「エロツズマブ(エムプリシティ)」の記事一覧

MMに対するASCT後のエロツズマブ+レナリドマイド維持療法〜第I相試験
MMに対するASCT後のエロツズマブ+レナリドマイド維持療法〜第I相試験
公開日:2024年5月15日 Coffey DG, et al. Cancer. J Immunother Cancer. 2024; 12: e008110.  導入療法後の自家造血幹細胞移植(ASCT)は、多発性骨髄腫(MM)患者の無病生存期間を改善する。ASCTの目的は、病状を最小限に抑えることだが、免疫抑制細胞の根絶と関連しており、ASCT後の免疫療法の早期導入が治療効果の向上に寄与する可能性がある。米国・マイアミ大学のDavid G. Coffey氏らは、導入療法後のMM患者におけるASCT後の自己リンパ球注入とヒト化抗ヒトSLAMF7モノクローナル抗体エロツズマブの適用を調査するため、第I相臨床試験を実施した。Journal for Immunotherapy of Cancer誌2024年4月12日号の報告。  対象は、導入療法を行った未治療のMM患者15例。CD40陽性細胞に加え、免疫再構成を促進しエロツズマブの機序に不可欠な自己NK細胞を提供するため、移植前に末梢血単核細胞を摂取し、幹細胞移植3日目に輸注した。4日目よりエロツズマブ投与を開始し、その後1年間は28日ごとに投与した。4〜12サイクル目に、標準治療のレナリドマイド維持療法を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・すべての対象患者の安全性を評価した。治療プロトコルを完了した患者は13例であった。 ・ASCT1年後時点での対象患者の状態は、厳格な完全奏効(sCR)5例、完全奏効(CR)1例、最良部分奏効(VGPR)6例、部分奏効(PR)1例、進行(PD)2例であった。 ・忍容性は高く、グレード3および4の有害事象のほとんどは、ASCTに関連する血液毒性であると考えられた。 ・免疫微小環境の相関分析では、CR達成患者は、移植後最初の3ヵ月間で制御性T細胞が減少し、その後NK細胞および単球が増加する傾向が認められた。  著者らは「本第I相試験において、ASCT後のMM患者に対するエロツズマブ免疫療法の早期導入は、忍容性が高く、免疫微小環境の良好な変化を伴う疾患コントロールに有望である可能性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Coffey DG, et al. Cancer. J Immunother Cancer. 2024; 12: e008110.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38609316 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
7つのMM承認モノクローナル抗体の神経精神学的有害事象〜FDA有害事象報告分析
7つのMM承認モノクローナル抗体の神経精神学的有害事象〜FDA有害事象報告分析
公開日:2024年10月29日 Cicala G, et al. Pharmaceuticals (Basel). 2024; 17: 1266.  多発性骨髄腫(MM)の治療において、モノクローナル抗体は、革命をもたらした。しかし、モノクローナル抗体の神経精神学的安全性に関する市販後のデータは限られている。イタリア・メッシーナ大学のGiuseppe Cicala氏らは、MMに用いられるモノクローナル抗体に関連する神経精神学的有害事象を評価するため、FDA有害事象報告システム(FAERS)を用いて、レトロスペクティブファーマコビジランス分析を行なった。Pharmaceuticals(Basel, Switzerland)誌2024年9月25日号の報告。  2015〜23年の個別症例安全性報告(ICSR)より、1つ以上の神経精神学的有害事象が認められ、MMに承認されているモノクローナル抗体(ダラツムマブ、エロツズマブ、イサツキシマブ、belantamab、teclistamab、エルラナタマブ、talquentamab)を使用していた報告を、記述的および不均衡アプローチを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・不均衡性に基づくデータマイニング手法を用いて検出されたSignals of Disproportionate Reporting(SDR)の未知のシグナルには、次の神経精神学的有害事象が含まれた。 【脳梗塞】 ・ダラツムマブ:45件(報告オッズ比[ROR]:2.39、95%信頼区間[CI]:1.79〜3.21、information component(IC):1.54、IC025-IC075:1.05〜1.90) ・エロツズマブ:25件(ROR:7.61、95%CI:5.13〜11.28、IC:3.03、IC025-IC075:2.37〜3.51) ・イサツキシマブ:10件(ROR:2.56、95%CI:1.38〜4.76、IC:1.67、IC025-IC075:0.59〜2.40) 【精神状態の変化】 ・ダラツムマブ:40件(ROR:2.66、95%CI:1.95〜3.63、IC:1.67、IC025-IC075:1.14〜2.04) ・belantamab:10件(ROR:4.23、95%CI:2.28〜7.88、IC:2.30、IC025-IC075:1.22〜3.03) 【変性意識状態】 ・ダラツムマブ:32件(ROR:1.97、95%CI:1.39〜2.78、IC:1.32、IC025-IC075:0.73〜1.74) ・belantamab:6件(ROR:2.35、95%CI:1.05〜5.23、IC:1.60、IC025-IC075:0.19〜2.52) 【ギランバレー症候群】 ・ダラツムマブ:23件(ROR:6.42、95%CI:4.26〜9.69、IC:2.81、IC025-IC075:2.11〜3.30) ・イサツキシマブ:8件(ROR:10.72、95%CI:5.35〜21.48、IC:3.57、IC025-IC075:2.35〜4.37) ・エロツズマブ:3件(ROR:4.74、95%CI:1.53〜14.7、IC:2.59、IC025-IC075:0.52〜3.80) 【起立不耐症】 ・ダラツムマブ:10件(ROR:12.54、95%CI:6.71〜23.43、IC:3.75、IC025-IC075:2.67〜4.48) ・エロツズマブ:4件(ROR:28.31、95%CI:10.58〜75.73、IC:5.00、IC025-IC075:3.24〜6.08)  著者らは「本分析により、MMに承認されているモノクローナル抗体のこれまで認識されていなかったいくつかのSDRが明らかとなった。ギランバレー症候群を含む一部の神経精神疾患については、有害事象の病因が複雑であり、完全には解明されていないため、さらなる調査が求められる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Cicala G, et al. Pharmaceuticals (Basel). 2024; 17: 1266.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39458907 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
同種HSCT後に再発した多発性骨髄腫、DLIや新規治療薬で長期病勢コントロールが可能に
同種HSCT後に再発した多発性骨髄腫、DLIや新規治療薬で長期病勢コントロールが可能に
公開日:2024年11月21日 Nozzoli C, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Nov 4. [Epub ahead of print]  同種造血幹細胞移植(HSCT)は、多発性骨髄腫(MM)の一部の患者において、治療効果をもたらす。同種HSCT後に再発したMM患者では、長期生存を経験することがあり、これには同種HSCT後に用いられる治療薬とドナーT細胞との相乗効果が示唆されている。イタリア・カレッジ大学のChiara Nozzoli氏らは、同種HSCTを行ったMM患者のアウトカムをレトロスペクティブに評価した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年11月4日号の報告。  対象は、Gruppo Italiano Trapianto Midollo Osseo e Terapia Cellulare(GITMO)ネットワークに登録された2009〜18年に同種HSCTを行ったMM患者242例。対象患者のアウトカムをレトロスペクティブに評価した。すべての患者における長期アウトカムおよび再発患者118例における再発後の全生存期間(OS)延長の予測因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。 ・同種HSCT後のフォローアップ期間中央値は40.9ヵ月、すべての患者のOS中央値は39.4ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は19.0ヵ月。 ・非再発死亡率(NRM)の累積発生率は、1年で10.3%、5年で27.6%。 ・グレード2〜4の急性GVHDの累積発生率は19.8%、中等度〜重度の慢性GVHDの5年累積発生率は31.8%であった。 ・多変量モデルでは、OS不良と関連する重要な因子として、移植時年齢の高さ(p=0.020)、移植前治療歴が2ライン以上(p=0.003)、非血縁または半合致ドナーからの移植(p=0.025)が特定された。 ・同種HSCT後に再発した患者は118例(59%)、中央値は14.3ヵ月(IQR:7.2〜26.9)。 ・治療の内訳は、ステロイド、放射線療法、支持療法のみが20例(17%)、救援療法1ラインが41例(35%)、2ライン23例(19%)、3または4ライン34例(29%)。 ・救援療法の内訳は、化学療法のみが9例、免疫調整薬(IMiDs)を含む9例、プロテアソーム阻害薬を含む43例、モノクローナル抗体を含む37例(ダラツムマブ:33例、エロツズマブ:1例、イサツキシマブ:1例、belantamab:2例)。 ・再発患者のOS中央値は、移植後38.5ヵ月、再発後20.2ヵ月であった。 ・多変量解析では、再発後のOS延長に関連する因子として、移植後の再発までの期間の長さ(6〜24ヵ月:p=0.016、24ヵ月以上:p<0.001)、3ライン以上の救援療法(p<0.036)、ドナーリンパ球輸注(DLI:p=0.020)が特定された。  著者らは「初期段階およびHLA一致同胞ドナーから移植を受けた患者は、長期生存の可能性が最も高かった。同種HSCT後の再発期間、複数回の救援療法、DLIは、長期病勢コントロールの重要な因子である可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Nozzoli C, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Nov 4. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39505212 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら