「ベンダムスチン(トレアキシン)」の記事一覧

CAR-T細胞療法に移行したLBCL患者の治療成績
CAR-T細胞療法に移行したLBCL患者の治療成績
公開日:2024年5月29日 Iacoboni G, et al. Hemasphere. 2024; 8: e62.  CAR-T細胞療法を行なった再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者の60%は、その後の疾患進行を経験する。CAR-T細胞療法後の標準的な治療法はいまだ明らかではなく、情報不足や不均一性が見られる。スペイン・バルデブロン大学のGloria Iacoboni氏らは、スペインと英国でCAR-T細胞療法後に進行した再発・難治性LBCL患者を対象に分析を行った。HemaSphere誌2024年5月21日号の報告。  対象は、2018年7月〜2022年3月にスペインと英国でCAR-T細胞療法後に進行した再発・難治性LBCL患者387例。 主な結果は以下のとおり。 ・全生存期間(OS)中央値は5.3ヵ月、注入と進行の間隔に応じて有意な差が認められた(2ヵ月未満:1.9ヵ月、2〜6ヵ月:5.2ヵ月、6ヵ月以上:未到達)。 ・進行後、237例(61%)が次の治療へ移行し、全(完全)奏効率、12ヵ月無増悪生存率(PFS)およびOSは以下の通りであった。 ●Pola-BR療法:67%(奏功率:38%、PFS:36.2%、OS:51.0%) ●二重特異性抗体:51%(奏功率:36%、PFS:32.0%、OS:50.1%) ●放射線療法:33%(奏功率:26%、PFS:30.8%、OS:37.5%) ●免疫チェックポイント阻害薬:25%(奏功率:0%、PFS:29.9%、OS:27.8%) ●レナリドマイド:25%(奏功率:14%、PFS:7.3%、OS:20.8%) ●化学療法:25%(奏功率:14%、PFS:6.1%、OS:18.3%) ・同種造血幹細胞移植を行った患者は32例(14%)、フォローアップ期間中央値の15.1ヵ月後にOS中央値に達しなかった。  著者らは「CAR-T細胞療法後、最初の2ヵ月以内に進行した再発・難治性LBCL患者のアウトカムは不良であった。ポラツズマブや二重特異性抗体などの新規標的薬による治療は、CAR-T細胞療法後においても、長期生存率の改善が期待できる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Iacoboni G, et al. Hemasphere. 2024; 8: e62.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38774657 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ASCT移植前処置レジメンBeEAM vs. CEM〜ランダム化比較試験
ASCT移植前処置レジメンBeEAM vs. CEM〜ランダム化比較試験
公開日:2024年8月14日 Eltelbanei MA, et al. BMC Cancer. 2024; 24: 1002.  自家造血幹細胞移植(ASCT)は、リンパ腫患者において極めて重要な治療法の1つである。従来、BeEAMレジメン(ベンダムスチン+エトポシド+シタラビン+メルファラン)は、凍結保存に依存しているが、CEMレジメンは(カルボプラチン+エトポシド+メルファラン)、凍結保存を必要とせず、短期間での投与に最適化されている。エジプト・ダマンフール大学のMohamed A. Eltelbanei氏らは、ASCTの移植前処置レジメンとしてのBeEAMレジメンとCEMレジメンの臨床的プロファイルおよび安全性プロファイルを比較するため、対照ランダム化臨床試験を実施した。BMC Cancer誌2024年8月13日号の報告。  対象は、エジプト・カイロの国際医療センターでASCTを受けたリンパ腫患者58例。対象患者は、BeEAM群29例またはCEM群29例にランダムに割り付けられ、18ヵ月フォローアップを行った。臨床的および安全性のアウトカムは、好中球および血小板の生着までの期間、副作用、入院期間、移植関連死亡率、生存率に焦点を当て、両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・CEMレジメンの有意なアドバンテージが示唆された。 ・CEM群は、BeEAM群と比較し、好中球の回復期間が有意に短かった(平均8.5日 vs. 14.5日、p<0.0001)。 ・同様に、CEM群は、BeEAM群と比較し、血小板の回復期間も有意に短かった(平均11日 vs. 23日、p<0.0001)。 ・入院期間についても、CEM群は、BeEAM群と比較し、有意に短かった(平均18.5日 vs. 30日、p<0.0001)。 ・さらに、全生存割合(OS)は、CEM群96.55%(95%CI:84.91〜99.44)、BeEAM群79.1%(95%CI:63.11〜89.75)であり、両群間に有意な差が認められた(p=0.049)。 ・無増悪生存割合(PFS)も同様で、CEM群86.21%(95%CI:86.14〜86.28)、BeEAM群62.07%(95%CI:61.94〜62.20)と有意な差が認められた(p=0.036)。  著者らは「ASCTの移植前処置CEMレジメンは、好中球および血小板の回復が早く、入院期間の短縮、OSおよびPFSの有意な改善が期待できることが示唆された。今後、より長期にわたる大規模サンプルを用いた研究が必要とされる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Eltelbanei MA, et al. BMC Cancer. 2024; 24: 1002.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39134959 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ベンダムスチン治療によるCMV感染リスクの高い患者の特徴は
ベンダムスチン治療によるCMV感染リスクの高い患者の特徴は
公開日:2024年8月20日 Huang JP, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 19. [Epub ahead of print]  ベンダムスチンは、悪性リンパ腫の治療によく用いられる薬剤であり、優れた効果を発現するものの、免疫抑制作用が強いといわれている。そのため、ベンダムスチン使用後のサイトメガロウイルス(CMV)再活性化が報告されている。台湾・台北栄民総医院のJen-Pei Huang氏らは、ベンダムスチンを含むレジメンで治療を行った悪性リンパ腫患者におけるCMV感染への影響を明らかにするため、本研究を実施した。Annals of Hematology誌オンライン版2024年8月19日号の報告。  2010年9月〜2022年4月に台湾・台北栄民総医院で悪性リンパ腫の治療を行った患者をレトロスペクティブに分析した。臨床的に重要なCMV感染(CS-CMVi)の定義は、ベンダムスチン使用後にCMV治療を必要とした最初のCMV再活性化とした。患者のベースライン特性および検査データを収集した。主要エンドポイントは、CS-CMViとした。CS-CMViと死亡率に対するリスク因子を推定するため、時間依存性共変量Cox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、ベンダムスチンを含むレジメンで治療を行った悪性リンパ腫患者211例。 ・CS-CMViは、27例(12.8%)で認められた。 ・3年間のフォローアップ期間中の累積発生率は、100人年当たり10.1人であった。 ・多変量解析では、CS-CMViのリスク因子として、以下が挙げられた。 ●ベンダムスチン治療開始前の治療歴が1回以上(95%CI:1.10〜24.76) ●血清アルブミン値3.5g/dL未満(95%CI:2.63〜52.93) ●肝疾患(95%CI:1.51〜28.61) ・CS-CMViは、死亡率の主な独立したリスク因子の1つであった(95%CI:1.23〜10.73)。  著者らは「治療歴が1回以上、低アルブミン血症、肝疾患が認められるリンパ腫患者に対するベンダムスチンを含むレジメンでの治療は、CS-CMViにとくに注意する必要があることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Huang JP, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 19. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39158713 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ベンダムスチン療法のリンパ球回復までの期間はどの程度か?
ベンダムスチン療法のリンパ球回復までの期間はどの程度か?
公開日:2024年9月2日 Donzelli L, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]  ベンダムスチン+リツキシマブ療法(BR療法)またはベンダムスチン+リツキシマブ+シタラビン療法(R-BAC療法)は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の高齢患者、集中治療または自家移植適応のない患者に対する標準的な第1選択化学療法である。ベンダムスチンは、長期にわたるリンパ球減少を引き起こすことが知られているが、MCL患者における持続性に関するエビデンスは乏しい。イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のLivia Donzelli氏らは、CAR-T細胞療法による免疫療法の可能性も考慮し、MCL患者におけるベンダムスチン療法後のリンパ球回復までの期間を推定するため、レトロスペクティブに分析を行った。Annals of Hematology誌オンライン版2024年8月30日号の報告。  対象は、2011年5月~2022年4月にサピエンツァ大学病院血液内科においてベンダムスチンによる第1選択治療(BR療法またはR-BAC療法)を行ったMCL患者44例(連続登録)。患者データを収集し、レトロスペクティブに分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・BR療法は24例(55%)、R-BAC療法は20例(45%)に用いられた。 ・ベースライン時のリンパ球数中央値は1,795/μL(範囲:370〜1万1,730)であった。 ・治療終了から1ヵ月後には450/μL(範囲:50〜3,300)、3ヵ月後には768/μL(範囲:260〜1,650)であった。 ・リンパ球数中央値は徐々に増加し、6、9ヵ月後には900/μLまで回復した(6ヵ月後:370〜2,560、9ヵ月後:130〜2,770)。 ・12ヵ月後のリンパ球数中央値は、1,256/μL(範囲:240〜4,140)であった。  著者らは「MCL患者におけるベンダムスチン療法後のリンパ球数中央値は、治療後1、3、6、9ヵ月時点ではベースラインより有意に低かったが、12ヵ月後には回復がみられた」とし「MCL患者に対するCAR-T細胞療法を検討する際、ベンダムスチン投与とリンパ球除去との間に9ヵ月以上間隔を空ける必要がある」とまとめている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Donzelli L, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39212720 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
オビヌツズマブはリツキシマブよりCOVID-19重症化リスクが本当に高いのか〜アジア人対象研究
オビヌツズマブはリツキシマブよりCOVID-19重症化リスクが本当に高いのか〜アジア人対象研究
公開日:2024年9月10日 Shu W, et al. Virol J. 2024; 21: 212.  抗CD20モノクローナル抗体で治療を行った患者では、COVID-19による有害アウトカムリスクが上昇する可能性がある。新規抗CD20モノクローナル抗体であるオビヌツズマブは、リツキシマブと比較し、B細胞減少効果が高く、in vitroでの優れた有効性が示されている。中国・Ningbo Medical Center Li Huili HospitalのWenxiu Shu氏らは、オビヌツズマブがリツキシマブよりもCOVID-19によるアウトカムを悪化させるかを評価するため、レトロスペクティブ単施設コホート研究を実施した。Virology Journal誌2024年9月9日号の報告。  対象は、2022年にNingbo Medical Center Li Huili Hospital に入院し、抗CD20モノクローナル抗体による治療を行ったB細胞リンパ腫患者124例(リツキシマブ群:106例、オビヌツズマブ群:18例)。COVID-19による有害アウトカムを、両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・リツキシマブ群の86.8%はアグレッシブリンパ腫であったのに対し、オビヌツズマブ群の多くはインドレントリンパ腫であった。 ・リツキシマブ群の57.5%、オビヌツズマブ群の88.9%は、COVID-19波の3ヵ月以内に抗CD20モノクローナル抗体治療が行われており、オビヌツズマブ群ではリツキシマブ群よりもベンダムスチンを投与した患者の割合が高かった(22.2% vs. 4.7%、p=0.031)。 ・COVID-19による主な有害アウトカムの比較は次のとおりであり、オビヌツズマブ群はリツキシマブ群よりも高リスクであったが、COVID-19関連死亡率に有意な差は認められなかった。 【入院した患者の割合】55.6% vs. 20.8%(p=0.005) 【SARS-CoV-2の長期感染した患者の割合】38.9% vs. 2.9%(p<0.001) 【重度のCOVID-19を発症した患者の割合】33.3% vs. 4.7%(p<0.001) ・ベンダムスチンの影響を排除するため、ベンダムスチンを使用しなかった患者を対象としたサブグループ解析においても、依然としてオビヌツズマブ群(14例)はリツキシマブ群(101例)よりも高リスクであった。 【入院した患者の割合】50.0% vs. 19.8%(p=0.031) 【SARS-CoV-2の長期感染した患者の割合】28.6% vs. 2.0%(p=0.002) 【重度のCOVID-19を発症した患者の割合】21.4% vs. 4.0%(p=0.038) ・多変量解析の結果では、オビヌツズマブ治療は、SARS-CoV-2感染の長期化(OR:27.05、95%CI:3.75〜195.22、p=0.001)、重症COVID-19の発生率上昇(OR:15.07、95%CI:2.58〜91.72、p=0.003)との関連が示唆された。  著者らは「オビヌツズマブ群は、リツキシマブ群よりもSARS-CoV-2感染の長期化および重症COVID-19のリスクが高いことが示唆された。本研究は、アジア人集団におけるオビヌツズマブとリツキシマブを投与された患者のCOVID-19のアウトカムを比較した最初の研究である」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shu W, et al. Virol J. 2024; 21: 212.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39252096 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性CLLの治療選択、新規薬剤の安全性プロファイル比較〜ネットワークメタ解析
再発・難治性CLLの治療選択、新規薬剤の安全性プロファイル比較〜ネットワークメタ解析
公開日:2024年10月25日 Monica M, et al. Ther Adv Med Oncol. 2024: 16: 17588359241285988.  ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害薬、B細胞性リンパ腫-2(BCL-2)阻害薬など、新たな白血病治療薬の登場により再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)の治療アウトカムは、有意に改善した。治療薬の進歩にも関わらず、これらの新規薬剤と従来の化学療法や免疫療法に関する総合的な安全性プロファイルは、十分にわかっておらず、直接比較した研究もほとんどない。ポーランド・ヤギェウォ大学のMagdalena Monica氏らは、再発・難治性CLLにおける新規治療薬、化学療法、免疫療法の安全性プロファイルを比較するため、ベイジアンネットワークメタ解析を行った。Therapeutic Advances in Medical Oncology誌2024年10月9日号の報告。 再発・難治性CLLに関するランダム化比較試験(RCT)を特定するため、システマティック文献レビューを実施した。検索には、主要な医療データベース(MEDLINE、Embase、CENTRAL)およびグレード文献を含め、安全性アウトカムを評価するため、ベイジアンNMAフレームワークに統合した。 主な結果は以下のとおり。 ・安全性アウトカムを比較するための、RCT14件が特定された。 ・全体的な有害事象に関しては、治療法により違いが認められなかった。 ・ベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)は、イブルチニブ(リスク比[RR]:0.62 、95%信頼区間[CI]:0.40〜0.86)、アカラブルチニブ(RR:0.69、95%CI:0.45〜0.94)、zanubrutinib(RR:0.64、95%CI:0.42〜0.91)、ベネトクラクス+リツキシマブ(RR:0.87、95%CI:0.79〜0.96)と比較し、グレード3以上の有害事象に対する安全性プロファイルがより良好であった。 ・グレード3以上の有害事象、重篤な有害事象、有害事象による治療中止および死亡率は、アカラブルチニブ、zanubrutinib、ベネトクラクス+リツキシマブでは同等であった。 ・ベネトクラクス+リツキシマブとBTK阻害薬とのほとんどの比較において、血液学的イベント、QOLに影響を及ぼすイベント、感染症関連の安全性プロファイルに有意な差は認められなかった。 ・BTK阻害薬固有のイベントでは、zanubrutinibは、アカラブルチニブよりも高血圧(RR:2.96、95%CI:1.74〜5.16)および出血(RR:1.38、95%CI:1.06〜1.81)のリスクが高かった。 ・アカラブルチニブとzanubrutinibの心房細動リスクには、差が認められなかった(RR:1.56、95%CI:0.74〜3.34)。  著者らは「ベネトクラクス+リツキシマブ、アカラブルチニブ、zanubrutinibの安全性プロファイルは許容可能であり、再発・難治性CLLにおける推奨可能な治療オプションである可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Monica M, et al. Ther Adv Med Oncol. 2024: 16: 17588359241285988.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39391352 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
イブルチニブ+BR療法、再発・難治性B細胞リンパ腫に対する有効性は示されるか
イブルチニブ+BR療法、再発・難治性B細胞リンパ腫に対する有効性は示されるか
公開日:2024年12月17日 Kedmi M, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e70001.  自家造血幹細胞移植(ASCT)後の再発・難治性の進行期B細胞性非ホジキンリンパ腫または高齢患者に対する治療は、しばしば困難である。イスラエル・Sheba Medical CenterのMeirav Kedmi氏らは、1stまたは2ndライン後に再発した移植適応のないまたはASCT後に2回目の再発を認めた再発・難治性の進行期B細胞性非ホジキンリンパ腫患者を対象に、ベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)にイブルチニブを併用した場合の有効性を評価するため、単一施設シングルアーム第II相臨床試験を実施した。Hematological Oncology誌2024年11月号の報告。  対象は、1stまたは2ndライン後に再発した移植適応のないまたはASCT後に2回目の再発を認めた再発・難治性の進行期B細胞性非ホジキンリンパ腫患者56例(男性の割合:54%、年齢中央値:69.7歳)。対象患者には、標準用量で28日6サイクルのBR療法+イブルチニブ(1日1回560mg)併用による治療を行った。主要エンドポイントは、全奏効率(ORR)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・BR療法+イブルチニブ治療を1サイクル以上行った55例におけるORRは49.1%、3サイクル以上行った36例におけるORRは69.4%であった。 ・再発患者は、難治性患者よりもORRが有意に高かった(72.3% vs.37.8%、p=0.024)。 ・全生存期間(OS)中央値は11.6ヵ月(95%CI:7.1〜22.3)、無増悪生存期間(PFS)中央値は5.3ヵ月(95%CI:2.5〜7.4)。 ・完全奏効および部分奏効の患者は、安定および進行患者と比較し、OS中央値が有意に延長した(28.1ヵ月 vs.5.2ヵ月、p<0.0001)。 ・有害事象は、血小板減少(19.6%)、貧血(16.1%)、好中球減少(7.1%)、疲労(35.7%)、下痢(28.6%)、悪心(28.6%)などであった。 ・移植に移行した患者は、最初の有効性評価時点で8例、フォローアップ期間中で3例。 ・BR療法+イブルチニブ治療レジメンは、移植までのブリッジングとしても利用可能で、安全かつ効果的な治療オプションである可能性が示唆された。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kedmi M, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e70001.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39572395 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ザヌブルチニブはベストインクラスのBTK阻害薬なのか?〜SEQUOIA試験フォローアップ結果
ザヌブルチニブはベストインクラスのBTK阻害薬なのか?〜SEQUOIA試験フォローアップ結果
公開日:2024年12月25日 Shadman M, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 8. [Epub ahead of print]  臨床試験では、時期の異なる複数のエンドポイントを含めることが少なくない。通常、主要エンドポイントに基づく最初の報告では、計画されている一部の主要な分析または副次的評価が行われないまま、公開されることがある。そのため、臨床試験の最新情報アップデートは、既に主要エンドポイントが報告されている研究においても、新たな知見を得る機会となりうる。米国・フレッド・ハッチンソンがんセンターのMazyar Shadman氏らは、未治療の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)患者を対象に、経口ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるザヌブルチニブとベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)を比較した第III相ランダム化オープンラベル試験であるSEQUOIA試験の長期フォローアップ結果を報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年12月8日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値26.2ヵ月の事前に指定された解析結果とその後43.7ヵ月までフォローアップを行った解析結果では、BR療法群と比較し、ザヌブルチニブ群の方が、主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が良好であることが示唆された。 ・フォローアップ期間中央値61.2ヵ月におけるPFS中央値は、ザヌブルチニブ群で未達、BR療法群で44.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.29、片側p=0.0001)。 ・免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異(IGHV)の変異あり(HR:0.40、片側p=0.0003)および変異なし(HR:0.21、95%CI:0.14〜0.33、片側p<0.0001)のいずれにおいても、BR療法群と比較し、ザヌブルチニブ群でPFSの延長が認められた。 ・両群ともに全生存期間(OS)は、中央値に達しなかったが、60ヵ月の推定OSは、ザヌブルチニブ群で85.8%、BR療法群85.0%であった。 ・新たな安全性シグナルは検出されなかった。 ・ザヌブルチニブ群の有害事象は、想定の範囲内であり、心房細動の発生率は7.1%であった。  著者らは「SEQUOIA試験の長期フォローアップ(期間中央値:61.2ヵ月)において、最初に報告されたザヌブルチニブの有用性が裏付けられた」とし「未治療のCLL/SLL患者に対するザヌブルチニブ治療は、望ましい治療選択肢である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shadman M, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 8. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39647999 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
高腫瘍量初発FLに対するオビヌツズマブ+BEN、日本の実臨床における有用性は
高腫瘍量初発FLに対するオビヌツズマブ+BEN、日本の実臨床における有用性は
公開日:2025年1月15日 Nagata H, et al. Int J Clin Oncol. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]  高腫瘍量の初発濾胞性リンパ腫(FL)では、20年以上にわたりR-CHOP療法が標準治療の中心となっていた。日本では、オビヌツズマブ+ベンダムスチン(BEN)併用療法が2018年に承認され、現在では標準治療の1つとなっている。しかし、日常臨床におけるオビヌツズマブ+BENの長期的な有効性および安全性は、これまで十分に評価されていなかった。京都府立医科大学の長田 浩明氏らは、京都血液臨床研究グループ(KOTOSG)において、高腫瘍量初発FLに対するオビヌツズマブ+BENの実臨床アウトカムを評価するため、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月7日号の報告。  対象は、KOTOSGにおいて2018〜21年にオビヌツズマブ+BENによる1stライン治療を行った高腫瘍量の初発FL患者53例。すべての患者に、2年以上のフォローアップ期間を設けた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は67歳。 ・濾胞性リンパ腫国際予後指標(FLIPI)に基づく分類では、60.4%が高リスク群に分類された。 ・オビヌツズマブ+BEN導入療法後の全奏効率(OR)は98%、完全奏効率(CR)は83%。 ・フォローアップ期間中央値は38.5ヵ月、3年無増悪生存期間(PFS)は77.3%、3年全生存率(OS)は91.2%。 ・グレードIII〜IVの血液学的有害事象(AE)は一般的であり、好中球減少(58.5%)、リンパ球減少(98.1%)が含まれた。 ・非血液学的AEは、肺感染症、新型コロナウイルス感染症、敗血症などの感染症が含まれ、そのうち2例(3.8%)は死亡した。 ・傾向スコアマッチング解析では、2001〜19年にKOTOSGにおいてオビヌツズマブ+BEN治療を行った患者46例とR-CHOP療法を行った患者46例におけるPFSに、有意な差は認められなかった。  著者らは「高齢患者が対象となる実臨床においては、患者の背景や病状に基づき慎重な治療選択が求められることが浮き彫りとなった」とまとめている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Nagata H, et al. Int J Clin Oncol. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39776016 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら