ライブラリー 成人市中肺炎患者における早期臨床効果のための経口レファミュリンとモキシフロキサシンの比較。LEAP 2 Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
Oral Lefamulin vs Moxifloxacin for Early Clinical Response Among Adults With Community-Acquired Bacterial Pneumonia: The LEAP 2 Randomized Clinical Trial
JAMA 2019 ;322 (17):1661 -1671.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
【重要性】市中肺炎(CABP)の治療には、抗菌薬耐性の向上と標準治療の安全性の懸念から、新しい抗菌薬が必要である。
【目的】CABP患者におけるレファミン5日間経口レジメンの有効性と有害事象を評価する。
【デザイン、設定および参加者】Pneumonia Outcomes Research Team(PORT)のリスククラスがII、III、IVである18歳以上の成人、X線写真で肺炎が確認されている、急性疾患、3つ以上のCABP症状、2つ以上のバイタルサイン異常がある、19か国99施設で行われた第3相、非劣性ランダム化臨床試験。最初の患者訪問は2016年8月30日で、患者は30日間フォローアップされ、最終フォローアップ訪問は2018年1月2日であった
【介入】患者は、レファムリン(600 mg 12時間毎 5日間;n = 370)またはモキシフロキサシン(400 mg 24時間毎 7日間;n = 368)の内服を受けるよう1対1にランダムに割り付けられた。
【主要評価項目】米国食品医薬品局(FDA)の主要評価項目は、intent-to-treat(ITT)集団(無作為化された全患者)において、いずれかの試験薬の初回投与後96時間(24時間以内)における早期臨床反応とした。)奏効者は、生存しており、4つのCABP症状のうち2つ以上に改善が見られ、どのCABP症状も悪化しておらず、現在のCABPエピソードに対して試験薬以外の抗菌薬を投与されていない者と定義されました。欧州医薬品庁(EMA)の副次評価項目は、修正ITT集団および臨床評価可能集団における治癒判定(最終投与から5~10日後)の際の治験責任医師による臨床効果の評価としました。非劣性マージンは、早期臨床効果および治験責任医師評価による臨床効果について10%とした。
【結果】無作為化患者738例(平均年齢57.5歳、女性351例[47.6%]、PORTリスククラスがⅢまたはⅣの360例[48.8%])において、707例(95.8%)が試験を完了した。早期臨床効果率は、レファムリンで90.8%、モキシフロキサシンで90.8%でした(差は0.1%[1-sided 97.5% CI, -4.4% ~ ∞])。治験責任医師による臨床的奏功の評価率は、修正ITT集団でレファムリン87.5%、モキシフロキサシン89.1%(差:-1.6%[1-sided 97.5% CI, -6.3~∞])、臨床的評価可能集団では治癒判定でそれぞれ89.7%と93.6%(差:-3.9%[1-sided 97.5% CI, -8.2~∞] )であり、レファムリンはモキシフロキサシンの1/3以下であった。最も頻繁に報告された治療上緊急の有害事象は、消化器系(下痢:レファミュリン群45/368例[12.2%]、モキシフロキサシン群4/368例[1.1%]、吐き気:レファミュリン群19/368例[5.2%]、モキシフロキサシン群5/368例[1.0%])であった。
【結論と関連性】CABP患者において、初回投与後96時間の早期臨床効果に関して、5日間経口レファミュリンは7日間経口モキシフロキサシンに対して非劣性を示した。
【試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT02813694、欧州臨床試験Identifier:2015-004782-92。
第一人者の医師による解説
現行抗菌薬の数倍の価格 使用を制限する要因となる可能性
藤田 次郎 琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科)教授
MMJ.February 2020;16(1)
本論文は、市中細菌性肺炎を対象としたレファムリンとモキシフロキサシンの無作為化比較対照試 験(LEAP 2試験)に関する報告である。レファムリンは、プレウロムチリン系抗菌薬に分類され、細 菌リボソームの50Sサブユニットのペプチド転移酵素に結合することによって細菌の蛋白合成を阻害する新規抗菌薬である。
今回の第3相臨床試験は、世界19カ 国( 欧州、 南米およびメキシコ、米国、アジア、アフリカ)、 99の 医療施設 で 実施 さ れ た。対象者 は、18歳以 上 でPneumonia Outcomes Research Team (PORT)リスク分類 II、IIIまたはIVで、画像所見にて確認され、臨床症状や身体所見を有する急性細菌 性肺炎患者である。適格患者(738人)のうち、一 群(370人)はレファムリンの経口薬600mgを、 1日2回、5日間服用し、もう一群(368人)はニューキノロン系抗菌薬のモキシフロキサシン 400mg を、1日1回、7日間服用し、両者の市中細菌性肺炎 対する治療効果が比較された。米食品医薬品局 (FDA)の主要エンドポイントは96時間後の早期臨床効果である。
結果として、内服開始96時間以内に、急性細菌性肺炎が一定レベル以上改善する早期臨床効果が得られた割合は、レファムリン群90.8%、モキシ フロキサシン群90.8%で両群に差はなく、治療終了後5~10日時点の治癒率(test of cure)も両群 間で差を認めなかった。ただしレファムリンの有 害事象として、モキシフロキサシンと比較して、消化器症状(下痢12.2%、嘔気5.2%、嘔吐3.3%)の頻度が高い傾向を認めた。
今回の臨床試験により、市中細菌性肺炎に対する有効性においてレファムリンのモキシフロキサシンに対する非劣性が証明された。またモキシフロキサシンと同様に、レファムリンは多剤耐性肺炎球菌による肺炎またはレジオネラ肺炎に対しても有 用性を示した。
本論文に対してEditor’s Note(1)が併載されている。多くの大手製薬企業が抗菌薬開発から撤退する中で、小さな会社が新規作用機序を有する新たな抗菌薬を開発したことは喜ばしいものの、驚くのはモキシフロキサシンやレボフロキサシンよりも数倍高い価格(1日あたり注射剤は205ドル、経口薬は275ドル)であり、使用を制限する要因になりうる、と述べている。
わが国は、これまで多くの抗菌薬を開発してきた。世界で広く使用される抗菌薬として、レボフロ キサシン、クラリスロマイシン、メロベネムなどがある。近年、耐性菌対策で抗菌薬の使用制限が優先され、抗菌薬の開発を中止した製薬企業が多い。レファムリンの登場に際し、日本の製薬企業にも新規抗菌薬の開発を期待したい。
1. Malani PN. JAMA. 2019;322(17):1671-1672.