「胆嚢炎」の記事一覧

2型糖尿病治療でのDPP-4阻害薬投与 胆嚢炎のリスク上昇に関連
2型糖尿病治療でのDPP-4阻害薬投与 胆嚢炎のリスク上昇に関連
Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and gallbladder or biliary disease in type 2 diabetes: systematic review and pairwise and network meta-analysis of randomised controlled trials BMJ. 2022 Jun 28;377:e068882. doi: 10.1136/bmj-2021-068882. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [目的]ジペプチジル ペプチダーゼ 4 阻害剤と胆嚢または胆道疾患との関連を調べること。 [設計]システマティック レビューとペアワイズおよびネットワーク メタ分析。 [データ ソース]PubMed、EMBASE、Web of Science、CENTRAL の開始から 31 年まで2021 年 7 月。[適格基準]ジペプチジル ペプチダーゼ 4 阻害剤、グルカゴン様ペプチド 1 受容体作動薬、およびナトリウム - グルコース共輸送体 2 阻害剤を投与された成人 2 型糖尿病患者を対象に、プラセボまたは他の糖尿病治療薬と比較したランダム化比較試験。 [主な結果の測定値] 胆嚢または胆道疾患、胆嚢炎、胆石症、および胆道疾患の複合。各アウトカムのエビデンスの質は、Grading of Recommendations、Assessment、Development and Evaluations フレームワーク (GRADE) アプローチを使用して評価されました。メタ分析では、プールされたオッズ比と 95% の信頼区間が使用されました。プラセボまたは非インクレチン薬と比較して、ジペプチジル ペプチダーゼ 4 阻害剤は、胆嚢または胆道疾患の複合のリスク増加と有意に関連していた (オッズ比 1.22 (95%信頼区間 1.04 ~ 1.43); リスク差 11 (2 ~ 21) ) および胆嚢炎 (オッズ比 1.43 (1.14 ~ 1.79); リスク差 15 (5 ~ 27) 10,000 人年あたりのイベント数が多い) ですが、胆石症および胆道疾患のリスクはありません。この関連は、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤治療の期間が長い患者で観察される傾向がありました。 184件の試験のネットワークメタ分析では、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤は、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害剤と比較して胆嚢または胆道疾患と胆嚢炎の複合体のリスクを増加させたが、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストとは比較しなかった。 [結論]ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤は、無作為対照試験で胆嚢炎のリスクを増加させ、特に治療期間が長くなると、臨床現場で医師の注意が必要になります.[システマティックレビュー登録] PROSPERO CRD42021271647. 第一人者の医師による解説 インクレチン関連薬に共通する有害事象の可能性 長期投与例で注意が必要 三好建吾、青山倫久(特任講師) 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科 MMJ.February 2023;19(1):19 ジペプチジルペプチダーゼ 4(DPP-4)阻害薬は経口2型糖尿病治療薬として、特に日本ではインスリン分泌低下を主病態とする患者が欧米よりも多いことから、広く用いられている(1)。DPP-4阻害薬はDPP-4の活性を阻害し、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)およびグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)の活性を上昇させることで血糖降下作用を発揮するが、GLP-1およびGIPの両者は胆嚢の運動に影響を与えるとの報告がなされていることから、胆嚢・胆道疾患のリスク上昇が懸念されていた。GLP-1はコレシストキニンの分泌抑制を介して胆嚢の運動を阻害する作用があり(2)、GLP-1受容体作動薬では胆嚢・胆道疾患のリスク上昇が報告されている(3)。 本研究ではDPP-4阻害薬と胆嚢・胆道疾患の関連を調査するため、系統的レビュー、ペアワイズメタ解析、ネットワークメタ解析を行っている。82のランダム化比較試験を対象とし、ペアワイズメタ解析に含まれた患者は104,833人であった。DPP-4阻害薬はプラセボまたはインクレチン関連薬以外の治療薬と比較し、胆嚢・胆道疾患の複合アウトカムのリスクはオッズ比1.22(95% CI, 1.04~1.43)、リスク差11人 /1万人・年(2~21)、胆嚢炎についてもオッズ比1.43(1.14~1.79)、リスク差15人 /1万人・年(5~27)と有意なリスク上昇がみられた。一方、胆石症および胆道疾患に限ると有意な関連はみられなかった。また、胆嚢・胆道疾患のリスク上昇は長期(26週間以上)投与群でのみ認められ、投与期間を4群に分けた解析でも投与期間が長い群ほどリスクが上昇する傾向が認められた。さらに184試験を対象としたネットワークメタ解析では、DPP-4阻害薬はNa+/グルコース共役輸送担体(SGLT)2阻害薬やその他の糖尿病治療薬と比較し胆嚢・胆道疾患と胆石症の複合リスクが上昇したが、GLP-1受容体作動薬との比較ではリスクは上昇せず同等であった。 DPP-4阻害薬が上市され10年以上が経過し、広く用いられる薬剤であるがゆえに、長期投与されている患者も多いと考えられる。良好な安全プロファイルを持っていると考えられているが、これまでにも水疱性類天疱瘡や急性膵炎、心不全などとの関連が指摘されてきた。本研究はDPP-4阻害薬の使用について、特に治療期間の長い場合に胆嚢炎のリスクを上昇させる可能性を示しており、一般臨床においても胆嚢炎のリスクを認識したうえでの投与と患者への注意喚起を行う必要がある。 1. Bouchi R, et al. J Diabetes Investig. 2022;13(2):280-291. 2. Rehfeld JF, et al. Scand J Gastroenterol. 2018;53(12):1429-1432. 3. He L, et al. JAMA Intern Med. 2022;182(5):513-519.