「中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)」の記事一覧

再発・難治性PCNSLに対するチラブルチニブの第I/II相試験のフォローアップ分析
再発・難治性PCNSLに対するチラブルチニブの第I/II相試験のフォローアップ分析
公開日:2024年5月16日 Yonezawa H, et al. Neurooncol Adv. 2024; 6: vdae037.  再発・難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)に対する第2世代ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬チラブルニチブの有効性および安全性を評価した日本の多施設共同非盲検対照第I/II相試験であるONO -4059-02試験においてチラブルニチブの有効性および安全性プロファイルが示された。鹿児島大学の米澤 大氏らは、3年間のフォローアップ調査後の長期的な有効性および安全性を報告した。Neuro-oncology Advances誌2024年4月22日号の報告。  本試験の登録基準は、20歳以上、病理組織学的にPCNSLと診断され、Karnofsky Performance Status(KPS)70以上であった。用法・用量は、チラブルチニブ320または480mgを1日1回経口投与または絶食状態で1日1回480mg投与とした。 主な結果は以下のとおり。 ・2017年10月19日〜2019年6月13日の間に再発患者33例、難治性患者9例を含む44例が登録された。 ・内訳は、チラブルチニブ320mg群20例、480mg群7例、絶食群17例であった。 ・フォローアップ期間中央値は、37.1ヵ月であった。 ・全奏効(OR)率は63.6%(95%CI:47.8〜77.6)、完全奏効(CR)9例、不確定完全奏効(CRu)7例、部分奏効(PR)12例であった。 ・奏効期間(DOR)中央値は9.2ヵ月、DOR率は19.8%、無増悪生存期間(PFS)中央値は2.9ヵ月、全生存期間(OS)中央値は未達、PFS率は13.9%、OS率は56.7%であった。 ・有害事象は、38例(86.4%)で認められ、グレード3以上が23例(52.3%)、グレード5が1例で発生した。 ・KPSおよびQOLスコアは、長期治療を受けた患者で良好に維持されていた。  著者らは「再発・難治性PCNSLに対するチラブルニチブ治療は、KPSおよびQOLスコアを維持しながら、長期的な有効性・安全性が示された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Yonezawa H, et al. Neurooncol Adv. 2024; 6: vdae037.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38690230 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
PCNSLに対する骨髄破壊性 vs. 非骨髄破壊性地固め療法〜Alliance 51101試験
PCNSLに対する骨髄破壊性 vs. 非骨髄破壊性地固め療法〜Alliance 51101試験
公開日:2024年7月3日 Batchelor TT, et al. Blood Adv. 2024; 8: 3189-3199.  標準線量の全能照射では、重篤な神経毒性を伴うが、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)に対する最適な地固め療法戦略は確立されていない。米国・Brigham and Women's HospitalのTracy T. Batchelor氏らは、PCNSLに対する寛解導入療法後の非骨髄破壊性地固め療法と自家幹細胞移植による骨髄破壊性地固め療法を比較するため、米国Allianceがん共同グループによるランダム化第II相臨床試験を実施した。著者らの知る限り、本試験は、全能照射を用いない新規PCNSLに対する地固め療法に関する初めてのランダム化試験である。Blood Advances誌2024年6月25日号の報告。  対象は、18〜75歳のPCNSL患者113例。メトトレキサート+テモゾロミド+リツキサン+シタラビンによる寛解導入療法後に、チオテパ+カルムスチンおよび自家幹細胞移植を行う群(骨髄破壊性治療群)とエトポシド+シタラビンを行う群(非骨髄破壊性治療群)に1:1でランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、無増悪生存期間(PFS)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・113例中評価可能であった患者は108例(両群とも54例)。 ・非骨髄破壊性治療群では、寛解導入療法中に病性進行または死亡した患者が多かった(28% vs. 11%、p=0.05)。 ・推定2年PFSは、骨髄破壊性治療群の方が非骨髄破壊性治療群よりも高かった(73% vs. 51%、p=0.02)。 ・地固め療法開始時に目標設定した2次解析では、地固め療法完了患者の推定2年PFSは、両群間で有意な差が認められなかった(86% vs. 71%、p=0.21)。  著者らは「新規PCNSL患者に対するいずれの地固め療法も、有効性が認められ、毒性プロファイルも同様であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Batchelor TT, et al. Blood Adv. 2024; 8: 3189-3199.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38598710 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性CNSリンパ腫に対するイブルチニブ単剤療法の長期評価〜第II相試験
再発・難治性CNSリンパ腫に対するイブルチニブ単剤療法の長期評価〜第II相試験
公開日:2024年7月16日 Grommes C, et al. Clin Cancer Res. 2024 Jul 12. [Epub ahead of print]  ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブは、ファーストインクラスの薬剤である。著者らはこれまで、再発・難治性の中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)または二次性中枢神経系リンパ腫(SCNSL)患者20例におけるイブルチニブの安全性と短期的な抗腫瘍活性を報告した。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのChristian Grommes氏らは、イブルチニブの長期的な評価を行うため、用量漸増コホートとの複合コホートの結果を報告した。Clinical Cancer Research誌オンライン版2024年7月12日号の報告。  用量漸増コホートには、再発・難治性PCNSLおよびSCNSL患者26例が登録された。拡大コホートと用量漸増コホートを合わせた46例(PCNSL:31例、SCNSL:15例)の患者を対象に、複合コホートを実施した。イブルチニブの投与量は、用量漸増コホートでは560mg/日または840mg/日、拡大コホートでは840mg/日であった。フォローアップ期間中央値は、PCNSL患者で49.9ヵ月、SCNSL患者で62.1ヵ月であった。イブルチニブ治療前および治療中に採取した腫瘍生検および脳脊髄液(CSF)からDNA配列を決定した。 主な結果は以下のとおり。 ・抗腫瘍活性は、PCNSL患者23例(74%)、SCNSL患者9例(60%)で観察された。 ・完全奏効(CR)は、PCNSL患者12例、SCNSL患者7例で認められた。 ・PCNSL患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は4.5ヵ月(95%CI:2.8〜9.2)、1年PFSは23.7%(95%CI:12.4〜45.1)であった。 ・PCNSLレスポンダー23例における奏効期間(DOR)中央値は5.5ヵ月であった。 ・SCNSL患者のPFS中央値は5.3ヵ月(95%CI:1.3〜14.5)、レスポンダー9例のDOR中央値は8.7ヵ月であった。 ・探索的バイオマーカー分析では、PCNSL患者におけるイブルチニブの長期的な奏効と関連している因子としてTBL1XR1の変異が示唆された(p=0.0075)。 ・CSFからの循環腫瘍DNAクリアランスは、イブルチニブのCRかつ長期的奏効と関連が認められた。  著者らは「長期的なフォローアップ調査により、再発・難治性の中枢神経系リンパ腫に対するイブルチニブ単剤療法の抗腫瘍活性が確認され、奏効に対する分子的な決定因子が特定された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Grommes C, et al. Clin Cancer Res. 2024 Jul 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38995739 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
PMBCLにおける中枢神経系再発予防の必要性は〜米メイヨークリニック
PMBCLにおける中枢神経系再発予防の必要性は〜米メイヨークリニック
公開日:2024年9月9日 Okcu I, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2024 Aug 2. [Epub ahead of print]  原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は、悪性B細胞性非ホジキンリンパ腫の1つである。PMBCLは、結節性硬化型の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)と、臨床的および生物学的特徴が類似しているといわれている。cHLでは、中枢神経系(CNS)再発は非常に稀であるといわれており、PMBCLのCNS再発も、少ないと予想される。米国・メイヨークリニックのIzel Okcu氏らは、標準的な化学療法で治療を行ったPMBCL患者におけるCNS再発の発生頻度を調査するため、単施設レトロスペクティブ研究を実施した。Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemia誌オンライン版2024年8月2日号の報告。  対象は、メイヨークリニックで診察された新規PMBCL患者154例(平均年齢:38歳[範囲:18〜77]、女性の割合:60%、65歳以上の割合:8%[12例])。CNS再発率は、競合リスクモデルを用いて算出し、死亡を競合リスクとみなした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者に対する第1選択治療は、R-CHOP療法51%(78例)、DA-EPOCH-R療法49%(76例)であった。 ・CNS再発予防は、R-CHOP療法で5%(8例)、DA-EPOCH-R療法10%(15例)に実施されていた。 ・フォローアップ中央値は39ヵ月の間に、CNS再発は3例で認められ、いずれの症例もCNSおよび全身性再発が認められた。 ・コホート全体のCNS再発の累積発生率は、1年で1.43%(95%CI:0.3〜4.6)、2および5年で2.21%(95%CI:0.6〜5.8)であった。 ・CNS再発予防を行わなかった患者131例における再発率は、1年で0.85%(95%CI:0.1〜4.2)、2および5年で1.80%(95%CI:0.3〜5.8)であった。 ・CNS再発患者3例には、第1選択治療としてR-CHOP療法が用いられていた。3例中2例は、CNS再発予防を行っていなかったが、1例は腹腔内投与が行われていた。  著者らは「PMBCLにおけるCNS再発リスクは、標準的な化学療法では非常に低いことが示唆された。そのため、定期的なCNS予防は、必要であるとはいえない」と結論づけた。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Okcu I, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2024 Aug 2. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39232904 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
PCNSLに対するR-MPV+レナリドミド/イブルチニブ併用療法〜第Ib/II相試験
PCNSLに対するR-MPV+レナリドミド/イブルチニブ併用療法〜第Ib/II相試験
公開日:2024年9月27日 Marion A, et al. J Hematol Oncol. 2024; 17: 86.  これまでの中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)に対する導入化学療法の結果は、改善の余地がある。BTK阻害薬イブルチニブおよび免疫調整薬レナリドミドは、再発PCNSLへの有効性が示されている薬剤である。フランス・Institut CurieのAlcantara Marion氏らは、新規PCNSL患者を対象に、高用量メトトレキサートベースの化学療法にイブルチニブまたはレナリドミドを併用した際の有効性および安全性を評価するため、第Ib/II相試験を実施した。Journal of Hematology & Oncology誌2024年9月19日号の報告。  本試験は、3+3デザインで実施した。新規PCNSL患者26例を対象に、リツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+prednisone(R-MPV療法)とイブルチニブまたはレナリドミドの28日サイクル×4回にランダムに割り付けた。奏効が得られた患者には、リツキサン+シタラビンによる強化療法および自家幹細胞移植による集中化学療法を実施した。第Ib相試験の目的は、最初の導入サイクル中に発生する用量制限毒性(DLT)に基づき、第II相試験の推奨用量を決定することとした。 主な結果は以下のとおり。 ・年齢中央値は、52歳であった。 ・次の4件のDLTが観察された。 ●グレード5のアスペルギルス症およびニューモシスチス症:1件 ●グレード4のカテーテル関連感染症:1件 ●グレード3のALT上昇:2件 ・R-MPV療法と併用した際のイブルチニブおよびレナリドミド推奨用量は、それぞれ560mg /日(day3-14およびday17-28)、15mg /日(day1-21)であった。 ・両群で最も多く認められたグレード3以上の治療関連有害事象は、肝細胞融解、好中球減少、感染症であった。 ・レナリドミド群では、2サイクル目にグレード4のライエル症候群が1件報告された。 ・4サイクル後の全奏効(OR)率は、レナリドミド群76.9%、イブルチニブ群83.3%であった。  著者らは「PCNSLに対しR-MPV療法とレナリドミドまたはイブルチニブとの併用療法は、第1選択治療として利用可能であることが示唆された。安全性については、既知の安全性プロファイルと同様であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Marion A, et al. J Hematol Oncol. 2024; 17: 86.▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39300447 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
公開日:2024年10月4日 Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.  中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、全身的な病変を伴わずに中枢神経系へ影響を及ぼすアグレッシブリンパ腫である。第1選択治療として、大量メトトレキサート(HDMTX)ベースのレジメンが推奨されるが、その後は、高用量化学療法、全脳放射線療法、テモゾロミド併用または維持療法、自家造血幹細胞移植(auto HSCT)などによる強化療法が行われる。HDMTX+リツキシマブによる治療が進歩したものの、いまだ多くの患者が再発している。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBrian Primeaux氏らは、再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Hematological Oncology誌2024年11月号の報告。  2016年4月1日〜2022年7月1日にHDMTXベースの第1選択治療を行なった成人PCNSL患者54例を対象に、レトロスペクティブ記述的分析を行なった。二次性中枢神経系リンパ腫、非B細胞由来PCNSL、眼内悪性リンパ腫の治療目的でHDMTXを行なった患者は除外した。再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴および第1選択治療後の強化療法の特徴について、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・31例(57%)の患者には、リツキシマブ+大量シタラビン(R-HD-AraC療法)、全脳放射線療法、またはその両方による強化療法が行われていた。 ・13例(24%)は、auto-HSCTに進んでいた。 ・病勢進行は25例で認められ、17例に対し第2選択治療が行われた。 ・第2選択治療の内訳は、臨床試験(18%)、リツキシマブ+レナリドミド(18%)、HDMTXベースのレジメン(18%)、イブルチニブ+リツキシマブ(12%)、R-HD-AraC療法(12%)。 ・さらに7例で病勢進行が認められ、第3選択治療が行われた。 ・第3選択治療はさまざまであり、リツキシマブ+レナリドミド、イブルチニブ+HDMTX、イブルチニブ、リツキシマブ、メトトレキサート、シタラビン、R-HD-AraC療法、リツキシマブ+ニボルマブ、全脳放射線療法などで治療されていた。 ・5例は第4選択治療として、リツキシマブ、リツキシマブ+レナリドミド、R+HDMTX、ニボルマブが行われた。 ・第5選択治療以降を行った患者は3例、これまでのレジメンに加え、リツキシマブ+テモゾロミド、ペムブロリズマブが用いられていた。  著者らは「再発・難治性PCNSLの治療選択肢は多様であり、医師の好み、臨床試験の適格性、治療歴、PS、臓器機能、治療目的など、患者の要因に大きく影響されていることがわかった。最適なマネジメントを実現するためにも、プロスペクティブ臨床試験の必要性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39340121 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら