「虚血性心疾患」の記事一覧

肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study BMJ 2019 Sep 4 ;366:l4897 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】菜食主義と虚血性心疾患および脳卒中のリスクとの関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定】非肉食者の割合が多い英国のコホートであるEPIC-Oxford研究は、1993年から2001年にかけて英国全土で募集した。 【参加者】虚血性心疾患、脳卒中、狭心症(または心血管疾患)の既往がない188名の参加者は、ベースライン時およびその後の2010年頃に収集した食事情報に基づいて、肉食者(魚、乳製品、卵を摂取するかどうかに関わらず肉を摂取する参加者、n=24 428)、魚食者(魚を摂取するが肉を食べない、n=7506)、菜食主義者を含む菜食者(n=16 254)の異なる3食グループに区分されました(n=28 364)。 【主要評価項目】2016年までの記録連結により特定された虚血性心疾患および脳卒中(虚血型および出血型を含む)の発症例。 【結果】18.1年間の追跡で虚血性心疾患2820例、全脳卒中1072例(虚血性脳卒中519例、出血性脳卒中300例)が記録された。社会人口学的およびライフスタイルの交絡因子で調整した後、魚食者と菜食者は肉食者に比べて虚血性心疾患の発生率がそれぞれ13%(ハザード比0.87、95%信頼区間0.77~0.99)および22%(0.78、0.70~0.87)低かった(不均一性についてはP<0.001)。この差は,10 年間で人口 1000 人当たりの虚血性心疾患の症例数が,肉食者よりもベジタリアンの方が 10 人少ない(95%信頼区間 6.7~13.1 人少ない)ことに相当する.虚血性心疾患との関連は、自己申告の高血中コレステロール、高血圧、糖尿病、肥満度を調整すると一部弱まった(すべての調整でベジタリアンのハザード比 0.90、95%信頼区間 0.81~1.00 )。一方、ベジタリアンは肉食の人に比べて脳卒中の発症率が20%高く(ハザード比1.20、95%信頼区間1.02~1.40)、これは10年間で人口1000人あたり3人多い(95%信頼区間0.8~5.4多い)ことに相当し、ほとんどが出血性脳卒中の発症率が高いためであった。脳卒中の関連は、疾患の危険因子をさらに調整しても減衰しなかった。 【結論】英国におけるこの前向きコホートでは、魚食者と菜食者は肉食者よりも虚血性心疾患の割合が低かったが、菜食者は出血性脳卒中と全脳卒中の割合が高かった。 第一人者の医師による解説 肥満、高血圧、糖尿病は少なく LDLコレステロールの低値が影響か 的場 圭一郎1 /宇都宮 一典2 東京慈恵会医科大学 1)内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科講師 2)総合健診・予防医学センターセンター長(臨床専任教授) MMJ.February 2020;16(1) 近年の健康志向の高まりや動物福祉の観点から、 菜食者は世界的に増加している。菜食者における虚血性心疾患の発症リスクは非菜食者に比べて低いと考えられているが、これに関する大規模かつ前向きな研究は限られている。また、脳卒中リスクとの関連性についてはこれまでエビデンスがない。 本論文は、英国 Oxford大学のTongらが、同国コホート(EPIC-Oxford)における虚血性心疾患・脳卒中・狭心症の既往がない参加者48,188人を対象に、虚血性心疾患と脳卒中のリスクを調べた長 期前向き観察研究の報告である。研究開始時(1993 ~2001年)と2010年前後での食習慣に基づき、 対象者を①魚、乳製品または卵の摂取を問わず、肉を摂取する肉食群、②魚は摂取するが肉は摂取しない魚食群、③完全菜食主義者(vegan)を含む菜食群に分け、虚血性心疾患および脳卒中の発症につ いて検討した。 その結果、肉食群と比較して、虚血性心疾患の発症リスクは魚食群で13%低下、菜食群では22% 低下した。しかし、菜食群では脳卒中の発症リスクが20%上昇しており、これは主に脳出血の増加が原因であった。 肉食群に比べて、菜食群と魚食群で虚血性心疾患 が少なかった背景には、これら2群において肥満 や高血圧、脂質異常症、糖尿病が少なかったことが 関連していると思われる。一方、脳出血が菜食群で多い理由として、LDLコレステロールの低値や動物性食品に含まれる何らかの成分の不足を著者らは 想定している。EPIC-Oxfordコホートの菜食者では 血中のビタミン B12やビタミン D、必須アミノ酸、 n-3系多価不飽和脂肪酸が低値であり、脳出血増加との関連性が示唆される。しかし、人種を問わず同じ傾向がみられるか否かは不明であり、背景因子の解明にはさらなる検討が必要である。