「サイトメガロウイルス(CMV)感染症」の記事一覧

ベンダムスチン治療によるCMV感染リスクの高い患者の特徴は
ベンダムスチン治療によるCMV感染リスクの高い患者の特徴は
公開日:2024年8月20日 Huang JP, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 19. [Epub ahead of print]  ベンダムスチンは、悪性リンパ腫の治療によく用いられる薬剤であり、優れた効果を発現するものの、免疫抑制作用が強いといわれている。そのため、ベンダムスチン使用後のサイトメガロウイルス(CMV)再活性化が報告されている。台湾・台北栄民総医院のJen-Pei Huang氏らは、ベンダムスチンを含むレジメンで治療を行った悪性リンパ腫患者におけるCMV感染への影響を明らかにするため、本研究を実施した。Annals of Hematology誌オンライン版2024年8月19日号の報告。  2010年9月〜2022年4月に台湾・台北栄民総医院で悪性リンパ腫の治療を行った患者をレトロスペクティブに分析した。臨床的に重要なCMV感染(CS-CMVi)の定義は、ベンダムスチン使用後にCMV治療を必要とした最初のCMV再活性化とした。患者のベースライン特性および検査データを収集した。主要エンドポイントは、CS-CMViとした。CS-CMViと死亡率に対するリスク因子を推定するため、時間依存性共変量Cox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、ベンダムスチンを含むレジメンで治療を行った悪性リンパ腫患者211例。 ・CS-CMViは、27例(12.8%)で認められた。 ・3年間のフォローアップ期間中の累積発生率は、100人年当たり10.1人であった。 ・多変量解析では、CS-CMViのリスク因子として、以下が挙げられた。 ●ベンダムスチン治療開始前の治療歴が1回以上(95%CI:1.10〜24.76) ●血清アルブミン値3.5g/dL未満(95%CI:2.63〜52.93) ●肝疾患(95%CI:1.51〜28.61) ・CS-CMViは、死亡率の主な独立したリスク因子の1つであった(95%CI:1.23〜10.73)。  著者らは「治療歴が1回以上、低アルブミン血症、肝疾患が認められるリンパ腫患者に対するベンダムスチンを含むレジメンでの治療は、CS-CMViにとくに注意する必要があることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Huang JP, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 19. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39158713 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
アレムツズマブ前処置後HSCT、レテルモビルCMV予防の有用性は
アレムツズマブ前処置後HSCT、レテルモビルCMV予防の有用性は
公開日:2024年9月17日 Muhsen IN, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 12. [Epub ahead of print]  アレムツズマブは、生体内のT細胞を除去することで、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)における移植片対宿主病(GVHD)リスクを低下させる。しかし、アレムツズマブ投与は、allo-HSCT後のサイトメガロウイルス(CMV)を含む感染症リスクを上昇させる。allo-HSCT後のCMV予防には、レテルモビルが承認されているが、アレムツズマブ投与患者におけるレテルモビルの有効性を調査した研究は、これまでほとんどなかった。米国・ベイラー医科大学のIbrahim N. Muhsen氏らは、アレムツズマブ前処置後HSCTを行った患者におけるレテルモビルのCMV予防効果を明らかにするため、単施設レトロスペクティブ研究を実施した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年9月12日号の報告。  対象は、アレムツズマブ前処置後allo-HSCT受けたレシピエント84例。主要アウトカムは、移植後100日以内の重大なCMV感染(予防的抗ウイルス療法を要するウイルス血症またはCMV感染症と定義)の累積発生率とした。副次的アウトカムは、グレード2以上の急性GVHDの累積発生率、広範囲慢性GVHDの累積発生率、全生存期間(OS)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・84例のうち、レテルモビルが投与された患者は30例(レテルモビル群)、投与されなかった患者は54例(対照群)。 ・平均年齢は、レテルモビル群59歳(範囲:26〜75)、対照群55.5歳(範囲:20〜73)。 ・非血縁ドナーからの移植は66.7%、骨髄性腫瘍による移植が最も多かった。 ・100日以内の重大なCMV感染の累積発症率は、レテルモビル群10%(95%CI:2.5〜23.9)、対照群55.6%(95%CI:41.2〜67.8)であり、レテルモビル群が有意に低かった(p<0.0001)。 ・グレード2以上の急性GVHDの累積発生率、OSは、両群間で差は認められなかった。 ・広範囲慢性GVHDの累積発生率については、レテルモビル群10.5%(95%CI:2.6〜24.9)、対照群36.5%(95%CI:23.6〜49.5)であり、レテルモビル群が有意に低かった(p=0.0126)。  著者らは「アレムツズマブ前処置後allo-HSCTにおけるレテルモビル投与は、重大なCMV感染の予防に有効であることが示された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Muhsen IN, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39277112 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本における早期抗CMV療法と慢性GVHDの発生率、ガンシクロビル vs. ホスカルネット
日本における早期抗CMV療法と慢性GVHDの発生率、ガンシクロビル vs. ホスカルネット
公開日:2024年11月27日 Miyao K, et al. Int J Hematol. 2024 Nov 14. [Epub ahead of print]  ガンシクロビルおよびホスカルネットは、代表的な抗サイトメガロウイルス(CMV)薬である。これまでの各地域の研究において、ホスカルネットの早期投与を行った患者では、慢性移植片対宿主病(GVHD)リスクが低いことが報告されている。愛知県・安城更生病院の宮尾 康太郎氏らは、この結果を確認するため、日本造血・免疫細胞療法学会GVHDワーキンググループ研究において、全国規模のレトロスペクティブ研究を実施し、その結果を報告した。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年11月14日号の報告。  対象は、初回造血幹細胞移植(HSCT)時にホスカルネット(1,555例)またはガンシクロビル(7,335例)を投与した16歳以上の造血器悪性腫瘍患者8,890例。 主な結果は以下のとおり。 ・ガンシクロビル投与患者の方が、慢性GVHDおよび広範囲慢性GVHDのリスクが高かった。  【慢性GVHD】ハザード比(HR):1.26、95%信頼区間(CI):1.13〜1.40、p<0.001  【広範囲慢性GVHD】HR:1.16、95%CI:1.01〜1.33、p=0.033 ・女性ドナーからのHSCTを行った男性患者では、HSCTから3年後の広範囲慢性GVHDの発生率は、ホスカルネット投与患者(13%、95%CI:9〜16)の方がガンシクロビル投与患者(27%、95%CI:25〜29)よりも明らかに低かった(p<0.001)。 ・女性ドナーからのHSCTを行った男性患者では、ドナーソースの違いや急性GVHD歴の有無に関わらず、ホスカルネット投与患者は、ガンシクロビル投与患者よりも、広範囲慢性GVHDの発生率が有意に低かった。  著者らは「これらの結果は、ホスカルネットが同種免疫に影響を及ぼすことで、慢性GVHDの発生率を低下させている可能性を示唆している」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Miyao K, et al. Int J Hematol. 2024 Nov 14. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39543007 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら