7つのMM承認モノクローナル抗体の神経精神学的有害事象〜FDA有害事象報告分析
血液内科 Journal Check

7つのMM承認モノクローナル抗体の神経精神学的有害事象〜FDA有害事象報告分析

公開日:2024年10月29日

Cicala G, et al. Pharmaceuticals (Basel). 2024; 17: 1266.
 多発性骨髄腫(MM)の治療において、モノクローナル抗体は、革命をもたらした。しかし、モノクローナル抗体の神経精神学的安全性に関する市販後のデータは限られている。イタリア・メッシーナ大学のGiuseppe Cicala氏らは、MMに用いられるモノクローナル抗体に関連する神経精神学的有害事象を評価するため、FDA有害事象報告システム(FAERS)を用いて、レトロスペクティブファーマコビジランス分析を行なった。Pharmaceuticals(Basel, Switzerland)誌2024年9月25日号の報告。
 2015〜23年の個別症例安全性報告(ICSR)より、1つ以上の神経精神学的有害事象が認められ、MMに承認されているモノクローナル抗体(ダラツムマブ、エロツズマブ、イサツキシマブ、belantamab、teclistamab、エルラナタマブ、talquentamab)を使用していた報告を、記述的および不均衡アプローチを用いて分析した。
主な結果は以下のとおり。
・不均衡性に基づくデータマイニング手法を用いて検出されたSignals of Disproportionate Reporting(SDR)の未知のシグナルには、次の神経精神学的有害事象が含まれた。 【脳梗塞】 ・ダラツムマブ:45件(報告オッズ比[ROR]:2.39、95%信頼区間[CI]:1.79〜3.21、information component(IC):1.54、IC025-IC075:1.05〜1.90) ・エロツズマブ:25件(ROR:7.61、95%CI:5.13〜11.28、IC:3.03、IC025-IC075:2.37〜3.51) ・イサツキシマブ:10件(ROR:2.56、95%CI:1.38〜4.76、IC:1.67、IC025-IC075:0.59〜2.40) 【精神状態の変化】 ・ダラツムマブ:40件(ROR:2.66、95%CI:1.95〜3.63、IC:1.67、IC025-IC075:1.14〜2.04) ・belantamab:10件(ROR:4.23、95%CI:2.28〜7.88、IC:2.30、IC025-IC075:1.22〜3.03) 【変性意識状態】 ・ダラツムマブ:32件(ROR:1.97、95%CI:1.39〜2.78、IC:1.32、IC025-IC075:0.73〜1.74) ・belantamab:6件(ROR:2.35、95%CI:1.05〜5.23、IC:1.60、IC025-IC075:0.19〜2.52) 【ギランバレー症候群】 ・ダラツムマブ:23件(ROR:6.42、95%CI:4.26〜9.69、IC:2.81、IC025-IC075:2.11〜3.30) ・イサツキシマブ:8件(ROR:10.72、95%CI:5.35〜21.48、IC:3.57、IC025-IC075:2.35〜4.37) ・エロツズマブ:3件(ROR:4.74、95%CI:1.53〜14.7、IC:2.59、IC025-IC075:0.52〜3.80) 【起立不耐症】 ・ダラツムマブ:10件(ROR:12.54、95%CI:6.71〜23.43、IC:3.75、IC025-IC075:2.67〜4.48) ・エロツズマブ:4件(ROR:28.31、95%CI:10.58〜75.73、IC:5.00、IC025-IC075:3.24〜6.08)
 著者らは「本分析により、MMに承認されているモノクローナル抗体のこれまで認識されていなかったいくつかのSDRが明らかとなった。ギランバレー症候群を含む一部の神経精神疾患については、有害事象の病因が複雑であり、完全には解明されていないため、さらなる調査が求められる」としている。


(鷹野 敦夫)

原著論文はこちら Cicala G, et al. Pharmaceuticals (Basel). 2024; 17: 1266.
https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39458907

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