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50歳における理想的な心血管系の健康と認知症発生率との関連:Whitehall IIコホート研究の25年フォローアップ。
50歳における理想的な心血管系の健康と認知症発生率との関連:Whitehall IIコホート研究の25年フォローアップ。
Association of ideal cardiovascular health at age 50 with incidence of dementia: 25 year follow-up of Whitehall II cohort study BMJ 2019 Aug 7 ;366:l4414. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】50歳時点のLife Simple 7心血管系健康スコアと認知症発症率との関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究 【設定】ロンドンの公務員部門(Whitehall II研究、研究開始1985-88)。 【参加者】50歳時点で心血管健康スコアに関するデータを有する7899人。 【対象】心血管健康スコアは、4つの行動的指標(喫煙、食事、身体活動、肥満指数)と3つの生物的指標(空腹時血糖値、血中コレステロール、血圧)を含み、3点スケール(0、1、2)でコード化されている。心血管健康スコアは7つの指標の合計(スコア範囲0~14)であり,心血管健康不良(スコア0~6),中間(7~11),最適(12~14)に分類された。 【主要アウトカム指標】2017年までの病院,精神保健サービス,死亡登録へのリンクを通じて特定された認知症の発症。 【結果】追跡期間中央値24.7年間に347例の認知症発症が記録された。心血管健康度が低い群における認知症の発症率が1000人年当たり3.2(95%信頼区間2.5~4.0)であるのに対し,1000人年当たりの絶対率の差は,心血管健康度が中程度の群では-1.5(95%信頼区間-2.3~-0.7),心血管健康度が最適の群では-1.9(-2.8~-1.1)であった。心血管系の健康スコアが高いほど、認知症のリスクは低かった(心血管系の健康スコアが1ポイント上がるごとにハザード比0.89(0.85~0.95))。行動学的および生物学的下位尺度についても、認知症との同様の関連が認められた(下位尺度1ポイント増加あたりのハザード比はそれぞれ0.87(0.81~0.93)および0.91(0.83~1.00))。50歳時点での心血管健康と認知症との関連は、追跡期間中に心血管疾患のない状態が続いた人においても見られた(心血管健康スコア1点増につきハザード比0.89(0.84~0.95))。 【結論】中年期にライフシンプル7理想心血管健康勧告を遵守することは、その後の認知症のリスク低減と関連していた。 第一人者の医師による解説 日本の特定健診 認知症予防にも結びつく可能性を示唆 長田 乾 横浜総合病院臨床研究センター長 MMJ.February 2020;16(1) 米国心臓協会(AHA)によれば、Lifeʼs Simple 7、 すなわち、禁煙、食事、運動習慣、体重の行動学的 4因子と、血圧、血糖、血清コレステロールの生物 学的3因子の合計7項目からなるCardiovascular Health Score(CVHS)が高い群は、低い群と比較し、冠動脈疾患や脳卒中の発症リスクが低いことが示されている(1)。高齢者では、CVHSが認知機能低下や認知症のリスクとも関連するとする報告はあるが、追跡期間が短い研究や高齢期の危険因子を評 価している研究が多く、必ずしも結果は一致しない。 本論文は、50歳の時に評価したCVHSと25年後 の認知症発症リスクの関連を検討した前向きコホー ト研究の報告である。対象は、英国 Whitehall II研 究の登録住民のうち、心血管疾患や認知症の既往が なく、50歳時にCVHSの評価を行った7,899人。 CVHSは、喫煙、果物・野菜の摂取量、1週間の運動量、体格指数(BMI)、空腹時血糖、総コレステロール、 収縮期・拡張期血圧をそれぞれ2、1、0点の尺度で 評価し、総点が12~14点を「最良群」、7~11点 を「中間群」、0~6点を「不良群」と判定した。不良群と比較して、中間群や最良群には、白人、高学歴、 高収入の人が多く含まれていた。認知症の診断にはNational Health Serviceのデータを用いた。 結果は、中央値24.7年の観察期間中に347人が認知症を発症し、1,000人・年あたりの同発症率は不良群3.2、中間群1.8、最良群1.3であった。社会経済的背景で補正した解析では、認知症発症リスク(ハザード比)は、不良群を1とすると中間群0.61、 最良群0.57で、CVHS1点上昇あたり0.88~0.89 と低下した。行動学的4因子および生物学的3因子についても同様の傾向がみられ、50歳時のCVHS は老年期の認知症発症リスクと密接に関連していた。ただし、観察期間中に心血管イベントを発症しなかった群でもCVHSは認知症発症リスクと関連したことから、老年期の認知症は心血管イベントですべて説明できるわけではなかった。サブ解析において3テスラ MRIで計測した全脳容積や灰白質容積は、CVHSと相関したが、海馬容積は相関しなかった。 実臨床では、中年期からLifeʼs Simple 7に含まれる心血管因子を厳格に管理することが老年期の認知症予防につながると考えられる。日本で40~ 74歳の被保険者を対象に行われている特定健康診査には、Lifeʼs Simple 7のうち5項目が含まれており、メタボリックシンドロームのみならず、老年期の認知症の予防にも結びつく可能性が示唆される。 1. AHA Life's Simple 7 ウエブサイト(https://bit.ly/2Nl4MHJ)