新規BTK阻害薬ピルトブルチニブ、形質転換症例への治療選択肢にもなりうるか〜BRUIN試験サブ解析
血液内科 Journal Check

新規BTK阻害薬ピルトブルチニブ、形質転換症例への治療選択肢にもなりうるか〜BRUIN試験サブ解析

公開日:2024年8月16日

Wierda WG, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]
 組織学的形質転換の多くは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)として出現し、慢性リンパ性白血病(CLL)の10%にみられるが、承認されている治療薬はなく、予後不良因子となっている。非共有結合型ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるピルトブルチニブは、再発・難治性のB細胞悪性腫瘍患者に対する有効性および忍容性が示される薬剤である。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのWilliam G. Wierda氏らは、ピルトブルチニブの多施設共同オープンラベル第I /II相試験であるBRUIN試験より形質転換患者を対象にサブグループ解析を実施し、ピルトブルチニブ単剤療法の安全性および抗腫瘍活性を検証した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2024年7月18日号の報告。
 対象は、組織学的形質転換が確認され、ECOGのPSが0〜2、修正版プロトコルで第1選択治療を行なった18歳以上の成人患者。ピルトブルチニブ200mgを28日サイクルで1日1回経口投与を行なった。これまでに報告されているように、BRUIN試験における主要エンドポイントは、最大耐量(第I相)および全奏効率(OR、第II相)であった。ピルトブルチニブ単剤療法を1回以上行なったすべての患者において、安全性および抗腫瘍活性を測定した。
主な結果は以下のとおり。
・2019年12月26日〜2022年7月22日に82例(第I相試験:5例、第II相試験:77例)が登録された。 ・1例を除くすべての患者が、第II相試験の推奨用量であるピルトブルチニブ200mgの開始用量で投与された。残りの1例は、ピルトブルチニブ150mgを投与されたが、200mgへの増量は行わなかった。 ・対象患者の平均年齢は67歳(IQR:59〜72)。男性55例(67%)、女性27例(33%)であった。 ・82例中65例(79%)は白人であった。 ・74例(90%)は、1回以上のRichter transformation-directed therapy歴があった。 ・多くの患者(61例、74%)は、CLLまたは形質転換に対する共有結合型BTK阻害薬による治療歴を有していた。 ・全体のORは50.0%(95%CI:38.7〜61.3)、完全奏効(CR)は13%(11例)、部分奏効(PR)は37%(30例)であった。 ・奏効が継続した8例は、造血幹細胞移植のためピルトブルチニブを選択的に中止した。 ・グレード3以上の最も多い有害事象は、好中球減少(19例)であった。 ・治療関連死亡は認められなかった。
 著者らは「形質転換症例に対しピルトブルチニブは、良好な安全性および抗腫瘍効果を示した。注目すべきは、これらの患者の多くは、共有結合型BTK阻害薬による治療歴を有していた点である。今後、共有結合型BTK阻害薬による治療後に再発・難治性の形質転換が認められた患者に対する治療選択肢としてのピルトブルチニブの可能性を検証する必要がある」としている。


(エクスメディオ 鷹野 敦夫)

原著論文はこちら Wierda WG, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]
https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39033770

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