「骨髄異形成症候群(MDS)」の記事一覧

血液内科 Journal Check Vol.19(2022年10月7日号)
血液内科 Journal Check Vol.19(2022年10月7日号)
再発難治性多発性骨髄腫に対する新規CAR-T細胞療法シルタカブタゲン オートルユーセル Chekol Abebe E, et al. Front Immunol. 2022;13:991092. ≫血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ≫Bibgraphを読む 未治療DLBCLに対するポラツズマブの第III相臨床試験結果 Flowers C, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2022;22 Suppl 2:S358-S359. ≫血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ≫Bibgraphを読む 再発難治性の成人T細胞白血病リンパ腫に対するバレメトスタットの国内第II相臨床試験 Izutsu K, et al. Blood. 2022 Sep 23. [Online ahead of print] ≫血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ≫Bibgraphを読む 高リスクMDSの移植後維持療法としてのアザシチジン用量設定試験~関東造血幹細胞移植共同研究グループによる研究 Najima Y, et al. Ann Hematol. 2022 Sep 23. [Online ahead of print] ≫血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ≫Bibgraphを読む 悪性リンパ腫に対するFlu/Melベースの低強度コンディショニングによる臍帯血移植、最適な投与量は? Sakatoku K, et al. Ann Hematol. 2022 Oct 5. [Online ahead of print] ≫血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ≫Bibgraphを読む 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人血液悪性腫瘍患者に対する局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護材の有効性
日本人血液悪性腫瘍患者に対する局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護材の有効性
公開日:2024年5月24日 Fukutani T, et al. BMC Oral Health. 2024; 24: 522.  エピシル®︎は口腔内病変の被覆および保護を目的とする非吸収性の液状機器である。いくつかの研究において、頭頸部がん患者に対する有効性が報告されているが、血液悪性腫瘍患者への使用に関する報告はほとんどない。広島大学の福谷 多恵子氏らは、急性骨髄性白血病(AML)、悪性リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)患者における口腔粘膜の治療に対するエピシル®︎の有効性を評価するため、本研究を実施した。BMC Oral Health誌2024年5月3日号の報告。  対象は、2018年5月〜2019年3月に広島赤十字・原爆病院で口腔粘膜の治療のためにエピシル®︎を使用したAML、悪性リンパ腫、ALL、MM、MDS患者37例。口腔粘膜炎の重症度を評価するため、37例中22例にインタビューを実施した。有害事象の客観的な評価には、有害事象共通用語規準(CTCAE)v3.0を用いた。口腔粘膜炎の影響を主観的に評価するため、独自の評価プロトコルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・37例中31例(84%)は、エピシル®︎の使用が「非常に良い」または「良い」と回答した。 ・さらに、22例中7例(19%)では、エピシル®︎使用後に粘膜炎の重症度の軽減が認められた。とくに複数の部位に粘膜炎を有する患者で顕著であった。 ・患者評価では、疼痛の軽減、言語機能の改善、摂食機能の改善が報告された。 ・粘膜炎がグレード3以上の患者は、グレード2の患者と比較し、疼痛、言語機能、摂食機能のより大きな改善が報告された。  著者らは「血液悪性腫瘍患者、とくに複数の部位に口内粘膜炎を有する患者に対する口腔粘膜炎の治療におけるエピシル®︎の有効性が示唆された。エピシル®︎は、疼痛の軽減に加え、言語機能や摂食機能も改善する可能性がある」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fukutani T, et al. BMC Oral Health. 2024; 24: 522.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38698387 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
骨髄異形成症候群~知っておきたい希少疾患
骨髄異形成症候群~知っておきたい希少疾患
 骨髄異形成症候群(MDS)は、未熟な造血幹細胞に生じた異常が原因と考えられる骨髄系造血器腫瘍の1つである。今回は、MDSおよび2024年5月に発売されたレブロジルⓇ[一般名:ルスパテルセプト(遺伝子組換え)]について紹介する。 MDSの主な症状「貧血、易感染状態、出血傾向」、AMLへの進展も  MDSは、正常な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が作られないことで、貧血、易感染状態、出血傾向などがみられ、重篤な感染症を引き起こす可能性もある1) 。さらに、急性骨髄性白血病(AML)への進展の可能性が高いことも特徴であり、MDS患者の10〜30%はAMLに移行するといわれている。  日本におけるMDSの罹患率は、人口10万人あたり年間約3.0人と報告されており2) 、厚生労働省による2020年の患者数調査では、日本のMDS患者の総数は約2万2,000人と報告されている3) 。罹患率は、年齢とともに増加し、とくに70歳以降で急激に上昇している4) 。男女比は、約2:1で男性に多い傾向である。 MDS症状を疑ったら、専門医に相談を  MDSの診断に際しては、「慢性貧血を主とし、出血傾向,発熱を認める(症状を欠く場合もある)」「持続的な血球減少を認める」「骨髄は過形成が多い(低形成の場合もある)」が認められた場合に、MDSが疑われる。血液検査、骨髄検査、分子生物学的検査などと合わせて感染症性疾患、炎症性疾患、他の造血器疾患などとの除外診断により、慎重に鑑別する必要がある5) 。  MDSの病態は多様であり複数の病型に分類される。病型により治療や予後が異なるため、病型分類は重要であるが、治療方針を決定する上で、予後予測を行う必要がある。複数の予後予測スコアリングシステムが提唱されており、特徴はそれぞれ異なるが、臨床的な対応としてはMDSを低リスクと高リスクに分類することが多い6) 。確定診断、病型分類、予後予測を円滑に実施するためにも、原因不明の貧血、出血傾向、発熱等を認める患者は、専門医へ紹介することが望まれる。 低リスクMDSの基本的な支持療法は輸血、さまざまな課題も  MDSは、疾患経過中に約80%~90%の患者において貧血が認められるといわれている7) 。貧血を呈するMDS患者の多くは、正常な赤血球の循環量を確保するために支持療法として定期的な輸血が必要となるが、頻繁な輸血によって鉄過剰症、輸血反応、輸血血液からの感染リスク増加が懸念される。さらに、輸血の負荷増加に伴い低リスクMDS患者においても生存率が低下することも報告されている8) 。一定量以上の赤血球輸血は、鉄過剰症の原因となり、臓器障害の進行や死亡リスクへの影響も報告されているため9) 、鉄キレート療法を行うことが推奨されている10) 。また、低リスクMDSの血球減少に対しては免疫抑制療法、サイトカイン療法、蛋白同化ステロイド療法、ビタミン製剤なども用いられてきた。  造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版において、低リスクMDSに対するこれらの治療法のほとんどは推奨グレード「カテゴリー2A」または「カテゴリー2B」とされており、「カテゴリー1」に該当する治療法は、5番染色体長腕の欠失[del(5q)]を伴う低リスクMDSで赤血球輸血依存例に対するレナリドミド投与および貧血を伴う低リスクMDS-RS(環状赤芽球を伴う骨髄異形成症候群)に対する当時国内未承認であったルスパテルセプト投与のみであった6) 。 新規作用機序を有する赤血球成熟促進薬レブロジルⓇ登場  2024年5月、MDSに伴う貧血の治療薬として、レブロジルⓇ[一般名:ルスパテルセプト(遺伝子組換え)]が発売された。レブロジルⓇは、新規作用機序を有する赤血球成熟促進薬であり、造血幹細胞から赤血球への分化過程の後期段階における分化を促進し、成熟した赤血球数の増加を誘導する11)。低リスクMDS患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(COMMANDS試験)、海外第Ⅲ相試験(MEDALIST試験)、国内第Ⅱ相試験(MDS-003試験)において、レブロジルⓇの有効性・安全性が確認された。日本人患者を含むMDS患者を対象としたCOMMANDS試験の24週中間解析において、主要評価項目である12週間以上の赤血球輸血を必要としない状態かつ平均ヘモグロビン濃度がベースライン値より1.5g/dL以上増加した患者の割合は、レブロジル群で59%、対照(エポエチンアルファ)群で31%であったことが報告されている(共通リスク差:26.6、95%CI:15.8〜37.4、p<0.0001)。最も頻度の高いグレード3/4の治療関連有害事象(患者の≧3%)として、レブロジル群では高血圧、貧血、呼吸困難、好中球減少症、血小板減少症、肺炎、COVID-19感染症、MDS、失神が、対照群では貧血、肺炎、好中球数減少症、高血圧、鉄過剰症、COVID-19肺炎、MDSがみられた12) 。  高齢化が進む日本において、MDS患者は着実に増加している。新規作用機序を有するレブロジルⓇの登場により、これまで治療選択肢が限られていたMDSに伴う貧血治療が促進され、MDS患者のQOL向上が期待される。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 参考資料 1)Cazzola M, et al. N Engl J Med. 2020; 382: 140-151.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/31914241/ 2)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」▶https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html 3)「政府統計の総合窓口(e-Stat)」.統計で見る日本.患者調査.令和2年度患者調査▶ https://www.e-stat.go.jp/ 4)Chihara D, et al. J Epidemiol. 2014; 24: 469-473.▶ https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/25088696/ 5)骨髄異形成症候群診療の参照ガイド令和 4 年度改訂版▶http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Myelodysplastic_Syndromes.pdf 6)造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版 ▶ http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_6.html 7)Zeidan AM, et al. Blood Rev. 2013; 27: 243-59. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/23954262/ 8)Malcovati L, et al. Haematologica. 2006; 91: 1588-90. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/17145593/ 9)Takatoku M, et al. Eur J Haematol. 2007; 78: 487-94. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/17391310/ 10)輸血後鉄過剰症の診療参照ガイド令和4年度改定版▶http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Post-transfusion_iron_overload.pdf 11)レブロジルⓇ皮下注用25mg / 75mg添付文書▶https://file.bmshealthcare.jp/bmshealthcare/pdf/package/REBLOZYL.pdf 12)Platzbecker U, et al. Lancet. 2023; 402: 373-385. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/37311468/ ヒポクラ × マイナビ無料会員登録はこちら▶https://www.marketing.hpcr.jp/hpcr
低リスクMDSに対するロキサデュスタットの有用性〜MATTERHORN試験
低リスクMDSに対するロキサデュスタットの有用性〜MATTERHORN試験
公開日:2024年7月2日 Mittelman M, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 17. [Epub ahead of print]  低リスクの骨髄異形成症候群(MDS)では、第1選択治療への治療反応は限定的である。イスラエル・テルアビブ大学のMoshe Mittelman氏らは、輸血依存の低リスクMDS患者を対象にロキサデュスタットとプラセボを比較したランダム化二重盲検第III相試験であるMATTERHORN試験の結果を報告した。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年6月17日号の報告。  対象は、赤血球造血刺激因子製剤による治療歴の有無を問わず、超低リスク、低リスク、中リスクのMDS患者で、8週間ごとに1〜4単位の赤血球輸血を行っていた患者。対象患者は、ロキサデュスタット(2.5mg/kg)群またはプラセボ群にランダムに割り付けられ(3:2)、週3回、最善の支持療法を行なった。主要有効性エンドポイントは、輸血依存からの脱却(28週間で56日以上の輸血非依存を維持)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・MATTERHORN試験は、中間解析結果において統計学的に有意な差が認められなかったため、中止に至った。 ・スクリーニング患者272例中140例が登録された(ロキサデュスタット群:82例、プラセボ群:58例)。 ・最終解析では、輸血依存から脱却できた患者は、ロキサデュスタット群で80例中38例(47.5%)、プラセボ群で57例中19例(33.3%)であった(p=0.217)。 ・ロキサデュスタット群では、4週間に2単位以上の赤血球輸血を必要とした患者の割合は、輸血依存から脱却できた患者(36例中13例、36.1%)において、プラセボ群(26例中3例、11.5%)と比較し、高かった(p-nominal=0.047)。 ・研究期間中の死亡例は7例(ロキサデュスタット群:4例、プラセボ群:3例)、いずれも治療とは無関係と判断された。 ・ロキサデュスタット群において3例が急性骨髄性白血病(AML)に転化した。  著者らは「MATTERHORN試験は、主要エンドポイントを達成できなかったが、ロキサデュスタット群は、プラセボ群と比較し、輸血依存からの脱却率がより高かった。新規治療法により、恩恵を受ける患者を特定するためにも、さらなる分析が求められる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mittelman M, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 17. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38884137 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
低リスクMDSの非輸血依存患者に対する低用量レナリドミド早期介入〜SintraREV試験
低リスクMDSの非輸血依存患者に対する低用量レナリドミド早期介入〜SintraREV試験
公開日:2024年7月23日 Diez-Campelo M, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]  レナリドミドは、5番染色体長腕部欠失(5q欠損)を伴う骨髄異形成症候群(MDS)の輸血依存患者に対する標準治療薬である。非輸血依存の貧血患者に対する2年間の低用量レナリドミド投与による早期介入が、その後の輸血依存を遅延させるかを検討するため、スペイン・サラマンカ大学のMaria Diez-Campelo氏らは、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験であるSintraREV試験を実施した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2024年7月18日号の報告。  SintraREV試験には、スペイン、フランス、ドイツの22施設(大学病院)が参加した。対象は、低リスクまたは中等度1リスクの5q欠損MDS診断され、非輸血依存貧血を呈し、エリスロポエチン未治療、ECOGのPS2以上であった18歳以上の患者。対象患者は、レナリドミド群(2年間、28日サイクルで5mg /日)またはプラセボ群に、電話システムにより2:1でランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、中央判定(BICR)に基づく輸血依存までの期間とした。intent-to-treat(ITT)と評価可能な集団による分析を行った。安全性分析の対象には、1回以上治療を行ったすべての患者を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・2010年2月15日〜2018年2月21日の期間で、61例がレナリドミド群40例(2例は治療を受けなかった)、プラセボ群21例にランダムに割り付けられた。 ・年齢中央値は77.2歳(四分位範囲[IQR]:65.4〜81.9)、女性は50例(82%)、男性は11例(18%)であった。 ・フォローアップ期間中央値は60.6ヵ月(IQR:31.1〜73.9)であった。 ・主要エンドポイントに関しては、輸血依存までの期間中央値は、レナリドミド群で未達であったのに対し、プラセボ群では11.6ヵ月(95%CI:0.00〜30.11)であった(p=0.0046)。 ・レナリドミド群では、輸血依存リスクの有意な減少(69.8%減)が認められた(ハザード比:0.302、95%CI:0.132〜0.692、p=0.0046)。 ・最も頻度の高い治療関連有害事象は、好中球減少であった。レナリドミド群では38例中24例(63%)に発生し(グレード3:17例[45%]、グレード4:1例[3%])、プラセボ群では21例中4例に認められた(グレード3:2例[5%])。 ・レナリドミド群38例中7例(18%)で血小板減少がみられた(グレード3:2例[5%])。 ・非血液毒性に関しては、レナリドミド群で皮膚障害(発疹:38例中9例[23%])の頻度が最も高かった(グレード3:1例[3%])。 ・13例で19件(レナリドミド群:18件、プラセボ群:1例)の重篤な有害事象が報告された。そのうち5件は、試験薬に関連している可能性があった。 ・治療関連の死亡は認められなかった。  著者らは「5q欠損の低リスクMDS に対する2年間の低用量レナリドミドによる早期介入は、輸血依存までの期間を延長し、奏効率や奏効の質の改善が期待でき、マネジメント可能な安全性プロファイルを有していることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Diez-Campelo M, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 18. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39033767 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら