再発・難治性MCLに対するイブルチニブ+ベネトクラクス併用療法〜SYMPATICO試験
血液内科 Journal Check

再発・難治性MCLに対するイブルチニブ+ベネトクラクス併用療法〜SYMPATICO試験

公開日:2025年2月17日

 イブルチニブとベネトクラクスの併用療法は、互いに補完し合う作用機序により、マントル細胞リンパ腫(MCL)において、有望な臨床効果を示すことが期待されている。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMichael Wang氏らは、再発・難治性MCL患者を対象に、イブルチニブ+ベネトクラクス併用療法の有効性および安全性を評価するため、多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験(SYMPATICO試験)を実施した。The Lancet. Oncology誌2025年2月号の報告。
 SYMPATICO試験には、ヨーロッパ、北米、アジア太平洋地域の84施設が参加した。対象患者は、2018年4月26日〜2019年8月28日の登録された1〜5回の治療歴を有するEOCG PSが0〜2の病理学的に再発または難治性のMCLと診断された18歳以上の成人患者267例。患者は、イブルチニブ+ベネトクラクス併用療法群(IBT+VEN群)134例またはイブルチニブ+プラセボ療法群(対照群)133例にランダムに割り付けられ、病勢進行または許容できない毒性が認められない限り2年間治療を継続した。イブルチニブの用量は560mg/日、ベネトクラクスは5週間かけて400mg/日まで増量した。ランダム化および治療割り付けは、EOCGのPS、治療歴、腫瘍崩壊症候群リスクにより層別化されたstratified permuted block scheme(ブロックサイズ:2 and 4)を用いて行った。患者および治験責任医師は、治療割り当てについて盲検化された。主要エンドポイントは、ITT集団における無増悪生存期間(PFS)の治験責任医師による評価とした。安全性については、研究期間中に1回以上治療を行ったすべての患者を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者267例のうち、男性は211例(79%)、女性は59例(21%)。 ・フォローアップ期間中央値は51.2ヵ月(IQR:48.2〜55.3)。 ・PFS中央値は、IBT+VEN群で31.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:22.8〜47.0)、対照群で22.1ヵ月(95%CI:16.5〜29.5)であった(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.47〜0.88、p=0.0052)。 ・主なグレードIII〜IVの有害事象は、好中球減少、血小板減少、肺炎であった。  【好中球減少】IBT+VEN群:31%(134例中42例)、対照群:11%(132例中14例)  【血小板減少】IBT+VEN群:13%(17例)、対照群:8%(10例)  【肺炎】IBT+VEN群:12%(16例)、対照群:11%(14例) ・重篤な有害事象は、IBT+VEN群で60%(81例)、対照群で60%(79例)にみられた。 ・治療関連死亡は、IBT+VEN群で3例(COVID-19感染、心停止、呼吸不全)、対照群で2例(心不全、COVID-19関連肺炎)に発生した。
 著者らは「再発・難治性MCL患者に対するIBT+VEN併用療法は、対照群(IBT単剤療法)と比較し、PFSの有意な改善をもたらし、未知の安全性プロファイルは検出されなかった」とし、このことから「再発・難治性MCLに対するIBT+VEN併用療法は、ベネフィット・リスクプロファイルが良好な治療選択肢である」と結論付けている。


(鷹野 敦夫)

原著論文はこちら Wang M, et al. Lancet Oncol. 2025; 26: 200-213.
https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39914418

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