「血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)」の記事一覧

小児免疫原性TTPに対するカプラシズマブ〜英国TTPレジストリ
小児免疫原性TTPに対するカプラシズマブ〜英国TTPレジストリ
公開日:2024年7月10日 Taylor AM, et al. Blood Adv. 2024 Jul 5. [Epub ahead of print]  小児の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、極めて稀な疾患である。免疫原性TTPは、抗ADAMTS13自己抗体によって引き起こされ、ADAMTS13/VWFの不均衡による血栓傾向がみられる。さらに、小児では稀であるが、生命を脅かす可能性もある。微小血栓形成阻害剤カプラシズマブは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児に対し適応を有している薬剤である。英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS Foundation TrustのAlice Maria Taylor氏らは、小児に対するカプラシズマブの使用についてレトロスペクティブに調査を行った。Blood Advances誌オンライン版2024年7月5日号の報告。  英国TTPレジストリより、カプラシズマブで治療を行った18歳未満の患者16例(12歳未満4例を含む)を抽出し、レトロスペクティブに分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・体重40kg未満の患者3例には、カプラシズマブ5mg /日を1日1回投与した。 ・最年少の患者は、診断時33ヵ月齢であった。 ・血漿交換療法(PEX)は、15例に行われており、血小板正常化までに平均5回(範囲:2〜9)のPEXを要した。 ・PEXなしで治療を行った患者は1例のみであった。 ・すべての患者において、血小板数(平均:5.5日[範囲:3〜28])およびADAMTS13活性(平均:35日[範囲:8〜149])の正常化が達成された。 ・入院期間の中央値は、11日(範囲:5〜26)であった。 ・対象患者に、難治性は認められなかった。 ・再発患者は、1例のみで、受診後9ヵ月で再発した。 ・重度の鼻出血を呈した1例では、VWF補充やカプラシズマブの減量を必要とする出血が認められたが、有意な頭蓋内出血や消化管出血は認められなかった。  著者らは「小児に対するカプラシズマブ治療は、成人と同様の有効性および安全性が認められ、主にPEXの減少に有用である可能性が示唆された。このことは、とくに小児医療において、入院の強度および期間に良い影響を与えるであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Taylor AM, et al. Blood Adv. 2024 Jul 5. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38968147 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人TTP患者の再発予防、カプラシズマブ+早期リツキシマブ投与が有用
日本人TTP患者の再発予防、カプラシズマブ+早期リツキシマブ投与が有用
公開日:2024年8月7日 Imada K, et al. Thromb J. 2024; 22: 72.  日本人患者を対象とした国内第II /III相試験において、後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に対するカプラシズマブ治療の有効性が示され、後天性TTPの再発率低下が報告された。カプラシズマブ治療は、ADAMTS13活性を毎週モニタリングし、症状の消失や活性の低下が持続するまで治療を継続することで、病勢増悪や再発を抑制することができる。大阪赤十字病院の今田 和典氏らは、国内第II/III相試験の対象患者におけるカプラシズマブ治療のADAMTS13活性/インヒビターレベルの変化を評価するため、事後分析を実施した。Thrombosis Journal誌2024年8月2日号の報告。  18歳以上の後天性TTP患者を対象に、血漿交換(TPE)後30日間、TPEおよび免疫抑制薬と併用してカプラシズマブを1日1回10m投与した。アウトカムには、ADAMTS13活性の正常化までの期間、治療終了時のADAMTS13活性レベル、治療中のADAMTS13 inhibitor boostingの発生率、血小板数の正常化までの期間、TPEの日数、安全性を含めた。治療中のADAMTS13インヒビターの再上昇の有無によるアウトカム評価も行なった。 主な結果は以下のとおり。 ・後天性TTP患者19例を分析に含めた。 ・ADAMTS13活性が10、20、60%以上回復するまでの期間は、それぞれ以下の通りであった。 【10%以上回復】14.6日(95%CI:5.9〜24.8) 【20%以上回復】18.5日(95%CI:5.9〜31.8) 【60%以上回復】47.5日(95%CI:18.5〜60.9) ・カプラシズマブ治療終了時のADAMTS13活性レベルの中央値は、62.0%(範囲:29.0〜101.0)であった。 ・ADAMTS13 inhibitor boostingの患者9例では、ADMTS13活性の反応に遅れがみられ、ADAMTS13 inhibitor boostingでなかった患者と比較し、血小板数の正常化までの期間中央値、TPEの日数中央値の短縮が認められた。 ・TPE終了後、ADAMTS13 inhibitor boostingのほぼすべての患者に対し、リツキシマブが投与された(88.9%)。 ・リツキシマブで治療を行ったADAMTS13 inhibitor boostingでなかった患者は、TPE終了前にリツキシマブが投与されていた。 ・再発患者は1例のみであり、有害事象によりカプラシズマブ投与を中止した直後に発現した。  著者らは「後天性TTP患者では、治療早期にリツキシマブを投与し、TPEおよび免疫抑制薬とカプラシズマブの併用を行うことで、ADAMTS13 inhibitor boostingリスクの軽減につながる可能性が示唆された。カプラシズマブに加え、リツキシマブを早期に使用することで、ADAMTS13 inhibitor boostingによる後天性TTP再発の予防が期待できる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Imada K, et al. Thromb J. 2024; 22: 72.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39095866 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
難治性免疫原性TTPに対してダラツムマブは治療選択肢となりうるか
難治性免疫原性TTPに対してダラツムマブは治療選択肢となりうるか
公開日:2024年9月11日 Weisinger J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 4. [Epub ahead of print]  リツキシマブ付耐または不応性の免疫原性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者に対する免疫抑制療法は、依然として議論の的となっている。抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブは、治療選択肢の1つとなりうる可能性が示唆されているが、そのデータは十分ではない。フランス・ソルボンヌ大学のJulia Weisinger氏らは、フランス国内でダラツムマブ治療を行った免疫原性TTP患者について調査を行うため、French Thrombotic Microangiopathies Reference Centerにおいて全国調査を実施した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年9月4日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・免疫原性TTP患者7例より、9つのエピソードが特定された。 ・臨床的奏効がみられADAMTS13再発を呈したケースが8件、リツキシマブ不耐後の急性期ケース1件であった。 ・平均3ライン以上の治療歴が認められた。 ・ダラツムマブ治療後、ADAMTS13活性は8例で改善がみられ、そのうち3例は正常化した。 ・ADAMTS13再発は3例で認められ、そのうち2例はダラツムマブによる再治療で改善した。 ・ADAMTS13無再発生存期間中央値は未達、12ヵ月のADAMTS13無再発生存率は56%であった。 ・ダラツムマブ関連有害事象は5例で発生し、重篤でない注入関連反応が全例で認められた。  著者らは「本結果より、ダラツムマブは、リツキシマブ不耐または難治性の免疫原性TTP患者に対する有効な治療選択肢となりうる可能性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Weisinger J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 4. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39228246 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら