ライブラリー 低リスクMDSの新たな標準治療に、ルスパテルセプト第III相試験主要解析
公開日:2024年8月6日
Porta MGD, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 19. [Epub ahead of print]
赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療歴のない輸血依存の低リスク骨髄異形成症候群(MDS)患者の貧血治療に対するルスパテルセプトの有用性は、エポエチンアルファと比較した第III相試験COMMANDS試験の事前に計画された中間解析において示された。イタリア・ヒューマニタス大学のMatteo Giovanni Della Porta氏らは、COMMANDS試験の主要解析結果を報告した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2024年7月19日号の報告。
COMMANDS試験は、26ヵ国、142施設で実施された第III相非盲検ランダム化対照試験である。対象は、ESA治療歴なし、輸血依存のVery low、Low、Intermediateリスク(IPSS-Rによる予後層別化)の18歳以上のMDS患者(血清エリスロポエチン濃度:500U /L未満)。対象患者は、ベースライン時の赤血球輸血負荷、血清エリスロポエチン濃度、環状鉄芽球の状態により層別化され、24週以上のルスパテルセプトまたはエポエチンアルファの投与を受ける群に1:1でランダムに割り付けられた。ルスパテルセプトは3週間に1回皮下投与され、1.0mg/kg体重から開始して可能な場合は最大1.75mg/kgまで漸増した。エポエチンアルファは週1回皮下投与され、450IU/kg体重から開始して可能な場合は最大1,050IU/kgまで漸増した(最大総投与量8万IU)。主要エンドポイントは、ITT集団において、試験開始から24週までに、12週以上で赤血球輸血非依存状態が達成され、同時に平均ヘモグロビン量が1.5g/dL以上増加することとした。安全性評価対象は、1回以上治療を行ったすべての患者を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・2019年1月2日〜2022年9月29日、低リスクMDS患者363例がスクリーンングされ、ルスパテルセプト群182例、エポエチンアルファ群181例にランダムに割り付けられた。
・年齢中央値は74歳(IQR:69〜80)、女性が162例(45%)、男性が201例(55%)であった。
・人種別では、白人289例(80%)、アジア人44例(12%)、黒人またはアフリカ系米国人2例(1%)であった。ヒスパニックまたはラテン系は23例(6%)、311例(86%)はヒスパニックまたはラテン系ではなかった。
・主要エンドポイントのフォローアップ期間中央値は、ルスパテルセプト群で17.2ヵ月(10.4〜27.7)、エポエチンアルファ群で16.9ヵ月(10.1〜26.6)であった。
・主要エンドポイントを達成した患者は、ルスパテルセプト群110例(60%)、エポエチンアルファ群63例(35%)であり、ルスパテルセプト群で有意に高率であった(奏効率の共通リスク差:25.4%、95%CI:15.8〜35.0、p<0.0001)。
・安全性評価のフォローアップ期間中央値は、ルスパテルセプト群で21.4ヵ月(IQR:14.2〜32.4)、エポエチンアルファ群で20.3ヵ月(IQR:12.7〜30.9)であった。
・頻度の高いグレード3〜4の治療関連有害事象は、ルスパテルセプト群(182例)では高血圧(19例[10%])、貧血(18例[10%])、肺炎(10例[5%])、失神(10例[5%])、好中球減少症(9例[5%])、血小板減少症(8例[4%])、呼吸困難(8例[4%])、MDS(6例[3%])であった。エポエチンアルファ群(179例)では貧血(14例[8%])、肺炎(14例[8%])、好中球減少症(11例[6%])、MDS(10例[6%])、高血圧(8例[4%])、鉄過剰症(7例[4%])、COVID-19肺炎(6例[3%])が認められた。
・両群で最も多く認められた重篤な治療関連有害事象は、肺炎(ルスパテルセプト群:9例[5%]、エポエチンアルファ群:13例[7%])、COVID-19(ルスパテルセプト群:8例[4%]、エポエチンアルファ群:10例[6%])であった。
・中間解析では、ルスパテルセプト関連と考えられる死亡例として、急性骨髄性白血病と診断されて死亡した1例が報告されている。
著者らは「ルスパテルセプトは、エポエチンアルファと比較し、赤血球輸血依存性および血液学的に有意な改善を示しており、ESA治療歴のない、輸血依存の低リスクMDSに対する新たな標準治療として期待される」としている。
(エクスメディオ 鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Porta MGD, et al. Lancet Haematol. 2024 Jul 19. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39038479
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