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冠動脈バイパス術後の抗血栓療法:系統的レビューとネットワークメタ解析。
冠動脈バイパス術後の抗血栓療法:系統的レビューとネットワークメタ解析。
Antithrombotic treatment after coronary artery bypass graft surgery: systematic review and network meta-analysis BMJ 2019 ;367:l5476. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】冠動脈バイパスグラフト手術を受ける患者における伏在静脈グラフト不全を予防する異なる経口抗血栓薬の効果を評価する。 デザイン]系統的レビューとネットワークメタ分析。 【データ入手元】インセプションから2019年1月25日までのMedline、エンベース、Web of Science、CINAHL、Cochrane Libraryのデータを用いた。の適格基準。研究選択について冠動脈バイパス移植術後の伏在静脈グラフト不全を予防するために経口抗血栓薬(抗血小板薬または抗凝固薬)を投与した参加者(18歳以上)の無作為化対照試験。 【MAIN OUTCOME MEASURES】主要評価項目は伏在静脈グラフト不全、主要安全評価項目は大出血であった。副次的評価項目は心筋梗塞と死亡であった。 【結果】このレビューで3266件の引用が確認され、20件の無作為化対照試験に関連する21件の論文がネットワークメタ解析に含まれた。これら20の試験は4803人の参加者からなり、9つの異なる介入(8つの活性と1つのプラセボ)を調査した。中程度の確度のエビデンスは、アスピリン単独療法と比較して、伏在静脈グラフト不全を減らすために、アスピリン+チカグレロル(オッズ比0.50、95%信頼区間0.31~0.79、治療必要数10)またはアスピリン+クロピドグレル(0.60、0.42~0.86、19)による抗血小板2重療法の使用を支持している。本試験では,抗血栓療法の違いによる大出血,心筋梗塞,死亡の違いを示す強力なエビデンスは得られなかった。感度解析の可能性は否定できないが,含まれるすべての解析で試験間の異質性と非干渉性は低かった.グラフトごとのデータを用いた感度分析では、効果推定値に変化はなかった。 【結論】このネットワークメタ分析の結果は、冠動脈バイパスグラフト術後の伏在静脈グラフト不全を予防するために、アスピリンにチカグレロルまたはクロピドグレルを追加することの重要な絶対的利益を示唆するものであった。手術後の二重抗血小板療法は、重要な患者アウトカムに対して薬物介入の安全性と有効性のプロファイルをバランスよく調整し、患者に合わせるべきである。[STUDY REGISTRATION]PROSPERO 登録番号 CRD42017065678. 第一人者の医師による解説 DAPTにおける心血管イベント予防と出血リスク上昇 長期的で大規模な検証を期待 北村 律 北里大学医学部心臓血管外科准教授 MMJ.April 2020;16(2) 冠動脈バイパス(CABG)術後の大伏在静脈グラフト閉塞は、術後1年以内に30~40%、10年以上では70%の確率で生じるという報告もある(1),(2)。 しかしながら、採取の容易さ、ハンドリングの良さなどの理由から、多くの患者で大伏在静脈グラフトが用いられる。術後の大伏在静脈グラフト閉塞予防のために、近年、アスピリンにクロピドグレル やチカグレロルなどのチエノピリジン系抗血小板薬を追加する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を 用いることも多い。この効果についてのネットワークメタアナリシスが本論文である。 検討の対象は、主要医学文献データベース上にある2019年1月までに発表された論文のうち、18 歳以上、大伏在静脈を用いたCABG、複数の経口抗血栓薬またはプラセボとの比較、大伏在静脈グラフト閉塞を検討した論文3,266編から選ばれた、 解析に適切な20件のランダム化対照試験(RCT)である。術後経口抗血栓薬として、単剤療法にはアスピリン、クロピドグレル、チカグレロル、ビタミン K拮抗薬(ワルファリンなど)、リバーロキサバン、 2剤併用療法にはアスピリン+クロピドグレル、アスピリン+チカグレロル、アスピリン+リバーロキサバン、合計8種類が含まれた。有効性のエンドポイントは静脈グラフト閉塞、安全性のエンドポ イントは大出血、全死亡と心筋梗塞に設定している。 合計4,803人の患者が解析の対象となっており、 年齢は44~83歳、83%が男性、83%が待機手術であった。術後観察期間は1カ月~8年で、大伏在静脈開存はカテーテル検査かCTで評価された。 検討された薬剤すべてがグラフト閉塞を予防することが示されたが、アスピリン単剤と比較して、 アスピリン+チカグレロル(オッズ比[OR], 0.50; 95% CI, 0.31~0.79)、アスピリン+クロピド グレル(OR, 0.60;95% CI, 0.42~0.86)が有意にグラフト閉塞を予防することが示された。出血リスクに関する検討では薬剤間で有意差を認めず、いずれもプラセボと比較して出血リスクを上昇させる傾向にあったが、有意差はなかった。全死亡に関する検討では10件のRCT(1,921人)、心筋梗塞に関しては12件のRCT(3,994人)が 対象となったが、薬剤間で有意差を認めなかった。 RCT20件のうち、ランダム化バイアスのリスクが低いと判断されたのは5件のみであった。 DAPTによるCABG術後の心血管イベント予防効果および出血リスクの上昇については、より長期的かつ大規模な研究による検証が期待される。 1. Cooper GJ et al. Eur J Cardiothorac Surg. 1996;10(2):129-140. 2. Windecker S et al. Eur Heart J. 2014;35(37):2541-2619