「チサゲンレクル ユーセル[tisa-cel](キムリア)」の記事一覧

英国におけるCAR-T細胞療法前のRTブリッジングのアウトカム
英国におけるCAR-T細胞療法前のRTブリッジングのアウトカム
公開日:2024年5月9日 Kuhnl A, et al. Br J Haematol. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]  放射線療法(RT)は、CAR-T細胞療法と潜在的な相乗効果が期待できるが、ロジスティックな課題や標準化されたプロトコルがないことから、ブリッジング療法として普及していない。英国・King's College HospitalのA. Kuhnl氏らは、英国の12施設においてアキシカブタゲン シロルユーセルまたはチサゲンレクル ユーセルによるCAR-T細胞療法が許可されたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者763例を対象とした多施設コホートにおけるRTブリッジングの治療成績を分析した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年4月9日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・763例中722例はリンパ球除去を実施、717例のブリッジング療法に関するデータが入手可能であった。 ・717例中169例(24%)にRTブリッジングが実施された(単一療法:129例、複合療法:40例)。 ・169例のうち、進行期が65.7%、巨大腫瘤性病変が36.9%、LDH高値が86.5%、国際予後指標(IPI)スコア3以上が41.7%、ダブル/トリプリヒット率が15.2%に認められた。 ・RTブリッジングの実施率は、施設ごとに異なり、11〜32%の範囲であり、時間経過とともに増加が見られた。 ・Vein-to-vein timeや注入速度は、ブリッジングの違いにより差は認められなかった。 ・RTブリッジングを行った患者のアウトカムは良好であり、1年無増悪生存期間(PFS)は、単一療法で56%、複合療法で47%であった(全身ブリッジングの1年PFS:43%)。  著者らは「DLBCL患者におけるCAR-T細胞療法前のRTブリッジングに関する最も大きなコホート研究である本研究の結果より、RTブリッジングが進行期、高リスク患者においても安全かつ効果的に利用可能であり、脱落リスクも軽減でき、良好なアウトカムをもたらすことが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kuhnl A, et al. Br J Haematol. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38594876 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本におけるCAR-T細胞療法の費用対効果分析
日本におけるCAR-T細胞療法の費用対効果分析
公開日:2024年5月13日 Ysutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Apr 10. [Epub ahead of print]  ギリアド・サイエンシズ株式会社のSaaya Tsutsue氏らは、2つ以上の全身療法を行った再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)成人患者の治療に対する3つのCAR-T細胞療法について、費用対効果分析を実施し、比較検討を行った。Future Oncology誌オンライン版2024年4月10日号の報告。  対象製品は、アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)、チサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)の3つのCAR ~T細胞療法。費用対効果分析には、partition survival mixture cure modelを用いた。分析は、ZUMA-1試験に基づき、マッチング調整された間接比較を用いて、JULIET試験およびTRANSCEND試験にあわせて調整を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、生存年数の増加がより大きく、質調整生存年(QALY)の増加が認められた。 【生存年数】 axi-cel vs. tisa-cel:10.87 vs. 7.75(+3.50) axi-cel vs. liso-cel:11.95 vs. 9.11(+2.85) 【QALY】 axi-cel vs. tisa-cel:8.62 vs. 5.96(+2.65) axi-cel vs. liso-cel:9.53 vs. 7.29(+2.24) ・これにより、axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、直接医療費の減少が認められた。 【直接医療費(米ドル)】 axi-cel vs. tisa-cel:280,875.73 vs. 281,852.02(−976.29) axi-cel vs. liso-cel:280,673.52 vs. 280,915.52(−242.00)  著者らは「医療財政の観点から考えると、axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、費用対効果の高い治療選択肢であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ysutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Apr 10. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38597742 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法後の最適なモニタリング期間は
CAR-T細胞療法後の最適なモニタリング期間は
公開日:2024年7月25日 Ahmed N, et al. Blood Adv. 2024 Jul 23. [Epub ahead of print]  CD19を標的としたCAR-T細胞療法として、アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)、チサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)などが承認されたことにより、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)治療は一変し、有効な治療法として確立されつつある。その一方で、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)などの毒性リスクが問題となっている。米FDAは、リスク評価および緩和戦略の一環として、毒性リスクのモニタリングのために患者を治療センターの近隣に4週間滞在することを義務付けている。しかし、このような慎重な対策は、治療費の増加、患者および介護者の負担増加、患者アクセスや社会経済的格差などの課題をもたらす可能性がある。米国・カンザス大学のNausheen Ahmed氏らは、CAR-T細胞療法を行った患者におけるCRS、ICANSの発生や持続期間、非再発死亡率(NRM)の原因を調査した。Blood Advances誌オンライン版2024年7月23日号の報告。  2018〜23年に9施設でaxi-cel、tisa-cel、liso-celによる治療を行った患者475例を対象に、リアルワールドにおけるCAR-T細胞療法実施患者のCRS、ICANSの発生や持続期間、NRMの原因を調査するため、レトロスペクティブ研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・製品間でCRS、ICANSの発生率や持続期間に違いが認められたが、注入後2週間以降で新規に発生したCRS(0%)、ICANS(0.7%)は極めて稀であった。 ・2週間後にCRSの新規発生は認められず、ICANSの新規発生は、3週間後に1例のみで認められた。 ・NRMは、フォローアップ初期にICANS(28日目までで1.1%)、その後3ヵ月間で感染症(1.2%)により発生していた。  著者らは「本研究結果は、CAR-T細胞療法のモニタリングを最適化する上で重要であり、今後は患者の身体的および経済的制約を軽減するための仕組みが求められるであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ahmed N, et al. Blood Adv. 2024 Jul 23. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39042880 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性DLBCLの2ndライン、CAR-T細胞療法が主流となるのか
再発・難治性DLBCLの2ndライン、CAR-T細胞療法が主流となるのか
公開日:2024年8月5日 Asghar K, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1407001.  再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する2ndライン治療としてCAR-T細胞療法と標準治療(SOC)を比較した最近の第III相試験において、これらの結果に一貫性が認められていない。パキスタン・ダウ健康科学大学のKanwal Asghar氏らは、再発・難治性DLBCLの2ndライン治療におけるCAR-T細胞療法の有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Oncology誌2024年7月18日号の報告。  CAR-T細胞療法とSOCの比較を行うため、ランダム効果メタ解析を用いて、推定値をプールした。混合治療の比較では、頻度論的(frequentist)ネットワークメタ解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・3試験、再発・難治性DLBCL患者865例をメタ解析に含めた。 ・CAR-T細胞療法は、SOCと比較し、無イベント生存期間(EFS)、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を示した。 【EFS】HR:0.51、95%CI:0.27〜0.97、I2=92% 【PFS】HR:0.47、95%CI:0.37〜0.60、I2=0% ・CAR-T細胞療法では、全生存期間(OS)の改善傾向が認められたが、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった(HR:0.76、95%CI:0.56〜1.03、I2=29%)。 ・混合治療の比較では、tisa-celと比較し、liso-cel(HR:0.37、95%CI:0.22〜0.61)およびaxi-cel(HR:0.42、95%CI:0.29〜0.61)においてEFSに対するベネフィットが示唆された。  著者らは「再発・難治性DLBCLの2ndラインにおけるCAR-T細胞療法は、SOCと比較し、奏効率が高く、病勢進行を遅らせるうえで効果的な治療法であると考えられる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Asghar K, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1407001.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39091918 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
承認から5年、B-ALLに対するtisa-celの国内治療成績を分析
承認から5年、B-ALLに対するtisa-celの国内治療成績を分析
公開日:2024年12月23日 Kato I, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Nov 30. [Epub ahead of print]  CAR-T細胞療法は、再発・難治性B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)の小児、青年、若年成人患者に対する新たな治療選択肢となった。世界中でCAR-T細胞療法のアウトカムに関するリアルワールドでの使用経験が蓄積されている。とくに医学的および民族的背景が異なる患者におけるCAR-T細胞療法のアウトカムを比較することは、非常に重要である。京都大学の加藤 格氏らは、日本において承認から5年以上経過したチサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)の国内リアルワールドにおける使用経験を調査し、その結果を報告した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年11月29日号の報告。  全国規模の日本CAR-Tコンソーシアム(JCTC)は、tisa-cel市販後にCAR-T細胞療法を行った小児、青年、若年成人患者を対象に、多施設レトロスペクティブ研究を実施した。解析対象は、tisa-cel市販後に白血球アフェレーシスサンプルをノバルティスに輸送した再発・難治性B-ALL患者42例。本報告では、ベースラインパラメータと臨床アウトカムとの関連を評価した。奏効、毒性、生存の解析には、CAR-T輸注を行ったすべての患者を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・最良総合効果率は93%。 ・CAR-T輸注後の1年全生存割合(OS)は82%、無イベント生存割合(PFS)は56%。 ・tisa-cel輸注前、低腫瘍量(骨髄中のリンパ芽球が5%未満)であった患者は27例(64%)。 ・低腫瘍量は、良好な臨床アウトカムとの関連が認められた。 ・1年無イベント生存割合(EFS)は、低腫瘍量では80%であり、高腫瘍量(骨髄中のリンパ芽球が5%以上)の24%と比較し、高値であった。 ・多変量解析では、造血幹細胞移植(HSCT)歴と良好なアウトカムとの関連が特定され、1年EFSは75%であり、HSCT歴のない患者(24%)と比較し、高値であった。  著者らは「日本において市販後にtisa-celによる治療を行った小児、青年、若年成人の再発・難治性B-ALLに関する最初の解析において、臨床試験や他のリアルワールド研究と同様に、有効性が確認された。低腫瘍量やHSCT歴は、良好なEFSと関連していることが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kato I, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Nov 30. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39617098 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
予後不良因子を有するLBCL治療、同種HSCTとCAR-T細胞療法どちらが優れるか〜岡山大学
予後不良因子を有するLBCL治療、同種HSCTとCAR-T細胞療法どちらが優れるか〜岡山大学
公開日:2025年1月6日 Hayashino K, et al. Int J Hematol. 2024 Dec 16. [Epub ahead of print]  これまで、予後不良因子を有する再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者においてCAR-T細胞療法が同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)よりも有効であるか、毒性が低いかについては、直接比較で検討されていなかった。岡山大学の林野 健太氏らは、予後不良因子を伴う再発・難治性LBCL患者に対するCAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセル(tisa-cel)とallo-HSCTの有効性を調査し、比較を行った。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年12月16日号の報告。  対象は、2003年1月〜2023年5月に岡山大学病院でall-HSCTまたはtisa-celによる治療を行った18歳以上の再発・難治性LBCL患者67例(allo-HSCT群:24例、tisa-cel群:43例)。予後不良因子の定義は、PS2以上、複数の節外病変、化学療法抵抗性、血清LDH上昇とした。 主な結果は以下のとおり。 ・全体として、allo-HSCT群は、tisa-cel群と比較し、無増悪生存期間(PFS)が不良であり、非再発死亡率が高かった。再発/病勢進行の割合は、同程度であった。 ・化学療法治療抵抗性患者または高LDH患者では、tisa-cel群は、allo-HSCT群よりもPFSが良好であった。一方、PS2以上または複数の節外病変を有する患者では、PFSは同等であった。 【化学療法治療抵抗性】tisa-cel群:PFS 3.2ヵ月、allo-HSCT群:PFS 2.0ヵ月(p=0.092) 【高LDH】tisa-cel群:PFS 4.0ヵ月、allo-HSCT群:PFS 2.0ヵ月(p=0.018) 【PS2以上】tisa-cel群:PFS 1.6ヵ月、allo-HSCT群:PFS 1.9ヵ月(p=0.56) 【複数の節外病変】tisa-cel群:PFS 3.2ヵ月、allo-HSCT群:PFS 2.0ヵ月(p=0.40) ・予後不良因子を有する患者における細胞療法後の再発後生存期間は、allo-HSCT群で1.6ヵ月、tisa-cel群で4.6ヵ月であった。 ・これらの結果は、傾向スコアマッチングコホートで確認された。  著者らは「予後不良因子を有する再発・難治性LBCL患者において、tisa-celはallo-HSCTよりも良好な生存率をもたらすことが示唆された。しかし、細胞療法後に再発した患者では、いずれの治療でも予後不良であるため、さらなる治療戦略が求められる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Hayashino K, et al. Int J Hematol. 2024 Dec 16. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39680351 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら