「メトトレキサート(メソトレキセート)」の記事一覧

PCNSLに対するR-MPV+レナリドミド/イブルチニブ併用療法〜第Ib/II相試験
PCNSLに対するR-MPV+レナリドミド/イブルチニブ併用療法〜第Ib/II相試験
公開日:2024年9月27日 Marion A, et al. J Hematol Oncol. 2024; 17: 86.  これまでの中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)に対する導入化学療法の結果は、改善の余地がある。BTK阻害薬イブルチニブおよび免疫調整薬レナリドミドは、再発PCNSLへの有効性が示されている薬剤である。フランス・Institut CurieのAlcantara Marion氏らは、新規PCNSL患者を対象に、高用量メトトレキサートベースの化学療法にイブルチニブまたはレナリドミドを併用した際の有効性および安全性を評価するため、第Ib/II相試験を実施した。Journal of Hematology & Oncology誌2024年9月19日号の報告。  本試験は、3+3デザインで実施した。新規PCNSL患者26例を対象に、リツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+prednisone(R-MPV療法)とイブルチニブまたはレナリドミドの28日サイクル×4回にランダムに割り付けた。奏効が得られた患者には、リツキサン+シタラビンによる強化療法および自家幹細胞移植による集中化学療法を実施した。第Ib相試験の目的は、最初の導入サイクル中に発生する用量制限毒性(DLT)に基づき、第II相試験の推奨用量を決定することとした。 主な結果は以下のとおり。 ・年齢中央値は、52歳であった。 ・次の4件のDLTが観察された。 ●グレード5のアスペルギルス症およびニューモシスチス症:1件 ●グレード4のカテーテル関連感染症:1件 ●グレード3のALT上昇:2件 ・R-MPV療法と併用した際のイブルチニブおよびレナリドミド推奨用量は、それぞれ560mg /日(day3-14およびday17-28)、15mg /日(day1-21)であった。 ・両群で最も多く認められたグレード3以上の治療関連有害事象は、肝細胞融解、好中球減少、感染症であった。 ・レナリドミド群では、2サイクル目にグレード4のライエル症候群が1件報告された。 ・4サイクル後の全奏効(OR)率は、レナリドミド群76.9%、イブルチニブ群83.3%であった。  著者らは「PCNSLに対しR-MPV療法とレナリドミドまたはイブルチニブとの併用療法は、第1選択治療として利用可能であることが示唆された。安全性については、既知の安全性プロファイルと同様であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Marion A, et al. J Hematol Oncol. 2024; 17: 86.▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39300447 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
公開日:2024年10月4日 Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.  中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、全身的な病変を伴わずに中枢神経系へ影響を及ぼすアグレッシブリンパ腫である。第1選択治療として、大量メトトレキサート(HDMTX)ベースのレジメンが推奨されるが、その後は、高用量化学療法、全脳放射線療法、テモゾロミド併用または維持療法、自家造血幹細胞移植(auto HSCT)などによる強化療法が行われる。HDMTX+リツキシマブによる治療が進歩したものの、いまだ多くの患者が再発している。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBrian Primeaux氏らは、再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Hematological Oncology誌2024年11月号の報告。  2016年4月1日〜2022年7月1日にHDMTXベースの第1選択治療を行なった成人PCNSL患者54例を対象に、レトロスペクティブ記述的分析を行なった。二次性中枢神経系リンパ腫、非B細胞由来PCNSL、眼内悪性リンパ腫の治療目的でHDMTXを行なった患者は除外した。再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴および第1選択治療後の強化療法の特徴について、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・31例(57%)の患者には、リツキシマブ+大量シタラビン(R-HD-AraC療法)、全脳放射線療法、またはその両方による強化療法が行われていた。 ・13例(24%)は、auto-HSCTに進んでいた。 ・病勢進行は25例で認められ、17例に対し第2選択治療が行われた。 ・第2選択治療の内訳は、臨床試験(18%)、リツキシマブ+レナリドミド(18%)、HDMTXベースのレジメン(18%)、イブルチニブ+リツキシマブ(12%)、R-HD-AraC療法(12%)。 ・さらに7例で病勢進行が認められ、第3選択治療が行われた。 ・第3選択治療はさまざまであり、リツキシマブ+レナリドミド、イブルチニブ+HDMTX、イブルチニブ、リツキシマブ、メトトレキサート、シタラビン、R-HD-AraC療法、リツキシマブ+ニボルマブ、全脳放射線療法などで治療されていた。 ・5例は第4選択治療として、リツキシマブ、リツキシマブ+レナリドミド、R+HDMTX、ニボルマブが行われた。 ・第5選択治療以降を行った患者は3例、これまでのレジメンに加え、リツキシマブ+テモゾロミド、ペムブロリズマブが用いられていた。  著者らは「再発・難治性PCNSLの治療選択肢は多様であり、医師の好み、臨床試験の適格性、治療歴、PS、臓器機能、治療目的など、患者の要因に大きく影響されていることがわかった。最適なマネジメントを実現するためにも、プロスペクティブ臨床試験の必要性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39340121 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
PCNSLの生存率改善に効果的な治療はどの組み合わせか?
PCNSLの生存率改善に効果的な治療はどの組み合わせか?
公開日:2024年11月6日 de Groot FA, et al. Eur J Cancer. 2024 Oct 13. [Epub ahead of print]  中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、稀であるため、大量メトトレキサート(MTX)ベースのさまざまな治療レジメンの評価が十分に行われているとはいえない。オランダ・ライデン大学メディカルセンターのFleur A. de Groot氏らは、PCNSLに対する5つの大量MTXベースの多剤化学療法レジメンと2つの地固め療法後の臨床的特徴およびアウトカム(無増悪生存期間[PFS]、全生存期間[OS]、疾患特異的生存率[DSS])を評価するため、レトロスペクティブ多施設共同研究を実施した。European Journal of Cancer誌オンライン版2024年10月13日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、組織学的にPCNSLと確認され、大量MTXベースの治療(3g/m2/サイクル以上)を1サイクル以上行った患者346例。 ・レジメンには、MATRix(大量MTX+大量シタラビン[AraC]+チオテパ+リツキシマブ)、MBVP±HD-AraC±R(大量MTX+teniposide /エトポシド+カルムスチン+プレドニゾロン±大量AraC±リツキシマブ)、MP±R(大量MTX+プロカルバジン±リツキシマブ)、大量MTX+大量AraCを含めた。 ・導入後の全奏効(OR)率は69%、完全奏効(CR)率は28%、病勢進行は29%(100例)で観察された。 ・地固め療法を行った患者は126例(36%)。内訳は、HD-BCNU-TT/ASCT(大量BCNU/チオテパ+自家幹細胞移植)59例(17%)、全脳放射線療法67例(19%)。 ・多変量予後予測による死亡リスク不良に関連する臨床的特徴は、次のとおりであった。 【60歳超】HR:1.61、p=0.011 【LDH上昇】HR:1.75、p=0.004 【WLOステータス2以上】HR:1.56、p=0.010 ・大量AraCを含む導入レジメンは、含まないレジメンと比較し、生存率に有意なベネフィットをもたらした(HR:0.59、p=0.002)。 ・HD-BCNU-TT/ASCT(HR:0.44)または全脳放射線療法(HR:0.42)のどちらを優先するかに関わらず、地固め療法のベネフィットが確認された(p<0.001)。地固め療法は時間依存変数であった。 ・競合リスク分析では、地固め療法を行った患者と行わなかった患者では、リンパ腫に関連しない死亡率はいずれも低かった。  著者らは「PCNSLの死亡リスクには、年齢、LDH上昇、WHOステータスが関連することが確認された。大量AraCを含むレジメンおよびHD-BCNU-TT/ASCTまたは全脳放射線療法による地固め療法は、良好な生存率との関連が認められた」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら de Groot FA, et al. Eur J Cancer. 2024 Oct 13. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39427440 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら