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月経周期が規則的な女性の顕微鏡受精中の全胚凍結と新鮮胚移植戦略の比較 多施設共同無作為化比較試験
月経周期が規則的な女性の顕微鏡受精中の全胚凍結と新鮮胚移植戦略の比較 多施設共同無作為化比較試験
Freeze-all versus fresh blastocyst transfer strategy during in vitro fertilisation in women with regular menstrual cycles: multicentre randomised controlled trial BMJ. 2020 Aug 5;370:m2519. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】生殖補助医療で用いる全胚凍結戦略と新鮮胚移植戦略の妊娠継続率を比較すること。 【デザイン】多施設共同無作為化対象優越性試験。 【設定】デンマーク、スウェーデンおよびスペインの公立病院8施設内の外来不妊治療クリニック。 【参加者】月経周期が規則的で体外受精または卵細胞質内精子注入法いずれかで第1~3治療サイクルを開始する18~39歳の女性460例。 【介入】女性をサイクルの2日目または3日目のベースラインで、トリガーにゴナドトロピン放出ホルモン作動薬を用いて、続く自然サイクルで単一凍結融解胚盤胞を移植する全胚凍結群(全胚の選択的凍結)と、トリガーにヒト絨毛性ゴナドトロピンを用いて、次のサイクルで単一胚盤胞を移植する後新鮮胚移植群に無作為に割り付けた。トリガー投与時に11mm超の卵胞が18個以上あった新鮮胚移植群の女性で、安全策として全胚を凍結し、移植を延期した。 【主要評価項目】主要評価項目は、妊娠8週後の胎児心拍確認と定義した妊娠の継続率とした。生児出生率、ヒト絨毛性ゴナドトロピン陽性率、妊娠までの期間および妊娠関連の母体および新生児の合併症を副次評価項目とした。腫瘍塊性はintention-to-treat原理に従って実施した。 【結果】全胚凍結群と新鮮胚移植群の妊娠継続率に有意な差はなかった(27.8%[223例中62例]vs 29.6%[230例中68例]リスク比0.98、95%CI 0.87~1.10、P=0.76)。さらに、生児出生率にも有意差はなかった(全胚凍結群27.4%[223例中61例]、新鮮胚移植群28.7%[230例中66例]、リスク比0.98、95%CI 0.87~1.10、P=0.83)。ヒト絨毛性ゴナドトロピン陽性率および妊娠喪失にも群間差は見られず、重度卵巣過剰刺激症候群を来した女性は1例もなかった。新鮮胚移植群で、この処置に関連する入院がわずか1例あったのみである。妊娠関連の母体および新生児の合併症リスクは、凍結胚盤胞移植後の平均出生体重が多かった点および新鮮胚移植後に早産のリスクが上昇する点を除き、差は認められなかった。全胚凍結群のほうが妊娠までの期間が長かった。 【結論】規則的な月経がある女性で、卵成熟のためにゴナドトロピン放出ホルモン作動薬を用いた全胚凍結戦略で、新鮮胚移植戦略よりも妊娠継続率および生児出生率が上昇することはなかった。この結果を鑑みると、卵巣過剰刺激症候群の明らかなリスクがない場合でも見境なく全胚凍結戦略をとることに対して注意が必要である。 第一人者の医師による解説 卵巣過剰症候群のリスクがなければ 新鮮胚移植を優先すべきである 末岡 浩 慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター MMJ. February 2021;17(1):29 近年、不妊で悩むカップルは増加傾向にあり、さらに女性の社会進出によって不妊治療の機会が十分に得られずに離職を選ぶ人がいることも大きな課題である。生殖補助医療の発展・普及は目覚ましく、日本の出生児の16人に1人は体外受精で妊娠に至っており、そのうち70%は凍結胚移植である。海外では凍結胚の妊娠は日本ほど多くはないが、メリットの観点から増え続けている。胚の凍結は、余剰胚の有効活用に加えて、多胎の防止、排卵誘発に伴う通常周期よりも高レベルのホルモン環境中の胚移植を避け、時には重篤な状態を引き起こす可能性のある卵巣過剰刺激症候群の発生を防ぐことができるなど、有益な点が少なくないと考えられてきた。一方、凍結融解による胚への侵襲と妊娠成績への影響が懸念されている。 本論文は、欧州3カ国8施設で18~39歳の正常排卵周期を有する女性460人を対象に凍結胚移植の新鮮胚移植に対する優越性を検討した多施設共同無作為化対照試験の報告である。患者に対して排卵誘発剤による卵巣刺激を行い、最終的にヒト絨毛ホルモン(hCG)注射による排卵誘導を行った後、採卵し、通常の体外受精または顕微授精によって得られた胚を5~6日間体外で胚盤胞に至るまで培養し、新鮮胚移植群では5~6日目に移植した。凍結胚移植群では排卵時期を特定するため排卵誘導にはhCGの代わりにゴナドトロピン分泌ホルモンアゴニスト(GnRHa)を投与し、排卵の上で同期化した時期に子宮に移植した。妊娠率、分娩に至った割合、流産率のほか、排卵誘発剤による副作用としての卵巣過剰刺激症候群、出生体重の変化などを検討した。 その結果、凍結胚移植群と新鮮胚移植群で妊娠率、出生率、流産率には差がなく、凍結周期が妊娠成績に好結果をもたらすとした既報とは異なる結論が得られた。懸念されていた卵巣過剰刺激症候群の発生については、1例を除き、排卵誘発した周期に行った新鮮胚移植でも腹水貯留や入院管理を必要とする重症例は認められなかった。ただし、採卵周期の排卵誘発時から医療サイドの注意したことが功を奏した可能性はある。一方、凍結胚移植では有意な児体重の増加および早産率の上昇がみられ、妊娠までの期間が長くなった。今回の検討結果からGnRHaとhCGの排卵誘導に関して、また新鮮胚移植と比較して、凍結胚移植による妊娠出産率への効果に有意差はなかったことが示された。このことから、卵巣過剰刺激症候群のリスクがない時にまですべての胚で凍結胚移植を選択すべきではなく、新鮮胚移植を優先すべきであることが示唆された。
英国のSARS-CoV-2感染が確定し入院した妊婦の特徴と転帰 全国住民対象コホート研究
英国のSARS-CoV-2感染が確定し入院した妊婦の特徴と転帰 全国住民対象コホート研究
Characteristics and outcomes of pregnant women admitted to hospital with confirmed SARS-CoV-2 infection in UK: national population based cohort study BMJ. 2020 Jun 8;369:m2107. doi: 10.1136/bmj.m2107. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】英国で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のため入院した妊婦の全国コホートの特徴を記述し、感染関連因子および感染伝播などの転帰を明らかにすること。 【デザイン】英国産科監視システム(UKOSS)を用いた前向き全国住民対象コホート研究 【設定】英国内の全194の産科ユニット(obstetric unit)。 【参加者】2020年3月1日から4月14日の間にSARS-CoV-2感染のため入院した妊婦427例。 【主要評価項目】妊娠中の入院および新生児の感染の発生。母体の死亡、レベル3集中治療室への入室、胎児喪失、帝王切開分娩、早産、死産、早期新生児死亡および新生児ユニット入室。 【結果】妊娠中のSARS-CoV-2感染による入院発生率は、妊婦1000例当たり4.9(95%CI 4.5-5.4)と推定された。妊娠中SARS-CoV-2感染のため入院した妊婦233例(56%)が黒人またはその他の少数民族であり、281例(69%)が過体重または肥満、175例(41%)が35歳以上であり、145例(73%)に基礎疾患があった。266例(62%)が出産または妊娠喪失し、そのうち196例(73%)は正期産だった。41例(5%)が呼吸補助を要したため入院し、5例(1%)が死亡した。新生児265例のうち12例(5%)が検査でSARS-CoV-2 RNA陽性を示し、そのうち6例が出生後12時間以内に陽性が確定した。 【結論】SARS-CoV-2のため入院した妊婦のほとんどが妊娠第2または第3三半期であり、後期妊娠中に社会的距離を保持する指導の重要性を裏付けるものである。ほとんどが転帰良好であり、児へのSARS-CoV-2伝播の頻度は高くない。感染のため入院した妊婦に黒人または少数民族の割合が高いことについては、早急な調査と原因解明が必要とされる。 第一人者の医師による解説 迅速に妊婦感染者を集めた英国調査 日本の疫学調査の脆弱性を痛感 木村 正 大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室教授 MMJ. February 2021;17(1):11 2019年末に中国武漢市で最初に確認された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は瞬く間に世界規模の流行を引き起こし、世界保健機関(WHO)は2020年3月に同感染症(COVID-19)の世界的流行を宣言した。インフルエンザ等類似ウイルス呼吸器感染症の経験から妊婦は重篤化するリスクが高いと推測された。感染例の出産に関する報告はすでに5月までに数多くなされたが、施設単位・少数例の集積であった。本論文は出版時点では唯一の国人口ベースでの報告である。3月1日~4月14日に英国産科サーベイランスシステムを用いて同国内でコンサルタントを置く全分娩施設194施設から情報を集積した。調査期間中に427人の妊婦がSARS-CoV-2感染のため入院し(1,000人あたり4.9)、56%はアフリカ系・アジア系などの(英国社会の)少数派であった。69%は過体重または肥満、41%は35歳以上、34%に併存合併症があった。266人はこの期間内に妊娠が終了し、このうち流産4人、早産66人(うち53人は医学的適応)、正期産は196人(分娩の75%)であった。156人が帝王切開を受け29人は全身麻酔(うち18人は母体の呼吸状態悪化による挿管)下で行われた。入院した妊婦427人中41人は高度集中治療、4人は体外式膜型人工肺(ECMO)管理を受けた。観察期間に5人が死亡、397人は軽快退院、25人は入院中であった。新生児は3人が死産、2人が新生児死亡。生産児265人中67人は新生児集中治療室で管理され、12人がPCR検査陽性となった。生後12時間以内に陽性となった6人中2人は経腟分娩、3人は陣痛発来前の帝王切開、1人は発来後の帝王切開であった。 日本では日本産婦人科医会が6月末までの感染妊婦アンケートを行い、72人の感染(有症状者58人)が1,481施設から報告された。罹患率は報告施設の半年間の分娩数から10,000人あたり2人程度となり、今回の報告に比べ20分の1である。10人に酸素投与が行われ、1人が人工呼吸管理を受け死亡した(入国直後の外国籍女性)。児への感染はなかった。日本産科婦人科学会では、研究機関・学会での倫理審査を終え、新型コロナウイルス感染妊婦のレジストリ研究を開始し、9月から登録を募っている。しかし、国は研究費補助のみで研究班が個人情報保護法を意識しながら体制を構築したため時間がかかり、適時に十分な情報を国民に届けることができなかった。本論文は日英の医学研究におけるスピード感の差を如実に表し、最近の日本における個人情報保護法をはじめとするさまざまな制約は迅速な疫学情報収集を脆弱化させていることを改めて痛感している。
物理的距離確保の介入と新型コロナウイルス感染症発症 149カ国の自然実験
物理的距離確保の介入と新型コロナウイルス感染症発症 149カ国の自然実験
Physical distancing interventions and incidence of coronavirus disease 2019: natural experiment in 149 countries BMJ. 2020 Jul 15;370:m2743. doi: 10.1136/bmj.m2743. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】世界の物理的距離を確保する介入と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症の関連を評価すること。 【デザイン】分割時系列解析を用いた自然実験。メタ解析を用いて結果を統合した。 【設定】欧州疾病予防管理センターからCOVID-19症例の日報データ、オックスフォードCOVID-19 政策反応追跡から物理的距離確保の政策に関するデータが入手できる149の国または地域。 【参加者】2020年1月1日から5月30日までの間に、物理的距離を確保する政策5項目(学校閉鎖、職場閉鎖、公共交通機関の閉鎖、大規模集会やイベントの制限、移動の制限[都市封鎖])のうち1項目以上を導入した国または地域。 【主要評価項目】2020年5月30日または介入後30日間のいずれか先に発生した日付までのデータを用いて推算した物理的距離確保政策導入前後のCOVID-19の発生率比(IRR)。ランダム効果メタ解析を用いて各国のIRRを統合した。 【結果】物理的距離介入策の導入で、COVID-19発生率が全体で平均13%低下した(IRR 0.87、95%CI 0.85-0.89、149カ国)。他の4項目の物理距離確保政策が実施されていた場合、公共交通機関の閉鎖によってCOVID-19発症率がさらに低下することはなかった(公共交通機関の閉鎖あり:統合IRR 0.85、95%CI 0.82-0.88、72カ国、閉鎖なし:同0.87、0.84-0.91、32カ国)。このほか、11カ国のデータから、学校閉鎖、職場閉鎖および大規模集会の制限にほぼ同じ全般的な効果があることが示唆された(同0.85、0.81-0.89)。政策導入の順序を見ると、他の物理的距離確保政策の後に都市封鎖を実施した場合(同0.90、0.87-0.94、41カ国)と比較すると、都市封鎖の早期導入によってCOVID-19発生率が低下した(同0.86、0.84-0.89、105カ国)。 【結論】物理的距離の介入によって、世界的にCOVID-19発生率が低下した。他の4項目の政策を導入した場合、公共交通機関を閉鎖することによってさらに効果が高くなる根拠は見られなかった。都市封鎖の早期導入によってCOVID-19発生率が大きく低下した。この結果から、今回または将来の感染症流行のため、国が物理的距離政策の強化に備える政策決定に役立つと思われる。 第一人者の医師による解説 149カ国の自然実験 適切な身体的距離確保の介入指針となる可能性 神林 隆道(臨床助手)/園生 雅弘(主任教授) 帝京大学医学部附属病院脳神経内科 MMJ. February 2021;17(1):13 世界的なパンデミックとなっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、ほとんどの国が身体的距離(physical distancing)を確保することを目的とした介入を行っているが、それらの有効性の検討はこれまで主にモデル研究でなされており、実際の患者集団におけるデータに基づく有効性評価の報告は乏しい。 本研究では、2020年1月1日~5月30日に以下の5種類の身体的距離確保のための介入(学校閉鎖、職場閉鎖、公共交通機関の閉鎖、大人数の集会や公共イベントの制限、移動制限)のうち1つ以上が行われた国を対象に国別に分割時系列解析を実施し、データのメタ解析によって身体的距離確保の介入前後のCOVID-19発生率比を評価した。 149カ国が1種類以上の身体的距離確保のための介入を行っており、ベラルーシとタンザニアを除くすべての国が5種類のうち3種類以上を実施していた(日本は公共交通機関の閉鎖以外の4種類)。118カ国では5種類すべてが実施されていた。全体の結果として、身体的距離確保の介入によってCOVID-19発生率が13%低下したことが示された。 データのメタ解析からは、最初の症例報告から介入開始までの日数(P=0.57)や、PCR検査実施率(P=0.71)は、発生率に有意な影響を与えておらず、一方で65歳以上の高齢人口比率(P<0.001)や1人当たりのGDPが高い(P=0.09)国は、身体的距離確保の介入による発生率の低下がより大きかった。また、注目すべき点として、介入の組み合わせについて、学校閉鎖、職場閉鎖、公共イベントの制限、移動制限の4種類が一緒に実施された場合のCOVID-19発生率比(0.87;95 % 信頼区間[CI], 0.84~0.91;32カ国)は、さらに公共交通機関の閉鎖を加えた5種類すべての介入を行った場合とほぼ同等(0.85;95% CI, 0.82~0.88;72カ国)で、公共交通機関の閉鎖に付加的なCOVID-19発生抑制効果は認められなかった。 介入の順序に関しては、移動制限を早期に実施した場合のCOVID-19発生率比(0.86;95% CI, 0.84~0.89;105カ 国)は、他の身体的距離確保による介入後に遅れて移動制限を行った場合(0.90;95 % CI, 0.87~0.94;41カ国)よりも 低く、より早期の移動制限の介入の方がCOVID-19発生率の抑制効果は大きいことが示唆された。 著者らはこれらのデータが、今後流行が起こった際の施策決定に役立つだろうと結論している。日本でも引き続き適切な行動変容によって、医療崩壊に陥らずかつ社会・経済活動を維持できる程度に感染者数をコントロールしていくことが重要であろう。
小児の喘息発症および喘鳴持続に関連がある大気汚染および家族関連の決定因子 全国症例対照研究
小児の喘息発症および喘鳴持続に関連がある大気汚染および家族関連の決定因子 全国症例対照研究
Air pollution and family related determinants of asthma onset and persistent wheezing in children: nationwide case-control study BMJ. 2020 Aug 19;370:m2791. doi: 10.1136/bmj.m2791. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】小児の喘息発症および喘鳴時属の危険因子(大気汚染および家族関連)を明らかにすること。 【デザイン】全国症例対照研究 【設定】デンマーク 【参加者】1997年から2014年に出生したデンマーク人小児全例。1歳から15歳まで喘息発症および喘鳴持続を追跡した。 【主要評価項目】喘息発症および喘鳴の持続。 【結果】両親に喘息がある小児(調整ハザード比2.29、95%CI 2.22~2.35)および母親が妊娠中に喫煙していた小児(1.20、1.18~1.22)の喘息発症率が高く、親が高学歴の小児(0.72、0.69~0.75)および親が高収入の小児(0.85、0.81~0.89)の喘息発症率が低かった。直径2.5μm以下および10μm以下の大気中微小粒子状物質(PM2.5およびPM10)、硝酸塩への曝露があると喘息発症および喘鳴持続のリスクが上昇し、汚染物質濃度5μg/m3増加当たりのハザード比はPM2.5で1.05(95%CI 1.03~1.07)、PM10で1.04(1.02~1.06)、二酸化窒素で1.04(1.03~1.04)だった。PM2.5の喘息および喘鳴持続との正の関連は、さまざまなモデルや感度解析の結果、唯一頑強性が維持された。 【結論】この研究結果からは、高濃度PM2.5に曝露した小児は、曝露していない小児に比べて喘息発症および喘鳴持続が起きやすいことが示唆される。この転帰に関連を示すその他の危険因子に、両親の喘息、両親の学歴および母親の妊娠中の喫煙があった。 第一人者の医師による解説 地域差が大きいPM2.5の影響 日本のエコチル調査の結果が待たれる 勝沼 俊雄 慈恵会医科大学附属第三病院小児科診療部長・教授 MMJ. February 2021;17(1):16 小児の喘息発症に関わる因子は個体因子と環境因子からなり、それらは予防対策の基本となる。個体因子は家族歴が主となり、環境因子としては吸入アレルゲン曝露と気道ウイルス感染が議論や対策の中心といえる。少なくとも近年において大気汚染の寄与を強調する傾向はみられない。 しかし今回、デンマークにおける18年に及ぶ全国規模の症例対象研究の結果を踏まえ、本論文の結語として最も強調しているのは、PM2.5の喘息・持続性喘鳴への関与でありその対策である。デンマークでは1976年に国家的な患者登録制度(National Patient Register;LPR)を開始し、本研究は上記患者レジストリに登録されている1997~2014年にデンマークで生まれた子どものデータを解析している。すなわち1歳から15歳までに喘息の診断を受けたか、2種類以上の抗喘息薬を処方された小児(122,842人)に関し、喘息の診断を受けていないランダムに選択された25倍の数の対照(3,069,943人)と比較した。 その結果、喘息・喘鳴頻度を高める因子として親の喘息(調整済みハザード比[HR], 2.29;95%信頼区間[CI], 2.22~2.35)と妊娠中の母体喫煙(HR, 1.20;95% CI, 1.18~1.22)、低める因子として親の高い教育レベル(HR, 0.72;95% CI, 0.69~0.75)と 高収入(HR, 0.85;95 % CI, 0.81~0.89)が特定された。そして大気汚染物質の中では、唯一PM2.5への曝露が喘息・喘鳴のリスクを有意に高めることが明らかとなり、PM2.5濃度が5μg/m3上昇するごとにリスクが1.05(95% CI, 1.03~1.07)倍高まるという結果が得られた。調査全体におけるPM2.5の平均値(SD)は12.2(1.5)μg/m3であった(下位5%の平均値は9.7μg/m3、上位5%は14.8g/m3)。 数年前の中国のように著しいPM2.5曝露下においては、半世紀以前の公害喘息(川崎喘息、四日市喘息など)同様、強い関与がありうると私自身は考えていた。しかしながら、本研究で示された平均約12μg/m3というPM2.5のレベルは、東京(15μg/m3程度)と大差ないレベルである。PM2.5が5μg/m3上昇するごとに小児の喘息・喘鳴リスクが5%高まるということは、喘息自体の有病率が5%であることから無視できない影響といえる。喘息の最前線で働いてきた臨床医としては実感しにくいが、PM2.5の影響は地域差が大きいであろうから日本における調査に注目したい。喘息、アレルギーを含む大規模な出生コホート調査で、2011年から始まったエコチル調査の結果が待たれる
デンマーク人女性の4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種と自律神経機能障害の関連 住民対象自己対照症例集積解析
デンマーク人女性の4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種と自律神経機能障害の関連 住民対象自己対照症例集積解析
Association between quadrivalent human papillomavirus vaccination and selected syndromes with autonomic dysfunction in Danish females: population based, self-controlled, case series analysis BMJ. 2020 Sep 2;370:m2930. doi: 10.1136/bmj.m2930. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】4価ヒトパピローマウイルスワクチンと慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群および体位性頻脈症候群などの自律神経機能障害を伴う症候群の間の関連を評価すること。 【デザイン】住民対象自己対照症例集積。 【設定】デンマークの全国レジストリに記録されたICD-10診断コードを用いて特定したヒトパピローマウイルスワクチン接種および自律神経失調症症候群(慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群および体位性頻脈症候群)に関する情報。 【参加者】2007年から2016年の間に参加した10~44歳の女性コホート137万5737例のうち自律神経失調症症候群がある女性869例。 【主要評価項目】4価ヒトパピローマウイルスワクチンを接種していない参加者と比較した同ワクチンを接種した女性参加者の慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群および体位性頻脈症候群の複合転帰の自己対照症例集積率比(95%CI)で年齢および季節で調整した。このほか、二次解析で慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群および体位性頻脈症候群を個別に検討した。 【結果】追跡期間1058万1902人年で、自律神経失調症症候群女性869例(慢性疲労症候群136例、複合性局所疼痛症候群535例および体位性頻脈症候群198例)を特定した。4価ヒトパピローマウイルスワクチンによって、ワクチン接種後365日のリスク期間中の自律神経機能障害を伴う各症候群の複合転帰発生率(率比0.99、95%CI 0.74~1.32)やリスク期間中の個々の症候群発生率(慢性疲労症候群[0.38、0.13~1.09]、複合性局所疼痛症候群[1.31、0.91~1.90]および体位性頻脈症候群[0.86、0.48~1.54])が有意に上昇することはなかった。 【結論】ワクチン接種導入後、全くの偶然でワクチン関連の有害事象が起こることがあると思われる。一連の結果からは、4価ヒトパピローマウイルスワクチンと慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群および体位性頻脈症候群の間の因果関係は、個別にみても複合転帰としても支持されない。最大32%のリスク上昇を正式に除外することはできないが、試験の統計的検出力からは、ワクチン接種によって各症候群発生率が上昇する可能性は低いと考えられる。 第一人者の医師による解説 研究期間後期ほど接種後発症が増加 生物学的反応以外の要素を示唆か 上坂 義和 虎の門病院脳神経内科部長 MMJ. February 2021;17(1):27 子宮頸がん予防のためのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは大きな成果をあげてきたが、日本のほかにデンマーク、アイルランドなどで慢性疲労症候群、体位性起立性頻拍症候群、複合性局所疼痛症候群などの自律神経失調症候群が接種後有害事象として報告された。これらは散発的な報告で接種との因果関係を示す科学的根拠は乏しかったが、メディアがこぞって取り上げたことで予防接種プログラムは大きく後退した。その後英国、ノルウェー、フィンランド、オランダから上記関連を否定する報告がなされたが、ノルウェー以外は主に2価HPVワクチンでの検討であった。デンマークは国民識別番号制度を持ち医療費はすべて税金でまかなわれるため、詳細な受診情報が外来、入院とも国家レベルで登録されている。本研究ではその登録データを利用し、4価HPVワクチンに関する検討が行われた。 デンマークでは2009年から12歳の女性を対象に国レベルの4価HPVワクチン接種が開始、2012年からは20~27歳の女性に対する予防接種も開始された。本研究では2007~16年にデンマーク生まれの10~44歳の女性を対象とした。結果、137万人以上が対象となり1000万人年以上の検討がされた。52万9千人以上が4価HPVワクチン接種を1回以上受けていた。最終接種から12カ月(3回接種では計18カ月)までをリスク期間とし、自律神経失調症候群発症をその前後期間と比較する自己対照研究デザインによる検討もなされた。自律神経失調症候群は869例でみられた(発症率10万・人年あたり8.21)。このうち433例がHPVワクチン接種例であり、接種後の発症例(309例:12カ月未満72例、12カ月以降237例)は接種前の発症例(124例)よりも多かったが、研究期間の後期になるほどその傾向が顕著であった。また、慢性疲労症候群、体位性起立性頻拍症候群、複合性局所疼痛症候群の合計およびそのいずれか1つの症状をとってもリスク期間中の発症率は対照期間と比較し有意な上昇を認めなかった。最終接種から12カ月以降をリスク期間に含めて検討した場合でも非接種期間に比べ有意な発病率上昇を認めなかった。 本研究を含めてHPVワクチン接種と自律神経失調症候群の関連を検討した研究の結果は接種後の発症率上昇について否定的である。本研究で研究期間後期になるほど接種後発症(接種後50カ月以上、最大100カ月以上)が次第に増加していることは生物学的反応以外の要素が加わっていることを示唆しているように思える。
FDAとEMAの迅速承認と新薬の治療的価値との関連 後ろ向きコホート研究
FDAとEMAの迅速承認と新薬の治療的価値との関連 後ろ向きコホート研究
Association between FDA and EMA expedited approval programs and therapeutic value of new medicines: retrospective cohort study BMJ. 2020 Oct 7;371:m3434. doi: 10.1136/bmj.m3434. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)が承認した新薬の治療的価値の特徴および優先プログラムの等級付けと規定当局の承認の関連を明らかにすること。 【デザイン】後ろ向きコホート研究。 【設定】2007年から2017年までの間のFDAとEMAが承認し、2020年4月1日まで追跡した新薬。 【データ入手元】独立機関5団体(Prescrire誌、カナダ、フランス、ドイツおよびイタリアの保健当局)の新薬の等級付けを用いて治療価値を測定した。 【主要評価項目】治療上の価値が高いと評価した新薬の割合、高い治療的価値評価と優先状況の関連。 【結果】2007年から2017年にかけて、FDAが320品目、EMAが268品目の新薬を承認し、そのうち181品目(57%)と39品目(15%)が1つ以上の優先プログラムに指定されていた。治療上の価値を等級付けした新薬267品目で、1機関以上が84品目(31%)を治療的価値が高いと評価した。治療的価値が高いと評価された医薬品の割合は、優先プログラムに指定された医薬品の方が非優先プログラムの医薬品よりも高かった[FDA承認:45%(153品目中69品目) vs 13%(114品目中15品目)、P<0.001、EMA:67%(27品目中18品目) vs 27%(240品目中65品目)、P<0.001]。指定した医薬品の治療的価値が高いと評価される優先プログラムの感度および特異度は、FDAが82%(95%CI 72-90)と54%(同47-62)、EMAで25.3%(16.4-36.0)と90.2%(85.0-94.1)だった。 【結論】過去10年間にFDAとEMAが承認した新薬の3分の1が、5つの独立機関のうち1つ以上から治療的価値が高いと評価を受けた。優先プログラムに指定した医薬品が非優先プログラム指定医薬品よりも高い評価を受けていると考えられたが、FDAの優先プログラムに指定された医薬品は、EMAの優先プログラム指定医薬品と異なり、ほとんどが治療的価値が低いと評価された。 第一人者の医師による解説 早期承認薬のリスクとベネフィット 規制当局は医療者と患者に知らせるべき 松元 一明 慶應義塾大学薬学部薬学科薬効解析学講座教授 MMJ. April 2021;17(2):59 世界で使用されているほとんどの医薬品は、米食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)で最初に承認される。これまでに、FDAはfast track(1987年)、accelerated approval(1992年)、priority review(1992年)、breakthrough therapy(2012年)の4つの早期承認プログラムを確立し、EMAはaccelerated assessment(2005年)、conditional marketing authorisation(2006年)の2つの早期承認プログラムを確立している。これらは患者に、必要とされる医薬品をいち早く届けるための制度であり、両規制当局は既存治療よりも優れた効果を示す医薬品が申請されるべきであると示している。しかし、プラセボ対照試験、単群試験に基づいて承認されており、既存治療との比較試験は要求されていない。したがって、FDAおよびEMAの早期承認プログラムで承認された新薬の治療価値(therapeutic value)は不確かである。そこで本論文では、カナダ、フランス、ドイツ、イタリアの保健当局と非営利団体 Association Mieux Prescrireが公表している医薬品の治療価値に基づいて、2007~17年にFDAおよびEMAで承認されたすべての新薬を評価した。 2007~17年にFDAおよびEMAは、それぞれ320、268の新薬を承認した。そのうちFDAは163(51%)、EMAは39(15%)の新薬を早期承認プログラムで承認した。治療価値の評価は267の医薬品について実施された。FDA承認薬の31%(84/267)、EMA承認薬の31%(83/267)が高い治療価値を有すると評価された。FDAの早期承認群で高く評価された医薬品は45%(69/153)、非早期承認群では13%(15/114)と有意差があった。EMAにおいても早期承認群67%(18/27)、非早期承認群27%(65/240)と有意差があった。FDAで早期承認された医薬品が高く評価される感度と特異度は、それぞれ82%(95%信頼区間[CI],72~90%)、54%(47~62%)であり、ROC曲線下面積(AUC)は0.68(0.63~0.74)であった。EMAではそれぞれ25%(95% CI, 16~36%)、90%(85~94%)、AUCは0.58(0.54~0.63)であり、両規制当局ともに予測性はそれほど高くなかった。 FDAとEMAでは新薬の開発を促進するために本制度がますます利用されている。早期承認薬の方が非早期承認薬より高く評価された医薬品は多かったが、その割合は決して高くはなかった。そのため、規制当局は医療従事者ならびに患者に早期承認薬のリスクとベネフィットの情報を知らせる必要がある。
健康的な生活習慣および社会経済的地位と死亡率および心血管疾患との関連:2件の前向きコホート研究
健康的な生活習慣および社会経済的地位と死亡率および心血管疾患との関連:2件の前向きコホート研究
Associations of healthy lifestyle and socioeconomic status with mortality and incident cardiovascular disease: two prospective cohort studies BMJ. 2021 Apr 14;373:n604. doi: 10.1136/bmj.n604. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【目的】生活習慣全般が社会経済的状況(SES)と死亡率および心血管疾患(CVD)発症との関連に介在するかを検討し、生活習慣およびSESと健康転帰との交互作用または複合的な関連の程度を評価すること。【デザイン】住民を対象としたコホート研究。【設定】米国民健康栄養調査(US NHANES、1988~1994年および1999~2014年)とUKバイオバンク。【参加者】米国の20歳以上の成人4万4,462例および英国の37~73歳の成人39万9,537例。【曝露】世帯所得、職業または雇用状況、学歴および健康保険(US NHANESのみ)を用いた潜在クラス分析でSESを評価し、項目回答確率に従って3段階(低、中、高)に分類した。喫煙未経験、非大量飲酒(女性1日1杯以下;男性1日2杯以下;1杯のエタノール含有量は米国14g、英国8g)、身体活動量上位3分の1および質の高い食事に関する情報に基づいて、健康的な生活習慣スコアを構築した。【主要評価項目】全死因死亡率を両研究の主要評価項目とした。複数のレジストリを紐付けることにより、UKバイオバンクのCVD死亡率とCVD発症率を入手した。【結果】US NHANESでは平均追跡期間11.2年で死亡が8906件、UKバイオバンクでは平均追跡期間8.8~11.0年で死亡が2万2309件、CVD発症が6903例記録された。SESが低い成人の年齢で、調整した1,000人年当たりの死亡リスクがUS NHANESで22.5(95%CI 21.7~23.3)、UK Biobankで7.4(7.3~7.6)、年齢で調整した1,000人年当たりのCVDリスクがUKバイオバンクで2.5(2.4-2.6)であった。これに対応するSESが高い成人のリスクは、それぞれ1000人年当たり11.4(10.6~12.1)、3.3(3.1~3.5)、1.4(1.3~1.5)であった。SESが高い成人と比較すると、SESが低い成人の方が全死因死亡率(US NHANESのハザード比2.13、95%CI 1.90~2.38;UKバイオバンク1.96、1.87~2.06)、CVD死亡率(2.25、2.00-2.53)、UKバイオバンクのCVD発症率(1.65、1.52-1.79)のリスクが高かった。生活習慣が介在する割合はそれぞれ12.3%(10.7~13.9%)、4.0%(3.5~4.4%)、3.0%(2.5~3.6%)、3.7%(3.1~4.5%)であった。US NHANESで生活習慣とSESの間に有意な交互作用が認められなかった一方で、UKバイオバンクではSESが低い成人で生活習慣と転帰の間に関連を認められた。SESが高く健康的な生活習慣因子数が3または4の成人と比較すると、SESが低く健康的な生活習慣因子数が0または1の成人は、全死因死亡率(US NHANES 3.53、3.01~4.14;UKバイオバンク2.65、2.39~2.94)、CVD死亡率(2.65、2.09~3.38)およびUKバイオバンクのCVD発症(2.09、1.78-2.46)のリスクが高かった。【結論】米国および英国いずれの成人でも、不健康な生活習慣が健康の社会経済的格差に介在する割合が小さかった。そのため、健康的な生活習慣の推進のみで健康の社会経済的格差が実質的に縮小することはない。健康の社会的決定因子を改善する他の手段が必要である。それでもなお、さまざまなSES部分集団で健康的な生活習慣に低死亡率および低CVDリスクとの関連を認め、健康的な生活習慣が疾病負荷の減少に果たす重要な役割を裏付けている。 第一人者の医師による解説 社会的経済的状態と疾病の発症について 生活習慣との相互作用を含めた研究が必要 門脇 孝 虎の門病院院長 MMJ. December 2021;17(6):188 近年、疾病の発症と社会経済的格差の関係が注目されている。恵まれない社会経済的状態(socioeconomicstatus;SES)と不健康な生活習慣はともに全死亡率と心血管疾患発症率の上昇に関連することが知られている。経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも米国と英国では近年、貧富の差が拡大し、健康格差の拡大につながっていることが指摘されている(1),(2)。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行は、SESが低い人々により深刻な影響を及ぼしている(3)。これまでの研究では、低いSESは主に不健康な生活習慣を介して全死亡率や心血管疾患発症率の上昇に関与すると考えられていた。しかし、これまでSESと生活習慣のそれぞれの寄与や交絡についての詳しいデータはなかった。今回米国の国民健康栄養調査(NHANES)および英国Biobankのデータを用いた2つのコホート研究が行われ、SESと全死亡、心血管疾患発症との関連に対する生活習慣の影響などについて検討された。SESは、世帯収入や職業・雇用形態、教育水準、健康保険(米国のみ)に基づいて3段階に分類し、健康的な生活習慣も、非喫煙、大量飲酒なし、身体活動量が上位の3分の1、食事の質の高さに基づき3段階に分類した。その結果、SESと生活習慣はいずれも全死亡と心血管疾患発症に関係し、低いSESと不健康な生活習慣は、相加的に全死亡や心血管疾患発症を増加させた。例えば、高いSESかつ最も健康的な生活習慣の場合に比べ、低いSESかつ最も不健康な生活習慣の場合、全死亡・心血管死や心血管疾患発症のリスクは2.09~3.53倍に上昇した。同レベルのSESで見れば、健康的な生活習慣は全死亡や心血管疾患発症を減少させた。また、同レベルの生活習慣であっても、SESが高から低になるに従い全死亡や心血管疾患発症が増加した。今後、全死亡や心血管疾患発症を抑制するためには、SESに関わらず健康的な生活習慣の励行は重要だが、特に、SESが低い場合にはそれのみでは不十分であることがわかった。それには、低いSESに伴うさまざまな社会的資源へのアクセスの悪さや検診・治療の機会の低下など多様な要因が考えられ、それらを分析して全死亡や心血管疾患発症を低減させる社会的施策の立案・実施が重要である。日本の「健康日本21(第2次)」でも健康的な生活習慣に加え健康格差に注目しており、今後、社会経済的状態が疾病の発症に及ぼす影響について、生活習慣との相互作用を含めた同様の研究がなされる必要がある。 1. Marmot M et al. Health equity in England: e Marmot Review 10 years on.London: Institute of Health Equity (https://www.health.org.uk/publications/reports/the-marmot-review-10-years-on ) 2. Bor J, et al. Lancet. 2017;389(10077):1475-1490. 3. Niedzwiedz CL, et al. BMC Med. 2020 ;18(1):160.
冠動脈血行再建術後に用いるP2Y12阻害薬単剤療法または2剤併用抗血小板薬療法:無作為化対照試験の個別患者データのメタ解析
冠動脈血行再建術後に用いるP2Y12阻害薬単剤療法または2剤併用抗血小板薬療法:無作為化対照試験の個別患者データのメタ解析
P2Y12 inhibitor monotherapy or dual antiplatelet therapy after coronary revascularisation: individual patient level meta-analysis of randomised controlled trials BMJ. 2021 Jun 16;373:n1332. doi: 10.1136/bmj.n1332. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【目的】P2Y12阻害薬単剤療法のリスクと便益を抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と比較し、この関連性が患者の特徴によって変化するかを評価すること。【デザイン】無作為化対照試験の個別患者データのメタ解析。【データ入手元】Ovid Medline、Embaseおよびウェブサイト(www.tctmd.com、www.escardio.org、www.acc.org/cardiosourceplus)で、開始時から2020年7月16日までを検索した。筆頭著者から個別参加者データの提供を受けた。【主要評価項目】主要評価項目は、全死因死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合とし、ハザード比1.15のマージンで非劣性を検証した。重要な安全性評価項目は、Bleeding Academic Research Consortium (BARC)出血基準3または5の出血とした。【結果】2万4,096例を対象とした試験6件のデータをメタ解析の対象とした。主要評価項目は、P2Y12阻害薬単剤療法実施患者283例(2.95%)、DAPT実施患者315例(3.27%)でみられ(ハザード比0.93、95%CI 0.79~1.09;非劣性のP=0.005;優越性のP=0.38;τ2=0.00)、intention to treat集団ではP2Y12阻害薬単剤療法実施患者303例(2.94%)、DAPT実施患者338例(3.36%)でみられた(同0.90、0.77~1.05;優越性のP=0.18;τ2=0.00)。治療効果は性別(交互作用のP=0.02)を除いた全部分集団で一定であり、P2Y12阻害薬単剤療法により、女性の主要評価項目の虚血リスクが低下するが(同0.64、0.46~0.89)、男性では低下がみられないことが示唆された(ハザード比1.00、0.83~1.19)。出血のリスクは、P2Y12阻害薬単剤療法の方がDAPTよりも低かった(97(0.89%)v 197(1.83%);ハザード比0.49、0.39~0.63;P<0.001、τ2=0.03)。この結果は、P2Y12阻害薬の種類(交互作用のP=0.02)を除いた全部分集団で一定であり、DAPTにクロピドグレルではなく新たなP2Y12阻害薬を用いると便益が大きくなることが示唆された。【結論】P2Y12阻害薬単剤療法の死亡、心筋梗塞および脳卒中のリスクはDAPTと同程度である。この関連性は性別により差があり、DAPTよりも出血リスクが低いという科学的根拠が得られた。 第一人者の医師による解説 至適な単剤抗血小板薬を規定するために 国内ではさらなる研究必要 木村 剛 京都大学大学院医学研究科・医学部循環器内科学教授 MMJ. December 2021;17(6):172 薬剤溶出性ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後には少なくとも1年間のアスピリンとP2Y12阻害薬の2剤抗血小板療法(DAPT)継続が必須とされてきた。しかしながら近年、DAPT継続に伴う大出血の増加への懸念が高まりDAPT期間短縮が模索されてきた。本研究は冠動脈血行再建後1~3カ月間のDAPT後のP2Y12阻害薬単剤とDAPTを比較した臨床試験6件の患者レベルのメタ解析である。筆者らが実施したSTOPDAPT-2試験(1)のデータも含まれている。PCI後のDAPT期間を比較した臨床試験のメタ解析はほかにも報告されているが、今回の患者レベルデータを用いたメタ解析の強みはPCI後1~3カ月以降の実際の割り付け治療実施期間中のアウトカム比較を行っている点と臨床的に重要な因子についてのサブグループ解析が可能となっている点である。結果は、P2Y12阻害薬単剤治療はDAPT継続に比べ心血管イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント)を増加させることなく(2.95%対3.27%)、大出血を有意に減少させた(0.89%対1.83%)。サブグループ解析においては急性冠症候群と慢性冠症候群で結果は一貫していた。一方、性別に関しては女性においてP2Y12阻害薬単剤治療により心血管イベントは有意に抑制され(HR,0.64)、性別とP2Y12阻害薬単剤治療の心血管イベント抑制効果の間に有意の交互作用を認めた。しかしながらこの交互作用を説明する理論的根拠が不足しており、これは仮説形成の認識にとどめるべき所見であろうと思われる。結論として著者らは「現在得られるエビデンスをトータルにみて、本研究の結果は冠動脈血行再建後の抗血栓療法におけるパラダイムシフトを支持し、PCI後1~3カ月以降のDAPTの中心的役割に疑問を呈するものである」と結んでいる。本研究において重要なことは、単剤のP2Y12阻害薬として用いられた薬剤の大部分は新規でより強力な抗血小板作用を有するチカグレロルであるが本剤は日本の実地臨床ではほとんど使用されておらず、また日本で広く使用されているクロピドグレルの単剤治療を受けた患者は比較的少数であった点である。実際に本研究で対照薬としてクロピドグレルを用いたDAPTを受けた患者では新規P2Y12阻害薬単剤治療による大出血減少効果はみられなかった。クロピドグレルを用いたDAPTが一般的となっている日本において、心血管イベントを増やすことなく大出血を減少させる至適な単剤抗血小板薬を規定するためにはさらなる研究が必要であると思われる。 1. Watanabe H, et al. JAMA. 2019;321(24):2414-2427.
イングランドの住民5,400万人以上を対象とした全国規模のコホート研究に用いる電子医療記録の連結 データ資源
イングランドの住民5,400万人以上を対象とした全国規模のコホート研究に用いる電子医療記録の連結 データ資源
Linked electronic health records for research on a nationwide cohort of more than 54 million people in England: data resource BMJ. 2021 Apr 7;373:n826. doi: 10.1136/bmj.n826. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【目的】データの安全性およびプライバシーを確保し、国民の信頼を維持しながら、COVID-19および心血管疾患に関する全人口を対象とした研究を可能にする新たなイングランドの電子医療記録(EHR)資源について説明すること。 【デザイン】国民保健サービス(NHS)の個別記録を連結したデータ資源であり、NHS Digitalの新たなTrusted Research Environment内でのみアクセス可能である。 【設定】EHRに登録されているプライマリケア受診記録、病院受診記録、死亡登録、COVID-19臨床検査結果および地域の調剤データ。今後、専門医による集中治療、心血管系データおよびCOVID-19ワクチンデータも連結する計画がある。 【参加者】2020年1月1日時点で生存しており、イングランドのNHS総合診療医に登録されている患者5,440万例。 【measures of interest】2020年1月1日から10月31日までのCOVID-19確定例または疑い例の診断、心血管系疾患(脳卒中または一過性脳虚血発作の発症および心筋梗塞の発症)および全死因死亡。 【結果】連結したコホートはイングランドの人口の96%以上を対象としている。国民の個別データを連結することにより、全人口の約95%に当たる国民の年齢、性別および民族に関するデータが揃っている。脳卒中や一過性脳虚血発作の既往歴がなかった約5,330万例のうち、98,721例が2020年1月1日から10月31日の間に脳卒中または一過性脳虚血発作を発症した。このうち30%がプライマリケアのみ、4%が死亡登録のみに記録されていた。心筋梗塞の既往歴がなかった約5,320万例のうち、6万2,966例が追跡中に心筋梗塞を発症した。このうち8%がプライマリケアのみ、12%が死亡登録のみに記録されていた。約95万9,470例がCOVID-19確定または疑いと診断された(プライマリケアデータ714,182例、病院診療記録126,349例、COVID-19臨床検査データ50,504例)。58%がプライマリケアおよびCOVID-19臨床検査データに記録されていたが、15%がプライマリケアのみ、18%がCOVID-19臨床検査データのみに記録されていた。 【結論】この全人口規模の資源は、主要なデータの網羅性を最大限に活用し、心血管系事象およびCOVID-19診断を確認するために個別データを連結する重要性を示している。この資源は当初、COVID-19および心血管系疾患に関する研究の支援と臨床診療および公衆衛生のために構築されたが、さまざまな研究に広げることができる。 第一人者の医師による解説 EHRで遅れる日本 普及にはデータ共有・活用の重要性について国民の理解が必須 島田 直樹 国際医療福祉大学基礎医学研究センター教授 MMJ. December 2021;17(6):189 EHR(electronichealthrecord)は、患者の診断、治療、検査結果、生活習慣などが電子化された電子健康記録である。EHRの普及を国家政策として推進する国は今世紀になって増えており、特に英国では英国国民保健サービス(NHS)のもとで医療が一元的に管理されていることもあり、2017年時点でEHRの普及率は97%に達している。EHRの利点は、これらのデータを医療機関が共有・活用できることだが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が始まった当初の英国では、研究者はEHRにアクセスすることはできず、解析できなかった。この課題を解決するために、NHSDigitalとBritishHeartFoundationDataScienceCentreが協力して、新しい研究環境(NHSDigitalTrustedResearchEnvironment[TRE]forEngland)を構築した。この研究環境を介して研究者は、プライマリケア、病院エピソード、死亡登録、COVID-19検査結果、地域の薬局の調剤データなどが連結されたEHRにアクセスすることが可能になった。NHSの一般診療施設(GP)によって登録された、2020年1月1日時点で生存している5440万人、英国人口の96%以上のデータが集約されている。本論文では、このデータの利用例として、COVID-19の診断記録、脳卒中・TIA・心筋梗塞の発生、全死因死亡について、プライマリケア、死亡登録などの各データベースからの報告割合を評価している。日本におけるEHR政策は諸外国に比べて遅れている。その理由として、導入・運用・維持にコストがかかること、EHRサービスを提供するベンダー間で仕様の違いが大きく、データを連結するためのコストがかかること、が挙げられている。さらに、日本では個人情報保護の意識が強く、データの不正利用に対する警戒心が強い点も重要である。筆者は、指定難病患者が医療費助成を申請する際に提出する臨床調査個人票のデータを利用した疫学研究を実施している。以前は、厚生労働科学研究費を取得していれば、目的外使用申請によって、比較的容易にデータを使用することができた。しかし、2015年に難病法が施行されてからは、きわめて面倒な手続きが必要となった。運用フロー図、リスク分析・対応表、運用管理規定、自己点検規定、さらには本人確認・本人所属確認の写しまで提出しなくてはならず、非常に時間と手間がかかっている。日本においてEHRが普及するためには、データの共有・活用の重要性を国民が正しく理解することが必須である。
喘息患者の医療利用を減らしQOLを改善する自己管理介入 系統的レビューおよびネットワークメタ解析
喘息患者の医療利用を減らしQOLを改善する自己管理介入 系統的レビューおよびネットワークメタ解析
Self-management interventions to reduce healthcare use and improve quality of life among patients with asthma: systematic review and network meta-analysis BMJ. 2020 Aug 18;370:m2521. doi: 10.1136/bmj.m2521. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】3通りの自己管理モデル(集学的個別管理、定期的支援および最小支援)と自己監視モデルを通常治療および教育を比較し、喘息の医療資源利用を減らしQOLを改善するのに最も効果的な方法を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビューおよびメタ解析。 【データ入手元】2000年1月から2019年4月までのMedline、Cochrane Library、CINAHL、EconLit、Embase、Health Economics Evaluations Database、NHS Economic Evaluation Database、PsycINFおよびClinicalTrials.gov。 【レビュー方法】喘息の自己管理方法数種類を検討した無作為化比較試験。主要評価項目は、医療資源の利用(入院または救急外来受診)およびQOLとした。ランダム効果を用いたベイズネットワークメタ解析から、標準化平均差(SMD)の要約および95%信頼区間を推定した。異質性および出版バイアスを評価した。 【結果】文献1178件から、計2万7767を検討した試験105試験を解析対象とした。医療資源利用の観点からみると、集学的個別管理(SMD -0.18、95%CI -0.32~-0.05)および定期的支援がある自己管理(-0.30、-0.46~-0.15)が通常治療より有意に良好だった。QOLは、定期的支援がある自己管理のみが、通常治療と比較して統計的有意な便益が示された(SMD 0.54、0.11~0.96)。思春期の小児・小児(5~18歳)を検討した試験で、定期的支援がある自己管理のみが有意な便益を示した(医療資源の利用:SMD -0.21、-0.40~-0.03、QOL:0.23、0.03~0.48)。集学的個別管理(SMD -0.32、 -0.50~-0.16)および定期的支援がある自己管理(-0.32、-0.53~-0.11)が、試験開始時に重度の喘息症状がある患者の医療資源利用削減効果が最も高かった。 【結論】このネットワークメタ解析から、定期的支援がある自己管理で、喘息の重症度に関係なく医療資源の利用率が低下し、QOLが改善することが示唆された。今後、医療に投資することで、計2時間以上の支援を提供し患者の自己管理能力を養い、複雑な疾患がある患者の集学的個別管理を可能にすべきである。 第一人者の医師による解説 支援濃度の目安やリモート支援も可能な点が示され 実地臨床に有益 松本 久子 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学准教授 MMJ. February 2021;17(1):18 喘息は世界で3.3億人以上が罹患し、年間25万人が喘息死する(1)など、社会経済上大きな負荷となる疾患である。吸入ステロイド薬の定期吸入により、喘息死は減少したものの、世界的にみると喘息の影響はいまだ大きい。喘息のより良いケアには、患者に喘息の知識を与えるだけでは不十分であり、患者の自己管理を促す介入が推奨されてきた。この介入の概要は「知識・手技の習得や精神的・社会的資源の支援、患者教育・指導により、患者自身が健康状態を自己管理できるようにすること」(2)である。しかし具体的にどの程度の支援が有用かなどのエビデンスはこれまでなかった。 本研究では、3種類の自己管理モデル(集学的個別管理[主に対面式]、定期的支援、最小支援)やセルフモニタリングモデル(症状やピークフロー値のモニタリングなど。悪化時の自己対処の指導は含まない)を通常ケアと比較し、どのモデルが最も医療資源の使用(入院または救急受診)を減らし、喘息患者の生活の質(QOL)を改善させるかを解析した。定期的支援とは、喘息の状態や治療内容の聞き取り・見直しのための医療者による定期的なコンサルト(計2時間以上)であり、最小支援とは2時間未満の支援である。Medlineなど9つのデータソースをもとに、2000年以降の自己管理モデルに関する無作為化対照試験について系統的レビューとベイジアンネットワークメタ解析を行った。1,178本の論文から105試験(27,767人、介入期間中央値8カ月)が解析された結果、医療資源使用については、集学的個別管理(標準化平均差-0.18;95 % CI,-0.32~-0.05)と定期的支援(-0.30;-0.46~-0.15)で通常ケアよりも有意に抑制されていた。QOLは定期的支援(0.54;0.11~0.96)のみが通常ケアよりも良好であった。小児・思春期例の検討では、医療資源使用、QOLとも定期的支援のみが有用であった。重症喘息例の医療資源使用抑制には、集学的個別管理と定期的支援が最も有用であった。 喘息自己管理についての最大規模のメタ解析である本研究から、医療者からの定期的支援により自己管理が促されれば、重症度を問わず喘息増悪による医療資源の使用を抑制でき、患者QOLの改善につながる可能性が示された。必要な支援濃度の目安が示された点、またリモートでも可能な支援であることが示され、実地臨床に有益な情報と考えられる。 1. Masoli M, et al. Allergy. 2004;59(5):469-478. 2. Wilson SR, et al. J Allergy Clin Immunol. 2012;129(3 Suppl):S88-123.
転帰不良リスクがある患者に対象を絞ったリハビリによる人工膝関節全置換後の転帰改善効果 無作為化比較試験
転帰不良リスクがある患者に対象を絞ったリハビリによる人工膝関節全置換後の転帰改善効果 無作為化比較試験
Targeting rehabilitation to improve outcomes after total knee arthroplasty in patients at risk of poor outcomes: randomised controlled trial BMJ. 2020 Oct 13;371:m3576. doi: 10.1136/bmj.m3576. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】人工膝関節全置換後の転帰不良が予測される患者に対象を絞った場合、漸進的な外来理学療法が、単回理学療法や自宅での運動主体の介入より優れた転帰をもたらすかを評価すること。 【デザイン】並行群間無作為化比較試験。 【設定】術後の理学療法を提供する英国の二次および三次医療機関13施設。 【参加者】術後6週時に、オックスフォード膝スコアで人工膝関節全置換後の転帰が不良のリスクがあると判定した変形性膝関節症患者334例。163例を理学療法士主導の外来リハビリ、171例を自宅での運動主体の介入に割り付けた。 【介入】理学療法士が全例をレビューし、6週間にわたる18回の理学療法士主導の外来リハビリ(1週間ごとにプログラムを修正する漸進的目標指向型の1対1の機能リハビリ)または理学療法士のレビュー後在宅での運動を軸にした介入(理学療法士の漸進的介入なし)を実施した 【主要評価項目】52週時のOxford膝スコア群間差4点を主要評価項目とし、臨床的意義があると考えた。術後14、26、52週時に測定した疼痛および機能の患者報告転帰を副次評価項目とした。 【結果】334例を無作為化した。8例が追跡不能であった。介入の遵守率が85%を超えていた。52週時のOxford膝スコアの群間差は1.91点(95%CI -0.18-3.99)で、外来リハビリ群の方が良好だった(P=0.07)。全測定時点のデータを解析するとOxford膝スコアの群間差は2.25点で臨床的意義がなかった(同0.61-3.90、P=0.01)。52週時やそれ以前の測定時点での平均疼痛(0.25点、-0.78-0.28、P=0.36)および疼痛悪化(0.22点、-0.71-0.41、P=0.50)の副次評価項目に群間差は見られず、転帰に対する満足度(オッズ比1.07、95%CI 0.71-1.62、P=0.75)および介入後の機能(4.64秒、95%CI -14.25-4.96、P=0.34)にも差がなかった。 【結論】人工膝関節全置換後の転帰不良リスクがある患者に実施する外来の理学療法士主導のリハビリに、理学療法士1名のレビューと自宅での運動を軸にした介入に対する優越性はなかった。主要評価項目および副次評価項目にも臨床的意義のある差は認められなかった。 第一人者の医師による解説 人工膝関節全置換術後の医療資源の提供計画に 再考の余地を与える研究 島田 洋一 秋田大学副学長・大学院整形外科学講座教授 MMJ. April 2021;17(2):57 人工膝関節全置換術(TKA)は、末期変形性膝関節症に対して最も多く施行される手術で、今後も件数の増加が予想されている。この手術は、痛みを軽減し、身体機能を改善するのに効果的だが、約20%の患者で術後の結果に不満が残ると言われており、満足度を向上させるのに理学療法は非常に重要である。しかし、現在、明確なガイドラインは存在せず、術前に、術後成績の予測は困難であることが明らかになっている。 本論文で報告された無作為化並行群間比較試験(TRIO試験)では、術後早期(6週間)時、機能やパフォーマンスの低く、痛みのレベルが高い、単純なタスクを実行するのが難しい患者334人の参加者のうち、163人は6週間のセラピスト主導の漸進的な入力ありの外来リハビリテーションに、171人は在宅運動ベースで、漸進的な入力なしのプロトコルに割り付けられ、主に患者立脚型臨床成績Oxford knee score(OKS)を比較した。 Intention-to-treat(ITT)解析では、術後1年OKS群間差の調整平均は1.91(95%信頼区間[CI],0.18~3.99)であり、セラピスト主導群で高値となった(P=0.07)。両群ともにOKSは臨床的に意味のある4点以上改善した。全時点(術後14、26、52週)のデータを解析しても群間差は2.25点であった(95% CI, 0.61~3.90;P=0.01)。Timed up go test(椅子から立ち上がり、3m先の目印を回って、再び椅子に座るまでの時間を測定)では有意差がなかった。1年後の満足度について群間差はなかったが、セラピスト主導群では疼痛軽減と身体活動を行う能力に対する満足度が有意に高値であった。 TKA術後リハビリテーションのプロトコルや提供方法に関する医学的根拠は依然として不足しており、最善のTKA術後の理学療法と、行政や保険者による医療サービスへの適切な資金提供の根拠が依然として不明瞭である。本研究では、転帰不良リスクが高い患者層を選択的にリクルートして、TKA術後理学療法において積極的に外来でセラピスト主導のリハビリテーションを促進する明らかな利点がないことが明らかになった。単に患者に高リスク群であることを認識させ、理学療法士による在宅運動に基づくレジメンの指導を通じてハンズオフリハビリテーションを提供するだけで、外来でのセラピスト主導のリハビリテーションと同等の結果を得るのに十分である可能性がある。
腎移植の免疫抑制を制御性T細胞 第I/IIa相臨床試験
腎移植の免疫抑制を制御性T細胞 第I/IIa相臨床試験
Regulatory T cells for minimising immune suppression in kidney transplantation: phase I/IIa clinical trial BMJ. 2020 Oct 21;371:m3734. doi: 10.1136/bmj.m3734. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】腎移植後の自己内在性制御性T細胞(nTreg)注入による免疫バランスの再形成の安全性および実行可能性を評価すること、有効性が低い割に有害事象があり直接的および間接的コストも高い高用量免疫抑制薬を減量できる可能性を見きわめること。有益な概念実証モデルで、容易で安定した製造、過剰免疫抑制の危険、標準治療薬との相互作用および炎症性環境での機能の安定性などのnTreg治療の課題を検討すること。 【デザイン】医師主導単施設nTreg用量漸増第I/IIa相臨床試験(ONEnTreg13)。 【設定】ONE Study内のCharité大学病院(ドイツ・ベルリン、EUが資金提供)。 【参加者】生体ドナー腎移植レシピエント(ONEnTreg13、11例)および対応する参照群(ONErgt11-CHA、9例)。 【介入】腎移植7日後にCD4+ CD25+ FoxP3+ nTregを0.5、1.0、2.5-3.0×106個/体重kgのいずれかの用量を静脈内投与し、その後48週後まで3剤併用免疫抑制療法から低用量タクロリムス単独療法へと段階的に減量した。 【主要評価項目】主要臨床的および安全性評価項目は、60週時の複合評価項目とし、さらに3年間追跡した。評価には、生検で確認した急性拒絶反応の発生、nTreg注入による有害事象の評価、過剰免疫抑制の徴候などを含めた。移植腎機能を副次評価項目とした。付随する研究に包括的な探索的バイオマーカーのポートフォリオを含めた。 【結果】全例で、腎臓移植2週間前に採取した末梢血40-50mLから十分な量、純度、機能のnTreg細胞が作製できた。3通りのnTreg用量漸増群いずれでも用量規制毒性を認めなかった。nTregおよび参照群の3年後同種移植片生着率はいずれも100%で、臨床および安全性に関する特徴もほぼ同じだった。nTreg群の11例中8例(73%)が単剤による安定した免疫抑制を達成した一方で、参照群では標準的な2剤または3剤併用による免疫抑制療法を継続していた(P=0.002)。従来のT細胞活性化は低下し、nTregが体内でポリクローナルからオリゴクローナルT細胞受容体レパートリーに変化した。 【結論】自己nTregの投与は、腎移植後に免疫抑制療法を実施している患者でも安全で実行可能であった。この結果は、Tregの有効性をさらに詳細に評価することの必要性を裏付け、移植および免疫病理学での次世代nTregアプローチの開発の基盤となるものである。 第一人者の医師による解説 腎移植後の免疫抑制療法の減少のため 今後の実用化に期待 越智 敦彦 亀田総合病院泌尿器科・腎移植科医長 MMJ. April 2021;17(2):53 免疫抑制療法の進歩により腎移植後の長期腎生着率の成績は向上したが、その半面で長期の免疫抑制薬の使用による感染症、悪性腫瘍、心血管障害の発症や薬剤の腎毒性による移植腎機能障害などが問題となった。そこで長期腎生着とともに免疫抑制薬の最少化が課題となっている。これまでの研究により、内在性制御性T細胞(nTreg)に固形臓器移植後の拒絶反応を遅延、防止する働きがあることが示されている。すでに末梢血、臍帯血、または胸腺から十分な量と純度のTregが作製できることも報告されている。しかし、腎移植後の免疫抑制療法へのnTregの導入には容易で安定したnTreg製造手順の作成と、安全性の確立のためnTreg投与による過剰免疫抑制の危険性、標準薬剤との相互作用などを明らかにする必要があった。 本論文は、自己血液中から作製したnTregの腎移植後投与の安全性と有効性について検討した医師主導型単施設nTreg用量漸増第I/IIa相臨床試験(ONEnTreg13試験)の報告である。生体腎移植のレシピエント11例をnTreg投与群とし、以前行われた試験(ONErgt11-CHA試験)の9例を参照群とすることで比較した。nTreg投与群では腎移植手術の2週間前に40~50mLの末梢血からnTreg(CD4+CD25+FoxP3+)を作製し、腎移植の7日後に体重(kg)あたり0.5、1.0、または2.5~3.0×106個の細胞を静脈内へ単回投与した。移植後に3剤の免疫抑制薬(プレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス)を開始し、48週かけて低用量のタクロリムス単剤へと漸減した。臨床所見および安全性の複合主要評価項目には、生検で確認された急性拒絶反応の発生率、nTreg投与に関連する有害作用および過剰免疫抑制の徴候が含まれ、移植後60週目に評価し、さらに3年間の追跡調査を行った。また移植腎の機能を副次評価項目とした。結果では、すべての患者で十分な量と純度、機能のあるnTregの作製が可能であった。nTreg用量を漸増した3つの投与群において用量規定毒性は確認されなかった。3年後の移植腎生着率はnTreg投与群、参照群ともに100%であり、臨床所見および安全性のデータに差を認めなかった。nTreg投与群では11例中8例(73%)でタクロリムス単剤での安定した免疫制御が達成されたが、参照群では標準的な2剤以上の免疫抑制療法が継続された(P=0.002)。 本研究はまだ症例数が少なく、臨床での実用化には今後さらにデータの蓄積が必要であるが、腎移植後の従来の免疫抑制療法に対して新しい知見をもたらす研究と考えられる。
COVID-19重症患者の院内心停止 多施設共同コホート研究
COVID-19重症患者の院内心停止 多施設共同コホート研究
In-hospital cardiac arrest in critically ill patients with covid-19: multicenter cohort study BMJ. 2020 Sep 30;371:m3513. doi: 10.1136/bmj.m3513. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者の院内心停止および心肺蘇生の発生率、危険因子および転帰を推定すること。 【デザイン】多施設共同コホート研究。 【設定】米国の地理的に離れた病院68施設の集中治療科。 【参加者】検査で確定したCOVID-19重症患者(18歳以上)。 【主要評価項目】集中治療室(ICU)入室後14日以内の院内心停止および院内死亡。 【結果】COVID-19重症患者5019例のうち14.0%(5019例中701例)が院内心停止を来し、57.1%(701例中400例)に心肺蘇生を実施した。院内心停止を来した患者は、院内心停止がない患者と比べて高齢で(平均年齢63[標準偏差14]歳 vs. 60[15]歳)、併存疾患が多く、ICU病床数が少ない病院に入院していた傾向にあった。心肺蘇生を受けた患者は、受けなかった患者と比べて若年齢であった(平均年齢61[標準偏差14]歳 vs. 67[14]歳)。心肺蘇生時によく見られた波形は、無脈性電気活動(49.8%、400例中199例)および心静止(23.8%、400例中95例)であった。心肺蘇生を受けた患者400例中48例(12.0%)が生存退院し、わずか7.0%(400例中28例)に退院時神経学的所見が正常または軽度の障害があった。年齢によって生存退院率に差があり、45歳未満で21.2%(52例中11例)であったのに対し、80歳以上では2.9%(34例中1例)であった。 【結論】COVID-19重症患者に心停止がよく見られ、特に高齢患者で生存率が不良である。 第一人者の医師による解説 若年者では助かる見込みが高く 医療従事者の安全確保し標準的蘇生行為の実施を 遠藤 智之 東北医科薬科大学救急・災害医療学教室准教授 MMJ. April 2021;17(2):45 集中治療室(ICU)で治療を要する重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の予期せぬ院内心停止の頻度と予後に関する報告は、本研究発表前までは、武漢の1施設151例とニューヨークの1施設31例の報告に限られていた。重症COVID-19患者が心停止に陥った場合、心肺蘇生法(CPR)施行前の個人防護具(PPE)装着に時間を要し、CPRの遅れが患者転帰に影響しうる。また医療従事者にとってはCPRによるエアロゾル発生が感染のリスクとなる。心停止に陥るリスクが高く、CPRを行っても救命の見込みが乏しい患者では、事前に患者・家族と医療チーム内で協議を行い、無益な蘇生行為を差し控えるという意思決定が尊重されるだろう。このような議論を行う際、リアルワールドでの院内心停止例の疫学情報が必要となる。 本研究は、2020年3月4日~6月1日に米国68病院のICUに入室した重症COVID-19患者のレジストリデータを解析した多施設共同研究である。登録期間はデキサメタゾン治療の普及前である。ICU入室14日以内の予期せぬ心停止患者について、薬物療法、人工呼吸器、腎代替療法、血液データ、バイタルサイン、併存症、修正 SOFAスコア、CPRで使用した薬剤などのデータを解析した。結果は、ICU入室患者5,019人中701人(14%)が院内心停止を来し、そのうち93.2%が死亡した。院内心停止例の57.1%がCPRを受け、残りは心停止時にDNACPR(Do Not Attempt Resuscitation)コードであった。CPR施行例の33.8%で心拍再開が得られ、12%は病院退院、7%はCPC(cerebral performance category)スコア1/2であった。45歳未満の生存率は21.2%で、80歳以上の2.9%に比べ有意に高かった。初期調律は無脈性電気活動49.8%、心静止23.8%、心室細動3.8%、心室頻拍8.3%であり、心停止の原因は非心原性(呼吸由来や血栓症)である可能性が高いと考えられた。ICU入室から心停止までの期間中央値は7日であり、CPR施行例は若年者に多く、平均CPR実施時間は10分であった。ICUベッドが少ない(50床未満)の病院では死亡率が高く、非心停止例に比べて心停止例は心血管危険因子を有し、血液データが不良、2剤以上の血管収縮薬を投与されていた。日本と異なる患者背景として、3分の2以上がBMI30以上の肥満であった。高齢者はCPRされないことが多く、生存率も低かった。 このようなリアルワールドでの院内心停止のデータは、重症COVID-19患者とその家族との終末期ケアの議論に有益な情報である。対象患者は肥満が多く、そのまま日本のICU患者に当てはめることはできないが、若年者では重症COVID-19であっても助かる見込みが高く、医療従事者の安全を確保しつつ標準的蘇生行為を行う重要性を示している。
若年成人の高血圧と長期心血管イベントの関連 系統的レビューとメタ解析
若年成人の高血圧と長期心血管イベントの関連 系統的レビューとメタ解析
Association between high blood pressure and long term cardiovascular events in young adults: systematic review and meta-analysis BMJ. 2020 Sep 9;370:m3222. doi: 10.1136/bmj.m3222. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】高血圧がある若年成人の後の心血管イベントリスクを評価し、定量化すること。 【デザイン】系統的レビューとメタ解析。 【データ入手元】開始からの2020年3月6日までMedline、EmbaseおよびWeb of Scienceを検索した。ランダム効果モデルを用いて相対リスクを統合し、95%CIを推定した。絶対リスク差を計算した。制限3次スプラインモデルで血圧と個々の転帰の間の用量反応関係を評価した。 【試験の適格基準】血圧上昇が認められる18~45歳の成人患者の有害転帰を調査した試験を適格とした。主要転帰は、全心血管イベントの複合とした。副次転帰として、冠動脈疾患、脳卒中および全死因死亡を調べた。 【結果】若年成人約450万例から成る観察研究17件を解析の対象とした。平均追跡期間は14.7年であった。至適血圧の若年成人と比べると、正常血圧の若年成人の心血管イベントリスクが高かった(相対リスク1.19、95%CI 1.08~1.31、1000人年当たりのリスク差0.37、95%CI 0.16~0.61)。血圧分類と心血管イベントリスク上昇との間に、段階的かつ漸進的な関連が認められた(正常高値血圧:相対リスク、95%CI 1.22~1.49、1000人年当たりのリスク差0.69、95%CI 0.43~0.97、第1度高血圧:1.92、1.68~2.19、1.81、1.34~2.34、第2度高血圧:3.15、2.31~4.29、4.24、2.58~6.48)。冠動脈疾患および脳卒中でほぼ同じ結果が得られた。血圧上昇による心血管イベントの人口寄与割合は、全体で23.8%(95%CI 17.9~28.8%)であった。心血管イベント1件を予防するための1年間の必要治療数は、正常血圧で2672(95%CI 1639-6250)、正常高値血圧で1450(1031~2326)、第1度高血圧で552(427~746)、第2度高血圧で236(154~388)と推定された。 【結論】若年成人の血圧が上昇すると、後の心血管イベントリスクがわずかに上昇すると思われる。血圧低下療法の便益の根拠は少ないため、積極的な介入に慎重になるべきであり、さらに詳細な調査が求められる。 第一人者の医師による解説 治療必要数が多く介入には検討が必要 一般的な運動・生活指導が重要 山岸 敬幸 慶應義塾大学医学部小児科教授 MMJ. April 2021;17(2):48 高血圧と心血管イベントリスクの関連は以前から指摘されているが、先行研究の大多数は中高年以上を対象としている。若年成人の高血圧の有病率が上昇している昨今、高い血圧に経年的に曝されることにより、その後の人生における心血管イベントのリスクが上昇するかどうかを知るために、若年層を対象とした研究が必要である。 そこで本研究では、血圧上昇を有する18~45歳の若年成人の有害事象を調査した候補論文57,519編から17件の観察コホート研究が選択されメタ解析が行われた。対象人数は計4,533,292人(1研究あたり3,490人~2,488,101人)、男女の割合は17試験の平均でそれぞれ72.5%、27.5%(研究8件は対象が男性のみ)、平均追跡期間は14.7年(4.3~56.3年)だった。血圧は2018年の欧州ガイドラインを基準として、以下の5カテゴリーに層別化された:最適血圧(収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満)、正常血圧(120~129、80~84mmHg)、正常高めの血圧(130~139、85~89mmHg)、グレード1の高血圧(140~159、90~99mmHg)、グレード2の高血圧(160mmHg以上、100mmHg以上)。 本研究の成果として、第1に血圧の層別化と心血管イベントリスクの間に段階的・連続的な関連が観察された。すなわち、血圧の段階が上がるごとに、連続的に主要評価項目である心血管イベント、ならびに副次評価項目である冠動脈疾患と脳卒中、全死亡のリスクが上昇していた。地域差はなかったが、年齢は30歳超でより顕著だった。第2に高血圧の人口寄与危険割合は高く、若年成人の心血管イベント全体の約4分の1を占めていた。一方、解析された研究17件のデザインには無視できない異質性が認められ、血圧の測定方法も統一されていなかった。母集団の年齢層、治療の状態、高血糖、高尿酸血症、脂質異常症の有無などを含めて、層別化および感度分析では統計学的な異質性を減らすことはできなかった。また、対象がすべて男性の研究と男女混合の研究の結果を合わせて解析したため、偏りが生じたおそれもある。ただし、性別の層別分析により、血圧上昇と心血管イベントリスク上昇の関連に男女差がないことは確かめられた。 重要な点として、心血管イベントリスクは正常血圧でも上昇することが判明した。比較的低いリスクではあるが、最適血圧と比較すると正常血圧のリスクも無視することはできない。また、収縮期血圧と拡張期血圧は独立して心血管イベントリスクに関連するため、若年成人では両方に注意する必要がある。臨床的意義として介入の是非については、治療必要数(NNT)が中高年層に比べ多いことから、慎重に検討すべきであると結論している。一般的な運動・生活指導が重要と思われる。
2型糖尿病寛解を目的とした低炭水化物食および超低炭水化物食の有効性および安全性 既掲載・未掲載を問わない無作為化試験データの系統的レビュー
2型糖尿病寛解を目的とした低炭水化物食および超低炭水化物食の有効性および安全性 既掲載・未掲載を問わない無作為化試験データの系統的レビュー
Efficacy and safety of low and very low carbohydrate diets for type 2 diabetes remission: systematic review and meta-analysis of published and unpublished randomized trial data BMJ. 2021 Jan 13;372:m4743. doi: 10.1136/bmj.m4743. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】2型糖尿病患者に用いる低炭水化物食(LCD)と超低炭水化物食(VLCD)の有効性と安全性を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビューおよびメタ解析。 【データ入手元】開始から2020年8月25日までのCENTRAL、Medline、Embase、CINAHL、CABおよび灰色文献。 【試験選択】2型糖尿病成人患者を対象に、12週間以上のLCD(炭水化物1日130g未満または1日の総摂取カロリー2000kcal当たりに占める炭水化物の割合26%未満)およびVLCD(1日の総摂取カロリーに占める炭水化物の割合10%未満)を評価した無作為化試験を適格とした。 【データ抽出】糖尿病寛解(HbA1c 6.5%未満または空腹時血糖7.0nmol/L未満、糖尿病治療薬の使用問わず)、体重減少、HbA1c、空腹時血糖および有害事象を主要評価項目とした。健康関連のQOLおよび生化学的データを副次評価項目とした。全論文および転帰を個別に抽出し、追跡6カ月時および12カ月時のバイアスリスクおよびGRADEシステムを用いて根拠の確実性を評価した。ランダム効果メタ解析を用いて、推定リスクと95%信頼区間を算出した。臨床的重要性を明らかにするために事前に決定した最小重要差に従って転帰を評価し、バイアスリスクおよび事前に設定した下位集団7群を基に異質性を調べた。交互作用の有意性検定を用いて評価したあらゆる下位集団の効果を5点の信頼性チェックリストの対象とした。 【結果】検索で、文献1万4759編と試験23件(1357例)を特定し、評価項目の40.6%をバイアスリスクが低いと判定した。6カ月時、対照食と比べると、LCDの糖尿病寛解率(HbA1c 6.5%未満と 定義)が高かった(133例中76例(57%)v 131例中41例(31%)、リスク差0.32、95%信頼区間0.17~0.47、試験8件、264例、I2=58%)。一方で、HbA1c 6.5%未満かつ治療薬不使用を寛解の定義とすると、効果量が小さく、有意性がなくなった。信用度の基準を満たした下位集団の評価から、インスリン使用者を含む試験でLCDの寛解が著明に低下することが示唆された。12カ月時の寛解に関するデータが少なく、効果量が小さかったり、糖尿病リスクがわずかに上昇したりと幅があった。6カ月時に体重減少、トリグリセリドおよびインスリン感受性で臨床的に重要な大幅な改善が見られたが、12カ月時に消失した。信用性があると考えられた下位集団の評価を基にすると、VLCDは、制限が弱いLCDよりも6カ月時の体重減少の有効性が低かった。しかし、この効果は食事法の遵守で説明できた。つまり、遵守率が高いVLCD患者では、遵守率の低いVLCD患者を検討した試験よりも臨床的に重要な体重減少が見られた。6カ月時のQOLに有意差はなかったが、12カ月時に、臨床的に重要ではあるが有意性がないQOLおよび低比重リポ蛋白コレステロールの悪化が見られた。それ以外に、6カ月時および12カ月時の有害事象や血中脂質に両群の有意差や臨床的な重要性は認められなかった。 【結論】確実性が中程度ないし低度の科学的根拠を基にすると、6カ月間のLCD遵守によって有害な転帰がない糖尿病の寛解をもたらすと思われる。欠点に、以前から続く糖尿病寛解の定義に関する議論に加えて、長期的なLCDの有効性、安全性および食事満足度がある。 第一人者の医師による解説 日本の日常臨床への導入・定着が重要 求められる継続性も含めた糖質制限食指導の国内研究 山田 悟 北里大学北里研究所病院・糖尿病センター長 MMJ. April 2021;17(2):52 糖質制限食ほど毀誉褒貶の激しい食事法はないであろう。インスリンの発見(1921年)以前は、糖尿病治療といえば極端な糖質制限食しかなかったが、インスリン療法の普及とともに糖質摂取の自由化が進み、20世紀後半には脂質制限食の流布に伴い糖質制限食は民間療法とのイメージが定着した。これが21世紀になり2型糖尿病や肥満症の食事療法として復権し、その意義が(再)確立されたというのが歴史的流れである。 今回の研究は、その流れに沿うもので、2型糖尿病に対する糖質制限食の有効性を無作為比較試験23件(3件は日本で実施)のメタ解析で確認した。私は共著者だが、2019年に筆頭著者のGoldenberg氏らから研究への参加を打診された時には、正直、気乗りしなかった。すでに米国糖尿病学会(ADA)によって糖質制限食は血糖改善に対して最もエビデンスが実証された食事法であるとされ(1)、私が知るだけで20本以上の糖質制限食に関する無作為比較試験のメタ解析が存在し(2)、評価は確定済みと感じたからである。しかし、Goldenberg氏らは、2型糖尿病の寛解(HbA1c 6.5%未満を達成すること)という既報にはなかったアウトカムを設定するという。それで私もチームに参画した。 解析の結果、糖質制限食による6カ月後における寛解の有意な増加が示された。2型糖尿病は進行性の疾患であるとされる中、患者に対する朗報となろう。糖尿病の寛解以外でも、有意な有害作用の増加なく、体重、中性脂肪、インスリン抵抗性の改善が確認された。2型糖尿病は血糖のみならず多面的な介入を必要とする疾患であるとされる中、これらも患者にとって福音となろう。 そして、本研究でもう1つ重要なことが示された。それは、6カ月後の体重減量について極端な糖質制限食は緩やかな糖質制限食よりも効果が弱かったこと、あるいは、12カ月後の時点で糖尿病の寛解に有意差がなくなっていたことである。すなわち、どんなに優れた食事療法でも、遵守率や継続性に問題があれば、有効性は減弱してしまうと解釈できる。 世界的には糖質制限食の2型糖尿病に対する有効性や安全性が確立済みの中、今後、日本の日常臨床にいかに導入・定着させるかが大事である。そのためには、継続性も含めた糖質制限食指導についての国内研究が求められよう。それがあってこそ、かつてはあまりに研究数が少なすぎてできなかった、日本人を対象にした糖尿病食事療法についての無作為比較試験のメタ解析が可能になるであろう(3)。 1. Evert AB, et al. Diabetes Care. 2019; 42(5): 731-754. 2. 山田悟 . 公衆衛生 . 2019; 83(12): 870-878. 3. Yamada S, et al. Nutrients. 2018; 10(8): 1080.
限局性前立腺がん患者の15年間のQOL転帰 オーストラリアの住民対象前向き研究
限局性前立腺がん患者の15年間のQOL転帰 オーストラリアの住民対象前向き研究
Fifteen year quality of life outcomes in men with localised prostate cancer: population based Australian prospective study BMJ. 2020 Oct 7;371:m3503. doi: 10.1136/bmj.m3503. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】限局性前立腺がんの診断後15年間の治療関連QOLの変化を評価すること。 【デザイン】追跡期間15年以上の住民対象前向きコホート研究。 【設定】オーストラリア・ニューサウスウェールズ州。 【参加者】ニューサウスウェールズ州の有権者名簿から無作為に募集し、New South Wales Prostate Cancer Care and Outcomes Study(PCOS)に登録した70歳未満の限局性前立腺がん患者1642例と対照786例。 【主要評価項目】12項目のShort Form Health Survey(SF12)尺度、カリフォルニア大学ロサンゼルス校前立腺がん指数、拡張前立腺がん複合指標(EPIC-26)を用いて、15年間で7回の測定時に一般的な健康状態と疾患別QOLを自己申告した。比較群とした対照との調整平均差を算出した。ベースラインスコアから標準偏差(SD)の3分の1と定義した最小重要差をもって、調整平均差の臨床的重要性を評価した。 【結果】15年時、全治療群が高水準の勃起不全を報告し、62.3%(積極的監視・経過観察、53例中33例)から83.0%(神経非温存根治的前立腺摘除、141例中117例)までと治療によって異なるが、いずれも対照群(42.7%、103例中44例)よりも高率であった。1次治療に外部照射法、高線量率近接照射療法、アンドロゲン除去療法を実施した患者に腸管障害の報告が多かった。外科手術を施行した患者で特に尿失禁の自己申告率が高く、アンドロゲン除去療法を実施した患者で、10~15年時に排尿障害の報告が増加した(10年目:調整平均差-5.3、95%信頼区間-10.8~0.2、15年目:-15.9、-25.1~-6.7)。 【結論】初期に積極的治療を受けた限局性前立腺がん患者で、前立腺がん診断を受けていない対照と比べて、自己報告による長期QOLが全般的に悪化した。根治的前立腺摘除術を受けた患者では特に、長期的な性生活転帰が不良であった。治療方法を決定する際、このような長期的QOLを考慮すべきである。 第一人者の医師による解説 長期的な性機能低下と尿失禁に関して 事前に十分な情報提供が必要 米瀬 淳二 公益財団法人がん研究会有明病院泌尿器科部長 MMJ. April 2021;17(2):55 前立腺がんは、前立腺特異抗原(PSA)検診により早期発見が増え男性のがんの中で肺がんに次いで2番目に高い罹患率となった。転移のない限局がんの予後は一般的に良好で、10年の疾患特異的生存率は本論文にもあるように、ほぼ100%である。良好な生存率の陰には不必要な過剰治療が生活の質(QOL)を低下させるという反省があり、低リスク限局性前立腺がんには監視療法が行われるようになった(1)。一方、米国では過剰な早期診断は益よりも害をもたらすとして2012年にPSA検診は有害とする勧告が出され、近年転移性前立腺がんの再増加が観察されている(2)。 住民に対するPSA検診の是非はさておき、先進国では毎日多くの男性が限局性前立腺がんと診断される。この早期発見が害ではなく益をもたらすためには、早期限局がんの治療選択において本論文のようなQOL調査の結果が参考になる。限局性前立腺がんの治療には、そのリスクに応じて、即座に根治治療を行わない監視療法から、前立腺全摘術、外照射、小線源治療、内分泌療法などの選択肢がある。これまでの前立腺がん治療後のQOL調査と同様、前立腺全摘では、尿失禁、性機能障害が長期にわたって継続し、外照射では腸のわずらわしさが他の治療より強く、小線源では排尿のわずらわしさが強く、時間経過とともに性機能低下はやがて受け入れられていくという結果が示されている。この点は実臨床での印象どおりで、やはりそうかと思わせるものである。 一方、本論文の限界としては初回治療後の追加治療に関する情報がないことである。監視療法も15年の間には半数以上が何らかの介入を受けている可能性があり、外照射のほとんどは一時的なホルモン療法が先行および併用されていると考えられる。このため、これらの初回治療群のQOLの結果の解釈に注意が必要と思われる。例えばホルモン療法群に腸のわずらわしさが多いのは放射線療法を受けた患者が多く含まれていると考えられ、逆に外照射の早期の性機能低下は内分泌療法併用の影響もあるのではないかと推測される。もちろん前立腺全摘術も再発時には追加治療を受けているのでどの群でも複数治療の影響があると思われる。しかし初回治療の選択から追加治療を含めての長期QOLは貴重なデータであり、治療選択の際には提示すべき結果である。ただあくまで個人的見解であるが、15年先のQOLよりもより短期間のQOLを重視する患者さんも多いと感じている。 1. Chen RC, et al. J Clin Oncol. 2016;34(18):2182-2190. 2. Butler SS, et al. Cancer. 2020;126(4):717-724.
妊娠中の高気温環境と早産、出生時低体重および死産のリスクとの関連 系統的レビューおよびメタ解析
妊娠中の高気温環境と早産、出生時低体重および死産のリスクとの関連 系統的レビューおよびメタ解析
Associations between high temperatures in pregnancy and risk of preterm birth, low birth weight, and stillbirths: systematic review and meta-analysis BMJ. 2020 Nov 4;371:m3811. doi: 10.1136/bmj.m3811. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】妊娠中の高気温曝露によって早産、出生児低体重および死産のリスクが上昇するかを評価すること。 【デザイン】系統的レビューと変量効果メタ解析。 【データ入手元】2018年9月までに検索し、2019年8月に更新したMedlineおよびWeb of Science。 【選択試験の適格基準】高気温曝露と早産、出生時低体重および死産の関連を検討した臨床試験。 【結果】1万4880件の記録と論文175報の全文をふるいにかけた。27カ国で実施した研究70件を対象とし、27カ国中7カ国が低・中所得国であった。47件中40件で、高気温の方が低気温よりも早産の発生頻度が高かった。曝露を熱波、摂氏1度の上昇、温度閾値で分類した。変量効果メタ解析で、早産のオッズが摂氏1度上昇当たり1.05倍(95%CI 1.03~1.07)、熱波の期間中に1.16倍(同1.10~1.23)になった。28件中18件で、高気温に出生時体重減少との関連が見られたが、統計学的な異質性が大きかった。死産を検討した全8件で、気温と死産の関連が認められ、気温摂氏1度上昇当たり死産が1.05倍(同1.01~1.08)になった。社会経済的地位が低い女性や極端な年齢の女性で、気温と転帰の関連が最も大きかった。複数の温度単位や時間差のある解析のため、試験間や状況間の比較が困難であった。 【結論】要約効果量がいくぶん小さかったが、高気温曝露はよく見られ、その転帰は人々の健康を左右する重要な因子である。社会経済的地位と試験転帰のつながりから、低・中所得国でリスクが最も大きくなることが示唆される。地球温暖化に伴う気温上昇が子どもの健康に重大な影響を及ぼすと思われる。 第一人者の医師による解説 妊婦への気温影響の解明で 周産期医療成績の改善につながる可能性 林田 慎哉 総合母子保健センター愛育病院新生児科部長・副院長 MMJ. June 2021;17(3):89 世界の平均気温は上昇を続けており、異常気象だけでなく公衆衛生面への影響も懸念される。体温調整が困難となりやすい妊婦ではその影響は強く、冷房を利用できない環境にいる低所得層ではさらに強まる可能性がある。過去にも妊娠への気温の影響に関する系統的レビューは存在したが、対象の論文数や地域が限られていた。本論文では日本を含む27カ国の研究70件でメタ解析を行った。 早産に関しては、熱波(最高気温が平均最高気温を5℃以上上回る日が5日間以上連続)にさらされると1.16倍増加し、平均気温1℃上昇に伴って1.05倍増加していた。熱波曝露の時期に関しては、分娩直前に強く影響するという報告が多いが、妊娠初期でも影響するという報告もあった。当然予想されることであるが、カナダや英国など高緯度の国からは関連がないという報告が中心であった。同一国内での社会的階層による差をみると、高所得層より低所得層で影響が強いという報告が中心であった。また女児の方が気温上昇により早産となりやすい傾向がみられた。 低出生体重児に関しては、気温上昇により頻度が上昇したとする報告が多かった。出生体重を変数とした報告では、温度上昇で減少するという報告が多かったが、増加するという報告も複数みられた。全般的に出生体重への影響は、早産に比べるとやや不明確であった。 胎児死亡に関しては、8件の報告すべてで気温上昇や熱波による頻度の上昇が確認された。特に熱波にさらされた1週間以内で影響が強かった。日本からも興味深い報告がされている。1968年からの44年間で平均気温の上昇に伴い、胎児死亡に占める男児の割合が上昇し、出生男児の割合が低下したというものである。母体年齢上昇の影響も考えられるが、前後の年より平均気温が1~2℃高かった2010年の夏に男児の胎児死亡の割合が過去最高となっていたことから、気温上昇が直接影響している可能性が示唆された。 日本の全出生に占める極低出生体重児の割合は、20年近く0.7%台で安定しているが、沖縄県は1%と明らかに高く、鹿児島・宮崎・高知県なども0.9%前後と他の道府県に比べ高い水準で推移している。筆者は医療システムや切迫早産の管理方針の差などが原因と考えていたが、実は平均気温の差も影響しているのかもしれない。地球温暖化そのものに対して産科や新生児科ができることは少なそうだが、気温の妊婦への影響をより深く解明することで、周産期医療成績の改善につなげられるかもしれない。
年齢および民族別の高血圧1次薬物治療と血圧低下 英国プライマリケアのコホート研究
年齢および民族別の高血圧1次薬物治療と血圧低下 英国プライマリケアのコホート研究
First line drug treatment for hypertension and reductions in blood pressure according to age and ethnicity: cohort study in UK primary care BMJ. 2020 Nov 18;371:m4080. doi: 10.1136/bmj.m4080. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】英国(UK)高血圧臨床ガイドラインで年齢と民族性に基づき推奨される治療を現在日常診療で実施される降圧治療にそのまま置き換えることができるかを検討すること。 【デザイン】観察コホート研究。 【設定】2007年1月1日から2017年12月31日までの英国のプライマリケア。 【参加者】アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシン受容体遮断薬(ACEI/ARB)、カルシウム拮抗薬(CCB)、チアジド系薬の新規使用者。 【主要評価項目】年齢(55歳未満と55歳以上)、民族性(黒人と非黒人)で層別化したACEI/ARBとCCBの新規使用者で、追跡12、26、52週時の拡張期血圧の変化量を比較。CCB新規使用者とチアジド系薬新規使用者の比較を副次的解析とした。負の転帰(帯状疱疹)を用いて残存交絡を検出し、一連の正の転帰(期待される薬剤の効果)を用いて、予想した関連がこの試験デザインで特定できるかを明らかにした。 【結果】追跡調査の最初の1年間で、ACEI/ARB新規使用者8万7440例、CCB新規使用者6万7274例、チアジド系薬新規使用者2万2040例を組み入れた(1例当たりの血圧測定回数中央値4回[四分位範囲2~6回])。糖尿病がない非黒人では、55歳未満で、CCB使用によって12週時の拡張期血圧がACEI/ARB使用よりも1.69mmHg低下し(99%信頼区間-2.52~-0.86)、55歳以上では0.40mmHg低下した(-0.98~0.18)。糖尿病がない非黒人の年齢をさらに細かく6つに分類した下位集団解析では、75歳以上でのみ、CCB使用による拡張期血圧低下度がACEI/ARB使用よりも大きかった。糖尿病がない患者のうち、黒人ではCCB使用による拡張期血圧低下度がACEI/ARB使用よりも大きく(低下量の差2.15mmHg[-6.17~1.87])、これに対応する非黒人の低下血圧値の差は0.98mmHg(-1.49~-0.47)だった。 【結論】糖尿病がない非黒人では55歳未満と55歳以上ともに、CCM新規使用とACEI/ARB新規使用で同等の血圧低下が得られた。糖尿病がない黒人では、CCB新規使用者の方がACEI/ARB新規使用者よりも数値的に血圧が大きく低下したが、両年齢群ともに信頼区間の重複が見られた。この結果から、現在英国で高血圧の1次治療に用いられているアルゴリズム法からは、十分な血圧低下が得られないと思われる。治療推奨に特定の適応を設けることを考慮できるであろう。 第一人者の医師による解説 生活習慣が血圧に大きく影響 降圧薬の選択に年齢や人種は重要視されなくなる 平和 伸仁 横浜市立大学附属市民総合医療センター腎臓・高血圧内科部長 MMJ. June 2021;17(3):82 高血圧は、脳心血管病死亡の最大の危険因子である。そこで、脳心血管病を予防するため高血圧治療ガイドラインが作成されているが、各国のエビデンスや重視するポイントにより、異なった推奨がなされる場合がある。英国のガイドラインでは、(2型)糖尿病でない高血圧患者の第1選択薬として、黒人では年齢に関係なくCa拮抗薬(CCB)を推奨している。一方、非黒人では55歳未満でアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 (ACEI)またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を、55歳以上ではCCBを推奨している。 本研究は、英国のプライマリケアにおける新規に降圧薬(CCB、ACEI、ARB、サイアザイド系利尿薬 )を開始する高血圧患者を対象として、降圧薬による治療前、治療12、26、52週間後の収縮期血圧を確認し、英国ガイドラインによる第1選択薬の推奨が適切かどうかについて同国の臨床データベースを用いたコホート研究である。 87,440人のACEI/ARB、67,274人のCCB、22,040人のサイアザイド新規使用者が抽出され1年間観察された。降圧効果の比較は、傾向スコアマッチング法を用いて検討された。まず、年齢基準が妥当かについての検討がなされた。非糖尿病で55歳未満の患者では、治療12週でACEI/ARBよりもCCBによる治療の方が降圧効果が高く、収縮期血圧の低下が大きかった(―1.69 mmHg;95% CI, ―2.52~―0.86)。しかし、26週および52週後には、両群間で差を認めていない。55歳以上においても、ACEI/ARBとCCBの間で降圧効果の差を認めていない。年齢をカテゴリー化して検討すると、75歳以上の後期高齢者でのみ、CCBがACEI/ARBよりも全経過を通じて降圧効果が高かった。次いで、人種に関する検討がなされ、CCBとACEI/ARBの降圧度は、黒人において12週でCCBの方が大きかったが、その後は消失している。なお、黒人において、12週および26週でCCBの降圧効果はサイアザイドよりも高かったが、52週後には同等となっている。 2004年から英国のガイドラインでは55歳を年齢の「しきい値」としていたが、世界のガイドラインではあまり採用されていない考え方である。今回の研究結果もこの「しきい値」を支持しない結果であった。また、人種による差もあまり大きな影響を与えていないことが示された。現代ではさまざまな人種が混じり合っていること、そして、生活習慣が血圧に大きく影響を与えることから、降圧薬を選択する際に、年齢や人種はあまり重要視されなくなる可能性がある。日本における積極的適応疾患のない高血圧患者への第1選択薬は、CCB、ARB、ACEIに加えて、少量のサイアザイド系利尿薬であることを再確認しておいていただきたい。
利益相反と臨床ガイドライン、諮問委員会報告、意見記事、記述レビューに見られる好意的な推奨との関連 系統的レビュー
利益相反と臨床ガイドライン、諮問委員会報告、意見記事、記述レビューに見られる好意的な推奨との関連 系統的レビュー
Association between conflicts of interest and favourable recommendations in clinical guidelines, advisory committee reports, opinion pieces, and narrative reviews: systematic review BMJ. 2020 Dec 9;371:m4234. doi: 10.1136/bmj.m4234. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】利益相反と臨床ガイドライン、諮問委員会報告、意見記事、記述レビューに見られる好意的な推奨との関連を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビュー。 【適格基準】利益相反と臨床ガイドラインや諮問委員会報告、意見記事(論説など)、記述レビューに見られる薬剤や医療機器の好意的な推奨(薬剤の推奨など)との関連を比較した研究。 【データ入手元】PubMed、Embase、Cochrane Methodology Register(開始から2020年2月まで)、参考文献一覧、Web of Scienceおよび灰色文献。 【データ抽出および解析】著者2人が個別にデータを抽出し、研究の方法論的な質を評価した。変量効果モデルを用いて統合相対リスクと95%信頼区間(CI)を推定した(相対リスク1超が、利益相反がある文書に好意的な推奨内容が見られる頻度が、利益相反がない文書よりも高いことを示す)。経済的および非経済的な利益相反を分けて解析し、4分類の文書を分けた解析(事前に予定)と合わせた解析(事後)を実施した。 【結果】臨床ガイドライン106報、諮問委員会報告1809報、意見記事340報および記述レビュー497報を解析した研究21件を対象とした。研究11件から非公開データを受領した(完全データ8件、要約データ3件)。研究15件から、比較した文書は利益相反以外の因子が異なるため、交絡のリスクが示された(異なる集団で異なる薬剤を使用するなど)。経済的利益相反と好意的な推奨の関連の相対リスクは、臨床ガイドラインで1.26(95%CI 0.93~1.69、86件を検討した研究4件)、諮問委員会報告で1.20(同0.99~1.45、629報を検討した研究4件)、意見記事で2.62(同0.91~7.55、284報を検討した研究4件)、記述レビューで1.20(同0.97~1.49、457報を検討した研究4件)だった。4種類の文書を合わせた解析から、この結果が裏付けられた(1.26、1.09~1.44)。専門分野ごとの利益を調査した研究1件で、ガイドラインの著者に放射線科医を含む場合とルーチンの乳がんの定期検診を推奨する場合との関連に関しては、相対リスク2.10(同0.92~4.77、臨床ガイドライン12件)だった。 【結論】著者らは、この結果は、経済的な利益相反に臨床ガイドラインや諮問委員会報告、意見記事(論説など)、記述レビューでの薬剤や医療機器の好意的な推奨との関連があることを示唆するものであると解釈する。このレビューの欠点に、解析対象とした研究に交絡因子があるリスクや文書の種類別の解析に統計誤差がある点がある。非経済的な利益相反が推奨に影響を及ぼすかは明らかになっていない。 第一人者の医師による解説 利益相反の徹底的排除は困難 適切な管理と関係者による自主的情報開示が重要 三浦 公嗣 慶應義塾大学病院臨床研究推進センター教授 MMJ. June 2021;17(3):93 医薬品や医療機器の使用などについて好意的な内容の診療ガイドライン、学会の委員会報告、意見などがあればその製品の販売促進に資することが期待できるし、実際、製薬会社などの営業活動ではそのような資料は頻繁に活用されてきた。学会や研究者としての社会的責任と、企業活動との連携に伴って生じる学会や研究者個人の利益が相反する状態である利益相反の結果として、真実が歪められることはあってはならない。そのため、例えば、携わる専門家の考え方がその内容に大きく関わることになる診療ガイドラインの策定においては、日本医学会が利益相反についての方針を示し、各学会が関係者の利益相反状況を管理するとともに、使用が推奨されている医薬品の製造販売企業が自ら開示している資料をつぶさに見ればそれらの専門家との経済的関係がわかる。一方、診療ガイドライン側から見てその企業と個別の専門家との経済的関係が明示的になることはほとんどないし、ましてや専門家による医薬品などに関する個人的意見について利益相反が管理されることはまずない。 純粋に医学的見地から医師が医薬品を処方するとして、その判断の基礎になる診療ガイドラインが経済的な影響を受けずに、医学的エビデンスに基づいて策定されることは極めて重要なことであり、関係者は襟を正して策定に臨むことが強く求められるが、本論文の著者らは診療ガイドラインなどと策定関係者の利益相反に関係があることが示されたとしている。 さらに、診療ガイドラインなどの基礎となる医学的エビデンスを紡ぐ過程においても利益相反の管理が進められてきた。従来、臨床研究の実施に際しては関与する研究者の利益相反の状況が掌握されてきたが、臨床研究と利益相反に関する不正事案が指摘されたこともあり、2018年に施行された「臨床研究法」では、医薬品や医療機器などの有効性・安全性を明らかにすることを目的とする臨床研究においてはより厳密な利益相反の管理が行われるようになった。 経済活動が高度に進む現代社会において利益相反は必然的に発生しており、それを徹底的に排除することは困難であることから、むしろ適切に管理していることが重要である。その基盤は関係者による自主的な情報開示にあり、それを承知した上で適切な医学的判断などが求められる傾向は一層強まっていくことが予想される。
デンマークの低比重リポ蛋白と全死因および死因別死亡との関連 前向きコホート研究
デンマークの低比重リポ蛋白と全死因および死因別死亡との関連 前向きコホート研究
Association between low density lipoprotein and all cause and cause specific mortality in Denmark: prospective cohort study BMJ. 2020 Dec 8;371:m4266. doi: 10.1136/bmj.m4266. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】一般集団で、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値と全死因死亡との関連、全死因死亡リスクが最も低くなるLDL-C濃度を明らかにすること。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定】デンマークで2003年から2015年の間に組み入れた追跡期間中央値9.4年のコペンハーゲン一般集団研究(Copenhagen General Population Study)。 【参加者】全国デンマーク国民登録システムから無作為に抽出した国民。 【主要評価項目】死亡リスクに関連を示すベースラインのLDL-C値を連続尺度(制限付き3次スプライン)およびCox比例ハザード回帰モデルを用いて先験的に定義した百分位分類で評価した。全死因死亡を主要評価項目とした。死因別死亡(心血管、がん、その他死因による死亡)を副次評価項目とした。 【結果】20-100歳の国民10万8243例のうち1万1376例(10.5%)が対象期間中に死亡した(年齢中央値81歳)。LDL-C値と全死因死亡リスクとの関連はU字形であり、低値および高値で全死因死亡リスクが高かった。LDL-C濃度3.4~3.9mmol/L(132~154mg/dL、第61-80百分位数)と比較すると、全死因死亡率の多変量補正ハザード比は、LDL-C濃度1.8mmol/L未満(70mg/dL未満、第1~5百分位数)で1.25(95%CI 1.15~1.36)、LDL-C濃度4.8mmol/L超(189mg/dL超、第96~100百分位数)で1.15(同1.05~1.27)だった。全死因死亡リスクが最も低いLDL-C値は、全体および脂質低下療法非実施下で3.6mmol/L(140mg/dL)であったのに対して、脂質低下療法実施下では2.3mmol/L(89mg/dL)であった。男女、全年齢層、がんとその他の死因による死亡でほぼ同じ結果が見られたが、心血管死ではこの結果は見られなかった。程度を問わないLDL-C値の上昇で心筋梗塞リスクが上昇した。 【結論】一般集団で、LDL-C低値または高値で全死因死亡リスクが上昇し、全死因死亡リスクが最も低くなるLDL-C値は3.6mmol/L(140mg/dL)であることが明らかになった。 第一人者の医師による解説 軽度上昇で治療開始ではなく アテローム性動脈硬化症の絶対リスクの評価が重要 平田 健一 神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野教授 MMJ. June 2021;17(3):83 LDLコレステロール(LDL-C)は動脈硬化性心血管疾患の危険因子であり、血中LDL-Cの高値は将来の心血管イベント発症のリスクとなることが知られている。また、脂質低下薬によるLDL-Cの低下が将来の動脈硬化性心血管イベントのリスクを低下させることが多くのランダム化比較試験により明らかとなっている。しかし、LDL-Cの値と全死亡率の関係について検討した研究では、結論が一致していない。 本研究では、コペンハーゲン市在住のデンマーク国民を対象とした前向きコホート研究「Copenhagen General Population Study」のデータが用いられた。20〜100歳の市民をランダムに選び、2003〜15年に参加の協力が得られ た108,243人(参加率43%)を登録し、追跡調査を行い、LDL-C値と全死亡率や疾患別死亡率との関連性について検討した。 本研究の結果、アテローム性動脈硬化症のリスクが低いと思われる一般集団において、全死亡のリスクが最も低いLDL-C値は3.6mmol/L(140mg/dL)であり、その値より、LDL-Cが高値や低値となると、全死亡のリスクが上昇し、LDL-C値と死亡率の間にU字型の関係が認められた。これは、動脈硬化症のリスクが低い人においては、LDL-C値は約140mg/dLが至適であることを示すものであり、一般的に考えられているLDL-Cの至適値をかなり上回っていた。がんやその他の死亡率についても同様の結果であった。一方、今までの報告のとおり、LDL-C値の上昇は、心筋梗塞および心筋梗塞による死亡のリスク上昇と強い正の相関を示しており、本研究の妥当性を裏付けていると考えられた。今回は、デンマークの白人の一般集団における結果であるが、脂質低下薬を服用していない若い韓国人を対象とした最近の研究でも本研究と同様の結果が示されている(1) 。 本研究は、「正常で健康な」レベルのLDL-C値を明らかにする重要な研究であり、LDL-C値の軽度な上昇のみで治療を開始するのではなく、脂質低下治療を開始するLDL-C値や時期を決定する際に、アテローム性動脈硬化症の絶対リスクを評価することが重要である。今後、多くの研究で同様の結果が確認された場合、臨床および公衆衛生に重要な影響を及ぼすと思われる。 1. Sung KC, et al. J Clin Med. 2019;8(10):1571.
制御不良の高血圧にデジタル介入を用いた家庭でのオンラインの血圧管理と評価(HOME BP) 無作為化対照試験
制御不良の高血圧にデジタル介入を用いた家庭でのオンラインの血圧管理と評価(HOME BP) 無作為化対照試験
Home and Online Management and Evaluation of Blood Pressure (HOME BP) using a digital intervention in poorly controlled hypertension: randomised controlled trial BMJ. 2021 Jan 19;372:m4858. doi: 10.1136/bmj.m4858. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】HOME BP(Home and Online Management and Evaluation of Blood Pressure)試験は、プライマリケアでの高血圧管理に用いる血圧の自己監視と自己管理指導を組み合わせたデジタル介入を検証することを目的とした。 【デザイン】主要評価項目の自動確認による非盲検無作為化対照試験 【設定】英国の一般診療所76施設。 【参加者】治療しても高血圧制御が不良(140/90mmHg超)でインターネットが利用できる患者622例。 【介入】最小化アルゴリズムを用いて、参加者をデジタル介入を併用した血圧の自己監視(305例)と標準治療(ルーチンの高血圧治療+受診と診療医の裁量による薬剤変更、317例)に割り付けた。デジタル介入によって、患者と医療従事者に血圧結果のフィードバックが送られ、任意で生活様式の助言と動機付けの支援が利用できるようにした。高血圧患者、糖尿病患者、80歳以上の患者の目標血圧値は英国ガイドラインに従った。 【主要評価項目】主要評価項目は、試験開始時の血圧、目標血圧値、年齢および診療所で調整した1年後の収縮期血圧の差(2回目と3回目の測定値の平均)とし、欠損値に多重代入法を用いた。 【結果】1年後、552例(88.6%)からデータが入手でき、残りの70例(11.4%)は補完した。介入群では平均血圧値が151.7/86.4mmHgから138.4/80.2mmHgに、標準治療群では151.7/86.4mmHgから138.4/80.2mmHgに低下し、収縮期血圧の平均差が-3.4mmHg(95%CI -6.1~-0.8mmHg)、拡張期血圧の平均差が-0.5mmHg(同-1.9~0.9mmHg)であった。完全ケース分析では結果が同等であり、両群間の有害事象がほぼ同じであった。試験期間中にかかった費用から、1mmHg低下当たり増分費用効果比が11ポンド(15ドル、12ユーロ、95%CI 6~29ポンド)となった。 【結論】血圧の自己監視を用いた高血圧管理のHOME BPデジタル介入は、標準治療よりも1年後の収縮期血圧制御が良好で、増分費用もわずかであった。プライマリケアで導入するには、臨床現場のワークフローへの統合およびインターネットを利用しない人々がいることを考慮する必要がある。 第一人者の医師による解説 リモート自己血圧モニタに基づく降圧薬治療の呈示で クリニカルイナーシャを改善 石光 俊彦 獨協医科大学腎臓・高血圧内科教授 MMJ. June 2021;17(3):81 高血圧治療において近年のガイドラインでは疾患や病態などに応じた厳格な降圧目標が推奨されているが、英国の成人の30%近く、65歳以上では50%以上が140/90mmHg以上である。一方、さまざまな分野で医療のデジタル化が進められており、高血圧診療においても、インターネットを利用した血圧モニター、生活習慣指導や服薬管理を普 及させることにより、治療成績の向上が期待される。 英国で行われた本論文の研究(HOME BP)では、一般の実地診療医師と血圧コントロール不良(140/90mmHg超)の高血圧患者を対象として、 通常診療とオンラインによるデジタル介入を行った診療による治療効果が比較された。介入群では、オンラインで収集した患者の家庭血圧のデータを アルゴリズムにより評価し、その情報を患者と担当医師にフィードバックするとともに、それに基づいた降圧薬治療の提案や食事、運動、適正体重などの生活指導や服薬指導がインターネットを介して行われた。 12カ月後、通常治療群では平均血圧が151.6/85.3から141.8/79.8mmHgに低下したのに対し、介入群では151.7/86.4から138.3/80.2mmHgと通常治療群に比べ、−3.4/−0.5mmHg降圧が大きかった。サブグループ解析では、デジタル介入による降圧は、67歳未満の群および糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、心血管病などの合併症がない群において大きかった。質問票によると副作用の発現、服薬アドヒアランス、生活の質(QOL)は両群で有意差がなかった。介入に要した費用は患者1人あたり平均38ポンドで、収縮期血圧1mmHgの降圧増加につき11ポンドになった。 日本でも高血圧患者の73%が血圧140/90mmHg以上であり、患者および医療スタッフにおけるクリニカルイナーシャを改善する必要性が認識されている。本研究で試みられた家庭血圧モニターを中心とするオンラインの介入は、特に世界的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行している状況において医療サービスの提供を改善する方策として有用である可能性がある。本研究でも12カ月後の継続率は89%と高く、降圧効果の増強により脳卒中が10〜15%、冠動脈疾患は5〜10%の減少が期待されるとしているが、対象者の大多数が白人であったことや67歳以上の高齢者では有意な降圧効果の増強が認められなかったことなどが、介入の適応を拡大する際に課題となると思われる。今後は、公的データベースを利用した医療費の評価やより長期の検討を行い、ガイドラインや診療報酬の算定に取り入れる方向で進められることが期待される。
持続する咽喉頭異常感の治療に対するプロトンポンプ阻害薬の使用 多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験
持続する咽喉頭異常感の治療に対するプロトンポンプ阻害薬の使用 多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験
Use of proton pump inhibitors to treat persistent throat symptoms: multicentre, double blind, randomised, placebo controlled trial BMJ. 2021 Jan 7;372:m4903. doi: 10.1136/bmj.m4903. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】持続する咽喉頭異常感の治療に対するプロトンポンプ阻害薬(PPI)使用を評価すること。 【デザイン】実用的二重盲検プラセボ対照無作為化試験。 【設定】英国の耳鼻咽喉科外来クリニック8施設。 【参加者】持続する咽喉頭異常感がある18歳以上の患者346例。登録施設とベースラインの症状重症度(軽度または重度)によって、172例をランソプラゾール、174例をプラセボに割り付けた。 【介入】ランソプラゾール30mg 1日2回投与とマッチさせたプラセボ1日2回投与に二重盲検下で(1対1の割合で)割り付け、16週間投与。 【主要評価項目】16週時の症状に対する効果を主要評価項目とし、逆流症状指数(reflux symptom index:RSI)総スコアで測定することとした。12カ月時の症状に対する効果、生活の質および喉の外観を副次評価項目とした。 【結果】初めに適格基準を検討した患者1427例のうち346例を組み入れた。被験者の平均年齢は52.2(SD 13.7)歳、196例(57%)が女性であり、受診時、162例(74%)に重度の症状があった。この患者背景は両治療群で均衡がとれていた。主要解析は、14-20週間の期間内に主要評価項目の評価が完了した220例を対象とした。ベースラインの両治療群の平均RSIスコアがほぼ同じであり、ランソプラゾール群22.0点(95%CI 20.4~23.6)、プラセボ群21.7点(同20.5~23.0)であった。16週時、両群のスコアに改善(RSIスコアの低下)が見られ、ランソプラゾール群17.4点(95%CI 15.5~19.4)、プラセボ群15.6点(同13.8~17.3)であった。治療群間に統計的に有意な差は認められず、施設およびベースラインの症状重症度で調整した推定差が1.9点であった(同-0.3~4.2点、P=0.96)。いずれの副次評価項目でもランソプラゾールにプラセボを上回る便益は見られず、12カ月時のRSIスコアはランソプラゾール群16.0点(同13.6~18.4)、プラセボ群13.6点(同11.7~15.5)、推定差が2.4点(-0.6~5.4点)であった。 【結論】持続する咽喉頭異常感に対するPPIを用いた治療の便益に根拠は認められなかった。16週間の治療後および12カ月時の経過観察時のRSIスコアがランソプラゾール群とプラセボ群でほぼ同じであった。 第一人者の医師による解説 咽喉頭異常感の原因はさまざまであるため PPIの効果は限られる 川見 典之(講師)/岩切 勝彦(主任教授) 日本医科大学消化器内科学 MMJ. August 2021;17(4):113 咽喉頭異常感は耳鼻科や消化器内科、またプライマリケアでもしばしば遭遇する患者の訴えの1つである。咽喉頭異常感の原因はさまざまであり、喉頭内視鏡検査や上部消化管内視鏡検査で器質的な異常所見を認めない場合、咽喉頭逆流(LPR)を含めた胃食道逆流症(GERD)、喉頭アレルギー、甲状腺疾患、globusと呼ばれる咽喉頭の異常感などが鑑別として挙げられる(1)。この中で最も多い原因がGERDとの報告もあり、治療としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使用することが多いが症状が改善する患者は一部で、咽喉頭異常感に対するPPIの効果に関して一定の見解は得られていない。 本論文は持続する咽喉頭症状(嗄声、咽頭痛、globus、後鼻漏、咳、閉塞感など)に対するPPIの症状改善効果を評価するために、英国8施設の耳鼻咽喉科外来で実施されたランダム化試験の報告である。持続する咽喉頭症状を有し、喉頭内視鏡検査にて声帯ポリープや腫瘍などを認めなかった患者346人に対しランソプラゾール 30mgまたはプラセボを1日2回16週間投与し症状を評価した。主要評価項目はreflux symptom index(RSI)質問票で測定した16週時点の総 RSIスコアのベースラインからの変化量とした。副次評価項目は12カ月時点の症状、生活の質(QOL)、咽喉頭所見とした。その結果、6週時点のRSIスコアはランソプラゾール群とプラセボ群ともにベースラインより低下したが、両群間に有意差はなかった。12カ月時点のRSIスコアに関しても、両群間で有意差はなかった。結論として、今回の試験では持続する咽喉頭症状に対するPPIの症状改善効果を示すことはできなかった。 日本の「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021改訂第3版」では、胃食道逆流は咽喉頭炎、咽喉頭症状、咳嗽の原因となることがあるが、PPIや外科的逆流防止手術の効果は確定していないと記載されている。また、機能性消化管障害の国際分類であるRome IVの中で、機能性食道疾患の1つとしてglobusが挙げられており、薬物療法の有用性は低いと記載されている(2)。咽喉頭異常感を有する患者の中でPPIの効果が期待できるのは酸逆流が原因の場合であり、近年多チャンネルインピーダンス pH(MII-pH)検査を用いたLPRの評価が報告されているが、十分な検討は行われていない。今後は咽喉頭異常感の病態を明らかにするとともに、病態に則した治療法が求められる。 1. 折舘伸彦 他 . 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 . 2020;92 (5) :213-217. 2. Aziz Q et al. Gastroenterology. 2016;150 (6):1368-1379.
韓国の思春期女子で検討したヒトパピローマウイルスワクチン接種と重篤な有害事象の関連
韓国の思春期女子で検討したヒトパピローマウイルスワクチン接種と重篤な有害事象の関連
Association between human papillomavirus vaccination and serious adverse events in South Korean adolescent girls: nationwide cohort study BMJ. 2021 Jan 29;372:m4931. doi: 10.1136/bmj.m4931. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】韓国の思春期女子のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と重篤な有害事象の関連を明らかにすること。 【デザイン】コホート研究。 【設定】2017年1月から2019年12月までの全国予防接種登録情報システムと全国保健情報データベースをひも付けた大規模データベース。 【参加者】2017年に予防接種を受けた11~14歳の女子44万1399例。38万2020例がHPVワクチンを接種し、5万9379例がHPVワクチンを接種していなかった。 【主要評価項目】内分泌疾患、消化器疾患、心血管疾患、筋骨格系疾患、血液疾患、皮膚疾患および神経疾患など重篤な有害事象33項目を評価項目とした。主解析にコホートデザイン、2次解析に自己対照リスク期間デザインを用いた。両解析ともにHPVワクチン接種後1年間を各転帰のリスク期間とした。主解析では、ポワソン回帰分析を用いてHPVワクチン接種群とHPV未接種群を比較した発生率および調整率比を推定し、2次解析では条件付きロジスティック回帰分析を用いて調整相対リスクを推定した。 【結果】事前に規定した33項目の有害事象は、コホート解析では、橋本甲状腺炎(10万人年当たりの発生率:ワクチン接種群52.7 vs. 36.3、調整率比1.24、95%CI 0.78~1.94)、関節リウマチ(同168.1 vs. 145.4、0.99、0.79~1.25)などにはHPVとの関連は認められなかったが、例外として片頭痛リスクの上昇が認められた(10万人年当たりの発生率:ワクチン接種群1235.0 vs ワクチン未接種群920.9、調整率比1.11、95%CI 1.02~1.22)。自己対照リスク期間を用いた2次解析から、HPVワクチン接種に片頭痛(調整率比0.67、95%CI 0.58~0.78)も含めた重篤な有害事象との関連がないことが示された。追跡調査期間にばらつきがあったり、ワクチンの種類が異なったりしても、結果に頑健性があった。 【結論】HPVワクチン接種50万回以上の全国規模のコホート研究では、コホート研究および自己対照リスク期間解析いずれを用いても、HPVワクチン接種と重篤な有害事象の間の関連性を裏付ける科学的根拠が認められなかった。病態生理学および対象母集団を考慮に入れ、片頭痛に関する一貫性のない結果を慎重に解釈すべきである。 第一人者の医師による解説 思春期女子へのHPVワクチン接種と 重篤な有害事象の関連を示すエビデンスはない 中野 貴司 川崎医科大学小児科学教授 MMJ. August 2021;17(4):124 著者らは、韓国の大規模データベースを用いて11~14歳の思春期女子におけるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と重篤な有害事象との関連を評価した。重篤な有害事象として以下の33種類の疾病・病態を選択した:(1)内分泌疾患(グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、1型糖尿病)、(2)消化器疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、膵炎)、(3)心血管疾患(レイノー病、静脈血栓塞栓症、血管炎、低血圧)、(4)筋骨格疾患と全身性疾患(強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、若年性特発性関節炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)、(5)血液疾患(血小板減少性紫斑病、IgA血管炎)、(6)皮膚疾患(結節性紅斑、乾癬)、(7)神経疾患(ベル麻痺、てんかん、ナルコレプシー、麻痺、片頭痛、ギラン・バレー症候群、視神経炎、神経痛と神経炎、脳内出血、錐体外路・運動障害)、(8)結核。接種ワクチンの種類は、接種者382,020人中、4価ワクチン295,365人、2価ワクチン86,655人であった。HPVワクチン非接種群59,379人は日本脳炎ワクチンまたはTdapワクチンの接種を受けた。平均観察期間は、HPVワクチン接種群とHPVワクチン非接種群でそれぞれ407,400人・年と60,500人・年であった。 1次解析ではコホート解析、2次解析では自己対照リスク間隔解析を用いた。両解析とも接種後1年のリスク期間を設定し、HPVワクチン接種群と非接種群について、1次解析では有害事象ごとに発生率と調整比率をポアソン回帰を用いて推定した。2次解析では条件付きロジスティック回帰分析を用いて、調整相対リスクを推定した。 33種類の重篤な有害事象について、1次解析の結果では片頭痛を除いてHPVワクチンとの関連を認めなかった。片頭痛についてはHPVワクチン接種群で有意なリスク上昇が観察されたが、95%信頼区間(CI)は1に近かった(1.11/100,000人・年;95% CI, 1.02 ~ 1.22)。2次解析の結果は、片頭痛(調整相対リスク, 0.67;95%CI, 0.58~0.78)を含めて、すべての有害事象についてHPVワクチン接種群における有意なリスク上昇は観察されなかった。感度解析やサブグループ解析の結果もおおむね合致していた。 以上より、HPVワクチン接種と重篤な有害事象の関連を示すエビデンスはないと考えられた。ただし片頭痛については一部の解析でリスク上昇が認められ、その病態生理と関心のある集団を考慮して、注意して解釈する必要がある。
一過性脳虚血性発作後の脳卒中リスクを評価するカナダTIAスコアの前向き検証とABCD2およびABCD2iとの比較 多施設共同前向きコホート研究
一過性脳虚血性発作後の脳卒中リスクを評価するカナダTIAスコアの前向き検証とABCD2およびABCD2iとの比較 多施設共同前向きコホート研究
Prospective validation of Canadian TIA Score and comparison with ABCD2 and ABCD2i for subsequent stroke risk after transient ischaemic attack: multicentre prospective cohort study BMJ. 2021 Feb 4;372:n49. doi: 10.1136/bmj.n49. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】前回作成したカナダTIAスコアを検証し、救急科を受診した一過性脳虚血性発作患者の新たなコホートでその後の脳卒中リスクを層別化すること。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定】5年以上追跡したカナダの13の救急科。 【参加者】一過性脳虚血発作または軽微な脳梗塞で救急科を受診した連続成人患者7607例。 【主要評価項目】主要評価項目は、7日以内の脳梗塞または頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術の施行とした。副次評価項目は、7日以内の(頸動脈内膜剥離術および頸動脈ステント留置術の有無別の)脳梗塞とした。7日後および90日後の電話による追跡調査でQuestionnaire for Verifying Stroke Free Status(脳卒中症状の有無を検証する質問票)を用いた。初回の救急科受診を知らせずにおいた3人の脳卒中専門医が全評価項目を判定した。 【結果】7607例のうち108例(1.4%)が7日以内に脳梗塞を発症し、83例(1.1%)に7日以内に頚動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術を施行し、そのうち9例には頸動脈内膜剥離術と頸動脈ステント留置術いずれも施行した。カナダTIAスコアは7日以内の脳梗塞、頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術のリスクを低リスク(0.5%以下、区間尤度比0.20、95%CI 0.09~0.44)、中リスク(リスク2.3%、区間尤度比0.94、0.85~104)、高リスク(リスク5.9%、区間尤度比2.56、2.02~3.25)に層別化し、ABCD2(0.60、0.55~0.64)やABCD2i(0.64、0.59~0.68)よりも正確であった(AUC 0.70、95%CI 0.66~0.73)。7日以内の頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術に関係なく、その後の脳梗塞リスクの結果がほぼ同じであった。 【結論】カナダTIAスコアは、患者の7日以内の脳梗塞リスクを頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術に関係なく層別化し、今や臨床現場での使用の準備が整ったと言える。この検証した推定リスクを管理計画に組み込めば、初回救急外来受診時の入院や調査の時期、専門医への紹介の優先順位付けに関する早期意思決定が改善するであろう。 第一人者の医師による解説 項目多くやや煩雑だが 実臨床への適応はさほど困難ではない 上坂 義和 虎の門病院脳神経内科部長・脳卒中センター長 MMJ. August 2021;17(4):110 一過性脳虚血発作(TIA)は完成型脳梗塞の危険信号として重要である。内科的治療の進歩により以前は4~10%といわれていたTIA後7日以内の脳梗塞発症リスクは現在低下している(1)。TIAで救急外来を受診する患者全員に包括的な検査や入院加療を行うことは、各国の事情にもよるが医療システム上困難なこともある。ABCD2スコアはTIA患者に対する最もよく知られたトリアージツールであるが、前向き検証の結果では低リスクと高リスクの識別能が低いことが指摘されている(2)。 本論文の著者らは、9項目の臨床情報の有無(初回か否か2点、持続時間10分以上2点、頸動脈狭窄の既往2点、抗血小板薬治療3点、歩行障害1点、片側の筋力低下1点、回転性めまい-3点、拡張期血圧110 mmHg以上3点、構語障害ないし失語1点)と4項目の検査所見の有無(心電図での心房細動2点、CT上の脳梗塞[新旧問わない]1点血小板数40万 /μ L以上2点、血糖270 mg/dL以上3点)からなるCanadian TIAスコア(-3~23点)を報告した(3)。 本研究は2012年10月31日~17年5月30日にカナダの13の救急施設に来院した18歳以上 のTIAや軽症の脳梗塞患者7,607人を対象とした前向き研究である。Canadian TIAスコアとABCD2スコアおよび画像情報を加えたABCD2iスコアを算出し、TIA発症後7日以内の脳梗塞および頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術などの血行再建を合わせたものを主要評価項目、TIA発症後7日以内の脳梗塞のみを副次評価項目に設定した。主要評価項目の発生率が1%未満の場合を低リスク、1~5%の場合を中リスク、5%超を高リスクとした。Canadian TIAスコアは低リスク(-3~3点)が全体の16.3%を占め、中リスク(4~8点)は全体の72.1%、高リスク(9点以上)は11.6%を占めた。ABCD2スコア、ABCD2iスコアではいずれも低リスクに分類された患者は皆無であり、3~7%が高リスクで大半が中リスクに分類された。 Canadian TIAスコア自体に頸動脈狭窄に関する項目が含まれており、血行再建に関する層別化能がよいのは当然と考えられるが、脳梗塞だけに限定した副次評価項目においてもCanadian TIAスコアによるリスク層別化能は優れていた。ABCD2スコアに比べ項目が多くやや煩雑ではあるが、救急診療で通常確認している項目からなっており実臨床への適応もさほど困難ではないだろう。 1. Amarenco P, et al. N Engl J Med. 2016;374(16):1533-1542. 2. Perry JJ, et al. CMAJ. 2011;183(10):1137-1145. 3. Perry JJ, et al. Stroke. 2014;45(1):92-100.
COVID-19入院患者のCOVID後遺症 後ろ向きコホート研究
COVID-19入院患者のCOVID後遺症 後ろ向きコホート研究
Post-covid syndrome in individuals admitted to hospital with covid-19: retrospective cohort study BMJ. 2021 Mar 31;372:n693. doi: 10.1136/bmj.n693. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】COVID-19患者の退院後に見られる臓器別障害の割合を、マッチさせた一般集団対照群と比較して定量化すること。 【デザイン】後ろ向きコホート研究。 【設定】英国のNHS病院。 【参加者】COVID-19のため入院し、2020年8月31日までに生存退院した患者4万7780例(平均年齢65歳、男性55%)と、英国内約5000万人の10年間の電子健康記録を元に患者背景と臨床像を正確にマッチさせて抽出した対照群。 【主要評価項目】2020年9月30日までの再入院率(対照群はあらゆる原因による入院)、全死因死亡率、呼吸器疾患、心血管疾患、代謝疾患、腎疾患および肝疾患の診断率。年齢、性別、民族別の率比のばらつき。 【結果】平均追跡期間140日間の間に、急性COVID-19を発症し退院した患者の約3分の1(4万7780例中1万4060例)が再入院し、1割以上(5875例)が退院後に死亡し、マッチさせた対照群と比べると再入院比率が4倍、退院後死亡比率は8倍であった。COVID-19退院患者ではこのほか、呼吸器疾患(P<0.001)、糖尿病(P<0.001)、心血管疾患(P<0.001)の割合が有意に高く、1000人・年当たりでそれぞれ770(95%CI 758~783)、127(同122~132)、126(同121~131)であった。70歳未満の方が70歳以上より、少数民族の方が白人集団よりも率比が高く、呼吸器疾患で最も大きな差が見られた(70歳未満10.5[同9.7~11.4] vs. 70歳以上4.6[同4.3~4.8]、非白人11.4[同9.8~13.3] vs. 白人5.2[5.0~5.5])。 【結論】COVID-19退院患者は、一般集団で予想されるリスクよりも多臓器不全の発生率が高かった。リスクの上昇は高齢者に限らず、民族間でもばらつきがあった。COVID-19後遺症の診断、治療および予防には、臓器や疾患に特化したものよりも統合的なアプローチを要し、危険因子を明らかにするため早急な研究が必要とされる。 第一人者の医師による解説 心臓では高感度トロポニン、MRIなどによる評価と経過観察が望まれる 廣井 透雄 国立国際医療研究センター病院循環器内科 循環器内科診療科長 MMJ. August 2021;17(4):107 英国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に6月14日時点でおよそ460万人が感染、およそ47万人が入院し、約12.8万人が死亡した。院内死亡率は30%と高率であった。ワクチン接種の普及(1回接種率78.9%、2回接種率56.6%)により、新規感染者、死亡者は大きく減少した一方で、“long covid”、“post-covid syndrome”として知られる後遺症が問題となってきた。 今回の英国における後ろ向きコホート研究の報告によると、COVID-19で2020年8月末までに入院し生存退院した平均年齢64.5歳、男性54.9%の47,780人は、一般人口と比較し、男性、50歳以上、貧困地域在住、喫煙歴、肥満または過体重が多く、併存疾患が多い傾向にあった。過去10年の医療記録の50万人から条件(年齢、性別、人種、貧困指数、喫煙、体格指数[BMI]、併存疾患)をマッチさせた対照群との間で、2020年9月末までの再入院率(対照群では全入院)、全死亡率、呼吸器、主要循環器疾患(MACE:心不全、心筋梗塞、脳卒中、不整脈)、糖尿病、慢性腎臓病(ステージ 3~5、透析、腎移植)、慢性肝疾患の診断数を比較検討した。 平均観察期間140日(標準偏差 50日)で、5,875人(12.3%、320.0/1,000人・年)が退院後に死亡、14,060人(29.4%、766.0 /1,000 人・年)が再入院した。対照群ではそれぞれ830人(1.7%、41.3/1,000人・年)、4,385人(9.2%、218.9/1,000人・年)で、COVID-19患者のリスクは7.7、3.5倍であった。退院後に呼吸器疾患を診断された14,140人(29.6%、770.5/1,000人・年)のうち、新規診断 は6,085人(12.7%、538.9/1,000人・年)で、COVID-19患者のリスクはそれぞれ6.0、27.3倍であった。退院後に糖尿病 2,330人(4.9%、126.9/1,000人・年)、MACE 2,315人(4.8%、126.1/1,000人・年)、慢性腎臓病710人(1.5%、38.7/1,000人・年)、慢性肝疾患135人(0.3%、7.2/1,000人・年)と診断され、対照群と比較したリスクはそれぞれ1.5、3.0、1.9、2.8倍であった。すべてのアウトカムは70歳以上が70歳未満より多く、死亡は14.1倍、呼吸器疾患は10.5倍であった。糖尿病以外のアウトカムは非白人より白人で多く、呼吸器疾患は11.4倍であった。 COVIDで入院した米国退役軍人1,775人は、退院60日以内に20%が再入院し、9%が死亡し、本研究でも23%、9%と同様であった(1)。英国のリスクが低い201人でも、肺(33%)、心臓(32%)、腎臓(12%)、肝臓(10%)と障害が多臓器に及ぶ(2)。心臓では、高感度トロポニン、MRI、心エコーの長軸方向ストレイン(GLS)などによる評価と経過観察が望まれる(3)。 1. Donnelly JP, et al. JAMA. 2021;325(3):304-306. 2. Dennis A, et al. BMJ Open. 2021;11(3):e048391. 3. Puntmann VO, et al. JAMA Cardiol. 2020;5(11):1265-1273.
ISARIC WHOプロトコールを用いたCOVID-19入院患者のリスク層別化 4C死亡スコアの開発と検証
ISARIC WHOプロトコールを用いたCOVID-19入院患者のリスク層別化 4C死亡スコアの開発と検証
Risk stratification of patients admitted to hospital with covid-19 using the ISARIC WHO Clinical Characterisation Protocol: development and validation of the 4C Mortality Score BMJ. 2020 Sep 9;370:m3339. doi: 10.1136/bmj.m3339. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため入院した患者の死亡率を予測する実用的なリスクスコアを開発し、検証すること。 【デザイン】前向き観察コホート研究。 【設定】英イングランド、スコットランドおよびウェールズの病院260施設で実施された国際重症急性呼吸器・新興感染症コンソーシアム(ISARIC)世界保健機関(WHO)臨床的特徴プロトコールUK(CCP-UK)試験(ISARICコロナウイルス臨床的特徴評価コンソーシアム[ISARIC-4C]が実施)。2020年2月6日から同年5月20日の間に登録した患者コホートでモデルを訓練し、2020年5月21日から同年6月29日の間に登録した2つ目のコホートで検証した。 【参加者】最終データ抽出の4週間以上前にCOVID-19のため入院した18歳以上の患者。 【主要評価項目】院内死亡。 【結果】3万5463例(死亡率32.2%)を派生データ、2万2361例(死亡率30.1%)を検証データとした。最終的な4C死亡スコアには、病院での初期評価で容易に得られる8項目(年齢、性別、併存疾患数、呼吸数、末梢酸素飽和度、意識レベル、尿素値およびC反応性タンパク)を用いた(スコア0~21点)。4Cスコアは、死亡の識別能が高く(派生コホート:ROC曲線下面積0.79、95%CI 0.78~0.79;検証コホート:同0.77、0.76~0.77)、較正も良好であった(検証コホートのcalibration-in-the-large:0、calibration-slope:1.0)。スコア15点以上の患者(4158例、19%)の死亡率が62%(陽性的中率62%)であったのに対して、スコア3点以下の患者(1650例、7%)の死亡率は1%(陰性的中率99%)であった。識別能は、既存の15種類のリスク層別化スコア(ROC曲線下面積0.61~0.76)よりも高く、COVID-19コホートで開発した他のスコアも識別能が低いものが多かった(範囲0.63~0.73)。 【結論】簡便なリスク層別化スコアを開発し、通常の病院受診時に得られる変数に基づいて検証した。4C死亡スコアは既存のスコアより優れており、臨床上の意思決定に直ちに応用できる有用性が示され、COVID-19入院患者を各管理グループに層別化するのに用いることができる。このスコアをさらに詳細に検証し、他の集団にも応用できるか明らかにする必要がある。 第一人者の医師による解説 一定の外的妥当性はあるが 異なる医療環境での適用は慎重に 加藤 康幸 国際医療福祉大学成田病院感染症科部長 MMJ. August 2021;17(4):106 2019年末以来、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中の国や地域が直面している公衆衛生上の緊急事態である。患者に対する医療はパンデミックにおける社会安定の基盤であり、限られた医療資源を多数の患者に有効に配分するため、臨床判断に役立つ予後予測ツールが求められてきた。 英国(北アイルランドを除く)の260病院が参加した本研究では、2020年2月6日~5月20日に入院したCOVID-19の成人患者35,463人(院内死亡率32.2%)について、事前に設計されたプロトコール(ISARIC-4C)に従って収集された41項目の情報が調査された。機械学習の手法を取り入れた解析により、入院時の8変数(年齢、性別、併存症 の 数、呼吸数、末梢血酸素飽和度、意識状態[Glasgow Coma Scaleスコア]、尿素窒素値、C反応性蛋白値)が死亡リスク関連因子として抽出された。連続変数にはカットオフ値を設けて、実用的な予後予測スコアが開発された(The 4C Mortality Score:0~21点)。 これを2020年5月21日~6月29日に入院し た 成人患者22,361人(院内死亡率30.1 %)を対象に検証したところ、ROC(受信者動作特性曲線)下面積は0.79(95 % 信頼区間 , 0.78~0.79)と良好な値を示した。スコア15点以上の院内死亡率は62%であったが、3点以下では1%であった。予測パフォーマンスは、市中肺炎や敗血症、COVID-19に関する既存の予後予測スコア(SOFA(*)、CURB65、A-DROPなど15種類)より優れていた。 COVID-19に対する有効な薬物療法は現時点で限られるため、医療環境や変異株の出現により、入院患者の予後が大きく左右される可能性がある。このため、本スコアを異なる国や地域、流行時期に単純に当てはめることには慎重であるべきであろう。しかし、すでにフランスやイタリアなどにおいて、本スコアの有用性が報告されていることから、一定の外的妥当性があると考えられる。 研究を主導したInternational Severe Acute Respiratory Infection Consortium(ISARIC)は2009パンデミックインフルエンザの経験を踏まえて、新興感染症の臨床的課題に取り組むことを目的に英国で設立された団体である。大規模な症例数を迅速に解析した本研究には、優れたビジョンと長年の準備があったことに学ぶべきことは多い。 *sequential organ failure assessment
スタチン治療と筋症状 連続無作為化プラセボ対照N-of-1試験
スタチン治療と筋症状 連続無作為化プラセボ対照N-of-1試験
Statin treatment and muscle symptoms: series of randomised, placebo controlled n-of-1 trials BMJ. 2021 Feb 24;372:n135. doi: 10.1136/bmj.n135. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】スタチン服用時に筋症状を経験した患者で、筋肉症状に対するスタチンの影響を明らかにすること。 【デザイン】連続した無作為化プラセボ対照N-of-1試験。 【設定】2016年12月から2018年4月の英国プライマリケア50施設。 【参加者】筋症状を理由にスタチン服用を中止して間もない患者およびスタチン服用中止を検討している患者計200例。 【介入】患者をアトルバスタチン1日1回20mg投与とプラセボに二重盲検化した連続する6つの治療期間(各2カ月)に割り付けた。 【主要評価項目】各治療期間終了時に被験者が視覚的アナログ尺度(0-10)で筋症状を評価した。主要解析では、スタチン投与期間中とプラセボ投与期間中の症状スコアを比較した。 【結果】スタチンとプラセボそれぞれ1期間以上の症状スコアを提出した患者151例を主要解析の対象とした。全体で、スタチン期間とプラセボ期間の筋症状スコアに差はなかった(スタチン-プラセボの平均差-0.11点、95%CI -0.36-0.14、P=0.40)。忍容できない筋症状による脱落は、スタチン期間で18例(9%)、プラセボ期間で13例(7%)だった。試験を完遂した患者の3分の2がスタチンによる長期治療の再開を報告した。 【結論】スタチン服用時の重度筋症状の経験を報告したことがある参加者で、アトルバスタチン20mg投与によるプラセボと比較した筋症状への全体的な影響は認められなかった。試験を完遂した参加者のほとんどが、スタチンによる治療の再開を希望した。N-of-1試験は集団単位で薬物の作用を評価でき、個人の治療の指針となる。 第一人者の医師による解説 ノセボ効果の見える化により、研究参加者の多くがスタチン再開 岡㟢 啓明 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科助教 MMJ. August 2021;17(4):116 クレアチンキナーゼ(CK)上昇を伴う筋炎や横紋筋融解症はスタチン投与に伴い一定の頻度で起きるものの、CK上昇を伴わない軽度な筋症状はスタチンで増えるのか? ノセボ効果(スタチンによって筋症状が増えるかもしれないとの懸念から、偶然の筋症状の原因をスタチンだと思ってしまう)のために、スタチン中止に至ることもあり、特に心血管リスクが高い場合などで、治療上のデメリットになる。 本論文は、スタチンによる筋症状の真偽に答えるべく実施されたN-of-1試験(StatinWISE)の報告である。N-of-1試験は患者内比較試験で、投与期間、プラセボ投与期間をランダムに複数回設定し、1人の患者内で実薬とプラセボの効果を比較、その結果をすべての患者(n)で集計する。本研究では、研究期間12カ月を2カ月 X6回に分け、アトルバスタチン20mgまたはプラセボをそれぞれ3回ずつランダムに割り付けた。対象者は、筋症状が理由でスタチンを中止したか、中止を検討している患者である(CK高値を伴う患者は除外)。なお、70%は心血管疾患既往を有し、スタチン投与が望ましい患者であった。 結果、スタチン vs.プラセボ投与期間の比較では患者評価の筋症状スコアに有意差はなかった。筋症状による投与中止の割合は、スタチン投与期間とプラセボ投与期間で有意差はみられなかった。また、試験終了後、患者に筋症状がスタチン、プラセボどちらの投与期間で起きたのかを知らせた結果、患者の3分の2は今後長期間にわたりスタチンを服用したいと答えた。 今回、CK上昇を伴う筋炎や横紋筋融解症以外の筋症状はスタチンにより有意に増加しているとは言えなかったが、この結果は、最近の他の試験でも裏付けられている(1ー3)。また、本試験では患者の多くがスタチン再開を希望したことから、筋症状が必ずしも薬によるものではないことをこのような方法で理解するのは有用と考えられる。スタチン不耐でスタチン再開を検討したい場合、N-of-1試験の方法は日常臨床にも応用できるのではないかと筆者らは推察している。 他のスタチンや別の用量でも同様な結果が得られるかは不明だが、スタチンによる筋症状が多くの場合ノセボ効果に由来することが示唆された。N-of-1試験デザインが日常臨床でも有用である可能性が示された点でも意義深い。しかし一方で、臨床的には、スタチンとの因果関係がやはり疑われるような、CK上昇を伴わない筋症状にも実際に遭遇する。そのようなケースにも十分注意しながら、本試験の結果を活用することが大切と思われる。 1. Wood FA, et al. N Engl J Med. 2020;383(22):2182-2184. 2. Moriarty PM, et al. J Clin Lipidol. 2014;8(6):554-561. 3. Nissen SE, et al. JAMA. 2016;315(15):1580-1590.
米国の新型コロナウイルス感染症入院患者の死亡予防に用いる予防的抗凝固療法の早期開始:コホート研究
米国の新型コロナウイルス感染症入院患者の死亡予防に用いる予防的抗凝固療法の早期開始:コホート研究
Early initiation of prophylactic anticoagulation for prevention of coronavirus disease 2019 mortality in patients admitted to hospital in the United States: cohort study BMJ. 2021 Feb 11;372:n311. doi: 10.1136/bmj.n311. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】予防的抗凝固療法の早期開始によって、米国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため入院した患者の死亡リスクが低下するかを評価すること。 【デザイン】観察コホート研究。 【設定】大規模な全国統合保健制度、退役軍人省の下で治療を受けている患者の全国コホート。 【参加者】2020年3月1日から7月31日までの間に検査で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確定し、抗凝固薬服用歴がない全入院患者4,297例。 【主要評価項目】主要評価項目は30日死亡率とした。死亡率、抗凝固薬による治療開始(血栓塞栓事象などの臨床的悪化の代用)および輸血を要する出血を副次評価項目とした。 【結果】COVID-19で入院した患者4,297例のうち3,627例(84.4%)が入院から24時間以内に予防的抗凝固療法を受けた。治療した患者の99%以上(3,600例)にヘパリンまたはエノキサパリンを皮下投与していた。入院から30日以内に622例が死亡し、そのうち513例が予防的抗凝固療法を受けていた。死亡のほとんど(622例中510例、82%)が入院中に発生した。逆確率重み付け解析を用いると、30日時の累積死亡率は、予防的抗凝固療法を受けた患者で14.3%(95%CI 13.1~15.5%)、予防的抗凝固療法を受けなかった患者で18.7%(15.1~22.9%)であった。予防的抗凝固療法を受けなかった患者と比べると、予防的抗凝固療法を受けた患者は30日死亡リスクが27%低かった(ハザード比0.73、95%CI 0.66~0.81)。入院中の死亡および抗凝固薬による治療開始にも同じ関連が認められた。予防的抗凝固療法に輸血を要する出血リスク上昇との関連は見られなかった(ハザード比0.87、0.71~1.05)。定量的バイアス解析から、結果が未測定の交絡に対しても頑強であることが示された(30日死亡率の95%CI下限のe-value 1.77)。感度解析の結果も一致していた。 【結論】COVID-19入院患者に対して早期に予防的抗凝固療法を開始すると、抗凝固薬を投与しなかった患者と比べて30日死亡率が低下し、重篤な出血事象リスクの上昇も見られなかった。この結果は、COVID-19入院患者の初期治療に予防的抗凝固療法を推奨するガイドラインを支持する実臨床の強力な科学的根拠を示すものである。 第一人者の医師による解説 軽症入院例では血栓症の合併は少ない 使用される薬剤や人種差にも注意 射場 敏明 順天堂大学大学院医学研究科救急・災害医学教授 MMJ. October 2021;17(5):139 本論文で報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を集積した米国のコホート研究によれば、入院24時間以内に予防量ヘパリンによる抗凝固療法を開始した場合、抗凝固療法を実施しない場合に比べ、30日死亡率が絶対差で4.4%低かった(14.3%[実施群]対18.7%[非実施群];ハザード比、 0.73;95%信頼区間、 0.66?0.81)。一方、出血性有害事象に関しては有意差が認められなかった。今回の研究では患者全体の84.4%に入院24時間以内に抗凝固療法が開始され、使用された抗凝固薬の99.3%がヘパリン製剤(エノキサパリン 69.1%、ヘパリン 30.2%)*であった。死亡の大多数は院内死亡であった。 本研究は退役軍人を対象として実施された全国規模の後方視的コホート研究で、集積 COVID-19患者数は総計11万人を超え、この中からマッチングで選ばれた4,297人において比較が行われている。このような観点からは、実臨床に基づいた研究結果とすることができるが、やはり観察研究であるため治療による転帰の改善という因果関係を検証したものではない。しかし米国では予防的抗凝固療法が8割以上の患者に実施されていることを考えると、非治療群を設定した無作為化対照試験の実施はいまさら困難であることも理解できる。この背景としては、COVID-19では高率に血栓症の合併がみられること、また肺微小循環における血栓形成が呼吸機能の悪化に関わっていることが以前から指摘され(1)、国際血栓止血学会(ISTH)をはじめとして主要な国際機関が早々に予防的抗凝固療法の重要性を啓蒙してきたことなどが挙げられる(2)。よってCOVID-19入院患者に対するヘパリン療法は、基本的に実施が前提であり、研究に関してはすでに予防量と治療量の比較に視点が移っていることは否めない。ちなみに、治療量の有用性は複数の無作為化対照試験で評価されているが、今のところ予防量に比べ明らかな有用性はみられないとする結果が多いようである(3)。一方、今回の研究結果を本邦で解釈するにあたっては、使用される薬剤の種類や人種差などいくつかの点に注意する必要があるが、特に気をつける必要があるのは、海外においては入院の対象になるのは基本的に中等症以上であり、日本のように軽症例が入院することはないという点である。軽症入院例では血栓症の合併は少なく、抗凝固療法のメリットは少ないことは念頭に置いておく必要があるだろう。 * 予防量として、ヘパリン 5,000 ユニット、1 日 2 回または 3 回皮下投与、エノキサパリン 40mg1 日 1 回または 30mg1 日 2 回皮下投与 1. Iba T, et al. J Thromb Haemost. 2020;18(9):2103-2109. 2. achil J, et al. J Thromb Haemost. 2020;18(5):1023-1026. 3. Leentjens J, et al. Lancet Haematol. 2021;8(7):e524-e533.
急性冠症候群疑い患者の高流量酸素療法と死亡リスク:実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験
急性冠症候群疑い患者の高流量酸素療法と死亡リスク:実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験
High flow oxygen and risk of mortality in patients with a suspected acute coronary syndrome: pragmatic, cluster randomised, crossover trial BMJ. 2021 Mar 2;372:n355. doi: 10.1136/bmj.n355. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】急性冠症候群(ACS)の疑いがある患者で、高流量酸素療法と30日死亡率の関連性を明らかにすること。 【デザイン】実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験。 【設定】ニュージーランドの4地域。 【参加者】試験期間中、All New Zealand Acute Coronary Syndrome Quality Improvement(ANZACS-QI)レジストリまたはambulance ACS pathwayに組み入れられたACSが疑われる患者およびACSの診断が確定した患者4万872例。2万304例に高流量酸素療法、2万568例に低流量酸素療法を実施した。レジストリおよびICD-10退院コードから、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)か非STEMIの最終診断を明らかにした。 【介入】2年間にわたり、4地域を2通りの酸素療法に6カ月単位で無作為に割り付けた。高流量酸素群では、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)に関係なく、虚血症状や心電図の変化に応じて、酸素マスクによる酸素6~8L/分を供給した。低流量酸素群では、SpO2が90%を下回った場合のみ、SpO2 95%未満を目標に酸素を供給した。 【主要評価項目】登録データとの連携により明らかにした30日全死因死亡率。 【結果】両酸素療法によって管理した患者データおよび臨床データは一致していた。ACS疑い患者の30日死亡数は、高酸素群および低酸素群でそれぞれ613例(3.0%)、642例(3.1%)だった(オッズ比0.97、95%CI 0.86~1.08)。STEMI患者4159例(10%)の30日死亡率は、高酸素群および低酸素群でそれぞれ8.8%(178例)、10.6%(225例、同0.81、0.66~1.00)で、非STEMI患者1万218例(25%)では3.6%(187例)、3.5%(176例)だった(同1.05、0.85~1.29)。 【結論】ACSの疑いがある患者の大規模コホートで、高流量酸素療法に30日死亡率の上昇、低下いずれの関連も認められなかった。 第一人者の医師による解説 ST上昇型急性心筋梗塞患者では改善傾向 酸素投与の適否は担当医に委ねられべき 清末 有宏 森山記念病院循環器センター長 MMJ. October 2021;17(5):144 急性冠症候群(ACS)患者に対する酸素投与は、予後改善効果を示すエビデンスが少ないまま50年以上前から実施されてきた世界共通の治療習慣である。これはACS患者ではしばしば心不全合併などに伴い低酸素血症が合併することを考慮すれば理にかなっているが、過剰な動脈血酸素分圧上昇は冠動脈攣縮や酸化ストレスを誘発するため、近年酸素投与の有害性を指摘する報告が続いていた。 現行の各国ガイドラインはメタ解析(1)やDETO2X-AMI試験2の結果をもとに、低酸素血症の目立たない急性心筋梗塞患者への酸素投与を勧めていないが、ただ根拠となっている臨床試験にも(低酸素血症が発生しにくい)比較的低リスク患者のみが組み入れられていたり、組み入れ患者数(特に最も酸素投与の恩恵が期待できると思われるST上昇型急性心筋梗塞患者数)が十分ではないなどの研究限界が挙げられてきた。 本研究において著者らはそういった研究限界を払拭すべく、十分な患者数の確保が期待できるAll New Zealand Acute Coronary Syndrome Quality Improvementレジストリーを用い、酸素投与プロトコールをより厳密に設定し、さらにバイアスを排除すべくクラスター・クロスオーバー・デザインを採用した(4地域に分けて酸素投与プロトコールを時期により設定し、その設定を入れ替えた)。40,872人という十分な患者数が組み入れられた結果、30日全死亡に関して高用量酸素投与群では低用量酸素投与群に対するオッズ比が0.97と有益性は認められなかったが、有害性も認められなかった。さらに、ST上昇型急性心筋梗塞患者群に限れば1.8%の絶対リスク低下(8.8% 対 10.6%)が得られ、オッズ比は0.81であった。 本研究結果の解釈は論文中のディスカッションパートでも非常に慎重に議論されているが、ACS患者を日常的に診療している一臨床医として意見を述べさせていただけるのであれば、30日全死亡率1.8%の改善は臨床的に意味を持つ大きさであるし、しばしば画一的になりすぎてしまいがちなガイドラインに基づく診療方針において(つまりACS患者に対する酸素療法がどのような場合でも不適切といった認識)、対象患者を選べば酸素療法は決して有害性がないばかりか有益性も期待できる、といったポジティブな解釈もできるのではなかろうか。ACSという診断名の下には多種多様な患者が含まれるため、今回の結果を踏まえれば酸素投与の適否は各患者の担当医に委ねられてしかるべき、ということになろう。 1. Chu DK, et al. Lancet. 2018;391(10131):1693-1705. 2. Hofmann R, et al. N Engl J Med. 2017;377(13):1240-1249.
前十字靱帯断裂に対する早期再建術とリハビリテーション+待機遅延再建術の比較:COMPARE無作為化比較試験
前十字靱帯断裂に対する早期再建術とリハビリテーション+待機遅延再建術の比較:COMPARE無作為化比較試験
Early surgical reconstruction versus rehabilitation with elective delayed reconstruction for patients with anterior cruciate ligament rupture: COMPARE randomised controlled trial BMJ. 2021 Mar 9;372:n375. doi: 10.1136/bmj.n375. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】前十字靭帯(ACL)断裂によく用いられる2通りの治療法に、2年間にわたる膝の症状および機能、スポーツへの復帰に対する患者の認識に対する臨床的に意義のある差があるかを評価すること。 【デザイン】多施設共同非盲検並行群間無作為化比較試験(COMPARE試験)。 【設定】2011年5月から2016年4月までのオランダの病院6施設。 【参加者】6施設から募集した18~65歳の急性期ACL断裂患者。3、6、9、12、24カ月時に患者を評価した。 【介入】85例を早期にACL再建術を施行するグループ、82例を3カ月間のリハビリ後に任意で遅延ACL再建術を施行するグループ(初期に非外科的治療実施)に無作為化により割り付けた。 【主要評価項目】24カ月間にわたる各評価時点で、International Knee Documentation Committee(最高スコア100点)スコアにより、膝の症状および機能、スポーツへの復帰に対する患者の認識を評価した。 【結果】2011年5月から2016年4月までの間に167例を組み入れ、2通りの治療法に無作為化により割り付けた(平均年齢31.3歳、女性67例[40%])。163例(98%)が試験を完遂した。リハビリ後任意遅延ACL再建術群では、追跡調査期間中に41例(50%)に再建術を施行した。24カ月後、早期ACL再建術群はInternational Knee Documentation Committeeスコアが有意に良好であった(P=0.026)が、臨床的な意義は認められなかった(84.7点 v 79.4点、群間差5.3点、95%CI 0.6~9.9)。追跡3カ月後、リハビリ後任意遅延ACL再建術群のIKDCスコアは有意に良好であった(P=0.002、群間差-9.3点、同-14.6~-4.0)。追跡9カ月後、IKDCスコア変化量は、早期ACL再建術群の方が良好であった。12カ月後、両群の差は小さくなった。追跡期間中、早期ACL再建術群では、4例に再断裂、3例に対側ACL断裂が発生したのに対して、リハビリ後の任意遅延ACL再建術群では2例に再断裂、1例に対側ACL断裂が発生した。 【結論】急性期ACL断裂患者で、早期再建術の方がリハビリ後待機再建術よりも、2年追跡時の膝の症状および機能、スポーツへの復帰に対する認識が改善した。この結果は有意(P=0.026)ではあったが、臨床的に意義があるかは明らかになっていない。試験結果の解釈には、リハビリ群に割り付けた患者の50%に再建術が不要であったことを考慮に入れる必要がある。 第一人者の医師による解説 膝前十字靱帯損傷には早期手術が成績良好もリハビリで半数は手術回避 久保田 光昭(准教授)/石島 旨章(主任教授) 順天堂大学医学部整形外科学講座 MMJ. October 2021;17(5):152 膝前十字靭帯(ACL)再建術を受傷後早期に行うべきか、あるいは術前リハビリを行ったのちに手術を行うべきかについて検討したランダム化対照試験(RCT)はない。本論文は、2011〜16年にオランダの6施設で行われた初回ACL単独損傷に対し、早期手術とリハビリ後選択的待機手術の術後成績を比較検討したRCTである。 対象は18〜65歳で、早期手術群は受傷後6週間以内にACL再建術を行い、リハビリ群は最低3カ月間のリハビリ後に手術を受けるかどうか患者本人が選択した。167人(早期手術群85人、リハビリ群82人)が対象となり、リハビリ群のうち50%(41人)は受傷後平均10.6ヵ月で手術を行った。主観的膝評価法であるIKDC(international knee documentation committee)スコアは3カ月経過時点ではリハビリ群が有意に良好だが、6カ月〜2年まで早期手術群が有意に良好な成績であった(P=0.026)。また2年経過時点でのKOOS(knee injury and osteoarthritis outcome score)スポーツとQOLサブカテゴリ、そしてLysholmスコアは、いずれも早期手術群が有意に良好な成績であった。 今回のRCTでは、2年経過の膝の症状および機能の改善、そしてスポーツ復帰に関し、早期手術群の方が良好な結果であった。しかし、リハビリ待機群のうち半数が手術を必要としなかったことを考慮すると、本研究の結果の臨床的な位置づけについては注意を要する。また、両群間の差は臨床的有意義 な 差(minimal clinically important difference;MCID)も認めなかった。過去の報告では、ACL受傷後リハビリ行った後に手術を必要としたのは、2年で39%、5年で51%であった(1),(2)。ACL再建術を選択する理由は、膝崩れを繰り返すことで高まる2次性の半月板や軟骨損傷のリスクを低下させることである。しかし、早期手術群にも多くの半月板損傷を認め、ACL再建術を行っても半月板損傷の発生を完全に防止することは困難であり、ACL損傷は変形性膝関節症(OA)のリスクを高める(2)。リハビリ群の半数が治療に満足していなかったために早期の手術を選択したのか否かを検証する必要がある。ACL損傷は半月板損傷そしてOA発生のリスクが高まるため、ACL再建術の実施時期についての本研究は挑戦的ではあるが、どちらの方法がOA予防に有効であるかという視点での長期の経過観察が必要である。 1. Frobell RB, et al. N Engl J Med. 2010;363(4):331-342. 2. Lie MM, et ak. Br J Sports Med. 2019;53(18):1162-1167.
心不全と危険因子の年齢依存的な関連:統合集団ベースコホート研究
心不全と危険因子の年齢依存的な関連:統合集団ベースコホート研究
Age dependent associations of risk factors with heart failure: pooled population based cohort study BMJ. 2021 Mar 23;372:n461. doi: 10.1136/bmj.n461. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】一般集団には心不全発症の危険因子に年齢による差があるかを評価すること。 【デザイン】集団ベースの統合コホート研究。 【設定】Framingham Heart Study、Prevention of Renal and Vascular End-stage Disease StudyおよびMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis。 【参加者】若年者(55歳未満、1万1,599例)、中年者(55~64歳、5,587例)、前期高齢者(65~74歳、5,190例)、後期高齢者(75歳以上、2,299例)で層別化した心不全既往歴のない参加者計2万4,675例。 【主要評価項目】心不全発症率。 【結果】追跡調査期間中央値12.7年間にわたり、若年者138例(1%)、中年者293例(5%)、前期高齢者538例(10%)、後期高齢者412例(18%)が心不全を発症した。若年者では、心不全発症例の32%(44例)が駆出率が保たれた心不全に分類されたのに対して、後期高齢者では43%(179例)であった。若年者では高齢者と比べて、高血圧、糖尿病、現在の喫煙、心筋梗塞の既往歴などの危険因子があると相対リスクが高かった(全体の交互作用のP<0.05)。例えば、高血圧があると、若年者では心不全リスクが3倍になり(ハザード比3.02、95%CI 2.10~4.34;P<0.001)、それに対して後期高齢者ではリスクが1.4倍になった(1.43、1.13~1.81、P=0.003)。心不全発症の絶対リスクは、危険因子の有無に関係なく、若年者の方が高齢者よりも低かった。若年者の方が高齢者よりも危険因子の人口寄与危険割合が高く(75% v 53%)、モデル適合度も良好であった(C index 0.79 v 0.64)。同様に、肥満(21% v 13%)、高血圧(35% v 23%)、糖尿病(14% v 7%)、現在の喫煙(32% v 1%)の集団寄与危険割合は高齢者よりも若年者の方が高かった。 【結論】若年者の方が高齢者よりも心不全の発症率と絶対リスクが低いが、修正可能な危険因子との関連が強く寄与危険度が大きいことから、成人期にわたる予防努力の重要性が浮き彫りになった。 第一人者の医師による解説 心不全予防には生涯にわたるリスク管理が重要 ハザード比は診療に有用 諸井 雅男 東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野(大橋)教授 MMJ. October 2021;17(5):142 若年者は高齢者に比べ心不全発症率が低いことは知られているが、年齢別に心不全発症と肥満、高血圧および糖尿病などの危険因子との関係は検討されていなかった。先行研究では、電子健康記録を用いた研究で、若年者では心不全を含む心血管疾患発症や血圧上昇の相対リスク低下が認められたことや、心不全患者を対象とした研究で、若年患者は肥満、男性、糖尿病既往者で多くみられることは報告されていた(1),(2)。 本論文は、一般集団における心不全の年齢別危険因子を評価するため、米国のFramingham Heart Study、オランダのPrevention of Renal and Vascular End-stage Disease(PREVEND)研究、米国のMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)のデータを統合解析したコホート研究の報告である。対象者は心不全歴のない24,675人で、若年者(55歳未満、11,599人)、中年者(55~64歳、5,587人)、前期高齢者(65~74歳、5,190人)、後期高齢者(75歳以上、2,299人)に層別化し、心不全の発症について追跡期間中央値12.7年において評価した。 その結果、高血圧、糖尿病、現在の喫煙、および心筋梗塞の既往といった危険因子は、高齢者と比較し、若年者でその相対的寄与が大きかった。例えば高血圧は、若年者の将来的心不全リスクを3倍上昇させたのに対し、後期高齢者では1.4倍の上昇であった。心不全発症の絶対リスクは、危険因子にかかわらず、高齢者より若年者のほうが低かった。 心不全患者が増加し続けている中で、その年齢に応じて具体的なリスクの数字を示したことは診療に有用である。50歳の男性が健診で高血圧を指摘されて受診した場合に、我々医療者は単に生活習慣の是正と降圧薬の服用を考慮するだけではなく、「高血圧者は正常血圧者に比べ12年後には3倍の心不全発症リスクがある」ことを患者に伝えることができる。一方、75歳ではそのリスクは1.4倍である。このことは、患者の価値観や希望と併せて、医療者はその介入の程度を考慮する際の1つの情報となり、その上での治療は生活の質(QOL)を高めることにつながる。人生100年時代を迎え、生命予後のみならず若年から年齢を重ねた時のQOLを考慮しそのリスク管理により心不全を予防することは、医療者には極めて重要と考える。 1. Rosengren A, et al. Eur Heart J. 2017;38(24):1926-1933. 2. Christiansen MN, et al. Circulation. 2017;135(13):1214-1223.
帝王切開術を受ける肥満女性に用いる局所陰圧閉鎖療法と標準的創傷被覆の比較:多施設共同並行群間無作為化対照試験
帝王切開術を受ける肥満女性に用いる局所陰圧閉鎖療法と標準的創傷被覆の比較:多施設共同並行群間無作為化対照試験
Closed incision negative pressure wound therapy versus standard dressings in obese women undergoing caesarean section: multicentre parallel group randomised controlled trial BMJ. 2021 May 5;373:n893. doi: 10.1136/bmj.n893. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】帝王切開術を受ける肥満女性で、創部陰圧療法(NPWT)の手術部位感染(SSI)予防効果を標準的創傷被覆と比較すること。 【デザイン】多施設共同、実用的、無作為化、並行群間対照、優越性試験。 【設定】2015年10月から2019年11月、オーストラリアの三次病院4施設。 【参加者】妊娠前のBMIが30以上で、選択的または準緊急の帝王切開術を受けて出産した女性を適格とした。 【介入】同意を得た女性2035例を帝王切開術施行前に閉鎖切開創NPWT群(1,017例)と標準的ドレッシング群(1,018例)に無作為化により割り付けた。皮膚が閉鎖するまで割り付けを秘匿した。 【主要評価項目】主要評価項目はSSIの累積発生率とした。SSIの深度(表層、深部、臓器・体腔)、創部合併症(離開、血腫、漿液種、出血、皮下出血)発現率、入院期間、被覆関連の有害事象発現率を副次評価項目とした。参加女性と医師は盲検化しなかったが、評価者と統計家には治療の割り付けを盲検化した。事前に定めたintention to treat主解析は、データが欠落している症例(28例)にSSIが発生しなかったとする保守的な仮定に基づくこととした。事後感度分析に最良症例分析と完全症例分析を用いた。 【結果】主解析では、NPWT群の75例(7.4%)、標準的創傷被覆群の99例(9.7%)にSSIが発生した(リスク比0.76、95%CI 0.57~1.01;P=0.06)。欠落データの影響を探索する事後感度分析で、同方向の効果(NPWTによるSSIの予防効果)が統計的有意性をもって認められた。NPWT群996例中40例(4.0%)、標準的創傷被覆群983例中23例(2.3%)に皮膚水疱形成が見られた(リスク比1.72、1.04~2.85;P=0.03)。 【結論】帝王切開術後の肥満女性に用いる予防的閉鎖切開創NPWTで、標準的創傷被覆よりもSSIリスクが24%低下した(絶対リスク3%低下)。この差は統計的有意性には届かなかったが、この集団でのNPWTの有効性を過小評価していると思われる。保守的な主解析、多変量調整解析および事後感度分析の結果を検討する際は、閉鎖切開創NPWTの便益に関する科学的根拠が蓄積されつつあることや、世界で帝王切開術を受ける肥満女性の数を考慮に入れる必要がある。NPWTの使用は、皮膚水疱形成の増加や経済的配慮との兼ね合いも考え、患者との共有意思決定に基づき決定しなければならない。 第一人者の医師による解説 帝王切開後の予防的局所陰圧閉鎖療法 経済的効果と併せて有害事象も検討する必要あり 渡邉 学 東邦大学医学部医学科外科学講座 一般・消化器外科学分野教授 MMJ. October 2021;17(5):153 手術部位感染(surgical site infection;SSI)とは手術操作が直接及ぶ部位の感染症であり、一旦発症すると患者の予後に影響を及ぼすだけでなく、入院期間の延長や経済的負担の増加をもたらす。日本外科感染症学会による調査研究(1)では、腹部手術におけるSSI発症患者では術後平均在院日数が18日延長し、術後平均医療費は658,801円高額になることが報告され、SSI対策の医療経済的な重要性が示された。 一方、世界における帝王切開実施率は地域によって大きく異なり、北欧諸国と比較し、オーストラリア、カナダ、英国、米国などの西側諸国では実施率が高いと報告されている(15~17% 対 25~32%)(2)。また、オーストラリアでは女性の50%以上が妊娠に入ると肥満になると報告されている。 本論文は、オーストラリアの4つの病院で実施された多施設ランダム化対照試験の報告である。2015年10月~19年11月に、世界保健機関(WHO)の定義による体格指数(BMI)30.0以上の肥満患者で帝王切開にて出産した女性2,035人を対象とし、創閉鎖後の創処置としてランダムに割り付けた局所陰圧閉鎖療法(NPWT)群(n = 1,017)と対照群(n = 1,018)の間でSSI発生率の比較を行った。NPWT群は80 mmHgの連続的な負圧を適用し、対照群は通常使用している標準的創傷被覆(ドレッシング)材を使用し、両群とも5?7日間そのままとした。その結果、手術後30日までのSSI発生率は、全体で8.6%、NPWT群7.4%、対照群9.7%であった。対照群と比較し、NPWT群のSSI発生の相対リスクは24%低下し、統計学的に有意ではなかったが絶対リスクは3%低下することが示された。一方、ドレッシング関連の有害事象として、NPWT群では対照群と比較し皮膚水疱発生の相対リスクが72%上昇し、絶対リスクは有意に2%上昇していた。 本研究にて、帝王切開後の予防的 NPWTはSSI発生低減に効果的である可能性が示された。しかし、世界で約2,970万人の出生が帝王切開であることを考えると、この有害事象発生結果は臨床的に重要であり、予防的 NPWTの実施については経済的効果と併せて検討する必要がある。 日本でも帝王切開を含む腹部手術創に対する予防的 NPWTが保険収載されたが、集中治療室(ICU)管理が必要である切開創 SSI高リスク患者で、BMI30 以上の肥満患者や糖尿病などの全身疾患を有する患者などが対象であり、現状では適応症例は限定されている。 1. 草地信也ら . 日本外科感染症学会雑誌 . 2010;7: 185-190. 2. OECD (2019), Health at a Glance 2019: OECD Indicators, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/4dd50c09-en.
うつ病スクリーニングに用いるHospital Anxiety and Depression Scale抑うつサブスケール(HADS-D)の精度:系統的レビューと個別参加者データのメタ解析
うつ病スクリーニングに用いるHospital Anxiety and Depression Scale抑うつサブスケール(HADS-D)の精度:系統的レビューと個別参加者データのメタ解析
Accuracy of the Hospital Anxiety and Depression Scale Depression subscale (HADS-D) to screen for major depression: systematic review and individual participant data meta-analysis BMJ. 2021 May 10;373:n972. doi: 10.1136/bmj.n972. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】身体的な健康問題がある人のうつ病スクリーニングに用いるHospital Anxiety and Depression Scale抑うつサブスケール(HADS-D)の精度を評価すること。 【デザイン】系統的レビューおよび個別患者データのメタ解析。 【データ入手元】Medline、Medline In-Process and Other Non-Indexed Citations、PsycInfoおよびWeb of Science(開始から2018年10月25日まで)。 【レビュー方法】HADS-Dスコアおよび妥当性が裏付けられている診断面接に基づくうつ病の状態を適格なデータセットの対象とした。一次試験データおよび一次報告から抽出した試験レベルのデータを組み合わせた。HADS-Dのカットオフ閾値を5-15とし、半構造化面接(例、Structured Clinical Interview for Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、構造化面接(例、Composite International Diagnostic Interview)およびMini International Neuropsychiatric Interviewを用いた試験を対象に、二変量ランダム効果メタ解析を用いて、統合した感度および特異度を別々に推定した。一段階メタ回帰を用いて、精度に参照基準分類および参加者データとの関連が認められるかを検討した。生データを提供していない試験が公表した結果を含めることにより結果に影響があるかを評価するため、感度分析を実施した。 【結果】適格試験168報のうち101報から個別参加者データを得た(60%;25,574例(適格参加者の72%)、うつ病患者2,549例)。半構造化面接、構造化面接およびMini International Neuropsychiatric Interviewのカットオフ値7以上で感度と特異度の合計が最大となった。半構造化面接を用いた試験(57件、10,664例、うつ病患者1,048例)で、カットオフ値7以上の感度および特異度が0.82(95%信頼区間0.76~0.87)および0.78(0.74~0.81)、カットオフ値8以上では0.74(0.68~0.79)および0.84(0.81~0.87)、カットオフ値11以上が0.44(0.38~0.51)および0.95(0.93~0.96)であった。参照基準でもサブグループ全体でも精度がほぼ同じであり、データを提供しなかった試験が公表した結果を含めた場合も同様であった。 【結論】うつ病をスクリーニングする際、HADS-Dカットオフ値7以上で感度と特異度の合計が最大となった。カットオフ値8以上でも感度と特異度の組み合わせはほぼ同じであったが、7以上を用いた場合よりも感度が低く、特異度が高かった。HADS-Dにより内科疾患のあるうつ病患者を特定するには、偽陰性を避けるために低いカットオフ値を用いて、偽陽性を減らし重症度が高い患者を特定するために高いカットオフ値を用いることができるであろう。 第一人者の医師による解説 より症状の強い患者の特定には高めのカットオフ値が適す 岸本 泰士郎 慶應義塾大学医学部ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座特任教授 MMJ. February 2022;18(1):7 身体疾患を有する患者のうつ病診断は、倦怠感、食欲低下、睡眠障害など双方の疾患に共通してみられる症状が多いこともあって、困難である。Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)は、身体疾患を有する人の不安障害とうつ病を同定するために開発された尺度で、身体疾患との重複を避けるため不眠、食欲不振、疲労などの身体的症状が含まれていない。医療現場で簡便に行えることから、十分に活用することが望まれる。 本論文は、HADSのうつ病サブスケールであるHADS-Dを用いた大うつ病のスクリーニング精度について系統的レビューとメタ解析を行い、大うつ病のスクリーニングのための最適なカットオフ値を検討した研究の報告である。 解析には、有効なインタビューで大うつ病が診断され、それにHADS-Dスコアを紐付けた研究データが用いられた。1次研究データと研究レベルのデータが抽出され、統合された。HADS-Dのカットオフ値の5 ~ 15について、二変量ランダム効果メタ解析を用い、感度と特異性を診断方法ごとに推定した。診断方法として、半構造化診断面接(例:Structured Clinical Interview for Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、完全構造化面接( 例:Composite International Diagnostic Interview)、Mini International Neuropsychiatric Interview(MINI)を用いた研究が選択された。 選択基準を満たした研究168件のうち101件から個人データが得られた。半構造化診断面接、完全構造化面接、MINIそれぞれにおいて、カットオフ値を7以上とすることで、感度と特異度の合計が最大となった。半構造化面接を用いた研究では、カットオフ値を7以上としたところ、感度0.82(95%信頼区間[CI], 0.76 ~ 0.87)、特異度0.78(0.74 ~ 0.81)であった。同様に、カットオフ値を8以上とした場合、感度0.74(95% CI, 0.68 ~ 0.79)、特異度0.84(0.81 ~ 0.87)、カットオフ値を11以上とした場合、感度0.44(0.38 ~ 0.51)、特異度0.95(0.93 ~ 0.96)であった。精度は診断方法の違いにかかわらず同様であった。 このように、HADS-Dのカットオフ値を7以上とすることで、感度と特異度が最大となった。カットオフ値を8以上としても、感度と特異度の合計は同程度であったが、感度は低く、特異度は高くなった。偽陰性を避けるためには低いカットオフ値が、また偽陽性を減らし、より症状の強い患者を特定するには高めのカットオフ値が適しているだろう。
動脈血栓塞栓症のリスクが高い患者に用いる低分子ヘパリンによる術後橋渡し療法(PERIOP2試験):二重盲検無作為化比較試験
動脈血栓塞栓症のリスクが高い患者に用いる低分子ヘパリンによる術後橋渡し療法(PERIOP2試験):二重盲検無作為化比較試験
Postoperative low molecular weight heparin bridging treatment for patients at high risk of arterial thromboembolism (PERIOP2): double blind randomised controlled trial BMJ. 2021 Jun 9;373:n1205. doi: 10.1136/bmj.n1205. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】心房細動患者および機械弁を留置した患者を対象に、待期手術のためにワルファリン投与を一時的に中止した場合のダルテパリンによる術後橋渡し療法について、プラセボと比較した有効性および安全性を明らかにすること。 【デザイン】前向き二重盲検無作為化比較試験。 【設定】2007年2月から2016年3月までのカナダおよびインドの血栓症研究機関10施設。 【参加者】手術前にワルファリンを一時中止する必要がある18歳以上の心房細動患者および機械弁を留置した患者計1,471例。 【介入】手術後、無作為化によりダルテパリン群(821例;1例が無作為化直後に同意撤回)またはプラセボ群(650例)に割り付けた。 【主要評価項目】術後90日以内の主要な血栓塞栓症(脳卒中、一過性脳虚血発作、近位深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、末梢血管塞栓症または血管死)およびInternational Society on Thrombosis and Haemostasis基準に基づく大出血。 【結果】術後90日以内の主要な血栓塞栓症発生率は、プラセボが1.2%(650例中8件)、ダルテパリン群が1.0%(820例中8件)であった(P=0.64、リスク差-0.3%、95%CI -1.3~0.8)。大出血発生率は、プラセボ群が2.0%(650例中13件)、ダルテパリン群が1.3%(820例中11件)であった(P=0.32、同-0.7%、-2.0~0.7)。結果は、心房細動群および機械弁群で一致したものであった。 【結論】手術のためワルファリンを一時的に中止した心房細動患者および機械弁留置患者に術後のダルテパリンによる橋渡し療法を実施しても主要な血栓塞栓症予防に対して有意な便益は認められなかった。 第一人者の医師による解説 術前にヘパリン置換を行った場合機械弁患者群でも術後ヘパリン置換は血栓塞栓症予防に必要ないことを示唆 松下 正 名古屋大学医学部附属病院輸血部教授 MMJ. February 2022;18(1):20 心房細動や機械式心臓弁を有し、観血的手技のためにワルファリンの中断が必要な場合、ヘパリンによるブリッジング(いわゆるヘパリン置換)が有益であるかどうかは議論が続いている。2015年発表のBRIDGE試験では、低分子ヘパリン(LMWH)によるブリッジングは必要ないとの結論に至ったが(1)、同試験の対象者として機械弁や最近の血栓症、大出血既往や高出血リスク手技、腎機能障害など複雑なケアを受ける患者は除外されていた。本論文の著者らは、今回報告されたPERIOP2試験に先立つ単群多施設共同パイロット試験(2)において、LMWH(ダルテパリン;日本ではフラグミン®として発売。ただし保険適用は体外循環時血液凝固防止[透析]と播種性血管内凝固症[DIC]のみ)によるブリッジングを検討し、手技後の血栓症発生(発生率3.1%)の75%は手技後の出血事象により抗凝固療法を中止した患者に発生しており、一方で術前の投与は安全であると考えられたことから、今回術前にLMWHを投与し、術後のLMWHもしくはプラセボ投与による、出血イベントおよび血栓塞栓症の発生率を比較する無作為化対照試験を実施した。なおこの試験の対象者には、BRIDGE試験で除外された機械弁患者は含まれていたが、複数の機械弁、機械弁ありで脳卒中または一過性虚血発作歴のある患者は除外された。そのほか、活動性出血、血小板数10万未満、脊椎や脳外科手術、腎機能障害患者は本試験でも除外された。 対象は心房細動または機械式心臓弁を有する18歳以上の患者1,471人で、CHADS2スコアの平均は2.42、患者の41.2%が3.0以上であった。アスピリンは24.5%の患者が服用していた。手術後90日以内の国際血栓止血学会(ISTH)基準による重大な血栓塞栓症の発生率はプラセボ群1.2%(8/650)、ダルテパリン群1.0%(8/820)で有意差はなく(リスク差-0.3%;95%信頼区間[CI],-1.3 ~ 0.8;P=0.64)、大出血の発生率もプラセボ群2.0%(13/650)、ダルテパリン群1.3%(11/820)と有意差がなかった(リスク差-.7;95% CI,-2.0~0.7;P=0.32)。この結果は心房細動群と機械式心臓弁群でも一貫していた。機械弁患者には依然としてビタミン K拮抗薬が抗凝固薬として選択されており、この患者群でも重大な血栓塞栓症の予防に術後ブリッジングが必要ないことが示された。 1. Douketis JD, et al. N Engl J Med. 2015;373(9):823-833. 2. Kovacs MJ, et al. Circulation. 2004;110(12):1658-1663.
心不全にみられる2次性僧帽弁逆流症の負担、治療および転帰:観察コホート試験
心不全にみられる2次性僧帽弁逆流症の負担、治療および転帰:観察コホート試験
Burden, treatment use, and outcome of secondary mitral regurgitation across the spectrum of heart failure: observational cohort study BMJ. 2021 Jun 30;373:n1421. doi: 10.1136/bmj.n1421. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】心不全にみられる2次性僧帽弁逆流症(sMR)の有病率、長期転帰および治療基準を定義すること。 【デザイン】大規模コホート試験。 【設定】2010年から2020年までのオーストリア・ウィーン地域病院ネットワークのデータを用いた観察的コホート試験。 【参加者】心不全のサブタイプを問わないsMR患者13,223例。 【主要評価項目】sMRと死亡率の相関。ガイドライン診断基準により、心不全を駆出率低下、中間範囲の駆出率、駆出率維持の3つのサブタイプに分類し、患者を評価した。 【結果】1,317例(10%)が重症sMRの診断を受け、年齢上昇との相関が認められた(P<0.001)。この相関は、心不全のさまざまの重症度に認められ、駆出率が低下した患者が2,619例中656例(25%)と最も多かった。同一地域の同年齢および同性の集団と比較した重症sMR患者の死亡率が予想よりも高かった(ハザード比7.53;95%信頼区間 6.83~8.30;P<0.001)。軽症sMRやsMRがない心不全と比較すると、中等症sMRや重症sMRの死亡率が段階的に増加し、ハザード比が中等症sMRで1.29(95%信頼区間 1.20~1.38;P<0.001)、重症sMRで1.82(同1.64~2.02;P<0.001)であった。重症sMRと超過死亡率の相関は多変量解析後も変わらず、心不全の全サブグループに認められた(中間範囲の駆出率:ハザード比2.53(同2.00~3.19;P<0.001)、駆出率低下:1.70(同1.43~2.03;P<0.001)、駆出率維持:1.52(同1.25~1.85;P<0.001))。最先端の医療が利用でき、心不全の症例数も多く、弁膜疾患プログラムがあったが、重度sMRに対して弁形成術(7%)も弁置換術(5%)もほとんど施行されていなかった。低リスクの経カテーテル弁形成術(4%)もほぼ同じで、ほとんど施行されていなかった。 【結論】2次性僧帽弁逆流は全体的に頻度が高く、年齢とともに増加し、超過死亡率との相関が認められた。有害転帰との相関は心不全全体に認められたが、駆出率が中間範囲の患者と駆出率が低下している患者に特に顕著であった。このように転帰が不良であるが、外科的な弁形成術や弁置換術がほとんど施行されていない。同じく低リスクの経皮的弁形成も、治療による最も大きな便益が期待できる心不全サブタイプにさえほとんど施行されていない。今回のデータは、特に高齢化社会で心不全の増加が予想されることを踏まえて、治療に対する需要が高まっていることを示唆するものである。 第一人者の医師による解説 患者利益に資するにはエビデンス不十分 質の高い無作為化試験が望まれる 児玉 隆秀 虎の門病院循環器センター内科部長 MMJ. February 2022;18(1):11 2次性僧帽弁閉鎖不全症(sMR)は心不全患者に多くみられ、生活の質(QOL)低下や予後悪化につながる。しかし、sMRは罹患頻度が低く、先行研究の主な対象は疾患特異性や疫学的特徴の違う原発性 MRであったため、転帰や標準的治療に関する知見は不十分であった。 本論文は、心不全に合併するsMRの疫学的特徴、心不全サブタイプと予後との関連、最先端施設での治療の現状を明らかにすべく、ウィーン医科大学の医療記録と超音波データベースを用いたコホート研究の報告である。心不全とsMRを合併する患者13,223人を対象とし、心不全はHFpEF(左室駆出率[LVEF]50%以上)、HFmrEF(LVEF 40~49%)、HFrEF(LVEF 40%未満)に分類された。全死亡を主要評価項目とし、sMR重症度別に解析した。中等度以上のsMRは心不全患者の40%を占め、LVEF低下や加齢とともに重症度が増加した。重度 sMRはsMRなし/軽度に比べ、すべての心不全サブタイプで死亡率上昇と関連し、特にHFmrEFで顕著であった。重度 sMRに対する弁形成術、弁置換術または経カテーテル弁形成術の実施率は15.2%にとどまっていた。 心不全患者の予後と直結するsMRに対する介入はもっと行われて然るべきであるが、実際には十分に行われていない理由として高齢患者の併存疾患数の多さが挙げられよう。手術リスク評価において年齢、併存疾患、心不全既往、収縮機能障害は重要な要素であり、ほとんどのsMR患者は手術適応外となる。また、外科的な弁の修復・置換がsMR患者の生存率改善につながるという確かなエビデンスはなく、ガイドラインでも内科的治療の重要性が強調されている。しかし、本研究は内科的治療の恩恵があまり明確でないHFmrEF患者においてsMRの死亡リスクが最も高いことを示し、低侵襲な経カテーテル僧帽弁形成術が可能となっている今日では、このような患者群に対して僧帽弁への介入がもっと行われるべきであることを指摘している。 sMRは心不全の原因ではなく、心不全の原因疾患に起因する心臓の構造的変化により2次的に生じてくるものである。また、体液量や内科的治療によりダイナミックに変化しうる。したがって、sMRへの介入のみでは不十分であり、「弁膜症治療のガイドライン 2020年改訂版」では第1に内科的治療の重要性が明記されている。一方、僧帽弁への介入は十分なエビデンスの蓄積がないことを理由に、虚血性 sMRを除いて推奨度は高くない。今回の結果からsMRに対する僧帽弁インターベンションの無作為化試験の必要性が認識され、最適な治療の方向性が見いだされれば、意義深い研究と思われる。
心血管疾患1次予防に用いるスタチンと有害事象の相関:系統的レビューとペアワイズネットワーク用量反応メタ解析
心血管疾患1次予防に用いるスタチンと有害事象の相関:系統的レビューとペアワイズネットワーク用量反応メタ解析
Associations between statins and adverse events in primary prevention of cardiovascular disease: systematic review with pairwise, network, and dose-response meta-analyses BMJ. 2021 Jul 14;374:n1537. doi: 10.1136/bmj.n1537. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】心血管疾患の1次予防に用いるスタチンと有害事象の相関を評価し、その相関はスタチンの種類や投与量によってどのように変化するかを検討すること。 【デザイン】系統的レビューとメタ解析。 【データ入手元】既報の系統的レビューおよび2020年8月までのMedline、EmbaseおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsを検索して試験を特定した。 【レビュー方法】心血管疾患歴のない成人を対象に、スタチンとスタチン以外の対照または他の種類のスタチンを比較した無作為化比較試験およびスタチンの投与量別に比較した無作為化比較試験を対象とした。 【主要評価項目】自己報告による筋症状、臨床的に確認した筋疾患、肝機能障害、腎機能不全、糖尿病、眼症状などのよくみられる有害事象を主要評価項目とした。心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡などを有効性の副次評価項目とした。 【データ統合】ペアワイズメタ解析を実施し、スタチンとスタチン以外の対照の間で各転帰のオッズ比および95%信頼区間を算出し、1年間投与した患者1万人当たりの事象発生件数の絶対リスク差を推定した。ネットワークメタ解析を実施し、スタチンの種類別に副作用を比較した。Emaxモデルを用いたメタ解析により各スタチンによる副作用の用量反応関係を評価した。 【結果】計62の試験を対象とし、参加者が計120,456例、平均追跡期間が3.9年であった。スタチンにより自己報告による筋症状(21報、オッズ比1.06(95%CI 1.01~1.13);絶対リスク差15(95%CI 1~29)、肝機能障害(21報、オッズ比1.33(1.12~1.58);絶対リスク差8(3~14))、腎機能不全(8報、オッズ比1.14(1.01~1.28);絶対リスク差12(1~24))および眼症状(6報、オッズ比1.23(1.04~1.47);絶対リスク差14(2~29))のリスクが上昇したが、臨床的に確認した筋疾患および糖尿病のリスクの上昇はみられなかった。このリスクの上昇は、主要心血管事象のリスク低下の価値を上回ることはなかった。アトルバスタチン、lovastatin、ロスバスタチンにそれぞれ一部の有害事象との相関が認められたが、スタチンの種類に有意差がほとんど認められなかった。Emaxで用量反応関係によりアトルバスタチンが肝機能障害に及ぼす影響が認められたが、他のスタチンと副作用の用量反応関係については結論に至らなかった。 【結論】心血管疾患の1次予防に用いるスタチンに起因する有害事象のリスクは低く、心血管疾患予防の有効性を上回るものではなかった。この結果は、スタチンのリスクと便益の比が一般的に良好であることを示唆している。安全性に関する懸念事項を考慮に入れ、治療開始前にスタチンの種類や投与量を調整することを支持する科学的根拠は少なかった。 第一人者の医師による解説 1次予防におけるスタチンより長期での安全性は今後の課題 岡﨑 啓明 自治医科大学内分泌代謝学部門准教授 MMJ. February 2022;18(1):12 コレステロール管理に関する現在のガイドラインでは、心血管リスクが高い人ほど、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)をしっかりと下げることが基本理念となっている。心血管リスクが高く再発予防を目的とした場合、スタチン服用の意義は医者にも患者にも受け止めやすいであろう。しかし、1次予防では、心血管リスクが実感しづらいこともあり、スタチンの有益性(benefit)が本当に有害性(harm)を上回るのか、悩ましく感じる局面もある。2次予防目的のスタチン使用については、これまで多くの臨床試験から、有害性よりも有益性の方が大きいことが明らかとなっている。一方、1次予防では、もともと心血管リスクが低く、スタチンの有益性は2次予防に比べれば小さくなるため、有害性についてより慎重な検討が必要となる。例えば、スタチンを服用しているためになんとなく筋肉が痛いと思ってしまう“ノセボ効果”によって、有害性が過大評価される可能性もあり(1)、有害事象の定義を明確にしながら、正しい結論を得る必要がある。 そこで本論文では、1次予防でのスタチンと有益性・有害性の関連についてメタ解析を行った。筋障害については、定義を明確にし、自覚的筋症状と、他覚的筋疾患に分けて解析した。その結果、スタチンに関連して、自覚的筋症状、肝障害、腎障害、眼障害が有意に増加したが、リスク上昇はいずれもわずかであった。他覚的筋疾患については有意な増加を認めなかった。スタチンの種別検討では、有害事象の発現率に明らかな違いは認めず、またスタチンの用量別の検討では、有害事象の用量依存性は明らかではなかった(これについては異なる試験の結果の比較という方法論的問題もあるかもしれないが)。以上から、著者らは、心血管疾患の1次予防で、スタチンの有益性は有害性を上回る、と結論している。 コレステロールは、コレステロールの高さx年数の積算値的に心血管リスクとなる(cholesterol x years risk)(2)。心血管リスクの高い人ほどコレステロールを低くする、“the lower, the better”という基本理念に加えて、生まれつきのコレステロール値が高い人(例えば家族性高コレステロール血症)ほど若いころから治療した方がよいという理念、“the lower, the earlier, the better”が確立されてきている(3)。では、何歳から処方を開始すべきかとなると、有益性 /有害性のバランスに悩んでしまうこともあるが、そのような場合にも、今回のような研究は参考となるだろう。ただし、より長期間で安全かどうかは、今回の研究からは明確ではない。古くからの治療薬だが、臨床的に重要な課題が残されている。 1. Herrett E, et al. BMJ. 2021;372:n135.(MMJ 2021 年 8 月号 ) 2. Cohen JC, et al. N Engl J Med. 2006;354(12):1264-1272. 3. Khera AV, et al. J Am Coll Cardiol. 2016;67(22):2578-2589.
急性尿閉とがんのリスク:デンマークの住民を対象としたコホート試験
急性尿閉とがんのリスク:デンマークの住民を対象としたコホート試験
Acute urinary retention and risk of cancer: population based Danish cohort study BMJ. 2021 Oct 19;375:n2305. doi: 10.1136/bmj.n2305. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】急性尿閉初回診断後の泌尿生殖器がん、大腸がんおよび神経系がんのリスクを評価すること。 【デザイン】全国民を対象としたコホート試験。 【設定】デンマークの全病院。 【参加者】1995年から2017年までに急性尿閉のため初めて入院した50歳以上の患者75,983例。 【主要評価項目】一般集団と比較した急性尿閉患者の泌尿生殖器がん、大腸がんおよび神経系がんの絶対リスクおよび超過リスク。 【結果】急性尿閉初回診断後の前立腺がんの絶対リスクは、3ヵ月時点で5.1%(3,198例)、1年時点で6.7%(4,233例)、5年時点で8.5%(5,217例)であった。追跡期間が3ヵ月以内の場合、1,000人年当たり218例の前立腺がん超過症例が検出された。3ヵ月から12ヵ月未満の追跡では、1,000人年当たり21例の超過症例数が増加したが、12ヵ月を超えるとこの超過リスクは無視できるものとなった。追跡3ヵ月以内の超過リスクは、尿路がんが1,000人年当たり56例、女性の生殖器がんが1,000人年当たり24例、大腸がんが1,000人年当たり12例、神経系がんが1,000人年当たり2例であった。検討したがん種の多くで、超過リスクは追跡3ヵ月以内に限られていたが、前立腺がんおよび尿路がんのリスクは、追跡期間が3ヵ月から12ヵ月未満でも依然として高かった。女性では、浸潤性膀胱がんの超過リスクが数年にわたって認められた。 【結論】急性尿閉は、泌尿生殖器がん、大腸がん、神経系不顕性がんの臨床マーカーであると考えられる。急性尿閉を発症し、原因がはっきりと分からない50歳以上の患者では、不顕性がんの可能性を検討すべきである。 第一人者の医師による解説 急性尿閉では潜伏がんを考慮すべき 見落とし減らすため画像検査の実施も考慮 宮﨑 淳 国際医療福祉大学医学部腎泌尿器外科主任教授 MMJ. February 2022;18(1):17 急性尿閉は、突然の痛みを伴う排尿不能を特徴とし、直ちに導尿などを行い、膀胱の減圧が必要である。男性における急性尿閉の発症率は年間1,000人当たり2.2 ~ 8.8人で、推定発症率は70代では10%、80代では30%と、年齢とともに著しく上昇する(1)。男女比は13:1と推定されている。急性尿閉の根本的な原因のほとんどは良性であるが、急性尿閉は前立腺がんの徴候でもあり、他の泌尿器がん、消化器がんおよび神経系がんの徴候である可能性を示唆する研究もある。 そこで本論文では、デンマーク全国規模コホートから得たデータを用いて、急性尿閉による初回入院患者約76,000人における泌尿生殖器がん、大腸がん、神経系がんのリスクを一般集団と比較・検討した。その結果、急性尿閉の初診後の前立腺がんの絶対リスクは、3カ月後で5.1%、1年後で6.7%、5年後で8.5%であった。追跡期間3カ月以内において、前立腺がんの過剰症例が1,000人・年当たり218人検出された。さらに追跡期間3カ月~12カ月未満において1,000人・年当たり21人の過剰症例が検出されたが、12カ月を超えると過剰リスクは無視できる程度になった。追跡期間3カ月以内において、尿路系がんの過剰リスクは1,000人・年当たり56人、女性の生殖器系がんは1,000人・年当たり24人、大腸がんは1,000人・年当たり12人、神経系がんは1,000人・年当たり2人であった。ほとんどのがんで、過剰リスクは追跡期間3カ月以内に限定されたが、前立腺がんと尿路系がんのリスクは追跡期間3カ月~12カ月未満でも高いままであった。結論として、急性尿閉は、潜伏性尿路性器がん、大腸がん、神経系がんの臨床マーカーとなる可能性があるため、急性尿閉を呈し、明らかな基礎疾患を持たない50歳以上の患者には、潜伏がんを考慮すべきであると考えられた。 本研究が使用したデンマーク全国患者登録(Danish National Patient Registry)には人口約580万人の同国内のあらゆる病院に入院したすべての患者のデータが含まれていることから、今回のような全国規模の研究が可能である。この人口ベースのコホート研究において、泌尿生殖器がん、大腸がん、神経系がんが急性尿閉の原因となることが示唆された。我々泌尿器科医は、急性尿閉の患者を診察した際に前立腺肥大症と前立腺がんは常に念頭においているが、なかなか大腸がんや神経系疾患まで考慮することは少ない。見落としを減らすためにも、CTなどの画像検査を行うように心がける必要があるかもしれない。 1. Oelke M, et al. Urology. 2015;86(4):654-665.
職務上の認知刺激が高いと認知症発症率が低く中枢神経阻害蛋白も低い
職務上の認知刺激が高いと認知症発症率が低く中枢神経阻害蛋白も低い
Cognitive stimulation in the workplace, plasma proteins, and risk of dementia: three analyses of population cohort studies BMJ. 2021 Aug 18;374:n1804. doi: 10.1136/bmj.n1804. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】認知的に刺激的な仕事とその後の認知症リスクとの関連を調べ、この関連のタンパク質経路を特定する。 【デザイン】3セットの分析を行うマルチコホート研究 【設定】イギリス、ヨーロッパ、アメリカ。 【参加者】IPD-Workコンソーシアムの7つの集団ベースの前向きコホート研究(働く人々の個人参加データのメタ解析)の107 896人の認知刺激と認知症リスク、1つのコホート研究の2261人のランダムサンプルの認知刺激とタンパク質、2つのコホート研究の13 656人のタンパク質と認知症リスクの3つの関連について検討された。 【主要評価項目】認知的刺激は、ベースライン時に、能動的仕事と受動的仕事に関する標準的な質問票を用いて測定し、ベースライン時と経時的に、仕事への暴露マトリックス指標を用いて測定した。血漿試料中の4953個の蛋白質がスキャンされた。認知症発症の追跡期間は、コホートによって13.7年から30.1年の間であった。 【結果】180万人年のリスク期間中に、1143人の認知症患者が記録された。認知症のリスクは,仕事中の認知刺激が低い人と高い人で低いことが分かった(1万人年当たりの認知症の粗発生率は高刺激群4.8,低刺激群7.3,年齢・性別調整ハザード比0.77,95%信頼区間0.65~0.92,コホート別推定値の異質性I2=0%,P=0.99)。この関連は,教育,成人期の認知症の危険因子(ベースライン時の喫煙,大量のアルコール摂取,運動不足,仕事の負担,肥満,高血圧,糖尿病有病),認知症診断前の心代謝疾患(糖尿病,冠動脈心疾患,脳卒中)を追加調整しても頑健だった(完全調整ハザード比 0.82,95%信頼区間 0.68 ~ 0.98)。認知症のリスクは、最初の10年間の追跡期間中(ハザード比0.60、95%信頼区間0.37~0.95)、10年目以降も観察され(0.79、0.66~0.95)、認知刺激の反復職業曝露マトリックス指標を用いて再現した(1標準偏差増加あたりのハザード比0.77、95%信頼区間0.69~0.86)。多重検定を制御した解析では、仕事での認知刺激が高いほど、中枢神経系の軸索形成とシナプス形成を阻害するタンパク質のレベルが低かった:スリットホモログ2(SLIT2、完全調整β-0.34, P<0.001)、糖質硫酸転移酵素12(CHSTC, 完全に調整したβ -0.33, P<0.001)、およびペプチジルグリシンαアミド化モノオキシゲナーゼ(AMD, 完全に調整したβ -0.32, P<0.001)である。これらのタンパク質は認知症リスクの上昇と関連しており,1SDあたりの完全調整ハザード比は,SLIT2が1.16(95%信頼区間1.05~1.28),CHSTCが1.13(1.00~1.27),AMDが1.04(0.97~1.13)だった。 【結論】認知的に刺激のある仕事をする人は,刺激のない仕事の人よりも老後の認知症のリスクが低いことが分かった。認知的刺激が、軸索形成やシナプス形成を潜在的に阻害し、認知症のリスクを高める血漿タンパク質の低レベルと関連するという知見は、根本的な生物学的メカニズムへの手がかりを提供する可能性がある。 第一人者の医師による解説 大規模コホート研究参加者での確認と年齢、性、学歴などで補正した点が新たな知見 福井 俊哉 かわさき記念病院院長 MMJ. April 2022;18(2):35 認知刺激は認知リザーブを増やして認知症発症を抑制する可能性が示唆されている(1)。本論文は、職務における認知刺激と認知症リスクおよび血漿蛋白との関連を検討することを目的に、英国、欧州、米国で実施されたマルチコホート研究のデータを用いて3種類の解析を行った結果の報告である。解析の内容は以下のとおりである:(1)IPD-Work(individual participant data meta-analysis in working populations)consortiumにより集積された前向きマルチコホート研究13件(2)のうち、認知に関連のある7件に参加した107,896人における職務上認知刺激と認知症リスクの関連(2)このうち1件のコホートから無作為に抽出した2,261人における認知刺激と血漿蛋白の関連(3)(2)に別の1件のコホート参加者を追加した13,656人における血漿蛋白と認知症リスクの関連。職務上認知刺激はリッカート尺度を用いた質問票によりベースラインで判定し、観察期間中は職業曝露マトリックス方法を用いて客観的に評価した。血漿蛋白は4,953種類が検討された。認知症発症の経過観察期間はコホートにより13.7 ~ 30.1年と異なり、認知症の有無は電子健康記録に加えて認知症検査を繰り返すことにより判定した。 結果として、認知症リスクを有する約180万人・年の観察期間において、1,143人が認知症を発症した。認知症リスクは高認知刺激職務群の方が低認知刺激職務群よりも低かった。性、年齢、学歴、飲酒・喫煙歴、運動不足、認知症発症前の生活習慣病などで統計学的に補正してもこの関連は有意であった(ハザード比[HR], 0.82)。この傾向は特にアルツハイマー型認知症において明らかであった。認知症リスクは観察開始10年以内(HR,0.60)でも、10年以降(HR, 0.79)でも認められた。職業曝露マトリックス方法を用いた場合も同様な結果であった。血漿蛋白に関しては、職務における認知刺激が高いほど、中枢神経系の軸索形成やシナプス形成を抑制する蛋白(slit homologue2[SLIT2]、carbohydrate sulfotransferase[CHSTC]、peptidyl-glycine α -amidating monooxygenase[AMD])が低かった。これらの蛋白はより高い認知症リスクの上昇と関連していた。 今回の報告では、趣味などよりも長時間関わる職務における認知刺激の強さが認知症発症率ならびに軸索形成 /シナプス形成を抑制する蛋白の量と関連していることを、大規模コホート研究に参加した多数の対象者において確認した点に新規性がある。年齢、性、学歴、飲酒・喫煙歴、生活習慣病で補正してもこの関連が成り立つ点は新たなる知見であると思われる。 1. Livingston G, et al. Lancet. 2020;396(10248):413-446. 2. Kivimäki M, et al. Lancet. 2012;380(9852):1491-1497.
メトホルミン内服が早産期の妊娠高血圧腎症に有効な可能性
メトホルミン内服が早産期の妊娠高血圧腎症に有効な可能性
Use of metformin to prolong gestation in preterm pre-eclampsia: randomised, double blind, placebo controlled trial BMJ. 2021 Sep 22;374:n2103. doi: 10.1136/bmj.n2103. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【デザイン】無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験 【設定】南アフリカ共和国、ケープタウンの紹介病院。 【参加者】妊娠26+0週から31+6週の妊娠早期の子癇の女性180人:90人がメトホルミン徐放型、90人がプラセボにランダムに割り付けられた。 【主要評価項目】主要アウトカムは妊娠期間の延長であった 【結果】180人中、1人が試験薬服用前に出産した。無作為化から出産までの期間の中央値は、メトホルミン群で17.7日(四分位範囲5.4-29.4日、n=89)、プラセボ群で10.1日(3.7-24.1、n=90)、中央値の違いは7.6日(幾何平均比1.39、95%信頼区間0.99-1.95、P=0.057)であった。試験薬を任意の用量で継続投与した群では、妊娠期間延長の中央値がメトホルミン群で17.5日(四分位範囲5.4~28.7、n=76)であるのに対し、プラセボ群では7.9日(3.0~22.2、n=74)と、9.6日(幾何平均値 1.67, 95%信頼区間 1.16~2.42 )差が生じました。また、全用量投与群における妊娠期間延長の中央値は、メトホルミン群16.3日(四分位範囲4.8-28.8、n=40)に対してプラセボ群4.8日(2.5-15.4、n=61)、その差11.5日(幾何平均値 1.85 信頼区間 1.14-2.88 )となりました。母体、胎児、新生児の複合アウトカムと可溶性fms様チロシンキナーゼ-1、胎盤成長因子、可溶性エンドグリンの循環血中濃度に差はなかった。メトホルミン群では、出生時体重は有意差なく増加し、新生児室での滞在期間は短縮した。メトホルミン群では下痢が多かったが、試験薬に関連する重篤な有害事象は認められなかった。 【結論】この試験は、さらなる試験が必要であるが、メトホルミン徐放製剤が早産性子癇前症の女性において妊娠期間を延長できることを示唆している。TRIAL REGISTRATION:Pan African Clinical Trial Registry PACTR201608001752102 https://pactr.samrc.ac.za/. 第一人者の医師による解説 血管内皮機能障害を引き起こす蛋白濃度に有意差なし 今後さらなる研究必要 後藤 美希 虎の門病院産婦人科 MMJ. April 2022;18(2):53 妊娠高血圧腎症(pre-eclampsia)とは、妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、かつ蛋白尿を伴う病態、または高血圧と妊娠高血圧症候群関連疾患(子癇やHELLP症候群など)の両方を伴う病態の総称である。日本では20人に1人の割合で発症する比較的よく遭遇する疾患であるが、根本的治療は妊娠の終結しかない(1)。実際の医療現場では母児の命を守るために妊娠の終結を選ぶことになるが、児の予後を考えると少しでも長く妊娠を継続したいというジレンマに遭遇する。特に妊娠32週未満では在胎日数を数日延長できるだけでも児の予後は変わってくる。 本論文は早産期の妊娠高血圧腎症に対してメトホルミンが妊娠期間の延長に寄与するか否かを調べる目的で南アフリカ共和国の病院で実施された、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の報告である。妊娠26週から妊娠31週6日に妊娠高血圧腎症と診断された180人を、メトホルミン群とプラセボ群に1:1に割り付けて比較した。メトホルミン群では徐放性メトホルミン 3g/日を1日3回にわけて分娩まで服用を継続した。 メトホルミン 3g/日の服用を継続した群における服用開始から分娩(妊娠の終結)までの期間中央値は16.3日で、プラセボ群の4.8日に比べ延長していた(幾何平均比1.85;95%信頼区間[CI],1.14 ~ 2.88)。服用量を問わずメトホルミンを継続した群の場合、上記期間の中央値は17.5日で、プラセボ群の7.9日に比べ延長していた(幾何平均比1.67;95% CI, 1.16 ~ 2.42)。一方で、妊娠高血圧腎症の病因(2)と考えられている可溶性 fms様チロシンキナーゼ 1、胎盤成長因子(placental growth factor)、可溶性エンドグリンの値は両群間で有意差を認めなかった。児の出生時体重に関して両群間に有意差はなかったが、新生児集中治療室(NICU)入院期間はメトホルミン群で有意に短かった。有害事象はメトホルミン群で下痢が高頻度に発現したが(33% 対6%[プラセボ群])、治験薬に関連する重篤な有害事象は両群ともにみられなかった。著者らの結論としては、メトホルミンは早産期の妊娠高血圧腎症において、妊娠期間の延長に寄与する可能性があるとしている。 今回の報告は現時点では妊娠の終結しか主な治療法がない妊娠高血圧腎症に対して、治療の可能性があることを示唆している。一方で妊娠高血圧腎症に関連する、血管内皮機能障害を引き起こす蛋白の濃度は両群で有意差を認めておらず、今後さらなる研究が必要と思われる。 * HELLP=hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelet count 1. 日本産科婦人科学会ウエブサイト:産科・婦人科の病気 / 妊娠高血圧症候群  (https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=6) 2. Levine RJ, et al. N Engl J Med. 2004;350(7):672-683.
遺伝的リスク、脳卒中の発症、健康的な生活習慣を守ることの利点:英国バイオバンク参加者306 473人のコホート研究。
遺伝的リスク、脳卒中の発症、健康的な生活習慣を守ることの利点:英国バイオバンク参加者306 473人のコホート研究。
Genetic risk, incident stroke, and the benefits of adhering to a healthy lifestyle: cohort study of 306 473 UK Biobank participants BMJ 2018 Oct 24 ;363 :k4168 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】多遺伝子リスクスコアと健康的なライフスタイルの脳卒中発症との関連を評価する。 【デザイン】前向き人口ベースコホート研究。脳卒中と過去に関連した90の一塩基多型からなる多因子リスクスコアをP<1×10-5で構築し、脳卒中発症との関連性を検証した。健康的なライフスタイルの遵守は,非喫煙者,健康的な食事,肥満度30kg/m2,定期的な運動の4つの要素に基づいて決定した。 【結果】中央値7.1年(2 138 443人年)の追跡期間に,2077件の脳卒中(虚血性脳卒中1541件,脳内出血287件,くも膜下出血249件)発生の確認がなされた。脳卒中発症リスクは,遺伝的リスクの高い人(多因子スコアの上位3分の1)では,遺伝的リスクの低い人(下位3分の1)に比べて35%高かった:ハザード比1.35(95%信頼区間1.21~1.50),P=3.9×10-8.好ましくないライフスタイル(健康的なライフスタイルの要素が0または1つ)は,好ましいライフスタイル(健康的なライフスタイルの要素が3または4つ)と比較して,脳卒中のリスクが66%増加した:1.66(1.45~1.89),P=1.19×10-13。ライフスタイルとの関連は遺伝的リスク層とは無関係であった。 【結論】本コホート研究において,遺伝的因子とライフスタイル因子は脳卒中発症と独立して関連していた。これらの結果は、遺伝的リスクとは無関係に、集団全体が健康的なライフスタイルを遵守することの有益性を強調するものである。 第一人者の医師による解説 遺伝的リスク高くても 生活習慣改善で脳卒中を予防する可能性示唆 松尾 龍(助教)/鴨打 正浩(教授)九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座 MMJ.April 2019;15(2) 脳卒中は、遺伝要因と環境要因が組み合わさることにより発症する多因子疾患である。全世界52 万人規模のゲノムワイド関連解析であるMEGA-STROKEでは、32の遺伝子座が脳卒中リスクと関連することが明らかにされた(1)。一方、生活習慣などの環境要因は修正可能な危険因子であり、非喫煙、 糖尿病リスクの低下、運動習慣、健康的な食事は脳卒中の発症リスクを低下させることが明らかになっている。しかしながら、遺伝要因の影響下でも、健康的な生活習慣を遵守することで脳卒中発症リスクの低下がみられるかどうかは明らかではない。 本研究は、英国在住の50万人から生物学的な試料を収集した「英国バイオバンク」に、2006~10 年に登録された男女30万6,473人(年齢40~ 73歳)を対象とした前向き住民コホート研究である。遺伝要因は、遺伝子多型のリスクスコアから、「高遺伝的リスク群」、「中遺伝的リスク群」、「低遺伝的リスク群」の3群に分類した。生活習慣要因として、 非喫煙、健康的な食生活、BMI<30kg/m2、定期的 な運動習慣の4つを健康的な生活習慣と定義し、「好ましい生活習慣(健康的習慣3~4個)」、「普通の生活習慣(健康的習慣2個)」、「好ましくない生活習慣 (健康的習慣0~1個)」の3群に分類した。 追跡期間中央値は7.1年で、この期間中に2,077 人が脳卒中を発症した(脳梗塞1,541人、脳内出血 287人、くも膜下出血249人)。「低遺伝的リスク群」に比べ、「中遺伝的リスク群」、「高遺伝的リスク群」では、脳卒中発症のハザード比(95%信頼区間 [CI])が、それぞれ1.20(1.08~1.34)、1.35(1.21 ~1.50)と上昇した。また、生活習慣との関連についても、「好ましい生活習慣」を有する人と比較 すると、「普通の生活習慣」、「好ましくない生活習慣」 を有する人においては、脳卒中発症のハザード比 (95% CI)は、それぞれ1.27(1.16~1.40)、1.66 (1.45~1.89)と有意に上昇した。さらに、遺伝要因と生活習慣を組み合わせたモデルでは、遺伝 的リスクが高い人、生活習慣が好ましくない人ともに脳卒中発症リスクは上昇し、両者の間に相加効果が認められた。生活習慣要因の中では、喫煙と肥満(BMI≧30kg/m2)が脳卒中発症リスクの上昇に寄与していた。 本研究の結果は、遺伝的リスクが高くても、生活習慣の改善が脳卒中の予防に有効である可能性を示唆しており、すべての人に対して健康的な生活習慣を遵守するよう促すことを支持するものである。 1.Malik R, et al. Nat Genet. 2018;50(4):524-537
子癇前症と後年認知症になるリスク:全国規模のコホート研究
子癇前症と後年認知症になるリスク:全国規模のコホート研究
Pre-eclampsia and risk of dementia later in life: nationwide cohort study BMJ 2018 Oct 17 ;363 :k4109 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】子癇前症とその後の認知症との関連を、全体および認知症のサブタイプや発症時期別に検討する。 【デザイン】全国規模の登録に基づくコホート研究 【対象】デンマーク、1978年から2015年の間に少なくとも1回の生児または死産をした全女性。 【主要評価項目】Cox回帰を用いて推定した、子癇前症の既往がある女性とない女性の認知症発症率を比較したハザード比。 【結果】コホートは1,178人の女性からなり、追跡期間は20 352 695人年であった。子癇前症の既往のある女性は、子癇前症の既往のない女性と比較して、後年、血管性認知症のリスクが3倍以上(ハザード比3.46、95%信頼区間1.97~6.10)であった。血管性痴呆との関連は、早期発症(2.32、1.06〜5.06)よりも晩期発症(ハザード比6.53、2.82〜15.1)の方が強いようだ(P=0.08)。糖尿病、高血圧、心血管疾患の調整により、ハザード比は中程度にしか減少しなかった。感度分析により、肥満度が血管性痴呆との関連を説明することはないことが示唆された。一方、アルツハイマー病(ハザード比1.45、1.05~1.99)およびその他/特定不能の認知症(1.40、1.08~1.83)については、緩やかな関連しか認められなかった。心血管疾患、高血圧、および糖尿病は、関連性を実質的に媒介する可能性は低く、子癇前症および血管性認知症は、根本的なメカニズムまたは感受性経路を共有している可能性が示唆された。子癇前症の既往を問うことは、医師が疾患の初期徴候をスクリーニングすることで有益な女性を特定し、早期の臨床介入を可能にするのに役立つ可能性がある。 第一人者の医師による解説 認知症予防の観点で大きな意義 妊娠高血圧腎症の既往に留意必要 宮川 統爾 Department of Neurology, Mayo Clinic /岩坪 威  東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授 MMJ.April 2019;15(2) 妊娠高血圧腎症(π)の既往は、将来の認知症、特に65歳以上の血管性認知症の強いリスクとなることが、デンマークの全国データベースを活用した 今回のコホート研究によって示された。 妊娠高血圧腎症は全妊娠の3~5%に生じる血管内皮障害を機序とする病態で、既往歴のある女性では将来の心血管合併症リスクが高いことが知られてきた。一方、妊娠高血圧腎症と将来の認知症との関連については、数十年に及ぶ発症時期のギャップから、疫学研究データは限定的である(1),(2)。 本研究は、デンマーク全国民を登録したデータベースをもとに、1978~2015年に出産または 死産を経験した117万8,005人の女性を母集団 として中央値21.1年、2035万2,695人・年の追跡を行い、妊娠高血圧腎症既往の有無と将来の認知症との関連を解析した。妊娠高血圧腎症既往を有する女性は既往のない女性と比較し、血管性認知症発症リスクが3倍以上高かった(ハザード比[HR], 3.46;95%信頼区間[CI], 1.97~6.10)。さら に、発症年齢を65歳以上の老年期発症と65歳未満の若年期発症に分類すると、HRが前者では6.53 (95% CI, 2.82~15.1)、後者では2.32(1.06 ~5.06)と老年期発症例でリスク上昇が大きかった。高血圧や冠動脈疾患、脳梗塞、慢性腎臓病、糖尿病などの心血管合併症因子による補正後もリスクの減弱はわずかで、両病態間の強い関連性は残存した。血管性認知症以外の認知症との関連は相対的に小さく、アルツハイマー病で45%、その他 /未特定の認知症で40%のリスク上昇を認めたものの、 アルツハイマー病ではデータが不十分で補正できない交絡因子として肥満の影響が示唆された。 妊娠高血圧腎症罹患から認知症発症には数十年のギャップが存在することが大半で、本研究でも約90%の女性は解析時に65歳未満であり、追跡期間中に認知症と診断された者は0.1%にすぎない。しかしながら、母集団の大きさや追跡期間の長さから、本研究が明らかにした妊娠高血圧腎症既往と将来の認知症、特に老年期の血管性認知症リスクの強い関連性は、認知症予防の観点で大きな意義がある。疾患修飾薬による認知症予防は未だ道半 ばであり、妊娠高血圧腎症既往のある女性に対しての早期からの血圧・脂質・糖などの心血管危険因子 への介入は、血管性認知症予防に有用かもしれない。 また、両病態での共通メカニズムの探索が、血管性認知症の疾患修飾薬開発につながる可能性がある。本研究からの知見の再現性が他研究によって得られることが望まれる 1. Nelander M, et al. BMJ Open 2016 Jan 21;6(1):e009880. doi: 10.1136/ bmjopen-2015-009880. 2. Andolf EG, et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2017;96(4):464-471. doi: 10.1111/aogs.13096.
ナトリウムグルコースコトランスポーター2阻害剤と重篤な有害事象のリスク:全国規模の登録に基づくコホート研究。
ナトリウムグルコースコトランスポーター2阻害剤と重篤な有害事象のリスク:全国規模の登録に基づくコホート研究。
Sodium glucose cotransporter 2 inhibitors and risk of serious adverse events: nationwide register based cohort study BMJ 2018 Nov 14 ;363 :k4365 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】ナトリウムグルコースコトランスポーター2(SGLT2)阻害剤の使用と現在懸念されている7つの重篤な有害事象との関連を評価する。 【デザイン】登録ベースのコホート研究。 【設定】2013年7月から2016年12月までスウェーデンおよびデンマークの調査。 【参加者】SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン61%、エンパグリフロジン38%、カナグリフロジン1%)の新規ユーザー17 213人とアクティブコンパレータであるグルカゴン様ペプチド1(GLP1)受容体作動薬の新規ユーザー17 213人の傾向スコアマッチコホートを作成した。 【主要評および測定法】主要アウトカムは、病院記録から特定した下肢切断、骨折、糖尿病性ケトアシドーシス、急性腎障害、重症尿路感染症、静脈血栓塞栓症、急性膵炎であった。ハザード比および95%信頼区間はCox比例ハザードモデルを用いて推定した。 【結果】SGLT2阻害薬の使用は、GLP1受容体作動薬と比較して、下肢切断のリスク上昇と関連していた(発生率2.7<i>v1.1イベント/1000人年、ハザード比2.32、95%信頼区間1.37~3.91)、糖尿病性ケトアシドーシス(1.3<i>v0.6, 2.14, 1.01~4.52 )があったが、骨折(15.4<i>v13.9、 1.11, 0.93~1.33 )、急性腎臓障害(2.1<i>v3)には関係しなかった。3 v 3.2, 0.69, 0.45~1.05), 重篤な尿路感染症 (5.4 v 6.0, 0.89, 0.67~1.05) 。19),静脈血栓塞栓症(4.2v 4.1, 0.99, 0.71~1.38) または急性膵炎(1.3v 1.2, 1.16, 0.64~2.12 )であった。 【結論】2カ国の全国規模の登録の分析では,GLP1受容体作動薬と比較してSGLT2阻害薬の使用は,下肢切断と糖尿病性ケトアシドーシスのリスク上昇と関連していたが,現在懸念されている他の重篤な有害事象とは関連がなかった。 第一人者の医師による解説 リスクの評価を行ったうえでSGLT2阻害薬を開始することが必要 木下 智絵 川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学/加来 浩平 川崎医科大学学長付特任教授 MMJ.April 2019;15(2) 本論文は、SGLT2阻害薬で懸念される7項目の有害事象を評価するため、GLP-1受容体作動薬を対照にスウェーデンとデンマークの日常診療データを用いた大規模コホート研究の報告である。両群の患者背景は傾向スコアマッチさせている。その結果、SGLT2阻害薬はGLP-1受容体作動薬に比べ、 下肢切断と糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスクが高く、他の有害事象に差はなかった。サブグループ解析としてインスリン治療の有無でのDKA リスク、末梢動脈疾患や下肢切断歴の有無による下肢切断リスクも同様の結果であった。 ダパグリフロジン 61%、エンパグリフロジン 38%、カナグリフロジン 1%と使用率に差が大きく、薬剤別の評価はできていない。CANVAS Programでカナグリフロジンによる下肢切断リスク上昇が注目されたが、機序は不明である。仮説として体液量減少との関連が示唆されているが、他の大規模 RCTではリスク上昇は認めず、SGLT2阻 害薬に共通のものかも含めて議論がある(1)。また、 本研究で両群の下肢切断発生率は1,000人 /年あたり2.7対1.1と非常に低く、既報の1.5~5.0 の 範囲内であった(2)。日本での年間下肢切断率 は 0.05%で海外報告の10分の1程度とされ、既往例を除けば、SGLT2阻害薬のメリットが相殺されるとは考えにくい。 一方、本研究におけるDKA発現率は対照群に比べ有意差はあるが低い(1,000人 /年あたり1.3 対0.6)。デンマークにおける2型糖尿病のDKA 発現率 は1,000人 /年 あたり1~2例 である。 SGLT2阻害薬に関連したDKAでは、多くが代謝的ストレス状態(手術、高強度の運動、心筋梗塞、脳卒中、重症感染症、長時間の空腹状態など)の高リスク患者であった。また、EMPA-REG OUTCOME やCANVAS ProgramではDKA発現率にプラセボ群との有意差はなかったことから、『SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation』(3)に留意して適切に治療を行うことで、SGLT2阻害薬に 関連したDKAの多くは回避できると考える。 最後に、1型糖尿病患者 へ のSGLT2阻害薬処方も可能となり、高リスク患者が含まれる可能性がある。SGLT2阻害薬のメリットを享受するためにも、より安全性に配慮し、DKA、足潰瘍、下肢切断の既往の確認、末梢動脈疾患などリスクを評価したうえで使用を開始することが望まれる。 1. Scheen AJ. Nat Rev Endocrinol. 2018;14(6):326-328. 2. Yuan Z, et al. Diabetes Obes Metab. 2018;20(3):582-589. 3. 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommen-dation」http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page= article&storyid=48
減量維持中のエネルギー消費に対する低炭水化物食の効果:無作為化試験。
減量維持中のエネルギー消費に対する低炭水化物食の効果:無作為化試験。
Effects of a low carbohydrate diet on energy expenditure during weight loss maintenance: randomized trial BMJ 2018 Nov 14 ;363 :k4583 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】炭水化物と脂肪の比率を変えた食事が総エネルギー消費量に及ぼす影響を明らかにすること 【デザイン】無作為化試験 【設定】米国2施設での多施設共同、2014年8月から2017年5月 【参加者】肥満度25以上の18~65歳の成人164名。 【介入】ランインダイエットで12%(2%以内)の体重減少後、炭水化物含有量に応じて3つの試験食(高、60%、n=54、中、40%、n=53、低、20%、n=57)のいずれかに20週間ランダムに割り付けました。試験食はタンパク質がコントロールされ、体重減少が2kg以内に維持されるようにエネルギーが調整されていた。炭水化物-インスリンモデルで予測される効果修飾を調べるため、サンプルを減量前のインスリン分泌量(経口ブドウ糖後30分のインスリン濃度)の3分の1に分割した。 【主要評および測定法】主要アウトカムは、二重標識水を用いて測定した総エネルギー消費量で、intention-to-treat解析により求めた。プロトコールごとの解析では、目標体重の減少を維持した参加者を含むため、より正確な効果推定ができる可能性がある。 【結果】intention-to-treat解析において、総エネルギー消費量は食事によって異なり(n=162、P=0.002)、総エネルギー摂取量に対する炭水化物の寄与が10%減少するごとに52kcal/d(95%信頼区間23~82)の線形傾向が見られた(1kcal=4.18kJ=0.00418MJ)。総エネルギー消費量の変化は、高炭水化物食と比較して、中炭水化物食に割り当てられた参加者で91 kcal/d(95%信頼区間-29〜210)、低炭水化物食に割り当てられた参加者で209 kcal/d(91〜326)大きかった。プロトコルごとの解析(n=120、P<0.001)では、それぞれの差は131 kcal/d(-6~267)および278 kcal/d(144~411)であった。体重減少前のインスリン分泌量が最も多い3分の1の参加者では、低炭水化物食と高炭水化物食の差はintention-to-treat解析で308kcal/d、per protocol解析で478kcal/dだった(P<0.004)。グレリンは、低炭水化物ダイエットに割り当てられた参加者において、高炭水化物ダイエットに割り当てられた参加者と比較して有意に低かった(両分析)。レプチンも低炭水化物食に割り当てられた参加者で有意に低かった(プロトコルごと)。 【結論】炭水化物-インスリンモデルと一致して、食事性炭水化物の低下は減量維持中のエネルギー消費量を増加させた。この代謝効果は、特にインスリン分泌が多い人の肥満治療の成功を向上させる可能性がある。 【TRIAL REGISTRATION】ClinicalTrials. gov NCT02068885。 第一人者の医師による解説 エネルギー消費と炭水化物比率の関連 さらなる検討必要 的場 圭一郎(講師)/宇都宮 一典(教授) 東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 MMJ.April 2019;15(2) 著者らの提唱する炭水化物̶インスリンモデル によると、高炭水化物食摂取後のインスリン/グルカゴン比上昇がエネルギー消費を抑制し、脂肪組織への脂肪蓄積を促進する。この状態が飢餓を進させて食欲が増加し、特に高インスリン血症を呈する肥満者で体重を増加させる。一方でこの炭水化物̶インスリンモデルに基づいた低炭水化物食の有効性には反論もあり、その根拠はこれまでの検証で対照群が存在しないこと、メタ解析では低炭水化物食と低脂肪食の間でエネルギー消費に差が認められなかったことである。しかし、効果が認められなかった研究のほとんどが2週間以内の短期間であり、低炭水化物食への適応化には少なくとも2~3週間が必要とする報告もある。そこで、本研究では減量維持期における低炭水化物食のエネルギー消費に対する効果を20週間にわたって観察した。 対象はBMI 25kg/m2以上の成人164人とし、 12%の体重減少後、炭水化物の割合が異なる3つの群(総エネルギー摂取量に占める炭水化物の比率: 高60%、中40%、低20%)に割り付けられた。主要評価項目は、二重標識水法によって測定した総エネルギー消費量とされた。結果、総エネルギー摂取量に占める炭水化物比率によって総エネルギー消費量には有意な差があり、炭水化物比率が10%低下するごとに52kcal/日増加した。高炭水化物群 に比べて中炭水化物群では91kcal/日、低炭水化 物群では209kcal/日増加した。低炭水化物群では、 食欲を増進させるホルモンであるグレリンの血中濃度が低下していた。 本研究から得られた結果は、炭水化物̶インスリンモデルに矛盾しないものであり、高インスリン血症を呈する肥満者の食事療法を検討する上で重要な意義を有する、と著者らは結論付けている。しかし、本研究は栄養素の組成がエネルギー消費に影響を与えることを示した点では新規性があるものの、その測定方法の精度には限界があり、実臨床で本研究のような厳格なプロトコールを実施することは困難である。また、炭水化物の総量と比率のどちらを重視すべきか、糖尿病のような代謝異常を合併した肥満者での効果、栄養素の組成がエネ ルギー消費を変化させる詳細な機序は不明であり、さらなる検討が必要である。
ハイリスク患者における急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術と経皮的カテーテルドレナージ(CHOCOLATE):多施設無作為化臨床試験。
ハイリスク患者における急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術と経皮的カテーテルドレナージ(CHOCOLATE):多施設無作為化臨床試験。
Laparoscopic cholecystectomy versus percutaneous catheter drainage for acute cholecystitis in high risk patients (CHOCOLATE): multicentre randomised clinical trial BMJ 2018 Oct 8 ;363 :k3965 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】急性結石性胆嚢炎のハイリスク患者において、腹腔鏡下胆嚢摘出術が経皮的カテーテルドレナージよりも優れているかどうかを評価すること 【デザイン】多施設共同無作為化比較優位性試験。 【設定】オランダの11病院、2011年2月~2016年1月。 【参加者】急性結石性胆嚢炎のハイリスク患者142例を腹腔鏡下胆嚢摘出術(n=66)または経皮的カテーテルドレナージ(n=68)に無作為に割り付けた。高リスクとは、急性生理学的評価および慢性健康評価II(APACHE II)スコアが7以上と定義された。主要評価項目は、1年以内の死亡、1ヶ月以内の感染症および心肺合併症、1年以内の再治療の必要性(急性胆嚢炎に関連した手術、放射線治療、内視鏡治療)、1年以内の胆道疾患の再発と定義しました。 【結果】本試験は、予定されていた中間解析を経て早期に終了しました。死亡率は腹腔鏡下胆嚢摘出術群と経皮カテーテルドレナージ群で差はなかったが(3%v 9%、P=0.27)、重篤な合併症は66例中8例(12%)で胆嚢摘出術群に、68例中44例(65%)で経皮ドレナージ群に発現した(リスク比0.19、95%信頼区間0.10~0.37、P<0.001)。経皮的ドレナージ群では45例(66%)で再手術が必要であったのに対し、胆嚢摘出術群では8例(12%)であった(P<0.001)。経皮的ドレナージ群では胆道疾患の再発率が高く(53% v 5%、P<0.001)、入院期間中央値は長かった(9日 v 5日、P<0.001)。 【結論】腹腔鏡下胆嚢摘出術は経皮カテーテルドレナージと比較して、急性胆嚢炎のハイリスク患者における主要な合併症の発生率を減少させた. 【TRIAL REGISTRATION】Dutch Trial Register NTR2666. 第一人者の医師による解説 日本の経皮的胆囊ドレナージは安全に施行 グレードⅢでは第1選択 石崎 陽一 順天堂大学医学部附属浦安病院消化器・一般外科教授 MMJ.April 2019;15(2) これまで手術リスクの低い急性胆嚢炎に対しては早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)が治療の第 1選択であることに異論はなかったが、手術リスクの高い患者に対する治療に関しては一定の結論は出ていなかった。今回のオランダのCHOCOLATE 研究により手術リスクの高い患者でも経皮的胆嚢 ドレナージ(PGBD)は術後合併症が多く、Lap-Cが 推奨されることが示された。 APACHE IIスコア 7以上15未満の手術リスクを有する 急性胆嚢炎 の 患者 をLap-C群(n=66) とPGBD群(n=68)に盲検的ランダム化して治 療成績を比較検討した。主要評価項目 は1年以内 の死亡、1カ月以内の重篤な合併症(腹腔内膿瘍、肺炎、心筋梗塞、肺塞栓症)、1年以内の再治療の必要 性、および1年以内の胆道疾患の再燃である。死亡 例はLap-C群2人(3%)、PGBD群6人(9%)で発 生頻度に差がなかった。しかしながら、Lap-C群の 死亡例はいずれも治療と無関係(1例は食道がん、 1例は大腸がん)であったが、PGBD群の死亡6人 中3人は急性胆嚢炎または再発胆嚢炎による敗血 症であった。手技に関連した重篤な合併症はLap-C 群8人(12 %)、PGBD群44人(65 %)とPGBD 群で高率に発症した。1年以内に再治療を要したの はLap-C群8人(12%)、PGBD群45人(66%)と PGBD群で有意に多かった。また胆道疾患の再燃 はLap-C群3人(5 %)、PGBD群36人(53 %)と Lap-C群で有意に少なかった。またPGBD群では 経過観察中に11人(16%)で緊急胆嚢摘出術、20 人(29%)で待機的胆嚢摘出術が必要であった。1 人あたりの医療経費はLap-C群4,993ポンドに 対してPGBD群では7,427ポンドと高価であっ た。以上より手術リスクの高い急性胆嚢炎に対するPGBDは術後重篤な合併症が多く、Lap-Cを施行 すべきであるとしている。 日本 か ら は 急性胆嚢炎 に 対 す る 治療指針 としてTokyo Guidelines 2018が 提唱 さ れ て い る。 CHOCOLATE研究 では 急性胆嚢炎 の 重症度 が 記載されていないが、Tokyo Guidelinesでは急性胆 嚢炎の重症度に応じた治療アルゴリズムが示されている(1)。Grade I、IIでは早期のLap-Cが推奨されているが、Grade IIIでは経験豊富な内視鏡外科医に よるLap-Cが可能でない場合は治療の第1選択は PGBDであり、その後の待機的 Lap-Cが推奨されている(2)。日本ではPGBDは合併症も少なく安全に施行されており、最近では内視鏡的経乳頭的な胆嚢 ドレナージも治療選択肢の1つとされている(3)。 1. Yokoe M, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018;25(1):41-54. 2. Mukai S, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2017;24(10):537-549. 3. Mori Y, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018;25(1):87-95.
血清尿酸値に対する食事の幅広い寄与の評価:人口ベースコホートのメタアナリシス
血清尿酸値に対する食事の幅広い寄与の評価:人口ベースコホートのメタアナリシス
Evaluation of the diet wide contribution to serum urate levels: meta-analysis of population based cohorts BMJ 2018 Oct 10 ;363 :k3951 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】食事の構成要素と血清尿酸値との関連を系統的に検証し、血清尿酸値の集団分散に対する食事パターンの推定値と遺伝的変異の相対的寄与を評価する。 【デザイン】米国の断面データのメタ解析。 【データソース】5件のコホート研究。 【レビュー方法】米国のヨーロッパ系祖先16 760人(男性8414人、女性8346人)を解析に含めた。対象者は、18歳以上で、腎臓病や痛風がなく、尿酸降下薬や利尿薬を服用していない人であった。すべての参加者は、血清尿酸値の測定、食事調査データ、潜在的交絡因子に関する情報(性別、年齢、肥満度、1日の平均カロリー摂取量、教育年数、運動レベル、喫煙状況、閉経状況)、ゲノムワイド遺伝子型を持っていた。主なアウトカム指標は、血清尿酸値の平均値と血清尿酸値の分散であった。多変量線形回帰分析のβ値(95%信頼区間)およびボンフェローニ補正P値、回帰部分R2値を用いて関連を定量的に評価した。 【結果】男性、女性、または完全コホートにおいて、7つの食品が血清尿酸値上昇と関連し(ビール、酒、ワイン、ジャガイモ、鶏肉、ソフトドリンク、肉(牛、豚、ラム))、8つの食品が血清尿酸値低下と関連していた(卵、ピーナッツ、冷たいシリアル、脱脂乳、チーズ、ブラウンパン、マーガリン、非シトラス果実)。健康的な食事ガイドラインに基づいて構築された3つの食事スコアは血清尿酸値と逆相関し、4番目のデータ駆動型の食事パターンは血清尿酸値上昇と正相関したが、それぞれ血清尿酸値の分散の0.3%以下を説明することができた。これに対し、血清尿酸値の分散の23.9%は、一般的な、ゲノム幅の広い一塩基の変異によって説明された。 【結論】遺伝的寄与とは対照的に、食事は一般集団における血清尿酸値の変動をほとんど説明しない。 第一人者の医師による解説 塩基変異影響も踏まえ、アジア・日本でも各世代別 /性別での検討が必要 大内 基司(獨協医科大学医学部薬理学講座准教授)/安西 尚彦(千葉大学大学院医学研究院薬理学教授) MMJ.April 2019;15(2) 高尿酸血症は痛風の主要危険因子であり、さまざまな疾患と関連付けられている。尿酸は肝臓で生成され排出は腎臓からを主とし、腸管からも排出され体内の尿酸値が決定されている。体内尿酸のバランスは遺伝要因と環境要因で修飾される。今日まで、血清尿酸値に対する食事の寄与の系統的 解析は、大きなデータセットでは行われていない。 本研究は、血清尿酸値への食事全体の関連付け研究において個々の食事成分を系統的に解析し、また 血清尿酸値に食事全体とゲノムワイド一塩基変異 の相対的寄与を定量化することを目的とし、米国の 5つのコホート研究(ARIC、CARDIA、CHS、FHS、 NHANES III)を使用した。 食事質問票の記載が10%未満、摂取予想カロリー が600キロカロリー未満や4,200キロカロリー 超などの除外基準が定められ、5つのコホートの男女比はほぼ 同率(44.8~56.7%)で、平均血清 尿酸値 5.18~5.84mg/dL、平均年齢26~72 歳(CHS[参加者1,954人]が72±5歳)と幅があった。15の食品が尿酸値との関連で挙がり、まだ確立していない9食品で尿酸値上昇に鶏肉、ジャガイモ、低下にはチーズ、非柑橘類フルーツ、黒 パン、ピーナッツ、マーガリン、シリアル、卵が挙がった。しかし、それぞれは血清尿酸値分散の1% 未満を説明するのに過ぎなかったとし、同様に食事スコア(DASH diet(1) 0.28%、Healthy Eating diet 0.15%、Mediterranean diet 0.06%)も影響が非常に小さかったとしている。一方、一般的 な遺伝的変異体によって説明される遺伝率推定値 は23.9%(NHANES IIIを除く)(男性23.8%、 女性40.3%)で、ゲノムワイド関連研究でのトラ ンスポーター関連の一塩基多型含め30の変異体(2) からなる遺伝的リスクスコアは血清尿酸値分散の 7.9%を説明するとした。また、遺伝的リスクスコアと交互作用を示したのは、DASH dietスコアの 女性コホートのみであった(P=0.04)。したがって今回のデータセットでは、受け継がれた遺伝的変異と比較すると、食事全体による血清尿酸値分散への影響ははるかに少ないと報告している。 一方で、本研究では腎臓病、痛風、尿酸降下薬や 利尿薬服用を除外している。除外項目や平均尿酸値 から高尿酸血症の低含有率も予想される。また耐糖 能異常や糖尿病と尿酸値は複雑な関連性があり、本研究における5つのコホート研究の糖尿病有病率(低い順に0.53、1.01、3.92、5.39、6.22%)は米国の推測される糖尿病有病率(20歳以上の9.8% [1988~1994年]、12.4%[2011~2012年])(3) より低い中での検討であることに注意して解釈す べきである。糖尿病有無別の詳細な検討や、アジア・ 日本でも世代別・性別での検討を含め、今後さらなるデータ解析が待たれる。 1. Fung TT, et al. Arch Intern Med. 2008;168(7):713-720. 2. Köttgen A, et al. Nat Genet. 2013;45(2):145-154. 3. Menke A, et al. JAMA. 2015;314(10):1021-1029.
プライマリーケアにおける高齢者の潜在的に不適切な処方の有病率と入院との関連:縦断的研究。
プライマリーケアにおける高齢者の潜在的に不適切な処方の有病率と入院との関連:縦断的研究。
Prevalence of potentially inappropriate prescribing in older people in primary care and its association with hospital admission: longitudinal study BMJ 2018 Nov 14 ;363 :k4524 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】高齢のプライマリケア患者(65歳以上)における入院が不適切な処方の可能性と関連するかどうか、またそのような処方が入院前よりも入院後に多く見られるかどうかを明らかにする。 【デザイン】一般診療記録からレトロスペクティブに抽出したデータの縦断研究 【設定】2012-15年にアイルランドで行われた一般診療44件 【参加者】参加診療所の65歳以上の成人。 【主要評価項目】高齢者処方スクリーニングツール(STOPP)バージョン2の45の基準を用いて評価した潜在的不適切処方の有病率、潜在的不適切処方の基準を満たす割合(層別Cox回帰)および潜在的不適切処方のバイナリ存在(ロジスティック回帰)の両方で分析し、患者の特性で調整した。感度分析では、患者の特徴と診断に基づいた傾向スコアによるマッチングを行った。 【結果】全体で38 229名の患者が含まれ、2012年の平均年齢は76.8歳(SD 8.2)、43%(13 212名)が男性であった。毎年、10.4~15.0%(2015年3015/29 077~2014年4537/30 231)の患者が少なくとも1回の入院を経験していた。潜在的に不適切な処方の全体の有病率は、2012年の患者の45.3%(13 940/30 789)から2015年の51.0%(14 823/29 077)までの範囲であった。年齢、性別、処方品目数、併存疾患、健康保険とは無関係に、入院は潜在的不適切処方の基準を明確に満たす高い割合と関連していた;入院の調整ハザード比は1.24(95%信頼区間1.20~1.28)であった。入院した参加者では、患者の特性とは無関係に、入院後に不適切な処方をする可能性が入院前よりも高かった;入院後の調整オッズ比は1.72(1.63〜1.84)であった。傾向スコアをマッチさせたペアの解析では,入院後のハザード比は1.22(1.18~1.25)とわずかに減少した。 【結論】入院は潜在的に不適切な処方と独立して関連していた。入院が高齢者に対する処方の適切性にどのような影響を及ぼすか、また入院による潜在的な悪影響をどのように最小化できるかを明らかにすることが重要である。 第一人者の医師による解説 不適切処方に対する教育・啓発と多職種協働による包括的取り組みが必要 小川 純人 東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授 MMJ.April 2019;15(2) 高齢者は加齢に伴う生理機能や身体機能の変化を認めやすく、自立生活障害や多臓器にわたる病 態、多彩な症候を呈しやすいことが特徴として挙げられる。また、概して高齢者では若年者に比べて薬物有害事象が認められやすいとされ、老年症候群の原因となりうる薬剤が比較的多く注意を要することが少なくない。また、高齢者は多疾患を有するためpolypharmacyの状態になりやすく、薬物 有害事象も起こりやすい。高齢者に対してはベネ フィットよりもリスクが高いなどの理由から、治療方針にかかわらず使用中止を検討する必要がある薬剤があり、それらはpotentially inappropriate medication(PIM)と呼ばれている。 PIMの薬物リストとして世界的には、米国のBeers 基準2015(1) や欧州のSTOPP/START ver 2(2)の2つが知られており、日本においても「高齢者の安全な薬物療法 ガイドライン 2015」として10年ぶりに内容が 改訂された(3)。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」は、系統的レビューによる科学的根拠に基づいており、STOPP/STARTと同様に「特に慎重な投与を要する薬物リスト」や「開始を考慮するべき薬物リスト」から構成されている。同ガイドラインは75歳以上高齢者やフレイル・要介護高齢 者に対する慢性期の薬物療法を適用対象とし、医師、 薬剤師、看護師など多職種による利用・活用が想定、 期待されている。 本研究では、65歳以上の高齢患者を対象に、高齢者の処方スクリーニングツール(STOPP criteria version 2)を用いてPIMと入院の関連を縦断研究 で検討したもので、PIMの割合は、患者全体の半数 前後に及んでいた。また、PIMの発生率上昇は入院 と関連し、患者特性によらず入院前より入院後の方がPIMが高い結果となった。入院が高齢患者への処 方の妥当性やPIMに及ぼす影響、ならびに入院によるこうした影響をどのように軽減、回避させるかといった多職種協働による連携、取り組みが重要である。日本においては、適切なpolypharmacy介 入の推進に向けて、平成28年度診療報酬改定において薬剤総合評価調整加算(入院患者向け)と薬剤 総合評価調整管理料(外来患者向け)が新設された。 そこでは、基本的に6種類以上使っていた薬を2種 類以上削減できた際に算定が認められており、今 入院や外来におけるpolypharmacy介入や減薬評価が一層進むものと期待される。 1. The American Geriatrics Society 2015 Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2015;63(11):2227-2246. 2. O'Mahony D, et al. Age Ageing. 2015;44(2):213-218. 3. 日本老年医学会、日本医療研究開発機構研究費・高齢者の薬物治療の安全 性に関する研究研究班:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015、メジ カルビュー社、東京、2015.
ローテーションによる夜勤勤務と不健康な生活習慣の遵守が2型糖尿病のリスクを予測する:米国の女性看護師を対象とした2つの大規模コホートからの結果
ローテーションによる夜勤勤務と不健康な生活習慣の遵守が2型糖尿病のリスクを予測する:米国の女性看護師を対象とした2つの大規模コホートからの結果
Rotating night shift work and adherence to unhealthy lifestyle in predicting risk of type 2 diabetes: results from two large US cohorts of female nurses BMJ 2018 Nov 21 ;363 :k4641 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】2型糖尿病リスクに対する交代制夜勤勤務期間と生活習慣因子の関連を前向きに評価し,交代制夜勤勤務のみ,生活習慣のみ,およびそれらの相互作用に対するこの関連を定量的に分解する。 【デザイン】前向きコホート研究。看護師健康調査(1988~2012年)および看護師健康調査II(1991~2013年)。 【参加者】ベースライン時に2型糖尿病、心血管疾患、がんのない女性143 410名。 【曝露】回転夜勤勤務は、その月の日勤および夜勤に加えて、月に3回以上の夜勤を行うことと定義した。不健康な生活習慣とは、現在の喫煙、1日30分以下の中・高強度の身体活動、Alternate Healthy Eating Indexスコアの下位3/5の食事、25以上の肥満度などであった。 【主なアウトカム評価】2型糖尿病の発症例は、自己申告により確認され、補足的な質問票により検証された。 【 結果】22~24年の追跡期間中に、10,915例の2型糖尿病が発症した。2型糖尿病の多変量調整ハザード比は、交代制夜勤勤務期間の5年刻みで1.31(95%信頼区間1.19~1.44)、不健康な生活習慣因子(喫煙歴、食事の質の低さ、身体活動の低さ、過体重または肥満)で2.30(1.88~2.83)であった。2型糖尿病と回転夜勤の5年ごとの増分と不健康な生活習慣因子ごとの共同関連については、ハザード比は2.83(2.15~3.73)で、有意な相加的相互作用が認められた(相互作用のP<0.001)。共同研究の割合は,交代制夜勤勤務のみで17.1%(14.0%~20.8%),不健康な生活習慣のみで71.2%(66.9%~75.8%),それらの相加的な相互作用で11.3%(7.3%~17.3%)であった。 【結論】女性看護師では,交代制夜勤勤務と不健康な生活習慣の両方が2型糖尿病の高いリスクと関連していた。回転夜勤勤務と不健康な生活習慣の組み合わせによる過剰リスクは,それぞれの要因に関連するリスクの加算よりも高かった。これらの知見は、2型糖尿病のほとんどの症例は健康的なライフスタイルを守ることで予防できることを示唆しており、その効果は交代制夜勤者においてより大きい可能性がある。 第一人者の医師による解説 昼夜交代勤務者 健康管理と生活習慣の改善が特に重要 山口 聡子(特任助教)/門脇 孝(特任教授) 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・生活習慣病予防講座 MMJ.April 2019;15(2) 不健康な生活習慣が2型糖尿病発症のリスクで あることは広く知られているが、近年、昼夜交代勤務の労働者で、2型糖尿病発症リスクが高いことが 報告されてきた(1)。一方、昼夜交代勤務の労働者では喫煙頻度が高く、食生活も異なるとの報告もあり、 生活習慣と昼夜交代勤務が独立した危険因子であるかは明らかでなかった。 今回、米国の看護師を対象とした大規模な前向きコホート研究により、昼夜交代勤務と不健康な生活習慣は2型糖尿病発症の独立した危険因子であり、さらに、交互作用があることが示された。Nurses’ Health Study(NHS)、Nurses’ Health Study II に参加した女性看護師143,410人(ベースライン: NHS 1988年に平均50歳代、NHS II 1991年に平均30歳代)を22~24年間追跡し、10,915人 に2型糖尿病の発症を認めた。 生活習慣の調査は2~4年ごとに実施され、喫煙、運動不足( 中等度以上 の 身体活動30分 /日未 満)、不健康な食生活(Alternate Healthy Eating Indexスコアが下位5分の3)、肥満(BMI 25以上) の4因子を不健康な生活習慣と定義した。昼夜交代 勤務歴のない対照群と比較して、昼夜交代勤務(日 勤・準夜勤に加えて月3回以上の夜勤)の累積期間 5年ごとの2型糖尿病発症の補正後ハザード比(HR) は1.31(95 % CI, 1.19~1.44)、生活習慣4因 子の1因子ごとのHRが2.30(1.88~2.83)であった。昼夜交代勤務と生活習慣因子を合わせたHRは 2.83(2.15~3.73)で、有意 な 交互作用(P< 0.001)を認めた。交互作用に起因する相対超過 リ ス ク(RERI)は0.20(0.09~0.48)で、交互 作用の寄与割合は、昼夜交代勤務単独17.1%(14.0 ~20.8%)、生活習慣因子単独71.2%(66.9~ 75.8%)に対して、11.3%(7.3~17.3%)であった。 昼夜交代勤務が単独でも2型糖尿病発症の危険因子となることに加えて、生活習慣との間に交互作用があることを初めて明らかにした意義は大きい。昼夜交代勤務の労働者では、心血管疾患や乳がんなどのリスクが高いことも報告されており(2)、(3)、 健康管理が特に重要である。また、交互作用があることから、昼夜交代勤務の労働者では生活習慣の改善が特に重要であると言える。今後、昼夜交代勤務による発症リスク上昇のメカニズムの解明が待たれる。また、医療現場でも労務管理や産業医による介入など予防のための取り組みが一層重要になるであろう。 1. Pan A, et al. PLoS Med. 2011;8(12):e1001141. 2. Vetter C, et al. JAMA. 2016;315(16):1726-1734. 3. Wegrzyn LR, et al. Am J Epidemiol. 2017;186(5):532-540.
英国大都市圏における急性期脳卒中サービスの集中化の影響と持続可能性:病院エピソード統計と脳卒中全国監査データのレトロスペクティブ分析。
英国大都市圏における急性期脳卒中サービスの集中化の影響と持続可能性:病院エピソード統計と脳卒中全国監査データのレトロスペクティブ分析。
Impact and sustainability of centralising acute stroke services in English metropolitan areas: retrospective analysis of hospital episode statistics and stroke national audit data BMJ 2019 Jan 23 ;364 :l1 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】2015年のグレーターマンチェスターにおける急性期脳卒中サービスのさらなる集中化がアウトカムの変化と関連しているか、また2010年のロンドンにおける急性期脳卒中サービスの集中化の効果が持続しているかを調査する。 【デザイン】国家統計局による死亡率データとリンクしたHospital Episode Statistics(HES)データベースからの患者レベルのデータ、およびSentinel Stroke National Audit Programme(SSNAP)によるレトロスペクティブ解析。 【設定】英国グレーターマンチェスターとロンドンの急性期脳卒中サービス 【参加者】2008年1月から2016年3月に入院した都市部在住のHESの509 182人の脳卒中患者,2013年4月から2016年3月のSSNAPの218 120人の脳卒中患者。 【INTERVENTIONS】急性期脳卒中ケアのハブ&スポークモデル。 【MAIN OUTCOME MEASURES】入院後90日の死亡率、急性期入院期間、超急性期脳卒中ユニットでの治療、エビデンスに基づく臨床介入19例。 【結果】グレーターマンチェスターでは、90日時点のリスク調整死亡率が全体的に低下していることが境界線上のエビデンスによって示唆された;死亡率の有意な低下は、超急性期脳卒中ユニットで治療を受けた患者で見られ(差分-1.8%(95%信頼区間-3.4~-0.2))、年間死亡数が69件少ないことが示唆された。リスク調整後の急性期入院日数も有意に減少し(-1.5(-2.5~-0.4)日,P<0.01),年間入院日数が6750日減少した.超急性期脳卒中病棟で治療を受けている患者数は、2010-12年の39%から2015/16年には86%に増加しました。ロンドンでは、90日死亡率は維持され(P>0.05)、在院日数は減少し(P<0.01)、90%以上の患者が超急性期脳卒中ユニットで治療された。 【結論】脳卒中急性期医療の集中型モデルは、すべての脳卒中患者が超急性期医療を受けることで、死亡率と急性期入院期間を減少させ、エビデンスに基づく臨床的介入の提供を改善することが可能である。効果は長期にわたって持続することができる。 第一人者の医師による解説 英国は診療体制全体の改革を検討 日本では脳卒中・循環器病対策基本法が成立 鈴木 亨尚 /木村 和美(教授) 日本医科大学大学院医学研究科神経内科学部門 MMJ.June 2019;15(3) 急性期脳卒中診療体制の整備は死亡率と入院期間を改善し、その効果は長期にわたって持続することが英国の研究で示された。 脳卒中は高い死亡率や機能障害を起こす疾患で ある。急性期脳卒中診療体制を整備することは迅速な診断や治療、再発予防、リハビリテーションを充実させ、死亡率や臨床転帰を改善することが知られている(1)。しかし、その効果が長期的に持続するかを評価した研究はなかった。 本研究では、英国のグレーター・マンチェスターとロンドンでの急性期脳卒中診療体制の運用成績が改めて調査された。対象は、2008年1月1日~ 16年3月31日に英国の病院統計であるHospital Episode Statisticsに脳梗塞、脳出血、病型不明の脳卒中と病名が登録された509,182人である。 グレーター・マンチェスターでは2015年に対象が発症4時間以内の脳卒中患者から全脳卒中患者に拡大した。以前から全脳卒中患者が対象であったロンドンと合わせて入院後90日の死亡率や入院期間、治療内容(画像検査、リハビリテーション)、 他地域との差が検討された。 グレーター・マンチェスターでは対象患者の拡大により集中治療室で治療される患者の割合は 2010~12年には39%であったが、2015~16 年には86%まで上昇した。集中治療室で治療された患者において、90日死亡率が1.8%低下し、年間 69人の死亡が回避されたことがわかった。また、入院期間は-1.5日と有意に短縮しており、治療内容も2015年以後ではより多くの症例で早期の介入が行われた。これらの変化は他地域よりも顕著であった。ロンドンでは以前と同様に90%以上の患者が集中治療室で治療されており、90日死亡率は前回と同様であったが、入院期間はさらに短縮した。本研究から急性期脳卒中診療体制の整備は、脳卒中患者の死亡率を低下させ、入院期間を短縮し、患者は質の高い治療を受けることができ、その効果は長期にわたって持続することが示された。また、急性期脳卒中診療体制の対象は全脳卒中患者であることが望ましいこともわかった。 本研究の結果は全患者を対象とした急性期脳卒中診療体制の整備を支持するものである。英国では本研究の結果を踏まえて、地方を含めた複数の地域で急性期脳卒中診療体制全体の改革が検討されている。日本では2018年に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)」が成立した。今後、日本でも急性期脳卒中診療体制の整備が進むことを期待したい。 1. Bray BD, et al. BMJ. 2013;346:f2827.
急性心筋梗塞の誘因としてのクリスマス、国民の祝日、スポーツイベント、時間的要因。SWEDEHEART観察研究1998-2013。
急性心筋梗塞の誘因としてのクリスマス、国民の祝日、スポーツイベント、時間的要因。SWEDEHEART観察研究1998-2013。
Christmas, national holidays, sport events, and time factors as triggers of acute myocardial infarction: SWEDEHEART observational study 1998-2013 BMJ 2018 Dec 12 ;363:k4811 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】心筋梗塞の誘因としての概日リズムの側面、国民の祝日、主要なスポーツイベントを研究する。 【デザイン】全国冠動脈治療室登録、SWEDEHEARTを用いた後ろ向き観察研究 【設定】スウェーデン 【参加者】1998年から2013年までにSWEDEHEARTに報告された心筋梗塞283 014例。全例で症状発現日が記録され、88%で分単位の時刻が記録された。 【介入】クリスマス/ニューイヤー、イースター、夏至の祝日に症状発現した心筋梗塞を特定した。同様に、FIFAワールドカップ、UEFA欧州選手権、冬季・夏季オリンピック開催中に発生した心筋梗塞も同定した。休日の前後2週間を対照期間とし、スポーツイベントについては大会の前後1年間の同時期を対照期間とした。サーカディアン分析とサーカセプタン分析は、日曜日と24時を基準日と時間として行い、他のすべての日と時間とを比較した。発生率比はカウント回帰モデルを用いて算出した。 【MAIN OUTCOME MEASURES】心筋梗塞の日数 【RESULTS】クリスマスと真夏の休日は心筋梗塞の高いリスクと関連していた(発生率比 1.15, 95%信頼区間 1.12~1.19, P<0.001、および 1.12, 1.07~1.18, P<0.001, それぞれ)。最も高い関連リスクはクリスマスイブに観察された(1.37、1.29~1.46、P<0.001)。イースター休暇やスポーツイベント時には、リスクの増加は観察されなかった。心筋梗塞のリスクには循環器系と日内変動が認められ、早朝と月曜日にリスクが高かった。75歳以上の高齢者、糖尿病や冠動脈疾患の既往のある患者でより顕著であった。 【結論】16年間の心筋梗塞の入院患者を対象とし、症状発現を分単位で記録したこの全国実地調査において、クリスマスと真夏日は、特に高齢者や病気の患者で心筋梗塞リスクが高く、脆弱者における外部トリガーの役割を示唆している。 第一人者の医師による解説 ナショナルレジストリにより詳細なリスク解析が可能に 西村 邦宏 国立循環器病研究センター予防医学疫学情報部長 MMJ.June 2019;15(3) 心筋梗塞、心停止については、季節性、日内変動の影響がリスクとしてよく知られている。特に特定の休日(クリスマス)などについては多くの研究がなされている。しかし、先行研究では心筋梗塞による死亡、救急搬送情報、医療保険の請求データなど診断の正確性および発症時の詳細な臨床情報を欠く点に問題があった。 本研究はスウェーデンのナショナルレジストリであるSWEDEHEART(Swedish Web System for Enhancement and Development of Evidence- Based Care in Heart Disease Evaluated According to Recommended Therapies)を用いて、1998~2013年に報告された283,014人の心筋梗塞患者を対象に、クリスマスイブ、クリスマス当日、大晦日、新年などの特定休日、およびスポーツイベント(サッカー世界・ 欧州選手権、オリンピック)の発症への影響を検討した研究である。 本研究の最大の強みは、前向き登録によるナショナルレジストリによる検討により、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)および 非 ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI)の区別が明確で、喫煙、糖尿病などの危険因子および経皮的冠動脈形成術(PCI)/冠動脈バイパス術(CABG)などの既往歴についても正確な点である。特にSTEMIとNSTEMIを明確に区別した報告はなく画期的な内容となっている。 対象者の平均年齢は71.7歳、男性が64%、34%がSTEMI による発症であった。クリスマスイブ、クリスマス、 元日およびミッドサマー(お盆に相当する7月の休日)に特にリスクが高く、病型としてはNSTEMI が特に高かった。他の研究と異なりスポーツイベントとの関連は明確ではなく、月曜日および朝8 時前後がSTEMI/NSTEMIともに発症リスクが高いことが示された。また本研究の特徴として、豊富な背景因子の情報の解析から、周期性の変動による影響を受けやすい高リスクな集団として、75歳以上、糖尿病患者および冠動脈疾患の既往のある患者が挙げられている。 日本においても、院外心停止の悉皆登録であるウツタインレジストリや日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)内登録などから元日、季節、時間帯について同様の報告がなされている。脳卒中・循環器疾患対策基本法が2018年に成立し、循環器疾患登録に関する検討が進められているが、欧米諸国のレジストリと同等の悉皆性および質の高い臨床情報をともに備えたレジストリの整備はこれからの状況である。近年急速に進歩しつつある人工知能の進歩などを取り入れたビッグデータの整備が進むことにより、本研究と同様な質の高いエビデンスの構築が行われることを期待したい。
英国のプライマリーケアにおける検査利用の時間的傾向(2000-15年):2億5000万件の検査のレトロスペクティブ分析。
英国のプライマリーケアにおける検査利用の時間的傾向(2000-15年):2億5000万件の検査のレトロスペクティブ分析。
Temporal trends in use of tests in UK primary care, 2000-15: retrospective analysis of 250 million tests BMJ 2018 Nov 28 ;363 :k4666 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】英国のプライマリケアにおける検査使用の時間的変化を評価し、使用量が最も増加した検査を特定する。 【デザイン】英国のプライマリケア。 【参加者】Clinical Practice Research Datalinkの英国の一般診療所に登録された全患者、2000/1から2015/16。[主なアウトカム指標】検査使用の時間的傾向、総検査使用率および44の特定検査の粗・年齢・性別標準化率。 【結果】71 436 331人年にわたる262 974 099件の検査が解析された。年齢と性別で調整した使用量は毎年8.5%増加し(95%信頼区間7.6%~9.4%)、2000/1の1万人年当たり14869検査から2015/16年には49267検査と3.3倍に増加した。2015/16年の患者は年間平均5回の検査を受けたが、2000/1では1.5回であった。また,検査使用量は,男女ともに,すべての年齢層で,すべての検査タイプ(検査室,画像,雑多)で,特に調査した44検査のうち40検査で,統計的に有意に増加した。 【結論】総検査使用量は,男女ともに,すべての年齢層で,検査タイプ(検査室,画像,雑多),特に調査した44検査のうち40検査で,時とともに顕著な増加をしている。毎年少なくとも1回の検査を受けた患者のうち、2回以上の検査を受けた患者の割合は、時間の経過とともに有意に増加した。 第一人者の医師による解説 医師の負担と医療費の増加を示唆 日本でも大きな課題 村田 満 慶應義塾大学医学部臨床検査医学教授 MMJ.June 2019;15(3) 英国国民保健サービス(NHS)は今、予想を超える支出増加に直面している。これまで英国の一般開業医(GP)による検査のコストに関する統計報告はない。本研究は、GPによる検査利用数の動向を調査し、最も増加している検査を特定することを目的とし、英国人口の約7%をカバーする電子カルテデータであるClinical Practice Research Datalink (CPRD)に2000~16年に登録された情報を後 方視的に解析した。素検査数、年齢・性で補正した検 査数を検査全体と特定の44検査について集計した。 検査数 は2000年 の10,000人・ 年 あたり 14,869回から15年には49,267回と約3.3倍 (年率8.5%)増加した。この増加は年齢、性、検査 の種類(検体検査、画像検査、その他検査[消化管内 視鏡、心電図、呼吸機能、子宮頸部スメア等])にかかわらず、また44検査中解析された40検査で統 計学的に有意であった。特に85歳以上では4.6倍 増で、高齢者で増加率が顕著であった。検査種別の 年間増加率は検体検査8.7%、画像検査5.5%、その他検査6.3%であった。 検査数増加の背景は多様であるがGPからのコンサルテーション増加も一因と思われ、患者を安心させるため、コンサルテーションを終了するためなど非医学的理由も考えられる。また医療システムの変遷、例えば慢性疾患モニタリングに対するインセンティブなどの影響、さらに患者からの検査要望の増加も要因と思われる。 検査数増加の要因を問わず、今回の解析結果はプライマリケア医の労務負担の増加を示唆する。既報をもとに試算すれば、患者7,000人に対しGP 3人を想定した場合、医師は1日あたり1.5~2時間を検査結果解釈に費やすことになる。2015年を例にあげればNHS支出として直接経費のみで 28億ポンド(検体検査18億ポンド、画像診断4億 ポンド、その他6億ポンド)が費やされたことになる。 今回の結果はNHSの財政が逼迫する中、今後の医 療資源に関する1つの方向性を示していると思われる。 これらの結果を、医療制度がまったく異なる日本に当てはめることは困難であるが、少子高齢化の進行、生活習慣病の増加、複数医療機関の受診、医療技術の進歩に伴う医療費の高騰は日本でも最大の課題である。同様の問題に直面する米国でも頻回の受診、画像検査・処置の過剰利用など、約30% が「無駄」な医療費とする報告もある(1)。一方で、診断や治療追跡に加え、より「精密な」医療を求める社会的要請に対する検査の役割が増加していることも事実であり、効率的かつ安全・安心な医療提供のための検査のあり方について今後議論が活性化される必要があろう。 1. Yong PL, et al. Eds. The Healthcare Imperative:Lowering Costs and Improving Outcomes:Workshop Series Summary. National Academies Press (US);2010.
TNF阻害剤の効果が不十分な成人関節リウマチ患者におけるリツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブの有効性の比較:プロスペクティブ・コホート試験
TNF阻害剤の効果が不十分な成人関節リウマチ患者におけるリツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブの有効性の比較:プロスペクティブ・コホート試験
Comparative effectiveness of rituximab, abatacept, and tocilizumab in adults with rheumatoid arthritis and inadequate response to TNF inhibitors: prospective cohort study BMJ 2019 Jan 24 ;364:l67 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】関節リウマチ治療における3種類の非腫瘍壊死因子(TNF)α阻害剤(リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ)の有効性と安全性を比較する。 【デザイン】集団ベースの前向き研究 【設定】フランスの大学53施設と大学以外の54施設の臨床センター 【参加者】1987年のAmerican College of Rheumatology基準による関節リウマチ患者(18歳以上)3162人。 【参加者】1987年のAmerican College of Rheumatologyの基準による関節リウマチの成人(18歳以上)3162人で、3つのフランスリウマチ学会登録のいずれかに登録され、重度の心血管疾患、活動性および重度の感染症、重度の免疫不全がなく、少なくとも24ヶ月のフォローアップが行われた人たち。 【介入】関節リウマチに対するリツキシマブ、アバタセプト、またはトシリズマブの静脈内投与を開始した。 【主要評価項目】主要アウトカムは、24ヵ月時点で障害がなく薬剤が維持されていることであった。失敗とは、全死亡、リツキシマブ、アバタセプト、またはトシリズマブの投与中止、新しい生物学的製剤または従来の疾患修飾性抗リウマチ薬の併用投与の開始、または連続した2回の診察時にベースラインと比較してコルチコステロイド量が10mg/日以上増加したことと定義された。非比例ハザードのため、治療効果は、失敗のない平均生存期間の差を示す、失敗のない平均余命差(LEDwf)で示された。 【結果】失敗のない平均生存期間は、リツキシマブで19.8カ月、アバタセプトで15.6カ月、トシリズマブで19.1カ月であった。平均生存期間は、リツキシマブ(LEDwf 4.1、95%信頼区間3.1~5.2)およびトシリズマブ(3.5、2.1~5.0)がアバタセプトよりも長く、トシリズマブはリツキシマブと比較して不確かである(-0.7、-1.9~0.5)ことが示されました。死亡のない平均生存期間、癌や重篤な感染症の有無、主要な有害心血管イベントについては、治療間の差を示す証拠は見つからなかった。 【結論】日常診療でフォローアップされている難治性関節リウマチの成人において、リツキシマブとトシリズマブは、アバタセプトと比較して2年後の転帰がより改善することと関連していた。 第一人者の医師による解説 JAK阻害薬含む治療薬の組み合わせ 実臨床のコホート研究で解析を 林 映/沢田 哲治(教授) 東京医科大学病院リウマチ膠原病内科 MMJ.August 2019;15(4) 関節リウマチ(RA)治療の原則 は、“treat-totarget(目標達成に向けた治療;T2T)”の治療アルゴリズムに従い、定期的に疾患活動性を評価し治療の適正化を図ることである。RAの標準治療薬であるメトトレキサート(MTX)で効果不十分な場合には生物学的製剤やJAK阻害薬が併用される。 承認時期の違いから従来 MTX不応例にはTNF阻害薬が最初に選択されてきたが、TNF阻害薬不応例も少なくない。この際、2剤目の生物学的製剤としてTNF阻害薬ではなくnon-TNF阻害薬を選択する方が高い治療効果が得られることが示されている(1)。 しかし、各 non-TNF阻害薬の優劣に関する情報は限られていた。 本論文でGottenbergらは、フランスのnon-TNF阻害薬を用いたRA患者のコホート (Autoimmunity and Rituximab[AIR]、Orencia and Rheumatoid Arthritis[ORA]、REGistryRoAcTEmra[REGATE]:それぞれ抗 CD20抗体 [リツキシマブ;RTX]、T細胞選択的共刺激調節薬 [アバタセプト;ABT]、抗 IL-6受容体抗体[トシリ ズマブ;TCZ])を用いて、各薬剤の有用性の比較を試みた。治療選択バイアス回避には傾向スコアを用いた逆確率重み付け法が用いられた。重み付け後の各コホートでは中央値で2剤のTNF阻害薬 の使用歴を有していたので、各薬剤のTNF阻害薬 不応例に対する治療効果の優劣に関する解析となった。その結果、RTXとTCZはABTよりも治療継続率や疾患活動性改善率において優れていることが示された。ABTは重篤な感染症が他剤と比較して 少ないと報告されているが(2)、本報告では3群間で 重篤有害事象に差はなく、RTXとTCZの高い治療継続率は安全性よりも有効性に起因したと著者らは考察している。本研究ではABTの有用性が低かったが、1剤目のTNF阻害薬の次に2番目の生物学的製剤としてABTが選択されていれば、より高い治 療効果が得られていた可能性はある。 RTXは日本では適応はなくRAに用いられなが、TCZとABTは近年 MTX不応例の第1選択薬として使用されることも多い。また、JAK阻害薬も3 剤上市され使用頻度が上昇している。今後はMTX 不応例 にTNF阻害薬、non-TNF阻害薬、JAK阻害薬をどの順に組み合わせて使用していくのが優れているかについてエビデンスを構築する必要がある。この際ランダム化比較対照試験を組むのは困難であり、本研究のようにリアルワールドのコホートデータを活用することは有用な研究手法であり、今後の解析が待たれる。 1. Gottenberg JE, et al. JAMA. 2016;316(11):1172-1180. 2. Strand V, et al. Arthritis Res ¬Ther. 2015;17:362.
非糖類甘味料の摂取と健康上の成果との関連:無作為化および非無作為化対照試験と観察研究の系統的レビューおよびメタ分析。
非糖類甘味料の摂取と健康上の成果との関連:無作為化および非無作為化対照試験と観察研究の系統的レビューおよびメタ分析。
Association between intake of non-sugar sweeteners and health outcomes: systematic review and meta-analyses of randomised and non-randomised controlled trials and observational studies BMJ 2019 Jan 2 ;364:k4718 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】一般的に健康な成人や肥満の成人・小児における非糖類甘味料(NSS)の摂取と重要な健康アウトカムとの関連を評価する。 【デザイン】標準的なコクランレビューの手法に従った系統的レビュー。 【データ入手元】Medline(Ovid)、Embase、Cochrane CENTRAL、WHO International Clinical Trials Registry Platform、Clinicaltrials. gov、関連論文の参照リスト。 【研究選択における適格性基準】過体重または肥満を伴うかどうかに関わらず、一般的に健康な成人または小児を含む研究を適格とした。含まれる研究デザインは、NSSの摂取なしまたは低摂取と高摂取との直接比較を可能にするものであった。NSSの名称が明確であること、用量が1日の許容摂取量内であること、介入期間が7日以上であることが条件とされた。 【主要アウトカム指標】体重または体格指数、血糖コントロール、口腔衛生、食行動、甘味への嗜好、がん、心疾患、腎疾患、気分、行動、神経認知、副作用。 【結果】検索により13 941件のユニークレコードが得られた。このレビューのためにデータを提供した56の個別研究のうち、35は観察研究であった。成人では、限られた数の小規模研究からの非常に低い確実性の証拠は、肥満度(平均差-0.6、95%信頼区間-1.19~-0.01;2研究、n=174)及び空腹時血糖値(-0.16mmol/L、-0.26~-0.06;2、n=52)におけるNSSの小さな有益性の効果を示していた。低用量のNSSは、高用量のNSSと比較して、低い体重増加(-0.09 kg、-0.13~-0.05;1件、n=17 934)と関連していた(証拠の確実性は非常に低い)。他のすべての転帰については、NSSの使用と非使用の間、またはNSSの異なる用量の間で差は検出されなかった。体重過多または肥満の成人または積極的に減量しようとしている小児に対するNSSの効果を示す証拠は認められなかった(非常に低い確実性から中程度の確実性)。小児では、砂糖摂取と比較してNSS摂取では肥満度指数zスコアの増加が小さく観察されたが(-0.15、-0.17~-0.12;2人、n=528、証拠の確実性は中程度)、体重には有意差は観察されなかった(-0.60kg、-1.33~0.14;2件、n=467、証拠の確実性は低い)、あるいは異なる用量のNSSの間(非常に低いから中程度の確実性)。 【結論】ほとんどの健康転帰は、NSS曝露群と非曝露群の間に差がないようであった。各アウトカムについて同定された少数の研究のうち、ほとんどは参加者が少なく、期間が短く、その方法論と報告の質が限られていた;したがって、報告された結果に対する信頼度は低い。今後の研究では、適切な介入期間を設けてNSSの効果を評価する必要がある。介入、比較対象、アウトカムの詳細な説明をすべての報告に含めるべきである。【SYSTEMATIC REVIEW REGISTRATION】Prospero CRD42017047668. 第一人者の医師による解説 個別研究の量も質も不十分 メタアナリシスによる結論は時期尚早 曽根 博仁 新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科分野教授 MMJ.August 2019;15(4) 本研究は、人工甘味料と肥満や糖尿病をはじめとする各種健康関連アウトカムとの関連に関する系統的レビューとメタアナリシスで、世界保健機関 (WHO)のガイドライン策定のために行われた。一 言で結論を言ってしまえば、各アウトカムに対して確固たる結論を出すには、まだ個別研究の量も質も不十分で、その中で肥満と糖尿病については 一応有意な効果は認められたが、それほど大きいものではなく、その他の健康関連アウトカムにつ いても目立った有効性が認められない一方、大きな害もなさそう、といったものである。 本メタアナリシスの対象は無作為化試験から観察研究までと幅広く(全56件中35件が観察研究)、 肥満や糖尿病に加え、血圧、歯科関連、がん、食行 動、うつなどへの影響を、成人・小児別にレビュー した。その結果、成人対象の無作為化試験については、BMIの変化は-0.6であるが研究は2件(n= 174)のみで、肥満者(平均体重86.9kg)における体重減少度は人工甘味料使用群の方が非使用群より1.99 kg有意に少なかったが、研究は3件(n =146)のみであった。空腹時血糖では-0.16 mmol(=2.9mg)/Lの低下がみられたが、やはり研究は2件(n=52)のみであった。また小児においては、人工甘味料群のBMI上昇は砂糖群と比較すると有意に小さかったものの、人工甘味料使用による体重減少(-0.60kg;2研究[n=467])は有意ではなかった。その他のアウトカムについても、 残念ながら確定的な結果は得られていない。 人工甘味料の影響については、人工甘味料投与マウスにおいて非投与マウスと比較し耐糖能増悪を認め、抗菌薬投与や便移植の実験からそれが腸内細菌叢に由来することが示され、さらにヒトでも 同様の現象があり得ることを報告した研究(1)が世界的に話題になった。その後もヒト対象研究は多く報告されたが、短期間・小規模のものが多かった。 人工甘味料の効果を過大評価し、かえって摂食量が増加してしまう心理的影響や、血糖上昇を伴わない 甘味味覚が摂食行動に及ぼす影響なども考えられ、 大規模疫学調査においても、多くの交絡因子や「因果の逆転」が想定しうるため、研究が難しいテーマではある。しかし、臨床的ニードも社会的関心も極めて高いテーマであるだけに、医療ビッグデータも活用するなどしながら、地道にエビデンスを積み上げていく必要がある。 それにしても個別研究の数不足や質の不均一を勘案すると、メタアナリシスを行うにはまだ機が熟していないと言わざるを得ず、率直に言って 「WHOガイドラインのための研究」といった感をぬぐえない。その意味で、信頼できるエビデンス不足が明らかになったということが、最も大きな成果だったかもしれない。 1. Suez J, et al. Nature. 2014;514(7521):181-186.
脂肪率と糸球体濾過量低下のリスク:グローバルコンソーシアムにおける個人参加者データのメタアナリシス。
脂肪率と糸球体濾過量低下のリスク:グローバルコンソーシアムにおける個人参加者データのメタアナリシス。
Adiposity and risk of decline in glomerular filtration rate: meta-analysis of individual participant data in a global consortium BMJ 2019 Jan 10 ;364:k5301 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】脂肪率指標(肥満度、ウエスト周囲径、ウエスト身長比)と糸球体濾過量(GFR)の低下および全死因死亡率との関連を評価すること。 デザイン]個々の参加者データのメタ解析。 【設定】1970年から2017年の間にデータを収集した40カ国のコホート。 【参加者】一般人口39人のコホート(n=5 459 014)の成人、そのうちウエスト周囲径のデータがあるのは21人(n=594 496)、心血管リスクの高いコホート(n=84 417)、慢性腎臓病のコホート(n=91 607)18 人のコホート。 【主要評価項目】GFR低下(推定GFR低下率40%以上,腎代替療法開始,推定GFR<10mL/min/1.73m2)および全死因死亡。 【結果】平均8年の追跡で,一般集団コホートの246 607人(5.6%)がGFR低下(末期腎疾患イベント18 118件(0.4%)),782 329人が(14.7%)死亡した。年齢、性別、人種、現在の喫煙を調整した結果、肥満度30、35、40と肥満度25を比較したGFR低下のハザード比はそれぞれ1.18(95%信頼区間1.09~1.27)、1.69(1.51~1.89)、2.02(1.80~2.27)であった。結果は、推定GFRのすべてのサブグループで同様であった。合併症の追加を調整すると関連は弱まり、それぞれのハザード比は1.03(0.95~1.11)、1.28(1.14~1.44)、1.46(1.28~1.67)であった。肥満度と死亡の関連はJ字型であり、肥満度25で最もリスクが低くなった。心血管リスクが高く、慢性腎臓病を有するコホート(平均追跡期間それぞれ6年と4年)では、肥満度の高さとGFR低下とのリスク関連は一般集団よりも弱く、肥満度と死亡の関連もJ字型で、肥満度25と30の間で最もリスクが低くなった。すべてのコホートタイプにおいて、ウエスト周囲径の高さとウエスト身長比の高さとGFR低下との関連はbody mass indexのそれと同様であったが、死亡リスクの上昇はbody mass indexで見られたようなウエスト周囲径やウエスト身長比の低下とは関連しなかった。 【結論】推定GFRが正常または低下した人においてbody mass index、ウエスト周囲径、ウエスト身長比が高いことはGFR低下および死亡に対する独立したリスク因子である。 第一人者の医師による解説 63のコホート研究を分析 規模、広域性で価値の高い結果 脇野 修 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科准教授 MMJ.August 2019;15(4) 本論文は、肥満と腎機能低下の関連を1970~ 2017年 の63のコホート研究(40カ国、参加者 500万人超)から得た個人データのメタアナリシスにより明らかにした研究の報告である。コホートの構成は一般集団コホートが39(5,459,014 人)、心血管高リスクコホートが6(84,417人)、 慢性腎臓病(CKD)コホートが18(91,607人)であった。これまでの最大規模の研究であり、人種も多彩で価値の高い論文と思われる。体格指数(BMI)、 ウエスト周囲径、そしてウエスト -身長比といった肥満症のパラメータと腎機能低下および全死亡との関連を明らかにすることを目的とした。主要評価項目は糸球体濾過量(GFR)の低下と全死亡率であり、GFR低下の定義はGFRが40%以上低下、または腎代替療法の開始あるいは推算 eGFRが10mL/ 分 /1.73m2未満となることとした。 平均8年の観 察期間中に246,607人(5.6%)でGFR低下を認めた。18,118人(0.4%)は腎代替療法へ移行した。 そして782,329人(14.7%)は死亡した。年齢、性、人種、現在の喫煙で補正すると、GFR低下のハザー ド比はBMI 25に比べBMI 30、35、40はそれぞれ1.18(95% CI, 1.09~1.27)、1.69(1.51~ 1.89)、2.02(1.80~2.27)であった。BMIと死 亡の関連にはJカーブ現象がみられ、最も死亡率が低いのはBMI 25であった。 一方、心血管高リスクコホートおよびCKDコホートにおけるBMIとGFR 低下の関連は一般成人コホートよりも弱かった。ウエスト周囲径およびウエスト -身長比を肥満のパラメータにした場合も、それらの上昇はGFR低下と相関した。これまでBMIが腎機能低下のリスクであることは明らかにされていたが、今回のメタ アナリシスは規模と地域性がきわめて広く、しかもその関連を健常者すなわちBMI 20~25付近まで広げ明らかにしている。 今後は、なぜBMI 25 からリスクが上昇するのかを明らかにすることが重要である。著者らは、疫学的にその理由の1つとして逆の因果(reverse causation)の可能性を示唆している。その一方でBMI 20~25の健常者の腎臓においてもBMI上昇に関連する腎臓の超早期の変化が生じていることも考えられ、今後の研究の焦点と思われる。
成人の大うつ病エピソードの急性治療における非外科的脳刺激の有効性と受容性の比較:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス。
成人の大うつ病エピソードの急性治療における非外科的脳刺激の有効性と受容性の比較:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス。
Comparative efficacy and acceptability of non-surgical brain stimulation for the acute treatment of major depressive episodes in adults: systematic review and network meta-analysis BMJ 2019 Mar 27 ;364:l1079 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】成人の大うつ病エピソードの急性治療における非外科的脳刺激の比較臨床効果と受容性を推定すること 【デザイン】ペアワイズメタアナリシスとネットワークメタアナリシスを含むシステマティックレビュー 【データ入手元】2018年5月8日までのEmbase、PubMed/Medline、PsycINFOの電子検索、いくつかのレビュー(2009年から2018年の間に発表された)の書誌検索と含まれる試験の手動検索で補足。ELIGIBILITY CRITERIA FOR SELECTING STUDIES]電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激(反復型(rTMS)、加速型、プライミング型、深層型、同期型)、シータバースト刺激、磁気発作療法、経頭蓋直流刺激(tDCS)、または偽薬療法に無作為に割り付けられた臨床試験。 【主要アウトカム評価項目】主要アウトカムは、反応(有効性)と全原因による中止(何らかの理由での治療中止)(受容性)であり、95%信頼区間のオッズ比で示されています。 【結果】大うつ病性障害または双極性うつ病の患者6750人(平均年齢47.9歳、女性59%)を無作為化した113試験(262の治療群)が包含基準を満たしていた。最も研究された治療法の比較は、高頻度左rTMSとtDCS対偽薬療法であったが、最近の治療法はまだ十分に研究されていない。エビデンスの質は一般的にバイアスのリスクが低いか不明瞭であり(113試験中94試験、83%)、治療効果の要約推定の精度にはかなりのばらつきがあった。ネットワークメタアナリシスでは、18の治療戦略のうち10の治療戦略が偽薬治療と比較して高い奏効率と関連していた:ビテンポラールECT(要約オッズ比8.91、95%信頼区間2.57~30.91)、高用量右片側ECT(7.27、1.90~27.78)、プライミング経頭蓋磁気刺激(6.02、2.21~16.38)、磁気発作療法(6.02、2.21~16.38)。38)、磁気発作療法(5.55、1.06~28.99)、両側rTMS(4.92、2.93~8.25)、両側シータバースト刺激(4.44、1.47~13.41)、低周波右rTMS(3.65、2.13~6.78)、プライミング経頭蓋磁気刺激(6.02、2.21~16.38)、磁気発作療法(5.55、1.06~28.99)、両側rTMS(4.92、2.93~8.25)、両側シータバースト刺激(4.44、1.47~13.41)、低周波右rTMS(3.65、2.13~2.13)。65、2.13~6.24)、間欠的シータバースト刺激(3.20、1.45~7.08)、高周波数左rTMS(3.17、2.29~4.37)、tDCS(2.65、1.55~4.55)。別の能動的治療と対比された能動的介入のネットワークメタ解析的推定から、ビテンポラールECTと高用量右片側ECTが応答の増加と関連していることが示された。結論]これらの知見は、大うつ病エピソードを持つ成人の代替治療または追加治療として、非外科的な脳刺激法を検討するための証拠を提供する。また、これらの知見は、新しい治療法を比較するために、さらによく設計された無作為化比較試験や、磁気発作療法を調査する偽薬比較試験の必要性など、脳刺激の専門分野における重要な研究の優先順位を浮き彫りにした。 第一人者の医師による解説 連続・維持療法としての長期効果 今後の検討必要 鬼頭 伸輔 東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授 MMJ.August 2019;15(4) うつ病はありふれた疾患であり自殺や休職の誘因となるため、その社会的損失は大きい。また、うつ病は再燃・再発率が高く慢性化しやすい。うつ病の治療では、薬物療法と精神療法が中心となる。しかし、約3分の1の患者は薬物療法に反応しないことが知られる。電気けいれん療法(ECT)や反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)などの非外科的脳刺激は第3 の治療法に位置づけられる。日本でも、2019年6 月からrTMSが保険診療として新たに導入された。 本論文では成人の大うつ病エピソードへの非外 科的脳刺激の急性期の有効性と安全性を比較するため に、Embase、PubMed/Medline、PsycINFO を用いて、2018年5月までのランダム化試験を 抽出しネットワークメタアナリシスを行った。非 外科的脳刺激には、ECT、rTMS、accelerated TMS (aTMS)、priming TMS(pTMS)、深部経頭蓋磁気刺激(dTMS)、synchronized TMS(sTMS)、シー タバースト刺激(TBS)、磁気けいれん療法(MST)、 経頭蓋直流刺激(tDCS)が含まれた。さらに、ECT は電極の位置と電気量、rTMSとTBSはコイルの 位置 と 刺激頻度に基づき、各治療 プ ロト コール は区別された。主要評価項目である有効性は反応 (response)とし、忍容性はあらゆる原因による中 止とした。 113試験、6,750人の大うつ病エピソードの患者が対象となり、18種類の治療プロトコールの相対的な有効性および忍容性がネットワークメタア ナリシスにより推定された。ネットワークメタアナリシスでは、10種類の治療プロトコールの有効性(反応)が偽(sham)療法と比較し優れていた。 そのオッズ比と95%信頼区間はそれぞれ、両側側頭 ECT(8.91, 2.57 ~30.91)、高用量右片側 ECT(7.27, 1.90~27.78)、pTMS(6.02, 2.21 ~16.38)、MST(5.55, 1.06~28.99)、両側 rTMS(4.92, 2.93~8.25)、両側 TBS(4.44, 1.47~13.41)、低頻度右側 rTMS(3.65, 2.13 ~6.24)、間欠的 TBS(3.20, 1.45~7.08)、 高頻度左側 rTMS(3.17, 2.29~4.37)、tDCS (2.65, 1.55~4.55)であった。あらゆる原因による中止(忍容性)は、すべての治療プロトコール で偽療法と同程度であった。 本研究の限界として、治療プロトコールに応じて対象となる患者が異なること(例、ECTとrTMS)、 一部の脳刺激では対象となる試験が少ないことにも留意すべきである。また、連続・維持療法としての長期効果については、今後さらなる検討が必要である。
フィンランドにおける閉経後ホルモン療法の使用とアルツハイマー病のリスク:全国規模の症例対照研究。
フィンランドにおける閉経後ホルモン療法の使用とアルツハイマー病のリスク:全国規模の症例対照研究。
Use of postmenopausal hormone therapy and risk of Alzheimer's disease in Finland: nationwide case-control study BMJ 2019 Mar 6 ;364:l665 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】フィンランドの閉経後女性で、アルツハイマー病の診断を受けた人と受けていない人のホルモン療法の使用を比較する。 【デザイン】全国規模のケースコントロール研究 【設定】1999年から2013年のフィンランド全国人口および薬剤登録 【参加者】1999年から2013年の間に、神経科医または老年医からアルツハイマー病の診断を受け、全国薬剤登録から特定できたフィンランドのすべての閉経後女性(n=84 739)。年齢と病院地区をマッチさせた診断のない対照女性(n=84 739)は、フィンランド全国人口登録から追跡した。 【介入】ホルモン療法の使用に関するデータは、フィンランド全国医薬品償還登録から入手した。 【結果】女性83 688人(98.8%)において、アルツハイマー病の診断は60歳以上で行われ、47 239人(55.7%)の女性は診断時に80歳以上であった。全身性ホルモン療法の使用は、アルツハイマー病のリスクを9-17%増加させることと関連していた。エストラジオールのみの使用者(オッズ比1.09、95%信頼区間1.05〜1.14)とエストロゲン・プロゲストーゲン併用者(1.17、1.13〜1.21)では、本症のリスクに有意差はなかった。エストロゲン・プロゲストーゲン療法使用者のリスク増加は、プロゲストーゲンの違い(ノルエチステロン酢酸塩、メドロキシプロゲステロン酢酸塩、その他のプロゲストーゲン)とは関係がなかった。しかし、ホルモン療法開始時に60歳未満の女性では、これらのリスク増加は10年以上のホルモン療法曝露と関係があった。さらに、全身的なホルモン療法を開始した年齢は、アルツハイマー病のリスク増加の決定的な決定要因とはならなかった。膣エストラジオールの独占的使用は、本疾患のリスクに影響しなかった(0.99、0.96~1.01)。 【結論】全身性ホルモン療法の長期使用は、アルツハイマー病全体のリスク増加を伴うかもしれないが、それは黄体ホルモンの種類や全身性ホルモン療法の開始年齢とは関係がない。一方、エストラジオールの経膣投与では、そのようなリスクは認められない。アルツハイマー病の絶対的なリスク増加は小さいが、我々のデータは、現在および将来のホルモン療法使用者に対する情報に反映させる必要がある。 第一人者の医師による解説 治療開始年齢ではなく 投与方法と期間が発症に影響 松川 則之 名古屋市立大学医学研究科神経内科学分野教授 MMJ.August 2019;15(4) これまでのいくつかの観察研究では、閉経後女 性ホルモン療法はアルツハイマー病(AD)発症を抑制する可能性が示されてきた。しかしながら、プラセボ対照試験(The Women’s Health Initiative Memory Study;WHIMS)では認知機能低下に対する抑制効果は確認されず、むしろ悪化させる傾向が示された(1),(2)。一方、心血管疾患対象の先行研 究では、治療開始年齢が発症リスク抑制に影響することが示された(3)。 今回の論文は、ホルモン療法のAD発症への影 響、治療開始年齢や治療期間の関与を明らかにするために実施されたフィンランド全国症例対照研究の報告である。1999~2013年にADと診断された閉経後の女性84,739人と住居地・年齢構成・ ホルモン療法内容(薬剤・投与法)・治療開始年齢・ 治療期間をマッチさせた非AD群84,739人が対照とされた。 ホルモン未使用者はAD群58,186人(68.7%) と非 AD群59,175人(69.8%)であった。ホルモン全身投与群の治療内訳は、エストロゲン単独 (AD群35.6%、非 AD群36.9%)、エストロゲン +黄体 ホ ル モ ン 併用療法(AD群63.0%、非 AD 群61.9%)、チボロン 療法(AD群1.4%、非 AD 群1.3%)、その他エストロゲン経腟的投与(AD群 12.7%、非 AD群13.2%)であった。併用療法の黄体ホルモンはメドロキシプロゲステロン(MPA)、 酢酸メドロキシプロゲステロン(NETA)、その他(複合など)であった。 投与開始時期や投与期間解析も含め最終的に以下の結果が確認された:①全身投与によるエストロゲン単独および併用はAD発症リスクになる(特にエストロゲン単独よりも併用でその傾向は強い) ②黄体ホルモンの種類による有意差はない③経腟的エストロゲン投与はリスクにならない④開始年齢によるリスク差はない⑤治療期間は60歳以前開始群では10年以上投与により発症リスクになる。 WHIMSの結果は原因疾患を特定しない認知機能悪化であったのに対して、今回の報告ではADに限定した認知機能悪化が明らかにされた。一方、エストロゲン単独より黄体ホルモンとの併用が、より認知機能悪化リスクになる結果は、WHIMSと同様の結果であった。チボロンもリスクを高める可能性が示唆されたが、症例数が少ないために慎重に解釈する必要がある。今回の結果から、経腟的エストロゲン投与はリスクにならないことは興味深い。 以上から、WHIMS同様に全身投与による閉経後 ホルモン療法は認知機能を悪化させることが支持されたと言える。特に、長期間(10年以上)にわたる全身投与はAD発症リスクになることが改めて示された。 1:Shumaker SA, et al. JAMA. 2003;289(20):2651-62. 2:Shumaker SA, et al. JAMA. 2004;291(24):2947-58. 3:Harman SM, et al. Am J Med. 2011;124(3):199-205.
プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
Antibiotic management of urinary tract infection in elderly patients in primary care and its association with bloodstream infections and all cause mortality: population based cohort study BMJ 2019 Feb 27 ;364:l525. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】プライマリケアにおける高齢患者の尿路感染症(UTI)に対する抗生物質治療と重度の有害転帰との関連を評価すること。 【デザイン】レトロスペクティブ集団ベースコホート研究。 【設定】Clinical Practice Research Datalink(2007-15)プライマリケア記録とイングランドの病院エピソード統計および死亡記録とをリンクさせる。 【参加者】2007年11月から2015年5月までに下部尿路結石の疑いまたは確認の診断を1つ以上受けて一般開業医を受診した65歳以上の成人157 264人。 【MAIN OUTCOME MEASURES】インデックスUTI診断後60日以内の血流感染、入院、全死因死亡率。 【結果】UTIエピソード312 896例(157 264ユニーク患者)のうち、7.2%(n=22 534)は抗生物質の処方記録がなく、6.2%(n=19 292)は抗生物質の処方の遅れを認めた。初回UTI後60日以内の血流感染症エピソードは1539件(0.5%)記録された。血流感染症の発生率は、抗生物質を処方されなかった患者(2.9%;n=647)、および初診時に抗生物質を処方された患者と比較して、抗生物質処方のために初診から7日以内に一般医を再訪した記録がある患者(2.2%<v>0.2%;P=0.001)で有意に高率であった。共変量で調整した後,患者は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質投与延期群(調整オッズ比 7.12,95% 信頼区間 6.22~8.14) および抗生物質投与なし群(同 8.08,7.12~9.16) で血流感染症を経験する可能性が有意に高くなった.血流感染症の発生に対する必要数(NNH)は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質無投与群(NNH=37)が遅延抗生物質投与群(NNH=51)よりも低い(リスクが大きい)ことが示された。入院率は,抗生物質無投与群(27.0%)および抗生物質投与延期群(26.8%)では,抗生物質即時投与群(14.8%)と比較して約2倍であった(P=0.001).全死因死亡のリスクは,60 日の追跡期間中のどの時点でも,抗生物質を延期した場合と抗生物質を処方しなかった場合では,即時処方の場合に比べて有意に高かった(調整ハザード比 1.16,95% 信頼区間 1.06~1.27,2.18,2.04~2.33, それぞれ).85歳以上の男性は、血流感染と60日間の全死因死亡の両方のリスクが特に高かった。 【結論】プライマリケアで尿路結石の診断を受けた高齢患者において、抗生物質投与なしと投与延期は、即時投与と比較して血流感染と全死因死亡の有意な増加と関連していた。イングランドにおけるEscherichia coli血流感染症の増加という背景から、高齢者におけるUTIに対する推奨ファーストライン抗生物質の早期投与開始が提唱される。 第一人者の医師による解説 プライマリケアでの尿路感染症 高齢患者には抗菌薬の即時投与を 東郷 容和 医療法人協和会協立病院泌尿器科 MMJ.August 2019;15(4) プライマリケアで尿路感染症と診断された高齢患者(65歳以上)に対して、抗菌薬遅延投与群と無 投与群では、その後の血流感染症の発生率が即時投与群と比較してそれぞれ約7倍と8倍になることが、今回のイングランドにおける大規模疫学調査で示された。 全世界において、薬剤耐性菌増加を抑止すべく、 抗菌剤の適正使用が叫ばれている中、英国内においても、同国のガイドラインや抗菌薬管理プログラムなどによる啓蒙活動が、2004~14年におけるプライマリケアでの高齢者の尿路感染症に対する広域抗菌薬処方の減少へつながったことが成果として示されている。一方で、グラム陰性菌の血流 感染症の発生率の上昇が報告され、2021年3月までに50%減少させる国家プロジェクトが打ちださ れた。 本研究は、2007年11月~15年5月の期間に、 英国のデータベースからプライマリケアにおいて下部尿路感染症と診断された高齢患者312,896 人を対象に、診断後60日以内の血流感染症の発生率、入院率、死亡率を調査した後ろ向きコホート研究である。 尿路感染症 の 診断後、血流感染症に至った頻度は0.5%であり、即時投与群が0.2%であったのに対して、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.2%、2.9%であり、有意に上昇していた(P< 0.001)。入院患者の割合も、即時投与群が14.8% であるのに対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ26.8%、27.0%と2倍高く、全死亡率においても、即時投与群の1.6%に対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.8%、5.4%と有意に上昇していた(P<0.001)。 著者らは、高齢成人における無症候性細菌尿症の発生率の上昇(若年女性の5%未満に対し、65歳以 上の女性の20%超)もまた、尿路感染症のさらなる診断を困難とする一因と述べ、尿路感染症としての過剰診断や不要な治療について警鐘を鳴らしている一方で、イングランドで大腸菌血流感染症が増加している状況に鑑み、高齢者(特に85歳以上) における尿路感染症治療には推奨される第1選択 薬の早期開始が望まれると結論づけている。 高齢者における膀胱炎は若年女性と比較し、その治癒率は低く、再発率は高いとされる。そのため、抗菌薬治療前には尿培養検査を行うことを推奨したい。
12月の連休期間中の退院後の死亡と再入院:コホート研究。
12月の連休期間中の退院後の死亡と再入院:コホート研究。
Death and readmissions after hospital discharge during the December holiday period: cohort study BMJ 2018 Dec 10 ;363:k4481 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】12月の休暇期間に退院した患者は、他の時期に退院した患者よりも外来でのフォローアップが少なく、死亡や再入院の割合が高いかどうかを明らかにする。 【デザイン】集団ベースの後向きコホート研究。 【設定】カナダ、オンタリオ州の急性期病院、2002年4月1日から2016年1月31日まで。 【参加者】12月の2週間の休暇期間に緊急入院後に自宅退院した小児および成人217 305人と、11月下旬および1月の2つの対照期間に退院した小児および成人453 641人を比較した。 主要アウトカム指標]主要アウトカムは30日以内の死亡または再入院(救急部への受診または緊急再入院として定義)であった。副次的アウトカムは、死亡または再入院、および退院後7日以内と14日以内の医師による外来でのフォローアップであった。一般化推定方程式を用いた多変量ロジスティック回帰により,患者,入院,病院の特徴を調整した。 【結果】休暇期間中に退院した患者217 305(32.4%)と対照期間中に退院した453 641(67.6%)は,ベースラインの特徴や過去の医療利用がほぼ同じであった。休日期間に退院した患者は,退院後7日以内(36.3%v 47.8%,調整オッズ比0.61,95%信頼区間0.60~0.62)および14日以内(59.5%v 68.7%,0.65,0.64~0.66)において医師との経過観察を受けていない傾向が強かった。休暇期間中に退院した患者は、30日目の死亡または再入院のリスクも高かった(25.9% v 24.7%, 1.09, 1.07 to 1.10)。この相対的な増加は、7日目(13.2% v 11.7%, 1.16, 1.14~1.18) と14日目(18.6% v 17.0%, 1.14, 1.12~1.15 )でもみられた。患者10万人あたり,休日期間中の退院に起因する14日以内のフォローアップ予約の減少は2999件,死亡の超過は26件,入院の超過は188件,救急外来の超過は483件だった。 【結論】12月の休日期間中に退院した患者は,外来でのフォローアップが速やかに受けられず,死亡または30日以内の再入院リスクが高くなると考えられる。 第一人者の医師による解説 退院後の外来フォローアップの確実な実施が重要 山口 直人 済生会保健・医療・福祉総合研究所研究部門長 MMJ.August 2019;15(4) 本論文は、カナダ・オンタリオ州で2002年4 月~16年1月に急性期病院に緊急入院した患者の中で、クリスマスから新年までの年末休暇期間(2 週間)に退院した小児・成人患者217,305人(年末休暇中退院群)および、その前後の11月あるいは1月に退院した患者453,641人(対照期間中退 院群)を対象として、退院後の死亡・再入院リスクなどを比較した後ろ向きコホート研究の報告である。ただし、新生児、産科入院、緩和ケア入院、長期 入院(100日超)は除外し、退院後の行き先が介護 施設、リハビリテーション施設などの場合も除外した。統計解析ではロジスティック回帰分析を用いて、 患者、入院、病院の特性で補正している。 年末休暇中退院群において退院後30日以内に死亡・再入院した割合は25.9%で、対照期間中退院群の24.7%と比較して、リスクは1.09倍(95% 信頼区間[CI], 1.07~1.10)と有意に高く、退院後7日以内、14日以内の比較でも同様の傾向であった。また、退院後7日以内に医師による退院後フォローアップを受けた割合は、年末休暇中退院群では 36.3%で、対照期間中退院群の47.8%よりも有意に低く、退院後14日以内の比較でも同様の傾向 であった。 退院後30日以内の死亡・再入院リスクが年末休暇中退院群で高かったことは、この群が退院時点ですでに高リスクであった可能性を示唆するが、実際は逆に低リスクであったことが解析で示されている。したがって、退院後のフォローアップが十分 になされなかったことが死亡・再入院リスクが高くなった原因となっている可能性が考えられる。退院後に医師によるフォローアップを受けた割合が年末休暇中退院群で低かったことが原因となって、 退院後の死亡・再入院リスクを高めたことを示す直接的なエビデンスは、この研究では得られていないが、年末休暇中は医師を中心とした医療スタッフが手薄となることが背景となっていることは十分に考えられる。 また、年末休暇中に退院した患者 の側でも休暇中には医師の受診を控える傾向があった可能性も考えられる。いずれにしても、国全体が長期休暇中に退院させる場合には、退院後のフォローアップが十分になされるように配慮することが必要であるといえよう。わが国では2019年に新天皇の御即位に合わせて10連休という過去に例を見ない長期休暇が実現したが、このような場合に医療機関が考慮すべき事項として重要な示唆を与える研究といえる。
薬剤耐性結核菌の伝播性と病勢進行の可能性:前向きコホート研究
薬剤耐性結核菌の伝播性と病勢進行の可能性:前向きコホート研究
Transmissibility and potential for disease progression of drug resistant Mycobacterium tuberculosis: prospective cohort study BMJ 2019 ;367 :l5894 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】肺結核患者の家庭内接触者における表現型薬剤耐性と結核感染・発病リスクとの関連を測定すること 【設定】2009年9月から2012年9月までのペルー、リマの106地区の保健所 【デザイン】前向きコホート研究。 【参加者】結核の指標患者3339人の家庭内接触者10 160人を、患者の薬剤耐性プロファイルに基づいて分類した:6189人がMycobacterium tuberculosisの薬剤感受性株に、1659人がイソニアジドまたはリファンピシンに耐性の株に、1541人が多剤耐性(イソニアジドとリファンピシンに耐性)株に暴露されていた。 【結果】多剤耐性結核患者の家庭内接触者は、薬剤感受性結核患者の家庭内接触者と比較して、フォローアップ終了時までに感染するリスクが8%(95%信頼区間4%~13%)高くなることが示された。結核疾患発症の相対ハザードは、多剤耐性結核に曝露した家庭内連絡者と薬剤感受性結核に曝露した家庭内連絡者で差がなかった(調整ハザード比 1.28、95%信頼区間 0.9~1.83) 【結論】多剤耐性結核患者の家庭内連絡者は、薬剤感受性結核に曝露した連絡者と比較して結核感染リスクが高かった。結核疾患の発症リスクは、両群の接触者の間で差はなかった。このエビデンスは、ガイドライン作成者に、薬剤耐性結核と薬剤感受性結核を対象として、感染と疾患の早期発見と効果的な治療などの行動をとるように促すものである。 【TRIAL REGISTRATION】ClinicalTrials. gov NCT00676754. 第一人者の医師による解説 多剤耐性結核の制圧 耐性獲得防止だけでなく早期診断・治療戦略の開発が必要 加藤 誠也 公益財団法人結核予防会結核研究所所長 MMJ.February 2020;16(1) 薬剤耐性(AMR)対策は世界的に大きな問題とされており、結核がAMRの3分の1を占めているとされている。結核に関しては抗結核薬のイドニア ジドとリファンピシンの両剤に耐性の結核を多剤耐性結核という。薬剤耐性結核の発生原因は細胞分裂の過程で発生する耐性菌が、不適切な治療や治療中断によって選択的に増殖することによる。したがって、対策は適正な治療を確実に行うことによって耐性菌の増殖を防ぐこととされてきた。 この考え方の背景には、耐性菌は変異によって感染性や病原性が損なわれているために、感染や発病は感受性菌に比べ大きな問題でないという前提がある。本研究は感受性菌と多剤耐性菌の患者家族を12カ月間追跡することによって、感染状況(ツベルクリン反応結果)と発病者を算出し、この前提の妥当性を検証した。 その結果、多剤耐性菌は感受性菌よりも感染のリスクが8%高く、発病可能性は耐性菌と感受性菌で差がなかった。なお、結核菌の耐性 変異による発育適合性(fitness)の影響については諸説がある。本研究では家族内感染者に菌陽性に なりにくい小児が多かったため、分子疫学的な検証 が十分にされなかったが、Yangらは上海における分子疫学研究によって、多剤耐性結核患者の73% が感染によることを示した(1) 。 これらの結果から多剤耐性結核対策として、耐性菌の増殖を防ぐための適正治療と服薬遵守の推進のみならず、感染防止のため薬剤耐性菌の早期診断と効果的な治療の必要性が示唆された。しかし、薬剤感受性検査は診断後2~3カ月かかり、その間は適切な治療が行われないため、多剤耐性結核患者の感染性低下は感受性菌感染者に比べ遅いことになる。したがって、対策として既存のツールのみならず、薬剤耐性の早期診断・治療の戦略を開発する 必要がある。 診断のためには、結核菌の全ゲノム解析の活用が考えられるが、そのためには薬剤耐性 遺伝子の知見を集積して解析ツールの精度を十分に高くすること、および結核菌遺伝子を簡便に高濃度に抽出する技術が必要である。また、治療のためには従来の薬剤と異なる作用機序を持つ新薬とそれを組み合わせた安全かつ効果的な治療レジメンの開発が必要である。 1. Yang C et al. Lancet Infect Dis. 2017;17(3):275-284.
50歳における理想的な心血管系の健康と認知症発生率との関連:Whitehall IIコホート研究の25年フォローアップ。
50歳における理想的な心血管系の健康と認知症発生率との関連:Whitehall IIコホート研究の25年フォローアップ。
Association of ideal cardiovascular health at age 50 with incidence of dementia: 25 year follow-up of Whitehall II cohort study BMJ 2019 Aug 7 ;366:l4414. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】50歳時点のLife Simple 7心血管系健康スコアと認知症発症率との関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究 【設定】ロンドンの公務員部門(Whitehall II研究、研究開始1985-88)。 【参加者】50歳時点で心血管健康スコアに関するデータを有する7899人。 【対象】心血管健康スコアは、4つの行動的指標(喫煙、食事、身体活動、肥満指数)と3つの生物的指標(空腹時血糖値、血中コレステロール、血圧)を含み、3点スケール(0、1、2)でコード化されている。心血管健康スコアは7つの指標の合計(スコア範囲0~14)であり,心血管健康不良(スコア0~6),中間(7~11),最適(12~14)に分類された。 【主要アウトカム指標】2017年までの病院,精神保健サービス,死亡登録へのリンクを通じて特定された認知症の発症。 【結果】追跡期間中央値24.7年間に347例の認知症発症が記録された。心血管健康度が低い群における認知症の発症率が1000人年当たり3.2(95%信頼区間2.5~4.0)であるのに対し,1000人年当たりの絶対率の差は,心血管健康度が中程度の群では-1.5(95%信頼区間-2.3~-0.7),心血管健康度が最適の群では-1.9(-2.8~-1.1)であった。心血管系の健康スコアが高いほど、認知症のリスクは低かった(心血管系の健康スコアが1ポイント上がるごとにハザード比0.89(0.85~0.95))。行動学的および生物学的下位尺度についても、認知症との同様の関連が認められた(下位尺度1ポイント増加あたりのハザード比はそれぞれ0.87(0.81~0.93)および0.91(0.83~1.00))。50歳時点での心血管健康と認知症との関連は、追跡期間中に心血管疾患のない状態が続いた人においても見られた(心血管健康スコア1点増につきハザード比0.89(0.84~0.95))。 【結論】中年期にライフシンプル7理想心血管健康勧告を遵守することは、その後の認知症のリスク低減と関連していた。 第一人者の医師による解説 日本の特定健診 認知症予防にも結びつく可能性を示唆 長田 乾 横浜総合病院臨床研究センター長 MMJ.February 2020;16(1) 米国心臓協会(AHA)によれば、Lifeʼs Simple 7、 すなわち、禁煙、食事、運動習慣、体重の行動学的 4因子と、血圧、血糖、血清コレステロールの生物 学的3因子の合計7項目からなるCardiovascular Health Score(CVHS)が高い群は、低い群と比較し、冠動脈疾患や脳卒中の発症リスクが低いことが示されている(1)。高齢者では、CVHSが認知機能低下や認知症のリスクとも関連するとする報告はあるが、追跡期間が短い研究や高齢期の危険因子を評 価している研究が多く、必ずしも結果は一致しない。 本論文は、50歳の時に評価したCVHSと25年後 の認知症発症リスクの関連を検討した前向きコホー ト研究の報告である。対象は、英国 Whitehall II研 究の登録住民のうち、心血管疾患や認知症の既往が なく、50歳時にCVHSの評価を行った7,899人。 CVHSは、喫煙、果物・野菜の摂取量、1週間の運動量、体格指数(BMI)、空腹時血糖、総コレステロール、 収縮期・拡張期血圧をそれぞれ2、1、0点の尺度で 評価し、総点が12~14点を「最良群」、7~11点 を「中間群」、0~6点を「不良群」と判定した。不良群と比較して、中間群や最良群には、白人、高学歴、 高収入の人が多く含まれていた。認知症の診断にはNational Health Serviceのデータを用いた。 結果は、中央値24.7年の観察期間中に347人が認知症を発症し、1,000人・年あたりの同発症率は不良群3.2、中間群1.8、最良群1.3であった。社会経済的背景で補正した解析では、認知症発症リスク(ハザード比)は、不良群を1とすると中間群0.61、 最良群0.57で、CVHS1点上昇あたり0.88~0.89 と低下した。行動学的4因子および生物学的3因子についても同様の傾向がみられ、50歳時のCVHS は老年期の認知症発症リスクと密接に関連していた。ただし、観察期間中に心血管イベントを発症しなかった群でもCVHSは認知症発症リスクと関連したことから、老年期の認知症は心血管イベントですべて説明できるわけではなかった。サブ解析において3テスラ MRIで計測した全脳容積や灰白質容積は、CVHSと相関したが、海馬容積は相関しなかった。 実臨床では、中年期からLifeʼs Simple 7に含まれる心血管因子を厳格に管理することが老年期の認知症予防につながると考えられる。日本で40~ 74歳の被保険者を対象に行われている特定健康診査には、Lifeʼs Simple 7のうち5項目が含まれており、メタボリックシンドロームのみならず、老年期の認知症の予防にも結びつく可能性が示唆される。 1. AHA Life's Simple 7 ウエブサイト(https://bit.ly/2Nl4MHJ)
肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study BMJ 2019 Sep 4 ;366:l4897 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】菜食主義と虚血性心疾患および脳卒中のリスクとの関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定】非肉食者の割合が多い英国のコホートであるEPIC-Oxford研究は、1993年から2001年にかけて英国全土で募集した。 【参加者】虚血性心疾患、脳卒中、狭心症(または心血管疾患)の既往がない188名の参加者は、ベースライン時およびその後の2010年頃に収集した食事情報に基づいて、肉食者(魚、乳製品、卵を摂取するかどうかに関わらず肉を摂取する参加者、n=24 428)、魚食者(魚を摂取するが肉を食べない、n=7506)、菜食主義者を含む菜食者(n=16 254)の異なる3食グループに区分されました(n=28 364)。 【主要評価項目】2016年までの記録連結により特定された虚血性心疾患および脳卒中(虚血型および出血型を含む)の発症例。 【結果】18.1年間の追跡で虚血性心疾患2820例、全脳卒中1072例(虚血性脳卒中519例、出血性脳卒中300例)が記録された。社会人口学的およびライフスタイルの交絡因子で調整した後、魚食者と菜食者は肉食者に比べて虚血性心疾患の発生率がそれぞれ13%(ハザード比0.87、95%信頼区間0.77~0.99)および22%(0.78、0.70~0.87)低かった(不均一性についてはP<0.001)。この差は,10 年間で人口 1000 人当たりの虚血性心疾患の症例数が,肉食者よりもベジタリアンの方が 10 人少ない(95%信頼区間 6.7~13.1 人少ない)ことに相当する.虚血性心疾患との関連は、自己申告の高血中コレステロール、高血圧、糖尿病、肥満度を調整すると一部弱まった(すべての調整でベジタリアンのハザード比 0.90、95%信頼区間 0.81~1.00 )。一方、ベジタリアンは肉食の人に比べて脳卒中の発症率が20%高く(ハザード比1.20、95%信頼区間1.02~1.40)、これは10年間で人口1000人あたり3人多い(95%信頼区間0.8~5.4多い)ことに相当し、ほとんどが出血性脳卒中の発症率が高いためであった。脳卒中の関連は、疾患の危険因子をさらに調整しても減衰しなかった。 【結論】英国におけるこの前向きコホートでは、魚食者と菜食者は肉食者よりも虚血性心疾患の割合が低かったが、菜食者は出血性脳卒中と全脳卒中の割合が高かった。 第一人者の医師による解説 肥満、高血圧、糖尿病は少なく LDLコレステロールの低値が影響か 的場 圭一郎1 /宇都宮 一典2 東京慈恵会医科大学 1)内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科講師 2)総合健診・予防医学センターセンター長(臨床専任教授) MMJ.February 2020;16(1) 近年の健康志向の高まりや動物福祉の観点から、 菜食者は世界的に増加している。菜食者における虚血性心疾患の発症リスクは非菜食者に比べて低いと考えられているが、これに関する大規模かつ前向きな研究は限られている。また、脳卒中リスクとの関連性についてはこれまでエビデンスがない。 本論文は、英国 Oxford大学のTongらが、同国コホート(EPIC-Oxford)における虚血性心疾患・脳卒中・狭心症の既往がない参加者48,188人を対象に、虚血性心疾患と脳卒中のリスクを調べた長 期前向き観察研究の報告である。研究開始時(1993 ~2001年)と2010年前後での食習慣に基づき、 対象者を①魚、乳製品または卵の摂取を問わず、肉を摂取する肉食群、②魚は摂取するが肉は摂取しない魚食群、③完全菜食主義者(vegan)を含む菜食群に分け、虚血性心疾患および脳卒中の発症につ いて検討した。 その結果、肉食群と比較して、虚血性心疾患の発症リスクは魚食群で13%低下、菜食群では22% 低下した。しかし、菜食群では脳卒中の発症リスクが20%上昇しており、これは主に脳出血の増加が原因であった。 肉食群に比べて、菜食群と魚食群で虚血性心疾患 が少なかった背景には、これら2群において肥満 や高血圧、脂質異常症、糖尿病が少なかったことが 関連していると思われる。一方、脳出血が菜食群で多い理由として、LDLコレステロールの低値や動物性食品に含まれる何らかの成分の不足を著者らは 想定している。EPIC-Oxfordコホートの菜食者では 血中のビタミン B12やビタミン D、必須アミノ酸、 n-3系多価不飽和脂肪酸が低値であり、脳出血増加との関連性が示唆される。しかし、人種を問わず同じ傾向がみられるか否かは不明であり、背景因子の解明にはさらなる検討が必要である。
食事脂肪の質と2型糖尿病の遺伝的リスク:個人参加者データのメタアナリシス。
食事脂肪の質と2型糖尿病の遺伝的リスク:個人参加者データのメタアナリシス。
Quality of dietary fat and genetic risk of type 2 diabetes: individual participant data meta-analysis BMJ 2019 ;366:l4292 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】2型糖尿病の遺伝的負担が、食事脂肪の質と2型糖尿病発症率との関連を修飾するかどうかを調査する。 【デザイン】個々の参加者データのメタ解析。 【データ入手元】適格な前向きコホート研究は、主要医学データベース(Medline、Embase、Scopus)の電子検索及び研究者との議論を通じて1970年1月から2017年2月に発表された研究中から系統的に調達された。[レビュー 【方法】ゲノムワイド遺伝子データが利用可能なコホート研究またはマルチコホートコンソーシアムから、ヨーロッパ系の参加者における食事脂肪の質と2型糖尿病の発生率に関するデータを探した。5年以上経過した前向きコホート研究が対象となった。2型糖尿病の遺伝的リスクプロファイルは、公表されている効果量によって重み付けされた68変量の多遺伝子リスクスコアによって特徴づけられた。食事は、有効なコホート特異的食事評価ツールを用いて記録された。 【結果】15の前向きコホート研究からの102 305人の参加者のうち、中央値12年(四分位範囲9.4~14.2)のフォローアップ後に2型糖尿病2例が記録された。多遺伝子リスクスコアのリスクアレルが10増加するごとの2型糖尿病のハザード比は1.64(95%信頼区間1.54~1.75,I2=7.1%,τ2=0.003)であった。炭水化物の代わりに多価不飽和脂肪と総オメガ6多価不飽和脂肪の摂取量を増やすことは、2型糖尿病のリスク低下と関連し、ハザード比は0.90(0.82~0.98、I2=18.0%、τ2=0.006;エネルギー5%当たり)、0.99(0.97~1.00、I2=58.8%、τ2=0.001:1g/日の増加あたり)であった。炭水化物の代わりに一価不飽和脂肪を増やすと、2型糖尿病のリスクが高くなった(ハザード比1.10、95%信頼区間1.01~1.19、I2=25.9、τ2=0.006、エネルギー5%当たり)。多価不飽和脂肪と2型糖尿病リスクとの全体的な関連については、研究効果が小さいという証拠が検出されたが、オメガ6多価不飽和脂肪および一価不飽和脂肪との関連については検出されなかった。2型糖尿病リスクに関する食事脂肪と多遺伝子リスクスコアとの有意な相互作用(相互作用についてはP>0.05)は認められなかった。 【結論】これらのデータは、遺伝的負担と食事脂肪の質がそれぞれ2型糖尿病の発症と関連していることを示すものである。この知見は、2型糖尿病の一次予防のために、食事脂肪の質に関する推奨を個々の2型糖尿病遺伝子リスクプロファイルに合わせることを支持せず、食事脂肪は2型糖尿病遺伝子リスクの範囲にわたって2型糖尿病リスクと関連することを示唆している。 第一人者の医師による解説 牛脂、豚脂にも多い単価不飽和脂肪酸 どの食材から摂取したかが重要 柳川 達生 練馬総合病院内科・副院長、医療の質向上研究所・主任研究員 MMJ.February 2020;16(1) 本論文は、2型糖尿病発症と既知のリスク遺伝子および脂肪酸量・質との関連を検討したメタ解析の報告である。主要医療データベース検索(1970 ~2017年)により、北米・欧州系102,350人のデータが収集された。68の2型糖尿病リスク遺伝子を選定、それぞれの相対的効果で重み付けし遺伝要因をスコア化している。 食事は半定量的食品頻度調査などから、脂肪酸別の摂取量をベースラインと累積平均で算出。交絡因子で補正後、以下の項目で糖尿病発症リスクが評価された:(1)遺伝要因 のリスクスコア値との関連(2)炭水化物を減らして等カロリーの総脂肪または各種脂肪酸に置換(3) 脂肪酸の種類と遺伝子リスクスコアの相互作用。 追跡期間中央値12年 で20,015人 が2型糖尿病を発症し、主な結果は以下のとおりであった:(1) 遺伝子リスクスコア 10ポイント増加あたりの発症ハザード比(HR)は1.64、(2)炭水化物を総多価不飽和脂肪酸(ほぼω3[エイコサペンタエン酸、 ドコサヘキサエン酸など]とω6[リノール酸など]) あるいはω6多価不飽和脂肪酸で等カロリー置換 した場合のHRはそれぞれ0.90と0.99、(3)炭水化物を総単価不飽和脂肪酸で等カロリー置換した場合のHRは1.10、(4)脂肪酸と遺伝子リスクスコアに相互作用はなかった。 これらの結果を解釈すると、炭水化物を総多価不飽和脂肪酸(ほぼω3とω6)に置換するとリスクが低下するが、ω6脂肪酸の影響はニュートラルであったことから、ω3脂肪酸のリスク低減寄与が大きいことが示唆される。 一方、炭水化物を単価不飽和脂肪酸(主にω9[オレイン酸など])に置換すると発症リスクは上昇するが、ω9の由来する食材の影響が重要であると考える。牛脂、豚脂は50%弱 がω9脂肪酸で、飽和脂肪酸は30 ~ 40%である。 オリーブ油は80%弱がω9である。地中海地域であれば、オリーブ油などからのω9摂取割合が高い[1]。 今回のメタ解析に含まれた研究は非地中海諸国によるもので、肉類などがω9の主な供給源と考えられる。肉過剰摂取は発症リスクである[2]。どの食材からω9を摂取しているかが重要である。 脂肪酸の種類と遺伝要因の相互作用は認められなかったが、アルコール脱水素酵素の遺伝子型は代謝に影響するのと同様に、脂肪酸代謝に影響する遺伝子型が糖尿病発症に影響する可能性はありえる。また、食事調査では加工食品などの主要油脂であるパーム油(脂肪酸組成はほぼ牛脂)のデータが 反映されているか疑問である。世界で最も消費されている植物油であり影響は大きい。 1. 柳川達生 . 月刊糖尿病「地中海食の応用と糖尿病の管理」. 2019; 11(5): 74-79. 2.Feskens EJ et al. Curr Diab Rep. 2013 Apr. 13(2):298-306
高糖度スナックの20%値上げが英国における肥満の有病率に与える潜在的影響:モデル化研究。
高糖度スナックの20%値上げが英国における肥満の有病率に与える潜在的影響:モデル化研究。
Potential impact on prevalence of obesity in the UK of a 20% price increase in high sugar snacks: modelling study BMJ 2019 ;366 :l4786 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】高糖度スナックの20%値上げが肥満度指数(BMI)と肥満の有病率に与える潜在的影響を推定する。 【デザイン】モデル化研究。 【対象】英国の一般成人人口。 【参加者】英国のKantar FMCG(fast moving consumer goods)パネルから製品レベルの家庭支出に関するデータを有する324世帯、2012年1月から2013年12月まで。データを用いて、高糖度スナックの20%値上げに伴うエネルギー(kcal、1kcal=4.18kJ=0.00418MJ)購入量の変化を推定した。National Diet and Nutrition Survey(2012~16年)の第5~8波の成人2544人のデータを用いて、BMIと肥満の有病率の変化を推定した。 【主要アウトカム指標】高糖質スナックの3カテゴリー(菓子類(チョコレート含む)、ビスケット、ケーキ)の20%の値上げが、1人当たりの家庭用エネルギー購入に及ぼす影響について。値上げによる健康アウトカムは、体重、BMI(過体重ではない(BMI<25)、過体重(BMI≧25および<30)、肥満(BMI≧30))、および肥満の有病率の変化として測定された。結果は、世帯収入とBMIで層別化した。 【結果】収入グループを合わせた場合、高糖質スナックの20%価格上昇に対するエネルギー消費の平均減少量は8.9×103 kcal(95%信頼区間の-13.1×103~-4.2×103 kcal)と推算された。静的減量モデルを用いると,BMIはすべてのカテゴリーと所得グループにわたって平均0.53(95%信頼区間-1.01~-0.06)減少すると推定された.この変化により,1年後の英国における肥満の有病率は2.7%ポイント(95%信頼区間-3.7~-1.7%ポイント)減少する可能性がある.高糖度スナックの20%値上げがエネルギー購入に与える影響は、肥満と分類される低所得世帯で最も大きく、太り過ぎではないと分類される高所得世帯で最も小さかった。 【結論】高糖度スナックを20%値上げすると、エネルギー摂取、BMI、肥満の有病率を減少させることができた。この知見は、英国の文脈におけるものであり、砂糖入り飲料の同様の値上げについてモデル化されたものの2倍であった。 第一人者の医師による解説 肥満対策としての砂糖入り菓子への課税 選択肢として浮上 久保田 康彦 大阪がん循環器病予防センター/磯 博康 大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 MMJ.February 2020;16(1) 砂糖の多い菓子を20%値上げすることで、値上げ翌年の肥満者の割合が2.7%低下する可能性が、 今回報告された英国のモデル研究で示された。 この40年間で世界の肥満者の割合は3倍にも上昇し(1)、世界中で肥満対策が進められている。砂糖は肥満の最も重要な危険因子の1つであり、肥満対策の1つとして、砂糖の主な摂取源と考えられる 清涼飲料水に対する課税がメキシコ、ハンガリー、 フィンランドなどで導入されてきた。その結果、清涼飲料水の購入量が減少し、世界保健機関(WHO) も砂糖入り清涼飲料水に対する課税を推奨してい る。しかしながら、英国では清涼飲料水よりも菓子の方が砂糖の摂取源として多いため、砂糖入り菓子の値上げがどの程度肥満解消につながるかは、 同国内の今後の肥満対策案を立てるためにも重要な研究となる。   本研究では、UK Kantar社(英国のマーケティン グ企業)が所有する商品ごとの家計支出や摂取エ ネルギー量などに関するデータ(対象:36,324世帯、期間:2012年1月~ 13年12月)と国民栄養 調査データ(対象:2,544人、期間:2012年~16年) を用いて行われた。前者を用いて需要の価格弾力 性(PED)を計算し、消費エネルギー変化を推定した。 さらに後者を用いて消費エネルギー変化に伴う体格指数(BMI)の変化を推定した。 砂糖入り菓子の価格を20%上げることで、平均で年間8,900kcal分の摂取エネルギーが減少すると推定された。BMIはそれに伴い0.53 kg/m2 低下すると推定された。このBMI低下は、英国における肥満者が2.7%減少することに相当する。価格上昇による摂取エネルギー減少度が最も大きかったグループは肥満かつ低収入群で、最も小さかったグループは非肥満かつ高収入群であった。砂糖入り飲料水に関しても同様の検討を行ったが、20% 価格上昇の効果は砂糖入り菓子の半分であった。 本研究の結果は肥満対策として砂糖入り菓子に対する増税の根拠となりうる。砂糖入り菓子に対 する増税は、食事に関する健康格差是正に貢献する可能性があり、政策評価に関するさらなる研究が望まれる。 1. World Health Organization. Obesity and Overweight URL:https://bit.ly/2ZYPfmo
冠動脈バイパス術後の抗血栓療法:系統的レビューとネットワークメタ解析。
冠動脈バイパス術後の抗血栓療法:系統的レビューとネットワークメタ解析。
Antithrombotic treatment after coronary artery bypass graft surgery: systematic review and network meta-analysis BMJ 2019 ;367:l5476. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】冠動脈バイパスグラフト手術を受ける患者における伏在静脈グラフト不全を予防する異なる経口抗血栓薬の効果を評価する。 デザイン]系統的レビューとネットワークメタ分析。 【データ入手元】インセプションから2019年1月25日までのMedline、エンベース、Web of Science、CINAHL、Cochrane Libraryのデータを用いた。の適格基準。研究選択について冠動脈バイパス移植術後の伏在静脈グラフト不全を予防するために経口抗血栓薬(抗血小板薬または抗凝固薬)を投与した参加者(18歳以上)の無作為化対照試験。 【MAIN OUTCOME MEASURES】主要評価項目は伏在静脈グラフト不全、主要安全評価項目は大出血であった。副次的評価項目は心筋梗塞と死亡であった。 【結果】このレビューで3266件の引用が確認され、20件の無作為化対照試験に関連する21件の論文がネットワークメタ解析に含まれた。これら20の試験は4803人の参加者からなり、9つの異なる介入(8つの活性と1つのプラセボ)を調査した。中程度の確度のエビデンスは、アスピリン単独療法と比較して、伏在静脈グラフト不全を減らすために、アスピリン+チカグレロル(オッズ比0.50、95%信頼区間0.31~0.79、治療必要数10)またはアスピリン+クロピドグレル(0.60、0.42~0.86、19)による抗血小板2重療法の使用を支持している。本試験では,抗血栓療法の違いによる大出血,心筋梗塞,死亡の違いを示す強力なエビデンスは得られなかった。感度解析の可能性は否定できないが,含まれるすべての解析で試験間の異質性と非干渉性は低かった.グラフトごとのデータを用いた感度分析では、効果推定値に変化はなかった。 【結論】このネットワークメタ分析の結果は、冠動脈バイパスグラフト術後の伏在静脈グラフト不全を予防するために、アスピリンにチカグレロルまたはクロピドグレルを追加することの重要な絶対的利益を示唆するものであった。手術後の二重抗血小板療法は、重要な患者アウトカムに対して薬物介入の安全性と有効性のプロファイルをバランスよく調整し、患者に合わせるべきである。[STUDY REGISTRATION]PROSPERO 登録番号 CRD42017065678. 第一人者の医師による解説 DAPTにおける心血管イベント予防と出血リスク上昇 長期的で大規模な検証を期待 北村 律 北里大学医学部心臓血管外科准教授 MMJ.April 2020;16(2) 冠動脈バイパス(CABG)術後の大伏在静脈グラフト閉塞は、術後1年以内に30~40%、10年以上では70%の確率で生じるという報告もある(1),(2)。 しかしながら、採取の容易さ、ハンドリングの良さなどの理由から、多くの患者で大伏在静脈グラフトが用いられる。術後の大伏在静脈グラフト閉塞予防のために、近年、アスピリンにクロピドグレル やチカグレロルなどのチエノピリジン系抗血小板薬を追加する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を 用いることも多い。この効果についてのネットワークメタアナリシスが本論文である。 検討の対象は、主要医学文献データベース上にある2019年1月までに発表された論文のうち、18 歳以上、大伏在静脈を用いたCABG、複数の経口抗血栓薬またはプラセボとの比較、大伏在静脈グラフト閉塞を検討した論文3,266編から選ばれた、 解析に適切な20件のランダム化対照試験(RCT)である。術後経口抗血栓薬として、単剤療法にはアスピリン、クロピドグレル、チカグレロル、ビタミン K拮抗薬(ワルファリンなど)、リバーロキサバン、 2剤併用療法にはアスピリン+クロピドグレル、アスピリン+チカグレロル、アスピリン+リバーロキサバン、合計8種類が含まれた。有効性のエンドポイントは静脈グラフト閉塞、安全性のエンドポ イントは大出血、全死亡と心筋梗塞に設定している。 合計4,803人の患者が解析の対象となっており、 年齢は44~83歳、83%が男性、83%が待機手術であった。術後観察期間は1カ月~8年で、大伏在静脈開存はカテーテル検査かCTで評価された。 検討された薬剤すべてがグラフト閉塞を予防することが示されたが、アスピリン単剤と比較して、 アスピリン+チカグレロル(オッズ比[OR], 0.50; 95% CI, 0.31~0.79)、アスピリン+クロピド グレル(OR, 0.60;95% CI, 0.42~0.86)が有意にグラフト閉塞を予防することが示された。出血リスクに関する検討では薬剤間で有意差を認めず、いずれもプラセボと比較して出血リスクを上昇させる傾向にあったが、有意差はなかった。全死亡に関する検討では10件のRCT(1,921人)、心筋梗塞に関しては12件のRCT(3,994人)が 対象となったが、薬剤間で有意差を認めなかった。 RCT20件のうち、ランダム化バイアスのリスクが低いと判断されたのは5件のみであった。 DAPTによるCABG術後の心血管イベント予防効果および出血リスクの上昇については、より長期的かつ大規模な研究による検証が期待される。 1. Cooper GJ et al. Eur J Cardiothorac Surg. 1996;10(2):129-140. 2. Windecker S et al. Eur Heart J. 2014;35(37):2541-2619
妊娠中の母体の糖尿病と子孫の心血管疾患の早期発症:追跡調査の40年と集団ベースのコホート研究。
妊娠中の母体の糖尿病と子孫の心血管疾患の早期発症:追跡調査の40年と集団ベースのコホート研究。
Maternal diabetes during pregnancy and early onset of cardiovascular disease in offspring: population based cohort study with 40 years of follow-up BMJ 2019 Dec 4 ;367:l6398 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】妊娠前または妊娠中に診断された母体性糖尿病と、人生の最初の40年間の子孫の早期発症心血管疾患(CVD)との関連を評価すること。 【デザイン】人口コホート研究。追跡調査は出生時から開始され、CVDの初回診断、死亡、移住、2016年12月31日のいずれか早い方まで継続された。母体糖尿病と子孫における早期発症CVDのリスクとの関連を検討した。Cox回帰は、母親のCVDの既往歴または母親の糖尿病合併症がこれらの関連に影響を与えたかどうかを評価するために使用された。暦年、性、単胎児の状態、母親の因子(偏生、年齢、喫煙、教育、同居、出産時の居住地、出産前のCVDの既往歴)、および父親の出産前のCVDの既往歴について調整が行われた。累積罹患率はすべての個人で平均化し、競合イベントとしてCVD以外の原因による死亡を扱いながら因子を調整した。 【結果】追跡調査の40年までの間に、糖尿病を有する母親の1153人の子孫と糖尿病を有さなかった母親の91 311人の子孫がCVDと診断された。糖尿病を持つ母親の子孫は、早期発症CVD(ハザード比1.29(95%信頼区間1.21〜1.37)、年齢13.07%(12.92%〜13.21%)の40歳で母親の糖尿病にさらされていない子孫の間の累積発生率13.07%(12.92%〜13.21%)、さらされたとさらされていない子孫の間の累積発生率の差4.72%(2.37%〜7.06%))の全体的な率が29%増加していた。兄弟姉妹設計では、全コホートを対象とした対をなした設計と同様の結果が得られた。妊娠前糖尿病(1.34(1.25~1.43))と妊娠糖尿病(1.19(1.07~1.32))の両方が、子供のCVD発症率の増加と関連していた。また、特定の早期発症CVD、特に心不全(1.45(0.89~2.35))、高血圧症(1.78(1.50~2.11))、深部静脈血栓症(1.82(1.38~2.41))、肺塞栓症(1.91(1.31~2.80))の発症率の増加にもばらつきが見られた。CVDの発生率の増加は、小児期から40歳までの早期成人期までの年齢層別にみられた。増加率は、糖尿病合併症を持つ母親の子供でより顕著であった(1.60(1.25~2.05))。糖尿病と併存するCVDを持つ母親の子供の早期発症CVDの発生率が高い(1.73(1.36~2.20))のは、併存するCVDの付加的な影響と関連していたが、糖尿病とCVDとの間の相互作用によるものではなかった(相互作用のP値は0.94)。94) 【結論】糖尿病を持つ母親の子供、特にCVDや糖尿病合併症の既往歴を持つ母親の子供は、小児期から成人期の早期発症CVDの割合が増加している。もし母親の糖尿病が子孫のCVD率の増加と因果関係があるとすれば,出産可能年齢の女性における糖尿病の予防,スクリーニング,治療は,次世代のCVDリスクを低減するのに役立つ可能性がある。 第一人者の医師による解説 母親の糖尿病管理が子どものCVDリスク低下の鍵か 今後の検討を期待 服部 幸子 東都クリニック糖尿病代謝内科 MMJ.April 2020;16(2) 妊娠中の母親の糖尿病状態は子どもの先天性心疾患、肥満、糖尿病と関連することや、将来の心血管疾患(CVD)リスクの上昇に関与していることが知られている。また、糖尿病の母親をもつ子どもは メタボリック症候群やその他のCVD危険因子を有する確率が高いことも知られている。しかし、出生前の母親の糖尿病状態が、子どもの生涯における CVDリスクにどの程度影響を及ぼすかは不明である。 本研究では、妊娠中の母体糖尿病状態が子どもの早期 CVD発症リスク上昇に与える影響について、 デンマーク人のコホート研究のデータに基づいて、 その子どもの出生時より40歳に至るまで検討した。すなわち「異なる糖尿病タイプの母親」、「CVDの既往のある糖尿病の母親」、また「妊娠前に既に糖尿 病合併症のある母親」から生まれた子どものCVD リスク上昇に対する影響を調査した。 その結果、デンマークの243万2000人の新生児を対象に40 年間のフォローアップが実施され、糖尿病の母親をもつ子ども1,153人、および非糖尿病の母親をもつ子ども91,311人がCVDと診断された。糖尿病 の母親をもつ子どもでは早期 CVD発症リスクが ハザード比(HR)で29%上昇し、妊娠前糖尿病のある母親の子ども(HR, 1.34)、妊娠糖尿病の母親をもつ子ども(HR, 1.19)の両方でリスク上昇が認められた。また、母親の糖尿病の種類(1型、2型)による子どもの早期 CVD発症リスクに違いはなかった。糖尿病合併症を有する母親の子どもでは早期 CVD発症リスクはより高く(HR, 1.60)、さらにCVDの既往を伴う糖尿病の母親の子どもではより高いCVD発症リスクが認められた(HR, 1.73)。 以上の結果から、著者らは、子宮内糖尿病環境は子どものCVD発症にあたかもプログラミングされたような影響がある可能性を示唆し、特に、CVD 既往あるいは糖尿病合併症を有する糖尿病の母親からの子どもは早期 CVD発症リスクが高いという事実は公衆衛生戦略を立てる上に重要であると指摘している。今後の研究課題としては、子どもの生涯におけるCVD発症を減少させうる妊娠中の血糖コントロールを挙げている。 本論文には血糖管理状態とリスクの関係についての記載はないが、日本では出生率の低下が進み、一方で妊娠時の母親の年齢が上昇していることから、以前に増して妊娠前糖尿病管理と計画妊娠、妊娠中の厳格な血糖管理が重要と考えられる。これらが今後出生する子どもの生涯におけるCVDを含むさまざまな疾患のリスク低下につながるよう血糖管理基準を含む今後のさらなる検討が期待される。
世界の国や地域における末期腎臓病のケアの状況:国際断面調査。
世界の国や地域における末期腎臓病のケアの状況:国際断面調査。
Status of care for end stage kidney disease in countries and regions worldwide: international cross sectional survey BMJ 2019 ;367:l5873 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】腎代替療法(透析と移植)と保存的腎臓管理を提供するための世界的な能力(利用可能性、アクセス性、品質、価格)を明らかにする。 デザイン]国際横断的調査。 【設定】国際腎臓学会(ISN)が2018年7月から9月に182か国を調査した。 【参加者】ISNの国・地域のリーダーが特定した主要なステークホルダー。 [MAIN OUTCOME MEASURES]腎代替療法と保存的腎臓管理のコアコンポーネントを提供する国の能力のマーカー。 結果]182カ国中160(87.9%)から回答があり、世界の人口の97.8%(7億5,010万人のうち7億3,850万人)が含まれていた。腎代替療法と保存的腎臓管理に関する能力と構造、すなわち、資金調達メカニズム、医療従事者、サービス提供、利用可能な技術に大きなばらつきがあることが判明した。治療中の末期腎臓病の有病率に関する情報は、世界218カ国のうち91カ国(42%)で入手可能でした。推定値は人口100万人あたり4〜3392人と800倍以上のばらつきがあった。ルワンダは低所得国で唯一、治療中の疾患の有病率に関するデータを報告していた。アフリカの53カ国中5カ国(10%未満)がこれらのデータを報告していた。159カ国のうち、102カ国(64%)が腎代替療法に公的資金を提供していた。159カ国のうち68カ国(43%)が医療提供の時点で料金を徴収せず、34カ国(21%)が何らかの料金を徴収していた。血液透析は156カ国中156カ国(100%)、腹膜透析は156カ国中119カ国(76%)、腎臓移植は155カ国中114カ国(74%)で実施可能と報告されている。透析と腎移植は、これらのサービスを提供している154カ国のうち、それぞれ108(70%)と45(29%)のみで、50%以上の患者が利用可能でした。保存的腎臓管理は154カ国中124カ国(81%)で利用可能であった。世界の腎臓専門医数の中央値は人口100万人あたり9.96人であり、所得水準によって差があった。 【結論】これらの包括的データは、末期腎臓病患者に最適なケアを提供する各国の能力(低所得国を含む)を示すものである。このような疾患の負担、腎代替療法や保存的腎臓管理の能力にはかなりのばらつきがあることを示しており、政策に影響を与えるものである。 第一人者の医師による解説 持続可能な発展のため 腎臓病診療の国家間格差の是正を 岡田 啓(糖尿病・生活習慣病予防講座特任助教)/南学 正臣(腎臓内科学・内分泌病態学教授) 東京大学大学院医学系研究科 MMJ.April 2020;16(2) 本研究は、国際腎臓学会(ISN)が主導する世界腎 疾患治療地図(Global Kidney Health Atlas)調査の第2弾である。第1弾は、地域間・地域内での腎臓病診療における格差が記述されていたが、診療実態の詳細やアクセス・供給能力、また腎疾患でも末期腎不全医療について記述されていないことが限界であった(1)。そこで、第2弾となる本研究では、第1弾を拡張して、末期腎不全医療に対する詳細な供給能力・アクセス・質と世界的な腎疾患がもたらす「負荷」を記述し、低中所得国での政策立案に有用なものとなっている。 研究 デザインとしては、2018年7~9月 に 182カ国を対象にISNが行った調査をもとにした 国際共同横断的研究で、対象者はISN加入の地域代表者が選んだ関係者(stakeholder)、アウトカムは 対象国の腎代替療法と保存期腎疾患治療を実行できる能力とされた。調査の結果は、腎代替療法と保存期腎疾患治療の供給能力と制度に大きな差異が 存在することが明らかになった。 具体的には、末期腎不全の治療実施割合は、100万人当たり4人から3,392人と800倍以上の差異を認めた。159 カ国中、64%が 腎代替療法に 公的資金を投入し、 43%は同治療を無償で、21%は有償で提供していた。血液透析は100%、腹膜透析は76%、腎移植は74%の国で実施されていた。半数以上の患者への供給能力を持つ国は、透析で70%、腎移植では29%のみであった。保存期腎疾患治療を利用できる国は81%であった。腎臓専門医は100万人当たり9.96人(中央値)で、この割合は所得水準と 関連していた。 本研究は、末期腎不全患者治療への供給能力が国家間で大きく異なることを明らかにした。強みとしては人口カバー率が98%にも上ること、弱みとしては低所得国の情報が不足していることである。実際は本報告よりさらに腎疾患による負荷がかかっている状況だと推察される。世界的に近年話題になっている「持続可能な発展」を成し遂げるためにも、腎代替療法は低所得国でも、腎疾患による機会損失を生まないために提供されるべきである。 日本の現状は、腎臓専門医へのアクセスは地域によって異なり、一部では腎臓専門医の不足が示唆されている(2)。地域における腎臓専門医の数が腎臓病診療の質と相関することを示唆する報告もある(3)。日本腎臓学会もこの問題を解決すべく努力しており、加えて患者支援・教育や他職種との連携を促進するなどの目的で、日本腎臓病協会が主体となり腎臓病療養指導士という制度を作っている。これらの活動により、日本でも腎臓病診療に地域格差が なくなることが望まれる。 1. Bello AK et al. JAMA. 2017 ;317(18):1864-1881. 2. 日腎会誌 2013;55(8):1391 - 1400. 3. Inoue R et al. Clin Exp Nephrol. 2019 Jun;23(6):859-864
股関節骨折緊急手術における心筋傷害に対する遠隔虚血性プレコンディショニングの効果(PIXIE試験):第Ⅱ相無作為化臨床試験。
股関節骨折緊急手術における心筋傷害に対する遠隔虚血性プレコンディショニングの効果(PIXIE試験):第Ⅱ相無作為化臨床試験。
The effect of remote ischaemic preconditioning on myocardial injury in emergency hip fracture surgery (PIXIE trial): phase II randomised clinical trial BMJ 2019 Dec 4;367:l6395. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】股関節骨折手術を受ける患者において遠隔虚血プレコンディショニング(RIPC)が心筋損傷を予防するかどうかを検討する。 【デザイン】第II相、多施設、無作為化、観察者盲検、臨床試験。 【設定】デンマークの3大学病院、2015-17。 【参加者】股関節骨折手術を受ける心血管リスク因子保有患者648人。286名がRIPCに、287名が標準診療(対照群)に割り付けられた。 【介入】RIPC手順は、手術前に上腕に止血帯を装着して開始され、5分間の前腕虚血と5分間の再灌流の4サイクルからなる。 【MAIN OUTCOME MEASURES】Original primary outcome is myocardial injury within four days of surgery, defined as a peak plasma cardiac troponin I concentration of 45 ng/L or more caused by ischaemia.当初のkey outcomeは、手術後4日以内の心筋損傷とした。修正後の主要転帰は、血漿中ピーク心筋トロポニンI濃度が45ng/L以上または高感度トロポニンIが24ng/L以上と定義された術後4日以内の心筋損傷とした(主要転帰は検査の都合により変更された)。副次的転帰は,術後最初の 4 日間の血漿トロポニン I のピーク値とトロポニン I の総発現量(心臓トロポニン I と高感度トロポニン I),周術期の心筋梗塞,主要有害事象,術後 30 日以内の全死因死亡,術後滞在期間,集中治療室での滞在期間であった.いくつかの予定された副次的アウトカムは別の場所で報告される。 【結果】無作為化された648例のうち573例がintention-to-treat解析に含まれた(平均年齢79(SD 10)歳、399例(70%)が女性)。主要転帰はRIPC群168例中25例(15%),対照群158例中45例(28%)で発生した(オッズ比0.44,95%信頼区間0.25~0.76,P=0.003)。修正主要転帰は,RIPC 群では 286 例中 57 例(20%),対照群では 287 例中 90 例(31%)で発生した(0.55, 0.37~0.80;P=0.002).心筋梗塞はRIPC群10例(3%)と対照群21例(7%)に発生した(0.46, 0.21~0.99; P=0.04)。他の臨床的二次アウトカム(主要有害心血管イベント、30日全死亡、術後滞在期間、集中治療室滞在期間)の群間差について確固たる結論を出すには統計力が不十分であった。 【結論】RIPCは緊急股関節骨折手術後の心筋損傷および梗塞のリスクを低減させた。RIPCが手術後の主要な有害心血管イベントを全体的に予防すると結論づけることはできない。この知見は、より長期の臨床転帰と死亡率を評価するための大規模な臨床試験を支持するものである。 【TRIAL REGISTRATION】ClinicalTrials. gov NCT02344797。 第一人者の医師による解説 簡便で安全な処置による効果で意義深い より大規模な検証を期待 阪本 英二 国立循環器病研究センター研究所血管生理学部血管機能研究室室長 MMJ.April 2020;16(2) 全世界で年間2億人以上の人が心血管系以外の手術を受けており、その合併症は7~11%である(1) 。また、その術後30日内の死亡は0.8~1.5%(1)で、少なくとも3分の1は心血管系の合併症が原因である。心臓以外の手術において虚血が原因で起こる心筋障害(myocardial injury in non-cardiac surgery;MINS)は術後30日内に起こり、重要な予後決定因子であるが、それに対する有効な予防策は確立されていない。本論文は、股関節骨折手術において、直前に前腕に巻いたマンシェットで遠隔性の虚血プレコンディショニング(RIPC)を行った場合、術後の予後改善に対する効果を解析した、 多施設共同ランダム化第 II相臨床試験(PIXIE試験)の報告である。 本試験では、2015年2月~17年9月に股関節骨折手術を受けたデンマーク人をRIPC群(286人)と対照群(287人)にランダムに割り付けて心筋障害の発生率が比較された。RIPCは手術直前に5 分間の虚血と5分間の再灌流を4回繰り返すことでなされ、術前および術後4日以内に血中トロポニン I値が測定された。主要評価項目として、術後の血中トロポニン I値が基準値(心筋型トロポニン Iの場合は45ng/L、高感度トロポニン Iの場合は 24ng/L)以上の場合にMINSとし、それが虚血性であるか否かを心電図で判定した。また、副次評価項目は、トロポニン Iのピーク値と総放出量(AUC)、 術後30日以内の心筋梗塞、死には至らないが重篤な心血管系イベント、術後入院期間、集中治療室 (ICU)滞在期間、そして術後30日時点のあらゆる 原因の死亡とした。 結果であるが、主要評価項目である虚血性の血中トロポニン I値の上昇は、RIPC群では57人(20%)、対照群では90人(31%)で発生した(オッズ比[OR], 0.55;95% CI, 0.37~ 0.80;P=0.002)。副次評価項目では、術後30 日以内の心筋梗塞がRIPC群では10人(3%)、対照群では21人(7%)で発生した(OR, 0.46;95% CI, 0.21~0.99;P=0.04)。それ以外の副次評価項目に有意差は認められなかった。 本試験は、RIPCという簡便で安全な処置によって、股関節術後のMINSならびに心筋梗塞を有意に減少させた点で意義深い。ただし、対象患者全体の70%が女性で平均年齢が79歳と偏りもみられるため、今後のより大規模な研究でさらなる検討が待たれる。さらに、RIPCは今回の股関節骨折手術のみでなく、他の心血管系以外の手術においても術後のMINSならびに心筋梗塞に対する予防効果があるかは興味深く、今後の研究が期待される。 1. Haynes AB et al. N Engl J Med. 2009;360(5):491-499.
成人期における体重の変化と全死因および特定原因による死亡率との関係:前向きコホート研究。
成人期における体重の変化と全死因および特定原因による死亡率との関係:前向きコホート研究。
Weight change across adulthood in relation to all cause and cause specific mortality: prospective cohort study BMJ 2019 Oct 16;367:l5584. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】成人期における体重変化と死亡率の関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定】米国国民健康・栄養調査(NHANES)1988~94年および1999~2014年。 【参加者】ベースラインで体重と身長を測定し、若年成人期(25歳)と中年成人期(ベースラインの10年前)の体重を思い出した40歳以上の36051人。 【主要アウトカム指標】ベースラインから2015年12月31日までの全死因および原因別死亡率。 【結果】平均12.3年の追跡期間に10500人が死亡している。標準体重のままの参加者と比較して,若年期から中年期にかけて非肥満から肥満のカテゴリーに移行した参加者は,全死因死亡率および心疾患死亡率のリスクがそれぞれ22%(ハザード比1.22,95%信頼区間1.11~1.33)および49%(1.49,1.21~1.83)高くなることが示された。この期間に肥満から非肥満の体格指数に変化しても、死亡リスクとの有意な関連はなかった。成人期中期から後期にかけての肥満から非肥満への体重変化パターンは、全死因死亡率(1.30、1.16から1.45)および心疾患死亡率(1.48、1.14から1.92)のリスク上昇と関連していたが、この期間に非肥満カテゴリーから肥満に移行しても死亡リスクとは有意な関連はなかった。成人期を通じて肥満を維持することは、一貫して全死因死亡リスクの増加と関連していた;ハザード比は、若年から中年期にかけては1.72(1.52から1.95)、若年から晩年期にかけては1.61(1.41から1.84)、中期から晩年期にかけては1.20(1.09から1.32)であった。最大過体重は、成人期を通じて死亡率との関連が非常に緩やかであるか、あるいは無効であった。様々な体重変化のパターンとがん死亡率との間に有意な関連は認められなかった。 【結論】成人期を通じて安定した肥満、若年期から成人期中期までの体重増加、および成人期中期から後期までの体重減少は、死亡率のリスク増加と関連していた。この知見は、成人期を通じて正常な体重を維持すること、特に成人期初期の体重増加を防ぐことが、その後の人生における早すぎる死亡を防ぐために重要であることを示唆している。 第一人者の医師による解説 成人期を通した正常体重の維持と成人早期での体重増加予防が重要 中神 朋子 東京女子医科大学糖尿病・代謝内科教授 MMJ.April 2020;16(2) 肥満は世界的に重要な公衆衛生問題であり、日本でもライフスタイルの多様化と食文化の欧米化により問題視されている。日本の平成30年の国民栄養調査によると、肥満者(BMI 25 kg/m2以上)の割合は男性32.2%、女性 21.9%で、この10年間で大きな変化はないが、その割合は低くない。 本論文は、1988~94年および1999~2014 年の米国民健康栄養調査(NHANES)の40歳以 上36,051人を対象に死亡リスクと成人期の体 格指数(BMI)の変化を検討した前向きコホート研 究の報告である。平均12.3年の追跡で、10,500 件 の 死亡 が 確認 さ れ た。「 成人早期(25歳時)」、 「成人中期(NHANES登録の10年前)」、「成人後期 (NHANES登録時)」の3時点のBMIを調査し、2時点間のBMI変化と全死亡、原因別死亡のリスクと の関連を解析した。 その結果、正常体重(BMI 25 kg/m2未満)維持群に比べ、成人早期から中期に肥 満(BMI 30.0 kg/m2以上)に移行した群では全 死亡および心疾患死のリスクが上昇したのに対し(それぞれハザード比[HR], 1.22、1.49)、同時期の非肥満(BMI 30.0 kg/m2未満)への移行と死亡 リスクに有意な関連は認められなかった。一方、正常体重維持群に比べ、成人中期から後期に非肥満へ移行した群では、全死亡および心疾患死のリスク は有意に上昇したが(それぞれHR, 1.30、1.48)、 同時期の肥満への移行と死亡リスクに有意な関連はなかった。成人期を通じて肥満維持群では全死亡および心疾患死のリスクに一貫した上昇がみられた。なお、BMI変化とがん死のリスクに関連は認められなかった。 本研究において成人中期から後期に非肥満へ移行した群で全死亡および心疾患死のリスクが上昇したことは印象的である。成人早期から中期への体重増加は主に脂肪量の蓄積を反映すると考えられるが、中期から後期への体重減少は、通常、併存疾患と除脂肪体重の減少および脂肪量の増加を伴うと考えられる(1), (2)。 本研究には、意図的な体重変化、併存疾患などによる意図的ではない体重変化を区別できていない点、人種差など考慮すべき余地があり、この結果が日本人に当てはまるかどうかはまだわからない。しかし、成人期を通じて正常体重を維持すること、特に成人早期の体重増加の予防がその後の早期死亡リスクの抑制において重要であることを示唆しており意義深い。 第39回日本肥満学会で「神戸宣言2018」が採択され、肥満症*対策を領域横断的に推進することが示された。肥満症の撲滅を目指した肥満に対する意識と取り組みは大きく変わりつつあり、目が離せない。 *肥満に起因・関連する健康障害を有する、または健康障害が予想される内臓脂肪が過剰に蓄積し、減量治療を必要とする状態。 1. Fontana L et al. Aging Cell. 2014;13(3):391-400. 2. Ferrucci L et al. Arch Intern Med. 2007;167(8):750-751.
英国の国民保健サービスのパフォーマンスと他の高所得国との比較:観察的研究。
英国の国民保健サービスのパフォーマンスと他の高所得国との比較:観察的研究。
Performance of UK National Health Service compared with other high income countries: observational study BMJ 2019 Nov 27 ;367:l6326 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】英国国民保健サービス(NHS)は、持続的な財政圧迫、需要の増加、社会的ケアの削減に直面していることから、他の高所得国の医療制度と比較してどのように機能しているかを明らかにする。 【デザイン】ユーロスタットや経済協力開発機構などの主要国際機関の二次データを用いた観察研究 【設定】英国および高所得比較対象9か国の医療制度。 【主なアウトカム指標】人口と医療保障、医療と社会支出、構造的能力、利用、医療へのアクセス、医療の質、人口の健康という7つの領域にわたる79指標。 【結果】英国は2017年に調査した他のすべての国と比較して、一人当たりの医療費が最も少なく(英国3825ドル(2972円、3392ユーロ)、平均5700ドル)、支出の伸びはやや低かった(過去4年間の国内総生産比は平均0.07%に対し、0.02%)。英国は、利用率(入院数)が平均レベルであるにもかかわらず、アンメットニーズが最も低く、一人当たりの医師と看護師の数も最低レベルであった。英国は平均寿命(平均 81.7 歳に対し 81.3 歳)と乳がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がんなどのがんの生存率が平均をわずかに下回っていた。腹部手術後の術後敗血症(10万人退院あたり英国2454人、平均2058人)、急性心筋梗塞の30日死亡率(英国7.1%、平均5.5%)、虚血性脳炎(英国9.6%、平均6.6%)など、いくつかの医療サービスのアウトカムが悪かったが、英国は、平均を下回っていた。6%)、関節手術後の深部静脈血栓症は平均より低く、医療関連感染も少なかった。 【結論】NHSは、医療サービスの成果を含め、良好なパフォーマンスを示しているが、支出、患者の安全、国民の健康はすべて平均以下からせいぜい平均であった。これらの結果を総合すると、NHSが人口動態の圧力が高まっているときに同等の健康成果を達成したいのであれば、労働力と長期ケアの供給を増やすためにもっと支出し、社会支出の減少傾向を減らして比較対象国の水準に合わせる必要があるかもしれないことが示唆される。 第一人者の医師による解説 医療従事者確保や介護へさらに資金を投入しなければ 公共医療システム維持は困難 西岡 祐一(助教)/今村 知明(教授) 奈良県立医科大学公衆衛生学講座 MMJ.April 2020;16(2) 英国の英国保健サービス(UK National Health Service;NHS)は1948年に設立された世界で 最も包括的な公共医療システムの1つである(1)。近年 NHSは「患者の需要を満たす」「費用の負担を減 らす」という2つの相反する問題に直面している。 世界のあらゆるヘルスケアサービスが同じ問題に直面しており、患者の需要と医療・介護費用のバランスは難しい。実際、英国では2010年から17年までのヘルスケアの需要増大に比較し、費用の負 担は増えていないと言われている(2)。英国の現状と目指すべき方向性を提案するために、著者らは、NHSと高所得国、経済協力開発機構(OECD)加盟国35カ国、欧州連合(EU)加盟国28カ国のヘルス ケアデータを用いて医療費、アクセス、質、予後などさまざまな指標について記述疫学研究を実施した。 英国の1人当たりの医療費は高所得国で最も低く、 OECDやEUの平均程度であった。英国の平均寿命、さまざまな悪性腫瘍の5年生存率は、高所得国の平均よりやや低い傾向にあった。関節手術後の深部静脈血栓症や医療関連感染症の発生率は高所得国の平均より低かったが、健康指標水準は高所得国で最も悪く、さらに過去10年間で増悪傾向であった。 また、英国ではEU国籍の医療従事者が2015年以降急速に減少している。英国のEU離脱に関連していると考えられているが、特に人口当たりの看護師数は急速に減少している。このように社会情勢の変化も相まって、このままでは英国が他の高所 得国と同じレベルの公共医療システムを維持できなくなる可能性がある。 NHSが他の高所得国と同等の健康指標水準を達成するために、あるいは健康指標の悪化に歯止めをかけるためには、人口当たりの医師数、看護師数や介護費用など他の国と比べて低い水準にあるもの、健康指標が悪化しているものに積極的に資金を投入していく必要がある。 本研究は、他国との比較により英国の現状や指標の推移を明らかにしただけでなく、データに基づいた政策提言を行った。さらに、英国のEU離脱など予測困難な社会情勢の変化により、ヘルスケアサービスが影響を受けたことを示唆する有用な分析例である(3)。ただし、本研究では独立して設定・運営されている英国の4つの構成国(イングランド、 スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の全体を集計しており、構成国間で差がある可能性 もあり、解釈には注意が必要である。引き続き、ヘルスケア関連のデータベースを用いた疫学研究が増加し、医学のさらなる発展につながることを期待したい。 1. Klein R et al. N Engl J Med. 2004;350(9):937-942. 2. Mossialos E et al. Lancet. 2018;391(10125):1001-1003. 3. Goddard AF et al. JAMA. 2016;316(14):1445-1446.
極早産児の死亡率および重度の脳障害と出生後の早期転院および三次病院外での出生との関連:傾向スコアマッチングを用いた観察的コホート研究。
極早産児の死亡率および重度の脳障害と出生後の早期転院および三次病院外での出生との関連:傾向スコアマッチングを用いた観察的コホート研究。
Association of early postnatal transfer and birth outside a tertiary hospital with mortality and severe brain injury in extremely preterm infants: observational cohort study with propensity score matching BMJ 2019 Oct 16;367:l5678. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】産後の転院や非三次病院での出産が有害転帰と関連するかどうかを明らかにすること 【デザイン】傾向スコアマッチングによる観察コホート研究 【設定】イングランドの国民保健サービスの新生児医療;National Neonatal Research Databaseに保有される集団データ。 【参加者】2008年から2015年の間に妊娠週数28週未満で生まれた極早産児(n=17 577)を、出生病院と出生後48時間以内の転院に基づいて、上方転院(非三次病院から三次病院、n=2158)、非三次医療(非三次病院で出生、転院せず、n=2668)、対照(三次病院で出生、転院せず、n=10 866)グループに分類する。傾向スコアと事前に定義された背景変数で乳児をマッチングさせ、交絡因子の分布がほぼ同じサブグループを形成した。 【主要アウトカム評価項目】死亡、重度の脳損傷、および重度の脳損傷を伴わない生存率 【結果】2181人の乳児、各群(上方転院、非三次医療、および対照)から727人がよくマッチングされた。対照群と比較して,上方転院群の乳児は退院前の死亡のオッズに有意差はなかったが(オッズ比1.22,95%信頼区間0.92~1.61),重度の脳損傷のオッズが有意に高く(2.32, 1.78~3.06;Number needed to treat(NNT)8),重度の脳損傷がなく生存できるオッズは有意に低かかった(0.60, 0.47~0.76;NNT 9)。対照群と比較して,非三次医療群の乳児は死亡のオッズが有意に高かったが(1.34, 1.02~1.77; NNT 20),重度の脳損傷のオッズ(0.95, 0.70~1.30),重度の脳損傷なしの生存(0.82, 0.64~1.05) に有意差はなかった.上方転院群の乳児と比較して,非三次医療群の乳児は,退院前の死亡(1.10,0.84~1.44)に有意差はなかったが,重度の脳損傷のオッズ(0.41, 0.31~0.53,NNT 8)は有意に低く,重度の脳損傷を伴わない生存(1.37, 1.09~1.73, NNT 14)は有意に高いオッズであった.水平搬送群(n=305)と対照群(n=1525)の転帰に有意差は認められなかった。 【結論】極早産児において、三次病院以外での出産と48時間以内の搬送は、三次病院での出産と比較して、転帰不良と関連することが示された。周産期医療サービスでは、産後の転院よりも三次病院での極早産児の出産を促進する経路を推進することを推奨する。 第一人者の医師による解説 極早産児の予後改善 3次施設での出生が2次施設での出生より有利 海野 信也 北里大学医学部産科学教授 MMJ.June 2020;16(3) 英国の新生児医療を提供する施設は、妊娠28週未満で出生した児に対応可能な3次施設、28~32 週の児を担当する2次施設および32週以降の児を担当するspecial care unitに階層化されている。 一方、日本では周産期医療の基本コンセプトを「新生児搬送中心から母体搬送中心の体制への移行」の推進とし、高次産科医療と新生児医療を同一施設で 提供できる総合・地域周産期母子医療センターのネットワークを各地域に整備し、重症母体および新生児への医療提供を最適化することが中心になっている。英国のように明確な役割分担はなく、基本的に重症例は総合またはそれに準じた体制の施設で対応している。 本論文は、イングランドで2008~2015年に 出生した妊娠28週未満のすべての極早産児を対象とし、3次施設で出生しそのまま治療された群(3 次群)、2次施設で出生しそのまま治療された群(2 次群)、2次施設で出生し、その後48時間以内に3 次施設に搬送された群(新生児搬送群)の間で生命予後と神経学的予後を傾向スコアマッチング法で後ろ向きに比較した研究の報告である。その結果、極早産児において新生児搬送群の予後は3次群よりも不良であるため、母体搬送を推奨する、と結論している。この結論自体は日本の取り組みとも一致する。 しかし、結果の解釈にあたり若干の留保が必要である。まず、退院前死亡率は2次群の方が3次群より高いが、新生児搬送群と3次群に差はない。また重度脳障害の発生率は、新生児搬送群の方が3次群だけでなく2次群よりも高く、2次群と3次群に差はない。これらの結果は、2次施設で出生した極早産児において、その状態による臨床的対応の選択が行われている可能性を示唆している。2次施設で出生した児の状態がきわめて不良であれば搬 送は選択されず、その結果として2次群の死亡率が高くなるかもしれない。 一方、2次施設で出生直後の処置実施中に脳室内出血などの合併症が生じれば、2次施設での管理が困難となり3次施設に搬送されやすくなるであろう。新生児搬送群の予後が悪いのは搬送行為の結果というよりは原因であるのかもしれない。 しかし、2次施設出生群(2次群+新生児搬送群) に比べ、3次群の方が予後良好であると推察される こ と か ら(退院前死亡率:2次施設出生群25.3% 対 3次群21.0 %; 重度脳障害:2次施設出生群 20.5% 対 3次群14.0%;重度脳障害を伴わない 生存:2次施設出生群60.7% 対 3次群68.8%)、 本研究の結果は、3次施設で出生する方が2次施設 で出生するより極早産児の予後改善に有利だというエビデンスとなりうるものと考えられる。
米国南部の大規模レストランフランチャイズにおけるカロリーメニュー表示が購入カロリーに及ぼす影響の推定:準実験的研究。
米国南部の大規模レストランフランチャイズにおけるカロリーメニュー表示が購入カロリーに及ぼす影響の推定:準実験的研究。
Estimating the effect of calorie menu labeling on calories purchased in a large restaurant franchise in the southern United States: quasi-experimental study BMJ 2019 Oct 30;367:l5837. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】大規模レストランチェーンにおけるメニューのカロリー表示が、取引ごとの平均購入カロリーの変化と関連するかどうかを評価する。 【デザイン】準実験的縦断研究。 【設定】2015年4月から2018年4月まで米国南部(ルイジアナ、テキサス、ミシシッピー)にある3種類のレストランチェーンを有する全米規模のファーストフード企業の大規模フランチャイズ。 【参加者】2017年4月に店内およびドライブスルーメニューにカロリー情報を追加し、ラベル付け前(2015年4月から2017年4月)とラベル付け後(2017年4月から2018年4月)の実施期間に週次集計した売上データを持つ104のレストランを対象。 【主要アウトカム指標】主要アウトカムは、線形混合モデルを用いた中断時系列分析を用いて、反実仮想(すなわち、介入がなければ介入前のトレンドが持続していたという仮定)と比較したカロリー表示実施後の取引ごとの平均購入カロリーの全体の水準および傾向の変化とした。副次的アウトカムは、品目別(メインディッシュ、サイドディッシュ、砂糖入り飲料)であった。サブグループ分析では、レストランの国勢調査対象地域(国勢調査で定義された地域)の社会人口統計学的特性によって定義された層におけるカロリー表示の効果を推定した。3年間で、104のレストランで、49062 440の取引が行われ、242 726 953のアイテムが購入された。ラベリング実施後、60カロリー/取引(95%信頼区間48~72、約4%)の水準減少が観察され、その後、実施後1年間はベースラインの傾向とは独立して0.71カロリー/取引/週(95%信頼区間0.51~0.92)の増加傾向が観察された。これらの結果は、感度分析における異なる分析仮定に対して概ね頑健であった。レベルの低下と実施後の傾向の変化は、サイドディッシュや砂糖入り飲料よりもサイドメニューの方が強かった。水準の低下は、所得の中央値が高い国勢調査区と低い国勢調査区の間で同様であったが、取引あたりのカロリーの実施後の傾向は、高所得の国勢調査区(0.50、0.19から0.81)よりも低所得(カロリー/取引/週の変化0.94、95%信頼区間0.67から1.21)でより高かった。 【結論】大規模フランチャイズのファーストフード店においてカロリー表示を実施すると、1取引当たりの平均購入カロリーに小さな減少が認められた。この減少は、1年間のフォローアップで減少した。 第一人者の医師による解説 長期的な影響や表示方法の検討も必要 日本でも求められる研究 丸山 広達1)、磯 博康2) 1)愛媛大学大学院農学研究科地域健康栄養学分野准教授、2)大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教授 MMJ.June 2020;16(3) 栄養成分表示は、消費者の健康的な食生活の質の向上の一手段として用いられている(1)。米国では、 2018年5月からAffordable Care Act(患者保護 および医療費負担適正化法)により、エネルギーの過剰摂取による肥満や慢性疾患の改善を最終目標として、大手外食企業で提供するすべての商品に対してエネルギー(kcal)表示が求められるようになった。そこで、本研究では準実験デザインにより、エネルギー表示が大手外食企業において消費者 が購入した商品のエネルギー量に対する影響について解析した。 本研究では、エネルギー表示の導入前2年間、導入後1年間の、約5000万件近い購入取引のデータを用いた。ニューヨーク市保健精神衛生局(NYC Health)が開発した、米国における大手外食企業の商品の栄養成分値を収載している“Menustat”と いうデータベースより、各商品のエネルギー量を把握した。エネルギー表示導入前後の消費者が購入した商品のエネルギー量、その後の推移との関連は分割時系列分析により評価した。 エネルギー表示前(1,440 kcal)に比べて、表示後は平均して1取引当たりのエネルギー量で4% に相当する約60 kcal(95%信頼区間[CI], 48~ 72 kcal)の減少がみられたが、その減少は短期間にとどまり、その後1取引当たりのエネルギー量は 漸増傾向にあった(0.71 kcal /週 /1取引;95% CI, 0.51~0.92)。 商品別にみると、表示後平均して最も減少したのは副菜で40 kcal / 1取引、次いで主菜の11 kcal / 1取引であり、清涼飲料水では変化はみられなかった。表示後の1取引当たりのエネルギー量の漸増傾向は、平均世帯収入の低い地域でより強かった。 米国では、1日のエネルギーの約3分の1を外食から摂取していると推定されており、60 kcal/1 取引の減少はわずかに食事の質の向上に貢献した 可能性はあるが、その後の1取引当たりのエネルギー量は漸増傾向であり、長期的な影響についてはさらなる研究が必要である。また、他の研究では表示方法によって効果が異なる可能性も示されていることから表示方法の検討も必要である。 世界的に、表示が求められている大手企業の外食や調理済み加工食品などの表示の効果を調べた研究は少ない(2)。日本でも、食品表示法により、加工食品についてはエネルギーなどの表示が義務付けられており、このような研究の実施が制度の評価と充実を図るために必要であると考える。 1. Crockett RA et al.Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 27;2:CD009315. 2. Bleich SN et al. Obesity (Silver Spring). 2017;25(12):2018-2044.
乳製品摂取と女性および男性の死亡リスクとの関連:3つの前向きコホート研究。
乳製品摂取と女性および男性の死亡リスクとの関連:3つの前向きコホート研究。
Associations of dairy intake with risk of mortality in women and men: three prospective cohort studies BMJ 2019 Nov 27;367:l6204. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】乳製品の消費と女性および男性の総死亡および原因別死亡のリスクとの関連を検討する。 【デザイン】食生活とライフスタイルの要因を繰り返し測定する3つの前向きコホート研究。 【主要評価項目】州のバイタルレコード、全国死亡インデックス、または家族や郵便システムから報告された死亡を確認した。最大32年間の追跡期間中に、51,438名の死亡が記録され、そのうち12,143名が心血管疾患による死亡、15,120名が癌による死亡であった。多変量解析では、心血管疾患およびがんの家族歴、身体活動、全体的な食事パターン(alternate healthy eating index 2010)、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール摂取量、更年期障害の有無(女性のみ)、閉経後のホルモン使用(女性のみ)をさらに調整した。乳製品の総摂取量が最も少ないカテゴリー(平均0.8皿/日)と比較して、総死亡率の多変量プールハザード比は、乳製品の摂取量が2番目のカテゴリー(平均1.5皿/日)で0.98(95%信頼区間0.96~1.01)、1.00(0.97~1.03)であった。1.00(0.97~1.03)、3位(平均2.0皿/日)、4位(平均2.8皿/日)では1.02(0.99~1.05)、最高カテゴリー(平均4.2皿/日)では1.07(1.04~1.10)であった(P for trend <0.001)。乳製品の総消費量が最も多いカテゴリーと最も少ないカテゴリーを比較すると、心血管死亡率のハザード比は1.02(0.95~1.08)、がん死亡率は1.05(0.99~1.11)であった。乳製品のサブタイプでは、全乳の摂取は、総死亡(0.5食/日追加あたりのハザード比1.11、1.09~1.14)、心血管死亡(1.09、1.03~1.15)、がん死亡(1.11、1.06~1.17)のリスクを有意に高めた。食品代替分析では、乳製品の代わりにナッツ類、豆類、全粒穀物を摂取すると死亡率が低くなり、乳製品の代わりに赤身肉や加工肉を摂取すると死亡率が高くなった。 【結論】大規模コホートから得られたこれらのデータは、乳製品の総摂取量の多さと死亡リスクとの間に逆相関があることを支持していない。乳製品の健康効果は、乳製品の代わりに使用される比較食品に依存する可能性がある。わずかに高いがん死亡率は、乳製品の消費と有意ではなかったが、さらなる調査が必要である。 第一人者の医師による解説 日本では牛乳摂取が多いと全死亡リスクは低下 欧米との相違は検討課題 於 タオ1)、小熊 祐子2)1)慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科、2)慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科准教授 MMJ.June 2020;16(3) 乳製品は蛋白質をはじめ、各種微量栄養素の摂取 源として重要である一方で、飽和脂肪酸やコレステロールの含有量が多く、健康への悪影響も懸念される。乳製品の摂取は高血圧、2型糖尿病、循環器 疾患などの発症と負の関連が報告されているが、 前立腺がん(男性)、卵巣がん(女性)とは正の関連が報告されている。また、死亡率については前向き観察研究が実施されているものの、結果は一貫しない。 本研究は乳製品摂取と全死亡率および原因別死 亡率との関連を明らかにするため、米国で白人医 療職を対象に行われた3つの大規模コホート研究 (Nurses’Health Study, Nurses’Health Study II, Health Professionals Follow-up Study)のうち、登録時の心血管疾患患者・がん患者を除外した 217,755人(男性:49,602人、女性:168,153 人)を対象とした。乳製品の摂取は食品頻度調査票 (FFQ)で推定し、死亡は戸籍、国民死亡記録で追跡し、家族または郵便制度による報告で補完した。 最長32年間の追跡期間中、心血管死12,143人、 がん死15,120人を含む51,438人の死亡が確認された。全死亡のハザード比は、乳製品総摂取量の五分位数で摂取量が最も少ない群 Q1(平均0.8 SV# /日)と比較し、Q2(平均1.5 SV/日)で0.98、 Q3(平均2.0 SV/日)で1.00、Q4(平均2.8 SV/日)で1.02、Q5(平均4.2 SV/日)で1.07であり、 非線形関係であるが、乳製品総摂取量が多くなると死亡リスクが有意に上昇した。がん死亡リスクでもほぼ同じ傾向が確認された。 乳製品の種類別にみると、全乳の摂取増加は全死亡リスク、心血管疾 患死、がん死のリスク上昇と有意に関連した。低脂 肪乳は全死亡リスクのみと有意に関連し(ハザード 比 , 1.01;P<0.001)チーズはいずれとも関連していなかった。さらに、乳製品の摂取をナッツ類、 豆類あるいは全粒穀類の摂取に置き換えた場合は 死亡リスクが低下し、一方、赤身肉・加工食肉に置き換えた場合は死亡リスクが上昇した。 本研究は対象者に起因する測定誤差や慢性疾患による生活習慣の変化に起因する因果の逆転の可能性を反復測定値を用いることなどで最小限に抑えている。また、サンプルサイズが大きく解析力は十分であり、研究の質は担保されている。日本では牛乳の摂取が多いと全死亡リスクが低くなることが大規模コホート研究から報告されている(1)。欧米人と摂取量自体も異なるため、この相違をどう捉えるか、引き続き、検討すべき重要な課題の1つである。 ※ SV(serving)は食品の摂取量を示す単位。本研究の定義では、無脂肪牛 乳、低脂肪牛乳あるいは全乳は 240mL、クリームは 6g、シャーベット、 フローズンヨーグルト、アイスクリーム、カッテージチーズ・リコッタチーズは 120mL、クリームチーズ・その他チーズについては 30mL を 1SV と している。 1. Wang C. et al. J Epidemiol. 2015;25(1):66-73
未病の消化不良に対する管理戦略の有効性:系統的レビューとネットワークメタ解析。
未病の消化不良に対する管理戦略の有効性:系統的レビューとネットワークメタ解析。
Effectiveness of management strategies for uninvestigated dyspepsia: systematic review and network meta-analysis BMJ 2019 Dec 11;367:l6483. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】uninvestigated dyspepsiaに対する管理戦略の有効性を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビューとネットワークメタ分析。 【データソース】言語制限なしで、開始時から2019年9月までのMedline, Embase, Embase Classic, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, clinicaltrials. gov 。2001年から2019年までのConference proceedings。 [ELIGIBILITY CRITITERIA FOR SELECTING STUDIES]成人参加者(年齢18歳以上)における未調査の消化不良に対する管理戦略の有効性を評価した無作為化対照試験。対象となる戦略は、迅速な内視鏡検査、Helicobacter pyloriの検査と陽性者への内視鏡検査、H pyloriの検査と陽性者への除菌治療(「検査と治療」)、経験的酸抑制、または症状に基づいた管理であった。試験は、最終フォローアップ(12ヶ月以上)における症状状態の二値的評価を報告した。 【結果】レビューでは、成人被験者6162人を含む15の適格無作為化対照試験が特定された。データは、ランダム効果モデルを用いてプールされた。戦略はPスコアに従って順位付けされた。Pスコアとは、ある管理戦略が他の管理戦略よりも優れているという確信の程度を平均したもので、競合するすべての戦略に対して平均されたものである。「検査と治療」は第1位(症状残存の相対リスク0.89、95%信頼区間0.78~1.02、Pスコア0.79)、「迅速内視鏡検査」は第2位で、同様の成績(同 0.90 0.80~1.02 、Pスコア0.71)であった。しかし、どの戦略も "test and treat "よりも有意に低い効果を示さなかった。"test and treat "に割り当てられた参加者は、症状に基づいた管理(相対リスクv 症状に基づいた管理 0.60, 0.30~1.18) を除く他のすべての戦略よりも内視鏡検査を受ける確率が有意に低かった(相対リスクv 内視鏡検査の促進 0.23, 95%信頼区間 0.17~0.31, P score 0.98).管理に対する不満は、「検査と治療」(相対リスクv0.67、0.46~0.98)、および経験的酸抑制(相対リスクv0.58、0.37~0.91)よりも、迅速内視鏡検査(Pスコア0.95)のほうが有意に低かった。上部消化管癌の発生率は、すべての試験で低値であった。感度分析でも結果は安定しており、直接結果と間接結果の間の矛盾は最小限であった。個々の試験のバイアスリスクは高かった;実用的な試験デザインのため、盲検化は不可能であった。 【結論】「Test and treat」は、迅速内視鏡検査と同様のパフォーマンスを示し、他のどの戦略よりも優れていなかったが、第1位であった。「検査と治療」は、症状に基づく管理を除く他のすべてのアプローチよりも内視鏡検査を少なくすることにつながった。しかし、参加者は症状の管理戦略として迅速な内視鏡検査を好む傾向が見られた。[SYSTEMATIC REVIEW REGISTRATION]PROSPERO登録番号CRD42019132528。] 第一人者の医師による解説 理にかなうピロリ菌検査 内視鏡検査なしの実施は医療保険適用外に留意 近藤 隆(講師)/三輪 洋人(主任教授) 兵庫医科大学消化器内科学 MMJ.August 2020;16(4) 内視鏡検査未施行のディスペプシア症状のある患者で、警告症状・徴候のない場合、どのような治療戦略を選ぶべきかについて、臨床現場では判断に迷うことが多い。実際の治療戦略としては以下が挙げられる:(1)直ちに内視鏡検査を実施する(2)ピロリ菌検査を行い、陽性者に内視鏡検査を実施する(3)ピロリ菌検査を行い、陽性者に除菌治療を実施する(4)全症例に酸分泌抑制薬を投与する(5)ガイドラインの推奨もしくは医師の通常診療として、症状に応じた治療を実施する。 これまでに、個々の治療戦略同士を比較したランダム化対照試験(RCT)はいくつか実施されているが、どの戦略も効果は同程度であり、初期管理のアプローチ選択については意見が分かれているのが現状である。 本論文の系統的レビューでは、内視鏡検査未施行のディスペプシア患者に対する長期マネージメントとして、プライマリーケアレベルでどの戦略を行うのが良いかについて、ネットワークメタアナリシスの手法を用いて15件のRCT(ディスペプシア患者計6,162人)を対象に解析している。その結果、プライマリーケアレベルにおいて、ピロリ菌検査を行い陽性者に除菌治療を実施する治療戦略(3)が症状残存の相対リスクが最も低く(相対リスク, 0 .89;95% CI, 0 .78~1.02;P=0 .79)、さらに内視鏡検査の施行を有意に減らすことが判明した。 一方で、患者の満足に関しては、直ちに内視鏡検査を実施する治療戦略(1)が有意に高く、ディスペプシア患者は内視鏡検査を好む傾向にあるといえる。ただ、今回のメタアナリシスでは、ディスペプシア患者におけるがん発見率に関しては、上部消化管がんの割合は0.40%と低く、この結果からは少なくとも警告症状・徴候のないディスペプシア患者に対して、急いで内視鏡検査を実施する必要はないことを意味しており、費用対効果の観点からも同様のことが言えよう。 また、日本の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014̶機能性ディスペプシア(FD)」では、ピロリ菌除菌から6~12カ月経過後に症状が消失または改善している場合はH. pylori関連ディスペプシアとし、FDと異なる疾患と定義されている。したがって、まずピロリ菌の有無を調べる方法は、H.pylori関連ディスペプシアを除外し、本当のFD患者を選定するには理にかなった戦略と言えるだけでなく、将来に生じうる胃がんの予防的観点からも有用であると考える。 ただ、日本におけるディスペプシア症状に対するピロリ菌除菌の有効性は欧米よりは高いとはいえ10%程度と限定的であること、さらに内視鏡検査なしにピロリ菌検査を行う場合、医療保険が適用されないことに留意する必要がある。
非アルコール性脂肪性肝疾患と急性心筋梗塞および脳卒中の発症リスク:ヨーロッパの成人1800万人のマッチドコホート研究からの所見。
非アルコール性脂肪性肝疾患と急性心筋梗塞および脳卒中の発症リスク:ヨーロッパの成人1800万人のマッチドコホート研究からの所見。
Non-alcoholic fatty liver disease and risk of incident acute myocardial infarction and stroke: findings from matched cohort study of 18 million European adults BMJ 2019 Oct 8;367:l5367. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を有する成人における急性心筋梗塞(AMI)または脳卒中のリスクを推定する。【デザイン】マッチドコホート研究。 【設定】欧州4カ国の2015年12月31日までの人口ベース、電子プライマリヘルスケアデータベース。イタリア(n=1 542 672)、オランダ(n=2 225 925)、スペイン(n=5 488 397)、英国(n=12 695 046) 【参加者】NAFLDまたはNASHの診断記録があり、他の肝臓疾患がない成人120 795名を、NAFLD診断時(指標日)に年齢、性別、診療施設、診断日の前後6カ月に記録した訪問先、同じデータベースでNAFLDまたはNASHを持たない最大100人の患者と照合した。 【MAIN OUTCOME MEASURES】主要アウトカムは、致死性または非致死性AMIおよび虚血性または特定不能の脳卒中の発症とした。ハザード比はCoxモデルを用いて推定し,ランダム効果メタ解析によりデータベース間でプールした。 【結果】NAFLDまたはNASHの診断が記録されている患者120 795人が同定され,平均追跡期間は2.1~5.5年であった。年齢と喫煙を調整した後のAMIのプールハザード比は1.17(95%信頼区間1.05~1.30,NAFLDまたはNASH患者1035イベント,マッチドコントロール患者67 823)であった。危険因子に関するデータがより完全なグループ(86 098人のNAFLDと4 664 988人のマッチドコントロール)では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン使用、高血圧を調整後のAMIのハザード比は1.01(0.91から1.12;NAFLDまたはNASHの参加者で747イベント、マットコントロールで37 462)であった。年齢と喫煙の有無で調整した後の脳卒中のプールハザード比は1.18(1.11~1.24;NAFLDまたはNASH患者2187イベント、マッチドコントロール134001)であった。危険因子に関するデータがより完全なグループでは,2型糖尿病,収縮期血圧,総コレステロール値,スタチン使用,高血圧をさらに調整すると,脳卒中のハザード比は1.04(0.99~1.09;NAFLD患者1666イベント,マッチドコントロール83 882)だった。 【結論】1770万の患者の現在の日常診療におけるNAFLDとの診断は,既存の心血管危険因子を調整してもAMIや脳卒中のリスクと関連がないようである.NAFLDと診断された成人の心血管リスク評価は重要であるが、一般集団と同じ方法で行う必要がある。 第一人者の医師による解説 膨大なデータベースから得られた重要な結果 さらなる慎重な検証を 今 一義 順天堂大学医学部消化器内科准教授 MMJ.August 2020;16(4) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に非進行性の脂肪肝も含めた、より幅広い疾患概念である。近年、NAFLD/NASHが肝関連死だけでなく動脈硬化進展の独立した危険因子であることが示され、さらにNASHの病期と動脈硬化の進展が相関すると報告され注目された(1)。 その後もNAFLD/NASHが冠動脈疾患の重症度、さらには脳梗塞の発症とも関連することを示した研究が報告されている。しかしながら、NAFLD/NASH自体が肥満および糖尿病・脂質異常症・高血圧といったメタボリックシンドローム関連疾患を背景に生じ、心血管イベントのリスクと多数の交絡因子があるため、肝病態が直接心血管イベントに関与していることを確実に示すことは困難であった。 本研究では欧州の4カ国(イタリア、オランダ、スペイン、英国)の医療管理データベースから12万795 人のNAFLD患者を抽出し、非NAFLDの対照群と観察期間中の致死的・非致死的急性心筋梗塞(AMI)および脳梗塞の発症の有無を比較してオッズ比を算出した。さらに多数の交絡因子で調整した上でハザード比がどのように変化するか検証した。 その結果、年齢、性別、喫煙を調整した場合、NAFLD患者のAMI発症のハザード比は1.17(95%CI, 1.05~1.30)で、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン使用および高血圧で調整すると1.01(0.91~1.12)とさらに低下した。脳梗塞に関しても年齢、性別、喫煙で調整するとハザード比1.18(95% CI, 1.11~1.24)で、2型糖尿病、収縮期血圧、総コレステロール値、スタチン使用および高血圧で調整すると1.04(0 .99~ 1.09)とさらに減衰した。よって、NAFLDの診断はAMIおよび脳梗塞の有意な危険因子とは言えないと結論付けた。 本研究の結果は膨大なデータベースから得られた重要なもので、多数の交絡因子を除外していることは本研究の強みである。しかし、年齢、性別、喫煙因子を調整した時点ですでにハザード比が従来の報告と比べて低値であったことを考えなくてはならない。本コホートのNAFLDの有病率は患者総数の2%未満と従来の報告からみても極めて低く、かつ飲酒の有無はアルコール関連疾患の鑑別に基づいており、対照群の妥当性に疑問が残る。また、NASHの病期については検証できていない。NAFLD/NASHと心血管イベントの関連は、今後さらに慎重に検証していくべき課題と考えられる。 1. Targher G et al. N Engl J Med. 2010;Sep 30,363(14):1341-1350.
重症患者における消化管出血予防の有効性と安全性:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス
重症患者における消化管出血予防の有効性と安全性:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス
Efficacy and safety of gastrointestinal bleeding prophylaxis in critically ill patients: systematic review and network meta-analysis BMJ 2020 Jan 6;368:l6744. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】重症患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、ヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)、スクラルファート、または消化管出血予防薬(またはストレス性潰瘍予防薬)なしの、患者にとって重要なアウトカムへの相対影響を明らかにする。 【デザイン】系統的レビューとネットワークメタ解析。 【データソース】2019年3月までのMedline、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、試験登録、グレー文献。 【ELIGIBILITY CRITERIA FOR SELECTING STUDIES AND METHODS]】成人の重症患者においてPPI、H2RA、スクラルファートの消化管出血予防と他、プラシーボ、予防薬なしを比較したランダム化対照臨床試験を対象とした。2名の査読者が独立して研究の適格性を審査し、データを抽出し、バイアスのリスクを評価した。並行して行われたガイドライン委員会(BMJ Rapid Recommendation)が,患者にとって重要なアウトカムの特定など,システマティックレビューの重要な監視を行った。ランダム効果ペアワイズメタ解析とネットワークメタ解析を行い,GRADEを用いて各アウトカムのエビデンスの確からしさを評価した.低リスクの研究と高バイアスリスクの研究で結果が異なる場合は、前者を最良推定値とした。出血のリスクが最も高い(8%以上)または高い(4~8%)患者では、PPIとH2RAの両方が、プラセボまたは予防薬なしに比べて、臨床的に重要な消化管出血をおそらく減らす(PPIのオッズ比 0.61(95% 信頼区間 0.42~0.89)、3.42 to 0.89)、最高リスク患者で3.3%少なく、高リスク患者で2.3%少なく、中程度の確実性;H2RAに関するオッズ比0.46(0.27 to 0.79)、最高リスク患者で4.6%少なく、高リスク患者で3.1%少なく、中程度の確実性).両者とも無予防に比べ肺炎のリスクを高める可能性がある(PPIのオッズ比 1.39 (0.98 to 2.10), 5.0% 増、確実性低、H2RAのオッズ比 1.26 (0.89 to 1.85), 3.4% 増、確実性低)。どちらも死亡率には影響しないと思われる(PPI 1.06 (0.90 to 1.28), 1.3% 増, 中程度; H2RA 0.96 (0.79 to 1.19), 0.9% 減, 中程度)。それ以外では、死亡率、Clostridium difficile感染、集中治療室滞在期間、入院期間、人工呼吸期間への影響を裏付ける結果は得られなかった(証拠の確実性は様々)。 【結論】リスクの高い重症患者では、PPIとH2RAは予防薬なしと比較して消化管出血の重要な減少につながると考えられる;リスクの低い患者では、出血の減少は重要でない可能性がある。PPIとH2RAの両方が肺炎の重要な増加をもたらす可能性がある。死亡率やその他の院内罹患アウトカムに対する介入の重要な効果はないことが、質の低いエビデンスによって示唆された。 第一人者の医師による解説 肺炎のリスクを高める可能性について さらなるRCTが必要 川邊 隆夫 かわべ内科クリニック院長 MMJ.August 2020;16(4) 集中治療室(ICU)に入院を要するような重篤な患者では、消化管出血(ストレス潰瘍)が大きな問題となり、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)を投与することが推奨されている。 しかし、PPIやH2 RAを投与しても死亡率は改善しないという報告が多く、肺炎やClostridium difficile 感染症(CDI)のリスクが高まる可能性なども指摘されており、ストレス潰瘍予防(SUP)の是非について明確な結論は得られていない。 2018年に、国際的な大規模多施設ランダム化比較試験(SUP-ICU)の結果(1)が発表された。この最もエビデンスレベルの高いとされる研究では、PPIは出血を減少させたが、死亡率には影響しなかった。近年、SUP-ICUのほかにも、いくつかの大規模ランダム化比較試験(RCT)が行われており、これらの研究を加えて、ネットワークメタアナリシス(NMA)を行ったのが本論文である。 著者らは2017年1月~19年3月の研究から、12,660人の患者を含む72件(7件はICU外の重症患者)を選択し、PPI、H2RA、スクラルファートについて、死亡、消化管出血、肺炎、CDIなどへの影響を検討している。 その結果、死亡率については、プラセボまたは予防薬なし(無SUP)と比較し、PPI、H2RA、スクラルファートのいずれも改善あるいは増悪の影響は認められなかった。重篤な出血については、出血リスクを最高、高、中、低の4段階に分けた検討において、最高リスク群、高リスク群ではPPIおよびH2RAはともに、プラセボ(無SUPを含む)に比べ、重篤な出血の減少効果が示されたが、中リスク群、低リスク群では効果がみられなかった。スクラルファートの効果ははっきりしなかった。 肺炎については、無SUP と比較し、PP(I オッズ比[OR], 1.39;95% CI, 0.98~2.10)、H2RA(1.26;0.89~1.85)に有意差を認められなかった。しかし、スクラルファートとの比較で、PPI (1.63;1.12~2.46)とH2RA(1.47;1.11~2.03)のほうがリスクは高く、これらの肺炎に対するリスクは否定できないとしている。CDIについては検討している研究は5件のみで、CDI発生率も低く、有意なデータは得られていない。 以上から著者らは、PPIやH2RAは死亡率には影響しない、消化管出血のリスクの高い患者(慢性肝障害、人工呼吸器使用で経腸栄養なし、凝固障害)においてPPI、H2RAは出血を減少させるが、低~中リスクの患者では効果が期待できず有益ではないかもしれない、PPIやH2RAは肺炎のリスクを高める可能性については、さらなるRCTが必要である、と結論している。 1. Krag M et al. N Engl J Med. 2018;379(23):2199-2208.
ロシグリタゾンと心血管リスクに関する知見の共有による更新:個人患者および要約レベルのメタアナリシス。
ロシグリタゾンと心血管リスクに関する知見の共有による更新:個人患者および要約レベルのメタアナリシス。
Updating insights into rosiglitazone and cardiovascular risk through shared data: individual patient and summary level meta-analyses BMJ 2020 Feb 5;368:l7078. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】3つの目的を念頭に置いて、複数のデータソースとさまざまな分析アプローチを使用して、ロシグリタゾン治療が心血管リスクと死亡率に及ぼす影響の系統的レビューとメタアナリシスを実施する。ロシグリタゾンの心血管リスクに関する不確実性を明らかにする。異なる分析アプローチが有害事象メタアナリシスの結論を変える可能性があるかどうかを判断するため。臨床試験の透明性とデータ共有を促進するための取り組みを通知します。 【デザイン】ランダム化比較試験の体系的なレビューとメタアナリシス。 【データソース】GlaxoSmithKline(GSK)のClinicalStudyDataRequest .com(個々の患者レベルのデータ(IPD)およびGSKの研究登録)プラットフォーム、MEDLINE、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Central Registry of Controlled Trials、Scopus、ClinicalTrials. govの開始から2019年1月までの要約レベルのデータ。 【研究を選択するための適格性基準】ランダム化、管理、フェーズII-IV成人を対象に、ロシグリタゾンと任意の対照を少なくとも24週間比較した臨床試験。 【データ抽出と合成】IPDが利用可能な試験の分析では、急性心筋梗塞、心不全、心血管関連死、および非心血管関連の死亡を調べた。これらの4つのイベントは、二次分析として個別に調査されました。 IPDが利用できなかった試験を含む分析では、要約レベルのデータから決定された心筋梗塞と心血管関連の死亡が調査されました。 2つの異なる連続性補正(0.5定数および治療群)を使用して片方または両方のアームでイベントがゼロの試験を考慮した複数のメタアナリシスを実施し、95%信頼区間でオッズ比とリスク比を計算しました。 【結果】33件の適格な試験はIPDが利用可能であったClinicalStudyDataRequest.comから特定されました(21,156人の患者)。さらに、IPDが利用できなかった103件の試験が心筋梗塞のメタアナリシスに含まれ(23 683人の患者)、IPDが利用できなかった103件の試験が心血管関連死のメタアナリシスに貢献しました(22,772人の患者) 。 IPDが利用可能でGSKの要約レベルデータを使用した以前のメタアナリシスに含まれていた29の試験のうち、26の試験の要約レベルデータの代わりにIPDを使用することで、より多くの心筋梗塞イベントが特定され、5つの試験で心血管関連の死亡が減少しました。分析がIPDが利用可能な試験に限定され、0.5の一定の連続性補正とランダム効果モデルを使用して、片方の腕のみでイベントがゼロの試験を説明した場合、ロシグリタゾンで治療された患者のリスクは33%増加しました。コントロールと比較した複合イベント(オッズ比1.33、95%信頼区間1.09-1.61;ロシグリタゾン母集団:11 837人の患者で274イベント、コントロール母集団:9319人の患者で219イベント)。心筋梗塞、心不全、心血管関連死、および非心血管関連死のオッズ比は、1.17(0.92-1.51)、1.54(1.14-2.09)、1.15(0.55-2.41)、および1.18(0.60-2.30)でした。それぞれ。 IPDが利用できなかった試験を含む分析では、心筋梗塞と心血管関連死のオッズ比が減衰しました(それぞれ、1.09、0.88から1.35、および1.12、0.72から1.74)。両腕でイベントがゼロの試験を使用して分析を繰り返し、2つの連続性補正のいずれかを使用した場合、結果はほぼ一貫していました。 【結論】結果は、ロシグリタゾンが特に心不全イベントの心血管リスクの増加と関連していることを示唆しています。分析全体で心筋梗塞のリスクの増加が観察されましたが、IPDに加えて要約レベルのデータを使用した場合、エビデンスの強さはさまざまであり、効果の推定値は減衰しました。 IPDでは、要約レベルのデータよりも心筋梗塞が多く、心血管関連の死亡が少ないことが報告されているため、安全性に焦点を当てたメタアナリシスを実施する場合は、IPDの共有が必要になる可能性があります。[システマティックレビュー登録]OSFホームhttps://osf.io/ 4yvp2/。 第一人者の医師による解説 メタアナリシスでも結果は一定せず 安全性に関する議論は続く 笹子 敬洋 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科助教 MMJ.August 2020;16(4) チアゾリジン誘導体の一種であるロシグリタゾンは、1999年に糖尿病治療薬として米食品医薬品局(FDA)による承認を受けた。しかし2007年に、心筋梗塞や心血管死を増加させるとのメタアナリシスが発表され(1)、これはFDAが糖尿病治療薬に対して、ランダム化比較試験(RCT)による心血管リスクの評価を義務づける契機ともなった。このメタアナリシスは42件の臨床試験に登録された患者計27,847人を対象としており、ロシグリタゾン投与によって心筋梗塞のリスクが有意に上昇し、心血管死のリスクも上昇傾向にあった。 今回BMJ誌に発表されたメタアナリシスは、当時と異なり個々の患者のデータ(individualpatient-level data;IPD)が参照可能な臨床試験33件の患者21,156人を対象とした。 その結果、ロシグリタゾン投与によって複合エンドポイント(急性心筋梗塞、心不全、心血管死、非心血管死)の有意なリスク上昇を認めたものの、内訳としては心不全のみが有意で、心筋梗塞、心血管死、非心血管死は有意でなかった。またIPDが参照できない試験103件の23,683人の解析などもなされたが、結果は同様であった。 本研究における観察期間の中央値は24 週で、2007年のメタアナリシスの26週とほぼ同等であり、より長期的な安全性を示すには至らなかった。また脳卒中は、特にアジア人における心血管イベントとして重要であるが、2007年のメタアナリシスと同様、その評価はなされていない。 本論文とほぼ同時期に、さまざまな糖尿病治療薬に関して複数のメタアナリシスをまとめた包括的レビュー(umbrella review)の結果が報告されている(2)。このレビューではロシグリタゾン投与により、心筋梗塞と心不全のリスクは有意に上昇したが、脳卒中と心血管死のリスクはいずれも明らかな上昇を示さなかった。このように薬剤が心血管イベントに及ぼす影響は、メタアナリシスといえども結果は一定せず、その評価の難しさを物語っているとも言えよう。 なお先述の包括的レビューにおいては、日本で処方可能なチアゾリジン誘導体であるピオグリタゾンが、心不全を増やす一方、心筋梗塞や脳卒中を減らすことが報告されている2。またFDAは2020年に入り、糖尿病治療薬に対してRCTを一律には求めないとするガイダンスの改訂案を発表していることも留意されたい。 1. Nissen SE et al. N Engl J Med. 2007;356(24):2457-2471. 2. Zhu J et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2020;8(3):192-205.
健康的なライフスタイルとがん、心血管疾患、2型糖尿病のない寿命:プロスペクティブ・コホート研究
健康的なライフスタイルとがん、心血管疾患、2型糖尿病のない寿命:プロスペクティブ・コホート研究
Healthy lifestyle and life expectancy free of cancer, cardiovascular disease, and type 2 diabetes: prospective cohort study BMJ 2020 Jan 8;368:l6669. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】健康的なライフスタイルが主要な慢性疾患のない寿命とどのように関連しているかを検討する。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定および参加者】Nurses’ Health Study(1980-2014、n=73 196)およびHealth Professionals Follow-Up Study(1986-2014、n=38 366)。 【主要評価項目】低リスクライフスタイル5因子:喫煙しない、ボディマス指数 18.5-24.9、中程度から活発な身体活動(≧30分/日)、適度なアルコール摂取(女性:5-15g/日、男性:5-30g/日)、高い食事の質スコア(上位40%)。 MAIN OUTCOME]Life expectancy free of diabetes, cardiovascular diseases, and cancer.(糖尿病、心血管疾患、がんに罹患しない寿命)。 【結果】50歳時点での糖尿病、心血管疾患、がんにかからない寿命は、低リスクの生活習慣を採用していない女性では23.7年(95%信頼区間22.6~24.7)であったが、4~5個の低リスク要因を採用した女性では34.4年(33.1~35.5)であった。50歳の時点で、これらの慢性疾患のいずれにもかかっていない寿命は、低リスクの生活習慣を採用していない男性では23.5年(22.3-24.7年)、4つまたは5つの低リスクの生活習慣を採用している男性では31.1年(29.5-32.5年)であった。現在喫煙している男性で喫煙量が多い人(15本/日以上)、肥満の男性・女性(肥満度30以上)では、50歳時点での無病寿命が総人生に占める割合は最も低かった(75%以下)。 【結論】人生半ばでの健康的なライフスタイルの遵守は、主要慢性疾患のない寿命の延長と関連していた。 第一人者の医師による解説 日本政府の健康寿命延伸プランの実現可能性を示唆する成果 辻 一郎 東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野教授 MMJ.August 2020;16(4) 健康寿命は「あるレベル以上の健康状態で生存する期間」と定義される。健康の定義・基準が多様であるため、さまざまな健康寿命が計算されている。日本の厚生労働省は「日常生活に制限のない期間」を健康寿命の主指標、「自分が健康であると自覚している期間」を副指標、「日常生活動作が自立している期間」を補完的指標と定義しているが、本研究は「がん・心血管疾患・2型糖尿病のいずれもない状態での生存期間」に着目している。この考えは米国の健康づくり運動“ Healthy People 2020”でも取り上げられている。 本研究の目的は、健全な生活習慣の実践により健康寿命がどの程度延伸するかについて、前向きコホート研究により解明することである。対象は、米国の女性看護師73 ,196 人(1980 年開始)、男性医療従事者38 ,366人(1986年開始)である。自記式アンケートにより、5つの健全な生活習慣(非喫煙、体格指数[BMI]18 .5 ~ 24 .9、中等度以上の身体活動を1日30分以上、適量のアルコール摂取[女性1日5~15 g、男性5 ~ 30 g]、質の高い食事摂取)の実践状況を調査した後、がん・心筋梗塞・脳卒中の発症と死亡の状況を2014年まで追跡した。多段階生命表法により、上記の生活習慣の実践数とがん・心血管疾患・2型糖尿病のいずれもない状態での平均余命との関連を解析した。 その結果、がん・心血管疾患・2型糖尿病のいずれもない状態での平均余命(50歳)は、健全な生活習慣の実践数と強く関連した。女性では、実践数ゼロの群で23.7(95%信頼区間[CI], 22.6~24.7)年に対して4つ以上の群では34.4(95%CI, 33 .1~ 35 .5)年と10 .7 年の差があった。男性でも、23 .5(95 % CI, 22 .3 ~ 24 .7)年と31.1(95%CI 29.5~32.5)年で7.6年の差があった。一方、上記3疾病のいずれかを抱えて生存する期間は、健全な生活習慣の実践数によらず、ほぼ一定であった。 本硏究は、健全な生活習慣の実践による主要3疾患(がん、心血管疾患、2型糖尿病)の発症リスク低下は発症年齢の遅れを伴うことを実証し、健康寿命が7~10年延伸する可能性を示した。日本政府は2019年に発表した「健康寿命延伸プラン」で、2040年までに健康寿命を3年以上延伸させるという目標を掲げたが、本研究はその実現可能性を示唆するものと言えよう。
大豆および発酵大豆食品摂取量と総死亡および死因別死亡の関連 前向きコホート研究
大豆および発酵大豆食品摂取量と総死亡および死因別死亡の関連 前向きコホート研究
Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study BMJ. 2020 Jan 29;368:m34. doi: 10.1136/bmj.m34. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】大豆製品数種類と総死亡および死因別死亡の関連を調べること。 【デザイン】住民対象コホート研究。 【設定】日本全国11カ所の保健所を対象としたJapan Public Health Centre-based Prospective(JPHC)前向き研究。 【参加者】45-74歳の参加者9万2915例(男性4万2750例、女性5万165例) 【曝露】5年間のアンケート調査による大豆製品、発酵大豆食品、非発酵大豆食品および豆腐の総摂取量。 【主要評価項目】住民登録および死亡診断書から取得した総死亡率および死因別死亡率(がん、心血管疾患、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患および外傷)。 【結果】追跡期間14.8年間の間に1万3303件の死亡を特定した。多変量調整モデルでは、大豆製品の総摂取量に総死亡率との有意な関連はなかった。大豆食品総摂取量の最低五分位群に対する最高五分位群のハザード比は、男性で0.98(95%CI 0.91-1.06、傾向のP=0.43)、女性で0.98(同0.89-1.08、傾向のP=0.46)であった。発酵大豆食品の摂取量に、あらゆる死因による死亡率との逆相関が見られた。最低五分位群に対する最高五分位群のハザード比:男性で0.90、0.83-0.97、傾向のP=0.05、女性で0.89、0.80-0.98、傾向のP=0.01)。納豆には、男女ともに心血管疾患による死亡率との有意な逆相関が見られた。 【結論】この研究では、発酵大豆の摂取量が多いほど死亡リスクが低くなった。しかし、大豆食品の総摂取量にあらゆる死因による死亡率との有意な関連は見られなかった。発酵大豆食品の有意な関連が残存する交絡因子が補正されていないことで弱まることが考えられるため、この結果は慎重に解釈すべきである。 第一人者の医師による解説 和食に多い発酵性大豆製品の積極的摂取 健康増進維持に重要 小久保 喜弘1)、東山 綾1)、渡邉 至1)、河面恭子2) 国立循環器病研究センター予防健診部(1)医長、2)医師) MMJ. October 2020; 16 (5):148 1995年にAndersonらは、大豆蛋白投与群(平均47g/日)での脂質値%変化量が対照群と比べて、総コレステロールで-9%、LDLコレステロール(LDL-C)で-13%、HDLコレステロールで+2%、中性脂肪で-11%であった、と臨床研究38件のメタ解析結果をN Engl J Medに報告した。  Sacksらは、2006年 Circulationに大豆の脂質異常症改善効果をまとめた。大豆以外の蛋白質摂取と比較して、イソフラボン含有大豆蛋白投与群でLDL-C値の低下がランダム化試験22件中10件、イソフラボン非含有大豆蛋白投与群でLDL-C値の低下が8件中1件、またイソフラボン単独で19件中3件の試験でみられた。日本の追跡研究で、女性の食事性イソフラボン摂取量の下位20%群(平均値11 mg/日)を基準に、上位20%群(41mg/日)での脳梗塞、心筋梗塞発症リスクがともに0.4倍で(1)、その関連性は閉経後の女性のほうが強かった。大豆蛋白は、英米で健康表示の承認を受けている。日本でも「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版」に、大豆製品を多く摂取することが推奨されている。  最近の米国統合追跡研究によると(2)、イソフラボン摂取量下位20%群(平均値0.1 ~ 0.2mg /日)を基準に、上位20%群(3 ~ 4mg/日)での冠動脈疾患発症リスクが0.9倍であり、日本の平均摂取量(16 ~ 22mg /日)と比べ少量でも関連性がみられた。  今回の研究では、92,915人の男女(45 ~ 74歳)を約15年間追跡し、発酵性大豆製品摂取量が多い群(上位20%)では、少ない群(下位20%)に比べ全死亡リスクが男女とも0.9倍低く、さらに、納豆の摂取量が多いほど心血管死リスクが低かった。  大豆には蛋白質、食物繊維、イソフラボン、ミネラル、レシチンなどさまざまな成分が含まれている。中でも、イソフラボンは大豆中に配糖体として存在する。配糖体は腸内細菌で糖が切り離されてアグリコンになり腸管から吸収されるが、腸内細菌の働きに個人差がある。一方、発酵性大豆では糖が切り離されたアグリコンとして存在し、そのまま腸管から吸収される。発酵性大豆製品からのイソフラボンを多く摂った(10.4mg/日以上)正常血圧群で、正常高値血圧以上(130/85mmHg以上)の罹患リスクは0.8倍であると縦断的研究で報告されている(3)。  発酵性大豆製品はそのほかに、一部のがん、骨粗鬆症、認知症など多くの疾患で予防効果が示されている。日本でも古くから和食で発酵性大豆製品が使われているが、近年その摂取量の減少が懸念されている。塩分摂取に留意して上手に発酵性大豆製品を摂取し、健康増進に努めていただきたい。 1. Kokubo Y et al. Circulation 2007;116(22):2553-2562. 2. Ma L et al. Circulation 2020;141(14):1127-1137. 3. Nozue M et al. J Nutr 2017;147(9):1749-1756.
ツベルクリン皮膚反応検査またはインターフェロンγ遊離試験結果が陽性を示した未治療集団の結核絶対リスク システマティック・レビューとメタ解析
ツベルクリン皮膚反応検査またはインターフェロンγ遊離試験結果が陽性を示した未治療集団の結核絶対リスク システマティック・レビューとメタ解析
Absolute risk of tuberculosis among untreated populations with a positive tuberculin skin test or interferon-gamma release assay result: systematic review and meta-analysis BMJ. 2020 Mar 10;368:m549. doi: 10.1136/bmj.m549. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】結核リスクが上昇すると考えられる特徴がある未治療集団(リスクのある集団)で、ツベルクリン皮膚反応検査(TST)およびインターフェロンγ遊離試験(IGRA)、またはそのいずれかで陽性を示した後の結核年間発症率を明らかにすること。 【デザイン】システマティック・レビューとメタ解析。 【データ入手元】1990年1月1日から2019年5月17日までのEmbase、MedlineおよびCochrane Controlled Register of Trialsで、英語またはフランス後で出版されたヒト対象試験。参考文献一覧を参照した。 【選択基準とデータ解析】結核抗原検査陽性(TSTまたはIGRA)で12カ月以上追跡した未治療者10例以上を対象とした後ろ向きまたは前向きコホートおよび無作為化試験。システマティック・レビューおよびメタ解析のための優先的報告項目(PRISMA)および疫学研究に求められる観察試験のメタ解析(MOOSE)ガイドラインに従って、2名の査読者が独立して試験データを抽出し、改変版診断精度を検討した試験の質評価(QUADAS-2)ツールを用いて質を評価した。ランダム効果一般化線形混合モデルを用いてデータを統合した。 【主要評価項目】主要転帰は、リスク小集団別の検査(TSTまたはIGRA)陽性未治療集団の1000人年当たりの結核発症率とした。リスク小集団で検査陰性者と比較した不顕性結核検査陽性参加者の結核の累積発症率および発症率比を副次評価項目とした。 【結果】特定した試験5166件のうち122件を解析対象とした。一般住民を対象とした試験3件で、TSTの硬結径が10mm以上だった参加者3万3811例の結核発症率は、1000人年当たり0.3(95%CI 0.1-1.1)だった。19のリスク集団で不顕性結核感染検査が陽性だった11万6197例の発症率が一般集団よりも一貫して高かった。あらゆる種類の結核患者の接触者で、IGRA検査陽性例の結核発症率は1000人年当たり17.0(同12.9-22.4)、TST検査陽性例(硬結径5mm以上)で1000人年当たり8.4(同5.6-12.6)だった。HIV陽性者で、結核発症率はIGRA陽性例で16.9(同10.5-27.3)、TST陽性例(硬結径5mm以上)で27.1 (15.0-49.0)。このほか、移民、珪肺または透析患者、移植レシピエント、囚人の間で発症率が高かった。検査陰性例に対する検査陽性例の発症率比がいずれの検査でも、ほぼ全リスク集団で1.0以上有意に高かった。 【結論】結核発症率は、TSTまたはIGRA検査陽性後にリスクのある集団で大幅に高かった。このレビューで得られた情報は、不顕性結核感染の検査および治療に対する臨床的判断の伝達に有用となるものである。 第一人者の医師による解説 潜在性結核感染症の検査と治療の決定に必要な情報 加藤 誠也 公益財団法人結核予防会結核研究所所長 MMJ. October 2020; 16 (5):138 潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection;LTBI)の治療の推進は、国内では低蔓延化さらに根絶を目指すため、また、国際的には世界保健機関(WHO)が進めている結核終息戦略(End TB Strategy)の目標達成のために重要である。日本結核病学会のLTBI治療指針の根拠となる論文の1つは本論文の著者 Menzies D.が関与したものであり、対象となる疾患・病態における発病リスク比が示されている(1)。本論文は,ツベルクリン反応(ツ反)またはインターフェロンγ遊離試験(interferon gamma release assay;IGRA)の結果が陽性で未治療のLTBIの発病率の絶対値を広範な系統的レビューとメタ解析によって算出したことに意義がある。さらに副次成果として感染検査で陽性者および陰性者の発病率および発病率の比を求めた。  例えば、一般の人でツ反の硬結10mm以上の陽性であった場合の1,000人年あたりの発病率は0.3であったのに対して、結核患者との接触者の発病率は、ツ反の硬結が5mm以上の場合を陽性とすると8.4、IGRA陽性では17.0と、一般の人よりもそれぞれ28倍、56倍と極めて高かった。接触者における感染検査結果による発病率の違いは、ツ反の硬結5mm以上を陽性とすると6.0倍、IGRAでは10.8倍であった。  WHOは資源が限られた国においてはHIV感染者にツ反を実施せずにLTBI治療を勧めているが、本研究の結果から感染検査の陽性者と陰性者の発病率の比は大きいので、検査は便益があることが示された。ただし、検査結果が陰性であっても一般の人よりは発病率が高いのでLTBI治療の意義はあるかもしれない。  接触者、HIV感染者、囚人、塵肺患者では発病率が極めて高かったのに対して、最近の移民・亡命者、透析が必要な人、臓器移植を受けた人、免疫抑制薬を投与されている人は、一般の人よりは高かったが、前述の群ほどではなかった。これらの情報は、臨床医が、それぞれの地域における対策の優先度、治療の可能性、受け入れ易さ、費用対効果を踏まえたうえで、LTBIの検査と治療を決定するのに有用な情報となる。なお、糖尿病、免疫抑制薬投与、低体重についてはさらにデータの蓄積が求められる。  今後、LTBI治療をさらに広く推進するために必要なのは、発病をより正確に予測可能なバイオマーカーである。WHOは専門家による合意文書を刊行し、その求められる性能として検査実施2年以内に活動性結核を発病する人を予測できることを想定している(2)。 1. Landry J et al. Int J Tuberc Lung Dis. 2008;12:1352-1364. 2. World Health Organization. (2017). Consensus meeting report: development of a target product prole (TPP) and a framework for evaluation for a test for predicting progression from tuberculosis infection to active disease.World Health Organization. https://bit.ly/2ZSeo2c. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO
微小粒子状物質への長期的曝露と脳卒中発症 China-PARプロジェクトの前向きコホート研究
微小粒子状物質への長期的曝露と脳卒中発症 China-PARプロジェクトの前向きコホート研究
Long term exposure to ambient fine particulate matter and incidence of stroke: prospective cohort study from the China-PAR project BMJ. 2019 Dec 30;367:l6720. doi: 10.1136/bmj.l6720. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】中国人成人で、粒子径2.5 μm未満の微小粒子状物質(PM2.5)への長期的暴露が全体、虚血性および出血性脳卒中の発症率に及ぼす作用を調べること 【デザイン】住民対象前向きコホート研究。 【設定】中国の15省で遂行したPrediction for Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk in China(China-PAR)プロジェクト。 【参加者】China-PARプロジェクトで追跡開始時に脳卒中がなかった中国人男女11万7575例。 【主要評価項目】全体、虚血性および出血性脳卒中の発症。 【結果】参加者の居住地住所の2000~2015年の平均PM2.5濃度は64.9μg/m3(範囲31.2~ 97.0μg/m3)だった。90万214人年の追跡中、脳卒中3540件が発生し、そのうち63.0%が虚血性、27.5%が出血性だった。PM2.5曝露量の最低四分位群(54.5μg/m3未満)と比べると、最高四分位群(78.2μg/m3)は脳卒中(ハザード比1.53、95%CI 1.34~1.74)、虚血性脳卒中(同1.82、1.55~2.14)および出血性脳卒中(同1.50、1.16~1.93)発症のリスクが高かった。PM2.5濃度が10μg/m3高くなると、脳卒中、虚血性脳卒中および出血性脳卒中の発症リスクがそれぞれ13%(同1.13、1.09~1.17)、20%(1.20、1.15~1.25)、12%(1.12、1.05~1.20)上昇した。PM2.5への長期的曝露と脳卒中発症率(全体と種類別)の間にほとんど線形の曝露反応関係が認められた。 【結論】この試験は、濃度がいくぶん高いPM2.5への長期的暴露に脳卒中とその主要な種類の発症との正の関連を示した中国からの科学的根拠を提示するものである。この結果は、中国だけでなく、その他の低所得国および中所得国の大気汚染と脳卒中予防関連の環境および健康政策の立案に意義あるものである。 第一人者の医師による解説 中国より低濃度の日本でも 脳血管障害のリスクに関する知見が必要 道川 武紘(講師)/西脇 祐司(教授) 東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野 MMJ. October 2020; 16 (5):146 以前は、微小粒子状物質、PM2.5(空気力学径が2.5μ m以下の粒子)、というと「午後2時半?」と聞き返されたと聞いているが、今では小学生でも聞いたことがある環境用語になっていて、その健康に与える影響が懸念されている。PM2.5の健康影響に関して米国環境保護庁は定期的に最新の科学的知見を整理した報告書を公表しており、最新2019年版では以前の2009年版と同様に「長期的(年単位)なPM2.5曝露と循環器疾患との関連性には因果関係がある」と発表した(1)。ただしこれは主に心血管疾患との関連性に関するもので、脳血管疾患については心血管疾患よりも疫学研究の知見は少なく、分類別(虚血性と出血性)の検討も十分とは言えない。  本研究は中国の4つのコホートからなるChinaPAR projectのデータを利用して、15省に住んでいた117,575人の男女(ベースライン時平均年齢50.9歳)について長期的なPM2.5曝露と脳血管疾患初回発症との関連性を、虚血性と出血性に分けて検討した。2000~15年にかけて、その間の引っ越しも考慮したうえでの各参加者自宅におけるPM2.5濃度の平均は64.9 μ g/m3(範囲 , 31.2~ 97.0 μ g/m3)であった。年齢、性別、地域、喫煙など交絡しうる因子を調整したうえで、PM2.5濃度が10 μ g/m3高くなると虚血性の脳血管障害発症は1.20(95%信頼区間[CI], 1.15 ~ 1.25)倍、出血性は1.12(1.05 ~ 1.20)倍増えるという関連性が観察された。今回の濃度範囲(31.2 ~97.0 μ g/m3)では、PM2.5濃度上昇に伴い直線的に脳血管障害のリスクが上昇していた。  2017年における東京区部年平均 PM2.5濃度は13.4 μ g/m3あったのに対して北京では58.5 μg/m3であった。これまでのところ日本のPM2.5濃度は中国よりも明らかに低いので、相対的に低濃度の日本でも同様の関連性が観察されるのか興味深い。最近、茨城県健康研究データを利用し、PM2.5とそれよりも径の大きい粒子を含む浮遊粒子状物質(SPM)への長期曝露と循環器疾患死亡との関連性を調べた結果が報告された(2)。この研究では、男性においてベースライン調査時点(1990年)のSPM濃度と虚血性脳血管障害リスクは正の関連性を示す傾向にあった(SPM 10 μ g/m3上昇に対して1.25[95% CI, 0.99~1.57]倍リスク上昇)。日本ではPM2.5の環境基準設定から10年経過しようやく観測データが蓄積されてきたので、わが国においても長期的なPM2.5曝露が脳血管障害の危険因子となりうるのか、知見が待たれる。 1. United States Environmental Protection Agency. Integrated Science Assessment (ISA) for Particulate Matter, 2019.(https://bit.ly/31BxuMI) 2. Takeuchi A, et al. J Atheroscler Thromb 2020 (in press).
ランダム化臨床試験の治療効果推定に対する盲検化の影響:メタ疫学研究
ランダム化臨床試験の治療効果推定に対する盲検化の影響:メタ疫学研究
Impact of blinding on estimated treatment effects in randomised clinical trials: meta-epidemiological study BMJ. 2020 Jan 21;368:l6802. doi: 10.1136/bmj.l6802. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 目的: 治療効果推定に対する盲検化の影響、およびそれらの試験間の変動を調べることを目的としました。具体的には、患者、医療提供者、および観測者の盲検化を区別し、検出バイアスと実施上のバイアス、そして結果の種類について検討しました(MetaBLIND研究)。 デザイン: メタ疫学研究 データソース: Cochrane Database of Systematic Reviews (2013-2014年). 試験選択の適格基準: 任意のトピックに関する盲検試験と非盲検試験の両方によるメタアナリシス。 レビュー方法: 盲検状態は試験についての出版物と著者から取得され、結果はCochrane Database of Systematic Reviewsから自動的に取得されました。ベイズの階層モデルによって、オッズ比(ROR)の平均比を推定し、非盲検試験(またはステータスが不明)と盲検試験の試験間の不均一性を推定しました。二次分析では、割り当ての秘匿性、被験者の減少、および試験規模の妥当性を調整し、結果の主観性(高、中、低)と平均バイアスとの関連を調査しました。RORが1未満の場合は、盲検化なしの試験で効果の推定値が誇張されていることを示しています。 結果: 本研究では、142件のメタアナリシス(1,153件の試験)を対象としました。患者の盲検化を行っていない試験のRORは、結果が患者の報告に基づく18のメタアナリシスで0.91(95%信頼区間0.61から1.34)であり、盲検化された観測者によって報告された結果に基づく14のメタアナリシスで0.98(0.69から1.39)でした。医療提供者の盲検化を行っていない試験のRORは、医療提供者による決定(再入院など)に基づく29のメタアナリシスで1.01(0.84〜1.19)であり、盲検化された患者または観測者によって報告された結果に基づく13のメタアナリシスで0.97(0.64〜1.45)でした。観測者の盲検化を行っていない試験のRORは、観測者が報告した主観的な結果に基づく46のメタアナリシスで1.01(0.86から1.18)であり、主観性の程度に対する明確な関連は認められませんでした。盲検化していないことが試験間の不均一性の増加と関連していたかどうかを判断するには、情報が不十分でした。二重盲検として報告されていない試験と二重盲検である試験のRORは、74件のメタアナリシスで1.02(0.90〜1.13)でした。 結論: 患者、医療提供者、または観測者が盲検化されている場合とされていない場合で治療効果推定に平均差が生じることを示すエビデンスは見つかりませんでした。これらの結果から、盲検化は、従来信じられてきたのとは異なり、残余の交絡因子や不正確さといったメタ疫学研究におけるリミテーションと比較して、重要ではないという可能性が示唆されます。ただし、現段階においては、本研究の再現が提案されており、盲検化は臨床試験における方法論のセーフガードの位置づけを外れたわけではありません。 利益相反: すべての著者は、ICMJE統一開示フォームで下記について宣言しています:過去3年間に提出された研究に関心を持つ可能性のある組織との金銭的関係はありません。出版投稿された研究に影響を与えたと思われる他の関係や活動はありません。 第一人者の医師による解説 対象少なくさらなる研究必要 可能な限り盲検化の方針は変わらず 松山 裕 東京大学大学院医学系研究科生物統計学分野教授 MMJ. October 2020; 16 (5):149 ランダム化比較試験(RCT)は治療効果をバイアスなく評価するための最も信頼性の高い試験デザインであり、その結果は日常診療の実践や規制当局の判断において重要なエビデンスとなる。RCTの中でも最も質が高いとされる二重盲検試験は、患者だけでなく医師に対しても盲検化を行うことで、患者選択と対象者の管理・評価にわたって比較群の平等性(比較可能性:comparability)を高く保つ有効な手段とされている。また、医師に対する盲検化が困難な場合でも、アウトカム評価者には盲検化を行うなど盲検化のレベルを変えて、可能な限り盲検化を行うことが推奨されている。  本研究では、2013年2月から1年間にコクランレビューに公表された1,042件のメタアナリシス研究から、盲検化を行った研究と非盲検の研究を少なくともそれぞれ1つは含む研究を抽出し、盲検化研究に比べて非盲検研究の方が治療効果を過大評価しているかを調べた。盲検化のレベルは、患者・医療提供者・アウトカム評価者の3種類とし、以下の5項目を主要解析対象とした: (Ⅰa)患者立脚型アウトカムに対する患者の盲検化 (Ⅰb)盲検化された評価者によるアウトカムに対する患者の盲検化 (Ⅱa)医療提供者が評価したアウトカムに対する医療提供者の盲検化 (Ⅱb)盲検化された評価者あるいは患者によるアウトカムに対する医療提供者の盲検化 (Ⅲ)主観的アウトカムに対するアウトカム評価者の盲検化  解析対象は142件(1,153試験)のメタアナリシス研究であった(盲検化の有無・内容が不明な試験は67試験[6%])。すべてのアウトカムを二値化したうえで治療効果の大きさをオッズ比で表現し、盲検化試験でのオッズ比に対する非盲検試験でのオッズ比の比(ratios of odds ratios ;ROR)をベイズ的階層モデルによって併合した。その結果、上記5つのいずれの項目に関してもRORの値はほぼ1であり、盲検化試験と非盲検試験でのオッズ比に差は認められなかった。  著者らも述べているように、本研究では評価の信頼性が懸念されるアウトカムに関して盲検化を複数のレベルでとらえて検討している点が強みである。しかしながら、対象試験数の少なさ(ROR推定値の信用区間幅の広さ)、交絡バイアスの影響、統計学的に差がないことをもって同等であると評価している点など本研究にはいくつか問題点もみられるため、さらなる研究が必要であり、現段階では可能な限り盲検化を行うという方針に大きく変更はないと思われる。
食事摂取によるナトリウムの減量と減量期間が血圧レベルに及ぼす影響:システマティックレビューとランダム化試験のメタアナリシス
食事摂取によるナトリウムの減量と減量期間が血圧レベルに及ぼす影響:システマティックレビューとランダム化試験のメタアナリシス
Effect of dose and duration of reduction in dietary sodium on blood pressure levels: systematic review and meta-analysis of randomised trials BMJ. 2020 Feb 24;368:m315. doi: 10.1136/bmj.m315. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 目的: 食事で摂るナトリウムの減量と血圧変化の用量反応関係を調べ、介入期間の影響を調査することを目的としました。 デザイン: PRISMAガイドラインに基づいてシステマティックレビューとメタ分析を行うデザインとしました。 データソース: Ovid MEDLINE(R)、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials(Wiley)、そして2019年1月21日までの関連記事の参照リストをデータソースとしました。 試験選択の適格基準: 24時間尿中ナトリウム排泄量で評価したナトリウム摂取量を成人集団間で比較したランダム化試験を組み入れました。 データの抽出と分析: 3人のレビューアのうち2人が、個々にデータの適格性に関するスクリーニングを行いました。1人のレビューアが全てのデータを抽出し、他の2人がデータの正確性をレビューしました。レビューアは、ランダム効果メタ分析、サブグループ分析、およびメタ回帰分析を実行しました。 結果: 12,197人の対象者を含む133の研究が組み入れられました。24時間尿中ナトリウム排泄量、収縮期血圧(SBP)、および拡張期血圧(DBP)の平均低下(ナトリウム低下群 vs. ナトリウム通常量群)は130mmol(95%CI:115〜145、P<0.001)、 4.26mmHg(3.62〜4.89、P<0.001)、および2.07mmHg(1.67〜2.48、P<0.001)でした。24時間尿中ナトリウム排泄量が50mmol低下するごとに、SBPは1.10mmHg(0.66〜1.54; P<0.001)低下し、DBPは0.33mmHg(0.04〜0.63; P=0.03)低下しました。 血圧の低下は、高血圧および非高血圧にかかわらず、調査対象となった多様な集団で観察されました。24時間尿中ナトリウム排泄量の低下が同一の集団間で比較したところ、高齢者、非白人、そしてベースラインSBPレベルが高い集団でより大きなSBP低下が認められました。15日未満の試験では、24時間尿中ナトリウム排泄量が50mmol低下するごとに、1.05mmHg(0.40〜1.70; P=0.002)のSBP低下が見られ、より長い期間の研究で観察された血圧低下の半分未満でした(2.13 mmHg; 0.85〜3.40; P=0.002)。それ以外については、試験期間とSBP低下の間に関連性は認められませんでした。 結論: ナトリウム減量によって達成された血圧低下の程度は、用量反応関係を示し、高齢者、非白人、ベースライン時に高い血圧を示した集団でより顕著でした。短期間の研究では、ナトリウム減量が血圧に及ぼす影響は過小評価されていました。 システマティックレビュー登録: PROSPEROCRD42019140812 出版はBMJ Publishing Group Limitedです。使用許可については(ライセンス未取得の場合)、http://group.bmj.com/group/rights-licensing/permissions へアクセスしてください。 利益相反: すべての著者は、www.icmje.org /coi_disclosure.pdfにあるICMJE統一開示フォームに記入し、以下を宣言します:提出された研究に対していかなる組織からの助成を受けていません。本研究以外では、BNは中国のSalt ManufacturingCompanyとNutekから試験の塩の補充を受けています。MWは、オーストラリア国立健康医学研究財団のグラント(1080206および1149987)によってサポートされており、アムジェン、キリンから謝金を受けています。NRCCは、World Action on Salt and Healthの無償メンバーであり、多くの政府/非政府組織におけるナトリウム接種と高血圧管理に関するコンサルタントを行っています。AALは、Hypertension Canada New InvestigatorAwardによって資金提供されています。FJHは、塩と健康に関するコンセンサスアクション(CASH)および塩と健康に関する世界アクション(WASH)のメンバーです。 CASHとWASHはどちらも非営利の慈善団体であり、FJHはCASHまたはWASHからの財政的支援を受けていません。GAMは、Blood Pressure UK (BPUK)の議長、Consensus Action on Salt and Health (CASH) の議長、およびWorld Action on Salt and Health (WASH)の議長を務めています。 BPUK、CASH、WASHは非営利の慈善団体であり、GAMはこれらの団体から財政的支援を受けていません。 第一人者の医師による解説 これまでの研究のメタ解析 降圧に国民的減塩政策の有用性を示唆 平田 恭信 東京逓信病院・名誉院長 MMJ. October 2020; 16 (5):132 食塩の過剰摂取が素因のある人では高血圧を招来することは周知である。同時に食塩摂取量の減少が血圧を低下させることも多くの研究で示されてきた。しかしこれをもってすべての人に減塩を勧めることに対してはいまだ異論も少なくない。それは減塩による降圧効果が高血圧者あるいは食塩の多量摂取者だけに認められるとの最近の報告に代表される(1)。  本研究ではこれまでの減塩と血圧変化との関係を調べた研究のメタ解析によって、減塩による降圧効果はどのような人に認められるのか、減塩の程度や期間と降圧効果の大きさについて検討している。いつも問題になるのは減塩の評価法である。主流は食事内容から算出する方法と尿中ナトリウム排泄量を測定する方法である。最近は簡便性のためスポット尿でクレアチニン補正をすることが多くなったが、それは誤差が多いとして今回は24時間尿中ナトリウム排泄量を測定した論文だけを解析している。その結果、減塩により老若男女、高血圧の有無を問わず一定の血圧低下が認められた。解析した133論文の平均値では、130mmol/日のナトリウム摂取量減少によって収縮期 /拡張期血圧は4.26/2.07mmHg低下したという。必ずしも大きな降圧値ではないが、拡張期血圧がわずか2mmHg下がると心血管イベントの発症は10~20%も減少することが知られている(2)。  また、その効果は血圧値が高いほど、減塩量が多いほど、高齢者、非白人で大きかった。ここまでの結果は予想の範囲内であったが、減塩期間が2週間以内では降圧効果が十分に発揮されず、さらなる期間の延長によって降圧値が倍加したというのは新知見であろう。DASH研究でも4週目の降圧がそれまでの週より大きかったという報告に合致する(3)。減塩効果を厳密に測定しようとすると入院下の観察あるいはそれに準じた監視が必要になる。それにはどうしても2週間くらいが限度と思われるからである。  我々日本人は食塩大好き国民であり、昔よりは改善したといっても依然11g/日以上の食塩を摂取していて世界保健機関(WHO)の勧めている5g/日未満とは隔たりがある。英国では減塩政策により遠大な計画のもと巧妙な食品メーカーの誘導が成功して食品中の減塩により、心血管病ならびに医療費が減少した。わが国でも国民をあげての減塩政策は高血圧の予防あるいは発症の遅延に有用であろう。 1. Mente A et al. Lancet. 2018;392:496-506. 2. Czernichow S et al. J Hypertens. 2011;29:4-16. 3. Juraschek SP et al. Hypertension. 2017;70:923-929.
医療者における新型ウイルス感染の心理的影響の発生、予防および管理:迅速レビューとメタ分析
医療者における新型ウイルス感染の心理的影響の発生、予防および管理:迅速レビューとメタ分析
Occurrence, prevention, and management of the psychological effects of emerging virus outbreaks on healthcare workers: rapid review and meta-analysis BMJ. 2020 May 5;369:m1642. doi: 10.1136/bmj.m1642. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 目的: 新型ウイルスの感染を管理して働く医療者の心理およびストレスと精神的苦痛への有効な対策を調査することを目的としました。 デザイン: 迅速レビューとメタ分析 データソース: Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed / Medline、PsycInfo、Scopus、Web of Science、Embase、およびGoogle Scholarについて、2020年3月下旬まで検索しました。 研究選択の適格性基準: あらゆる臨床環境下で新型ウイルス感染が発生した際に、患者を診療している医療スタッフの心理的反応を調べた研究で、他の医師または一般集団との比較の有無は問わないこととしました。 結果: 59件の論文が選択基準を満たしました:37件は重症急性呼吸器症候群(SARS)、8件はコロナウイルス2019感染(covid-19)、7件は中東呼吸器症候群(MERS)、3件はエボラウイルス感染とインフルエンザA(H1N1/H7N9)でした。感染患者と直接接触した医療従事者の心理的結果を比較した38の研究のうち、25は、曝露のリスクが高い医療者と低い医療者を比較するペアワイズメタアナリシスが可能なデータを含んでいました。低リスクの医療者と比較して、感染患者と接触している医療者は、急性または心的外傷後ストレス(オッズ比1.71、95%信頼区間1.28-2.29)および心理的苦痛(1.74、1.50-2.03)の両方を受けているレベルが高く、継続調査においても同様の結果が得られました。これらの調査結果は、メタアナリシスに含まれていない他の研究と同様でした。心理的苦痛の危険因子には、若い、経験が浅い、扶養児童の親である、または感染した家族がいることが挙げられました。隔離期間の長期化、実際的なサポートの欠如、およびスティグマも影響していました。明確なコミュニケーション、適切な個人的保護、適切な休息、そして実践的および心理的サポートの両方が医療者のストレス/心理的苦痛状態の改善と関連していました。 結論: 新興感染症の発生時に患者を診る医療者が経験する心理的苦痛を軽減するのに役立つ効果的な介入があります。これらの介入は、本レビューでカバーしたアウトブレイクの設定やタイプを問わず、類似しており、現在のcovid-19アウトブレイクに適用できる可能性があります。 利益相反: すべての著者は、www.icmje.org / coi_disclosure.pdfにあるICMJE統一開示フォームに記入し、以下ように宣言しています。報告された研究に対していかなる組織からのサポートも受けていません。過去3年間に提出された研究に関心を持つ可能性のある組織との金銭的関係はありません。提出された研究に影響を与えたと思われる他の関連性や活動はありません。 第一人者の医師による解説 レビュー対象の59文献での負担軽減策はほぼ共通 COVID-19にも応用可能か 秋根 大(助教)/小川 真規(教授) 自治医科大学保健センター MMJ. October 2020; 16 (5):144 未知の感染症に遭遇する時、医療従事者はさまざまな葛藤に悩まされる。自分や身近な人への感染リスクが頭をよぎると、冷静な判断が難しくなる。社会からの過度な期待を受け、医学的には妥当でない判断を半ば強要されることさえある。資源は無限にあるわけではないのに。  本論文は、過去の感染症アウトブレイクと今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期における医療従事者の心理的負担とその対応方法について、迅速にエビデンスを公表するために、フォーカスを絞り込んで系統的レビューの一部のステップを省略・簡略化したrapid review、およびメタ解析で検討している。対象は新興ウイルス感染症に対峙した医療従事者の心理的側面について記載した文献59件(8件はCOVID-19関連)。感染患者の治療に従事したスタッフは感染リスクの低い対照群に比べ、急性または心的外傷後ストレスおよび心理的苦痛のレベルが高かった。心理的負担(distress)の増悪因子として、スタッフの年齢が若い、経験が浅い、育児中である、隔離されている、家族が感染している、職場からの実務的サポートがない、医療従事者への社会的偏見などが挙げられている。一方、心理的負担の緩和因子として、明確なコミュニケーション、十分な個人防護具、十分な休養、実務的・精神的サポートなどが挙げられている。事業者が医療従事者の心理的負担を和らげるために、特に推奨される対処法として以下を提案している:①明確なコミュニケーションを行う、②感染症領域の研修や教育の機会を提供する、③感染防止対策を強化する、④十分に個人防護具を準備する、⑤心理面でのサポートを提供する。レビュー対象の59文献は背景や病原体がさまざまであったにも関わらず、これらの対策はおおむね共通していたことから、今回のCOVID-19流行にも応用可能ではないかと著者らは述べている。  最近、COVID-19に関連した医療従事者の燃え尽き症候群に関する研究が日本からも報告された(1)。職種別の燃え尽き症候群のリスクは医師が最も低く、その理由として、医師は看護師、薬剤師、放射線技師と比べて職業上の裁量が大きいことが考えられるとしている。その他のリスクとして、経験年数が短いこと、睡眠時間の減少、仕事量を減らしたいという欲求、感謝や尊敬を期待していることが挙げられている。今回紹介した論文と併せて国内の現状を示すものの1つとして提示した。 1. Matsuo T, et al. JAMA Netw Open. 2020;3(8):e2017271.
人工知能と臨床医の比較 深層学習試験のデザイン、報告基準および主張の系統的レビュー
人工知能と臨床医の比較 深層学習試験のデザイン、報告基準および主張の系統的レビュー
Artificial intelligence versus clinicians: systematic review of design, reporting standards, and claims of deep learning studies BMJ. 2020 Mar 25;368:m689. doi: 10.1136/bmj.m689. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】医用画像の深層学習アルゴリズムの精度を熟練の臨床医と比較した試験のデザイン、報告基準、リスクバイアスおよび主張を系統的に調べること。 【デザイン】系統的レビュー。 【データ入手元】2010年から2019年6月までのMedline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびWorld Health Organization試験レジストリ。 【選択試験の適格基準】医学画像の深層学習アルゴリズムの精度を1名以上の現役熟練臨床医と比較した無作為化試験登録および非無作為か試験。深層学習研究で、医用画像への関心が高まっている。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の際だった特徴は、未加工データで訓練するとパターン認識に必要な代表的な特徴を独自に生成することである。アルゴリズムは、人間が使用するよう指示した特徴よりもむしろ、分類に重要な画像の特徴を自動的に学習する。選択した試験は、医用画像を既存疾患または診断グループへの分類(疾患または非疾患など)の絶対リスク予測に用いることを目的としたものであった。例えば、気胸または非気胸などのラベルを付けた未加工の胸部レントゲン画像と、ピクセルパターンから気胸を示唆するCNN学習などである。 【レビューの方法】無作為化試験でCONSORT(臨床試験報告に関する統合基準)、非無作為化試験にTRIPOD(個別の予後や診断に関する多変量予測モデルの透明性ある報告)基準の遵守を評価した。無作為化試験でCochraneバイアスリスクツール、非無作為化試験にPROBAST(予測モデルのバイアスリスク評価ツール)を用いてバイアスリスクを評価した。 【結果】深層学習を検討した無作為化試験わずか10件を特定し、そのうち2件が出版されており(盲検化の欠如を除いたバイアスリスク:低度、報告基準の遵守:高度)、8件が進行中であった。特定した非無作為化試験81件のうちわずか9件が前向き試験で、6件が実臨床で検証を実施したものであった。比較対象の専門医数中央値はわずか4人(四分位範囲2-9人)であった。全データとコードへのアクセスが厳しく制限されていた(それぞれ95%、93%が閲覧不可能)。全体のバイアスリスクは、81件中58件が高度で、報告基準の遵守が準最適であった(TRIPODの29項目中12項目の遵守率50%未満)。81件中61件が、抄録に人工知能の性能が臨床医と同等以上であると記していた。詳細な前向き試験を要すると記載していたのは、81件中わずか31件(38%)であった。 【結論】医用画像を用いた前向きな深層学習を検討した研究や無作為化試験はほとんどない。ほとんどの非無作為化試験が前向きではなく、バイアスリスクが高く、既存の報告基準から逸脱している。ほとんどの試験でデータとコードが入手できず、人間の対照群も少数であることが多い。詳細な研究で、バイアスリスクを除外し、実臨床との関連例を高め、報告基準および透明性を改善し、ふさわしい表現の結論に加減する必要がある。 第一人者の医師による解説 適切な研究デザインによる医学的な検証には もう少し時間が必要 津本 周作 島根大学医学部医学科医療情報学講座教授 MMJ. December 2020;16(6):177 深層学習が画像認識のベンチマークで2012年、他の手法を遥かにしのぐ好成績を上げて以降、さまざまな領域で適用が進んでいる。医用画像診断は主たる領域の1つで、Googleなどから「医師が診断する1年前の画像で肺がんを検出」、「人工知能(AI)は皮膚がんの診断については専門医以上」という主張の根拠となる論文が出るようになった(1),(2)。しかし、実際の診断能力を専門家と比較した定量的な検証は十分なされているのだろうか? 本論文は、系統的レビューによりその評価を試みている。  本論文では、学術雑誌に掲載された英語論文で、画像診断への適用、臨床家の診断との比較がなされた236編を選択後、著者4人が最終的に91論文を選び、系統的レビューを行った結果、以下のことが明らかになった。  1. 無作為化試験は10件。小児白内障診断の研究(患者350人)では、AIと専門医の正答率はそれぞれ87%と99%、治療の推薦については71%と97%であった(非無作為化試験ではそれぞれ98%と93%、バイアスが顕著)。診断の速度はAIの方が早い(2.8分 対 8.5分)。大腸内視鏡による診断の研究(患者1,058人)では、AI実装、非実装のシステムを使った検出率が比較され、腺腫(29% 対 20%)、過形成ポリープの個数(114 対 52)と、AIによる支援が優れていた。  2. 非無作為化試験81件(放射線科36、眼科17、皮膚科9、消化器科5、病理5など)では、9件のみが前向きで、このうち実際の臨床現場で検証されていたのは6件。77件の論文要約で臨床家との比較が述べられ、AIの方が優れているという報告は23、同等/より良いは13、同等が25であった。追加の前向き研究の必要性を論じているのは9件のみ。  3. 論文内のデータおよびプログラムは公開されておらず、再現性が検証できない。  4. 検証する医師の数が少ない(中央値:4人)。  5. ほとんどの論文で、AIの性能が同等/より良いと書かれているが、研究デザイン、バイアスに関する議論が不十分。  深層学習が実領域で適用されはじめたのが2014年ごろであり、まだまだ歴史が浅い。既報の多くは工学的研究のスタイルで、研究デザイン的にも不十分な研究が多い。AIが医師を凌ぐというエビデンスは、今回の系統的レビューからは得られなかった。今後、適切な研究デザインのもとでの医学的な検証結果が報告されるまで、もう少し時間がかかるかもしれない。 1. Ardila D, et al. Nat Med. 2019;25(6):954-961. 2. Haenssle HA, et al. Ann Oncol. 2018;29(8):1836-1842.
フランス・パリのCOVID-19大流行下に見られる小児の川崎病様多臓器系炎症性疾患 前向き観察研究
フランス・パリのCOVID-19大流行下に見られる小児の川崎病様多臓器系炎症性疾患 前向き観察研究
Kawasaki-like multisystem inflammatory syndrome in children during the covid-19 pandemic in Paris, France: prospective observational study BMJ . 2020 Jun 3;369:m2094. doi: 10.1136/bmj.m2094. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】川崎病様多臓器系炎症性疾患の集団発生に見舞われた小児および青少年の特徴を明らかにし、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)との一時的な関連の可能性を評価すること。 【デザイン】前向き観察研究。 【設定】フランス・パリの大学病院一般小児病棟。 【参加者】2020年4月27日から5月11日の間に入院し、同年5月15日までに退院するまで経過観察した川崎病の特徴を有する小児および青少年21例(18歳以下)。 【主要評価項目】主要評価項目は、臨床的・生物学的データ、画像および心エコーの所見、治療および転帰とした。RT-PCRを用いて鼻咽頭ぬぐい液のSARS-CoV-2の有無を調べる検査を前向きに実施し、血液検体でウイルスに対するIgG抗体を調べた。 【結果】15日間の間に、小児および青少年21例(年齢中央値7.9[範囲3.7-16.6]歳)が川崎病の症状を呈し、入院した。12例(57%)がアフリカ系であった。12例(57%)が川崎病ショック症候群、16例(76%)が心筋炎を来した。17例(81%)が集中治療を要した。全21例に疾患早期の顕著な消化器症状と炎症マーカー高値が見られた。19例(90%)に、SARS-CoV-2に感染して間もない根拠があった(21例のうち8例がRT-PCR検査陽性、19例からIgG抗体検出)。全21例に免疫グロブリン製剤を静注し、10例(48%)にはステロイド薬も投与した。臨床転帰は全例が良好だった。入院中、5例(24%)に中等度の冠動脈拡張が見られた。5月15日までに、8(5-17)日間の入院後、全例が退院した。 【結論】パリの小児および青少年の間で現在も続く川崎病様多臓器系炎症性疾患の集団発生には、SARS-CoV-2との関連があると思われる。この研究では、この症状が見られる小児および青少年の間で消化器症状、川崎病ショック症候群の割合が非常に高く、その多くがアフリカ系であった。 第一人者の医師による解説 小児ではCOVID-19感染後1 ~ 2カ月間は 川崎病の症状に注意すべき 三浦 大 東京都立小児総合医療センター副院長 MMJ. December 2020;16(6):164 本論文は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症(COVID-19)流行時に、川崎病類似の多臓器系炎症症候群の小児が多数発生したというフランスからの報告である。COVID-19に伴う多臓器系炎症症候群は、日本では皆無だが欧米で報告が相次ぎ、欧州ではPIMS-TS、米国ではMIS-Cと略され、一部は川崎病ショック症候群(KDSS)とオーバーラップする。  著者らは、パリの 大学病院小児科に2020年4~5月に中央値8日間入院し、川崎病の診断基準を満たした小児21人を調査した。年齢は中央値7.9歳、12人は女児で、12人(57%)はアフリカ系であった。12人(57%)はKDSS、16人(76%)は心筋炎を伴い、17人(81%)が集中治療を要した。21人全例が顕著な胃腸症状と高度の炎症反応を示し、免疫グロブリン静脈療法(IVIG)を受け、10人(48%)はステロイドも投与された。全例が良好に回復したが、中等度冠動脈瘤が5人(24%)に検出された。  SARS-CoV-2に関して、PCR陽性8人、IgG抗体陽性19人と計19人(90%)で最近の感染が証明された。川崎病発症と咳・鼻汁・発熱などウイルス感染症状との間隔は中央値で45日間(9人)、SARS-CoV-2疑い症状のあった家族との接触との間隔は36日間であった(5人)。SARS-CoV-2感染の1~2カ月後に発症するという時間的経過はPIMS-TSの報告と一致し、ウイルス感染後の免疫反応が川崎病様の症状を引き起こしたと推測される。  本報告例では、アフリカ系、年長児、女児に好発し、胃腸症状、ショック、心機能低下、炎症反応異常高値を多く認め、IVIG不応率、冠動脈瘤合併率、集中治療を要した割合が高かった。このような特徴はPIMS-TSやKDSSと同様で、アジア人、乳幼児、男児に多い典型的な川崎病と異なる。その理由は不明であるが、人種による遺伝的免疫応答の相違である可能性があり、今後の研究テーマである。  当院で調査した日本の小児のデータを紹介する(1)。2020年3 ~ 5月に入院した川崎病患児14人における抗SARS-CoV-2抗体検査でIgG陽性は1人のみであった。この陽性例は1歳の男児で(2)、母親からのCOVID-19に感染後60日目に再入院し、川崎病の診断でIVIG+ステロイド併用療法を受け、冠動脈瘤なく軽快した。KDSSの症状はなかったが、SARS-CoV-2と川崎病との関連が示唆され、調べ得た範囲では日本初の症例である。  世界的にはCOVID-19流行は収まっておらず、アフリカ系の住民が多い地域では、胃腸症状や血行動態が不安定な川崎病様の症状を呈する小児に注意が必要である、と著者らは述べている。日本ではまれであるが、COVID-19感染後、1~2カ月間は発熱など川崎病の症状に気をつけるべきと考える。 1. Iio K, et al. Acta Paediatr. 2020 Aug 16:10.1111/apa.15535. 2. Uda K, et al. Pediatr Intern. 2020 (in press). # #編集部対応:最新状況を反映する
慢性疾患がある高齢者のポリファーマシーを減らす電子意思決定支援ツールの使用 クラスター無作為化比較試験
慢性疾患がある高齢者のポリファーマシーを減らす電子意思決定支援ツールの使用 クラスター無作為化比較試験
Use of an electronic decision support tool to reduce polypharmacy in elderly people with chronic diseases: cluster randomised controlled trial BMJ . 2020 Jun 18;369:m1822. doi: 10.1136/bmj.m1822. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】慢性疾患高齢者を対象とした包括的な薬剤処方見直しのための電子化意思決定支援ツールの効果を評価すること。 【デザイン】多施設共同実用的クラスター無作為化比較試験。 【設定】オーストリア、ドイツ、イタリアおよび英国の一般診療所359施設。 【参加者】一般診療医が組み入れた、定期的に8種類以上の薬剤を服用している75歳以上の高齢者3904例 【介入】一般診療医がふさわしくない可能性のある薬剤や根拠のない薬剤を減薬することを支援するべく新たに開発した、包括的な処方の見直しを組み込んだ電子意思決定支援ツール。医師を電子意思決定支援ツール使用群と通常通りの治療提供群に無作為に割り付けた。 【主要評価項目】主要評価項目は、24カ月以内の予期せぬ入院または死亡とした。主要副次評価項目は、薬剤数の減少とした。 【結果】2015年1月から10月の間に3904例を組み入れた。181施設、1953例を電子意思決定支援ツール(介入群)、178施設と1951例を通常通りの治療(対照群)に割り付けた。主要評価項目(24カ月以内の予期せぬ入院または死亡の複合)は、介入群の871例(44.6%)、対照群の944例(48.4%)に発生した。intention-to-treat解析で、複合転帰のオッズ比は0.88(95%CI 0.73-1.07、P=0.19、1953例中997例vs. 1951例中1055例)であった。手順に従って受診した参加者に絞った解析で、差から介入群の優位性が示された(オッズ比0.82、95%CI 0.68-0.981、1682例中774例vs. 1712例中873例、P=0.03)。24カ月までに、介入群の処方薬数の方が対照群よりも低下していた(調整前の平均変化量-0.42 vs. 0.06、調整後平均差-0.45、95%CI -0.63--0.26、P<0.001)。 【結論】intention-to-treat解析で、ポリファーマシーの高齢者で包括的に薬剤処方を見直す電子化した意思決定支援ツールが24カ月以内の予期せぬ入院または死亡の複合にもたらす決定的な効果は示されなかった。しかし、患者の転帰が悪化することなく、減薬に成功した。 第一人者の医師による解説 日本ではまずかかりつけ医による 一元管理の推進が必要 秋下 雅弘 東京大学大学院医学系研究科老年病学教授 MMJ. December 2020;16(6):176 「“ポリファーマシー”は、単に服用する薬剤数が多いのみならず、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服用過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」と、厚生労働省による「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(1)は定義している。また、患者の病態、生活、環境により適正処方も変化するとしており、一律な減薬(deprescribing)ではなく、総合的な視点から処方見直し(medication review)を行う必要性を強調している。  本研究は、まさにそのような目的で作成された電子処方支援ツールを用いて、欧州4カ国の診療所医師359人と、その75歳以上の患者(8種類以上の薬剤服用)およそ4,000人を対象に行われたクラスターランダム化比較試験である。1次アウトカムの予期せぬ入院または2年以内の死亡についてintention-to-treat解析では有意差がなかった。  ただし、プロトコールに従って診療所に通った患者を対象としたper-protocol解析では有意差があり、生存曲線で両群間の差が開きつつある時点で試験が終了していることから考えると、本ツールの有用性を示唆する結果と言える。何より、薬剤数は介入群で対照群に比べて有意に減少していたが、それが有害な転帰につながらなかったこと、つまり本ツールをプライマリケアの現場で用いても安全に処方見直しと減薬がなされたことに意義がある。  ポリファーマシーは、上述したように不適正な処方状態を指し、それ自体医療の質に関わる問題である。実際に、高齢者では薬剤に起因すると思われるふらつき・転倒や認知機能低下などの老年症候群(薬剤起因性老年症候群)をしばしば認める。また、残薬として無駄になる薬剤費だけで最低でも年間数百億円と日本では推計されており、薬物有害事象に要する医療費を加えると、医療経済的にも大問題である。  ポリファーマシー対策は、診療報酬でも次々と取り上げられるなど施策上の手は打たれているが、期待どおりの効果はみられない。医師・薬剤師間など職種間の連携不足や受療者側の処方に対する意識も課題だが、多病と複数診療科受診がポリファーマシーの主因であり、まずはかかりつけ医による一元管理を推進することが肝要だと考えられる。その上での処方支援ツールであり、電子ツールの活用である。本研究の成果を日本の医療に還元するには、まだいくつものハードルがあると言える。 1. 「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編[療養環境別])」(厚生労働省 2018 年 5 月発行) https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/kourei-tekisei_web.pdf
成人の体重および心血管危険因子減少に用いる14の人気名称付き食事法の主要栄養素の比率の比較 無作為化試験の系統的レビュートネットワークメタ解析
成人の体重および心血管危険因子減少に用いる14の人気名称付き食事法の主要栄養素の比率の比較 無作為化試験の系統的レビュートネットワークメタ解析
Comparison of dietary macronutrient patterns of 14 popular named dietary programmes for weight and cardiovascular risk factor reduction in adults: systematic review and network meta-analysis of randomised trials BMJ. 2020 Apr 1;369:m696. doi: 10.1136/bmj.m696. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】主要栄養素の比率と人気のある名称付き食事法による過体重または肥満の成人の体重減少および心血管危険因子改善効果でみた相対的有効性を明らかにすること。 【デザイン】無作為化試験の系統的レビューとネットワークメタ解析 【データ入手元】開始から2018年9月までのMedline、Embase、CINAHL、AMEDおよびCENTRAL、適格とした試験の文献一覧および関連レビュー。 【試験選択】過体重(BMI 25-19)および肥満(BMI 30以上)の成人を組み入れ人気のある名称付き食事法または代替食を検討した無作為化試験。 【評価項目】追跡6カ月時、12カ月時のBMI、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、収縮期血圧、拡張期血圧およびCRPの変化量。 【レビュー方法】2人のレビュアーが別々に試験参加者、介入および転帰に関するデータを抽出し、GRADE(grading of recommendations, assessment, development, and evaluation)を用いてリスクバイアス、根拠の質を評価した。ベイジアンフレームワークを用いたランダム効果ネットワークメタ解析で、食事法の相対的有効性を推定した。 【結果】2万1942例を検討した適格試験121件を対象とし、全体で14の名称付き食事法と3通りの対照の食事法を報告していた。通常の食事法と比較すると、低炭水化物食と低脂肪食に6カ月時の体重減少(4.63 vs. 4.37kg、いずれの中等度の確実性)、収縮期血圧(5.14mmHg、中等度の確実性 vs. 5.05mmHg、低度の確実性および拡張期血圧(3.21 vs. 2.85mm Hg、いずれも低度の確実性)の減少に同等の効果があった。中等度の主要栄養素食でわずかな体重と血圧の減少が見られた。低炭水化物食は、低脂肪食および中等度の主要栄養素よりもLDLコレステロール値低下効果がわずかに低かった(それぞれ1.01mg/dL、低度の確実性 vs. 7.08 mg/dL、中等度の確実性 vs. 5.22mg/dL、中等度の確実性)が、HDLコレステロール値が上昇し(2.31mg/dL、低度の確実性)、低脂肪食(-1.88mg/dL、中等度の確実性)と中等度の主要栄養素食(-0.89 mg/dL、中等度の確実性)ではこの上昇が見られなかった。人気のある名称付き食事法の中で、通常の食事法と比べて6カ月時の体重減少と血圧低下に最も大きな効果があったのは、アトキンスダイエット(体重5.5kg、収縮期血圧5.1mmHg、拡張期血圧3.3mmHG)、DASH食(3.6kg、4.7mmHg、2.9mmHg)およびゾーンダイエット(4.1kg、3.5mmHg、2.3mmHg)であった(いずれも中等度の確実性)。6カ月時のHDLコレステロール値とCRP値が改善した食事法はなかった。全体で、主要栄養素の比率と人気のある名称付き食事法いずれも12カ月時に体重減少効果が低下し、いずれの介入による心血管危険因子改善にもたらす便益は、地中海食を除いて、実質的に消失した。 【結論】中等度の確実性から、ほとんどの主要栄養素ダイエットで、6カ月間にわたり、中等度の体重減少と心血管危険因子、特に血圧の大幅な改善が示された。12カ月時、体重減少と心血管危険因子改善の効果はほとんど消失した。 第一人者の医師による解説 6カ月程度の短期なら 各自の食事様式に合った食事療法を選択して問題ない 柳川 達生 練馬総合病院院長 MMJ. December 2020;16(6):179 過体重・肥満者の心血管疾患予防の観点からさまざまな食事療法プログラムの効果が検討されている。従来のメタアナリシスでは2つの食事療法を比較しており、多様なプログラム間の比較は行われていない。本論文では、系統的レビューとネットワークメタアナリシスの手法を用いて、14の食事療法の効果が比較・評価された。エビデンスの質はGrades of Recommendation, Assessment,Development, and Evaluation(GRADE)により評価された。14の名称付き食事療法が3大栄養素の比率で以下の3つに分類された:(1)炭水化物40%以下の低炭水化物(LC食:AtkinsやZoneなど)(2)脂質20%以下の低脂肪食(LF食:Ornishなど)(3)中等度の栄養素(Moderate macronutrients[MN]食:DASHや地中海食など)。パレオダイエット(paleolithic diet)(1)は報告(2試験)の栄養組成に基づきそれぞれMN食とLC食に分類された。  解析対象は121件のランダム化試験、患者は過体重(体格指数[BMI], 25~29未満)または肥満(BMI 30以上)の21,942人(平均年齢49歳、女性69%)、介入期間中央値26週であった。結果、通常の食事と比較し、LC食とLF食は6カ月では体重減少(4.63 対 4.37 kg)、収縮期血圧の低下(5.14 対 5.05 mmHg)で同等の効果を認めた。MN食の効果はLC食とLF食よりも効果は小さかったが、低比重リポ蛋白(LDL)の低下は大きかった。しかし、いずれも12カ月以降は効果が低減し、食事療法間の差はなくなった。名称付き食事療法のうち、Atkins(LC食)とCraig(MN食)が最も減量に効果があり、パレオダイエットが収縮期血圧、Atkinsが拡張期血圧、地中海食がLDL低下に有効であった。血圧と脂質で若干の差がみられた食事療法もあるが、12カ月以降は差が減少し無視できるほどになった。  今回の結果を解釈するにあたり、ネットワークメタアナリシスとはいえバイアスの問題など限界があることに留意が必要だ。長期の観察データが少ないことも有効性の証明ができなかった要因である。また多くの研究では食事遵守のデータがなく、食事療法不遵守は効果を減弱させる原因となりうる。  現時点では“各自の食事様式に合った食事療法を選択”という結論にして良いだろうか? 少なくとも6カ月といった短期では問題ない。ただ最終エンドポイントである心血管疾患発症の抑制は地中海食(2)以外ではほとんど検証されていない。減量に至り心血管危険因子が低減しても、疾患の発症が抑制される証明にはならない。今後の検討課題である。 1. Challa HJ, et al. In: StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482457/ 2. 柳川達生 . 月刊糖尿病 .2019; 11(5):6-11.