「二重特異性抗体」の記事一覧

再発・難治性DLBCLの3rdライン以降でのCAR-T細胞療法と二重特異性抗体の比較〜メタ解析
再発・難治性DLBCLの3rdライン以降でのCAR-T細胞療法と二重特異性抗体の比較〜メタ解析
公開日:2024年5月22日 Kim J, et al. Blood. 2024 May 2. [Epub ahead of print]  再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対するCAR-T細胞療法と二重特異性抗体の有効性および安全性を評価するため、韓国・仁荷大学校のJinchul Kim氏らは、メタ解析を実施した。Blood誌オンライン版2024年5月2日号の報告。  2023年7月までに、再発・難治性DLBCLの3rdライン以降の治療法としてCAR-T細胞療法およびCD20/CD3二重特異性抗体を評価した研究を、MEDLINE、Embase、Cochraneデータベースより検索した。ランダム効果モデルにより、関連する共変量で調整したメタ回帰を用いて完全奏効(CR)率および副次的アウトカムを推定した。 主な結果は以下のとおり。 ・16件の研究より1,347例をメタ解析に含めた。 ・プールされたCR率は、二重特異性抗体で0.36(95%CI:0.29〜0.43)、CAR-T細胞療法で0.51(95%CI:0.46〜0.56)であった(p<0.01)。 ・この優位性は、二重特異性抗体群のうちCAR-T細胞療法を行っていなかった患者を比較した場合でも維持され、そのCR率は0.37(95%CI:0.32〜0.43)であった。 ・プールされた1年無増悪生存期間は、これらの所見を反映しており、二重特異性抗体で0.32(95%CI:0.26〜0.38)、CAR-T細胞療法で0.44(95%CI:0.41〜0.48)であった(p<0.01)。 ・グレード3以上の有害事象発生率は、二重特異性抗体群でサイトカイン放出症候群0.02(95%CI:0.01〜0.04)、神経毒性0.01(95%CI:0.00〜0.01)、感染症0.10(95%CI:0.03〜0.16)であったのに対し、CAR-T細胞療法群ではサイトカイン放出症候群0.08(95%CI:0.03〜0.12)、神経毒性0.11(95%CI:0.06〜0.17)、感染症0.17(95%CI:0.11〜0.22)であり、サイトカイン放出症候群と神経毒性において、統計学的に有意な差が認められた。  著者らは「再発・難治性DLBCLに対するCAR-T細胞療法は、二重特異性抗体と比較し、重度の有害事象の増加が見られたものの、高いCR率達成において有用であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kim J, et al. Blood. 2024 May 2. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38696731 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法に移行したLBCL患者の治療成績
CAR-T細胞療法に移行したLBCL患者の治療成績
公開日:2024年5月29日 Iacoboni G, et al. Hemasphere. 2024; 8: e62.  CAR-T細胞療法を行なった再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者の60%は、その後の疾患進行を経験する。CAR-T細胞療法後の標準的な治療法はいまだ明らかではなく、情報不足や不均一性が見られる。スペイン・バルデブロン大学のGloria Iacoboni氏らは、スペインと英国でCAR-T細胞療法後に進行した再発・難治性LBCL患者を対象に分析を行った。HemaSphere誌2024年5月21日号の報告。  対象は、2018年7月〜2022年3月にスペインと英国でCAR-T細胞療法後に進行した再発・難治性LBCL患者387例。 主な結果は以下のとおり。 ・全生存期間(OS)中央値は5.3ヵ月、注入と進行の間隔に応じて有意な差が認められた(2ヵ月未満:1.9ヵ月、2〜6ヵ月:5.2ヵ月、6ヵ月以上:未到達)。 ・進行後、237例(61%)が次の治療へ移行し、全(完全)奏効率、12ヵ月無増悪生存率(PFS)およびOSは以下の通りであった。 ●Pola-BR療法:67%(奏功率:38%、PFS:36.2%、OS:51.0%) ●二重特異性抗体:51%(奏功率:36%、PFS:32.0%、OS:50.1%) ●放射線療法:33%(奏功率:26%、PFS:30.8%、OS:37.5%) ●免疫チェックポイント阻害薬:25%(奏功率:0%、PFS:29.9%、OS:27.8%) ●レナリドマイド:25%(奏功率:14%、PFS:7.3%、OS:20.8%) ●化学療法:25%(奏功率:14%、PFS:6.1%、OS:18.3%) ・同種造血幹細胞移植を行った患者は32例(14%)、フォローアップ期間中央値の15.1ヵ月後にOS中央値に達しなかった。  著者らは「CAR-T細胞療法後、最初の2ヵ月以内に進行した再発・難治性LBCL患者のアウトカムは不良であった。ポラツズマブや二重特異性抗体などの新規標的薬による治療は、CAR-T細胞療法後においても、長期生存率の改善が期待できる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Iacoboni G, et al. Hemasphere. 2024; 8: e62.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38774657 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性FLに対するエプコリタマブ単剤療法〜EPCORE NHL-1第II相コホート
再発・難治性FLに対するエプコリタマブ単剤療法〜EPCORE NHL-1第II相コホート
公開日:2024年6月27日 Linton KM, et al. Lancet Haematol. 2024 Jun 13. [Epub ahead of print]  再発・難治性の濾胞性リンパ腫(FL)に対する標準治療や最適な治療期間は、いまだ確立されていない。英国・マンチェスター大学のKim M. Linton氏らは、FLの3次治療以降における新規CD3×CD20二重特異性抗体であるエプコリタマブの有用性を評価するため、本研究を実施した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2024年6月13日号の報告。  本EPCORE NHL-1試験は、15ヵ国88施設で実施されたマルチコホート単群第I-II相試験である。ここでは、第II相試験の再発・難治性FL患者における主な分析結果を報告する。ピボタルコホート(用量拡大)および第1サイクルの最適化コホートを含めた。対象は、再発・難治性のCD20陽性FL患者(グレード1〜3A)で、ECOGのPS2以下、2種類以上の治療歴(抗CD20モノクローナル抗体とアルキル化剤またはレナリドミドを含む)のある患者とした。エプコリタマブ(28日サイクル)48mg皮下投与を行った(1〜3サイクル:毎週、4〜9サイクル:隔週、その後は病性進行または許容できない毒性が出現するまで4週間ごと)。サイトカイン放出症候群(CRS)リスクおよび重症度軽減のために、ピボタルコホートでは、スッテップアップドーズレジメン(1サイクル目は1日目に0.16mgのプライミングドーズ、8日目に0.80mgの中間ドーズ、その後48mgのフルドーズとプレドニゾロン100mgの予防投与)を、サイクル1最適化コホートでは、1サイクル目のCRSリスクと重症度をさらに軽減するために、15日目に3mgの中間ドーズ2、十分な水分補給、デキサメタゾン15mg予防投与で評価を行った。主要エンドポイントは、独立して検討したピボタルコホートの全奏効率(OR)、サイクル1最適化コホートのグレード2以上および全グレードのCRS発生患者の割合とした。解析は、エプコリタマブを1回以上使用したすべての登録患者で実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者は128例(年齢中央値:65歳[IQR:55〜72]、女性:49例[38%]、男性:79例[62%])が、2020年6月19日〜2023年4月21日にピボタルコホートに登録され、エブコリタマブ治療を行った(フォローアップ期間中央値:17.4ヵ月[IQR:9.1〜20.9])。 ・ORは82.0%(128例中105例、95%CI:74.3〜88.3)、完全奏効(CR)は62.5%(128例中80例、95%CI:53.5〜70.9)であった。 ・治療中に最も多く発生したグレード3-4の有害事象は、好中球減少症(128例中32例[25%])であった。 ・グレード1-2のCRSは128例中83例(65%)で報告され、グレード3のCRSは2例(2%)であった。 ・免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は128例中8例(6%)で報告された(グレード1:5例[4%]、グレード2:3例[2%])。 ・82例(年齢中央値:64歳[IQR:55〜71]、女性:37例[43%]、男性:49例[57%])が、2022年10月25日〜2024年1月8日にサイクル1最適化コホートに登録され、治療を行った。 ・CRS発生率は49%(82例中42例、グレード2:8例[9%]、グレード3以上:なし)、ICANSは報告されなかった。  著者らは「エプコリタマブ単剤療法は、再発・難治性FLにおいて、臨床的に意義のある効果を示し、マネジメント可能な安全性プロファイルを有していることが確認された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Linton KM, et al. Lancet Haematol. 2024 Jun 13. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38889737 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
抗BCMA/CD3二重特異性抗体teclistamab、抗BCMA治療歴の有無に関わらず有効/Blood
抗BCMA/CD3二重特異性抗体teclistamab、抗BCMA治療歴の有無に関わらず有効/Blood
公開日:2024年8月26日 Touzeau C, et al. Blood. 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]  teclistamabは、トリプルクラス曝露の再発・難治性多発性骨髄腫(MM)の治療薬として、FDAやEMAより承認されているB細胞成熟抗原(BCMA)およびCD3を標的とする二重特異性抗体である。第I/II相試験であるMajes TEC-1試験の対象には、抗体薬物複合体(ADC)やCAR-T細胞療法などのBCMAを標的とした治療を過去に行った患者も含まれていた。フランス・ナント大学のCyrille Touzeau氏らは、抗BCMA治療歴を有する再発・難治性MM患者に対するteclistamabの有用性を検討するため、Majes TEC-1試験コホートCを実施した。Blood誌オンライン版2024年8月20日号の報告。  対象は、抗BCMA治療歴を有する再発・難治性MM患者40例。対象患者には、teclistamab 1.5mg/kgを毎週皮下注射で投与した。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値は28.0ヵ月(範囲:0.7〜31.1)。 ・過去の治療歴の中央値は、6ライン(範囲:3〜14)であった。 ・過去の抗BCMA治療には、ADC29例、CAR-T細胞療法15例、ADCとCAR-T細胞療法4例が含まれた。 ・全奏効(OR):52.5% ・最良部分奏効(PR):47.5% ・完全奏効(CR)以上:30.0% ・奏効期間中央値:14.8ヵ月 ・無増悪生存期間(PFS)中央値:4.5ヵ月 ・全生存期間(OS)中央値:15.5ヵ月 ・最も発生した治療関連有害事象(TEAE)は、好中球減少、感染症、サイトカイン放出症候群、貧血であり、グレード3以上のTEAEは、血球減少、感染症であった。 ・感染症が発生した患者は28例(70.0%)、グレード3〜4が13例(35.5%)、グレード5が4例(10%)であった。 ・teclistamab治療開始前のベースライン時のBCMA発現および免疫特性は、過去の抗BCMA治療の影響を受けなかった。  著者らは「本Majes TEC-1試験コホートCにおいて、重度および抗BCMA治療歴を有する再発・治療抵抗性MM患者に対するteclistamabの有効性および安全性が確認された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Touzeau C, et al. Blood. 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39172760 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
最新データレビューに基づく大細胞型B細胞リンパ腫に対する二重特異性抗体の有用性
最新データレビューに基づく大細胞型B細胞リンパ腫に対する二重特異性抗体の有用性
公開日:2024年9月18日 Bayly-McCredie E, et al. Int J Mol Sci. 2024; 25: 9736.  二重特異性抗体は、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の治療において、新たな治療法として期待されている。二重特異性抗体の有効性および安全性に関する現在の研究では、より広範な非ホジキンリンパ腫に焦点が当てられており、成人LBCL患者における研究結果については、依然として不明な点が残っている。オーストラリア・Epworth HealthCareのElena Bayly-McCredie氏らは、成人LBCL患者における二重特異性抗体の有効性および安全性の結果を評価するため、システマティックレビューを実施した。International Journal of Molecular Sciences誌2024年9月9日号の報告。  2024年4月10日までに公表された介入臨床試験の研究を、PubMed、EMBASE、CENTRALよりシステマティックに検索した。観察研究、レビュー、メタ解析は、対象研究より除外した。 主な結果は以下のとおり。 ・RoBANS2によるバイアスリスクでは、対象研究の安全性評価の質は概ね高かったが、有効性評価の質にはばらつきが認められた。 ・対象研究の異質性を考慮し、narrative synthesisで結果を検討した。 ・最終分析には、早期フェーズの研究19件(プールされたサンプルサイズ:1,332例)を含めた。 ・全体では、9つの二重特異性抗体において単剤療法(9件)または併用療法(10件)にて研究が行われていた。 ・サイトカイン放出症候群の発生率は、多様であり、すべてのグレードにおけるイベントの範囲は、0〜72%であった。 ・感染症の報告は、すべての研究で一貫して高かった(範囲:38〜60%)。 ・血球減少が一般的に認められ、とくに貧血(範囲:4.4〜62%)、血小板減少(範囲:3.3〜69%)、好中球減少(範囲:4.4〜70%)が高率で認められた。 ・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)およびグレード3以上の有害事象の報告は少なかった。 ・有効性の結果は良好であり、全奏効(OR)率中央値の範囲は、初発例で95〜100%、再発・難治例で36〜91%であった。 ・CAR-T細胞療法との比較においては、忍容性は優れているものの、有効性は劣っている可能性が示唆された。  著者らは「これらの結果は、成人LBCL患者に対する二重特異性抗体による治療は、有効であり、忍容性が良好であることを示唆している」とした上で「有効性および安全性に関する今後の研究において、有害事象発生のタイミングとマネジメント、患者QOLへの影響、医療システムへの負担、全生存期間(OS)の評価が明らかになることが望まれる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Bayly-McCredie E, et al. Int J Mol Sci. 2024; 25: 9736.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39273684 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
エルラナタマブ、多発性骨髄腫治療のパラダイムシフトを起こすのか
エルラナタマブ、多発性骨髄腫治療のパラダイムシフトを起こすのか
公開日:2024年10月22日 Saied G, et al. Ann Pharmacother. 2024 Oct 16. [Epub ahead of print]  米国・ユニオン大学のGeorge Saied氏らは、再発・難治性多発性骨髄腫(MM)治療における新規のT細胞リダイレクト二重特異性抗体エルラナタマブの治療プロファイルについてのレビュー結果を報告した。The Annals of Pharmacotherapy誌オンライン版2024年10月16日号の報告。  2000年1月〜2024年6月までに公表された英語文献をPubMedより検索した。検索キーワードには、PF-06863135、エルラナタマブ、エルレフィオ、MMを用いた。追加データは、ClinicalTrials.govおよびその他の関連出版物、会議録から収集した。エルラナタマブに関する臨床試験、ガイドライン、処方情報に関する研究をレビューに含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・MagentisMM-3第II相試験では、B細胞成熟抗原(BCMA)標的療法を行っていない患者123例(コホートA)における全奏効(OS)率が61.0%(95%信頼区間:51.8〜69.6)であることが示されており、4種類以上の治療を行った再発・難治性MM患者においてエルラナタマブ単独療法は、実行可能な治療選択肢であることが証明された。 ・12ヵ月時点での奏効期間および無増悪生存期間(PFS)は、それぞれ75.3%、56.6%であった。 ・エルラナタマブは、再発・難治性MMに対し有望な活性が示されているが、本剤による治療に伴う重大な治療関連副作用には、注意深いモニタリングおよび専門家によるマネジメントが必要とされる。 ・一般的な有害事象として、サイトカイン放出症候群、神経毒性、血液毒性、感染症などが報告されている。 ・エルラナタマブの費用対効果は、現時点では未評価であった。  著者らは「エルラナタマブは、重治療歴の再発・難治性MM患者に対する治療選択肢として、米国FDAより承認されている薬剤である。再発・難治性MMのマネジメントにおけるエルラナタマブと他の二重特異性抗体の最適な治療戦略を明らかにするためには、さらなる研究が求められる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Saied G, et al. Ann Pharmacother. 2024 Oct 16. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39415515 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら