「肥満症」の記事一覧

スウェーデンの肥満者研究の肥満手術後の平均余命
スウェーデンの肥満者研究の肥満手術後の平均余命
Life Expectancy after Bariatric Surgery in the Swedish Obese Subjects Study N Engl J Med. 2020 Oct 15;383(16):1535-1543. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】肥満があると平均余命が短くなる。肥満手術によって死亡の長期的相対リスクが低下することが知られているが、平均余命にもたらす効果が明らかになっていない。 【方法】Gompertz比例ハザード回帰モデルを用いて、前向き対照スウェーデン肥満者(SOS)研究で肥満手術を施行した患者(手術群)および通常の肥満治療を実施した患者(対照群)、一般集団から抽出した無作為標本となるSOS参照研究の参加者(参照コホート)で死亡率と平均余命を比較した。 【結果】2007例を手術群、2040例を対照群に組み入れ、1135例を参照コホートに組み入れた。解析時点(2018年12月31日)で、死亡率の追跡期間中央値は、手術群24(四分位範囲22~27)年、対照群22(21~27)年であり、試験参加者の99.9%から死亡に関するデータが入手できた。SOS参照コホートでは、追跡期間中央値は20(四分位範囲10~21)年であり、参加者の100%から死亡に関するデータが入手できた。手術群の457例(22.8%)および対照群の539例(26.4%)が死亡した(ハザード比0.77、95%信頼区間[CI]0.68~0.87、P<0.001)。対応するハザード比は、心血管疾患による死亡で0.70(95%CI 0.57~0.85)、がんによる死亡で0.77(同0.61~0.96)であった。手術群の調整後平均余命中央値は、3.0年(95%CI~4.2)であり、対照群より長かったが、一般集団より5.5年短かった。術後90日以内の死亡率は0.2%であり、手術群の2.9%に再手術を施行した。 【結論】肥満手術を施行した肥満患者で、通常の肥満治療より平均余命が長くなった。一般集団と比べると、両群ともに死亡率がなお高かった。 第一人者の医師による解説 遺伝マーカーや手術反応性マーカーの特定で 減量手術実施判断への活用を期待 門脇 孝 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院院長 MMJ. April 2021;17(2):51 Swedish Obese Subjects(SOS)研究は、高度肥満症に対する減量手術の前向き長期追跡成績を報告している世界で代表的な減量手術研究の1つである。2007年には、減量手術後平均10.9年の追跡データの解析により死亡率が29%低下したことを発表している。しかし、最近の後ろ向き研究の成績では、減量手術を受けた人の死亡率は一般人口に比べ依然として高率であることが指摘されている。 本研究ではSOS研究の肥満患者で減量手術を受けた群と通常治療を受けた対照群の20年以上の前向き追跡で得られた死亡率をほぼ同年代の一般人口の死亡率と比較した。その結果、減量手術群の死亡率は、通常治療群に対しハザード比0.77と低下し、心血管死ではハザード比0.70、がん死ではハザード比0.77であった。減量手術群では、通常治療群に比べ3.0年の余命延長が認められたが、一般人口との比較では5.5年短命であった。また、90日の周術期死亡率は0.2%であったが、再手術を受けた患者の死亡率は2.9%であった。 本研究は、20年以上の前向き追跡調査の結果、減量手術が心血管死とがん死を減少させることを示した。一方、高度肥満者に通常治療が行われた場合の平均余命が一般人口に比べ約8年短いこと、減量手術によって延長する平均余命は現在のところ約3年であることが明らかとなった。この平均余命の延長幅は、SOS研究のように高度肥満に加え重篤な併発症を有する患者を含む高リスク群における結果で、他の患者集団にそのまま当てはまるものではないことに注意する必要がある。 本研究の結果は、最近発表された北欧5カ国の減量手術後の平均余命が一般人口に比べ依然として短いという結果(1)と矛盾しない。平均余命が依然として短い理由として、減量手術後も一般人口よりはBMI高値であること、代謝異常がすでに術前に大血管や細小血管の不可逆的障害を起こしている場合があること、手術に伴う合併症、減量手術群で増加するアルコール依存症や自殺、転倒・外傷などの要因が関与していると考えられる。 本研究では、減量手術が平均余命延長の観点から特に有益なサブグループを特定する試みを行ったが、特定することはできなかった。最近では、肥満そのものやエネルギーバランスの変化に対する体重や体組織の変化が遺伝的に規定されていることが明らかとなっている。今後、これらの研究により、遺伝マーカーや手術反応性マーカーが特定され、減量手術を行うか否かの決定に活用されることが期待される。 1. Kauppila JH, et al. Gastroenterology. 2019;157(1):119-127.e1.
2型糖尿病寛解を目的とした低炭水化物食および超低炭水化物食の有効性および安全性 既掲載・未掲載を問わない無作為化試験データの系統的レビュー
2型糖尿病寛解を目的とした低炭水化物食および超低炭水化物食の有効性および安全性 既掲載・未掲載を問わない無作為化試験データの系統的レビュー
Efficacy and safety of low and very low carbohydrate diets for type 2 diabetes remission: systematic review and meta-analysis of published and unpublished randomized trial data BMJ. 2021 Jan 13;372:m4743. doi: 10.1136/bmj.m4743. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】2型糖尿病患者に用いる低炭水化物食(LCD)と超低炭水化物食(VLCD)の有効性と安全性を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビューおよびメタ解析。 【データ入手元】開始から2020年8月25日までのCENTRAL、Medline、Embase、CINAHL、CABおよび灰色文献。 【試験選択】2型糖尿病成人患者を対象に、12週間以上のLCD(炭水化物1日130g未満または1日の総摂取カロリー2000kcal当たりに占める炭水化物の割合26%未満)およびVLCD(1日の総摂取カロリーに占める炭水化物の割合10%未満)を評価した無作為化試験を適格とした。 【データ抽出】糖尿病寛解(HbA1c 6.5%未満または空腹時血糖7.0nmol/L未満、糖尿病治療薬の使用問わず)、体重減少、HbA1c、空腹時血糖および有害事象を主要評価項目とした。健康関連のQOLおよび生化学的データを副次評価項目とした。全論文および転帰を個別に抽出し、追跡6カ月時および12カ月時のバイアスリスクおよびGRADEシステムを用いて根拠の確実性を評価した。ランダム効果メタ解析を用いて、推定リスクと95%信頼区間を算出した。臨床的重要性を明らかにするために事前に決定した最小重要差に従って転帰を評価し、バイアスリスクおよび事前に設定した下位集団7群を基に異質性を調べた。交互作用の有意性検定を用いて評価したあらゆる下位集団の効果を5点の信頼性チェックリストの対象とした。 【結果】検索で、文献1万4759編と試験23件(1357例)を特定し、評価項目の40.6%をバイアスリスクが低いと判定した。6カ月時、対照食と比べると、LCDの糖尿病寛解率(HbA1c 6.5%未満と 定義)が高かった(133例中76例(57%)v 131例中41例(31%)、リスク差0.32、95%信頼区間0.17~0.47、試験8件、264例、I2=58%)。一方で、HbA1c 6.5%未満かつ治療薬不使用を寛解の定義とすると、効果量が小さく、有意性がなくなった。信用度の基準を満たした下位集団の評価から、インスリン使用者を含む試験でLCDの寛解が著明に低下することが示唆された。12カ月時の寛解に関するデータが少なく、効果量が小さかったり、糖尿病リスクがわずかに上昇したりと幅があった。6カ月時に体重減少、トリグリセリドおよびインスリン感受性で臨床的に重要な大幅な改善が見られたが、12カ月時に消失した。信用性があると考えられた下位集団の評価を基にすると、VLCDは、制限が弱いLCDよりも6カ月時の体重減少の有効性が低かった。しかし、この効果は食事法の遵守で説明できた。つまり、遵守率が高いVLCD患者では、遵守率の低いVLCD患者を検討した試験よりも臨床的に重要な体重減少が見られた。6カ月時のQOLに有意差はなかったが、12カ月時に、臨床的に重要ではあるが有意性がないQOLおよび低比重リポ蛋白コレステロールの悪化が見られた。それ以外に、6カ月時および12カ月時の有害事象や血中脂質に両群の有意差や臨床的な重要性は認められなかった。 【結論】確実性が中程度ないし低度の科学的根拠を基にすると、6カ月間のLCD遵守によって有害な転帰がない糖尿病の寛解をもたらすと思われる。欠点に、以前から続く糖尿病寛解の定義に関する議論に加えて、長期的なLCDの有効性、安全性および食事満足度がある。 第一人者の医師による解説 日本の日常臨床への導入・定着が重要 求められる継続性も含めた糖質制限食指導の国内研究 山田 悟 北里大学北里研究所病院・糖尿病センター長 MMJ. April 2021;17(2):52 糖質制限食ほど毀誉褒貶の激しい食事法はないであろう。インスリンの発見(1921年)以前は、糖尿病治療といえば極端な糖質制限食しかなかったが、インスリン療法の普及とともに糖質摂取の自由化が進み、20世紀後半には脂質制限食の流布に伴い糖質制限食は民間療法とのイメージが定着した。これが21世紀になり2型糖尿病や肥満症の食事療法として復権し、その意義が(再)確立されたというのが歴史的流れである。 今回の研究は、その流れに沿うもので、2型糖尿病に対する糖質制限食の有効性を無作為比較試験23件(3件は日本で実施)のメタ解析で確認した。私は共著者だが、2019年に筆頭著者のGoldenberg氏らから研究への参加を打診された時には、正直、気乗りしなかった。すでに米国糖尿病学会(ADA)によって糖質制限食は血糖改善に対して最もエビデンスが実証された食事法であるとされ(1)、私が知るだけで20本以上の糖質制限食に関する無作為比較試験のメタ解析が存在し(2)、評価は確定済みと感じたからである。しかし、Goldenberg氏らは、2型糖尿病の寛解(HbA1c 6.5%未満を達成すること)という既報にはなかったアウトカムを設定するという。それで私もチームに参画した。 解析の結果、糖質制限食による6カ月後における寛解の有意な増加が示された。2型糖尿病は進行性の疾患であるとされる中、患者に対する朗報となろう。糖尿病の寛解以外でも、有意な有害作用の増加なく、体重、中性脂肪、インスリン抵抗性の改善が確認された。2型糖尿病は血糖のみならず多面的な介入を必要とする疾患であるとされる中、これらも患者にとって福音となろう。 そして、本研究でもう1つ重要なことが示された。それは、6カ月後の体重減量について極端な糖質制限食は緩やかな糖質制限食よりも効果が弱かったこと、あるいは、12カ月後の時点で糖尿病の寛解に有意差がなくなっていたことである。すなわち、どんなに優れた食事療法でも、遵守率や継続性に問題があれば、有効性は減弱してしまうと解釈できる。 世界的には糖質制限食の2型糖尿病に対する有効性や安全性が確立済みの中、今後、日本の日常臨床にいかに導入・定着させるかが大事である。そのためには、継続性も含めた糖質制限食指導についての国内研究が求められよう。それがあってこそ、かつてはあまりに研究数が少なすぎてできなかった、日本人を対象にした糖尿病食事療法についての無作為比較試験のメタ解析が可能になるであろう(3)。 1. Evert AB, et al. Diabetes Care. 2019; 42(5): 731-754. 2. 山田悟 . 公衆衛生 . 2019; 83(12): 870-878. 3. Yamada S, et al. Nutrients. 2018; 10(8): 1080.
肥満減量手術と全死因死亡の関連 国民皆保険制度下の一般住民を対象としたマッチドコホート研究
肥満減量手術と全死因死亡の関連 国民皆保険制度下の一般住民を対象としたマッチドコホート研究
Association Between Bariatric Surgery and All-Cause Mortality: A Population-Based Matched Cohort Study in a Universal Health Care System Ann Intern Med. 2020 Nov 3;173(9):694-703. doi: 10.7326/M19-3925. Epub 2020 Aug 18. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】肥満減量手術後の死亡率は過去に調査されているが、コホート選択のバイアス、追跡調査の網羅性および交絡因子の収集によって結果の推定が制限されている。 【目的】肥満減量手術と全死因死亡の間の関連を明らかにすること。 【デザイン】一般住民を対象としたマッチドコホート研究。 【設定】カナダ・オンタリオ州。 【参加者】2010年10月から2016年12月の間に肥満減量手術を受けた患者1万3679例およびマッチさせた非手術患者1万3679例。 【介入】肥満減量手術。 【評価項目】主要評価項目は全死因死亡とし、原因別の死亡率を副次評価項目とした。患者を年齢、性別、BMIおよび糖尿病罹患期間でマッチさせた。 【結果】肥満減量手術を受けた患者1万3679例を非手術患者1万3679例とマッチさせた。追跡期間中央値4.9年後の全死因死亡率は、手術群1.4%(197例)、非手術群2.5%(340例)であり、手術群の方が全死因死亡の調整ハザード比(HR)が低かった(HR 0.68[95%CI 0.57~0.81])。55歳以上の患者の絶対リスクが3.3%(CI 2.3~4.3%)低く、手術群の方が死亡ハザード比が低かった(HR 0.53[CI 0.41~0.69])。男女でほぼ同じ相対的効果が認められたが、この関連は絶対的に男性の方が大きかった。このほか、肥満手術に心血管死亡率(HR 0.53[0.34~0.84])とがん死亡率(HR 0.54[0.36~0.80])の低下との関連が認められた。 【欠点】観察的デザインでは因果推論に限界がある点。 【結論】肥満減量手術によって全死因死亡率、心血管死亡率およびがん死亡率が大幅に低下した。手術群に見られた死亡率の低下は、ほとんどの下位集団でも有意であった。最も大きな絶対効果は、男性および55歳以上の患者に認められた。 第一人者の医師による解説 日本で保険適用のある腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 長期的効果が明らかになることを期待 山内 敏正(教授)/庄嶋 伸浩(特任准教授) 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科 MMJ. June 2021;17(3):84 全死亡は重要なアウトカムであり、代謝指標や、がんなど肥満に関連する健康障害を反映する。減量・代謝改善手術は、数百~数千人規模の30以上の研究において、全死亡リスクを2~8割低下させることが報告されている。例えば、Swedish Obese Subjects(SOS)研究によると、肥満症の外科的治療群では内科的治療群に比べ全死亡(ハザード比[HR], 0.77)、心血管死(0.70)、がん死(0.77)のリスクが低下し、補正後余命中央値が3年長かった(1)。 本論文は、カナダ・オンタリオ州保健データベースを活用し、減量・代謝改善手術と全死亡の関連を検討したコホート研究の報告である。手術群と非手術(対照)群は年齢、性別、BMI、糖尿病の病歴でマッチングされ、さらに社会的経済的状況などでバイアスが補正された。減量・代謝改善手術としてルーワイ胃バイパス術(RYGB)が87.3%に、スリーブ状胃切除術が12.7%に実施され、手術群では全死亡(HR,0.68)、心血管死(0.53)、がん死(0.54)のリスクが低く、特に55歳以上において全死亡のリスクが低かった(HR,0.53)。これらの結果から、胃バイパス術による肥満症の改善は死亡リスクを低下させる可能性が示された。今後、軽度な肥満症、若年成人や高齢者の肥満症において、さらに日本で保険適用のある腹腔鏡下スリーブ状胃切除術に関して、肥満症手術の死亡に対する長期的な効果が明らかとなることが望まれる。 日本では、6カ月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られないBMI 35kg/m2以上で、糖尿病、高血圧、脂質異常症、または睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を合併した高度肥満症に対して、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が2014年に保険収載され、20年に適応拡大された。 日本肥満症治療学会(龍野一郎 理事長)、日本糖尿病学会(植木浩二郎 理事長)、日本肥満学会(門脇 孝理事長)の監修による「日本人の肥満2型糖尿病患者に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント」で、2型糖尿病に対する減量・代謝改善手術 の 適応基準 とし て、受診時BMI 35kg/m2以上の2型糖尿病で、糖尿病専門医や肥満症専門医による6カ月以上の治療でもBMI 35kg/m2以上が継続する場合、血糖コントロールの状態に関わらず減量・代謝改善手術が治療選択肢として推奨されている。また受診時BMI32 kg/m2以上の2型糖尿病では、糖尿病専門医や肥満症専門医による治療で、6カ月以内に5%以上の体重減少が得られないか得られても血糖コントロールが不良な場合(HbA1c 8.0%以上)には、減量・代謝改善手術を治療選択肢として検討すべきとされている。本ステートメントにより、減量・代謝改善手術がさらに安全で効果的に推進されている。 1. Carlsson LMS, et al. N Engl J Med. 2020;383(16):1535-1543.
糖尿病の有無を問わない成人の代謝減量手術と長期生存の関連 計174,772例を検討したマッチドコホート研究および前向き比較対照研究の1段階法メタ解析
糖尿病の有無を問わない成人の代謝減量手術と長期生存の関連 計174,772例を検討したマッチドコホート研究および前向き比較対照研究の1段階法メタ解析
Association of metabolic-bariatric surgery with long-term survival in adults with and without diabetes: a one-stage meta-analysis of matched cohort and prospective controlled studies with 174 772 participants Lancet. 2021 May 15;397(10287):1830-1841. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00591-2. Epub 2021 May 6. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【背景】代謝減量手術によって体重が大幅に減少し、肥満関連のリスクや合併症の寛解や改善につながる。しかし、政策の指針や患者カウンセリングに利用するために、術前の糖尿病併存状態で層別化した長期死亡率や平均余命にもたらす効果の推定を強固なものにする必要がある。著者らは、重度肥満患者で代謝減量手術と標準治療の長期生存転帰を比較した。【方法】前向き比較対照研究および高品質のマッチドコホート研究から再構成した患者個別の生存データを用いて、事前に定めた1段階法によるメタ解析を実施した。PubMed、ScopusおよびMEDLINE(Ovid経由)で、2021年2月3日までに非外科的肥満管理と代謝減量手術後の全死因死亡を比較した無作為化試験、前向き比較対照研究およびマッチドコホート研究を検索した。総説とともに、組み入れた研究の参考文献一覧から灰色文献も検索した。共有異質性(ランダム効果など)および層別Coxモデルを用いて、試験レベルでの参加者のクラスタリングを考慮に入れた上で、代謝減量手術を施行した肥満成人の全死因死亡率をマッチさせた標準治療を実施した対照と比較した。このほか、治療必要数を算出し、Gompertz比例ハザードモデルを用いて平均余命を推定した。試験のプロトコールは、PROSPEROにCRD42020218472番で予め登録されている。【結果】特定した論文1,470編のうち、マッチドコホート研究16編および前向き比較対照試験1編を解析対象とした。1,200万人の間に7,712例が死亡した。全174,772例では、代謝減量手術で死亡のハザード率が49.2%(95%CI 46.3~51.9、P<0.0001)低下し、平均余命中央値が通常治療より6.1年(95%CI 5.2~6.9)長かった。部分集団解析で、代謝減量手術を施行した患者は、ベースラインで糖尿病があった患者(ハザード比0.409、95%CI 0.370~0.453、p<0.0001)、なかった患者(0.704、0.588~0.843、P<0.0001)ともに全死因死亡率が低かったが、治療効果は糖尿病があった患者の方が高かった(部分集団間のI^2 95.7%、P<0.0001)。手術群の方が非手術群よりも平均余命の中央値が9.3年(95%CI 7.1~11.8)長く、糖尿病がなかった患者の平均獲得余命は5.1年(2.0~9.3)であった。10年間で死亡1例を予防するための必要治療数は、糖尿病がある患者が8.4(95%CI 7.8~9.1)、糖尿病がない患者が29.8(21.2~56.8)であった。胃バイパス、バンディングおよび袖状胃切除の間に治療効果の差が見られなかった(I^2 3.4%、P=0.36)。このメタ解析の結果や他のデータを利用することにより、今回の解析で統合した世界の代謝減量手術適応患者間で手術率が1.0%上昇するごとに、糖尿病がある患者とない患者でそれぞれで5,100万人年と6,600万人年の平均余命が獲得できることが推定された。【解釈】代謝減量手術によって、通常の肥満管理よりも肥満成人患者の全死因死亡率および平均余命が大きく改善する。糖尿病がない患者よりも糖尿病を併存する患者の方が生存に関する便益が顕著に見られる。 第一人者の医師による解説 国内でも3学会合同のコンセンサスステートメント発刊 本手術の普及を期待 岡住 慎一 東邦大学医療センター佐倉病院外科教授 MMJ. December 2021;17(6):176 1950年代に欧米で減量を目的として開始された高度肥満症に対する外科治療は、減量効果とともに糖尿病をはじめとする肥満関連合併症の改善も得られることが判明し、metabolicsurgery(代謝改善手術)として新たに位置づけられ、現在、全世界で年間約80万人に行われるほどに拡大している(1)。高度肥満症では、関連疾患による高死亡率対策が課題である。本論文は、外科治療における生存期間延長効果について計174,772人が参加した17試験でメタ解析し、さらに2型糖尿病合併の有無において検討した大規模研究である。結果は、内科治療に比べ外科治療による生存期間延長効果は6.1年(95%信頼区間[CI],5.2~6.9)であり、致死危険率(hazardrateofdeath)で49%(95%CI,46.3~51.9;P<0.0001)の低下が得られていた。治療後20年、30年累積死亡率は、内科治療群でそれぞれ20.0、46.0%であったのに対し、外科治療群ではそれぞれ8.8、29.5%であった。さらに、2型糖尿病合併の有無別にみると、外科治療群では両者ともに全死亡率が低下し、特に、2型糖尿病合併例における効果は顕著であった(P<0.0001)。2型糖尿病の合併例における治療後20年累積死亡率は、内科治療群の35.2%に対し、外科治療群では21.1%、一方、非合併例ではそれぞれ19.3、11.9%であり、内科治療に対する外科治療の生存期間延長効果は糖尿病合併例で9.3年(95%CI,7.1~11.8)、非合併例で5.1年(2.0~9.3)であった。これらの生存期間延長効果は、肥満外科の主要な術式(胃バイパス、袖状胃切除、胃バンディング)すべてにおいて示されたとしている。Metabolicsurgeryの効果の周知により、2016年米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインでは高度肥満症(体格指数[BMI]35以上、アジア系:BMI32.5以上)を伴う制御困難な2型糖尿病に対して外科治療が「推奨」され、世界45学会(日本糖尿病学会を含む)が承認した(2)。2021年7月には、日本肥満症治療学会、日本肥満学会、日本糖尿病学会の3学会合同により、「日本人の肥満2型糖尿病に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント」が発刊された(3)。日本においても、今後さらに本手術の普及が進むことが期待されている。 1. Fifth IFSO Global Registry Report 2019(IFSO & Dendrite Clinical Systems) 2. 糖尿病診療ガイドライン2019(日本糖尿病学会) 3. 日本人の肥満2型糖尿病に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント(日本肥満症治療学会/日本肥満学会/日本糖尿病学会,2021)
肥満症患者の体重減少に対するセマグルチドの有効性と安全性をリラグルチドおよびプラセボと比較:無作為化、二重盲検、プラセボおよびアクティブコントロール、用量設定、第 2 相試験
肥満症患者の体重減少に対するセマグルチドの有効性と安全性をリラグルチドおよびプラセボと比較:無作為化、二重盲検、プラセボおよびアクティブコントロール、用量設定、第 2 相試験
Efficacy and safety of semaglutide compared with liraglutide and placebo for weight loss in patients with obesity: a randomised, double-blind, placebo and active controlled, dose-ranging, phase 2 trial Lancet 2018 Aug 25 ;392 (10148 ):637 -649 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 肥満は公衆衛生上の大きな問題であり、体重管理のための新しい医薬品が必要とされている。そこで、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログのセマグルチドについて、リラグルチド及びプラセボと比較して、体重減少を促進する有効性と安全性を評価しました。 【方法】無作為化、二重盲検、プラセボ及び活性対照、多施設、用量設定、第2相試験を実施しました。本試験は、71の臨床施設を含む8カ国で行われました。対象者は、糖尿病のない、肥満度(BMI)30kg/m2以上の成人(18歳以上)です。56のブロックサイズで、参加者を各活性治療群(セマグルチド[0-05 mg、0-1 mg、0-2 mg、0-3 mg、または0-4 mg;1日0-05 mgで開始し4週間ごとに段階的に増加]またはリラグルチド[3-0 mg;1日0-6 mgで開始し週0-6 mgごとに増加])または適合プラセボ群(活性治療群と同じ注入量と増加スケジュール)に6対1の比率でランダムに割り付けました。すべての投与量は1日1回、皮下注射で投与されました。参加者と治験責任医師は、割り付けられた治療法についてマスキングされたが、目標投与量についてはマスキングされなかった。主要評価項目は、52週目の体重減少率であった。主要解析はintention-to-treat ANCOVA法により行われ、欠損データはプラセボ群から抽出された。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号はNCT02453711。 【FINDINGS】2015年10月1日から2016年2月11日の間に、957人がランダムに割り付けられた(有効治療群ごとに102~103人、プラセボプール群に136人が割り付けられた)。平均ベースライン特性は、年齢47歳、体重111-5kg、BMI39-3kg/m2などであった。体重データは、957人中891人(93%)から52週目に入手できた。推定平均体重減少率は、プラセボ群-2-3%に対し、セマグルチド群-6-0%(0-05mg)、-8-6%(0-1mg)、-11-6%(0-2mg)、-11-2%(0-3mg)、-13-8%(0-4mg)であった。セマグルチド群はプラセボ群に対してすべて有意であり(未調整p≦0-0010)、多重試験で調整後も有意であった(p≦0-0055)。セマグルチド0~2mg以上とリラグルチドの平均体重減少率は、いずれも有意であった(-13~8% vs -11~2% vs -7~8%)。推定体重減少率10%以上は、プラセボ投与群では10%、セマグルチド0-1mg以上投与群では37~65%に認められました(p<0-0001 vs プラセボ)。セマグルチドの全用量において、新たな安全性の懸念はなく、概ね良好な忍容性を示しました。最も一般的な有害事象は、GLP-1受容体作動薬で以前に見られたように、吐き気を主とする用量に関連した消化器症状であった。 【解釈】食事療法および身体活動に関するカウンセリングとの併用において、セマグルチドは52週間にわたり忍容性が高く、すべての用量でプラセボと比較して臨床的に適切な体重減少が認められた。 【FUNDING】Novo Nordisk A/S. 第一人者の医師による解説 糖尿病含む肥満関連疾患の発症抑制にも期待 脇 裕典 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科講師 MMJ.February 2019;15(1):21 新しいグルカゴン様ペプチド -1(GLP-1)受容体アゴニストであるセマグルチドは現在、週1回 注射薬が日本で2型糖尿病治療薬として承認されている。他のGLP-1受容体アゴニストと同様、セマグルチドは2型糖尿病の改善のみならず、体重減少効果が知られている。本研究は、オーストラリ ア、欧州、北米の2型糖尿病非合併の成人肥満(BMI 30kg/m2以上)患者957人を対象にセマグルチド 1日1回52週間投与による体重減少率を主要評 価項目に定め、体重減少効果と安全性に関してリラグルチドおよびプラセボと比較した多施設共同無 作為化二重盲検用量反応第2相試験である。 対象者の平均年齢 は47歳、平均体重 は111.5 kg、BMIは39.3kg/m2。プ ラ セ ボ 群 で は 体重 減少(減少率)は-2.48kg(-2.3%)であるの に 対 し、セ マ グ ル チ ド 0.05、0.1、0.2、0.3、 0.4mg群 で は そ れ ぞ れ -6.66kg(-6.0%)、 -9.34kg(-8.6%)、-12.30kg(-11.6%)、 -12.45kg( -11.2 %)、-15.15kg( -13.8 %) で あ り、そ の 差 は 有意 で あ っ た(P<0.001)。 10%以上の体重減少率がみられた患者はプラセ ボ 群10%に 対してセ マグ ル チド 群(0.1mg以 上)37~65%で差はいずれも有意であった(P< 0.0001)。セマグルチドの体重減少効果は52週 間にわたって観察された。 リラグルチド 3mg群との比較では、セマグル チ ド 群(0.2mg以上 )の 体重減少率( -13.8 ~ -11.2 %)は リ ラ グ ル チ ド 群 の 体重減少率 (-7.8%)よりも有意に大きかった(P≦0.05)。 主な副作用である嘔気の頻度はプラセボ群18%に 対し、セマグルチド群(0.05~0.4mg)で31~ 48%と高いが、リラグルチド 3mg群では45%で 忍容性は同程度であると考えられた。 本試験では、摂取カロリーで500 kcalの減少と 最低週150分の運動を指導されており、食事・運 動療法の併用が重要である可能性には留意したい。 セマグルチドは2型糖尿病の臨床試験(SUSTAIN 6)において心血管イベント(3 point‒MACE)を 有意に減少させたことが注目されている(1)。今回、 糖尿病非合併肥満患者の体重コントロールに有効な結果が示されたことから、糖尿病を発症していない肥満者において糖尿病を含む関連疾患の発症 抑制効果を有するかもしれない。現在、肥満症治療 薬としての第3相試験が進行中で、今後の結果が 期待される。 1. Marso SP et al. N Engl J Med. 2016;375(19):1834-1844.
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.37(2023年2月16日号)
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話題の不老長寿薬NMNは、過体重/肥満の中高年の健康を取り戻すか? NADの加齢に伴う低下は、加齢性疾患の一因と考えられている。巷では、NADの前駆体であるNMNを摂取することによるアンチエイジングが話題になっている。著者らは、NMNの一種であるMIB-626を過体重/肥満の中高年へ投与し、その安全性と生理学的効果(NADとその関連代謝物濃度、体重、肝臓、筋肉、腹腔内脂肪、インスリン感受性、血圧、脂質、身体能力、および筋肉の生体エネルギー)について評価した。The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2023年2月6日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 喘息にビタミンDは本当に効くのか? 前回2016年の喘息に対するビタミンDの効果に関するコクランレビュー以降、喘息増悪のリスク軽減と、喘息コントロールの改善におけるビタミンDの潜在的な役割をめぐる議論は続いている。そこで著者らは、2022年9月8日までの検索対象文献を追加し、最新のメタ分析を行った。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年2月6日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む ChatGPTは、米国の医師国家試験に合格できるか? Chat Generative Pre-trained Transformer(ChatGPT)は、ユーザーの入力に対し会話スタイルの応答を生成できる1,750 億のパラメーターを持つ自然言語処理モデルです。本研究では、米国医師国家試験のStep1,2の範囲内の質問に対するChatGPTのパフォーマンスを評価し、回答が人間に解釈可能かどうかを分析した。JMIR Medical Education誌2023年2月8日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 変形性関節症の診療ガイドラインの系統的レビュー〜中核となる推奨事項は何か?〜 変形性関節症(OA)の臨床診療ガイドライン(CPG)を評価し、質の高いCPG推奨事項を統合することを目的に、2015年1月~2022年2月に発刊された英語で書かれたOAのCPGの品質をAGREE IIを用いて評価した。Arthritis Care & Research誌オンライン版2023年2月10日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 急性虚血性脳卒中にアルガトロバン+アルテプラーゼは有効か:大規模RCT これまでの研究で、急性虚血性脳卒中(AIS)患者におけるアルガトロバンとアルテプラーゼ併用投与の利点が示唆されたが、サンプル数が多い試験での確固たる証拠が不足している。著者らは中国の50病院において、AISの症状発症から4.5時間以内の患者を対象とし、アルガトロバンとアルテプラーゼ併用群、アルテプラーゼ単独群に無作為に割付、患者転帰をmRSで評価した。JAMA誌オンライン版2023年2月9日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.36(2023年2月9日号) 低炭水化物ダイエットで、EDは改善するか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.35(2023年2月2日号) 高齢者の記憶力低下を防ぐための生活習慣とは? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.34(2023年1月26日号) 環境配慮の食事は、2型糖尿病のリスク低減にも有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.33(2023年1月19日号) 結局どんな食事が健康に良いのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.32(2023年1月12日号) 高タンパクの朝食は、昼食・夕食の食後血糖値にどのように影響するか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.31(2022年12月22日号) 抗生物質が運動のモチベーションを下げる!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.30(2022年12月15日号) 最も糖尿病リスクを軽減する野菜は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.29(2022年12月8日号) リバウンド予防に効果的な食事とは? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.28(2022年12月1日号) 妊娠で母性が宿るか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.27(2022年11月24日号) 精子数の世界的な減少 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.26(2022年11月17日号) マスクは本当に効果があるのか?:学校における検証 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.25(2022年11月10日号) キツい筋トレは筋肥大に効果があるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.24(2022年11月3日号) AIによる膵臓がん予後予測は有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.23(2022年10月27日号) 蚊を寄せ付ける体臭は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.22(2022年10月20日号) 片頭痛には有酸素運動、筋トレどちらが有効か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.21(2022年10月13日号) 妊婦の"超加工食品"摂取は子供の神経心理学的発達に影響を及ぼすか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.20(2022年10月6日号) CRPはがんのバイオマーカーになるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.19(2022年9月29日号) 免疫チェックポイント阻害剤の奏効率は、食事によって変わるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.18(2022年9月22日号) メタボを防ぐ腸内細菌に対して、最も悪影響を及ぼす食事は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.17(2022年9月15日号) セレブからも注目されているプチ断食は、ダイエットや心血管代謝に良い影響を及ぼすのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.16(2022年9月8日号) 長生きできる紅茶の摂取量は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.15(2022年9月1日号) 顔が似ていると、遺伝情報も似ている!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.14(2022年8月25日号) ゼロカロリー甘味料は、耐糖能に影響を及ぼさないのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号) 運動後の摂取はゆで卵、生卵どちらの摂取が有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.12(2022年8月11日号) 慢性腰痛を軽減する最良の運動オプションとは~RCTのネットワークメタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号) サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6?11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
2型糖尿病を持つ肥満症患者へのチルゼパチド週1回投与 HbA1cと減量で著明な改善
2型糖尿病を持つ肥満症患者へのチルゼパチド週1回投与 HbA1cと減量で著明な改善
Tirzepatide once weekly for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (SURMOUNT-2): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial Lancet. 2023 Aug 19;402(10402):613-626. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01200-X. Epub 2023 Jun 26. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】肥満と2型糖尿病の人の健康転帰を改善するには、体重減少が不可欠です。肥満と2型糖尿病を患っている人々の体重管理のために、グロコース依存性インスリノトロピックポリペプチドとグルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストであるプラセボの有効性と安全性を評価しました。 【方法】このフェーズ3、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験が7か国で実施されました。27 kg/m2以上のボディマスインデックス(BMI)、および7-10%(53-86 mmol/mol)のヘモグロビン(HBA1C)のグリケート化されたヘモグロビン(HBA1C)を持つ成人(18歳以上)がランダムに割り当てられました(1:1:1:1)検証済みのインタラクティブなWeb応答システムを介してコンピューター生成ランダムシーケンスを使用して、週に1回、皮下ティルゼパチド(10 mgまたは15 mg)またはプラセボを72週間受信します。すべての参加者、捜査官、およびスポンサーは、治療の割り当てに隠されていました。コポリマリーのエンドポイントは、ベースラインからの体重の変化と5%以上の体重減少でした。治療 - 妊娠中毒救助療法の治療中止または開始に関係なく、治療 - 受精率は影響を評価しました。有効性と安全性のエンドポイントは、ランダムに割り当てられたすべての参加者(治療意図人口)のデータで分析されました。この試験は、ClinicalTrials.gov、NCT04657003に登録されています。 【調査結果】2021年3月29日、2023年4月10日の間、1514人の成人の適格性について評価された938(平均54・2歳[SD 10・6]、476 [51%]は女性、710 [76%]は女性でした。白、および561 [60%]をヒスパニックまたはラテン系)にランダムに割り当て、少なくとも1用量のチルゼパチド10 mg(n = 312)、チルゼパチド15 mg(n = 311)、またはプラセボ(n = 315)を受け取りました。ベースラインの平均体重は100・7 kg(SD 21・1)、BMI 36・1 kg/m2(SD 6・6)、およびHBA1c 8・02%(SD 0・89; 64・1 mmol/mol [SD 9・7])。最小二乗は、チルゼパチド10 mgと15 mgの72週目の体重の変化を平均して-12・8%(SE 0・6)および-14・7%(0・5)、および-3・2%(0・5)プラセボでは、ティルゼパチド10 mgおよび-11・6%パーセントポイント( - 95%CI -11・1から-8・1)のプラセボとプラセボとの推定治療の差が-9.6%パーセントポイント(95%CI -11・1から-8・1)をもたらします( - 13・0〜 -10・1)チルゼパチド15 mg(すべてp <0・0001)。ティルゼパチドとプラセボで治療されたより多くの参加者は、5%以上の体重減少のしきい値を満たしました(79-83%対32%)。ティルゼパチドの最も頻繁な有害事象は、吐き気、下痢、嘔吐を含む胃腸関連であり、ほとんどが軽度から中程度の重症度であり、治療中止につながるイベントはほとんどありませんでした(<5%)。深刻な有害事象は68人(7%)の参加者全体で報告され、チルゼパチド10 mg群で2人の死亡が発生しましたが、死亡は調査員による研究治療に関連しているとは見なされませんでした。 【解釈】肥満と2型糖尿病を患っている成人でのこの72週間の試験では、週に1回のチルゼパチド10 mgと15 mgが体重の実質的かつ臨床的に意味のある減少をもたらし、他のインクレナベースの療法に似た安全性プロファイルを提供します。体重管理。 【資金調達】エリ・リリーと会社。 第一人者の医師による解説 今後の糖尿病治療薬の主役の一翼を担う 早期の出荷制限解除を望む 小野 啓 千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学准教授/千葉大学医学部附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科科長 MMJ.April 2024;20(1):16 グルカゴン様ペプチド -1(GLP-1)受容体作動薬は血糖依存的な血糖低下作用を有し、これと独立して中枢神経に作用し食欲低下を引き起こすため、糖尿病と肥満症に有効な治療薬として上市されている。一方、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)はGLP-1と同様に血糖低下作用を有するものの2型糖尿病ではその作用が減弱し、また基礎研究から体重増加作用を持つと考えられるため、GLP-1に比べ治療薬としての有用性が低いと考えられていた。この予想に反し、GLP1・GIP両方の受容体作動薬であるチルゼパチドは、GLP-1受容体作動薬と同等あるいはそれ以上の血糖・食欲低下作用を有することが臨床的に示され注目されている。 本論文で報告されたSURMOUNT-2試験では、2型糖尿病を伴う肥満症(平均 BMI 36.1)患者938人をチルゼパチド 10mg群、15mg群、またはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付け、72週間の週1回皮下注投与を行った。76%は白人であったが、日本人を含むアジア人も13%含まれている。プラセボ群が3.3%の減量にとどまったのに対し、チルゼパチド 10mg群では13.4%、15mg群では15.7%の減量が得られた。血糖値の平均を示すHbA1cは投与前の平均が8.02%であったが、投与後はプラセボ群の7.82%に対し、チルゼパチド 10mg群5.85%、同15mg群5.76%と著明な改善がみられた。収縮期血圧はプラセボ群の1.2mmHgに対しチルゼパチド群全体で7.2mmHgの低下、中性脂肪はプラセボ群の3.3%に対しチルゼパチド群全体で27.2%の低下を認めた。チルゼパチド群では下痢・悪心・嘔吐の副作用が認められたが、投与中止に至った有害事象の発現率は2%以下であり、低血糖はチルゼパチド群で5%程度にとどまり、その多くはスルフォニル尿素薬を併用している患者であり、重篤な低血糖は1件もなかった。膵炎・胆石・甲状腺がん・精神的問題に関しても有意な増加は認められなかった。 チルゼパチドはすでに日本でも2型糖尿病に適応を持ち処方が可能であるが、出荷制限により本試験で用いられた10~15mg製剤の処方は現時点で日本では困難である。本薬剤のようにHbA1cを2%以上も低下させ、体重を10%以上低下させるような薬剤はこれまで存在せず、今後の糖尿病治療薬の主役の一翼を担うことは間違いない。早期の出荷制限の解除が望まれるところである。
GIP・GLP-1・グルカゴントリプル作動薬、レタトルチド 肥満合併2型糖尿病での血糖と体重の管理に有効
GIP・GLP-1・グルカゴントリプル作動薬、レタトルチド 肥満合併2型糖尿病での血糖と体重の管理に有効
Retatrutide, a GIP, GLP-1 and glucagon receptor agonist, for people with type 2 diabetes: a randomised, double-blind, placebo and active-controlled, parallel-group, phase 2 trial conducted in the USA Lancet. 2023 Aug 12;402(10401):529-544. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01053-X. Epub 2023 Jun 26. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】2 型糖尿病管理に関する現在のコンセンサスガイドラインによれば、体重管理は血糖目標の達成と同じくらい重要です。グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)、GLP-1、およびグルカゴン受容体に対するアゴニスト活性を持つ単一ペプチドであるレタトルチドは、第1相試験で臨床的に意味のある血糖降下および体重低下の有効性を示した。私たちは、2 型糖尿病患者におけるレタルトルチドの有効性と安全性を、さまざまな用量にわたって調べることを目的としました。 【方法】この無作為化、二重盲検、ダブルダミー、プラセボ対照およびアクティブコンパレーター対照、並行群間、第 2 相試験では、米国の 42 の研究および医療センターから参加者が集められました。 2型糖尿病を患い、糖化ヘモグロビン(HbA1c)が7・0~10・5%(53・0~91・3mmol/mol)、BMIが25~50kg/m2の18~75歳の成人が対象となった。入学。適格な参加者は、スクリーニング来院前の少なくとも 3 か月間、食事と運動単独、または安定用量のメトホルミン (1 日 1 回 1000 mg 以上) で治療されました。参加者は、対話型ウェブ応答システムを使用し、ベースラインの HbA1c と BMI の層別化により、プラセボ 1.5 mg を週に 1 回注射する群にランダムに割り当てられました (2:2:2:1:1:1:1:2)。デュラグルチド、またはレタルトルチドの維持用量 0.5 mg、4 mg (開始用量 2 mg)、4 mg (漸増なし)、8 mg (開始用量 2 mg)、8 mg (開始用量 4 mg)、または 12 mg (開始用量は2mg)。参加者、研究施設の職員、研究者は研究終了後まで治療の割り当てを知らされなかった。主要評価項目はベースラインから24週までのHbA1cの変化であり、副次評価項目には36週のHbA1cと体重の変化が含まれた。有効性は、誤って登録された場合を除き、無作為に割り当てられたすべての参加者で分析され、安全性は少なくとも1回の治験治療を受けたすべての参加者で評価されました。この研究はClinicalTrials.gov、NCT04867785に登録されています。 【調査結果】2021年5月13日から2022年6月13日までの期間、参加者281名(平均年齢56・2歳[SD 9・7]、糖尿病平均罹患期間8・1年[7・0]、女性156名[56%]) 、白人235人[84%])がランダムに割り当てられ、安全性分析に含まれた(プラセボ群45人、デュラグルチド1・5mg群46人、レタルトルチド0・5mg群47人、4群23人) mg漸増グループで24人、8mg緩徐漸増グループで26人、8mg高速漸増グループで24人、12mg漸増グループで46人)。有効性解析には275人の参加者が含まれた(レタルトルチド0・5mg群、4mg漸増群、8mg緩徐漸増群に各1人、12mg漸増群の3人が誤って登録された)。 237 人(84%)の参加者が研究を完了し、222 人(79%)が研究治療を完了しました。 24週間時点で、レタルトルチドによるHbA1cのベースラインからの最小二乗平均変化は、0.5 mg群では-0.43%(SE 0.20; -4.68 mmol/mol [2.15])、-1 ·4 mg 漸増グループの場合は 39% (0.14; -15.24 mmol/mol [1.56])、-1.30% (0.22; -14.20 mmol/mol [2.44]) ) 4 mg グループの場合は -1.99% (0.15; -21.78 mmol/mol [1.60])、8 mg のゆっくりとした漸増グループの場合は -1.88% (0.21; -20) 8 mg の高速漸増グループの場合は ·52 mmol/mol [2·34])、12 mg の漸増グループの場合は -2·02% (0·11; -22·07 mmol/mol [1·21])、対プラセボ群では -0.01% (0.21; -0.12 mmol/mol [2.27])、-1.41% (0.12; -15.40 mmol/mol [1.29]) ]) 1・5 mg デュラグルチド グループの場合。レタルトルチドによる HbA1c 減少は、0.5 mg 群を除くすべての群でプラセボよりも有意に大きく (p<0.0001)、8 mg のゆっくりとした漸増群 (p=0.0019) と 12 mg のデュラグルチドでは 1.5 mg のデュラグルチドよりも大きかった。エスカレーション グループ (p=0·0002)。所見は36週目でも一貫していた。体重は、レタルトルチドによる用量依存性の36週間減少で、0・5mg群では3・19%(SE 0・61)、4mg増量群では7・92%(1・28)、10・37%(1)でした。 4 mg グループでは 56)、8 mg ゆっくり漸増グループでは 16.81% (1.59)、8 mg 高速漸増グループでは 16.34% (1.65)、および 16.94% (1 · 12 mg 漸増グループでは 30)、対プラセボでは 3.00% (0.86)、1.5 mg デュラグルチドでは 2.02% (0.72)。レタルトルチドの用量が 4 mg 以上の場合、体重減少はプラセボ (4 mg 漸増群では p=0.0017、その他では p<0.0001) および 1.5 mg デュラグルチド (すべて p<0) よりも有意に大きかった。・0001)。吐き気、下痢、嘔吐、便秘などの軽度から中等度の胃腸有害事象が、レタルトルチド群の参加者190人中67人(35%)で報告された(0・5mg群では47人中6人[13%]) 8 mg の急速漸増グループでは 24 名中 12 名 [50%]、プラセボ グループでは参加者 45 名中 6 名 (13%)、1·5 mg デュラグルチドグループでは参加者 46 名中 16 名 (35%) でした。研究中に重度の低血糖症や死亡の報告はなかった。解釈: 2 型糖尿病患者において、レタルトルチドは、GLP-1 受容体アゴニスト、GIP および GLP-1 受容体アゴニストと一致する安全性プロファイルを備え、血糖コントロールにおいて臨床的に意味のある改善と体重の大幅な減少を示しました。これらのフェーズ 2 データは、フェーズ 3 プログラムの用量選択にも影響を与えました。 【資金提供】 イーライリリーアンドカンパニー。 第一人者の医師による解説 血糖低下作用と体重減少作用の強力さが改めて浮き彫り 治療薬の真打ちとなることを期待 田中 智洋 名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学分野准教授 MMJ.April 2024;20(1):15 2型糖尿病は、肥満を背景とするインスリン抵抗性と、インスリン分泌不全の両病態の併存により発症する。日本では従来、インスリン分泌低下の寄与が大きく、やせ型症例が多いとされてきたが、近年は国内でも2型糖尿病の約半数に肥満を認める。肥満合併2型糖尿病における体重管理は、心血管予後の改善に重要であるばかりでなく、10 ~ 15%の減量は糖尿病の寛解をも可能にする(1)。 グルカゴン様ペプチド -1(GLP-1)受容体作動薬はGLP-1(膵島細胞からのインスリン分泌を増幅するホルモン)の作用を模倣するインクレチン関連薬である。国内では2型糖尿病治療薬として2010年以降、経口薬を含む多くの剤型が登場しシェアも増加している。最近では食欲抑制・体重減少作用により肥満症治療薬(2)としても上市された。最近はさらに、GLP-1などのペプチドホルモンのアミノ酸配列を人為的に変更し、1分子で複数のホルモン受容体を活性化するアナログ製剤が開発され、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)・GLP-1ダブル受容体作動薬はすでに2型糖尿病治療薬として実用化されている(3)。 本論文は、GIP・GLP-1・グルカゴントリプル受容体作動薬であるレタトルチドの有効性と安全性を検討した米国第2相試験の報告である。レタトルチド 4 ~ 12mgの週1回皮下投与により24週時点でHbA1cの有意な 低下を認め、12mgでは8.3%から6.3%へと低下した。本試験ではプラセボ以外にGLP-1製剤デュラグルチド 1.5mg(国内承認用量0.75mg)の実薬対照群が設定され、24週時点においてレタトルチド 8 ~ 12mgではデュラグルチドを有意に上回るHbA1c低下を認めた。36週までの体重減少率は、プラセボ 3.0%、デュラグルチド 2.0%に対しレタトルチド 4mgで8~ 10%、8 ~ 12mgで16~17%であった。レタトルチドとの関連を疑う重篤な有害事象は、胆嚢炎、急性膵炎、ケトアシドーシス各1例であった。 今回の研究により、トリプルホルモン受容体作動薬レタトルチドの2型糖尿病への有効性と安全性が示され、肥満合併2型糖尿病における本剤の血糖低下作用と体重減少作用の強力さが改めて浮き彫りとなった。これまでのGLP-1シングルないしGIP・GLP-1ダブル受容体作動薬と比べても、レタトルチドの効果は最強レベルと考えられる。安全性上の新たな懸念も認められなかったことから、レタトルチドは肥満合併2型糖尿病治療の真打ちとなる可能性が大いに期待される。今後、作用機序の解明、第3相試験での結果、さらには肥満度が異なる日本人でのエビデンスの確立が待たれる。 1. Lean ME, et al. Lancet. 2018; 391(10120): 541-551. 2. Kadowaki T, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022; 10(3): 193-206. 3. Inagaki N, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10(9):623-633.