「インスリン」の記事一覧

基礎インスリン療法を実施している2型糖尿病患者の血糖制御に用いる持続血糖モニタリングの効果:無作為化比較試験
基礎インスリン療法を実施している2型糖尿病患者の血糖制御に用いる持続血糖モニタリングの効果:無作為化比較試験
Effect of Continuous Glucose Monitoring on Glycemic Control in Patients With Type 2 Diabetes Treated With Basal Insulin: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2021 Jun 8;325(22):2262-2272. doi: 10.1001/jama.2021.7444. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【重要性】持続血糖モニタリング(CGM)は、強化インスリン療法中の2型糖尿病成人患者にとって便益があることが示されているが、食前インスリン療法を実施していない基礎インスリン療法中の2型糖尿病患者でのCGM使用は検討されていない。【目的】プライマリケア診療で、食前インスリン療法を実施していない基礎インスリン療法中の2型糖尿病成人患者でCGMの有効性を検討すること。【デザイン、設定および参加者】この無作為化臨床試験は、米15施設(登録期間2018年7月30日から2019年10月30日;最終追跡調査日2020年7月7日)で実施し、プライマリケア医から糖尿病治療を受けており、食前インスリン療法を実施せず持効型または中間型の基礎インスリン製剤を1日1~2回投与している2型糖尿病成人患者を登録した。インスリン以外の血糖降下薬による薬物療法の有無は問わなかった。【介入】CGM群(116例)と従来の血糖測定器によるモニタリング(BGM)群(59例)に2対1の割合で無作為化により割り付けた。【主要評価項目】主要評価項目は、8カ月時点のヘモグロビンA1c(HbA1c)とした。CGMで測定した血糖目標値が70~180mg/dLの範囲内にある時間(の割合)(TIR)、血糖値が250mg/dLを超える時間、8カ月時の平均血糖値を主な副次評価項目とした。【結果】無作為化により割り付けた175例(平均年齢[SD]57歳[9];女性88例[50%];人種・民族的マイノリティ92例[53%]、治療前のHbA1c平均値[SD]9.1%[0.9%])のうち、165例(94%)が試験を完了した。CGM群のHbA1c平均値が治療前の9.1%から8カ月後の8.0%に、BGM群では9.0%から8.4%に低下した(調整後群間差、-0.4%[95%CI、-0.8~-0.1];P=0.02)。CGM群をBGM群と比較すると、CGMで測定した平均TIRは59%に対して43%(調整後群間差、15%[95%CI、8~23];P<0.001)、血糖値が250mg/dLを超える時間の割合は11%に対して27%(調整後群間差、-16%[95%CI、-21~-11];P<0.001)、平均血糖値の平均は179mg/dLに対して206mg/dL(調整後群間差、-26mg/dL[95%CI、-41~-12];P<0.001)であった。CGM群1例(1%)、BGM群1例(2%)に重度の低血糖が発現した。【結論および意義】食事前インスリン投与を実施しておらず、基礎インスリン療法のみでは血糖制御不良の2型糖尿病成人患者で、従来の血糖モニタリングよりも持続血糖モニタリングの方が8カ月後のHbA1c値が有意に低下した。 第一人者の医師による解説 日本ではこの数年にFGMが普及 新たなデバイスで糖尿病診療が進化 石原 寿光 日本大学医学部糖尿病代謝内科教授 MMJ. December 2021;17(6):179 持続的血糖モニタリング(CGM)は、1型糖尿病患者はもちろん、強化インスリン治療中の2型糖尿病患者に用いた場合、血糖コントロールに有効であることが示されているが、ボーラスインスリン注射を行わない、基礎インスリン補充のみで治療されている2型糖尿病患者における有効性は検証されていない。そこで、本論文の著者らは、持効型あるいは中間型インスリンの1日1回または2回注射で治療中の2型糖尿病患者(インスリン以外の血糖降下薬併用の有無は問わない)におけるCGMの有効性を、従来の指先などで採血して行う自己血糖測定(SMBG)を対照として、ランダム化対照試験(MOBILE試験)により検討した。米国の15施設で、2018年7月30日~19年10月30日に175人の患者の組み入れが行われ、主要評価項目として8カ月後のHbA1cが評価された。CGM群の患者にはDexcomG6CGMシステムが装着され、適宜SMBGも併用された。その結果、8カ月後のHbA1cは、CGM群ではベースラインの9.1%から8.0%、SMBG群で9.0%から8.4%に低下し、低下の度合いは有意にCGM群で大きかった(群間差のP=0.02)。また、グルコース値が70~180mg/dLに入っている1日のうちの時間の割合は、CGM群では59%、SMBG群では43%とCGM群の方が有意に高く(P<0.001)、250mg/dL超の時間の割合はそれぞれ11%と27%とCGM群の方が有意に低かった(P<0.001)。重症な低血糖の発生率はそれぞれ1%と2%のみであった。したがって、持効型あるいは中間型インスリンの1日1回または2回注射で治療中の2型糖尿病患者においても、CGMは有効であると考えられた。今後、数年単位でこの効果が持続するかなどを検証していく必要があると思われる。日本では、この数年にFreestyleリブレTMによるFlashGlucoseMonitoring(FGM)が普及してきている。現在の保険適用は、強化インスリン療法施行中の患者が主体であるが、基礎インスリンのみの患者への適用拡大も検討されている。また、インスリンを使っていない経口糖尿病薬のみの患者でのFGMの有効性も報告されており(1)、新たなデバイスが糖尿病診療を進化させつつある。 1. Wada E, et al. BMJ Open Diabetes Res Care. 2020;8(1):e001115.
ナトリウム・グルコース共役輸送体2阻害薬と糖尿病性ケトアシドーシスのリスク 多施設共同コホート研究
ナトリウム・グルコース共役輸送体2阻害薬と糖尿病性ケトアシドーシスのリスク 多施設共同コホート研究
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Diabetic Ketoacidosis : A Multicenter Cohort Study Ann Intern Med. 2020 Sep 15;173(6):417-425. doi: 10.7326/M20-0289. Epub 2020 Jul 28. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】ナトリウム・グルコース共役輸送体2(SGLT2)阻害薬によって糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスクが上昇する可能性がある。 【目的】SGLT2阻害薬によって、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬と比較して、2型糖尿病患者のDKAリスクが上昇するかを評価すること。 【デザイン】住民対象コホート研究;2013年から2018年の間のprevalent new-user design(ClinicalTrials.gov、NCT04017221)。 【設定】カナダ7地域と英国の電子医療記録データベース。 【患者】time-conditional傾向スコアを用いて、SGLT2阻害薬新規使用者20万8757例をDPP-4阻害薬使用者20万8757例とマッチングさせた。 【評価項目】コックス比例ハザードモデルで、DPP-4阻害薬使用者と比較したSGLT2阻害薬使用者のDKAの施設ごとのハザード比と95%CIを推定し、ランダム効果モデルを用いて統合した。二次解析では、分子、年齢、性別およびインスリン投与歴で層別化した。 【結果】全体で、37万454人・年の追跡で、521例がDKAの診断を受けた(1000人年当たりの発生率1.40、95%CI 1.29-1.53)。SGLT2阻害薬によってDPP-4阻害薬と比較してDKAリスクが上昇した(発生率2.03、CI 1.83 to 2.25、0.75、CI 0.63-0.89、ハザード比2.85、CI 1.99-4.08)。分子固有のハザード比は、ダパグリフロジン1.86(CI 1.11-3.10)、エンパグリフロジン2.52(CI 1.23-5.14)、カナグリフロジン3.58(CI 2.13-6.03)であった。この関連は年齢および性別では修正されず、インスリン投与歴があるとリスクが低下すると思われた。 【欠点】測定できない交絡因子がある点、患者の大多数の臨床検査データがない点、分子別の解析を実施した施設が少ない点。 【結論】SGLT2阻害薬でDKAリスクが約3倍になり、分子別の解析からクラス効果が示唆された。 第一人者の医師による解説 DPP-4阻害薬に比べ約3倍の発症リスク インスリンの存在がカギ 関根 信夫 JCHO東京新宿メディカルセンター院長 MMJ. April 2021;17(2):49 腎近位尿細管でのブドウ糖再吸収抑制により尿糖排泄を促すという、一見シンプルな機序により血糖降下作用を発揮するSGLT2阻害薬は、近年、心血管イベントをはじめとする合併症予防における優位性(1)から注目され、その使用が劇的に増加している。SGLT2阻害薬は血糖改善・体重減少作用に加え、心不全の発症・入院を減少させ、腎症の進展抑止に寄与する。米国糖尿病学会(ADA)により、特に心血管疾患・心不全・腎症合併例における積極的使用が推奨されている(2)。一方、副作用については尿路・性器感染症のリスク上昇が明らかであるが、代謝面で注目されたのが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の発症である。その機序としてはインスリン欠乏や脱水などを基盤にケトン体産生が増加することが想定されている。特筆すべきは、比較的低い血糖レベルでもDKAを生じうることであり(“正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス”とも言われる)、極端な糖質制限によるリスクにも注意しなければならない。 本研究はカナダと英国のプライマリケア・データベースを活用したコホート研究であり、2013年1月~18年6月にSGLT2阻害薬を新規に処方された患者、またはDPP-4阻害薬投与を受けている患者を対象に、各薬剤群208,757人という大規模レベルでDKA発症について後ろ向きに比較検討したものである。結果、期間中521人(発症率比1.40人 /1,000人・年)がDKAを発症し入院した。このうちSGLT2阻害薬群ではDPP-4阻害薬群に比べ有意なDKA発症増加が認められた(発症率比2.03対0.75/1,000人・年;ハザード比[HR]2.85)。SGLT2阻害薬の薬剤別HRは、ダパグリフロジン1.86、エンパグリフロジン2.52、カナグリフロジン3.58と、基本的にはクラスエフェクトと考えられるものの、カナグリフロジンのリスクが最も高かった。同薬のSGLT2選択性が比較的低いことが理由として推察されるものの、結論を出すには慎重であるべきである。 なお、SGLT2阻害薬は1型糖尿病でのインスリンへの併用が保険適用となったが、DKA発症リスクが極めて高い1型糖尿病では、なお一層の注意が必要である。本研究でもあらかじめインスリンを投与された患者ではDKA発症リスクが低いという結果が得られており、ポイントはインスリンの“存在”と想定される。すなわち、1型糖尿病においては十分量のインスリンが投与されていること、2型糖尿病ではインスリン療法が行われているか、内因性インスリン分泌が十分あることが、DKA発症リスクを軽減することにつながるものと考えられる。 1. Zelniker TA, et al. Lancet. 2019;393(10166):31-39. 2. American Diabetes Association. Diabetes Care. 2021;44(Suppl 1):S111-S124.
インスリン治療歴のない2型糖尿病に用いる週1回のインスリン投与
インスリン治療歴のない2型糖尿病に用いる週1回のインスリン投与
Once-Weekly Insulin for Type 2 Diabetes without Previous Insulin Treatment N Engl J Med. 2020 Nov 26;383(22):2107-2116. doi: 10.1056/NEJMoa2022474. Epub 2020 Sep 22. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】2型糖尿病患者の基礎インスリン注射の頻度を減らすことで、患者が治療を受け入れ、アドヒアランスが高まると考えられている。insulin icodecは、糖尿病治療用に週1回投与で設計された開発中の基礎インスリンアナログである。 【方法】ジぺプチジルペプチダーゼ4阻害薬併用の有無を問わず、メトホルミン服用下で血糖制御不良(糖化ヘモグロビン[HbA1c]値7.0-9.5%)で長期インスリン療法歴がない2型糖尿病患者を対象に、insulin icodec週1回投与の有効性と安全性をインスリングラルギンU100の1日1回投与と比較する26週間の第II相無作為化二重盲検ダブルダミー試験を実施した。主要評価項目は、HbA1c値のベースラインから26週時までの変化量とした。このほか、低血糖発作、インスリンによる有害事象などの安全性評価項目を評価した。 【結果】計247例をicodecとグラルギンに(1対1の割合で)無作為に割り付けた。両群のベースラインの患者背景はほぼ同じであり、平均HbA1c値はicodec群8.09%、グラルギン群7.96%であった。HbA1c値ベースラインからの推定平均変化量は、icodec群-1.33%ポイント、グラルギン群-1.15%ポイントであった。26週時の推定平均値がそれぞれ6.69%、6.87%であり、ベースラインからの変化量の推定群間差は-0.18%ポイント(95%CI -0.38~0.02、P=0.08)であった。重症度レベル2(血糖値54mg/dL未満)またはレベル3(重度の認知機能低下)の低血糖発現率は低かった(icodec群1人年当たり0.53件、グラルギン群0.46件、推定率比1.09、95%CI 0.45~2.65)。インスリンによる重要な有害事象に群間差はなく、過敏症率および注射部位反応率が低かった。ほとんどの有害事象が軽度で、重試験薬によると思われる重篤なイベントはなかった。 【結論】2型糖尿病患者に用いるinsulin icodec週1回投与は、インスリングラルギンU100の1日1回投与とほぼ同等の有効性および安全性が示された。 第一人者の医師による解説 患者の治療負担軽減を期待 遷延性低血糖を生じないかなど今後の研究結果の注視必要 林 哲範 北里大学医学部臨床検査診断学・診療講師 MMJ. April 2021;17(2):50 基礎インスリンの注射頻度が減ることによって2型糖尿病患者の治療の受け入れやアドヒアランスが改善し、さらに良好な血糖管理も得られる可能性がある。今回報告された試験は、長期インスリン治療歴がなく、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬の併用下・非併用でメトホルミンを服用中だが血糖コントロール不良(HbA1c7.0~9.5%)の2型糖尿病患者を対象に、週1回投与型の新規インスリンとして開発中のインスリンアイコデク(insulin icodec)の有効性と安全性を1日1回のインスリングラルギンU100を対照として比較検討することを目的に、26週間の無作為化二重盲検ダブルダミー第2相試験として実施された。主要評価項目は、ベースラインから26週間後のHbA1c値の変化とした。安全性の評価項目は低血糖エピソード、インスリン関連有害事象などであった。 適格患者247人をアイコデク群(125人)またはグラルギン群(122人)に無作為に割り付けた。両群の患者背景に有意差はなかった。投与後は血糖自己測定の結果により、週1回、インスリン用量が調整された。ベースラインのHbA1cの平均はアイコデク群8.09%、グラルギン群7.96%であった。26週後のHbA1cの平均変化量はアイコデク群-1.33%、グラルギン群-1.15%で、26週時点のHbA1cの平均はそれぞれ6.69%、6.87%であった。ベースラインからのHbA1c平均変化量の群間差は-0.18%(95%信頼区間 , -0.38 ~ 0.02;P=0.08)で有意差はなかった。副作用の低血糖に関して、血糖値<54mg/dLの低血糖または重度の認知機能障害を伴う低血糖の発生率は両群で同程度であった(1患者・年あたりアイコデク群0.53件、グラルギン群0.46件)。インスリン投与に関連する重要な有害事象の発現率について2群間の差はなかった。有害事象の多くは軽度で、試験薬に関連すると判断された重篤な有害事象はなかった。 結論として、2型糖尿病患者において、週1回のインスリンアイコデクによる治療は、血糖降下作用と安全性プロファイルが1日1回のインスリングラルギンU100と同等であった。 今回の第2相試験で、週1回のインスリンアイコデクはインスリングラルギンと同程度の血糖低下作用、安全性を有することが示唆された。患者の治療への負担軽減が期待される一方で、高齢者糖尿病などで遷延性低血糖を生じないか、低血糖の際にどのような対処がよいかなど、今後の研究結果も注視する必要があると考えられる。
2型糖尿病寛解を目的とした低炭水化物食および超低炭水化物食の有効性および安全性 既掲載・未掲載を問わない無作為化試験データの系統的レビュー
2型糖尿病寛解を目的とした低炭水化物食および超低炭水化物食の有効性および安全性 既掲載・未掲載を問わない無作為化試験データの系統的レビュー
Efficacy and safety of low and very low carbohydrate diets for type 2 diabetes remission: systematic review and meta-analysis of published and unpublished randomized trial data BMJ. 2021 Jan 13;372:m4743. doi: 10.1136/bmj.m4743. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】2型糖尿病患者に用いる低炭水化物食(LCD)と超低炭水化物食(VLCD)の有効性と安全性を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビューおよびメタ解析。 【データ入手元】開始から2020年8月25日までのCENTRAL、Medline、Embase、CINAHL、CABおよび灰色文献。 【試験選択】2型糖尿病成人患者を対象に、12週間以上のLCD(炭水化物1日130g未満または1日の総摂取カロリー2000kcal当たりに占める炭水化物の割合26%未満)およびVLCD(1日の総摂取カロリーに占める炭水化物の割合10%未満)を評価した無作為化試験を適格とした。 【データ抽出】糖尿病寛解(HbA1c 6.5%未満または空腹時血糖7.0nmol/L未満、糖尿病治療薬の使用問わず)、体重減少、HbA1c、空腹時血糖および有害事象を主要評価項目とした。健康関連のQOLおよび生化学的データを副次評価項目とした。全論文および転帰を個別に抽出し、追跡6カ月時および12カ月時のバイアスリスクおよびGRADEシステムを用いて根拠の確実性を評価した。ランダム効果メタ解析を用いて、推定リスクと95%信頼区間を算出した。臨床的重要性を明らかにするために事前に決定した最小重要差に従って転帰を評価し、バイアスリスクおよび事前に設定した下位集団7群を基に異質性を調べた。交互作用の有意性検定を用いて評価したあらゆる下位集団の効果を5点の信頼性チェックリストの対象とした。 【結果】検索で、文献1万4759編と試験23件(1357例)を特定し、評価項目の40.6%をバイアスリスクが低いと判定した。6カ月時、対照食と比べると、LCDの糖尿病寛解率(HbA1c 6.5%未満と 定義)が高かった(133例中76例(57%)v 131例中41例(31%)、リスク差0.32、95%信頼区間0.17~0.47、試験8件、264例、I2=58%)。一方で、HbA1c 6.5%未満かつ治療薬不使用を寛解の定義とすると、効果量が小さく、有意性がなくなった。信用度の基準を満たした下位集団の評価から、インスリン使用者を含む試験でLCDの寛解が著明に低下することが示唆された。12カ月時の寛解に関するデータが少なく、効果量が小さかったり、糖尿病リスクがわずかに上昇したりと幅があった。6カ月時に体重減少、トリグリセリドおよびインスリン感受性で臨床的に重要な大幅な改善が見られたが、12カ月時に消失した。信用性があると考えられた下位集団の評価を基にすると、VLCDは、制限が弱いLCDよりも6カ月時の体重減少の有効性が低かった。しかし、この効果は食事法の遵守で説明できた。つまり、遵守率が高いVLCD患者では、遵守率の低いVLCD患者を検討した試験よりも臨床的に重要な体重減少が見られた。6カ月時のQOLに有意差はなかったが、12カ月時に、臨床的に重要ではあるが有意性がないQOLおよび低比重リポ蛋白コレステロールの悪化が見られた。それ以外に、6カ月時および12カ月時の有害事象や血中脂質に両群の有意差や臨床的な重要性は認められなかった。 【結論】確実性が中程度ないし低度の科学的根拠を基にすると、6カ月間のLCD遵守によって有害な転帰がない糖尿病の寛解をもたらすと思われる。欠点に、以前から続く糖尿病寛解の定義に関する議論に加えて、長期的なLCDの有効性、安全性および食事満足度がある。 第一人者の医師による解説 日本の日常臨床への導入・定着が重要 求められる継続性も含めた糖質制限食指導の国内研究 山田 悟 北里大学北里研究所病院・糖尿病センター長 MMJ. April 2021;17(2):52 糖質制限食ほど毀誉褒貶の激しい食事法はないであろう。インスリンの発見(1921年)以前は、糖尿病治療といえば極端な糖質制限食しかなかったが、インスリン療法の普及とともに糖質摂取の自由化が進み、20世紀後半には脂質制限食の流布に伴い糖質制限食は民間療法とのイメージが定着した。これが21世紀になり2型糖尿病や肥満症の食事療法として復権し、その意義が(再)確立されたというのが歴史的流れである。 今回の研究は、その流れに沿うもので、2型糖尿病に対する糖質制限食の有効性を無作為比較試験23件(3件は日本で実施)のメタ解析で確認した。私は共著者だが、2019年に筆頭著者のGoldenberg氏らから研究への参加を打診された時には、正直、気乗りしなかった。すでに米国糖尿病学会(ADA)によって糖質制限食は血糖改善に対して最もエビデンスが実証された食事法であるとされ(1)、私が知るだけで20本以上の糖質制限食に関する無作為比較試験のメタ解析が存在し(2)、評価は確定済みと感じたからである。しかし、Goldenberg氏らは、2型糖尿病の寛解(HbA1c 6.5%未満を達成すること)という既報にはなかったアウトカムを設定するという。それで私もチームに参画した。 解析の結果、糖質制限食による6カ月後における寛解の有意な増加が示された。2型糖尿病は進行性の疾患であるとされる中、患者に対する朗報となろう。糖尿病の寛解以外でも、有意な有害作用の増加なく、体重、中性脂肪、インスリン抵抗性の改善が確認された。2型糖尿病は血糖のみならず多面的な介入を必要とする疾患であるとされる中、これらも患者にとって福音となろう。 そして、本研究でもう1つ重要なことが示された。それは、6カ月後の体重減量について極端な糖質制限食は緩やかな糖質制限食よりも効果が弱かったこと、あるいは、12カ月後の時点で糖尿病の寛解に有意差がなくなっていたことである。すなわち、どんなに優れた食事療法でも、遵守率や継続性に問題があれば、有効性は減弱してしまうと解釈できる。 世界的には糖質制限食の2型糖尿病に対する有効性や安全性が確立済みの中、今後、日本の日常臨床にいかに導入・定着させるかが大事である。そのためには、継続性も含めた糖質制限食指導についての国内研究が求められよう。それがあってこそ、かつてはあまりに研究数が少なすぎてできなかった、日本人を対象にした糖尿病食事療法についての無作為比較試験のメタ解析が可能になるであろう(3)。 1. Evert AB, et al. Diabetes Care. 2019; 42(5): 731-754. 2. 山田悟 . 公衆衛生 . 2019; 83(12): 870-878. 3. Yamada S, et al. Nutrients. 2018; 10(8): 1080.
コントロール不十分な1型糖尿病におけるハイブリッドクローズドループ型インスリンデ リバリー:多施設共同、12週間無作為化試験
コントロール不十分な1型糖尿病におけるハイブリッドクローズドループ型インスリンデ リバリー:多施設共同、12週間無作為化試験
Closed-loop insulin delivery in suboptimally controlled type 1 diabetes: a multicentre, 12-week randomised trial LANCET 2018 Oct 13;392(10155):1321-1329. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】1型糖尿病患者にとって、血糖コントロールの達成は依然として困難である。6歳以上の最適にコントロールされていない1型糖尿病患者を対象に、センサー付きポンプ療法と比較した昼夜ハイブリッド閉ループインスリン投与の有効性を評価した。 【方法】このオープンラベル、多施設、多国籍、単一期間、並行無作為化対照試験では、英国の4病院と米国の2施設の糖尿病外来クリニックから参加者を募集した。インスリンポンプで治療を受けている6歳以上の1型糖尿病で,血糖コントロールが最適でない(糖化ヘモグロビン[HbA1c] 7-5-10-0%) 参加者を12週間の自由生活でハイブリッド閉ループ療法またはセンサー補強型ポンプ療法にランダムに割付けた。インスリンポンプと持続的グルコースモニタリングのトレーニングは4週間のランイン期間中に行われた。対象者は中央無作為化ソフトウェアにより無作為に割り付けられた。2群への割り付けは非盲検下で行われ、無作為化は施設内でHbA1cが低い(8~5%未満)か高い(8~5%以上)かで層別化された。主要評価項目は、無作為化後12週目にグルコース濃度が3-9-10-0mmol/Lの目標範囲内に収まった時間の割合とした。主要評価項目と安全性評価項目の解析は、無作為化されたすべての患者さんで行われました。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号はNCT02523131、募集は終了している。 【所見】2016年5月12日から2017年11月17日まで、114名がスクリーニングされ、適格患者86名がハイブリッド閉ループ療法(n=46)またはセンサー補強ポンプ療法(n=40;対照群)にランダムに割り当てられた。グルコース濃度が目標範囲内にあった時間の割合は、コントロール群(54%、SD9、平均変化率差10-8%ポイント、95%CI 8-2~13-5、p<0-0001)と比較して、クローズドループ群で有意に高かった。クローズドループ群では,HbA1cがスクリーニング値の8-3%(SD 0-6)から4週間のランイン後に8-0%(SD 0-6)へ,12週間の介入期間後に7-4%(SD 0-6)へ低下した.対照群では,HbA1c値はスクリーニング時に8-2%(SD 0-5),ランイン後に7-8%(SD 0-6),介入後に7-7%(SD 0-5)であり,HbA1c割合の減少は対照群と比較して閉ループ群では有意により大きかった(変化の平均差 0-36%,95%CI 0-19 ~ 0-53;p<0-0001)。グルコース濃度が3-9mmol/L未満(変化の平均差-0-83%ポイント、-1-40から-0-16;p=0-0013)および10-0mmol/L以上(変化の平均差-10-3%ポイント、-13-2から-7-5;p<0-0001)で過ごした時間は、コントロール群と比較してクローズドループ群で短くなっていました。センサーで測定したグルコースの変動係数は,介入間で差がなかった(変化の平均差 -0-4%,95% CI -1-4%~0-7%;p=0-50).同様に,1日の総インスリン量にも差はなく(変化の平均差0-031 U/kg/日,95% CI -0-005~0-067;p=0-09), 体重にも差はなかった(変化の平均差0-68 kg,95% CI -0-34~1-69;p=0-19 ).重篤な低血糖は発生しなかった。クローズドループ群では輸液セットの不具合により糖尿病性ケトアシドーシスが1件発生した。その他の有害事象は、クローズドループ群で13件、対照群で3件であった。 【解釈】ハイブリッドクローズドループインスリン投与は、最適にコントロールされていない1型糖尿病患者の幅広い年齢層で低血糖のリスクを低減しながら血糖コントロールを改善する。 【FUNDING】JDRF、NIHR、Wellcome Trust。 第一人者の医師による解説 さらなる改良が望まれるインスリンデリバリーシステム 松久 宗英 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病・臨床研究開発センターセンター長・教授 MMJ.February 2019;15(1):19 本研究はハイブリッドクローズドループインスリンポンプの有用性と安全性を示した研究である。 Cambridge 大学が開発した Day-and-night hybrid closed-loop(FlorenceD2A closed-loop)システムに、 ミニメド620G(Medtronic)とスマートフォンを連係させたシステムを使用している。先進的インスリン機器の検証は、入院患者を対象とした完全監視下 の閉鎖的環境から、目の行き届くサマーキャンプやホテル生活、そして最後に自由生活での実証へと段階的に進められる。本研究はその最終段階に相当し、 かつ最も良い適応と考えられる血糖管理不十分な幅広い年齢の1型糖尿病患者を対象に12週間行われた研究である。 今回使用されたクローズドループインスリンポンプはハイブリッド型と呼ばれ、安定した状態では CGMによる皮下間質ブドウ糖濃度に応じたインスリン持続注入が行われ、夜間に優れた血糖管理が得られる。しかし、現状のインスリン注入アルゴリズ ムでは、食事による急激な血糖上昇を十分に抑制できないことが示されている。この理由として、皮下 インスリンの作用時間の遅れ、皮下間質と血漿のブドウ糖濃度のずれ、食事量評価の自動化の困難さなど複数の要因がある。また、血糖管理手段がインスリンによる血糖降下ベクトルしかないことも大きな要因である。そこで、カーボカウントに基づく追加インスリン量を患者が自己注入する従来の方法を併用するため、ハイブリッド型とされる。 本研究では血糖管理不十分の1型糖尿病患者に対し、これまでのSAPと比較して、HbA1cを0.36% 低下させ、平均センサーブドウ糖濃度、目標ブドウ 糖濃度達成時間、SDでみた血糖変動の改善もみられ、安定した血糖改善効果が示された。一方、低血糖の頻度や重症低血糖は両群間で同等であった。また、注入トラブルで糖尿病ケトアシドーシスが発症したことから、安全性の面では従来のSAPを凌駕するには至っていない。 これからも、より作用発現の早いインスリン製剤 の開発や、血糖上昇ベクトルを持つグルカゴンの併 用注入が可能なバイオニックインスリンポンプ(1)などの開発が進められており、1型糖尿病のより良い 管理が実現し、合併症のかなりの抑制が期待される。 ただし、これら先進機器も一定の機器トラブルを起 こすリスク、医療コスト、操作の煩雑さなど最後まで課題の克服に向けた研究開発が必要とされる。 1. El-Khatib FH, et al. Lancet. 2017;389(10067):369-380.
減量維持中のエネルギー消費に対する低炭水化物食の効果:無作為化試験。
減量維持中のエネルギー消費に対する低炭水化物食の効果:無作為化試験。
Effects of a low carbohydrate diet on energy expenditure during weight loss maintenance: randomized trial BMJ 2018 Nov 14 ;363 :k4583 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】炭水化物と脂肪の比率を変えた食事が総エネルギー消費量に及ぼす影響を明らかにすること 【デザイン】無作為化試験 【設定】米国2施設での多施設共同、2014年8月から2017年5月 【参加者】肥満度25以上の18~65歳の成人164名。 【介入】ランインダイエットで12%(2%以内)の体重減少後、炭水化物含有量に応じて3つの試験食(高、60%、n=54、中、40%、n=53、低、20%、n=57)のいずれかに20週間ランダムに割り付けました。試験食はタンパク質がコントロールされ、体重減少が2kg以内に維持されるようにエネルギーが調整されていた。炭水化物-インスリンモデルで予測される効果修飾を調べるため、サンプルを減量前のインスリン分泌量(経口ブドウ糖後30分のインスリン濃度)の3分の1に分割した。 【主要評および測定法】主要アウトカムは、二重標識水を用いて測定した総エネルギー消費量で、intention-to-treat解析により求めた。プロトコールごとの解析では、目標体重の減少を維持した参加者を含むため、より正確な効果推定ができる可能性がある。 【結果】intention-to-treat解析において、総エネルギー消費量は食事によって異なり(n=162、P=0.002)、総エネルギー摂取量に対する炭水化物の寄与が10%減少するごとに52kcal/d(95%信頼区間23~82)の線形傾向が見られた(1kcal=4.18kJ=0.00418MJ)。総エネルギー消費量の変化は、高炭水化物食と比較して、中炭水化物食に割り当てられた参加者で91 kcal/d(95%信頼区間-29〜210)、低炭水化物食に割り当てられた参加者で209 kcal/d(91〜326)大きかった。プロトコルごとの解析(n=120、P<0.001)では、それぞれの差は131 kcal/d(-6~267)および278 kcal/d(144~411)であった。体重減少前のインスリン分泌量が最も多い3分の1の参加者では、低炭水化物食と高炭水化物食の差はintention-to-treat解析で308kcal/d、per protocol解析で478kcal/dだった(P<0.004)。グレリンは、低炭水化物ダイエットに割り当てられた参加者において、高炭水化物ダイエットに割り当てられた参加者と比較して有意に低かった(両分析)。レプチンも低炭水化物食に割り当てられた参加者で有意に低かった(プロトコルごと)。 【結論】炭水化物-インスリンモデルと一致して、食事性炭水化物の低下は減量維持中のエネルギー消費量を増加させた。この代謝効果は、特にインスリン分泌が多い人の肥満治療の成功を向上させる可能性がある。 【TRIAL REGISTRATION】ClinicalTrials. gov NCT02068885。 第一人者の医師による解説 エネルギー消費と炭水化物比率の関連 さらなる検討必要 的場 圭一郎(講師)/宇都宮 一典(教授) 東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 MMJ.April 2019;15(2) 著者らの提唱する炭水化物̶インスリンモデル によると、高炭水化物食摂取後のインスリン/グルカゴン比上昇がエネルギー消費を抑制し、脂肪組織への脂肪蓄積を促進する。この状態が飢餓を進させて食欲が増加し、特に高インスリン血症を呈する肥満者で体重を増加させる。一方でこの炭水化物̶インスリンモデルに基づいた低炭水化物食の有効性には反論もあり、その根拠はこれまでの検証で対照群が存在しないこと、メタ解析では低炭水化物食と低脂肪食の間でエネルギー消費に差が認められなかったことである。しかし、効果が認められなかった研究のほとんどが2週間以内の短期間であり、低炭水化物食への適応化には少なくとも2~3週間が必要とする報告もある。そこで、本研究では減量維持期における低炭水化物食のエネルギー消費に対する効果を20週間にわたって観察した。 対象はBMI 25kg/m2以上の成人164人とし、 12%の体重減少後、炭水化物の割合が異なる3つの群(総エネルギー摂取量に占める炭水化物の比率: 高60%、中40%、低20%)に割り付けられた。主要評価項目は、二重標識水法によって測定した総エネルギー消費量とされた。結果、総エネルギー摂取量に占める炭水化物比率によって総エネルギー消費量には有意な差があり、炭水化物比率が10%低下するごとに52kcal/日増加した。高炭水化物群 に比べて中炭水化物群では91kcal/日、低炭水化 物群では209kcal/日増加した。低炭水化物群では、 食欲を増進させるホルモンであるグレリンの血中濃度が低下していた。 本研究から得られた結果は、炭水化物̶インスリンモデルに矛盾しないものであり、高インスリン血症を呈する肥満者の食事療法を検討する上で重要な意義を有する、と著者らは結論付けている。しかし、本研究は栄養素の組成がエネルギー消費に影響を与えることを示した点では新規性があるものの、その測定方法の精度には限界があり、実臨床で本研究のような厳格なプロトコールを実施することは困難である。また、炭水化物の総量と比率のどちらを重視すべきか、糖尿病のような代謝異常を合併した肥満者での効果、栄養素の組成がエネ ルギー消費を変化させる詳細な機序は不明であり、さらなる検討が必要である。