輸血依存性低リスクMDSに対するルスパテルセプトの治療効果をさらに向上させるポイントは
血液内科 Journal Check

輸血依存性低リスクMDSに対するルスパテルセプトの治療効果をさらに向上させるポイントは

公開日:2024年10月28日

Jonasova A, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1398331.
 赤血球成熟促進薬ルスパテルセプトは、TGF-βシグナル伝達経路を阻害する薬剤であり、赤血球造血刺激因子(ESA)療法で治療反応が得られないまたは適さない輸血依存性の低リスク骨髄異形成症候群(MDS)に伴う貧血患者に対する新たな治療薬である。チェコ・カレル大学のAnna Jonasova氏らは、チェコの血液センター2施設におけるルスパテルセプトのリアルワールドデータを報告した。Frontiers in Oncology誌2024年10月2日号の報告。
 対象は、2024年1月までに、カレル大学血液センター2施設(プラハおよびフラデツ・クラーロヴェー)で、ルスパテルセプト±ESAによる治療を行ったMDS患者54例(平均年齢:74歳、範囲:55〜95歳、男性:33例、女性:21例)。WHO2016分類では、MDS-RS-MLDが32例、MDS-MLDが7例、5q-+RSが2例、RARS-Tが12例、CMML-0+RSが1例であった。SF3B1変異のデータが入手可能であった患者は45例。4例のIPSS-M高リスクを除き、すべての患者がIPSS-RおよびIPSS-Mの低リスクに分類された。フォローアップ期間中央値は17ヵ月(範囲:1〜54)。すべての患者が輸血依存であった。8週間当たり4単位以上の高輸血依存患者は35例(64.8%)、4単位未満の低輸血依存患者は19例(35.2%)であった。診断からルスパテルセプト投与開始までの期間中央値は27ヵ月(範囲:4〜156)。ルスパテルセプト使用前にESAを使用していた患者は45例、第1選択薬としてルスパテルセプトを使用した患者は9例。ESAと併用した患者は31例(61%)であった。
主な結果は以下のとおり。
・ルスパテルセプトを8週間以上投与した51例を評価した。 ・輸血非依存の達成率は、8週間以上が32例(62.7%)、12週間以上が31例(60.7%)、16週間以上が29例(56.8%)、24週間以上が25例(49%)であった。 ・輸血非依存でない血液学的改善が6例(11.7%)で認められた。 ・全体として、血液学的改善+輸血非依存を達成した患者は38例(74.5%)であった。 ・エポエチン アルファを併用した患者は31例(60.7%)。 ・治療反応が認められたすべての患者のうち21例(55.2%)において、エポエチン アルファとの併用により治療反応が改善し、16例で非輸血依存を達成した。 ・効果不十分であった患者は13例(25.5%)。再度、輸血依存に至った患者は8例(21%)。 ・ルスパテルセプトによる最適な治療反応を得るためには、最大35例において1.75mg/kgまで増量する必要があり、血液学的改善+輸血非依存を達成した患者は23例であった。 ・治療反応率は、輸血依存度により異なり、低輸血依存患者では79%、高輸血依存患者では50%が非輸血依存を達成した。 ・RS+患者では、非輸血依存達成率が70%であったのに対し、RS−患者では5人に1人だけだった。 ・SF3B1陽性患者39例の非輸血依存達成率は61.6%。 ・IPSS-MリスクがLow、Very lowの患者における血液学的改善+輸血非依存達成率は86%であったが、Moderate lowの患者では62%であった。 ・ルスパテルセプトは忍容性が良好であり、グレード2超の有害事象は認められなかった。
 著者らは「実臨床におけるルスパテルセプトの輸血依存性MDSに対する有効性が確認された。とくに、IPSS-MリスクがLow、Very lowの患者に対して有用であると考えられる。このように良好な治療反応率を達成できた要因として、高用量(1.75mg/kg)での使用およびESAの併用を積極的に行ったことが影響していると推察される」と結論付けている。


(鷹野 敦夫)

原著論文はこちら Jonasova A, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1398331.
https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39416466

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