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日本における院外心停止患者におけるパブリックアクセス除細動と神経学的転帰:集団ベースのコホート研究。
日本における院外心停止患者におけるパブリックアクセス除細動と神経学的転帰:集団ベースのコホート研究。
Public-access defibrillation and neurological outcomes in patients with out-of-hospital cardiac arrest in Japan: a population-based cohort study Lancet 2019 Dec 21;394(10216):2255-2262. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】緊急医療サービス(EMS)要員が到着する前に院外心停止(OHCA)を起こし、ショック状態の心拍動を起こしていた患者では、公衆アクセスによる除細動の80%以上が自然循環の持続的な回復をもたらさない。このような患者の神経学的転帰と生存率は評価されていない。我々は,このような患者の神経学的状態と生存成績を評価することを目的とした。 [METHODS]本研究は,2005年1月1日から2015年12月31日までの間に日本でOHCAを発症した1人の患者(1Zs_2008 ain ainakersZs_2008299 ainakersZs_2008 ainakers784)を対象とした,全国の人口ベースのプロスペクティブな登録簿から得られたコホート研究のレトロスペクティブ解析である。主要転帰はOHCA後30日目の良好な神経学的転帰(Cerebral Performance Category of 1または2)であり,副次的転帰はOHCA後30日目の生存率であった.本研究は、University Hospital Medical Information Network Clinical Trials Registry, UMIN000009918に登録されています。 【FINDINGS】我々は、傍観者から心肺蘇生法を受けた28人の傍観者立会型OHCAとショック性心拍数を持つ28人の患者を同定しました。このうち,2242人(8-0%)の患者はCPR+公衆アクセス除細動で自然循環の回復が得られず,25人(89-5%)の患者は救急隊到着前にCPRのみで自然循環の回復が得られなかった.好ましい神経学的転帰を示した患者の割合は、パブリックアクセス除細動を受けた患者の方が受けなかった患者よりも有意に高かった(845[37-7%]対5676[22-6%];傾向スコアマッチング後の調整オッズ比[OR]、1-45[95%CI 1-24-1-69]、p<0-0001)。OHCA後30日目に生存した患者の割合も、パブリックアクセス除細動を受けた患者の方が受けなかった患者よりも有意に高かった(987[44-0%] vs 7976[31-8%];傾向スコアマッチング後の調整済みオッズ比[OR]、1-31[95% CI 1-13-1-52]、p<0-0001)。 [INTERPRETATION]本知見は、パブリックアクセス除細動の利点、およびコミュニティにおける自動体外式除細動器のアクセス性と利用可能性の向上を支持するものである。 第一人者の医師による解説 AEDを用いた市民へのCPR教育活動推進の意義付けとなる成果 中島 啓裕/安田 聡(副院長・部門長) 国立循環器病センター心臓血管内科冠疾患科・心臓血管系集中治療科 MMJ.June 2020;16(3) 近年、市民による自動体外式除細動器(AED)使用が心室細動(VF)による院外心停止患者の蘇生率向上に有効である可能性が報告された(1)。日本では約60万台のAEDが設置されている。各団体のAED普及啓発活動にもかかわらず、市民によるAED除細動実施率は5%程度と低い。 市民によるAED除細動患者の約80%は救急隊現場到着時点では心停止が持続していることから、AEDを運び込むまでの心肺蘇生(CPR)中断や救急通報の遅れなどのデメリットが除細動不成功例の予後に与える影響を明らかにすれば、より適正なAED使用を推奨できると考えられる。しかしながら、ガイドラインによりAED使用が強く推奨されている現代において、AED使用群と未使用群で予後を比較する無作為化対照試験の実施は困難である。 そこで、本研究では日本の総務省消防庁によるウツタイン様式救急蘇生統計データを活用した。救急隊現場到着時点のVF持続患者を対象に、事前に市民がAEDを用いてCPRを実施した患者とAED なしのCPRを実施した患者の予後が比較された。 2005~15年に日本全国で発生した1,299,784 人の院外心停止患者から、市民による目撃があり CPRが実施されたVF心停止患者28,019人のうち、救急隊現場到着時点の心停止持続患者27,329 人(CPR+ AED併用群 2 ,242 人 、CPR単独群 25,087人)を解析した。 背景因子を傾向スコアで調整したところ、CPR+ AED併用群はCPR単独群 と比較して、発症から救急隊覚知までに中央値1分の遅れ(2分 対 1分:P<0.0001)を認めたものの、 主要評価項目である30日後の神経学的転帰良好な割合は有意に高値であった(38% 対 23%:調整 オッズ比 , 1.45; 95% CI, 1.24~1.69:P< 0.0001)。さらに、救急通報時から救急隊現着までにかかった時間(中央値8分[四分位範囲6~10 分])別の感度分析でも同様の結果が得られた。 本研究では、AEDによる除細動実施で心拍再開 (AEDの主要効果)を得られなかった患者においても、AEDが神経学的予後を改善させうることが示された。AEDの音声ガイダンスなどがCPRの質の改善に寄与していた可能性が示唆された。本結果は救急通報~救急隊現着までの時間に依存しないことから、日本全国において一般化されるものであり、市民に対するAEDを用いたCPR教育活動を推進していく意義付けとなるものと考える。 一般市民のAED使用は、たとえ救急隊の現場到着までに患者の自己心拍再開を得られなかったとしても、 その後の患者の良好な予後につながるという点が本研究からのメッセージである。 1. Kitamura T et al. N Engl J Med. 2016;375(17):1649-1659.