「ザヌブルチニブ(ブルキンザ)」の記事一覧

TP53変異MCLの第一選択に期待されるザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法/Blood
TP53変異MCLの第一選択に期待されるザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法/Blood
公開日:2024年11月5日 Kumar A, et al. Blood. 2024 Oct 22. [Epub ahead of print]  TP53変異を有するマントル細胞リンパ腫(MCL)は、標準的な免疫化学療法では生存率が不良であることが知られている。抗CD20モノクローナル抗体の有無に関わらず、BTKとBCL-2を阻害することでTP53変異を有するMCLに対する有効性が示唆されている。 米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAnita Kumar氏らは、未治療のTP53変異を有するMCL患者を対象に、BTK阻害薬ザヌブルチニブ+抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ+BCL-2阻害薬ベネトクラクス併用療法の多施設共同第II相試験を実施した。Blood誌オンライン版2024年10月22日号の報告。  未治療のTP53変異を有するMCL患者に対し、1日目にザヌブルチニブ160mgを1日2回およびオビヌツズマブの投与を行った。サイクル1の1、8、15日目およびサイクル2〜8の1日目にオビヌツズマブ1,000mgを投与した。2サイクル以降、ベネトクラクスを週1回漸増しながら400mg /日まで増量し、追加した。24サイクル後、免疫シークエンシングアッセイで微小残存病変(MRD)が検出されず、患者が完全寛解(CR)となった場合、治療を中止した。主要エンドポイントは、2年無増悪生存期間(PFS)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者数は25例。 ・最良総合効果(best overall response)は96%(24例)、完全奏効(CR)率は88%(22例)であった。 ・13サイクルでのMRD陰性(uMRD)は、uMRD5で95%(19例中18例)、uMRD6で84%(19例中16例)。 ・フォローアップ期間中央値は28.2ヵ月、2年PFS達成率は72%、疾患特異的生存率(DSS)は91%、全生存率(OS)は76%であった。 ・副作用は、一般的に軽度であり、下痢(64%)、好中球減少(32%)、輸注反応(24%)などが認められた。  著者らは「ザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法は忍容性が良好であり、TP53変異を有するMCLに対する有効性が示された。本結果は、高リスク集団に対するザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法レジメン使用および評価を裏付けるものである」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kumar A, et al. Blood. 2024 Oct 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39437708 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ザヌブルチニブはベストインクラスのBTK阻害薬なのか?〜SEQUOIA試験フォローアップ結果
ザヌブルチニブはベストインクラスのBTK阻害薬なのか?〜SEQUOIA試験フォローアップ結果
公開日:2024年12月25日 Shadman M, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 8. [Epub ahead of print]  臨床試験では、時期の異なる複数のエンドポイントを含めることが少なくない。通常、主要エンドポイントに基づく最初の報告では、計画されている一部の主要な分析または副次的評価が行われないまま、公開されることがある。そのため、臨床試験の最新情報アップデートは、既に主要エンドポイントが報告されている研究においても、新たな知見を得る機会となりうる。米国・フレッド・ハッチンソンがんセンターのMazyar Shadman氏らは、未治療の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)患者を対象に、経口ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるザヌブルチニブとベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)を比較した第III相ランダム化オープンラベル試験であるSEQUOIA試験の長期フォローアップ結果を報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年12月8日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値26.2ヵ月の事前に指定された解析結果とその後43.7ヵ月までフォローアップを行った解析結果では、BR療法群と比較し、ザヌブルチニブ群の方が、主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が良好であることが示唆された。 ・フォローアップ期間中央値61.2ヵ月におけるPFS中央値は、ザヌブルチニブ群で未達、BR療法群で44.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.29、片側p=0.0001)。 ・免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異(IGHV)の変異あり(HR:0.40、片側p=0.0003)および変異なし(HR:0.21、95%CI:0.14〜0.33、片側p<0.0001)のいずれにおいても、BR療法群と比較し、ザヌブルチニブ群でPFSの延長が認められた。 ・両群ともに全生存期間(OS)は、中央値に達しなかったが、60ヵ月の推定OSは、ザヌブルチニブ群で85.8%、BR療法群85.0%であった。 ・新たな安全性シグナルは検出されなかった。 ・ザヌブルチニブ群の有害事象は、想定の範囲内であり、心房細動の発生率は7.1%であった。  著者らは「SEQUOIA試験の長期フォローアップ(期間中央値:61.2ヵ月)において、最初に報告されたザヌブルチニブの有用性が裏付けられた」とし「未治療のCLL/SLL患者に対するザヌブルチニブ治療は、望ましい治療選択肢である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shadman M, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 8. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39647999 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性CLLに最も有効なレジメンとは〜ネットワークメタ解析
再発・難治性CLLに最も有効なレジメンとは〜ネットワークメタ解析
公開日:2025年1月14日 Kim J, et al. Blood Res. 2025; 60: 1.  再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)に対する治療の相対的な有効性を評価するため、韓国・仁荷大学のJinchul Kim氏らは、とくに17p欠失もしくはTP53変異を有する患者に焦点を当て、ネットワークメタ解析を実施した。Blood Research誌2025年1月2日号の報告。  2023年12月までに公表されたすべてのランダム化比較試験(RCT)をPubMed、EMBASE、Cochraneデータベースおよび会議録をシステマティックに検索し、文献レビューを実施した。ベイジアンネットワークメタ解析を実施し、無増悪生存期間(PFS)のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。含まれた治療レジメンのランク付けを行った。 主な結果は以下のとおり。 ・メタ解析には、13の治療レジメンを対象とした12件の試験(4,437例)を含めた。 ・全体として、再発・難治性CLLに対して最も効果的な治療レジメンは、ベネトクラクス+リツキシマブおよびザヌブルチニブであり、PFSのHRはイブルチニブと比較し最も低く、含まれたすべてのレジメンの中で最上位(SUCRA値:90%未満)にランク付けされた。 【ベネトクラクス+リツキシマブ】PFSのHR:0.62(95%CI:0.32〜1.20) 【ザヌブルチニブ】PFSのHR:0.65(95%CI:0.49〜0.86) ・17p欠失もしくはTP53変異を有する患者では、ザヌブルチニブが最も良好な有効性を示し、SUCRA値も最も高かった(97%)。イブルチニブと比較したHRは0.52(95%CI:0.31〜0.88)。 ・17p欠失もしくはTP53変異のない患者では、ベネトクラクス+リツキシマブが最も効果的であり、SUCRA値は94%であった。イブルチニブと比較したHRは0.49(95%CI:0.26〜0.94)。  著者らは「本結果より、再発・難治性CLLに対するベネトクラクス+リツキシマブとザヌブルチニブの優れた有効性が示され、変異の有無に応じて両レジメンを使い分ける必要性が改めて確認された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kim J, et al. Blood Res. 2025; 60: 1.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39747710 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLにBTK阻害薬ザヌブルチニブレジメンが有用
再発・難治性PCNSLにBTK阻害薬ザヌブルチニブレジメンが有用
公開日:2025年1月22日 Wang Y, et al. Leuk Lymphoma. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]  再発・難治性中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、予後不良リスクが高く、治療選択肢も限られている。北京・Beijing Tiantan HospitalのYali Wang氏らは、BTK阻害薬ザヌブルチニブを用いたレジメンで治療を行った再発・難治性PCNSL患者の治療アウトカムを検討し、報告した。Leukemia & Lymphoma誌オンライン版2025年1月17日号の報告。  対象は、自施設においてザヌブルチニブレジメンで治療を行った再発・難治性PCNSL患者38例。 主な結果は以下のとおり。 ・全奏効(OR)率は76.3%、完全奏効(CR)率は47.4%、病勢コントロール率は92.1%。 ・無増悪生存期間(PFS)中央値は31.0ヵ月、全生存期間中央値は未達であった。 ・Cox比例ハザードモデルによる単変量解析では、PFS延長の独立した因子は、OR(非奏効と比較したハザード比[HR]:0.18、95%CI:0.07〜0.48、p=0.001)、ザヌブルチニブ長期投与(6ヵ月以上 vs.2〜5ヵ月のHR:0.20、95%CI:0.06〜0.63、p=0.006)であることが明らかとなった。 ・log-rank検定では、ザヌブルチニブベースの治療後に腫瘍遺伝子変異量が高い患者(TMB:14.75muts/Mb以上)でPFS延長が認められた(p=0.016)。  著者らは「実臨床における再発・難治性PCNSLに対するザヌブルチニブレジメンの有効性および許容可能な安全性が確認された。また、PFS延長には、ザヌブルチニブ長期投与が関連している可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Wang Y, et al. Leuk Lymphoma. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39819306 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
初発ダブルエクスプレッサーリンパ腫にR-CHOP+ザヌブルチニブが有効〜第II相試験
初発ダブルエクスプレッサーリンパ腫にR-CHOP+ザヌブルチニブが有効〜第II相試験
公開日:2025年2月3日 Yin X, et al. Cancer. 2025; 131: e35697.  ダブルエクスプレッサーリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の他のサブタイプよりも予後不良である。中国・Shandong Cancer Hospital and InstituteのXia Yin氏らは、ステージIII以上のダブルエクスプレッサーリンパ腫に対してR-CHOP療法にザヌブルチニブを併用した際の有効性および安全性を評価するため、多施設プロスペクティブ単群第II相臨床試験を実施した。Cancer誌2025年1月1日号の報告。  対象は、2020年11月〜2022年7月に新たに診断されたダブルエクスプレッサーリンパ腫患者48例。対象患者には、6ヵ月間のザヌブルチニブ(160mg)1日2回およびR-CHOP療法6〜8サイクルを行った。R-CHOP+ザヌブルチニブ併用療法の有効性・安全性の評価および有効性と関連する因子の予備的調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・客観的奏効率(ORR)は89.6%、完全奏効率(CRR)は83.3%であった。 ・フォローアップ期間中央値は29.3ヵ月。 ・無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の中央値は未達。 ・2年PFSは81.25%、2年OSは93.75%であった。 ・グレードIII以上の有害事象は48例中23例(47.9%)で報告された。 ・次世代シーケンシング(NGS)を実施した33例の結果では、最も一般的な遺伝子変異としてTP53、MYD88、PIM1が特定された。 ・多変量解析では、BCL-6遺伝子の再構成は、PFS(ハザード比[HR]:0.247、95%信頼区間[CI]:0.068〜0.900、p=0.034)およびOS(HR:0.057、95%CI:0.006〜0.591、p=0.016)の予後不良因子であることが明らかとなった。 ・また、リンパ節外病変数もOSに有意な影響を及ぼすことが示唆された(HR:15.12、95%CI:1.070〜213.65、p=0.044)。  著者らは「ダブルエクスプレッサーリンパ腫に対するR-CHOP+ザヌブルチニブ併用療法は、効果的な治療選択肢であり、ザヌブルチニブの毒性は許容可能であった」と報告している。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Yin X, et al. Cancer. 2025; 131: e35697.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39748728 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CLLに対する2つのBTK阻害薬、ザヌブルチニブはイブルチニブより優れるのか
CLLに対する2つのBTK阻害薬、ザヌブルチニブはイブルチニブより優れるのか
公開日:2025年2月10日 Fan F, et al. Hematol Oncol. 2025; 43: e70041.  イブルチニブの登場により、慢性リンパ性白血病(CLL)治療は一変した。しかし、有害事象に悩まされることも少なくない。第2世代のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるザヌブルチニブは、安全性の向上に期待される薬剤である。中国・青島大学のFuli Fan氏らは、CLLに対する2つのBTK阻害薬、ザヌブルチニブとイブルチニブの安全性プロファイルの比較を行った。Hematological Oncology誌2025年3月号の報告。  本プロスペクティブコホート研究では、CLL患者200例が登録され、ザヌブルチニブ群(100例)、イブルチニブ群(100例)に割り付けられた。年齢、性別、BMI、ECOGのPS、遺伝学的要因などのベースライン特性を比較した。有害事象および重篤な有害事象のフォローアップおよび分類には、有害事象共通⽤語規準(CTCAE)を用いた。重篤な有害事象およびグレードIII以上の有害事象の予測因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰モデルを実施した。調整オッズ比(aOR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。 ・平均年齢は、ザヌブルチニブ群49.16歳、イブルチニブ群49.65歳(p=0.285)。 ・ザヌブルチニブ群では、ECOGのPS不良な患者の割合が高かった(71% vs.57%、p=0.039)。 ・ザヌブルチニブ群は、重症有害事象(4% vs.9%、p=0.152)および重篤な有害事象(8% vs.17%、p=0.054)の割合が低かった。 ・好中球減少は、イブルチニブ群のみでみられた(3%)。 ・サブグループ解析では、非難治性患者においてザヌブルチニブ群の合併症発生率が高かった(11.40% vs.5.26、p=0.065)。 ・ステージIIIのCLLは、グレードIII以上の有害事象(aOR:0.007、95%CI:0.0003〜0.1829)および重篤な有害事象(aOR:0.015、95%CI:0.0010〜0.1770)の保護因子であった。 ・ECOSのPS状態(2 vs.3)により、重篤な有害事象リスクの低下がみられ、17p欠損が重篤な有害事象の主なリスク因子であることが示唆された(aOR:6.40、95%CI:1.33〜30.79)。  著者らは「ザヌブルチニブは、イブルチニブよりも安全性プロファイルが良好であり、重症有害事象が少なかったことから、CLL患者、とくにBTK阻害薬による合併症リスクが高い患者では、ザヌブルチニブの方が安全な選択肢であると考えられる。しかし、これらの違いは、ベースライン時の臨床特性のばらつきに起因している可能性があるため、解釈には注意が必要である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fan F, et al. Hematol Oncol. 2025; 43: e70041.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39887746 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら