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米国における人種・民族別の糖尿病有病率(2011年~2016年)。
Prevalence of Diabetes by Race and Ethnicity in the United States, 2011-2016
JAMA 2019 Dec 24;322(24):2389-2398.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
【重要】米国におけるヒスパニック系及びアジア系アメリカ人亜集団の糖尿病有病率は不明である。
【目的】米国の20歳以上の成人における糖尿病有病率の人種・民族差を主要な人種・民族グループ別及び選択したヒスパニック及び非ヒスパニック系アジア人亜集団別に推定する。
【デザイン・設定・参加者】National Health and Nutrition Examination Surveys,2011~2016年、非施設化民間、米国人集団を代表する横断的サンプルである。サンプルは、面接時に自己申告で糖尿病と診断された者、またはヘモグロビンA1c(HbA1c)、空腹時血糖値(FPG)、2時間血糖値(2hPG)を測定した20歳以上の成人であった。
【曝露】人種/民族群:非ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系黒人、ヒスパニック系およびヒスパニック系サブグループ(メキシコ、プエルトリコ、キューバ/ドミニカ、中央アメリカ、南アメリカ)、非ヒスパニック系アジア人および非ヒスパニック系アジア人サブグループ(東、南、東南アジア)、非ヒスパニック系その他、診断済み糖尿病は自己報告の事前診断によるものであった。未診断の糖尿病は、糖尿病と診断されていない参加者のHbA1c 6.5%以上、FPG 126mg/dL以上、または2hPG 200mg/dL以上と定義された。
【結果】調査対象は米国の成人7575人(平均年齢47.5歳,女性52%,非ヒスパニック系白人2866人[65%],非ヒスパニック系黒人1636人[11%],ヒスパニック1952人[15%],非ヒスパニック系アジア人909人[6%],非ヒスパニック系その他212人[3%])であった。合計2266人が糖尿病と診断され、377人が糖尿病と診断されていなかった。年齢と性別で調整した糖尿病有病率は,非ヒスパニック系白人で 12.1%(95% CI,11.0%-13.4%), 非ヒスパニック系黒人で 20.4%(95% CI,18.8%-22.1%), ヒスパニック系で 22.1%(95% CI,19.6%-24.7%), 非ヒスパニック系アジア人で 19.1%(95% CI,16.0%-22.1%) となった(全体 P < 0.001) .ヒスパニック系成人では,糖尿病全体の有病率は,メキシコ人で 24.6%(95% CI,21.6%-27.6%), プエルトリコ人で 21.7%(95% CI,14.6%-28.8%), キューバ/ドミニカ人で 20.5%(95% CI,13.7%-27.3%), 中米人で 19.3%(95% CI,12.4%-26.1%), 南米人で 12.3%(95% CI, 8.5%-16.2%) となっていた(全体での P < .001).非ヒスパニック系アジア人の成人では,糖尿病全体の有病率は,東アジア人で 14.0%(95% CI,9.5%-18.4%), 南アジア人で 23.3%(95% CI,15.6%-30.9%), 東南アジアのサブグループで 22.4%(95% CI,15.9%-28.9%) であった(全体の P = .02).診断されていない糖尿病の有病率は、非ヒスパニック系白人で3.9%(95%CI、3.0%-4.8%)、非ヒスパニック系黒人で5.2%(95%CI、3.9%-6.4%)、ヒスパニックで7.5%(95%CI、5.9%-9.1%)、非ヒスパニック系アジアの成人で7.5%(95%CI、4.9%-10.0%)だった(全体でのP < .001).
【結論と関連性】2011年から2016年の米国の成人を対象としたこの全国代表的な調査において,糖尿病および診断されていない糖尿病の有病率は,人種/民族によって,またヒスパニックおよび非ヒスパニック・アジア人集団内で特定されるサブグループによって異なっていた。
第一人者の医師による解説
至近データでの推算 糖尿病予防対策に有意義
原井 望、森 保道(部長)虎の門病院内分泌代謝科
MMJ.August 2020;16(4)
米国における成人の糖尿病患者数は2018年時点で約3400万人(成人の13%)にのぼる(1) 。現在、米国ではヒスパニック(H)系とアジア(A)系の人口が23%を占め、増加傾向にある。世界的にH系、A系の糖尿病有病率はヨーロッパ系・アフリカ系よりも高いとされ、同有病率の違いが生じる要因として、遺伝的・後成的因子、生活因子、環境因子などが指摘されている。
本論文は、米国における人種間での糖尿病有病率を比較するために、H系とA系の調査が重点化された2011~16年の米国民健康栄養調査(NHANES)をもとに、20歳以上の米国成人7 ,575人(平均年齢47 .5 歳、女性51.9%)を対象に実施された横断的研究の報告である。
人種構成は、①非H系白人2 ,866人、②非H系黒人1,636人、③ H系(メキシコ、プエルトリコ、キューバ/ドミニカ、中央アメリカ、南アメリカ)1.952人、④ A系(東アジア、南アジア、東南アジア)909人、⑤その他212人であった。NHANES統計解析ガイドライン(2)に基づき母集団を推算した米国成人の糖尿病有病率は14 .6%であった。さらに年齢と性別で調整した人種別の糖尿病有病率はそれぞれ①12.1%、②20.4%、③22.1%、④19.1%、⑤18.5%であり、米国成人の糖尿病有病率は人種間で有意差が認められた。各人種内でも出身由来地による差があり、H系の中ではメキシコ系の有病率が24 .6%と最も高率で、一方A系では中国、日本、韓国の東アジア由来が14.0%と最も低率という結果になった。
既報では、糖尿病有病率上昇の関連因子として肥満や低~中所得者が挙げられている(3) 。本論文では、人種間における教育や体格指数(BMI)の違いについても比較検討している。高校以上の教育を受けた割合は、A系が73 .9%で最も高く、H系は40 .3%で最も低かった。一方BMIに関しては、A系はBMI 24 .4と他の人種(BMI, 29.1 ~ 30.6)と比較し低値であった。BMIによる調整を追加した人種別の糖尿病有病率はそれぞれ①11.9%、②18.4%、③20.3%、④27.0%、⑤17.7%となり、A系が最も高かった。アジア人は欧米人と比較し、インスリン分泌能が低く、軽度のBMI上昇でも糖尿病になりやすいといわれており、本論文でもそれを裏付ける結果となった。
今後の米国での糖尿病予防対策を考慮するうえで、至近のデータをもとに人種ごとの糖尿病有病率が推算されたことは意義深い。なお、本研究の限界として、横断的研究であり因果関係の推測が困難であること、糖尿病の病型が不明であること、人種区分が自己申告に基づくことなどが挙げられる。
1. National Diabetes Statistics Report 2020 (https://bit.ly/2WImXwq)
2. NHANES Survey Methods and Analytic Guidelines, 2011-2014 and 2015-
2016. CDC website. (https://bit.ly/2LyLWMe)
3. World Health Organization: Global report on diabetes 2016 (https://bit.
ly/2TcQnQP)