「2型糖尿病」の記事一覧

糖尿病診断時の年齢とその後の認知症リスクの関連
糖尿病診断時の年齢とその後の認知症リスクの関連
Association Between Age at Diabetes Onset and Subsequent Risk of Dementia JAMA. 2021 Apr 27;325(16):1640-1649. doi: 10.1001/jama.2021.4001. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】2型糖尿病は、若年齢での発症に伴い有病率が上昇している。早期発症2型糖尿病の血管合併症は知られているが、認知症との関連については明らかになっていない。 【目的】糖尿病発症年齢が低いほど認知症発症との関連が強くなるかを明らかにすること。 【デザイン、設定および参加者】英国の住民対象試験、Whitehall II前向きコホート試験。1985~1988年に設置し、1991~1993年、1997~1999年、2002~2004年、2007~2009年、2012~2013年および2015~2016年に診察を実施、2019年3月までの電子診療録と紐づけた。最終追跡調査日は2019年3月31日であった。 【曝露】2型糖尿病(診察時の空腹時血糖値126mg/dL以上、医師による2型糖尿病の診断、糖尿病薬の使用、1985年から2019年までに病院に糖尿病の記録、のいずれかを満たす場合と定義) 【主要評価項目】電子診療録との紐づけによって確認した認知症の発症。 【結果】参加者10,095例(男性67.3%;1985~1988年に35~55歳)のうち、中央値で31.7年の追跡期間中、糖尿病1,710例、認知症639例が記録された。1,000人年当たりの認知症発症率は、70歳時点で糖尿病がなかった参加者が8.9、5年以内に糖尿病を発症した参加者が10.0、6~10年前に糖尿病を発症した参加者が13.0、10年より前に糖尿病を発症した参加者が18.3であった。多変量補正解析で、70歳時点で糖尿病ではなかった参加者と比べた認知症のハザード比は、10年より前の糖尿病発症が2.12(95%CI、1.50~3.00)、6~10年前の発症が1.49(95%CI、0.95~2.32)、5年以内の発症が1.11(95%CI、0.70~1.76)であった。線形傾向検定(P<0.001)から、2型糖尿病の発症年齢と認知症に段階的な関連が示された。社会人口統計学的因子、健康行動、健康関連測定値で補正した解析で、2型糖尿病発症時の年齢が5歳低下するごとに70歳時点の認知症ハザード比1.24(同1.06~1.46)との有意な関連が認められた。 【結論および意義】中央値で31.7年追跡したこの縦断コホート試験では、糖尿病の発症年齢が低いほど以後の認知症発症リスクが高くなった。 第一人者の医師による解説 認知症予防には中年期からの積極的な介入が望ましい 古和 久朋 神戸大学大学院保健学研究科教授 MMJ. February 2022;18(1):6 糖尿病がアルツハイマー病(AD)をはじめとする認知症の危険因子であることは、すでにさまざまな証拠から支持されている。例えば日本の久山町研究では耐糖能異常を有する人では有さない人よりもADの特徴的病理構造物である老人斑の蓄積量が約2倍多いことが示されている(1)。一方、2型糖尿病の発症年齢が若くなると死亡率や心血管イベント発生率を上昇させることは以前より示されていたものの、発症年齢と認知症発症の関連は検証されてこなかった。 本論文は、英国 Whitehall II前向きコホート研究の参加者を対象に中年期から高齢期にかけてこの関連について検討した研究の報告である。研究参加者10,095人(男性67.3%、ベースライン時点[1985 ~ 88年]年齢 35 ~ 55歳)のうち、中央値31.7年の追跡期間において、合計1,710人に糖尿病、639人に認知症の発症がみられた。解析の結果、35歳から75歳までの糖尿病発症年齢のデータでは、5年ごとに糖尿病の発症が早くなるほど、認知症の発症リスクが高くなることが示された(70歳時点で糖尿病を有する参加者と比較し、糖尿病発症が10年超早い参加者の認知症のハザード比[HR]は2.12[95% CI, 1.50~3.00]、糖尿病発症が6~10年早い参加者では1.49[95% CI, 0.95~2.32])。一方、遅発性の糖尿病はその後の認知症とは有意に関連しなかった。また、糖尿病のある人では、脳卒中の併存が認知症のリスクをさらに高めることが明らかになった。 本論文の結果は、認知症全体の発症リスクを評価したものであるが、その脳内病理学的変化がアミロイド PETなどにより長期の観察が可能となり、発症の20年以上前から老人斑の蓄積が開始されるなど、その病態生理に多くの知見が得られているAD(2)に限定して考えても極めてリーズナブルといえる。遅発性の糖尿病が発症リスクに影響しないことを考慮すると、糖尿病はAD初期からの病理学的変化である老人斑の蓄積に影響を与えうる可能性が高く、久山町研究の観察と合致するものである。 次の疑問は、糖尿病発症後のどの時期までに介入すれば認知症の発症を防げるのか、その際の介入は血糖コントロールのみでよいのか、J-MINDDiabetes研究(3)のように運動や認知機能訓練などの多因子介入を実施すべきか、という点であり、前向き研究の結果が待たれるところである。 1. Ohara T, et al. Neurology. 2011;77(12):1126-1134. 2. Jack CR Jr, et al. Lancet Neurol. 2010;9(1):119-128. 3. Sugimoto T, et al. Front Aging Neurosci. 2021;13:680341.
2型糖尿病に用いる新規デュアルGIP/GLP受容体作動薬tirzepatideの有効性および安全性(SURPASS-1):二重盲検無作為化第III相試験
2型糖尿病に用いる新規デュアルGIP/GLP受容体作動薬tirzepatideの有効性および安全性(SURPASS-1):二重盲検無作為化第III相試験
Efficacy and safety of a novel dual GIP and GLP-1 receptor agonist tirzepatide in patients with type 2 diabetes (SURPASS-1): a double-blind, randomised, phase 3 trial Lancet. 2021 Jul 10;398(10295):143-155. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01324-6. Epub 2021 Jun 27. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】医療が進歩したが、2型糖尿病患者の多くが治療目標を達成していない。そのため、新たな治療法の開発が求められている。食事療法および運動療法のみではコントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、新たなグルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)受容体およびGLP-1受容体作動薬、tirzepatide単剤療法のプラセボと比較した有効性、安全性および忍容性を評価することを目的とした。 【方法】インド、日本、メキシコおよび米国の医療研究センターおよび病院計52施設で40週間にわたる二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験を実施した(SURPASS-1試験)。食事療法と運動療法のみではコントロール不十分な2型糖尿病があり、糖尿病の注射薬治療歴がない成人患者(18歳以上)を対象とした。コンピュータで生成したランダム配列を用いて、患者をtirzepatide(5mg、10mgまたは15mg)週1回投与とプラセボに1対1対1対1の割合で割り付けた。患者、治験担当医師、治験依頼者に治療の割り付けを伏せた。主要評価項目は、40週時点の糖化ヘモグロビン(HbA1c)の治療前からの平均変化量とした。この試験はClinicalTrials.govにNCT03954834として登録されている。 【結果】2019年6月3日から2020年10月28日までに適格性を評価した705例のうち、478例(治療前の平均HbA1c値7.9%[63mmol/mol]、年齢54.1[SD 11.9]歳、女性231例[48%]、糖尿病罹病期間4.7年、BMI 31.9kg/m2)を無作為化によりtirzepatide 5 mg(121例[25%])、tirzepatide 10 mg(121例[25%])、tirzepatide 15 mg(121例[25%])、プラセボ(115例[24%])に割り付けた。66例(14%)が試験薬を中止し、50例(10%)が早期に試験を中止した。40週時点で、HbA1cの治療前からの変化量、空腹時血糖、体重、HbA1cの目標値7.0%未満(<53mmol/mol)達成および5.7%未満(<39mmol/mol)達成について、tirzepatide全用量のプラセボに対する優越性が示された。tirzepatide 5mg群に1.87%(20 mmol/mol)、10mg群に1.89%(21mmol/mol)、15mg群に2.07%(23mmol/mol)の治療前からの平均HbA1c値低下がみられたが、それに対してプラセボ群に0.04%の増加(+0.4mmol/mol)がみられた。その結果、プラセボと比較した治療差の推定値は、tirzepatide 5mg群が-1.91%(-21mmol/mol)、10mg群が-1.93%(-21mmol/mol)、15mgが-2.11%(-23 mmol/mol)であった(いずれもP<0.0001)。tirzepatide群の方がプラセボ群よりもHbA1c目標値7.0%未満(<53 mmol/mol;87~92% vs 20%)および6.5%未満(<48mmol/mol;81~86% vs 10%)を達成した患者の割合が多く、tirzepatide群の31–52%およびプラセボ群の1%が目標値5.7%未満(<39mmol/mol)達成した。tirzepatideにより、用量依存性に7.0~9.5kgの体重減少がみられた。tirzepatide群に最も多くみられた有害事象は、軽度ないし中等度で一過性の消化管事象であり、悪心(12~18% vs 6%)、下痢(12~14% vs 8%)、嘔吐(2~6% vs 2%)などがあった。tirzepatide群には、臨床的に重要ではない低血糖(54mg/dL[3mmol/L]未満)または重度の低血糖は報告されなかった。プラセボ群に死亡が1件発生した。 【解釈】tirzepatideにより、低血糖リスクが上昇することなく、血糖コントロールおよび体重に強固な改善が認められた。安全性はGLP-1受容体作動薬のものと一致しており、2型糖尿病の治療にtirzepatide単剤療法を用いうる可能性を示唆するものである。 第一人者の医師による解説 低血糖を伴わずに血糖を正常化させることで心血管イベント低減を期待 篁 俊成 金沢大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学教授 MMJ. February 2022;18(1):13 現在臨床応用されているグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)は血糖降下作用と体重減少作用を有する。同じインクレチンであるグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)もインスリン分泌を促進し、視床下部の受容体を介して体重を減少させるが、2型糖尿病におけるインスリン分泌促進作用は明確でない。食事誘発性肥満モデルマウスでは、GLP-1とGIPの併用により、満腹感が増大し、甘みへの嗜好が減少した。 チルゼパチドはGIPおよびGLP-1の両受容体を刺激する合成ペプチドで、第2B相試験ではチルゼパチド(15 mg週1回皮下投与)はプラセボやGLP-1RAのデュラグルチドに比べ血糖と体重のコントロールで優位だったが、悪心など消化器系副作用の頻度も高かった。本論文は、消化器症状の忍容性を高める目的で、より低用量のチルゼパチドを2型糖尿病患者に投与し、血糖コントロール効果と安全性を検討した第3相 SURPASS-1試験の報告である。対象患者は5、10、15 mgのチルゼパチド群またはプラセボ群に割り付けられた。 その結果、40週の時点においてチルゼパチドの全群で、プラセボ群に比べ、HbA1c、空腹時血糖、体重、HbA1c 7.0%未満 お よ び5.7%未満達成率が有意に改善した。主要評価項目である40週でのベースラインからのHbA1c平均変化量は、チルゼパチド 5mg群-1.87%、10mg群-1.89%、15mg群-2.07%に対し、プラセボ群は+0.04%であった。チルゼパチドの全群で、プラセボ群に比べ、体重もより減少した。チルゼパチド群におけるHbA1c降下は20週でプラトーに達したが、体重減少は40週まで続いた。すべてのチルゼパチド用量群で、プラセボ群と比較し、総コレステロール、中性脂肪、HOMA-Rが有意に低下し、高比重リポ蛋白コレステロールが有意に上昇した。一方、有害事象に起因する試験薬中止率、有害事象が1件以上発現した患者の割合、総有害事象数に有意な群間差はなかった。チルゼパチドの主な有害事象は軽度~中等症の嘔気・下痢・嘔吐などの消化器症状であり、経過中に軽快した。消化器症状による試験薬中止率はチルゼパチド群で2~7%、プラセボ群で1%だった。両群ともに重度低血糖と膵炎の報告はなかった。 チルゼパチド群のHbA1c 7.0%未満達成率は87~92%で、他のGLP-1RA単独療法の既報値(週1回エキセナチド 63%、デュラグルチド 61~63%、セマグルチド 72~74%)を上回る。今回チルゼパチドの用量依存性がみられなかったのは、ほぼ正常レベルまで血糖降下が得られたためと思われる。GIP受容体作動薬の心血管への作用は検討段階であるが、チルゼパチドにより低血糖を伴わずに血糖を正常化させることで、心血管イベント低減が期待される。
SGLT2阻害薬は心不全を抑制するが 大血管症への効果は2次予防例に限られる
SGLT2阻害薬は心不全を抑制するが 大血管症への効果は2次予防例に限られる
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors Versus Glucagon-like Peptide-1 Receptor Agonists and the Risk for Cardiovascular Outcomes in Routine Care Patients With Diabetes Across Categories of Cardiovascular Disease Ann Intern Med. 2021 Nov;174(11):1528-1541. doi: 10.7326/M21-0893. Epub 2021 Sep 28. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ナトリウム・グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬とグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)は、2型糖尿病(T2D)と確立した心血管疾患(CVD)の患者を対象としたプラセボ対照試験で、いずれも心血管ベネフィットを示した。 【目的】SGLT2阻害薬とGLP-1 RAは、CVDを有するT2D患者と有しないCVD患者で差をつけて心血管ベネフィットに関連しているかを評価すること。 【デザイン】人口ベースコホート研究。 【設定】Medicareおよび米国の2つの商業請求データセット(2013年4月から2017年12月)。 【参加者】1:1の傾向スコアマッチしたCVDのある成人T2D患者およびない成人T2D患者(52 901人と133 139人のマッチペア)がSGLT2阻害剤対GLP-1 RA治療を開始。 【測定】主要アウトカムとして心筋梗塞(MI)や脳卒中の入院および心不全(HHF)による入院を挙げた。曝露前の共変量138個をコントロールして1000人年当たりのプールハザード比(HR)および率差(RD)を95%CIで推定した。 【結果】SGLT2阻害薬とGLP-1 RA療法の開始は、CVD患者におけるMIまたは脳卒中のリスクがわずかに低い(HR、0.90 [95% CI, 0.82 to 0.98]; RD, -2.47 [CI, -4.45 to -0.50])が、CVDのない患者では同等のリスク(HR, 1.07 [CI, 0.97 to 1.18]; RD, 0.38 [CI, -0.30 to 1.07])であった。SGLT2阻害薬とGLP-1 RA療法の開始は,CVD患者(HR,0.71 [CI,0.64~0.79]; RD,-4.97 [CI,-6.55~-3.39] )とCVDのない患者(HR, 0.69 [CI,0.56~0.85]; RD, -0.58 [CI, -0.])のベースラインのCVDと関係なくHHFリスク低減に関連していた。 【結論】SGLT2阻害薬とGLP-1製剤の使用は,CVDを有するT2D患者と有しないT2D患者でHHFリスクの一貫した低下と関連していたが,CVDを有する患者の方が絶対的な有益性が高かった。CVDの有無にかかわらず、T2D患者におけるMIや脳卒中のリスクには大きな違いはなかった。 第一人者の医師による解説 実臨床においてGLP-1受容体作動薬との比較がなされたが議論は続く 笹子 敬洋 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科助教 MMJ. April 2022;18(2):42 本論文に発表されたコホート研究は、米国の実臨床データを用いて、2型糖尿病においてNa+ /グルコース共役輸送担体2(SGLT2)阻害薬とグルカゴン様ペプチド -1(GLP-1)受容体作動薬が心血管イベントに及ぼす影響を、組み入れ前12カ月間の心血管イベントの有無(1次予防か2次予防か)で層別化し解析したものである。主要評価項目のうち、心筋梗塞・脳卒中による入院は、GLP-1受容体作動薬と比較し、SGLT2阻害薬によって全体としては抑制されず、2次予防でのみ抑制された。一方、心不全による入院は同薬の投与により、1次・2次予防にかかわらず抑制されたが、絶対リスクの低下幅は1次予防ではわずかであった。 このような実臨床のリアルワールドデータを用いた後ろ向きコホート研究は、前向き臨床試験の課題を補うものとして期待がかけられている。例えば、本研究のような糖尿病治療薬同士の直接比較は、前向きの介入試験では難しいであろう。著者らによれば、心不全に関するSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の直接比較は初めてとのことだが、両剤が腎機能に及ぼす影響については、リアルワールドデータを用いた先行研究が報告されている(1)。 その一方で本研究では、筆者らが以前他の研究について指摘したのと同様(2)、有害事象についての解析がほとんどなされていない。前向き臨床試験であれば効果のみならず安全性にも十分な配慮が求められるが、現状でのリアルワールドデータを用いた解析では必ずしもその限りでないことに留意されたい。例えば先述のような、1次予防におけるSGLT2阻害薬の心不全に対するわずかな効果が、潜在的な有害事象のリスクを上回るかどうかは不明である。 また本研究では、前向き臨床試験において多く用いられるintention-to-treat解析でなく、薬剤の中止・切り替えも考慮したas-treatedアプローチが採用されたが、その結果マッチング後に解析対象となったのは、1次予防で計26万例以上、2次予防でも計10万例以上に上る規模であったにもかかわらず、追跡期間の中央値はわずか約7カ月であった。このようなリアルワールドデータを用いた解析において、薬剤の治療効果を長期的に評価することは必ずしも容易ではないが(2)、それを改めて目の当たりにさせられる結果でもあった。 最後に、著者らも述べているように、この研究の組み入れは2017年までであり、セマグルチドなどのより新しい薬剤が含められていない。SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬との差が今後縮まっていく可能性も考えられるが、それを明らかにするには今しばらく時間がかかりそうである。 1. Xie Y, et al. Diabetes Care. 2020;43(11):2859-2869. 2. Sasako T, et al. Kidney Int. 2022;101(2):222-224.
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号)
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6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 mRNA-1273(モデルナワクチン)の小児に対する安全性、免疫原性、有効性は不明である。第2-3相試験を通して、小児(6~11歳)に対する安全性、第3相試験の若年成人(18~25歳)の免疫反応に対する非劣性、及びCOVID-19の感染頻度を確認した。The New England Journal of Medicine誌2022年5月26日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む COPDの急性増悪に対する硫酸マグネシウムの投与 硫酸マグネシウムは気管支拡張作用があり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪時の補助的な治療法として期待されている。11件のRCTを対象とし、硫酸マグネシウムの静脈内投与は、プラセボと比較して、入院数の減少、入院期間の短縮、および呼吸困難スコアの改善等に影響があるかを検討した。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2022年5月26日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む ヒト猿痘の臨床的特徴と管理:英国における後ろ向き観察研究 2018年から2021年の間に英国で診断されたサル痘の7人の患者における臨床的特徴、長期的なウイルス学的所見、および適応外抗ウイルス薬への反応を確認した。The Lancet. Infectious diseases誌2022年5月24日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 妊娠糖尿病と妊娠の有害事象:系統的レビューとメタアナリシス 妊娠糖尿病と、妊娠の有害転帰との関連を調べるため、1990年1月1日から2021年11月1日までの論文について、系統的レビューとメタ分析を行った。BMJ誌2022年5月25日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 2型糖尿病の第一選択薬として使用されたSGLT2阻害薬とメトホルミンの心血管系イベント比較:コホート研究 メトホルミンまたはSGLT2阻害薬の第一選択薬の使用に関連する心血管イベントリスクに関するエビデンスは限られている。米国の大規模な商業データベースとメディケアデータベースの請求データ(2013年4月から2020年3月)を用いて、コホート研究を行った。Annals of Internal Medicine誌2022年5月24日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号)
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運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する 身体運動はシナプス伝達の改善により精神障害の緩和に有効であるが、身体持久力トレーニングと神経順応の関連はまだ完全に解明されていない。本研究では、新たなエピジェネティック機構であるRNAのN6メチルアデノシン(m6A)修飾が、慢性拘束ストレスに対する回復力の向上に果たす役割について検討した。Advanced Science誌オンライン版6月1日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 妊娠中のCOVID-19ワクチン接種と乳児におけるSARS-CoV-2感染の発生率との関連性 妊娠中のCOVID-19ワクチン接種が、デルタ株・オミクロン株流行下(2021年9月1日~2022年4月1日)の生後4ヵ月までの乳児のCOVID-19リスク低減と関連しているかどうか、2021年9月~2022年2月にノルウェーで生まれたすべての出生児を対象にコホート研究が行われた。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2022年6月1日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 砂糖入り、人工甘味料入り、無糖のコーヒー摂取と全死亡率・癌関連死亡率・CVF関連死亡率の比較:大規模前向きコホート研究 これまでの観察研究では、コーヒー摂取と死亡リスク低下との関連が示唆されているが、これらの研究では、砂糖や人工甘味料を含むコーヒー摂取と含まないコーヒー摂取を区別していない。添加物の有無による影響を検討するため、17万1,616人を対象とした前向きコホート研究が行われた。Annals of Internal Medicine誌2022年5月31日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 性的接触を介したサル痘感染4例の疫学的、臨床的、ウイルス学的特徴 2022年5月以降、非流行国においてもサル痘の認められている。2022年5月17日~22日の間にイタリアで観察された、コンドームなしの性交を報告した若年成人男性のサル痘陽性者4例について、疫学的、臨床的、ウイルス学的特徴の報告が行われた。Eurosurveillance誌2022年6月号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 糖尿病予備軍・2型糖尿病患者におけるケトジェニックダイエットと地中海食のHbA1cに対する効果:無作為化クロスオーバー試験 ケトジェニックダイエットと地中海食は、3つの共通点(非でんぷん性野菜を接種し、添加糖・精製穀物を避ける)と3つの違い(豆類、果物、全粒粉の摂取有無)を有する低炭水化物食である。糖尿病予備軍・2型糖尿病患者の血糖コントロールおよび心臓代謝リスク因子への影響を比較した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2022年5月31日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号)
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サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 南ロンドンのプライマリケアおよびセカンダリケアからの紹介を伴う地域の重篤な感染症センターおよび関連する性的健康センターにおける、2022年5月~7月に確認されたサル痘患者197症例について、その臨床的特徴と症状についてのケースレポートは発表された。 BMJ誌2022年7月28日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 2型糖尿病患者に対する最適な運動タイミングは? 運動の代謝効果は、運動が行われる時間帯に依存する可能性があるといわれている。運動のタイミングは、2 型糖尿病男性の多組織メタボロームおよび骨格筋プロテオーム プロファイルに影響を及ぼすという仮説について検証が行われた。Metabolism誌オンライン版2022年7月28日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 老齢マウスの血液を若齢マウスに投与すると… 加齢は多くの慢性疾患における最大のリスク因子である。本研究では、雄マウスによる単一異時性血液交換法を用いて、老化マウスの血液が若齢マウスの細胞・組織の老化を誘導するか観察した。Nature Metabolism誌オンライン版2022年7月28日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む ”超加工食品”は認知症リスクを上げるか? 超加工食品(Ultra-Processed Foods:糖分や塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品。 保存料などを添加し、常温で保存できたり、日持ちを良くしてある食品)の消費と、うつ病、心血管疾患、全死亡などの健康上の有害な転帰とを関連付ける証拠が増えつつある。しかし、超加工食品と認知症との関連については、これまでよくわかっていなかった。英国バイオバンクにおいて超加工食品と認知症発症との関連が調査された。Neurology誌オンライン版2022年7月27日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 睡眠と高血圧・虚血性脳卒中との関連 英国バイオバンクに登録された高血圧症または脳卒中のない35万8,451名を対象に、日中の仮眠頻度と本態性高血圧症または脳卒中の発症率との関連を調査するとともに、この因果関係を検証するため、前向きコホート研究が実施された。Hypertension誌オンライン版2022年7月25日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
肥満症患者の体重減少に対するセマグルチドの有効性と安全性をリラグルチドおよびプラセボと比較:無作為化、二重盲検、プラセボおよびアクティブコントロール、用量設定、第 2 相試験
肥満症患者の体重減少に対するセマグルチドの有効性と安全性をリラグルチドおよびプラセボと比較:無作為化、二重盲検、プラセボおよびアクティブコントロール、用量設定、第 2 相試験
Efficacy and safety of semaglutide compared with liraglutide and placebo for weight loss in patients with obesity: a randomised, double-blind, placebo and active controlled, dose-ranging, phase 2 trial Lancet 2018 Aug 25 ;392 (10148 ):637 -649 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 肥満は公衆衛生上の大きな問題であり、体重管理のための新しい医薬品が必要とされている。そこで、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログのセマグルチドについて、リラグルチド及びプラセボと比較して、体重減少を促進する有効性と安全性を評価しました。 【方法】無作為化、二重盲検、プラセボ及び活性対照、多施設、用量設定、第2相試験を実施しました。本試験は、71の臨床施設を含む8カ国で行われました。対象者は、糖尿病のない、肥満度(BMI)30kg/m2以上の成人(18歳以上)です。56のブロックサイズで、参加者を各活性治療群(セマグルチド[0-05 mg、0-1 mg、0-2 mg、0-3 mg、または0-4 mg;1日0-05 mgで開始し4週間ごとに段階的に増加]またはリラグルチド[3-0 mg;1日0-6 mgで開始し週0-6 mgごとに増加])または適合プラセボ群(活性治療群と同じ注入量と増加スケジュール)に6対1の比率でランダムに割り付けました。すべての投与量は1日1回、皮下注射で投与されました。参加者と治験責任医師は、割り付けられた治療法についてマスキングされたが、目標投与量についてはマスキングされなかった。主要評価項目は、52週目の体重減少率であった。主要解析はintention-to-treat ANCOVA法により行われ、欠損データはプラセボ群から抽出された。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号はNCT02453711。 【FINDINGS】2015年10月1日から2016年2月11日の間に、957人がランダムに割り付けられた(有効治療群ごとに102~103人、プラセボプール群に136人が割り付けられた)。平均ベースライン特性は、年齢47歳、体重111-5kg、BMI39-3kg/m2などであった。体重データは、957人中891人(93%)から52週目に入手できた。推定平均体重減少率は、プラセボ群-2-3%に対し、セマグルチド群-6-0%(0-05mg)、-8-6%(0-1mg)、-11-6%(0-2mg)、-11-2%(0-3mg)、-13-8%(0-4mg)であった。セマグルチド群はプラセボ群に対してすべて有意であり(未調整p≦0-0010)、多重試験で調整後も有意であった(p≦0-0055)。セマグルチド0~2mg以上とリラグルチドの平均体重減少率は、いずれも有意であった(-13~8% vs -11~2% vs -7~8%)。推定体重減少率10%以上は、プラセボ投与群では10%、セマグルチド0-1mg以上投与群では37~65%に認められました(p<0-0001 vs プラセボ)。セマグルチドの全用量において、新たな安全性の懸念はなく、概ね良好な忍容性を示しました。最も一般的な有害事象は、GLP-1受容体作動薬で以前に見られたように、吐き気を主とする用量に関連した消化器症状であった。 【解釈】食事療法および身体活動に関するカウンセリングとの併用において、セマグルチドは52週間にわたり忍容性が高く、すべての用量でプラセボと比較して臨床的に適切な体重減少が認められた。 【FUNDING】Novo Nordisk A/S. 第一人者の医師による解説 糖尿病含む肥満関連疾患の発症抑制にも期待 脇 裕典 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科講師 MMJ.February 2019;15(1):21 新しいグルカゴン様ペプチド -1(GLP-1)受容体アゴニストであるセマグルチドは現在、週1回 注射薬が日本で2型糖尿病治療薬として承認されている。他のGLP-1受容体アゴニストと同様、セマグルチドは2型糖尿病の改善のみならず、体重減少効果が知られている。本研究は、オーストラリ ア、欧州、北米の2型糖尿病非合併の成人肥満(BMI 30kg/m2以上)患者957人を対象にセマグルチド 1日1回52週間投与による体重減少率を主要評 価項目に定め、体重減少効果と安全性に関してリラグルチドおよびプラセボと比較した多施設共同無 作為化二重盲検用量反応第2相試験である。 対象者の平均年齢 は47歳、平均体重 は111.5 kg、BMIは39.3kg/m2。プ ラ セ ボ 群 で は 体重 減少(減少率)は-2.48kg(-2.3%)であるの に 対 し、セ マ グ ル チ ド 0.05、0.1、0.2、0.3、 0.4mg群 で は そ れ ぞ れ -6.66kg(-6.0%)、 -9.34kg(-8.6%)、-12.30kg(-11.6%)、 -12.45kg( -11.2 %)、-15.15kg( -13.8 %) で あ り、そ の 差 は 有意 で あ っ た(P<0.001)。 10%以上の体重減少率がみられた患者はプラセ ボ 群10%に 対してセ マグ ル チド 群(0.1mg以 上)37~65%で差はいずれも有意であった(P< 0.0001)。セマグルチドの体重減少効果は52週 間にわたって観察された。 リラグルチド 3mg群との比較では、セマグル チ ド 群(0.2mg以上 )の 体重減少率( -13.8 ~ -11.2 %)は リ ラ グ ル チ ド 群 の 体重減少率 (-7.8%)よりも有意に大きかった(P≦0.05)。 主な副作用である嘔気の頻度はプラセボ群18%に 対し、セマグルチド群(0.05~0.4mg)で31~ 48%と高いが、リラグルチド 3mg群では45%で 忍容性は同程度であると考えられた。 本試験では、摂取カロリーで500 kcalの減少と 最低週150分の運動を指導されており、食事・運 動療法の併用が重要である可能性には留意したい。 セマグルチドは2型糖尿病の臨床試験(SUSTAIN 6)において心血管イベント(3 point‒MACE)を 有意に減少させたことが注目されている(1)。今回、 糖尿病非合併肥満患者の体重コントロールに有効な結果が示されたことから、糖尿病を発症していない肥満者において糖尿病を含む関連疾患の発症 抑制効果を有するかもしれない。現在、肥満症治療 薬としての第3相試験が進行中で、今後の結果が 期待される。 1. Marso SP et al. N Engl J Med. 2016;375(19):1834-1844.
2型糖尿病および心血管疾患患者におけるアルビグルチドおよび心血管アウトカム(Harmony Outcomes):二重盲検無作為化プラセボ対照試験
2型糖尿病および心血管疾患患者におけるアルビグルチドおよび心血管アウトカム(Harmony Outcomes):二重盲検無作為化プラセボ対照試験
Albiglutide and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes and cardiovascular disease (Harmony Outcomes): a double-blind, randomised placebo-controlled trial Lancet 2018 Oct 27 ;392 (10157 ):1519 -1529 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬は、化学構造、作用時間、臨床転帰への影響に違いがある。2型糖尿病における週1回投与のアルビグルチドの心血管効果については不明である。アルビグルチドの心血管死、心筋梗塞、脳卒中の予防に関する安全性と有効性を明らかにすることを目的とした。 【方法】28か国610施設で二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施した。40歳以上の2型糖尿病と心血管疾患を有する患者(1:1の割合)を、標準治療に加え、アルビグルチドの皮下注射(30~50mg、血糖反応と忍容性に基づく)または同量のプラセボを週1回受ける群に無作為に割り付けました。治験責任医師は、対話型音声応答システムまたはウェブ応答システムを用いて治療割り付けを行い、患者およびすべての治験責任医師は治療割り付けをマスキングされました。主要評価項目である心血管死、心筋梗塞、脳卒中の初発について、アルビグルチドはプラセボに対して非劣性であると仮定し、intention to treatの集団で評価した。ハザード比の95%信頼区間の上限が1-30未満で非劣性が確認された場合、優越性に関するクローズドテストが事前に指定された。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号はNCT02465515である。 【FINDINGS】2015年7月1日から2016年11月24日の間に患者をスクリーニングした。10 793名がスクリーニングされ、9463名が登録され、4731名がアルビグルチド投与群、4732名がプラセボ投与群に無作為に割り付けられた。2017年11月8日、611の主要評価項目と少なくとも1~5年のフォローアップ中央値が発生したと判断され、参加者は最終診察と試験治療の中止のために戻り、最後の患者の診察は2018年3月12日に行われた。これらintention-to-treat集団である9463人の患者は、中央値1~6年の期間、主要評価項目を評価された。主要複合転帰は、アルビグルチド群では4731例中338例(7%)に100人年当たり4~6件の発生率で、プラセボ群では4732例中428例(9%)に100人年当たり5~9件の発生率(ハザード比0-78、95%CI 0-68~0-90)で、アルビグルチドがプラセボに対して優位であるとした(非劣性のp<0-0001;優位のp=0-0006)。急性膵炎(アルビグルチド群10例、プラセボ群7例)、膵臓がん(アルビグルチド群6例、プラセボ群5例)、甲状腺髄様がん(両群0例)、その他の重篤な有害事象発生率は両群間に差はなかった。また、試験薬の割り付けをマスキングした治験責任医師が治療に関連すると評価した死亡例はプラセボ群で3例(1%未満)、アルビグルチド群で2例(1%未満)であった。 【解釈】2型糖尿病と心血管疾患を有する患者において、アルビグルチドはプラセボに比べ主要有害心疾患に関して優れていることが示された。したがって、エビデンスに基づくグルカゴン様ペプチド1受容体作動薬は、2型糖尿病患者における心血管イベントのリスクを低減するための包括的戦略の一部として考慮されるべきである。 資金提供】グラクソ・スミスクライン社。 第一人者の医師による解説 GLP-1受容体作動薬の間でも抑制効果には差 要因ははっきりせず 山田 祐一郎 秋田大学大学院医学系研究科内分泌・代謝・老年内科学教授 MMJ.April 2019;15(2) 米食品医薬品局(FDA)が新規糖尿病治療薬の承認要件として心血管イベント(MACE)を増やさないエビデンスも要求しているため、シタグリプチンなどのDPP-4阻害薬、エンパグリフロジンなど のSGLT2阻害薬、リキシセナチドなどのGLP-1 受容体作動薬など新しい糖尿病治療薬では、MACE を増やさないことを明らかにするため、大規模臨床試験が実施されてきた。その結果、DPP-4阻害薬 がMACEを増やさないこと(非劣性)やSGLT2阻害薬がMACEを減らすこと(優越性)をクラスエフェクトと考えていいような結果が出ている。 GLP-1受容体作動薬については、リキシセナチ ドやエキセナチドはMACEを増やさないが、減らすこともないのに対し、リラグルチド (1)やセマグ ルチド (2)はMACEを有意に減らすことが発表され、 GLP-1受容体作動薬がクラスエフェクトとして MACEを減らすかどうかはっきりしていない。新たなGLP-1受容体作動薬アルビグルチドを用いた 大規模臨床試験(Harmony Outcomes)の結果が昨年の欧州糖尿病学会(EASD)で発表され、本論文で報告された。 アルビグルチドは、ヒト GLP-1をベースにし、 アルブミンとの遺伝子融合によって、1週間1回の 投与で、持続的な効果が期待される薬剤である。 40歳以上、虚血性心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾 患を有する2型糖尿病患者に、アルビグルチドあるいはプラセボを投与した上で、各国ガイドラインに設定された血糖コントロール目標値に達しない場合、適宜他の糖尿病治療薬の追加や調整を可としている。中央値1.6年の研究期間で、主要評価項 目である最初のMACE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中) 発生率は、アルビグルチド群で100人・年あたり4.6 件とプラセボ群の5.9件と比較して有意に低下していることが示された。特に、心筋梗塞への効果があったことは、リラグルチドなどの結果に合致する。 これらの結果から、ある種のGLP-1受容体作動薬を心血管イベントを有する2型糖尿病患者に投与すると、新たな心血管イベント発症を抑制する効果のあることがあらためて示されたのである。薬剤間で抑制効果に差がある要因として、対象集団の 特性の違い、GLP-1受容体作動薬の基本骨格(GLP-1 対 exendin-4)、作用時間(短時間 対 長時間)などが想定されるが、いまだはっきりしていない。 最後に、アルビグルチドは、一部の国ではすでに上市されていたが、2018年までに経営上の理由で 販売を中止すると報じられた。日本では未販売であり、血糖コントロールや心血管イベントの抑制 にエビデンスがあるアルビグルチドが使えないのは残念である。 1. Marso, SP, et al. N Engl J Med. 2016;375(4):311-322. 2. Marso, SP, et al. N Engl J Med. 2016;375(19):1834-1844.
ローテーションによる夜勤勤務と不健康な生活習慣の遵守が2型糖尿病のリスクを予測する:米国の女性看護師を対象とした2つの大規模コホートからの結果
ローテーションによる夜勤勤務と不健康な生活習慣の遵守が2型糖尿病のリスクを予測する:米国の女性看護師を対象とした2つの大規模コホートからの結果
Rotating night shift work and adherence to unhealthy lifestyle in predicting risk of type 2 diabetes: results from two large US cohorts of female nurses BMJ 2018 Nov 21 ;363 :k4641 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】2型糖尿病リスクに対する交代制夜勤勤務期間と生活習慣因子の関連を前向きに評価し,交代制夜勤勤務のみ,生活習慣のみ,およびそれらの相互作用に対するこの関連を定量的に分解する。 【デザイン】前向きコホート研究。看護師健康調査(1988~2012年)および看護師健康調査II(1991~2013年)。 【参加者】ベースライン時に2型糖尿病、心血管疾患、がんのない女性143 410名。 【曝露】回転夜勤勤務は、その月の日勤および夜勤に加えて、月に3回以上の夜勤を行うことと定義した。不健康な生活習慣とは、現在の喫煙、1日30分以下の中・高強度の身体活動、Alternate Healthy Eating Indexスコアの下位3/5の食事、25以上の肥満度などであった。 【主なアウトカム評価】2型糖尿病の発症例は、自己申告により確認され、補足的な質問票により検証された。 【 結果】22~24年の追跡期間中に、10,915例の2型糖尿病が発症した。2型糖尿病の多変量調整ハザード比は、交代制夜勤勤務期間の5年刻みで1.31(95%信頼区間1.19~1.44)、不健康な生活習慣因子(喫煙歴、食事の質の低さ、身体活動の低さ、過体重または肥満)で2.30(1.88~2.83)であった。2型糖尿病と回転夜勤の5年ごとの増分と不健康な生活習慣因子ごとの共同関連については、ハザード比は2.83(2.15~3.73)で、有意な相加的相互作用が認められた(相互作用のP<0.001)。共同研究の割合は,交代制夜勤勤務のみで17.1%(14.0%~20.8%),不健康な生活習慣のみで71.2%(66.9%~75.8%),それらの相加的な相互作用で11.3%(7.3%~17.3%)であった。 【結論】女性看護師では,交代制夜勤勤務と不健康な生活習慣の両方が2型糖尿病の高いリスクと関連していた。回転夜勤勤務と不健康な生活習慣の組み合わせによる過剰リスクは,それぞれの要因に関連するリスクの加算よりも高かった。これらの知見は、2型糖尿病のほとんどの症例は健康的なライフスタイルを守ることで予防できることを示唆しており、その効果は交代制夜勤者においてより大きい可能性がある。 第一人者の医師による解説 昼夜交代勤務者 健康管理と生活習慣の改善が特に重要 山口 聡子(特任助教)/門脇 孝(特任教授) 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・生活習慣病予防講座 MMJ.April 2019;15(2) 不健康な生活習慣が2型糖尿病発症のリスクで あることは広く知られているが、近年、昼夜交代勤務の労働者で、2型糖尿病発症リスクが高いことが 報告されてきた(1)。一方、昼夜交代勤務の労働者では喫煙頻度が高く、食生活も異なるとの報告もあり、 生活習慣と昼夜交代勤務が独立した危険因子であるかは明らかでなかった。 今回、米国の看護師を対象とした大規模な前向きコホート研究により、昼夜交代勤務と不健康な生活習慣は2型糖尿病発症の独立した危険因子であり、さらに、交互作用があることが示された。Nurses’ Health Study(NHS)、Nurses’ Health Study II に参加した女性看護師143,410人(ベースライン: NHS 1988年に平均50歳代、NHS II 1991年に平均30歳代)を22~24年間追跡し、10,915人 に2型糖尿病の発症を認めた。 生活習慣の調査は2~4年ごとに実施され、喫煙、運動不足( 中等度以上 の 身体活動30分 /日未 満)、不健康な食生活(Alternate Healthy Eating Indexスコアが下位5分の3)、肥満(BMI 25以上) の4因子を不健康な生活習慣と定義した。昼夜交代 勤務歴のない対照群と比較して、昼夜交代勤務(日 勤・準夜勤に加えて月3回以上の夜勤)の累積期間 5年ごとの2型糖尿病発症の補正後ハザード比(HR) は1.31(95 % CI, 1.19~1.44)、生活習慣4因 子の1因子ごとのHRが2.30(1.88~2.83)であった。昼夜交代勤務と生活習慣因子を合わせたHRは 2.83(2.15~3.73)で、有意 な 交互作用(P< 0.001)を認めた。交互作用に起因する相対超過 リ ス ク(RERI)は0.20(0.09~0.48)で、交互 作用の寄与割合は、昼夜交代勤務単独17.1%(14.0 ~20.8%)、生活習慣因子単独71.2%(66.9~ 75.8%)に対して、11.3%(7.3~17.3%)であった。 昼夜交代勤務が単独でも2型糖尿病発症の危険因子となることに加えて、生活習慣との間に交互作用があることを初めて明らかにした意義は大きい。昼夜交代勤務の労働者では、心血管疾患や乳がんなどのリスクが高いことも報告されており(2)、(3)、 健康管理が特に重要である。また、交互作用があることから、昼夜交代勤務の労働者では生活習慣の改善が特に重要であると言える。今後、昼夜交代勤務による発症リスク上昇のメカニズムの解明が待たれる。また、医療現場でも労務管理や産業医による介入など予防のための取り組みが一層重要になるであろう。 1. Pan A, et al. PLoS Med. 2011;8(12):e1001141. 2. Vetter C, et al. JAMA. 2016;315(16):1726-1734. 3. Wegrzyn LR, et al. Am J Epidemiol. 2017;186(5):532-540.
2型糖尿病および慢性腎臓病患者におけるアトラセンタンと腎イベント(SONAR):二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験。
2型糖尿病および慢性腎臓病患者におけるアトラセンタンと腎イベント(SONAR):二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験。
Atrasentan and renal events in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease (SONAR): a double-blind, randomised, placebo-controlled trial Lancet 2019 May 11 ;393 (10184):1937 -1947. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】2型糖尿病患者に対して、選択的エンドセリンA受容体拮抗薬であるアトラセンタンを低用量で短期投与すると、有意なナトリウム貯留を引き起こすことなくアルブミン尿が減少する。我々は、主要な腎アウトカムに対するアトラセンタン治療の長期的効果を報告する 【METHODS】我々は、41カ国の689施設で二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施した。対象は18~85歳の成人で、2型糖尿病、体表面積1~73m2あたりの推定糸球体濾過率(eGFR)25~75mL/min、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)300~5000mg/gで、レニン-アンジオテンシン系の最大投与期間または忍容性のあるレニン-アンジオテンシン系阻害薬を4週間以上投与された患者であった。無作為群に割り付けられる前の濃縮期間に、参加者にはアトラセンタン0-75mgを1日1回経口投与した。濃縮期間中にUACRが30%以上低下し、実質的な体液貯留が認められなかった者(反応者)を二重盲検治療期間に含めた。反応者は、アトラセンタン0-75mgを1日1回経口投与する群とプラセボ投与する群のいずれかに無作為に割り付けられた。すべての患者と治験責任医師は、治療の割り付けをマスクした。主要エンドポイントは、すべての反応者の意図的治療集団における血清クレアチニンの倍増(30日以上持続)または末期腎疾患(1-73m2あたりのeGFRが15mL/min未満、90日以上持続、90日以上の慢性透析、腎移植、または腎不全による死亡)の複合値としました。安全性は、割り当てられた試験治療を少なくとも1回投与されたすべての患者さんで評価されました。本試験はClinicalTrials. gov、番号NCT01858532に登録されている。 【FINDINGS】2013年5月17日から2017年7月13日までの間に、11人の患者がスクリーニングされた;5117人が濃縮期間に入り、4711人が濃縮期間を終了した。このうち、2648人の患者が奏効し、アトセンタン群(n=1325)またはプラセボ群(n=1323)に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は2-2年(IQR 1-4-2-9)であった。アトラセンタン群1325例中79例(6-0%)、プラセボ群1323例中105例(7-9%)に主要複合腎エンドポイントイベントが認められた(ハザード比[HR]0-65[95%CI 0-49-0-88]、p=0-0047)。これまでエンドセリン受容体拮抗薬に起因するとされてきた体液貯留と貧血の有害事象は、プラセボ群よりもアトセンタン群の方が頻度が高かった。心不全による入院は、アトラセンタン群では1325人中47人(3-5%)、プラセボ群では1323人中34人(2-6%)に認められました(HR 1-33 [95%CI 0-85-2-07]; p=0-208)。アトラセンタン群58例(4-4%)、プラセボ群52例(3-9%)が死亡した(HR 1-09 [95%CI 0-75-1-59]; p=0-65)。 【INTERPRETATION】アトラセンタンは、有効性と安全性を最適化するために選択された糖尿病および慢性腎臓病患者において、腎イベントのリスクを低下させた。これらのデータは、末期腎疾患を発症するリスクの高い2型糖尿病患者の腎機能を保護するための選択的エンドセリン受容体拮抗薬の潜在的な役割を支持している 【FUNDING】AbbVie. 第一人者の医師による解説 有害事象を最小限にし 有効性維持する治療法開発を期待 南学 正臣 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科教授 MMJ.August 2019;15(4) 2019年4月に、筆者がプログラム委員長を務めた 国際腎臓学会総会(WCN 2019)が、オーストラリアのメルボルンで開催された。学会の目玉は、late-breaking clinical trial sessionで発表されたSONAR研究とCREDENCE研究で、このセッションは全世界にライブストリーミングで中継し、SONAR研究はLancetに、CREDENCE研究は New England Journal of Medicineに発表とともに掲載され、大きな反響を呼んだ(1)。 SONAR研究は、AbbVie社がスポンサーとなって行った選択的エンドセリン A受容体拮抗薬アトラセンタンの二重盲検多施設ランダム化比較試験である。本試験では、アトラセンタンに短期的に反応した患者(体液貯留なくアルブミン尿が30%以上減少)における長期的な有効性と安全性をみる enrichment designが採用され、eGFR 25~75 mL/分 /1.73m2 , 尿 ア ル ブ ミ ン /Cr比 300~ 5,000mg/g Crの2型糖尿病患者が組み入れられた。主要エンドポイントは血清クレアチニン倍化と末期腎不全の複合エンドポイントとした。 Enrichment phaseを完遂した患者4,711人のうち2,648人がresponderであった。本研究は主要アウトカムイベント数が当初の予想より少ないということでスポンサー企業が研究期間の途中で中止を決定した。アトラセンタン群(n=1,325) では6.0%(79人)、プラセボ群(n=1,323)で は7.9%(105人)が主要エンドポイントに到達した(相対リスク , 0.65;95%信頼区間[CI], 0.49 ~0.88;P=0.0047)。しかし、体液貯留 および貧血はアトラセンタン群に多く認められた(体液貯留:36.6% 対 32.3%[P=0.022]、貧血: 18.5%対10.3%[P<0.0001])。 有害事象を理由にスポンサー企業は本薬物の糖尿病性腎臓病(DKD)をターゲットとした開発を中止したが、イベント数が予想より少なかったにもかかわらず統計学的に有意な効果が認められており、有害事象を最小限にして有効性を維持できるような治療法の開発が期待される。 1. Nangaku M. Kidney Int. 2019;96(1):2-4.