきであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fischer L, et al. Leukemia. 2024 Apr 27. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38678093 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
公開日:2024年10月4日 Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.  中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、全身的な病変を伴わずに中枢神経系へ影響を及ぼすアグレッシブリンパ腫である。第1選択治療として、大量メトトレキサート(HDMTX)ベースのレジメンが推奨されるが、その後は、高用量化学療法、全脳放射線療法、テモゾロミド併用または維持療法、自家造血幹細胞移植(auto HSCT)などによる強化療法が行われる。HDMTX+リツキシマブによる治療が進歩したものの、いまだ多くの患者が再発している。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBrian Primeaux氏らは、再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Hematological Oncology誌2024年11月号の報告。  2016年4月1日〜2022年7月1日にHDMTXベースの第1選択治療を行なった成人PCNSL患者54例を対象に、レトロスペクティブ記述的分析を行なった。二次性中枢神経系リンパ腫、非B細胞由来PCNSL、眼内悪性リンパ腫の治療目的でHDMTXを行なった患者は除外した。再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴および第1選択治療後の強化療法の特徴について、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・31例(57%)の患者には、リツキシマブ+大量シタラビン(R-HD-AraC療法)、全脳放射線療法、またはその両方による強化療法が行われていた。 ・13例(24%)は、auto-HSCTに進んでいた。 ・病勢進行は25例で認められ、17例に対し第2選択治療が行われた。 ・第2選択治療の内訳は、臨床試験(18%)、リツキシマブ+レナリドミド(18%)、HDMTXベースのレジメン(18%)、イブルチニブ+リツキシマブ(12%)、R-HD-AraC療法(12%)。 ・さらに7例で病勢進行が認められ、第3選択治療が行われた。 ・第3選択治療はさまざまであり、リツキシマブ+レナリドミド、イブルチニブ+HDMTX、イブルチニブ、リツキシマブ、メトトレキサート、シタラビン、R-HD-AraC療法、リツキシマブ+ニボルマブ、全脳放射線療法などで治療されていた。 ・5例は第4選択治療として、リツキシマブ、リツキシマブ+レナリドミド、R+HDMTX、ニボルマブが行われた。 ・第5選択治療以降を行った患者は3例、これまでのレジメンに加え、リツキシマブ+テモゾロミド、ペムブロリズマブが用いられていた。  著者らは「再発・難治性PCNSLの治療選択肢は多様であり、医師の好み、臨床試験の適格性、治療歴、PS、臓器機能、治療目的など、患者の要因に大きく影響されていることがわかった。最適なマネジメントを実現するためにも、プロスペクティブ臨床試験の必要性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39340121 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
難治性免疫原性TTPに対してダラツムマブは治療選択肢となりうるか
難治性免疫原性TTPに対してダラツムマブは治療選択肢となりうるか
公開日:2024年9月11日 Weisinger J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 4. [Epub ahead of print]  リツキシマブ付耐または不応性の免疫原性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者に対する免疫抑制療法は、依然として議論の的となっている。抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブは、治療選択肢の1つとなりうる可能性が示唆されているが、そのデータは十分ではない。フランス・ソルボンヌ大学のJulia Weisinger氏らは、フランス国内でダラツムマブ治療を行った免疫原性TTP患者について調査を行うため、French Thrombotic Microangiopathies Reference Centerにおいて全国調査を実施した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年9月4日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・免疫原性TTP患者7例より、9つのエピソードが特定された。 ・臨床的奏効がみられADAMTS13再発を呈したケースが8件、リツキシマブ不耐後の急性期ケース1件であった。 ・平均3ライン以上の治療歴が認められた。 ・ダラツムマブ治療後、ADAMTS13活性は8例で改善がみられ、そのうち3例は正常化した。 ・ADAMTS13再発は3例で認められ、そのうち2例はダラツムマブによる再治療で改善した。 ・ADAMTS13無再発生存期間中央値は未達、12ヵ月のADAMTS13無再発生存率は56%であった。 ・ダラツムマブ関連有害事象は5例で発生し、重篤でない注入関連反応が全例で認められた。  著者らは「本結果より、ダラツムマブは、リツキシマブ不耐または難治性の免疫原性TTP患者に対する有効な治療選択肢となりうる可能性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Weisinger J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 4. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39228246 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
オビヌツズマブはリツキシマブよりCOVID-19重症化リスクが本当に高いのか〜アジア人対象研究
オビヌツズマブはリツキシマブよりCOVID-19重症化リスクが本当に高いのか〜アジア人対象研究
公開日:2024年9月10日 Shu W, et al. Virol J. 2024; 21: 212.  抗CD20モノクローナル抗体で治療を行った患者では、COVID-19による有害アウトカムリスクが上昇する可能性がある。新規抗CD20モノクローナル抗体であるオビヌツズマブは、リツキシマブと比較し、B細胞減少効果が高く、in vitroでの優れた有効性が示されている。中国・Ningbo Medical Center Li Huili HospitalのWenxiu Shu氏らは、オビヌツズマブがリツキシマブよりもCOVID-19によるアウトカムを悪化させるかを評価するため、レトロスペクティブ単施設コホート研究を実施した。Virology Journal誌2024年9月9日号の報告。  対象は、2022年にNingbo Medical Center Li Huili Hospital に入院し、抗CD20モノクローナル抗体による治療を行ったB細胞リンパ腫患者124例(リツキシマブ群:106例、オビヌツズマブ群:18例)。COVID-19による有害アウトカムを、両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・リツキシマブ群の86.8%はアグレッシブリンパ腫であったのに対し、オビヌツズマブ群の多くはインドレントリンパ腫であった。 ・リツキシマブ群の57.5%、オビヌツズマブ群の88.9%は、COVID-19波の3ヵ月以内に抗CD20モノクローナル抗体治療が行われており、オビヌツズマブ群ではリツキシマブ群よりもベンダムスチンを投与した患者の割合が高かった(22.2% vs. 4.7%、p=0.031)。 ・COVID-19による主な有害アウトカムの比較は次のとおりであり、オビヌツズマブ群はリツキシマブ群よりも高リスクであったが、COVID-19関連死亡率に有意な差は認められなかった。 【入院した患者の割合】55.6% vs. 20.8%(p=0.005) 【SARS-CoV-2の長期感染した患者の割合】38.9% vs. 2.9%(p<0.001) 【重度のCOVID-19を発症した患者の割合】33.3% vs. 4.7%(p<0.001) ・ベンダムスチンの影響を排除するため、ベンダムスチンを使用しなかった患者を対象としたサブグループ解析においても、依然としてオビヌツズマブ群(14例)はリツキシマブ群(101例)よりも高リスクであった。 【入院した患者の割合】50.0% vs. 19.8%(p=0.031) 【SARS-CoV-2の長期感染した患者の割合】28.6% vs. 2.0%(p=0.002) 【重度のCOVID-19を発症した患者の割合】21.4% vs. 4.0%(p=0.038) ・多変量解析の結果では、オビヌツズマブ治療は、SARS-CoV-2感染の長期化(OR:27.05、95%CI:3.75〜195.22、p=0.001)、重症COVID-19の発生率上昇(OR:15.07、95%CI:2.58〜91.72、p=0.003)との関連が示唆された。  著者らは「オビヌツズマブ群は、リツキシマブ群よりもSARS-CoV-2感染の長期化および重症COVID-19のリスクが高いことが示唆された。本研究は、アジア人集団におけるオビヌツズマブとリツキシマブを投与された患者のCOVID-19のアウトカムを比較した最初の研究である」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shu W, et al. Virol J. 2024; 21: 212.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39252096 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
低悪性度NHLに対する抗CD47抗体magrolimab+リツキシマブ〜3年間フォローアップ試験/Blood Adv
低悪性度NHLに対する抗CD47抗体magrolimab+リツキシマブ〜3年間フォローアップ試験/Blood Adv
公開日:2024年9月3日 Mehta A, et al. Blood Adv. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]  再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療において、現在の治療法では、治癒不能であると考えられている。これまで実施された抗CD47抗体magrolimabと抗CD20抗体リツキシマブとの併用による第Ib/II相試験では、再発・難治性低悪性度NHLに対する抗腫瘍効果が示されている。米国・アラバマ大学バーミンガム校のAmitkumar Mehta氏らは、再発・難治性低悪性度NHLに対するmagrolimab+リツキシマブの長期における安全性および有効性を評価するため、第Ib/II相試験の3年間フォローアップ調査を行い、その結果を報告した。Blood Advances誌オンライン版2024年8月30日号の報告。  第Ib相試験では、magrolimabプライミング後に4群に対し、リツキシマブ375mg/m2+magrolimab維持用量10〜45mg/kgを投与した。第II相試験では、magrolimab 30mg/kgまたは45mg/kgの検討を行った。主要エンドポイントは、治療中に発生した有害事象(TEAE)および全奏効率(ORR)とした。副次的エンドポイントには、奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を含めた。探索的分析には、循環腫瘍DNA、magrolimab抗腫瘍効果のバイオマーカー、薬物標的発現の評価を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・第Ib/II相試験で治療を行った患者46例の内訳は、濾胞性リンパ腫42例、辺縁帯リンパ腫4例であった。 ・すべての患者で1つ以上のTEAEが認められ、治療関連TEAEは44例で認められた。 ・長期フォローアップ期間中、新たな毒性および治療関連死亡は、いずれも報告されなかった。 ・フォローアップ期間中央値は36.7ヵ月(範囲:1.2〜62.3)。 ・ORR達成率は52.2%、完全奏効(CR)達成率は30.4%であった。 ・DOR中央値は15.9ヵ月(95%CI:5.6〜推定不能)であった。 ・奏効までの期間中央値は1.8ヵ月(範囲:1.6〜5.5)、PFS中央値は7.4ヵ月(95%CI:4.8〜13.0)、OS中央値は未達であった。  著者らは「低悪性度NHLに対するmagrolimab+リツキシマブの長期的な安全性および有効性が示され、CD47とCD20を標的とした治療の組み合わせの有用性が裏付けられた」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mehta A, et al. Blood Adv. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39213421 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ベンダムスチン療法のリンパ球回復までの期間はどの程度か?
ベンダムスチン療法のリンパ球回復までの期間はどの程度か?
公開日:2024年9月2日 Donzelli L, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]  ベンダムスチン+リツキシマブ療法(BR療法)またはベンダムスチン+リツキシマブ+シタラビン療法(R-BAC療法)は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の高齢患者、集中治療または自家移植適応のない患者に対する標準的な第1選択化学療法である。ベンダムスチンは、長期にわたるリンパ球減少を引き起こすことが知られているが、MCL患者における持続性に関するエビデンスは乏しい。イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のLivia Donzelli氏らは、CAR-T細胞療法による免疫療法の可能性も考慮し、MCL患者におけるベンダムスチン療法後のリンパ球回復までの期間を推定するため、レトロスペクティブに分析を行った。Annals of Hematology誌オンライン版2024年8月30日号の報告。  対象は、2011年5月~2022年4月にサピエンツァ大学病院血液内科においてベンダムスチンによる第1選択治療(BR療法またはR-BAC療法)を行ったMCL患者44例(連続登録)。患者データを収集し、レトロスペクティブに分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・BR療法は24例(55%)、R-BAC療法は20例(45%)に用いられた。 ・ベースライン時のリンパ球数中央値は1,795/μL(範囲:370〜1万1,730)であった。 ・治療終了から1ヵ月後には450/μL(範囲:50〜3,300)、3ヵ月後には768/μL(範囲:260〜1,650)であった。 ・リンパ球数中央値は徐々に増加し、6、9ヵ月後には900/μLまで回復した(6ヵ月後:370〜2,560、9ヵ月後:130〜2,770)。 ・12ヵ月後のリンパ球数中央値は、1,256/μL(範囲:240〜4,140)であった。  著者らは「MCL患者におけるベンダムスチン療法後のリンパ球数中央値は、治療後1、3、6、9ヵ月時点ではベースラインより有意に低かったが、12ヵ月後には回復がみられた」とし「MCL患者に対するCAR-T細胞療法を検討する際、ベンダムスチン投与とリンパ球除去との間に9ヵ月以上間隔を空ける必要がある」とまとめている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Donzelli L, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39212720 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人TTP患者の再発予防、カプラシズマブ+早期リツキシマブ投与が有用
日本人TTP患者の再発予防、カプラシズマブ+早期リツキシマブ投与が有用
公開日:2024年8月7日 Imada K, et al. Thromb J. 2024; 22: 72.  日本人患者を対象とした国内第II /III相試験において、後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に対するカプラシズマブ治療の有効性が示され、後天性TTPの再発率低下が報告された。カプラシズマブ治療は、ADAMTS13活性を毎週モニタリングし、症状の消失や活性の低下が持続するまで治療を継続することで、病勢増悪や再発を抑制することができる。大阪赤十字病院の今田 和典氏らは、国内第II/III相試験の対象患者におけるカプラシズマブ治療のADAMTS13活性/インヒビターレベルの変化を評価するため、事後分析を実施した。Thrombosis Journal誌2024年8月2日号の報告。  18歳以上の後天性TTP患者を対象に、血漿交換(TPE)後30日間、TPEおよび免疫抑制薬と併用してカプラシズマブを1日1回10m投与した。アウトカムには、ADAMTS13活性の正常化までの期間、治療終了時のADAMTS13活性レベル、治療中のADAMTS13 inhibitor boostingの発生率、血小板数の正常化までの期間、TPEの日数、安全性を含めた。治療中のADAMTS13インヒビターの再上昇の有無によるアウトカム評価も行なった。 主な結果は以下のとおり。 ・後天性TTP患者19例を分析に含めた。 ・ADAMTS13活性が10、20、60%以上回復するまでの期間は、それぞれ以下の通りであった。 【10%以上回復】14.6日(95%CI:5.9〜24.8) 【20%以上回復】18.5日(95%CI:5.9〜31.8) 【60%以上回復】47.5日(95%CI:18.5〜60.9) ・カプラシズマブ治療終了時のADAMTS13活性レベルの中央値は、62.0%(範囲:29.0〜101.0)であった。 ・ADAMTS13 inhibitor boostingの患者9例では、ADMTS13活性の反応に遅れがみられ、ADAMTS13 inhibitor boostingでなかった患者と比較し、血小板数の正常化までの期間中央値、TPEの日数中央値の短縮が認められた。 ・TPE終了後、ADAMTS13 inhibitor boostingのほぼすべての患者に対し、リツキシマブが投与された(88.9%)。 ・リツキシマブで治療を行ったADAMTS13 inhibitor boostingでなかった患者は、TPE終了前にリツキシマブが投与されていた。 ・再発患者は1例のみであり、有害事象によりカプラシズマブ投与を中止した直後に発現した。  著者らは「後天性TTP患者では、治療早期にリツキシマブを投与し、TPEおよび免疫抑制薬とカプラシズマブの併用を行うことで、ADAMTS13 inhibitor boostingリスクの軽減につながる可能性が示唆された。カプラシズマブに加え、リツキシマブを早期に使用することで、ADAMTS13 inhibitor boostingによる後天性TTP再発の予防が期待できる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Imada K, et al. Thromb J. 2024; 22: 72.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39095866 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
DLBCLに対するR-CHOP療法による完全寛解率
DLBCLに対するR-CHOP療法による完全寛解率
公開日:2024年5月7日 Hassan SU, et al. Cureus. 2024; 16: e57368.  びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、臨床症状および治療反応が多岐に渡り、アウトカムの予測や治療戦略の検討に課題が残る。分子サブタイピングや予後評価が進歩したにも関わらず、DLBCLの最適なマネジメントに関しては、依然として不確実性があり、特定の患者集団における治療反応およびアウトカムの理解を促進するためにも、局所的な調査の必要性が浮き彫りとなっている。パキスタン・Hayatabad Medical Complex PeshawarのSani U. Hassan氏らは、特定の成人集団においてR-CHOP療法を受けているDLBCL患者の完全寛解(CR)率を評価するため、本研究を実施した。Cureus誌2024年4月1日号の報告。  本研究は、2022年8月8日〜2023年4月8日に、パキスタン・Hayatabad Medical Complexの腫瘍内科で実施した。対象は、治療歴を有する患者を除く20〜70歳の新規DLBCL患者95例(男性:55例、女性:40例)。人口統計学的特徴、罹病期間、CRに関するデータは、事前に定義したデータ収集フォームを用いて収集した。 主な結果は以下のとおり。 ・R-CHOPによるCR達成率は、84.2%(80例)であった。 ・年齢分布に関しては、45歳以下が45.3%(43例)であった。 ・罹病期間は、3ヵ月以内が63.2%(60例)を占めていた。 ・BMIの分類では、18.5kg/m2未満が9.5%(9例)、18.5〜24.9kg/m2が51.6%(49例)、25〜30kg/m2が38.9%(37例)であった。  著者らは「DLBCLに対するR-CHOP療法は、CR達成に有望な治療法であるが、遅発性の副作用に関する懸念はいまだ残存している。これらDLBCLの課題に対し、新規の予後バイオマーカーを検証し、代替治療アプローチを開発し、患者アウトカムの改善に繋げ、世界的な負担を軽減するためにも、継続的な研究努力が求められる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Hassan SU, et al. Cureus. 2024; 16: e57368.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38694660 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性FL、DLBCLに対するポラツズマブ+ベネトクラクス+坑CD20モノクローナル抗体の有効性・安全性
再発・難治性FL、DLBCLに対するポラツズマブ+ベネトクラクス+坑CD20モノクローナル抗体の有効性・安全性
公開日:2024年5月23日 Yuen S, et al. Am J Hematol. 2024 May 3. [Epub ahead of print]  再発・難治性濾胞性リンパ腫(FL)に対するポラツズマブ ベドチン+ベネトクラクス+オビヌツズマブおよび再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対するポラツズマブ ベドチン+ベネトクラクス+リツキシマブの有効性・安全性を評価した非盲検国際多施設共同非ランダム化第Ib/II相試験が行われた。その結果について、オーストラリア・Calvary Mater Newcastle HospitalのSam Yuen氏らが、報告を行った。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年5月3日号の報告。  再発・難治性FLには、ポラツズマブ ベドチン(1.8mg/kg)+ベネトクラクス(800mg)+オビヌツズマブ(1,000mg)、再発・難治性DLBCLには、ポラツズマブ ベドチン(1.8mg/kg)+ベネトクラクス(800mg)+リツキシマブ(375mg/m2)の導入療法後(21日サイクル6回)、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を達成した患者に対し、ベネトクラクス+オビヌツズマブまたはリツキシマブによる治療を継続した。主要エンドポイントは、導入療法後のCR率とした。 主な結果は以下のとおり。 ・安全性評価対象患者はFLで74例(年齢中央値:64歳、1次治療24ヵ月以内の疾患進行率:25.7%、FLIPIスコア 3〜5:54.1%、過去の治療歴が2以上:74.3%)、DLBCLで57例(年齢中央値:65歳、IPIスコア 3〜5:54.4%、過去の治療歴が2以上:77.2%)であった。 ・最も一般的な非血液学的有害事象(主にグレード1〜2)は、下痢(FL:55.4%、DLBCL:47.4%)、悪心(FL:47.3%、DLBCL:36.8%)であり、最も一般的な血液毒性(グレード3〜4)は、好中球減少症(FL:39.2%、DLBCL:52.6%)であった。 ・有効性評価対象患者には、推奨される第II相試験の用量で治療を行なった患者を含めた(FL:49例、DLBCL:48例)。 ・導入療法後のCR率は、FLで59.2%、DLBCLで31.3%であった。 ・無増悪生存期間の中央値は、FLで22.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:14.5〜評価不能)、DLBCLで4.6ヵ月(95%CI:3.6〜8.1)であった。  著者らは「再発・難治性のFLまたはDLBCLに対するポラツズマブ ベドチン+ベネトクラクス+オビヌツズマブ/リツキシマブは、許容可能な安全性を有しており、とくに高リスク患者を含む再発・難治性FLにおいては、有望な奏効率が認められた」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Yuen S, et al. Am J Hematol. 2024 May 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38700035 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
FCR療法による一次治療を行なったCLL患者の長期分析〜ドイツCLL研究グループ
FCR療法による一次治療を行なったCLL患者の長期分析〜ドイツCLL研究グループ
公開日:2024年5月21日 Kutsch N, et al. Eur J Haematol. 2024 May 1. [Epub ahead of print]  臨床試験において、慢性リンパ性白血病(CLL)に対するフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによるFCR療法は、長期フォローアップデータからも良好な有効性が示唆されている。ドイツ・ケルン大学のNadine Kutsch氏らは、ドイツCLL研究グループ(GCLLSG)のレジストリより収集したデータを用いて、CLL患者に対するFCR療法の長期データの分析を行なった。European Journal of Haematology誌オンライン版2024年5月1日号の報告。  FCR療法による1次治療を行なったCLL患者417例(臨床試験以外での治療実施患者:293例、70.3%)を分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・1次治療からの観察期間の中央値は、95.8ヵ月(四分位範囲:58.7〜126.8)であった。 ・GCLLSGレジストリでデータ収取を開始した2013年以降、FCR療法の1次治療を行なった194例(46.5%)の患者データに焦点を当てたところ、奏効率は85%、非奏効率は15%、データが欠落していた患者は3.6%であった。 ・無イベント生存期間(EFS)の中央値は、60.2ヵ月、5年EFS率は50.6%であった。 ・高リスク患者(IGHV変異なし)78例のEFSの中央値は、45.4ヵ月、5年EFS率は36.3%であった。 ・IGHV変異患者40例のEFSの中央値は、77.5ヵ月、5年EFS率は60.3%であった。 ・全生存期間の5年生存率は92.7%であった。  著者らは「CLLに対する1次治療としてのFCR療法は、とくにIGHV変異患者において、EFSの延長と関連していることが明らかとなった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kutsch N, et al. Eur J Haematol. 2024 May 1. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38693677 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら