「心血管疾患」の記事一覧

ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号)
SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 国内外でSARS-CoV-2オミクロンBA.2株への置き換わりが急激に進んでいる。BA.2株の感染性・病原性、COVID-19回復者やワクチン接種者の血漿のBA.2に対する中和活性、治療用モノクローナル抗体と抗ウイルス剤への有用性の検討が行われた。Nature誌2022年5月18日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む ワクチン未接種のSARS-CoV-2オミクロン感染と交差免疫の検討 オミクロン感染による、他変異株に対する交差免疫の検討が行われた。ワクチン接種有無による、交差免疫発現の違いが示唆された。Nature誌2022年5月18日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 糖尿病におけるSGLT2阻害薬間の心血管転帰の比較 SGLT2阻害剤の個々の薬剤間で心血管予後を比較したデータは少ない。日本における大規模なリアルワールドデータ(25,315例)を用いて,個々のSGLT2阻害剤間のその後の心血管リスクを検討した。Cardiovascular Diabetology誌2022年5月18日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 5〜11歳の米国の子供におけるCOVID-19ワクチンBNT-162b2接種の安全性 5~11歳の小児に対する承認後のCOVID-19ワクチンBNT-162b2(Pfizer/BioNTech)の安全性データ、特に青年・若年成人で見られた心筋炎の有害事象が限定的である。米国のCOVID-19ワクチン接種プログラムの最初の4カ月間に観察された有害事象を検証した。Pediatrics誌2022年5月18日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 食事中のコレステロール、血清コレステロール、卵の消費量と全死亡率・心血管疾患起因死亡率との関連 人間の健康に対する外因性(食事)・内因性(血清)コレステロールへの影響評価は不十分である。食事性コレステロール、卵の消費量、血清コレステロール値と全死亡率、CVD死亡率に関する前向きコホート研究及び、システマティックレビューとメタアナリシスを行った。Circulation誌2022年5月17日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号)
乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 乳製品または食事性カルシウムと前立腺がんの因果関係が示唆されているものの、そのエビデンスは限定的である。米国およびカナダのセブンスデー・アドベンティスト(=キリスト教の一派)男性2万8,737人(黒人民族:6,389人)に対し、前向きコホート研究を行った。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2022年6月8日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 心房細動に対するモバイルヘルス介入の設計と根拠 心房細動患者の慢性疾患自己管理を支援するために,デジタルや健康リテラシーに関係なく利用可能な、スマートフォンと連動する機器AliveCor Kardia を開発した。経口抗凝固療法へのアドヒアランスが向上するか、単一施設並行群無作為化臨床試験で検討を行った。American Heart Journal誌オンライン版2022年6月9日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 食事の匂いに反応して分泌されたセロトニンとドパミンが老化を調節する? 食事制限と長寿の関係はよく研究されている。食事摂取自体ではなく、食事の匂いの有無が老化を調節するのではないかを線虫を用いてシグナル伝達経路を分析した。Nature communications誌2022年6月7日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む モルヌピラビルに入院率、死亡率の改善以外のベネフィットはあるか? MOVe-OUT試験で、モルヌピラビル(製品名:ラゲブリオ)は軽度から中等度のCOVID-19外来患者の入院率、死亡率を有意に減少させることが報告された。他の潜在的な臨床上のベネフィットを明らかにするため、CRP値、SpO2値、呼吸介入の必要性、退院までの時間についてMOVe-OUT試験の二次解析を行った。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年6月7日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 中国人におけるアルコール摂取と心血管疾患罹患率・全死亡率との因果関係 適度なアルコール摂取が心血管疾患に及ぼす因果関係については、特に冠動脈心疾患に対して継続的に議論されている。アルコール摂取と心血管疾患罹患率および全死因死亡率との因果関係を探索することを目的とし、4万386人の中国人男性を対象に、前向きコホート研究が行われた。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2022年6月10日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
尿中Na排泄、血圧、心血管疾患、死亡:地域単位の前向き疫学的コホート研究
尿中Na排泄、血圧、心血管疾患、死亡:地域単位の前向き疫学的コホート研究
Urinary sodium excretion, blood pressure, cardiovascular disease, and mortality: a community-level prospective epidemiological cohort study LANCET 2018 Aug 11;392(10146):496-506. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】WHOは、心血管疾患の予防対策として、国民のナトリウム摂取量を2g/日未満とすることを推奨しているが、この目標はどの国でも達成されていない。この勧告は主に血圧(BP)の短期試験による個人レベルのデータに基づいており、無作為化試験や観察研究による低ナトリウム摂取と心血管イベントの減少との関連データはない。我々は、地域レベルの平均ナトリウムおよびカリウム摂取量と心血管疾患および死亡率との関連を調査した。 【方法】Prospective Urban Rural Epidemiology研究は、21カ国で進行中である。ここでは、18カ国で行われた臨床転帰のデータを用いた解析を報告する。対象者は、一般住民から抽出された35~70歳の心血管疾患のない成人である。摂取量の代用として、朝の空腹時尿を用いて24時間のナトリウムとカリウムの排泄量を推定した。369地域(すべて50人以上)でナトリウムとカリウムの摂取量と血圧との地域レベルの関連を,255地域(すべて100人以上)で心血管疾患と死亡率との関連を評価し,個人レベルのデータを用いて既知の交絡因子について調整した。 【所見】369地域の95 767人が血圧について,255地域の82 544人が心血管予後の評価を行い,中央値は8~1年間フォローアップされた。中国では103地域中82地域(80%)が平均ナトリウム摂取量が5g/日を超えていたが,その他の国では266地域中224地域(84%)が平均3~5g/日であった。全体として、平均収縮期血圧は平均ナトリウム摂取量が1g増加するごとに2~86mmHg上昇したが、正の関連はナトリウム摂取量の最高三分位の地域でのみ見られた(異質性についてはp<0-0001)。平均ナトリウム摂取量と主要な心血管イベントとの関連は、ナトリウム摂取量の最低三分位で有意な逆相関が見られ(最低三分位<4-43 g/日、平均摂取量4-04 g/日、範囲3-42-4-43;1000年当たりの変化-1-00イベント、95%CI -2-00~-0-01, p=0497)、中間三分位では関連がなく(中三分位 4-43-5-08 g/日、平均取得4-70 g/日, 4-44-5.05;1000年当たりの変化0-24イベント、-2-12〜2-61、p=0-8391)、最高三分位では正の関連があるが有意ではない(最高三分位>5-08g/日、平均摂取量5-75g/日、>5-08〜7-49;1000年当たりの変化0-37イベント、-0-03〜0-78、p=0-0712)。中国(平均ナトリウム摂取量5-58 g/日,1000年当たり0-42イベント,95%CI 0-16~0-67,p=0-0020) では,他の国(4-49 g/日,-0-26イベント,-0-46~-0-06,p=0-0124;異質性についてはp<0-0001) に比べ脳卒中に強い関連が見られた.すべての主要な心血管アウトカムは,すべての国でカリウム摂取量の増加とともに減少した。 【解釈】ナトリウム摂取は,平均摂取量が5 g/日を超える地域でのみ心血管疾患および脳卒中と関連していた。これらの地域や国ではナトリウムを減らすが、他の地域では減らさないという戦略が適切かもしれない。 【FUNDING】人口健康研究所、カナダ保健研究所、カナダ保健省患者指向研究戦略、オンタリオ保健長期ケア省、オンタリオ心臓・脳卒中財団、欧州研究評議会。 第一人者の医師による解説 厳格な減塩と心血管疾患の関連 ランダム化試験での検証が必要 桑島 巖 NPO 法人臨床研究適正評価教育機構理事長 MMJ.February 2019;15(1):13 本論文は21カ国を対象として8.1年間追跡した大 規模疫学コホート研究 PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)研究の結果報告である。Na摂取量が1日摂取量5g(食塩12.7g)を超える地域(おもに中国)では、食塩摂取量増加につれて心血管イベントが上昇するが、摂取量平均4.04g(食塩10.3g)以下の低摂取群でもリスクが上昇する、いわゆる“Jカーブ現象”がみられたというのが趣旨である。厚生労働省や健康日本21が目標とする食塩摂取量1日 8g未満ではむしろリスクが上昇するということになる。本論文の特徴は、中国の地域社会でのデータが約40%を占め、そのうち80%の地域でNa摂取量 が1日5g(食塩12.7g)以上であり、平均摂取量が他の地域よりも際だって高い点である(Na 5.58g 対 4.45g;食塩14.2g 対 11.3g)。すなわち食塩摂取量とリスクの関係には地域性(community-based)が関連していることを示している。地域差が大きいことは人種による食塩感受性の違いも関連している可能性もあり、このcommunity-basedの結果を日本人 一般社会に適用することには慎重でなければならない。食塩摂取量と心血管イベントのJカーブ現象の報告は2011年のEPOCH研究(1)やO’Donnellらの観 察研究(2)でも報告されており、疫学的には真実なのかもしれない。しかし重要なことは、このような疫学観察研究の結果は、リスクと食塩摂取の因果関係を示すものではなく、減塩によるリスク低減効果の有無は高血圧や心血管疾患既往の有無といった個人的背景でも異なることを理解しておく必要があろう。食塩の低摂取群で心血管合併症が多い理由の1 つとして減塩によるレニン-アンジオテンシン系の亢進が心血管イベントを増やす可能性は否定できない。さらに低Na血症自体が慢性疾患や栄養障害を反映した結果である可能性もある。ただしK摂取と心血管イベントは逆相関するとの結果は、世界のガイドラインと一致する。 食塩摂取量と血圧あるいは心血管イベントとの関連の研究間で異なった結果がでる要因の1つは、尿中Na排泄量の測定方法である。24時間蓄尿から測定するのが標準であるが、PURE研究では早朝スポット尿を用いて1日Na排泄量を推定しているが、 信頼性の限界がある。 2013年に発表されたランダム化試験のメタアナリシス結果(3)では人種、高血圧の有無にかかわらず 食塩摂取量と血圧の関連は直線的であり、1日6g未満の減塩で収縮期血圧5.8mmHgが低下すると報告しており、やはり世界基準と矛盾しない結果を示している。しかしこの論文は、心血管イベントとの関係を示したメタアナリシスではない。日本人は食塩 摂取が過度な人種であり、減塩が心血管イベントや死亡を増やすか否かに関してはより高いエビデンスによる検証に期待したい。 1. Stolarz-Skrzypek K, et al., JAMA. 2011;305(17):1777-1785. 2. O'Donnell MJ, et al., JAMA. 2011;306(20):2229-2238. 3. He FJ, et al., BMJ. 2013;346:f1325.
心血管イベントの予測を目的としたベースラインおよびスタチン療法中のリポ蛋白(a) 値:スタチンに関する心血管アウトカム試験の患者個別データを用いたメタアナリシス
心血管イベントの予測を目的としたベースラインおよびスタチン療法中のリポ蛋白(a) 値:スタチンに関する心血管アウトカム試験の患者個別データを用いたメタアナリシス
Baseline and on-statin treatment lipoprotein(a) levels for prediction of cardiovascular events: individual patientdata meta-analysis of statin outcome trials LANCET 2018 Oct 13;392(10155):1311-1320. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】リポ蛋白(a)の上昇は、一般人口調査において、心血管疾患の遺伝的危険因子である。 【方法】7つの無作為化プラセボ対照スタチンアウトカム試験から得られた患者レベルのデータを照合し,調和させて,致死的または非致死的冠動脈心疾患,脳卒中,血行再建術と定義した心血管イベントのハザード比(HR)を算出した。心血管イベントのHRは、あらかじめ定義されたリポ蛋白(a)群(15~<30mg/dL、30~<50mg/dL、≧50mg/dL、<15mg/dL)ごとに各試験内で推定され、多変量ランダム効果メタ解析により推定値がプールされた。 【結果】解析には、リポ蛋白(a)測定を繰り返し行った患者29069人(平均年齢62歳[SD 8]、女性8064人[28%]、リスク95 576人年中に5751件のイベント)のデータが含まれた。)スタチン治療の開始により、LDLコレステロールは減少したが(平均変化率 -39% [95% CI -43 to -35])、リポ蛋白(a)には有意な変化がなかった。ベースラインおよびスタチン治療中のリポ蛋白(a)と心血管疾患リスクとの関連はほぼ線形であり、ベースラインのリポ蛋白(a)は30 mg/dL以上、スタチン治療中のリポ蛋白(a)は50 mg/dL以上でリスクが増加した。ベースラインのリポ蛋白(a)について、年齢と性別で調整したHR(対15mg/dL)は、15mg/dL以上30mg/dL未満で1-04(95%CI 0-91-1-18)、30mg/dL以上50mg/dL未満で1-11(1-00-1-22)、50mg/dL以上では1-31(1-08-1-58)であった。オンスタチンリポ蛋白(a)のHRは0-94(0-81-1-10)、1-06(0-94-1-21)、1-43(1-15-1-76)であった。心血管疾患の既往、糖尿病、喫煙、収縮期血圧、LDLコレステロール、HDLコレステロールでさらに調整しても、HRはほぼ同じであった。スタチン投与によるリポ蛋白(a)と心血管疾患リスクとの関連は、プラセボ投与によるリポ蛋白(a)よりも強く(相互作用p=0-010)、若年でより顕著であり(相互作用p=0-008)、他の患者レベルまたは試験レベルの特性による効果修飾はなかった。 【解釈】このスタチン投与患者の個人-患者データのメタ解析では、ベースラインおよびスタチン投与によるリポ蛋白(a)の上昇により、独立に、心血管疾患リスクとほぼ直線関係が示される。本研究は、心血管疾患アウトカム試験において、リポ蛋白(a)低下仮説を検証する根拠を提供する。 第一人者の医師による解説 リポ蛋白(a)高値の残余リスク示し 低下療法の妥当性を裏付け 田中 正巳(特任講師)/伊藤 裕(教授) 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 MMJ.February 2019;15(1):15 スタチンによるLDLコレステロール低下療法が 心血管疾患を抑制することには今や議論の余地はない。しかしその抑制率は50%にも満たず、多くの残余リスクの存在が想定されている。本論文は、高リポ蛋白(a)血症がスタチン療法中の残余リスクであることを明らかにするとともに、リポ蛋白(a)低下療法の妥当性に言及している。 高リポ蛋白(a)血症が心血管疾患の危険因子であることは以前より知られていたが、この知見は主に 1次予防におけるエビデンスに基づいており、2次予防やスタチン療法中の患者でも危険因子であるのかは不明であった。本研究は、このような患者でもリポ蛋白(a)値が高まると直線的に心血管リスクが 高まることを明確に示した。さらに、スタチンはリ ポ蛋白(a)値を変化させず、プラセボよりもスタチン療法中の患者においてリポ蛋白(a)はより重要な危険因子である可能性を示した。本研究の最大の強みは、豊富な患者数(n = 29,069)、イベント数(n = 5,751)に基づく統計学的パワーである。従来の研究とは異なり、リポ蛋白(a)> 50 mg/dLの患者を多く含んでいる。したがって、スタチン療法中の高リポ蛋白(a)血症が心血管疾患の残余リスクであることは確からしいと言えるだろう。 本研究は無作為化対照試験のメタアナリシス、すなわちpost-hoc解析であるため、その結果の解釈には注意が必要である。日本の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」をひもとくと、「高リポ蛋白(a)血症が動脈硬化性疾患の危険因子である」とのステートメントには「E-1a(コホート研究のメタアナリシス)」という高いエビデンスレベルを付与し ている。またリポ蛋白(a)の遺伝子異常(1塩基多型) を有する患者では、血中リポ蛋白(a)値と冠動脈疾 患リスクが高いことが研究によって示されている(1) 。 これらの知見と本研究の結果を併せて考えると、高リポ蛋白(a)血症が原因、心血管疾患が結果という 因果関係の成り立つ可能性が一層高まったと言えよう。 そうなると次のステップは本論文に書かれているとおり、高値のリポ蛋白(a)を低下させた場合に心 血管疾患を実際に予防できるか証明することであ る。スタチン、エゼチミブ、フィブラートはリポ蛋 白(a)値を下げることはできず、低下作用が報告されていたPCSK9阻害薬も最近の臨床試験では低下作用を認めなかった(2) 。一方、アポリポ蛋白(a)のア ンチセンス薬を用いた第1相、第2相試験の結果が報告されている(3),(4)。リポ蛋白(a)値は用量依存的に大きく低下し、安全性には問題を認めなかったことより、このアンチセンス療法は有望視されている。 本論文は、リポ蛋白(a)低下療法に関する前向き臨床試験を行う「お墨付き」を与えたと言えよう。安全で効果的な薬剤が開発されれば、スタチン療法にもかかわらず依然として心血管疾患の残余リスクが高い患者にとって大きな福音となる。 1. Clarke R, et al. N Engl J Med. 2009;361(26):2518-2528. 2. Roth EM, et al. Int J Cardiol. 2014;176(1):55-61. 3. Tsimikas S, et al. Lancet. 2015;386(10002):1472-1483. 4. Viney NJ, et al. Lancet. 2016;388(10057):2239-2253.
2017年米国心臓病学会/米国心臓協会血圧ガイドラインを用いた若年成人における血圧分類とその後の心血管イベントとの関連性
2017年米国心臓病学会/米国心臓協会血圧ガイドラインを用いた若年成人における血圧分類とその後の心血管イベントとの関連性
Association of Blood Pressure Classification in Young Adults Using the 2017 American College of Cardiology/American Heart Association Blood Pressure Guideline With Cardiovascular Events Later in Life JAMA 2018 Nov 6 ;320 (17 ):1774 -1782. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】若年成人期の血圧(BP)レベルと中年期までの心血管疾患(CVD)イベントとの関連についてはほとんど知られていない。 【目的】2017年米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)BPガイドラインで定義された高血圧を40歳前に発症した若年成人は、正常血圧維持者と比較してCVDイベントリスクが高くなるかどうかを評価することである。 【デザイン、設定および参加者】1985年3月に開始された前向きコホート研究Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)研究において解析を実施した。CARDIAでは,米国の4つのフィールドセンター(アラバマ州バーミンガム,イリノイ州シカゴ,ミネソタ州ミネアポリス,カリフォルニア州オークランド)から18~30歳のアフリカ系米国人と白人5115人が登録された。アウトカムは2015年8月まで入手可能であった。 【曝露】初診から40歳以降に最も近い検査までに測定された最高血圧を用いて,各参加者を正常血圧(未治療収縮期血圧[SBP]<120mmHg,拡張期血圧[DBP]<80mmHg:n=2574)に分類した。)BP上昇(未治療のSBP 120-129 mm HgおよびDBP <80 mm Hg;n = 445)、ステージ1高血圧(未治療のSBP 130-139 mm HgまたはDBP 80-89 mm Hg;n = 1194)、またはステージ2高血圧(SBP ≥140 mm Hg, DBP≥90 mm Hg, または降圧剤を服用;n = 638)であった。 【主要評および測定法】CVDイベント:致死性および非致死性の冠動脈性心疾患(CHD),心不全,脳卒中,一過性脳虚血発作,末梢動脈疾患(PAD)への介入。 【結果】最終コホートには成人4851人(アウトカム追跡開始時の平均年齢,35.7歳[SD,3.6];女性2657人[55%];アフリカ系アメリカ人2441人[50%];降圧剤服用206人[4%])を含める。中央値18.8年の追跡期間中に,228件のCVDイベントが発生した(CHD,109件,脳卒中,63件,心不全,48件,PAD,8件)。正常血圧,血圧上昇,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧のCVD発生率は,それぞれ1000人年当たり1.37(95%CI,1.07-1.75),2.74(95%CI,1.78-4.20),3.15(95%CI, 2.47-4.02),8.04(95% CI,6.45-10.03 )であった。多変量調整後,BP上昇,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧のCVDイベントのハザード比は,正常BPに対してそれぞれ1.67(95%CI,1.01-2.77),1.75(95%CI,1.22-2.53)および3.49(95%CI,2.42-5.05)であった。 【結論と関連性】若年成人において,2017年米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)ガイドラインの血圧分類で定義された40歳前の血圧上昇,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧の者は,40歳前の血圧が正常の者と比較してその後の心血管疾患イベントリスクが有意に高かった。ACC/AHA血圧分類システムは、心血管疾患イベントのリスクが高い若年成人を特定するのに役立つ可能性があります。 第一人者の医師による解説 若年成人の血圧異常への介入と、さらに若い年齢層での研究が必要 粟津 緑 慶應義塾大学医学部小児科非常勤講師 MMJ.April 2019;15(2) 2017年に発表された米国高血圧ガイドラインは、従来の高血圧前症(prehypertension、収縮期血圧 120 ~ 139 /拡張期血圧 80 ~ 89 mmHg) という分類を廃止し、120~129/80mmHg未満を 血圧上昇(elevated blood pressure)、130 ~ 139 /80 ~ 89 mmHgをstage 1 高血圧、 140/90mmHg以上をstage 2高血圧とした。 高血圧の基準が下がったため若年成人の患者数は 2~3倍に増加した。しかしすぐ薬物療法を行うのではなく、まず生活習慣の改善を指導し、その後も改善しなければ、心血管疾患の既往があるか、10 年間の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクスコアが10%以上である場合に薬物療法を行うよう推奨されている。これにより降圧薬が必要な患者数はわずかな増加にとどまる。一方、ASCVDリスクスコアは40~79歳を対象に設定されたものであるため、若年成人(40歳未満)の多くはリスクが低く薬物療法の適応にならないという問題がある。 本研究は登録時18~30歳の米国人を対象としたCARDIA研究データに2017年基準を適用し検討した。血圧上昇群およびstage 1高血圧群の心 血管疾患発症リスクは 正常血圧群(120mmHg未 満 /80mmHg未満)に比べて有意にそれぞれ1.67、 1.75倍高かった。 本研究と同様の研究が韓国でも行われ、血圧異常者(血圧上昇と高血圧)の正常血圧者に対するハザード比は米国と同様に有意に上昇していた(1)。中年・老年層における同様の研究は多いがこの2研究は若年成人を対象とした初めての研究である。 両研究に共通した点がいくつかある。まず対象の半数以上が血圧異常に分類された。この理由として血圧測定法が適切でなかった可能性が考えられる。信頼性のある24時間血圧測定は行われていない。若年者では高血圧のレッテルを貼る前に真の高血圧であるか否かを確認することがより望ましい。また血圧上昇群とstage 1高血圧群は正常血圧群に比べBMIが大きく、糖・脂質代謝異常合併も多かった。したがってこれらが心血管疾患発症へ関与した可能性もある。若年血圧異常者には生活習慣の改善指導、糖・脂質代謝異常の是正も重要である。 今後、以上の点を考慮した介入研究が必要である。 また本研究の対象は18~30歳であるが、結果を外挿すると小児・思春期の軽度血圧上昇が将来の心血管リスクになる可能性もある。血圧はトラッキングするからである。小児の血圧基準はパーセ ンタイル値で定義されている。心血管疾患との関係が不明であるため便宜的に定義しているのであるが、本研究を発展させ、臓器障害マーカー(左室 肥大など)を盛り込みつつ成人のように心血管リスクとなる血圧値を設定することが望まれる。 1. Son JS1, et al. JAMA. 2018 Nov 6;320(17):1783-1792.
心臓血管疾患の一次予防のためのアスピリン使用の指針となる出血リスクの予測。コホート研究
心臓血管疾患の一次予防のためのアスピリン使用の指針となる出血リスクの予測。コホート研究
Predicting Bleeding Risk to Guide Aspirin Use for the Primary Prevention of Cardiovascular Disease: A Cohort Study Ann Intern Med 2019 Mar 19 ;170 (6):357 -368. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】アスピリンの絶対的ベネフィットを推定するために多くの心血管リスクの予後モデルを用いることができるが、その可能性が高いハームを推定するための出血リスクモデルはほとんどない。 【目的】心血管疾患(CVD)の一次予防のためにアスピリンを考慮する可能性がある人たちの予後出血リスクモデルを開発する。 【デザイン】前向きコホート研究 【設定】ニュージーランドのプライマリケア 【対象】2007年から2016年までにCVDリスクを評価した30歳から79歳の385 191名で、研究コホートとした。アスピリンの適応または禁忌のある者、および既に抗血小板療法または抗凝固療法を受けている者は除外した。 測定】各性について、大出血リスクを予測するためにCox比例ハザードモデルを開発し、参加者は初めて除外基準を満たした日、死亡日、研究終了日のうち最も早い時点で打ち切られた(2017年6月30日)。主なモデルには、以下の予測因子が含まれていた。人口統計学的特性(年齢,民族,社会経済的剥奪),臨床測定値(収縮期血圧,総高密度リポ蛋白コレステロール比),早期CVDの家族歴,病歴(喫煙,糖尿病,出血,消化性潰瘍疾患,癌,慢性肝疾患,慢性膵炎,アルコール関連),薬剤使用(非ステロイド抗炎症薬,コルチコステロイド,選択性セロトニン再取込阻害薬)である。 【結果】1 619 846人年の追跡期間中に,4442人が大出血イベントを起こした(うち313人[7%]が致死的であった)。主要モデルは,5年出血リスクの中央値を女性で1.0%(四分位範囲,0.8%~1.5%),男性で1.1%(四分位範囲,0.7%~1.6%)と予言した。限界】ヘモグロビン値、血小板数、肥満度は、欠損値が多いため主要モデルから除外され、ニュージーランド以外の集団でのモデルの外部検証は行われていない。 【結論】CVDの一次予防のためにアスピリンを検討している人において、アスピリンの絶対的な出血の害を推定するために使用できる予後出血リスクモデルを開発した【Primary funding source】The Health Research Council of New Zealand. 第一人者の医師による解説 アスピリンによる心血管疾患1次予防の最適化を支援する重要な報告 高下 純平/豊田 一則(副院長) 国立循環器病研究センター脳血管内科 MMJ.August 2019;15(4) 2016年、米国予防医学特別作業部会(USPSTF) は、今後10年間の心血管疾患発症リスクが10% 以上で、高い出血リスクを持たない50~59歳の 成人に対し、心血管疾患と大腸がんの両疾患への1次予防として、アスピリンの低用量使用を推奨した(1)。しかし、心血管疾患に対するアスピリン投与のベネフィットやリスクは、年齢、性別、併存する血管疾患の危険因子によって大きく異なるため、利益と危険性を勘案して慎重に判断する必要があり、 予測モデルを使用したネットクリニカルベネフィッ トの推定が有用である。 心血管疾患の予防におけるアスピリン投与の有益性についての予測モデルは、数多く報告されているものの、出血性合併症の 予測モデルはあまり報告されていなかった。そこで、 著者らは 心血管疾患がなく、抗凝固・抗血小板療法を受けていない集団における出血性合併症の予 測モデルを作成し検証を行った。 2007~16年に心血管疾患の危険因子を評価された30~79歳の 385,191人を対象とした前向きコホート研究である。性別ごとに年齢、人種、社会経済的特性などの背景因子や、収縮期血圧、コレステロール値、心 血管疾患の家族歴、喫煙、糖尿病、出血の既往、潰瘍 性病変、悪性腫瘍の有無や服用薬(非ステロイド系 抗炎症薬、ステロイド、選択的セロトニン再取り込み阻害薬)をもとにCox比例ハザードモデルを作成した。 結果は、1,619,846人・年の追跡期間中に、 4,442人が大出血イベントを発症し、作成したモ デルでは、5年間の出血率の中央値は、女性で1.0% (四分位範囲[IQR], 0.8~1.5%)、男性で1.1% (0.7~1.6%)と算出された。また、過去の報告と同様、高齢、喫煙、糖尿病などの既知の危険因子が出血性合併症のリスクともなることが明らかにされた。 このモデルを使用して算出された出血性合併症 のリスクを、Antithrombotic Trialists’ Collaborationのメタ解析で報告された心血管疾患 イベントの発症率(2)と比較することで、心血管疾患 の1次予防としてのアスピリン導入を最適化することができるのではないかと結んでいる。心血管疾患の既往がなく、また抗凝固・抗血小板療法を受けていない集団が、アスピリン服用を始めることで起こりうる出血性合併症の推定発症率は低い。これは大変貴重な知見であるとともに、心血管疾患の1次予防におけるアスピリン投与の意思決定を 支援する重要な報告と考える。 1. Bibbins-Domingo K, et al. Ann Intern Med. 2016;164(12):836-845. 2. Baigent C, et al. Lancet. 2009;373(9678):1849-1860.
世界貿易センタービル災害後の消防士における長期的な心血管疾患リスク。
世界貿易センタービル災害後の消防士における長期的な心血管疾患リスク。
Long-term Cardiovascular Disease Risk Among Firefighters After the World Trade Center Disaster JAMA Network Open 2019 ;2 (9):e199775 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】2001年9月11日以降の世界貿易センタービル(WTC)曝露と長期的な心血管疾患(CVD)転帰との関連を検討した既報の研究では、様々な知見が報告されている。 【目的】ニューヨーク市消防局(FDNY)の消防士において、WTC曝露がCVDリスクの上昇と関連しているかどうかを評価すること。 デザイン・設定・参加者]このコホート研究では、FDNY男性消防士において2001年9月11日から2017年12月31日の間にWTC曝露とCVDリスクの関連について評価された。多変量Cox回帰分析を用いて、WTC曝露の2つの指標:WTC現場への到着時間およびWTC現場での勤務期間と関連したCVDリスクを推定した。データ解析は2018年5月1日から2019年3月8日まで実施した。 【主要評および測定法】主要CVDアウトカムは、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、冠動脈手術または血管形成術、またはCVD死亡であった。二次アウトカム(全CVD)には,すべての一次アウトカムイベント,または以下のいずれかを含む:一過性脳虚血発作;狭心症治療薬の使用または介入なしの心臓カテーテル治療のいずれかとして定義される安定狭心症;心筋症;およびその他のCVD(大動脈瘤,末梢動脈血管介入,頸動脈外科手術)。 【結果】男性消防士9796人(2001年9月11日の平均[SD]年齢は40.3[7.4]歳、7210人[73.6%]が喫煙歴なし)において489件の主要アウトカムイベントが発生した。)CVDの年齢調整後の発症率は、WTCへの曝露が多い消防士ほど高かった。CVDの主要転帰の多変量調整ハザード比(HR)は、最も早く到着したグループで、遅く到着したグループと比較して1.44(95%CI、1.09-1.90)であった。同様に、WTC敷地内で6ヵ月以上働いた人と、それ以下の期間しか働かなかった人では、CVDイベントを発症する可能性が高かった(HR、1.30;95%CI、1.05-1.60)。高血圧(HR, 1.41; 95% CI, 1.10-1.80), 高コレステロール血症(HR, 1.56; 95% CI, 1.28-1.91), 糖尿病(HR, 1.99; 95% CI, 1.33-2.98), および喫煙(現在: HR, 2.13; 95% CI, 1.68-2.70; 前: HR, 1.55; 95% CI, 1.23-1.95 )などの確立したCVD危険因子が、多変量モデルでCVDとの関連性が顕著であった。結論と妥当性】本研究の結果は,より大きなWTC被曝と長期的なCVDリスクとの間に有意な関連があることを示唆するものであった。この知見は、災害の生存者の健康状態を長期にわたって監視することの重要性を補強するものと思われる。 第一人者の医師による解説 日本でも自衛隊、消防、警察など救援従事者の長期の健康管理を考えるべき 竹石 恭知 福島県立医科大学医学部循環器内科学講座主任教授 MMJ.April 2020;16(2) 本論文は、米国同時多発テロ発生時にニューヨー ク市の世界貿易センタービル(WTC)崩壊現場で活動した消防士を対象に、災害現場での活動が長期の心血管疾患(CVD)発症と関連するかどうかを調査したコホート研究の報告である。対象者は男性消防士9,796人で、2001年9月11日時点の平均年齢は40.3歳、90%以上が非ヒスパニック系の白人、 約74%は非喫煙者であった。評価対象は2017年 12月31日までに発症したCVDであった。主要評価項目は 心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、冠動脈バイパス術または冠動脈インターベンションの施行、CVD死とされた。本論文ではWTC曝露量を急性期とそれ以降の2種類の指標で解析している。 急性期曝露との関連については、WTCに9月11日 の午前中に到着した群、同日の午後に到着した群、12日以降に到着した群に分け、CVD発症率を比較した。また、WTCは2002年7月24日に閉鎖されたが、急性期以降のWTC曝露を評価するため、 WTC崩壊現場の活動期間が6カ月以上の群と6カ月未満の群で比較がなされた。 その結果、2017年12月までの16年間にわたる追跡期間中に主要評価項目のイベントが489件発生した(心筋梗塞120、脳卒中61、冠動脈バイパス術71、冠動脈インターベンション 236、うっ血性心不全1、CVD死6)。CVD発症リスクは、9月 12日以降の到着群と比較し、11日午前到着群では 1.44倍、11日午後到着群では1.24倍高かった。 また、WTC現場活動期間が6カ月以上の群では、6 カ月未満の群と比較し、CVD発症リスクが1.30倍高かった。一過性脳虚血発作、安定狭心症、大動脈瘤、末梢動脈疾患といったすべてのCVDを含めた解析でも、早期に現場に到着したほど、また現場活動期間が長いほど、CVD発症リスクが高かった。従来から知られているCVD危険因子である高血圧、脂質 異常、糖尿病、喫煙は、この対象群でも、CVD発症と有意に関連していた。 WTC崩壊現場の災害活動により深く関わった消防士では長期のCVD発症リスクが上昇することが明らかになった。この結果から、災害後の長期にわたる健康管理が重要であることが示された。日本でも被災者の支援に加えて、自衛隊、消防、警察など救援に従事された方々の健康管理を今後、考えるべきである。
一次予防のためのアスピリンによる心血管系の利益と出血の害の個別化された予測。有益性-有害性分析。
一次予防のためのアスピリンによる心血管系の利益と出血の害の個別化された予測。有益性-有害性分析。
Personalized Prediction of Cardiovascular Benefits and Bleeding Harms From Aspirin for Primary Prevention: A Benefit-Harm Analysis Ann Intern Med 2019;171:529-539. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】一部の患者において、心血管疾患(CVD)の一次予防のためのアスピリンのベネフィットが出血の害を上回るかは不明である。 【目的】アスピリンが純ベネフィットをもたらすと考えられるCVDを持たない人を特定することである。 【デザイン】性別リスクスコアと2019年のメタアナリシスによるCVDと大出血に対するアスピリンの比例効果の推定値に基づく個別ベネフィット・ハーム分析 【設定】ニュージーランドのプライマリケア 【参加者】2012年から2016年にCVDリスク評価を受けた30~79歳のCVDが確立されていない245 028人(女性43.6%)。 【測定】各参加者について、5年間の大出血を引き起こしそうな数(大出血リスクスコア×大出血リスクに対するアスピリンの比例効果)から、予防できそうなCVDイベント数(CVDリスクスコア×CVDリスクに対するアスピリンの比例効果)を差し引き、アスピリンのネット効果を算出した。 【結果】1回のCVDイベントが1回の大出血と同等の重症度と仮定した場合、5年間のアスピリン治療による純益は女性の2.5%、男性の12.1%となり、1回のCVDイベントが2回の大出血と同等と仮定した場合は女性の21.4%、男性の40.7%に増加する可能性があることがわかった。純益サブグループは純害サブグループに比べ、ベースラインのCVDリスクが高く、ほとんどの確立したCVDリスク因子のレベルが高く、出血特異的リスク因子のレベルが低かった 【Limitation】リスクスコアと効果推定値は不確実であった。アスピリンのがん転帰への影響は検討されていない。 【結論】CVDを持たない一部の人にとって、アスピリンは正味の利益をもたらす可能性が高い。 【Primary funding source】ニュージーランド保健研究評議会。 第一人者の医師による解説 リスク予測モデル活用で 個別化した1次予防戦略立案の可能性 邑井 洸太 国立循環器病研究センター心臓血管内科冠疾患科/安田 聡 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門長・副院長 MMJ.April 2020;16(2) アスピリンは心筋梗塞、脳梗塞、心不全入院といった心血管イベントを抑制する一方で、消化管や頭蓋内などにおける出血のリスクを上昇させる。すでに心血管疾患を有する患者に対する2次予防を目的とした場合、一般的にアスピリンのメリットは デメリットを上回るとされているが、1次予防での有用性は不明である(1)。近年、リスクモデルによる予測が実用化されている(2)。本研究では、心血管疾患の既往のない集団においてアスピリン服用によって享受できる利益(心血管イベント抑制)は害(出血)を上回るかどうかをリスク予測モデルで検証した。 本研究では、ニュージーランドのプライマリケア領域で広く使用されているウエブベースの意思決定支援プログラム「PREDICT」が用いられた。解析対象は2012 ~ 16年にPREDICTを利用して心血管イベントリスクが算出された患者245,028 人(女性106,902人、男性138,126人)。算出時 の入力データに加えて、ナショナルデータベースとも紐付けされて心血管リスクなどの患者情報が抽出された。各患者から得られた情報をリスク予測 モデルに落とし込み、5年間アスピリンを服用した場合に予測される心血管イベント(虚血性心疾患による緊急入院または死亡、脳梗塞、脳出血、末梢血管障害、うっ血性心不全)予防効果と大出血(出血による入院、出血による死亡)リスクを算出した。 その結果、1つの心血管イベントと1つの大出血イベントを対等とした場合、女性では2.5%、男性では12.1%においてアスピリンは大出血リスクを上回る心血管イベント抑制効果をもたらした。さらに1つの心血管イベントと2つの大出血イベントを対等とした場合、女性では21.4%、男性では40.7%の患者においてアスピリンの利益が勝る結果となった。なお、今回の対象集団では、高齢、ベースラインの動脈硬化危険因子が多い、降圧薬や脂質低下薬を服用している、がんや出血の既往が少ないなどの特徴がみられた。 本研究の結果から、1次予防目的のアスピリン服用によって利益を享受できる集団は一定数存在 しうることが示唆された。こういった解析対象は ニュージーランドの住民に限定されており、各イベントの重み付けが均一であるという制限はあるものの、将来的には予後予測ツールを用いて個別化した1次予防戦略を立案できる可能性が示された。 1. Hennekens CH et al. Nat Rev Cardiol. 2012;9(5):262-263. 2. Go DC Jr et al. Circulation. 2014;129(25 Suppl 2):S49-73.
妊娠中の母体の糖尿病と子孫の心血管疾患の早期発症:追跡調査の40年と集団ベースのコホート研究。
妊娠中の母体の糖尿病と子孫の心血管疾患の早期発症:追跡調査の40年と集団ベースのコホート研究。
Maternal diabetes during pregnancy and early onset of cardiovascular disease in offspring: population based cohort study with 40 years of follow-up BMJ 2019 Dec 4 ;367:l6398 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】妊娠前または妊娠中に診断された母体性糖尿病と、人生の最初の40年間の子孫の早期発症心血管疾患(CVD)との関連を評価すること。 【デザイン】人口コホート研究。追跡調査は出生時から開始され、CVDの初回診断、死亡、移住、2016年12月31日のいずれか早い方まで継続された。母体糖尿病と子孫における早期発症CVDのリスクとの関連を検討した。Cox回帰は、母親のCVDの既往歴または母親の糖尿病合併症がこれらの関連に影響を与えたかどうかを評価するために使用された。暦年、性、単胎児の状態、母親の因子(偏生、年齢、喫煙、教育、同居、出産時の居住地、出産前のCVDの既往歴)、および父親の出産前のCVDの既往歴について調整が行われた。累積罹患率はすべての個人で平均化し、競合イベントとしてCVD以外の原因による死亡を扱いながら因子を調整した。 【結果】追跡調査の40年までの間に、糖尿病を有する母親の1153人の子孫と糖尿病を有さなかった母親の91 311人の子孫がCVDと診断された。糖尿病を持つ母親の子孫は、早期発症CVD(ハザード比1.29(95%信頼区間1.21〜1.37)、年齢13.07%(12.92%〜13.21%)の40歳で母親の糖尿病にさらされていない子孫の間の累積発生率13.07%(12.92%〜13.21%)、さらされたとさらされていない子孫の間の累積発生率の差4.72%(2.37%〜7.06%))の全体的な率が29%増加していた。兄弟姉妹設計では、全コホートを対象とした対をなした設計と同様の結果が得られた。妊娠前糖尿病(1.34(1.25~1.43))と妊娠糖尿病(1.19(1.07~1.32))の両方が、子供のCVD発症率の増加と関連していた。また、特定の早期発症CVD、特に心不全(1.45(0.89~2.35))、高血圧症(1.78(1.50~2.11))、深部静脈血栓症(1.82(1.38~2.41))、肺塞栓症(1.91(1.31~2.80))の発症率の増加にもばらつきが見られた。CVDの発生率の増加は、小児期から40歳までの早期成人期までの年齢層別にみられた。増加率は、糖尿病合併症を持つ母親の子供でより顕著であった(1.60(1.25~2.05))。糖尿病と併存するCVDを持つ母親の子供の早期発症CVDの発生率が高い(1.73(1.36~2.20))のは、併存するCVDの付加的な影響と関連していたが、糖尿病とCVDとの間の相互作用によるものではなかった(相互作用のP値は0.94)。94) 【結論】糖尿病を持つ母親の子供、特にCVDや糖尿病合併症の既往歴を持つ母親の子供は、小児期から成人期の早期発症CVDの割合が増加している。もし母親の糖尿病が子孫のCVD率の増加と因果関係があるとすれば,出産可能年齢の女性における糖尿病の予防,スクリーニング,治療は,次世代のCVDリスクを低減するのに役立つ可能性がある。 第一人者の医師による解説 母親の糖尿病管理が子どものCVDリスク低下の鍵か 今後の検討を期待 服部 幸子 東都クリニック糖尿病代謝内科 MMJ.April 2020;16(2) 妊娠中の母親の糖尿病状態は子どもの先天性心疾患、肥満、糖尿病と関連することや、将来の心血管疾患(CVD)リスクの上昇に関与していることが知られている。また、糖尿病の母親をもつ子どもは メタボリック症候群やその他のCVD危険因子を有する確率が高いことも知られている。しかし、出生前の母親の糖尿病状態が、子どもの生涯における CVDリスクにどの程度影響を及ぼすかは不明である。 本研究では、妊娠中の母体糖尿病状態が子どもの早期 CVD発症リスク上昇に与える影響について、 デンマーク人のコホート研究のデータに基づいて、 その子どもの出生時より40歳に至るまで検討した。すなわち「異なる糖尿病タイプの母親」、「CVDの既往のある糖尿病の母親」、また「妊娠前に既に糖尿 病合併症のある母親」から生まれた子どものCVD リスク上昇に対する影響を調査した。 その結果、デンマークの243万2000人の新生児を対象に40 年間のフォローアップが実施され、糖尿病の母親をもつ子ども1,153人、および非糖尿病の母親をもつ子ども91,311人がCVDと診断された。糖尿病 の母親をもつ子どもでは早期 CVD発症リスクが ハザード比(HR)で29%上昇し、妊娠前糖尿病のある母親の子ども(HR, 1.34)、妊娠糖尿病の母親をもつ子ども(HR, 1.19)の両方でリスク上昇が認められた。また、母親の糖尿病の種類(1型、2型)による子どもの早期 CVD発症リスクに違いはなかった。糖尿病合併症を有する母親の子どもでは早期 CVD発症リスクはより高く(HR, 1.60)、さらにCVDの既往を伴う糖尿病の母親の子どもではより高いCVD発症リスクが認められた(HR, 1.73)。 以上の結果から、著者らは、子宮内糖尿病環境は子どものCVD発症にあたかもプログラミングされたような影響がある可能性を示唆し、特に、CVD 既往あるいは糖尿病合併症を有する糖尿病の母親からの子どもは早期 CVD発症リスクが高いという事実は公衆衛生戦略を立てる上に重要であると指摘している。今後の研究課題としては、子どもの生涯におけるCVD発症を減少させうる妊娠中の血糖コントロールを挙げている。 本論文には血糖管理状態とリスクの関係についての記載はないが、日本では出生率の低下が進み、一方で妊娠時の母親の年齢が上昇していることから、以前に増して妊娠前糖尿病管理と計画妊娠、妊娠中の厳格な血糖管理が重要と考えられる。これらが今後出生する子どもの生涯におけるCVDを含むさまざまな疾患のリスク低下につながるよう血糖管理基準を含む今後のさらなる検討が期待される。
早すぎる自然閉経および手術による閉経と心血管疾患の発症との関連性
早すぎる自然閉経および手術による閉経と心血管疾患の発症との関連性
Association of Premature Natural and Surgical Menopause With Incident Cardiovascular Disease JAMA 2019 Dec 24;322(24):2411-2421. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】最近のガイドラインでは、中年女性の動脈硬化性心血管疾患リスク評価の精緻化のために、40歳以前の閉経歴を用いることが推奨されている。この集団における心血管疾患リスクに関する確固たるデータは不足している。 【目的】40歳前の自然閉経および外科的閉経を有する女性における心血管疾患の発症と心血管リスク因子を検討する。 【デザイン,設定,参加者】2006年から2010年に募集した英国の成人居住者によるコホート研究(UK Biobank)である。試験登録時に40~69歳で閉経後の女性のうち,144 260人が組み入れ対象となった。フォローアップは2016年8月まで行われた。 【曝露】自然早発閉経(卵巣摘出術を行わない40歳前の閉経)および外科的早発閉経(40歳前の両側卵巣摘出術)。早発閉経のない閉経後女性を参照群とした。 【主要評および測定法】主要アウトカムは、冠動脈疾患、心不全、大動脈弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全症、心房細動、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、静脈血栓塞栓症の発症を複合したものであった。副次的アウトカムには,主要アウトカムの個々の要素,高血圧,高脂血症,2型糖尿病の発症が含まれた。 【結果】対象となった閉経後女性144 260名(登録時の平均[SD]年齢,59.9[5.4]歳)のうち,自然早発閉経は4904(3.4%),外科的早発閉経は644(0.4%)であった。参加者は中央値で 7 年間追跡された(四分位範囲,6.3~7.7).主要転帰は、早発閉経を認めなかった女性5415人(3.9%)(発生率、5.70/1000人年)、自然早発閉経の女性292人(6.0%)(発生率、8.78/1000人年)(早発閉経なしとの差、+3.08/1000人年[95])に発生した。08/1000女性年[95% CI, 2.06-4.10];P < 0.001)、および外科的早発閉経(発生率、11.27/1000女性年)49女性(7.6%)(早発閉経なしとの差、+5.57/1000女性年[95% CI, 2.41-8.73];P < 0.001 )であった。主要アウトカムについては、従来の心血管疾患リスク因子および更年期ホルモン療法の使用で調整した後、自然および外科的早発閉経は、それぞれ1.36(95%CI、1.19-1.56;P < .001)および 1.87(95%CI, 1.36-2.58;P < .001)のハザード比と関連していた。【結論と関連性】自然および外科的早発閉経(40歳前)は、閉経後女性における心血管疾患の複合リスクとわずかではあるが統計的に有意な増加と関連していた。これらの関連性の根底にあるメカニズムを理解するために、さらなる研究が必要である。 第一人者の医師による解説 エストロゲン低下が心血管疾患の病態に直接関与することを示唆 武谷 雄二 東京大学名誉教授・医療法人レニア会理事長(アルテミスウイメンズホスピタル産婦人科) MMJ.June 2020;16(3) 先進諸国における中高年女性の主要な死因は心血管疾患である。日本でも高齢女性の死因の第2位、 3位はそれぞれ心疾患、脳卒中であり、合わせると悪性腫瘍に匹敵する。 エストロゲン(E)の血中濃度は閉経数年前から徐々に低下傾向がみられ、閉経後4~5年程度で検出限界に近づき、その後は低値を維持する。閉経年齢は50~52歳が平均的である。10%程度の女性は45歳未満に閉経を迎える。40歳未満の閉経は約1%であり早発閉経(premature menopause; PM)と呼ばれる。 閉経年齢が若いほどE欠落症状 (骨粗鬆症、動脈硬化など)が早期に現れる。さらに Eの低下は心血管疾患の危険因子としても注目されている。 本研究は、PMはい か な る 心血管疾患 のリスク を高めるかを調査した。対象は英国在住の閉経女性144,260人(40~69歳、平均年齢59.9歳、 約95%は白人)で約7年間前向きに心血管疾患の発症を調査した。3.8%はPMで、そのうち外科的 PM(卵巣切除)は10%強であった。 そ の 結果、何 ら か の 心血管疾患 が 非 PM群 の 3.9%、自然 PM群の6.0%、外科的 PM群の7.6% に発生した。いずれのPM群も非 PMと比較し、心血管疾患の発生率が有意に高く(P<0.001)、喫煙、Eの補充療法、高血圧、2型糖尿病、高脂血症などの有無で補正しても、ハザード比はそれぞれ1.36、 1.87と有意に高かった(P<0.001)。PM群で高 頻度にみられた心血管疾患は、冠動脈疾患、心不全、 大動脈弁狭窄症、心房細動、心虚血性発作、静脈血栓 塞栓症,虚血性脳卒中(特に自然 PM群)などであった。なお、末梢動脈疾患は閉経年齢との関連は乏しかった。全体として、閉経年齢は心血管疾患、メタボリックシンドローム関連疾患(高血圧、2型糖尿病、 高脂血症)などの発生率と逆相関を示し、特にPM 群ではいずれも高率であった。 早期のEの低下が、虚血性心疾患のみならず、脳卒中を含む多様な心血管疾患およびメタボリックシンドローム関連疾患のリスクを高めることは新たな知見である。しかし、PM群ではメタボリックシンドローム関連疾患の有無で補正しても心血管疾患のリスクは高く、Eの低下が心血管疾患の病態に直接関与することが示唆される。 外科的 PMの方が自然 PMと比べ、心血管疾患やメタボリックシンドローム関連疾患の発生率が高かった。この説明として、自然 PMの卵巣では、閉経後も微量のEとある程度のテストステロン(T) の分泌は保たれており、Tは脂肪組織などでEに転換される。一方、外科的PMではEやTの分泌はなく、 そのため血中E濃度はより低値であったことが考えられる。
21の高所得国、中所得国および低所得国の15万5722例の修正可能な危険因子、心血管疾患および死亡率(PURE研究) 前向きコホート研究
21の高所得国、中所得国および低所得国の15万5722例の修正可能な危険因子、心血管疾患および死亡率(PURE研究) 前向きコホート研究
Modifiable risk factors, cardiovascular disease, and mortality in 155 722 individuals from 21 high-income, middle-income, and low-income countries (PURE): a prospective cohort study Lancet . 2020 Mar 7;395(10226):795-808. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32008-2. Epub 2019 Sep 3. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】世界で共通の修正可能な危険因子が心血管疾患と死亡率に及ぼす作用の推定の大部分が、異なる方法を用いた別々の研究データに基づいている。Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究は、経済水準で層別化した21カ国(5大陸)で、修正可能な危険因子が心血管疾患および死亡率に及ぼす作用を前向きに測定するのにほぼ同じ方法を用いてこの欠点を克服している。 【方法】この国際共同前向きコホート研究では、高所得国(HIC)、中所得国(MIC)および低所得国(LIC)21カ国から登録した、心血管疾患の既往歴がない参加者15万5722例を対象に、14の修正可能な危険因子と死亡率・心血管疾患の関連を調査した。この論文の主要評価項目は、心血管疾患事象(心血管死、心筋梗塞、脳卒中および心不全と定義)および死亡率とした。有病率、ハザード比(HR)および行動因子クラスター(喫煙週間、血圧、アルコール、食事法、運動および塩分摂取など)、代謝因子(脂質、血圧、糖尿病、肥満など)、社会経済的および心理社会的因子(教育、うつ症状など)、握力、家庭内および環境汚染と関連を示す心血管疾患と死亡率の人口寄与割合(PAF)を明らかにした。多変量Coxフレイルティモデルを用いて危険因子と転帰の関連を証明し、コホート全体ではPAFを用いて、このほか国の所得水準別の分類別でこの関連を明らかにした。 【結果】2005年1月6日から2016年12月4日野間に、15万5722例を組み入れ、追跡子て危険因子を測定した。1万7249例(11.1%)がHIC、10万2680例(65.9%)がMIC、3万5793例(23.0%)がLICから組み入れた参加者であった。試験全体の対象者でみた心血管疾患と死亡の約70%が修正可能な危険因子によるものであった。代謝因子が心血管疾患の最も大きな危険因子(PAFの41.2%)で、高血圧が最大であった(PAFの22.3%)。クラスターとして、行動危険因子のほとんどが死亡の寄与因子(PAFの26.3%)であったが、最も大きな危険因子は低学歴であった(PAFの12.5%)。大気汚染に心血管疾患のPAFの13.9%との関連が見られたが、この解析では異なる統計手法を用いた。MICとLICで、家庭内空気汚染、質の悪い食生活およぎ低握力がHICよりも心血管疾患および死亡率に大きな作用を及ぼしていた。 【解釈】ほとんどの心血管疾患と死亡が数少ない共通の修正可能な危険因子によるものであった。世界の広範囲にわたって影響を及ぼす因子(高血圧、学歴など)がある一方で、国の経済水準によって異なる因子(家庭内空気汚染、質の悪い食生活)もあった。健康政策には、世界的に心血管疾患や死亡率を回避するのに最も大きな効果がある危険因子に焦点を当て、さらに、特定の国に大きな重要性がある危険因子に力を入れるべきである。 第一人者の医師による解説 低所得国では教育年数や大気汚染の影響大 日本への適用には注意 山岸 良匡筑波大学医学医療系社会健康医学教授・茨城県西部メディカルセンター/磯 博康 大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教授 MMJ. December 2020;16(6):180 本論文のPURE研究は、21カ国の一般集団において、14の介入可能な循環器危険因子について、循環器病や全死亡との関連および寄与リスクを示すことを目的としている。従来、このようなテーマについては各国で別々の手法を用いたコホート研究が行われてきたが、本研究は、21カ国で統一した手法で行ったことを1つの売りとして、特にそれらの関連や寄与危険度が国の富裕度(所得)で異なるか、という点に焦点を当てている。  実際、14の危険因子は、国の富裕度によって分布が大きく異なることが示された。論文では危険因子の関連の強さの比較について(行動関連危険因子では喫煙が最も関連が強いなどといった)議論がなされているが、これについては危険因子の定義によって結果が異なる可能性に留意する必要がある。それよりも、それらの関連の強さが国の富裕度によって異なることを示した点が本研究の重要な知見と言える。例えば全死亡について、高所得国では喫煙との関連が強いのに対し、低所得国ではアルコールや教育年数との関連が強い、などである。寄与リスクの観点からは、循環器病の71%が介入可能な危険因子によるものであり、その割合は低所得国の方が高い、すなわち介入の余地が大きいことが示されている。そのほか、循環器病、心筋梗塞、脳卒中ごとの各危険因子の寄与の違いや、それらの国の富裕度による違い(低所得国では教育年数、食事、家庭レベルの大気汚染の影響が大きい)など、興味深い知見が得られている。  公衆衛生学的には興味深い論文であるが、日本人の読者にとって注意が必要なのは今回の参加国である。例えば、本研究の高所得国(カナダ、サウジアラビア、スウェーデン、アラブ首長国連邦)には米国や西欧諸国は含まれていない。東アジアでは中国が中所得国として含まれているが、日本や韓国、台湾、シンガポールなどは含まれていない(このため、食塩摂取量は中国が含まれる中所得国で最も高い)。したがって、本研究の特記すべき成果は、グローバルに共通する強力な危険因子(高血圧、喫煙、食事など)と、国の富裕度により寄与が異なる危険因子(教育年数や大気汚染など)の存在を示したことといえる。日本では、PUREの各国とは、危険因子の分布だけでなく疾病構造(欧米と比較して脳卒中が多く心筋梗塞が少ない)も異なる(1)ことを念頭に置く必要があり、わが国のことは自国のデータで論じる必要がある。日本にも同様に危険因子の寄与リスクを算出した研究(2)があり、喫煙と高血圧の寄与が大きいことが示されているが、より最近のデータを用いてPUREの結果と対比することが有用であろう。 1. Brunner E, et al. (Ed) Health in Japan: Social Epidemiology of Japan since the 1964 Tokyo Olympics. Oxford University Press 2020. 2. Ikeda N, et al. Lancet. 2011;378(9796):1094-1105.