「アトピー性皮膚炎」の記事一覧

ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号)
小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 小児におけるオミクロン変異体に対するワクチンの有効性に関するデータは不足している。オミクロン変異体が急速に広まった2022年1月21日~4月8日における5〜11歳のシンガポールの小児25万5,936人に対し、BNT162b2ワクチン(製品名:コミナティ)接種が、感染リスクや入院リスクの減少に寄与したかを分析した。The New England Journal of Medicine誌オンライン版2022年7月20日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 世界におけるサル痘ウイルス感染の現状~16ヵ国の報告 2022年4月までは、サル痘ウイルスのヒトへの感染は、流行地であるアフリカ地域以外ではほとんど報告されていなかったが、現在では、世界中での報告が相次いでいる。しかし、感染、リスク因子、臨床症状、および感染症の転帰については、これまで十分に定義されていなかった。16ヵ国43施設で2022年4月27日~6月24日に診断された528件の症例を収集し、分析を行った。The New England Journal of Medicine誌オンライン版2022年7月21日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 低ナトリウム血症の診断・管理 低ナトリウム血症は最も一般的な電解質障害であり、成人の約5%、入院患者の35%に影響を及ぼすといわれている。また、軽度の低ナトリウム血症でさえ、入院期間や死亡率の増加に関連している。本論文では、低ナトリウム血症の診断と管理についてのレビュー結果が報告された。JAMA誌2022年7月19日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 中等度~重度の成人アトピー性皮膚炎に対するアブロシチニブとデュピルマブの有効性と安全性~無作為化二重盲検多施設第III相試験 中等度~重度の成人アトピー性皮膚炎患者に対するアブロシチニブ(製品名:サイバインコ)とデュピルマブ(同:デュピクセント) の有効性と安全性を評価するため、無作為化二重盲検多施設第III相試験(オーストラリア、ブルガリア、カナダ、チリ、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、ポーランド、スロバキア、韓国、スペイン、台湾、米国の151施設)が実施された。Lancet誌2022年7月23日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む アテローム性動脈硬化症患者における「中強度スタチンとエゼチミブ併用療法」と「高強度スタチン単剤療法」の長期有効性と安全性~無作為化非盲検非劣性試験 1つの薬剤の投与量を増やすよりも、薬剤の適切な組み合わせの方が、より高い有効性と安全性が得られることは少なくない。そこで、アテローム性動脈硬化症患者に対する高強度スタチン単剤療法の代替として、中強度スタチンとエゼチミブ(製品名:ゼチーアほか)併用療法は、副作用を抑えながら効果的にLDLコレステロール濃度を低下させるかを検討するため、韓国の臨床センター26施設において、無作為化非盲検非劣性試験が実施された。Lancet誌オンライン版2022年7月18日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
中等症ないし重症アトピー性皮膚炎の青少年・成人患者に用いるabrocitinibの有効性および安全性 第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験
中等症ないし重症アトピー性皮膚炎の青少年・成人患者に用いるabrocitinibの有効性および安全性 第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験
Efficacy and safety of abrocitinib in adults and adolescents with moderate-to-severe atopic dermatitis (JADE MONO-1): a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 3 trial Lancet . 2020 Jul 25;396(10246):255-266. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30732-7. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】経口選択的JAK1阻害薬abrocitinibは、第IIb相試験で、中等症ないし重症アトピー性皮膚炎成人患者に有効で忍容性も良好であった。著者らは、中等症ないし重症アトピー性皮膚炎の青少年および成人患者に用いるabrocitinib単独療法の有効性および安全性を評価した。 【方法】この第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験(JADE MONO-1)では、オーストライラ、カナダ、欧州および米国69施設で、12歳以上で体重40kg以上の中等症ないし重症アトピー性皮膚炎(IGAスコア3点以上、EASIスコア16点以上、罹患面積の体表面積に対する割合10%以上かつ最大掻痒の順序尺度[NRS]スコア4点以上)患者を組み入れた。患者を経口abrocitinib 100mg、同200mg、プラセボを12週間にわたって経口投与するグループに(2対2対1の割合で)無作為に割り付けた。双方向自動応答システムを用いて無作為化し、ベースラインの疾患および年齢で層別化した。多重主要評価項目は、IGAスコアが改善した(0点[皮疹消失]または1点[皮疹ほぼ消失]を達成した患者の割合で、試験開始時から2段階以上改善)患者の割合および試験開始時からEASIスコアが75%以上改善した患者の割合(EASI-75達成率)とし、いずれも12週時に評価した。無作為化し治験薬を1回以上投与した全例の完全解析集団を対象に、有効性を評価した。無作為化した全例を対象に安全性を評価した。この試験は、ClinicalTrials.govにNCT03349060番で登録されている。 【結果】2017年12月7日から2019年3月26日にかけて、387例を組み入れ、156例をabrocitinib 100mg群、154例を同200mg群、77例をプラセボ群に割り付けた。組み入れた全例に治験薬を1回以上投与したため、12週間の有効性の評価対象となった。I12週時の主要評価項目のデータが入手できた患者で見ると、GAスコア改善達成率は、aborcitinib 100mg群(156例中37例[24%] vs. 76例中6例[8%]、P=0.0037)、同200mg群(153例中67例[44%]vs. 76例中6例[8%]、P<0.0001)の方がプラセボ群より有意に高かった。12週時の主要評価項目のデータが入手できた患者で、プラセボ群と比較すると、EASI-75を達成した患者の割合は、abrocitinib 100mg群(156例中62例[40%]vs. 76例中9例[12%]、P<0.0001)および同200mg群(153例中96例[63%] vs.76例中9例[12%]、P<0.0001)の方が高かった。abrocitinib 100mg群156例中108例(69%)と同200mg群154例中120例(78%)、プラセボ群77例中44例(57%)に有害事象が報告された。abrocitinib 100mg群156例中5例(3%)、同200mg群154例中5例(3%)、プラセボ群77例中3例(4%)に重度有害事象が報告された。治療関連の死亡は報告されなかった。 【解釈】中等症ないし重症アトピー性皮膚炎の青少年・成人患者に、経口abrocitinibの1日1回単独投与が有効で忍容性も良好であった。 第一人者の医師による解説 アブロシチニブは1日1回の単剤投与で 有用な新規経口全身療法薬となりうる 伊藤 友章(准教授)/大久保 ゆかり(教授) 東京医科大学皮膚科学分野 MMJ. December 2020;16(6):159 アトピー性皮膚炎の基本的な治療は、ステロイド外用薬となるが、重症患者では改善が乏しい。ステロイド内服療法は有効だが、副作用が多い。シクロスポリン内服療法は継続治療ができず治療効果に乏しい。近年、IL-4/13受容体阻害薬デュピルマブが、重症アトピー性皮膚炎治療に用いられ、その有効性は高い。しかし、皮下注射製剤であること、ときに結膜炎の合併が生じ、眼科医のケアを必要とする。アトピー性皮膚炎ではIL-4、IL-13、IL-22、IL-31、thymic stromal lymphopoietin(TSLP)などの炎症サイトカインによるJAK1経路の活性化が病態に関与しており、JAK1が治療標的として注目されている。  本論文は、経口JAK1阻害薬アブロシチニブのアトピー性皮膚炎に対する有効性と安全性を検討した多施設共同、無作為化、プラセボ対照、第3相試験(JADE MONO-1)の報告である。対象は12歳以上、EASIスコア(湿疹面積・重症度指数)16点以上、IGA(皮膚症状重症度の全般評価)3点以上、BSA(アトピー性皮膚炎に罹患した体表面積)10%以上、PP-NRSスコア(最高痒み数値評価尺度)4点以上の患者とした。患者387人が登録され、アブロシチニブ100mg、200mgまたはプラセボを1日1回投与する群に2対2対1の比で割り付けられ、12週間の治療を受けた:100mg群156人(18歳未満22%、EASI31.3*、BSA50.8*)、200mg群154人(18歳未満21%、EASI30.6*、BSA49.9*)、プラセボ群77人(18歳未満22%、EASI28.7*、BSA47.4*;*平均値)。評価項目は、12週の時点におけるIGAスコアが1点以下かつベースラインから2点以上低下した患者の割合(IGA≦1達成割合)、およびEASIスコアがベースラインから75%以上改善した患者の割合(EASI-75達成割合)とされた。  結果は、12週時のIGA≦1達成率は100mg群24%、200mg群44%、プラセボ群8%であり、EASI-75達成割合は100mg群40%、200mg群63%、プラセボ群12%であり、いずれもプラセボ群に比べ有意に高値であった(P<0.0001)。PPNRSは12週時で、100mg群および200mg群とも、ベースラインと比較して、有意に痒みを抑えた。治療に関連のある有害事象として、単純ヘルペスウイルス感染症の発現は100mg群1人、200mg群3人で、帯状疱疹はそれぞれ1人と2人、口腔ヘルペスはそれぞれ3人と1人に発現した。治療関連死の報告はなかった。  結論として、アブロシチニブは、外用薬でコントロールできない、12歳以上の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者の治療において、1日1回の単剤投与で有用な新規の経口全身療法薬となりうる。
乳児のアトピー性皮膚炎予防のための皮膚保湿剤と早期補完食(PreventADALL) 多施設共同多因子クラスター無作為化試験
乳児のアトピー性皮膚炎予防のための皮膚保湿剤と早期補完食(PreventADALL) 多施設共同多因子クラスター無作為化試験
Skin emollient and early complementary feeding to prevent infant atopic dermatitis (PreventADALL): a factorial, multicentre, cluster-randomised trial Lancet . 2020 Mar 21;395(10228):951-961. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32983-6. Epub 2020 Feb 19. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】乳児期早期の皮膚保湿剤によってアトピー性皮膚炎が予防でき、早期補完食導入によって高リスク乳児の食物アレルギーが減少すると思われる。この試験は、一般の乳児で、生後2週間の定期的な皮膚保湿剤使用や生後12-16週齢の間の早期補完食導入によって生後12カ月時までのアトピー性皮膚炎発症を抑制できるかを明らかにすることを目的とした。 【方法】この住民対象の2×2要因無作為化臨床試験は、ノルウェー・オスロ市のオスロ大学病院およびエーストフォール病院トラスト、スウェーデン・ストックホルム市のカロリンスカ大学病院で実施された。妊娠18週時のルーチンの超音波検査実施時に出生前の乳児を登録し、2015年から2017年の間に出生した新生児を以下のクラスターごとに無作為に割り付けた――(1)スキンケアに関して特別な助言はしないが、乳児の栄養に関して国の指針に従うよう助言した対照群(非介入群)、(2)皮膚保湿剤使用(入浴剤やクリーム;皮膚介入群)、(3)ピーナツ、牛乳、小麦、卵の補完食早期導入(食物介入群)、(4)皮膚および食物介入(複合介入群)。コンピュータ生成クラスター無作為化法を用いて、参加者を92の地理的居住地域と3カ月ごと8期間を基に(1対1対1対1の割合で)割り付けた。1週間当たり4日以上、保護者に介入方法を指導した。主要転帰は生後12カ月までのアトピー性皮膚炎とし、介入の割り付けをふせておいた試験担当医師による3、6、12カ月時の診察を基に判定した。12カ月間の追跡期間を完遂後、アトピー性皮膚炎を評価し、UK Working PartyとHanifin and Rajka(12カ月時のみ)の診断基準を満たしているかを診断した。主要有効性解析は、無作為化した全例を対象としたintention-to-treat解析で実施した。2020年に全例の3歳時の診察が終了するとき、食物アレルギーの結果を報告することとした。これは、ORAACLE(the Oslo Research Group of Asthma and Allergy in Childhood; the Lung and Environment)が実施した試験である。この試験は、clinicaltrials.govにNCT02449850番で登録されている。 【結果】2014年12月9日から2016年10月31日の間に、女性2697例を登録し、2015年4月14日から2017年4月17日の間に出生した新生児2397例を組み入れた。非介入群の乳児596例中48例(8%)、皮膚介入群575例中64例(11%)、食物介入群642例中58例(9%)、複合介入群583例中31例(5%)にアトピー性皮膚炎が見られた。皮膚保湿剤、補完食早期導入ともにアトピー性皮膚炎の発症を抑制できず、皮膚介入のリスク差3.1%(95%CI -0.3-6.5)、食物介入で1.0%(-2.1-4.1)となり、対照を支持するものであった。介入による安全性の懸念はなかった。皮膚介入群、食物介入群および複合介入群で報告された皮膚症状や徴候(掻痒、浮腫、皮膚乾燥、蕁麻疹)は、非介入群と比べて頻度は高くなかった。 【解釈】早期皮膚保湿剤や早期補完食導入では、生後12カ月までのアトピー性皮膚炎発症を抑制することができなかった。試験は、生後12カ月までのアトピー性皮膚炎を予防するために、乳児にこの介入法を用いることを支持するものではない。 第一人者の医師による解説 スキンケア方法や離乳食の開始法、その頻度の影響を検討する必要あり 大矢 幸弘 国立成育医療研究センターアレルギーセンター センター長 MMJ. December 2020;16(6):160 アレルギー家系の乳児に新生児期から保湿剤を塗布するスキンケアを行うことでアトピー性皮膚炎の発症予防効果を示した100人規模の2つのランダム化比較試験(RCT)が2014年に発表された(1),(2)。その後、離乳食を3カ月という早期から開始した場合と生後6カ月から開始する場合を比較したEAT試験が2016年に発表され、卵とピーナツに関してはそれぞれのアレルギーの予防効果が示されている(3)。また、コホート研究の中には、離乳食の開始が早い方が食物アレルギーだけでなくアトピー性皮膚炎の発症も少ないという報告もある。  本研究は、生後2週間からバスオイルによる保湿スキンケアと生後12~16週で離乳食を早期開始するという2つの介入の単独または併用を対照群と比較する4群比較 RCTである。主要評価項目は生後12カ月時点でのアトピー性皮膚炎(UK Working PartyまたはHanifinとRajkaの診断基準)と3歳時での食物アレルギーであるが、今回の論文では前者のみ報告されている。対象は、今回解説を併載したBEEP試験のような高リスク家系ではなく一般人口の乳児である。スキンケア介入は、水8Lあたり0.5dLのバスオイルを入れて5~10分入浴し顔全体にクリームを塗布し、石鹸は使用しない。早期離乳食介入は、生後12~16週にピーナツバター、1週遅れて牛乳、翌週小麦のおかゆ、4週目にスクランブルエッグを開始する。スキンケア、離乳食とも週4日以上の実行が指示された。  主要評価項目アトピー性皮膚炎の発症率は、非介入群8%(48/596)、スキンケア群11%(64/575)、早期離乳食群9%(58/642)、併用介入群5%(31/583)であり、介入によるアトピー性皮膚炎の発症予防は実証できなかった。ちなみに、バスオイルを週平均4.5日以上実行した割合はスキンケア群32%、併用介入群33%、週平均5.5日以上はそれぞれ13%と14%であった。早期離乳食のアドヒアランス(4種類のうち3種類以上を生後18週までに開始し、週3~5日以上、5週間以上実施)率は食事介入単独群35%、併用介入群27%であった。  このようにスキンケアを週7日実施した参加者がほとんどいないRCTでスキンケアによるアトピー性皮膚炎の予防効果を実証することは困難と思われるが、研究が行われた北欧では、毎日入浴する習慣がなく実行可能性を考慮して週4日以上というプロトコールとなった。バスオイルでの入浴と入浴後に保湿剤を塗布する効果が同じかどうかは不明であるが、BEEP試験と同じく、中途半端なスキンケアではアトピー性皮膚炎は予防できないという結果を示している。 1. Horimukai K, et al. J Allergy Clin Immunol. 2014;134(4):824-830.e6. 2. Simpson EL, et al. J Allergy Clin Immunol. 2014;134(4):818-823. 3. Perkin MR, et al. N Engl J Med. 2016 May 5;374(18):1733-1743.
アトピー性皮膚炎予防のための1日1回の保湿剤塗布 BEEP無作為化比較試験
アトピー性皮膚炎予防のための1日1回の保湿剤塗布 BEEP無作為化比較試験
Daily emollient during infancy for prevention of eczema: the BEEP randomised controlled trial Lancet . 2020 Mar 21;395(10228):962-972. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32984-8. Epub 2020 Feb 19. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】アトピー性皮膚炎発症の前に皮膚バリア機能障害が起きる。著者らは、生後1年間の日常的な保湿剤使用によって高リスク乳児のアトピー性皮膚炎が予防できるかを検証した。 【方法】英国の病院12施設とプライマリ・ケア4施設で、多施設共同実用的並行群間無作為化比較試験を実施した。アトピー性皮膚炎発症高リスク(医師が診断したアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎または喘息があると両親が報告した一等親近縁者が1人以上いるなど)の正期産新生児(在胎37週以上)を登録するため、出生前または出生後の診察を利用して家族に打診した。アトピー性疾患の家族歴がある正期産新生児を1年間の1日1回保湿剤塗布(DiprobaseクリームとDoubleBaseゲルのいずれか)+標準的なスキンケアの助言(保湿群)と標準的なスキンケアの助言単独(対照群)に(1体1の割合で)無作為に割り付けた。無作為化のスケジュールは、コンピュータが生成したコード(組み入れ施設とアトピー性疾患がある一等親近縁者数で層別化)を用いて作成し、インターネットによる無作為化システムを用いて参加者を割り付けた。主要評価項目は2歳時のアトピー性皮膚炎(UK Working Party診断基準で判定)とし、評価項目のデータが得られた参加者を割り付け遵守に関係なく無作為化したグループとして解析し、層別化変数で調整した。この試験は、ISRCTNにISRCTN21528841番で登録されている。長期追跡のためのデータ収集が進行中だが、試験の登録は終了している。 【結果】2014年11月19日から2016年11月18日にかけて、新生児1394例のうち693例を保湿群、701例を対照群に割り付けた。保湿群で質問票の回答を完遂した参加者の遵守率は、3カ月時88%(532例中466例)、6カ月時82%(519例中427例)、12カ月時74%(506例中375例)だった。2歳時、評価項目のデータが得られた保湿群598例中139例(23%)、対照群612例中150例(25%)にアトピー性皮膚炎があった(調整相対リスク0.95[95%CI 0.78-1.16]、P=0.61、調整リスク差-1.2%[-5.9-3.6])。評価項目の結果は、その他のアトピー性皮膚炎の定義から裏付けられた。1年目の乳児1例当たりの平均皮膚感染数が対照群0.15(SD 0.46)に対して保湿群0.23(SD 0.68)で、調整発生率比1.55(95%CI 1.15-2.09)であった。 【解釈】高リスク乳児で1日1回保湿剤塗布による生後1年間のアトピー性皮膚炎予防に何ら根拠がないことが明らかになり、根拠から皮膚感染のリスクが上昇することが示唆された。試験から、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎の家族が新生児のアトピー性皮膚炎予防のために1日1回の保湿剤を塗布してはならないことが明らかになった。 第一人者の医師による解説 アドヒアランスが低い大規模研究の問題点を露呈 中途半端なスキンケアでは予防につながらない 大矢 幸弘 国立成育医療研究センターアレルギーセンター センター長 MMJ. December 2020;16(6):161 新生児期から全身に保湿剤を塗布することで、アトピー性皮膚炎の発症率が低下することを示したランダム化対照試験(RCT)が2014年に2件報告され(1),(2)、そのうちの1つ(2)は、今回報告されたBEEP試験のパイロット研究の位置づけであった。  BEEP試験はアレルギー家系の乳児1,394人を対象に行われた多施設共同研究である。主要評価項目は1歳から2歳になるまでの1年間のアトピー性皮膚炎(UK Working Partyの 疫学的診断基準)の発症率で、結果は、保湿群23%(139/598)、対照群25%(150/612)と両群間に有意差はなかった。保湿剤塗布期間は生後1年までであったが、1歳時のアトピー性皮膚炎有病率は両群とも20%で差はなかった。スキンケアという面倒な介入の効果はアドヒアランスに依存すると思われるが、筆者らは良好だったと記載している(生後3カ月時は88%、6カ月時は82%、生後12カ月時は74%)。  では、なぜ、パイロット研究(2)と乖離した結果が出たのであろうか。本研究におけるアドヒアランス良好の定義は、週3~4日以上、頭頸部、四肢、体幹の2カ所以上に保湿剤を塗布していればよいことになっている(パイロット研究では全身)。アドヒアランスの詳細を論文補遺から調べて、パイロット研究と比較したところ、以下のように大きな違いがあった。今回、介入群693人のうち生後12カ月目のアンケートに507人(73%)が回答し、そのうち週7日間保湿剤を塗布していたのは248人(49%)であった。一方、パイロット研究では生後6カ月の主要評価項目の評価時点でのアドヒアランスは54人中44人(81.5%)が週7日保湿剤を塗布していた。介入群では保湿剤塗布が週0日のノンアドヒアランスは0%だったのに対してBEEP試験では12カ月時点で58人(11%)もいた。パイロット研究と同じ生後6カ月時点のアドヒアランスを比べてもBEEP試験では週0日塗布が6%、週7日塗布が56%と著しく低い。しかも、対照群で週3日以上保湿剤を塗布していた人は生後6カ月と12カ月で28%もいたのである。Pragmatic trialというと聞こえは良いが、プロトコールの遵守率が低下する大規模研究の問題点が露呈したとも言える。アトピー性皮膚炎の治療効果はアドヒアランスに依存するが予防効果も同様であったことを本研究は示した。中途半端なスキンケアでは予防はできない、ということである。 1. Horimukai K, et al. J Allergy Clin Immunol. 2014;134(4):824-830.e6. 2. Simpson EL, et al. J Allergy Clin Immunol. 2014;134(4):818-823.