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痩せているのに代謝異常?!「脂肪萎縮症」の特徴を画像付き解説
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■脂肪萎縮症とは
脂肪萎縮症とは皮下脂肪や内臓脂肪などの脂肪組織が減少・消失する希少疾患である。これまでの調査では患者数は我が国で約100人と推定されているが、最近、従来の典型例に当てはまらない脂肪萎縮症の報告例が増えてきている1) 。未診断例がまだ多く存在すると考えられる。また、造血幹細胞移植後に脂肪萎縮症の発症が認められるケースも知られている。
■指定難病および小児慢性特定疾病
2015年、脂肪萎縮症は指定難病に選定され、小児慢性特定疾病にも指定されている。■脂肪萎縮症の主な分類と特徴
脂肪萎縮症は、先天性/後天性、全身性/部分性の大きく4つに分類される。遺伝子変異による先天性と、自己免疫異常などによる後天性のものがあり、それぞれ摂取エネルギー量とは無関係に全身の脂肪組織が減少・消失する全身性と、四肢などの脂肪組織が減少・消失する部分性に分けられる (図1)。
図1

■脂肪萎縮症の診断
非肥満で重度のインスリン抵抗性、糖尿病、高トリグリセリド血症、脂肪肝などの糖脂質代謝異常が認められる患者では、脂肪萎縮症の可能性を考慮する必要がある。全身MRI T1強調画像検査と血中レプチン濃度の測定は、脂肪萎縮の診断補助手段として有用である1) 。血中レプチン検査は全身性脂肪萎縮症の診断補助を目的として、保険承認されており、血中レプチン濃度が男性で0.6ng/mL未満、女性で1.9ng/mL未満の場合、脂肪萎縮症が疑われる2) 。
先天性病因による脂肪萎縮症の場合は、病因遺伝子の変異が検出されれば、診断が確定する。
■脂肪萎縮症の身体的徴候 1)
・頭頸部:眼、頬、こめかみのくぼみ、頬骨弓の突出 ・上肢:静脈の怒張、骨格筋肥大 ・下肢:非静脈瘤性の静脈の怒張、骨格筋肥大 ・臀部:くぼみ、骨格筋肥大 ・体幹:静脈の怒張、骨格筋肥大■関連して見られる特徴的な所見・症状 1)
・食欲亢進 ・黒色表皮腫(腋窩部、項部、肘部等) ・肝腫大 ・多毛 ・性腺機能低下(希発月経、無月経、男性化等)■脂肪萎縮症の臨床分類

※造血幹細胞移植後の症例は、「家族性部分性脂肪萎縮症」に似た外観を呈することが多い
「脂肪萎縮症の新規原因遺伝子の同定と脂肪細胞分化・増殖メカニズムの解明」課題番号26461333 より改変
(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461333/)
■ここをチェック!~青谷 大介先生(名古屋市立大学大学院医学研究科 消化器・代謝内科学分野))からのコメント
全身性脂肪萎縮症は、全身の脂肪が消失しているとはいえ、一般的にイメージされる(げっそりした)「痩せ」とは異なり、全身の骨格筋が際立っているのが特徴です。また外来診療で重要なのは顔貌の視診です。頬の脂肪が無いことで頬骨が突っ張った感じになったり、話す時にほうれい線が目立って見えます。
部分性脂肪萎縮症は、脂肪分布のパターンによって異なります。とくに頭頸部の脂肪が保たれている場合、寧ろ脂肪過多で満月様顔貌のようにさえ見えるときがあります。右の写真の症例は、全身の脂肪の付きかたのアンバランスを見ます。
■脂肪萎縮症の治療
現時点では、脂肪萎縮に対する根本的治療法は確立されておらず、主に脂肪萎縮に起因する代謝異常症に対する治療に重点が置かれている。とりわけ近年、脂肪組織由来ホルモンであるレプチンを補充する治療法の有効性が明らかにされている。レプチンを補充することによって、脂肪萎縮症における糖脂質代謝異常や脂肪肝が改善することが分かっており、レプチン製剤は脂肪萎縮症に対する治療薬として既に薬事承認を得ている。レプチン補充治療により脂肪萎縮症患者さんの長期的な生命予後の延伸が期待されている。脂肪萎縮症のコンサルトサービスヒポクラのコンサルトサービスは、24時間いつでも専門医にご相談ができるため、とても好評をいただいております。匿名かつ、専門医の先生と1対1でご相談できますので、少しでも気になる症状の患者さんがいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。ご利用方法① https://hpcr.jp/v/consult/form/lipodystrophy へアクセス② 患者情報、主な検査値を入力 ③ 回答医より返答(回答例)背景疾患から、●●合併の疑いがありますが、△△検査で確認済みでしょうか?あとは★★の疑いもありますので、××を確認してみてください。★★の疑いが認められるならば、内分泌の専門医に紹介してください。 ※ご利用にはヒポクラへのご登録が必要です(無料) |
引用:
1) 日本内分泌学会雑誌 Vol. 94 Suppl. September 2018
2) 日本内分泌学会「全身性脂肪萎縮症診断における血中レプチン検査の運用指針」
3) Brush M et al., J Clin Endocrinol Metab. 2024 May 17:dgae335.
文責:株式会社エクスメディオ
監修:青谷 大介先生(名古屋市立大学大学院医学研究科 消化器・代謝内科学分野)
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