「強直性脊椎炎」の記事一覧

活動性強直性脊椎炎に用いるupadacitinibの有効性および安全性(SELECT-AXIS 1) 多施設共同第II/III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験
活動性強直性脊椎炎に用いるupadacitinibの有効性および安全性(SELECT-AXIS 1) 多施設共同第II/III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験
Efficacy and safety of upadacitinib in patients with active ankylosing spondylitis (SELECT-AXIS 1): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2/3 trial Lancet. 2019 Dec 7;394(10214):2108-2117. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32534-6. Epub 2019 Nov 12. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】JAK経路は強直性脊椎炎の治療の標的となる可能性がある。この試験では、強直性脊椎炎に用いる選択的JAK1阻害薬upadacitinibの有効性および安全性を評価した。 【方法】この多施設共同第II/III相二重盲検プラセボ対照並行群間無作為化試験には20カ国62施設から成人患者を組み入れた。改訂ニューヨーク基準を満たし、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬による治療歴がなく、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が2種類以上で効果不十分、NSAID不耐または禁忌の活動性強直性脊椎炎患者を適格とした。被験者を自動応答技術を用いて、第1期の14週間に経口upadacitinib 15mg 1日1回服用するグループまたは経口プラセボを服用するグループに無作為に割り付けた。ここでは第1期のデータのみを報告する。主要評価項目は、14週時のAssessment of SpondyloArthritis international Society (ASAS) 40反応率で測定した複合転帰とした。無作為化し被験薬を1回以上投与した全例の完全解析を実施した。この試験は、ClinicalTrials.govのNCT03178487番に登録されている。 【結果】2017年11月30日から2018年10月15日にかけて、187例をupadacitinib 15mg(93例)とプラセボ(94例)に無作為に割り付け、178例(95%、upadacitinib群の89例とプラセボ群の89例)が被験薬の第1期を完遂した(2019年1月21日までに完了)。upadacitinib群のほうがプラセボ群よりも14週時のASAS40反応率が有意に高かった[92例中48例(52%) vs. 94例中24例(26%)、P= 0.0003、治療群間差26%(95%CI 13~40)]。upadacitinib群93例中58例(62%)とプラセボ群94例中52例(55%)に有害事象が報告された。upadacitinib群に最も多く発現した有害事象は、クレアチン・ホスホキナーゼ上昇(updacitinib群9% vs. プラセボ群2%)だった。重篤な感染、帯状疱疹、悪性腫瘍、静脈血栓塞栓イベントや死亡は報告されなかった。各群1例に重度の有害事象が発現した。 【解釈】upadacitinib 15mgは、NSAIDの効果不十分または禁忌の活動性強直性脊椎炎に有効で忍容性も良好であった。このデータは、強直性脊椎炎治療に用いるupadacitinibのさらに詳細な調査を支持するものである。 第一人者の医師による解説 ウパダシチニブは有効かつ耐容可能なAS治療薬になりうることを示唆 高相 晶士 北里大学医学部整形外科学主任教授 MMJ. October 2020; 16 (5):143 強直性脊椎炎(AS)の治療としては非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が推奨され、従来の抗リウマチ薬や糖質コルチコイドは軸性症状の改善に乏しいと言われている。近年、関節リウマチ、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎の適応でJAK阻害薬が承認されており、JAK経路はASの治療標的としても着目されている。ASに対するJAK阻害薬(トファシチニブおよびフィルゴチニブ)の有効性については、2つの第2相試験で示されたところである。  本論文で報告されたSELECT-AXIS 1試験は、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)の使用歴がなく、NSAIDが効果不十分または不耐容である18歳以上の活動性 AS患者18人を対象に、ウパダシチニブ 15mg/日を14週間経口投与した際の有効性と安全性評価を目的とした多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験である。本試験には20カ国(北米、西欧、東欧、アジア、オセアニア)の62施設が参加。対象患者はASのNew York基準を満たし、仙腸関節 X線写真で診断され、従来の抗リウマチ薬、経口ステロイド薬、NSAID使用は組み入れ可とされた。主要評価項目は投与後14週目におけるAssessment of Spondylo Arthritis international Society(ASAS)40反応を達成した患者の割合とされた。割り付け結果はウパダシチニブ群93人、プラセボ群94人、全体の背景は平均年齢45.4歳、男性71%、HLA-B27陽性率76%であった。  有効性の評価において、投与後14週目のASAS40達成率は、ウパダシチニブ群で有意に改善した(ウパダシチニブ群52% 対 プラセボ群26%;P=0.0003)。疾患活動性を示すBath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index(BASDAI)50 改善率、ASAS 部 分 寛 解率、Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score(ASDAS)変化量、機能評価としてのBath Ankylosing Spondylitis Functional Index(BASFI)変化量、MRI 変化(SPARCC MRI spine score)についても、ウパダシチ二ブ群で有意な改善が認められた。  有害事象はウパダシチニブ群62%、プラセボ群55%に発生し、ウパダシチニブ群における主な有害事象はクレアチニンキナーゼの上昇であった。重篤な感染症の発生はみられず、感染症発生率および有害事象による試験中止率は両群ともに同程度であった。ウパダシチニブの安全性情報については関節リウマチに対する過去の試験で報告されたものと一致した。  今回、ウパダシチニブ 15mg経口投与により活動性 AS患者の疾患活動性、機能、MRI所見で改善を認め、忍容性も良好であったことから、本剤は有効かつ耐容可能なAS治療薬となりうることが示唆された。