「慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)」の記事一覧

慢性GVHD発症が非再発死亡率に及ぼす影響
慢性GVHD発症が非再発死亡率に及ぼす影響
公開日:2024年6月18日 Jiang J, et al. Leuk Lymphoma. 2024 Jun 12. [Epub ahead of print]  慢性移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を行なった患者の死亡率に影響を及ぼす主な原因の1つである。近年、allo-HSCTの進歩により、とくに高齢者を中心に、幅広い患者が移植適応可能となっている。米国・オハイオ州立大学のJustin Jiang氏らは、高齢患者と非高齢患者におけるallo-HSCT後のアウトカムに対する慢性GVHDの影響を評価した。Leukemia & Lymphoma誌オンライン版2024年6月12日号の報告。  1999〜2018年にallo-HSCTを行ったすべての患者を対象に、レトロスペクティブに分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・allo-HSCT後180日間で慢性GVHDを発症した患者は、発症しなかった患者と比較し、非再発死亡のリスクおよび発生率が高かった。 ・60歳以上と60歳未満による、慢性GVHDのアウトカムに有意な差は認められなかった。  著者らは「allo-HSCT後の慢性GVHDは、年齢により発症率の違いは認められず、非再発死亡リスクを増加させることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Jiang J, et al. Leuk Lymphoma. 2024 Jun 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38865104 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人ステロイド依存性/抵抗性慢性GVHDの2ndライン以降の治療〜ベルモスジル非盲検試験
日本人ステロイド依存性/抵抗性慢性GVHDの2ndライン以降の治療〜ベルモスジル非盲検試験
公開日:2024年7月4日 Inamoto Y, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 27. [Epub ahead of print]  選択的ROCK2阻害薬ベルモスジルは、免疫調節作用と抗線維化作用を有する薬剤である。国立がん研究センター中央病院の稲本 賢弘氏らは、12歳以上のステロイド依存性/ステロイド抵抗性の慢性移植片対宿主病(GVHD)の日本人患者21例を対象に、2ndライン以降の治療としてベルモスジル200mgを1日1回投与した際の有用性を評価するため、多施設共同オープンラベル単群試験を実施し、その結果を報告した。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年6月27日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・主要エンドポイントである最終患者登録後24週間における全奏効率(ORR)は85.7%(95%信頼区間[CI]:63.7〜97.0)であった(事前に定義した95%CIの下限閾値25%超)。 ・24週での奏効持続期間のカプランマイヤー推定値は75%(95%CI:46〜90)であり、18例中13例(72.2%)において20週以上の持続的な効果が認められた。 ・奏効期間中央値は4.1週間(範囲:3.90〜8.10)、4週間ORRは47.6%、24週間ORRは75.0%であった。最良ORRは、関節/fasciaで80%、口腔で66.7%、皮膚で75.0%であった。 ・全体では、臨床的に有用な症状改善が1回以上認められた患者の割合は57.1%、症状改善期間中央値は22.2週間(範囲:4.0〜51.3)であった。 ・患者の57.1%において、コルチコステロイドの投与量減量が確認された。 ・無再発生存率と全生存率の中央値は、未達であった。 ・治療中に有害事象が発生した患者は85.7%、最も多かった有害事象は下痢(19.0%)であり、薬剤関連有害事象は38.1%であった。 ・薬剤に関連した治療中止や死亡は、報告されなかった。  著者らは「本試験により、日本人のステロイドで効果不十分な慢性GVHD患者に対する2ndライン以降の治療としてベルモスジル200mgを1日1回投与の有効性が確認され、新たな安全性上の懸念も見つからなかった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Inamoto Y, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 27. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38934629 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
フレッドハッチンソンがん研究センターの慢性GVHD発生率が減少、その詳細を分析/Blood Adv
フレッドハッチンソンがん研究センターの慢性GVHD発生率が減少、その詳細を分析/Blood Adv
公開日:2024年8月22日 Carpenter PA, et al. Blood Adv. 2024 Aug 21. [Epub ahead of print]  2005年以降、フレッドハッチンソンがん研究センターにおける慢性移植片対宿主病(cGVHD)の発生率は、着実に減少している。この現象をより理解するため、米国・フレッドハッチンソンがん研究センターのPaul A. Carpenter氏らは、2005〜19年の生存患者3,066例を対象に、造血幹細胞移植を行った時期を関数として、全身免疫抑制療法を必要とするcGVHD(cGVHD-IS)リスクを評価した。Blood Advances誌オンライン版2024年8月21日号の報告。  造血幹細胞移植を行った時期とcGVHDの原因特有のハザード比(HR)との関連を評価するため、未調整および調整済みのCox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・平均フォローアップ期間は7.0年(範囲:1.0〜17.2)。 ・全生存者における2年以内に発生したcGVHD-ISの発生率は、2005〜07年の45〜52%から、2008〜12年の約40%に減少し、2017年には約26%にまで減少が認められた。 ・小児生存患者502例における分析では、2013年以降のcGVHD-ISの発生率は10%未満であった。 ・非悪性疾患で移植を行った成人および小児生存患者305例では、cGVHDの発生率により大きな変動が認められ、2016年以降は20%未満であった。 ・造血幹細胞移植を行った時期が5年進むごとに、cGVHDの原因別HRは27%低下した(未調整HR:0.73、95%CI:0.68〜0.78、p<0.0001)。この関連は、cGVHDの減少につながる可能性あるさまざまな因子(年齢、ドナー/幹細胞ソース、人種、性別、コンディショニング強度、GVHD予防など)で調整した後でも同様であり、HRは0.81(95%CI:0.75〜0.87、p<0.0001)であった。 ・cGVHDの減少は、人口動態の変化やcGVHD低下が期待される移植アプローチの使用率増加などの普及が考えられるが、これを完全に説明することは困難であった。  著者らは「cGVHDの減少因子を明らかにするためにも、対照を過去の事例に設定するのではなく、同時期の対照群を用いた観察研究が必要とされる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Carpenter PA, et al. Blood Adv. 2024 Aug 21. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39167805 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
アレムツズマブ前処置後HSCT、レテルモビルCMV予防の有用性は
アレムツズマブ前処置後HSCT、レテルモビルCMV予防の有用性は
公開日:2024年9月17日 Muhsen IN, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 12. [Epub ahead of print]  アレムツズマブは、生体内のT細胞を除去することで、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)における移植片対宿主病(GVHD)リスクを低下させる。しかし、アレムツズマブ投与は、allo-HSCT後のサイトメガロウイルス(CMV)を含む感染症リスクを上昇させる。allo-HSCT後のCMV予防には、レテルモビルが承認されているが、アレムツズマブ投与患者におけるレテルモビルの有効性を調査した研究は、これまでほとんどなかった。米国・ベイラー医科大学のIbrahim N. Muhsen氏らは、アレムツズマブ前処置後HSCTを行った患者におけるレテルモビルのCMV予防効果を明らかにするため、単施設レトロスペクティブ研究を実施した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年9月12日号の報告。  対象は、アレムツズマブ前処置後allo-HSCT受けたレシピエント84例。主要アウトカムは、移植後100日以内の重大なCMV感染(予防的抗ウイルス療法を要するウイルス血症またはCMV感染症と定義)の累積発生率とした。副次的アウトカムは、グレード2以上の急性GVHDの累積発生率、広範囲慢性GVHDの累積発生率、全生存期間(OS)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・84例のうち、レテルモビルが投与された患者は30例(レテルモビル群)、投与されなかった患者は54例(対照群)。 ・平均年齢は、レテルモビル群59歳(範囲:26〜75)、対照群55.5歳(範囲:20〜73)。 ・非血縁ドナーからの移植は66.7%、骨髄性腫瘍による移植が最も多かった。 ・100日以内の重大なCMV感染の累積発症率は、レテルモビル群10%(95%CI:2.5〜23.9)、対照群55.6%(95%CI:41.2〜67.8)であり、レテルモビル群が有意に低かった(p<0.0001)。 ・グレード2以上の急性GVHDの累積発生率、OSは、両群間で差は認められなかった。 ・広範囲慢性GVHDの累積発生率については、レテルモビル群10.5%(95%CI:2.6〜24.9)、対照群36.5%(95%CI:23.6〜49.5)であり、レテルモビル群が有意に低かった(p=0.0126)。  著者らは「アレムツズマブ前処置後allo-HSCTにおけるレテルモビル投与は、重大なCMV感染の予防に有効であることが示された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Muhsen IN, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39277112 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性の慢性GVHDに期待されるCSF1R抗体axatilimabの第II相ピボタル試験/NEJM
再発・難治性の慢性GVHDに期待されるCSF1R抗体axatilimabの第II相ピボタル試験/NEJM
公開日:2024年9月19日 Wolff D, et al. N Engl J Med. 2024; 391: 1002-1014.  コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)依存性の単球およびマクロファージは、同種造血幹細胞移植の長期的合併症の1つである慢性移植片対宿主病(GVHD)の重要なメディエーターである。CSF1R抗体axatilimabは、慢性GVHDに対して有望な臨床活性が示されている薬剤である。ドイツ・レーゲンスブルク大学のDaniel Wolff氏らは、再発または難治性の慢性GVHDに対するaxatilimabの3用量を評価した第II相国際共同ランダム化ピボタル試験を実施し、その結果を報告した。NEJM誌2024年9月19日号の報告。  対象患者241例は、0.3mg群(axatilimabを2週間ごとに0.3mg/kgで静脈投与)80例、1mg群(axatilimabを2週間ごとに1mg/kgで静脈投与)81例、3mg群(axatilimabを4週間ごとに3mg/kgで静脈投与)80例のいずれかにランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、最初の6サイクルにおける全奏効(OR、完全奏効または部分奏効)とした。主要な副次的エンドポイントは、患者が報告した慢性GVHD症状負荷の減少とし、その定義は、Lee慢性GVHD症状評価尺度修正版(0〜100の範囲で、高スコアほど症状悪化を示す)5ポイント以上の減少とした。95%信頼区間(CI)の下限が30%超の場合、主要エンドポイントを達成したとみなした。 主な結果は以下のとおり。 ・主要エンドポイントは、すべての群で達成された。 ・ORは、0.3mg群74%(95%CI:63〜83)、1mg群67%(95%CI:55〜77)、3mg群50%(95%CI:39〜61)であった。 ・Lee慢性GVHD症状評価尺度修正版の5ポイント以上の減少は、0.3mg群60%、1mg群69%、3mg群41%で認められた。 ・最も多い有害事象は、CSF1R阻害に関連する用量依存的な一過性の臨床検査値異常であった。 ・axatilimabの投与中止につながる有害事象は、0.3mg群6%、1mg群22%、3mg群18%で発生した。  著者らは「axatilimabによりCSF1R依存性の単球およびマクロファージをターゲットとすることで、再発または難治性の慢性GVHD患者における奏効率を高めることが可能であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Wolff D, et al. N Engl J Med. 2024; 391: 1002-1014.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39292927 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ステロイド抵抗性慢性GVHDに対するイブルチニブ〜多施設共同リアルワールド解析/Blood Adv
ステロイド抵抗性慢性GVHDに対するイブルチニブ〜多施設共同リアルワールド解析/Blood Adv
公開日:2024年11月1日 Pidala JA, et al. Blood Adv. 2024 Oct 25. [Epub ahead of print]  米国・H. Lee Moffitt Cancer Center and Research InstituteのJoseph A. Pidala氏らは、ステロイド治療抵抗性の慢性移植片対宿主病(GVHD)に対するイブルチニブ治療のリアルワールドでの有効性および安全性を評価するため、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。Blood Advances誌オンライン版2024年10月25日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象データは、19施設より標準的に収集された270例。 ・慢性GVHDの臓器別内訳は、皮膚(75%)、眼球(61%)、口腔(54%)、筋/関節(47%)、消化管(26%)、肺(27%)、肝臓(19%)、生殖器(7%)、その他(4.4%)。 ・NIHの重症度は、軽症5.7%、中等症42%、重症53%。 ・重複型は39%にみられた。 ・KPSは80%以上が72%であった。 ・プレドニゾロンの用量中央値は0.21mg/kg(0〜2.27)。 ・イブルチニブは、慢性GVHD発症後、18.2ヵ月(中央値)で開始され、より早期の治療ラインで用いられていた(2次:26%、3次:30%、4次:21%、5次:9.6%、6次:10%、7次以降:1.2%)。 ・評価可能な対象患者のうち、6ヵ月のNIH全奏効率(CR/PR)は45%であった(PR:42%、CR:3%)。 ・奏効期間中央値は15ヵ月(1〜46)。 ・肝臓病変と6ヵ月全奏効率との関連が認められた(多変量OR:5.49、95%CI:2.3〜14.2、p<0.001)。 ・Best overall response(BOR)は56%であり、その多くは1〜3ヵ月で達成していた(86%)。 ・生存者のフォローアップ期間中央値は30.5ヵ月。 ・治療成功生存期間(FFS)は、6ヵ月で59%(53〜65)、12ヵ月で41%(36〜48)。 ・多変量解析では、高齢、ベースライン時のプレドニゾロン高用量、肺病変は、FFS不良と関連が認められた。 【高齢】HR:1.01、95%CI:1.00〜1.02、p=0.033 【ベースライン時のプレドニゾロン高用量】HR:1.92、95%CI:1.09〜3.38、p=0.032 【肺病変】HR:1.58、95%CI:1.10〜2.28、p=0.016 ・イブルチニブ中止の主な因子は、慢性GVHDの進行(44%)、毒性(42%)であった。  著者らは「リアルワールドにおけるイブルチニブのステロイド抵抗性慢性GVHDに対する有効性が確認された。本検討により、奏効率やFFSに関連する新たな洞察および治療中止と関連する毒性プロファイルが示された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Pidala JA, et al. Blood Adv. 2024 Oct 25. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39454280 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら