「自己免疫疾患」の記事一覧

韓国の思春期女子で検討したヒトパピローマウイルスワクチン接種と重篤な有害事象の関連
韓国の思春期女子で検討したヒトパピローマウイルスワクチン接種と重篤な有害事象の関連
Association between human papillomavirus vaccination and serious adverse events in South Korean adolescent girls: nationwide cohort study BMJ. 2021 Jan 29;372:m4931. doi: 10.1136/bmj.m4931. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】韓国の思春期女子のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と重篤な有害事象の関連を明らかにすること。 【デザイン】コホート研究。 【設定】2017年1月から2019年12月までの全国予防接種登録情報システムと全国保健情報データベースをひも付けた大規模データベース。 【参加者】2017年に予防接種を受けた11~14歳の女子44万1399例。38万2020例がHPVワクチンを接種し、5万9379例がHPVワクチンを接種していなかった。 【主要評価項目】内分泌疾患、消化器疾患、心血管疾患、筋骨格系疾患、血液疾患、皮膚疾患および神経疾患など重篤な有害事象33項目を評価項目とした。主解析にコホートデザイン、2次解析に自己対照リスク期間デザインを用いた。両解析ともにHPVワクチン接種後1年間を各転帰のリスク期間とした。主解析では、ポワソン回帰分析を用いてHPVワクチン接種群とHPV未接種群を比較した発生率および調整率比を推定し、2次解析では条件付きロジスティック回帰分析を用いて調整相対リスクを推定した。 【結果】事前に規定した33項目の有害事象は、コホート解析では、橋本甲状腺炎(10万人年当たりの発生率:ワクチン接種群52.7 vs. 36.3、調整率比1.24、95%CI 0.78~1.94)、関節リウマチ(同168.1 vs. 145.4、0.99、0.79~1.25)などにはHPVとの関連は認められなかったが、例外として片頭痛リスクの上昇が認められた(10万人年当たりの発生率:ワクチン接種群1235.0 vs ワクチン未接種群920.9、調整率比1.11、95%CI 1.02~1.22)。自己対照リスク期間を用いた2次解析から、HPVワクチン接種に片頭痛(調整率比0.67、95%CI 0.58~0.78)も含めた重篤な有害事象との関連がないことが示された。追跡調査期間にばらつきがあったり、ワクチンの種類が異なったりしても、結果に頑健性があった。 【結論】HPVワクチン接種50万回以上の全国規模のコホート研究では、コホート研究および自己対照リスク期間解析いずれを用いても、HPVワクチン接種と重篤な有害事象の間の関連性を裏付ける科学的根拠が認められなかった。病態生理学および対象母集団を考慮に入れ、片頭痛に関する一貫性のない結果を慎重に解釈すべきである。 第一人者の医師による解説 思春期女子へのHPVワクチン接種と 重篤な有害事象の関連を示すエビデンスはない 中野 貴司 川崎医科大学小児科学教授 MMJ. August 2021;17(4):124 著者らは、韓国の大規模データベースを用いて11~14歳の思春期女子におけるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と重篤な有害事象との関連を評価した。重篤な有害事象として以下の33種類の疾病・病態を選択した:(1)内分泌疾患(グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、1型糖尿病)、(2)消化器疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、膵炎)、(3)心血管疾患(レイノー病、静脈血栓塞栓症、血管炎、低血圧)、(4)筋骨格疾患と全身性疾患(強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、若年性特発性関節炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)、(5)血液疾患(血小板減少性紫斑病、IgA血管炎)、(6)皮膚疾患(結節性紅斑、乾癬)、(7)神経疾患(ベル麻痺、てんかん、ナルコレプシー、麻痺、片頭痛、ギラン・バレー症候群、視神経炎、神経痛と神経炎、脳内出血、錐体外路・運動障害)、(8)結核。接種ワクチンの種類は、接種者382,020人中、4価ワクチン295,365人、2価ワクチン86,655人であった。HPVワクチン非接種群59,379人は日本脳炎ワクチンまたはTdapワクチンの接種を受けた。平均観察期間は、HPVワクチン接種群とHPVワクチン非接種群でそれぞれ407,400人・年と60,500人・年であった。 1次解析ではコホート解析、2次解析では自己対照リスク間隔解析を用いた。両解析とも接種後1年のリスク期間を設定し、HPVワクチン接種群と非接種群について、1次解析では有害事象ごとに発生率と調整比率をポアソン回帰を用いて推定した。2次解析では条件付きロジスティック回帰分析を用いて、調整相対リスクを推定した。 33種類の重篤な有害事象について、1次解析の結果では片頭痛を除いてHPVワクチンとの関連を認めなかった。片頭痛についてはHPVワクチン接種群で有意なリスク上昇が観察されたが、95%信頼区間(CI)は1に近かった(1.11/100,000人・年;95% CI, 1.02 ~ 1.22)。2次解析の結果は、片頭痛(調整相対リスク, 0.67;95%CI, 0.58~0.78)を含めて、すべての有害事象についてHPVワクチン接種群における有意なリスク上昇は観察されなかった。感度解析やサブグループ解析の結果もおおむね合致していた。 以上より、HPVワクチン接種と重篤な有害事象の関連を示すエビデンスはないと考えられた。ただし片頭痛については一部の解析でリスク上昇が認められ、その病態生理と関心のある集団を考慮して、注意して解釈する必要がある。
ANCA関連血管炎治療に用いるavacopan
ANCA関連血管炎治療に用いるavacopan
Avacopan for the Treatment of ANCA-Associated Vasculitis N Engl J Med. 2021 Feb 18;384(7):599-609. doi: 10.1056/NEJMoa2023386. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】C5a受容体阻害薬avacopanは、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の治療薬として研究中である。 【方法】この無作為化比較試験では、ANCA関連血管炎患者をavacopan 30mg 1日2回投与とprednisoneの用量漸減法による経口投与群に1対1の割合で割り付けた。全例にシクロホスファミド(その後アザチオプリン)またはリツキシマブを併用した。1つ目の主要評価項目は寛解とし、26週時のバーミンガム血管炎活動性スコア(BVAS)が0点(範囲0-63点、スコアが高いほど疾患活動性が高い)および直前4週間のグルココルチコイド不使用と定義した。2つ目の主要評価項目は寛解維持とし、26週時および52週時の寛解と定義した。両評価項目で非劣性(マージン20%ポイント)および優越性を評価した。 【結果】計331例を無作為化し、166例をavacopan群、165例をprednisone群に割り付けた。試験開始時のBVAS平均スコアは両群とも16点であった。avacopan群166例中120例(72.3%)、prednisone群164例中115例(70.1%)が26週時に寛解(1つ目の主要評価項目)を得た(推定公差3.4%ポイント、95%CI -6.0-12.8、非劣性のP<0.001、優越性のP=0.24)。avacopan群166例中109例(65.7%)、prednisone群164例中90例(54.9%)が52週時に寛解を維持していた(2つ目の主要評価項目、推定公差12.5%ポイント、95%CI 2.6-22.3、非劣性のP<0.001、優越性のP=0.007)。avacopan群の37.3%、prednisone群の39.0%に重篤な有害事象(血管炎悪化を除く)が発生した。 【結論】ANCA関連血管炎患者を対象とした本試験で、avacopanは26週時の寛解でprednisone漸減投与に対して非劣性が示されたが優越性は示されず、52週時の寛解維持では優越性が示された。全例がシクロホスファミドまたはリツキシマブを併用していた。52週以降のavacopanの安全性および臨床効果は、本試験では評価しなかった。 第一人者の医師による解説 グルココルチコイドの副作用を低減 ANCA関連血管炎の新治療法に期待 三森 経世 医療法人医仁会武田総合病院院長 MMJ. August 2021;17(4):121 ANCA関連血管炎(AAV)は小動脈が侵され抗好中球細胞質抗体(ANCA)が陽性となる自己免疫疾患で、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)が含まれ、急速に進行する糸球体腎炎、間質性肺炎、末梢神経炎などの多彩な臓器病変を呈する重篤な疾患である。従来、AAVの治療は大量グルココルチコイド(GC)とシクロホスファミドまたはリツキシマブなどの免疫抑制薬の併用が主体であった。しかし、再燃が多く、長期にわたるGCの副作用が問題となっている。 AAVの病態にはANCAと補体が関与し、ANCAが好中球表面に発現した自己抗原に結合するとともに、C5aがC5a受容体に結合して好中球のケモタキシスと活性化を引き起こすと考えられている。アバコパンは低分子経口 C5a受容体アンタゴニストであり、C5a受容体に選択的に結合して、C5aとANCAによる好中球の活性化を抑制すると考えられる。 本論文は、世界の143施設が参加し、AAVに対するアバコパンの有効性と安全性を検討した第3相試験の報告である。アバコパン 30mgの1日2回経口投与(A群)166人とプレドニゾン漸減療法(P群:1日60mgで 開始し21週までに中止)164人が二重プラセボ二重盲検試験で比較された。GPA181人とMPA149人がエントリーされ、PR3-ANCAが43%、MPO-ANCAが57%を占めたが、解析では両者は区別されていない。全例で免疫抑制薬(シクロホスファミドまたはリツキシマブ)が併用され、途中増悪時のGC救済療法は許容されている。 26週目の寛解達成率(Birmingham Vasculitis Activity Score[BVAS]=0および4週間前までのGC中止)はA群72.3%、P群70.1%であり、A群のP群に対する非劣性が証明された。52週目の寛解維持率はA群65.7%、P群54.9%で、A群の非劣性のみならず優越性も認められた。また、A群はP群より52週目までの再燃率が有意に低く、推算糸球体濾過量(eGFR)、蛋白尿、生活の質(QOL)の改善でも上回っていた。GCによる副作用の発現率は当然ながら、P群でA群よりも高かった。死亡例はA群2例、P群4例で、肝機能障害がA群で9例にみられたが、安全性に関して両群間で有意差はみられなかった。 本試験で、AAVにおいて補体阻害薬であるアバコパンのプレドニゾン漸減療法に対する非劣性と、52週での優越性が証明されたことは、将来の治療戦略に大きな変革をもたらす可能性があり、GCの使用を減らし副作用を低減できることにも大きな利点がある。長期成績と長期安全性、寛解導入後の薬剤減量・中止の可能性などが今後の課題である。
スタチン治療と筋症状 連続無作為化プラセボ対照N-of-1試験
スタチン治療と筋症状 連続無作為化プラセボ対照N-of-1試験
Statin treatment and muscle symptoms: series of randomised, placebo controlled n-of-1 trials BMJ. 2021 Feb 24;372:n135. doi: 10.1136/bmj.n135. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】スタチン服用時に筋症状を経験した患者で、筋肉症状に対するスタチンの影響を明らかにすること。 【デザイン】連続した無作為化プラセボ対照N-of-1試験。 【設定】2016年12月から2018年4月の英国プライマリケア50施設。 【参加者】筋症状を理由にスタチン服用を中止して間もない患者およびスタチン服用中止を検討している患者計200例。 【介入】患者をアトルバスタチン1日1回20mg投与とプラセボに二重盲検化した連続する6つの治療期間(各2カ月)に割り付けた。 【主要評価項目】各治療期間終了時に被験者が視覚的アナログ尺度(0-10)で筋症状を評価した。主要解析では、スタチン投与期間中とプラセボ投与期間中の症状スコアを比較した。 【結果】スタチンとプラセボそれぞれ1期間以上の症状スコアを提出した患者151例を主要解析の対象とした。全体で、スタチン期間とプラセボ期間の筋症状スコアに差はなかった(スタチン-プラセボの平均差-0.11点、95%CI -0.36-0.14、P=0.40)。忍容できない筋症状による脱落は、スタチン期間で18例(9%)、プラセボ期間で13例(7%)だった。試験を完遂した患者の3分の2がスタチンによる長期治療の再開を報告した。 【結論】スタチン服用時の重度筋症状の経験を報告したことがある参加者で、アトルバスタチン20mg投与によるプラセボと比較した筋症状への全体的な影響は認められなかった。試験を完遂した参加者のほとんどが、スタチンによる治療の再開を希望した。N-of-1試験は集団単位で薬物の作用を評価でき、個人の治療の指針となる。 第一人者の医師による解説 ノセボ効果の見える化により、研究参加者の多くがスタチン再開 岡㟢 啓明 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科助教 MMJ. August 2021;17(4):116 クレアチンキナーゼ(CK)上昇を伴う筋炎や横紋筋融解症はスタチン投与に伴い一定の頻度で起きるものの、CK上昇を伴わない軽度な筋症状はスタチンで増えるのか? ノセボ効果(スタチンによって筋症状が増えるかもしれないとの懸念から、偶然の筋症状の原因をスタチンだと思ってしまう)のために、スタチン中止に至ることもあり、特に心血管リスクが高い場合などで、治療上のデメリットになる。 本論文は、スタチンによる筋症状の真偽に答えるべく実施されたN-of-1試験(StatinWISE)の報告である。N-of-1試験は患者内比較試験で、投与期間、プラセボ投与期間をランダムに複数回設定し、1人の患者内で実薬とプラセボの効果を比較、その結果をすべての患者(n)で集計する。本研究では、研究期間12カ月を2カ月 X6回に分け、アトルバスタチン20mgまたはプラセボをそれぞれ3回ずつランダムに割り付けた。対象者は、筋症状が理由でスタチンを中止したか、中止を検討している患者である(CK高値を伴う患者は除外)。なお、70%は心血管疾患既往を有し、スタチン投与が望ましい患者であった。 結果、スタチン vs.プラセボ投与期間の比較では患者評価の筋症状スコアに有意差はなかった。筋症状による投与中止の割合は、スタチン投与期間とプラセボ投与期間で有意差はみられなかった。また、試験終了後、患者に筋症状がスタチン、プラセボどちらの投与期間で起きたのかを知らせた結果、患者の3分の2は今後長期間にわたりスタチンを服用したいと答えた。 今回、CK上昇を伴う筋炎や横紋筋融解症以外の筋症状はスタチンにより有意に増加しているとは言えなかったが、この結果は、最近の他の試験でも裏付けられている(1ー3)。また、本試験では患者の多くがスタチン再開を希望したことから、筋症状が必ずしも薬によるものではないことをこのような方法で理解するのは有用と考えられる。スタチン不耐でスタチン再開を検討したい場合、N-of-1試験の方法は日常臨床にも応用できるのではないかと筆者らは推察している。 他のスタチンや別の用量でも同様な結果が得られるかは不明だが、スタチンによる筋症状が多くの場合ノセボ効果に由来することが示唆された。N-of-1試験デザインが日常臨床でも有用である可能性が示された点でも意義深い。しかし一方で、臨床的には、スタチンとの因果関係がやはり疑われるような、CK上昇を伴わない筋症状にも実際に遭遇する。そのようなケースにも十分注意しながら、本試験の結果を活用することが大切と思われる。 1. Wood FA, et al. N Engl J Med. 2020;383(22):2182-2184. 2. Moriarty PM, et al. J Clin Lipidol. 2014;8(6):554-561. 3. Nissen SE, et al. JAMA. 2016;315(15):1580-1590.
ループス腎炎に用いるvoclosporinとプラセボの有効性および安全性の比較(AURORA 1) 多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験
ループス腎炎に用いるvoclosporinとプラセボの有効性および安全性の比較(AURORA 1) 多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験
Efficacy and safety of voclosporin versus placebo for lupus nephritis (AURORA 1): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial Lancet. 2021 May 29;397(10289):2070-2080. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00578-X. Epub 2021 May 7. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【背景】ループス腎炎成人患者の治療薬として承認された新たなカルシニューリン阻害薬voclosporinによって、第II相試験でループス腎炎患者の腎奏効が改善した。この試験は、ループス腎炎の治療に用いるvoclosporinの有効性と安全性を評価することを目的とした。【方法】この多施設共同、二重盲検、無作為化第III相試験は、27カ国の142施設で実施された。米国リウマチ学会の基準に基づきループス腎炎を呈する全身性エリテマトーデスと診断され、2年以内の腎生検でクラスIII、IVまたはV(単独またはクラスIII、IVとの併存)の患者を適格とした。自動ウェブ応答システムを用いて、ミコフェノール酸モフェチル(MMF、1gを1日2回)と急速に減量する低用量経口ステロイドによる基礎治療を実施した上で、患者を経口voclosporinとプラセボに(1対1の割合で)無作為化により割り付けた。主要評価項目は、52週時の腎の完全寛解とし、主要評価項目評価直前の尿蛋白/クレアチニン比0.5mg/mg未満、腎機能安定(eGFR値60mL/min/1.73m^2または治療前からの低下度20%以下と定義)、レスキュー薬非投与および44~52週に3日以上連続または7日間以上にわたるprednisone 10mg/日相当量未満の投与の複合と定義した。このほか、安全性を評価した。intention-to-treatで有効性解析、無作為化し試験治療を1回以上実施した患者で安全性解析を実施した。試験は、ClinicalTrials.govにNCT03021499で登録されている。【結果】2017年4月13日から2019年10月10日の間に、179例をvoclosporin群、178例をプラセボ群に割り付けた。主要評価項目に定めた腎の完全寛解は、voclosporin群の患者の方がプラセボ群の患者よりも多く達成した(179例中73例[41%]vs. 178例中40例[23%];オッズ比2.65;95%CI 1.64~4.27;P<0.0001)。有害事象は両群が拮抗していた。voclosporin群178例中37例(21%)とプラセボ群178例中38例(21%)に重篤な有害事象が発現した。最も多く見られた感染症などの重篤な有害事象は肺炎であり、voclosporin群の7例(4%)とプラセボ群の8例(4%)に発現した。試験期間中または試験追跡期間中に計6例が死亡した(voclosporin群1例[1%未満]とプラセボ群5例[3%])。死亡に至る事象に、試験担当医師が試験治療に関連があると考えたものはなかった。【解釈】MMF+低用量ステロイドとvoclosporinの併用は、MMF+低用量ステロイドのみよりも、臨床的にも統計的にも腎の完全寛解率が良好であり、安全性のデータも同等であった。この結果は、活動性ループス腎炎治療の重要な成果である。 第一人者の医師による解説 標準薬のMMFにボクロスポリン併用で寛解率改善 国内での保険収載を期待 廣村 桂樹 群馬大学大学院医学系研究科内科学講座腎臓・リウマチ内科学分野教授 MMJ. December 2021;17(6):180 活動性ループス腎炎の治療では、まず寛解導入療法を実施して腎炎を鎮静化し、その後維持療法により長期間の寛解維持を目指す。寛解導入療法は、中等量~大量のグルココルチコイドと免疫抑制薬の投与が基本である。2009年に報告されたALMS試験では、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)とシクロホスファミド静注療法(IVCY)が比較され、両者がほぼ同等の寛解率を示し(1)、その結果をもとにMMFまたはIVCYが寛解導入における免疫抑制薬の標準薬となった。その後、より高い有効性を求め、標準薬に生物学的製剤などを併用する臨床試験がいろいろ試みられたが、ほとんどの試験が失敗に終わっている。そうした中、2015年に、MMFとカルシニューリン阻害薬であるタクロリムスの併用により、IVCYに比べ、寛解率が有意に高まることが中国の多施設共同試験で示され注目を集めた(2)。本論文で報告されたAURORA1試験は、シクロスポリン誘導体で新規カルシニューリン阻害薬のボクロスポリン(VCS)とMMFの併用療法の効果を検討した、日本も含めた国際的な第3相臨床試験である。ISN/RPS2003年分類III、IV、V型のループス腎炎患者357人を対象に、MMF(1回1g、1日2回)をベース薬としてVCS(1回23.7mg、1日2回)投与群とプラセボ投与群の2群に無作為に割り付け(1;1)、検討がなされた。なお本試験ではグルココルチコイド投与量がかなり少ないことが特徴である。治療開始時にメチルプレドニゾロン(0.5g/日、2日間)を投与後、プレドニゾン25mg/日(体重45kg以上の場合)から開始して漸減し、16週目以降は2.5mg/日に減量するプロトコールであり、通常投与量の半分以下となる。主要評価項目である52週後の完全腎奏効(早朝尿での尿蛋白/尿Cr比0.5mg/mgCr以下、eGFR60mL/分/1.73m2以上またはベースラインからのeGFR低下20%以下など)が得られた患者は、VCS群41%に対してプラセボ群23%であり、VCS群が有意に優れていた(オッズ比,2.65;95%信頼区間,1.64~4.27;P<00001)。一方、有害事象は両群で差がみられず、感染症関連の重篤な有害事象として肺炎が最も多くみられたが、VCS群、プラセボ群ともに4%であった。本試験の結果を受けて、2021年1月に米食品医薬品局(FDA)はループス腎炎の治療薬としてボクロスポリンを承認し、米国では販売されている。日本の大塚製薬は日本と欧州でのVCSの独占販売権を取得しており、今後国内での保険収載が期待される。 1. Appel GB, et al. J Am Soc Nephrol. 2009;20(5):1103-1112. 2. Liu Z, et al. Ann Intern Med. 2015;162(1):18-26.
寛解期の関節リウマチに用いる従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬の半用量と一定用量が再燃に及ぼす作用の比較:ARCTIC REWIND無作為化臨床試験
寛解期の関節リウマチに用いる従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬の半用量と一定用量が再燃に及ぼす作用の比較:ARCTIC REWIND無作為化臨床試験
Effect of Half-Dose vs Stable-Dose Conventional Synthetic Disease-Modifying Antirheumatic Drugs on Disease Flares in Patients With Rheumatoid Arthritis in Remission: The ARCTIC REWIND Randomized Clinical Trial JAMA. 2021 May 4;325(17):1755-1764. doi: 10.1001/jama.2021.4542. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【重要性】従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)を投与している関節リウマチ(RA)患者で寛解維持が達成可能な治療目標となっているが、臨床的寛解患者をどう治療するのが最適であるかは明らかになっていない。【目的】寛解を維持しているRA患者を対象に、csDMARD漸減が再燃リスクに及ぼす影響をcsDMARD一定量継続と比較すること。【デザイン、設定および参加者】ARCTIC REWINDは、ノルウェーの病院内リウマチ診療所10施設で実施した多施設共同並行群間非盲検無作為化非劣性試験であった。2013年6月から2018年6月までの間に、csDMARD一定用量を投与し12カ月間寛解を維持しているRA患者160例を登録した。最終来院は2019年6月であった。【介入】患者をcsDMARD半用量群(80例)とcsDMARD一定用量群(80例)に無作為化により割り付けた。【主要評価項目】主要評価項目は、試験開始から12カ月後の追跡調査までに再燃を認めた患者の割合とし、Disease Activity Score(DAS)スコア1.6超(RA寛解の閾値)、DASスコア0.6以上増加、腫脹関節数2カ所以上を再燃と定義した。このほか、患者および医師がともに臨床的に重大な再燃が生じたことを合意した場合も疾患の再燃とした。リスク差20%を非劣性マージンと定義した。【結果】登録した患者160例(平均年齢55.1歳[SD 11.9];女性66%)のうち、156例に割り付けた治療を実施し、このうち重大なプロトコールの逸脱が認められなかった155例を主要解析集団とした(半用量群77例、一定用量群78例)。csDMARD半用量群の19例(25%)が再燃したのに対して、一定用量群では5例(6%)に再燃を認めた(リスク差18%、95%CI 7-29)。半用量群の34例(44%)および一定用量群の42例(54%)に有害事象が発現したが、試験中止に至る患者はいなかった。死亡は認められなかった。【結論および意義】csDMARDを投与している寛解期RA患者で、12カ月間で再燃した患者の割合について、半用量による治療の一定用量に対する非劣性が示されなかった。一定用量群の方が再燃した患者数が有意に少なかった。以上の結果から、半用量投与は支持されない。 第一人者の医師による解説 寛解維持でリウマチ薬減量を希望する患者は多く 医師の丁寧な説明が必要 伊藤 聡 新潟県立リウマチセンター副院長 MMJ. December 2021;17(6):181 欧州リウマチ学会(EULAR)の推奨では、関節リウマチ(RA)患者が従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)を使用し寛解を維持していた場合、csDMARDsの減量を考慮することが示唆されている(1)。しかしその根拠となる確固としたエビデンスはない。本論文は、ノルウェーの病院リウマチ科10施設で行われた、36カ月間の多施設共同、無作為化、非盲検、並行群間比較、非劣性試験(ARCTICREWIND試験)の報告である。寛解を維持しているRA患者を、csDMARDsを半量に減量する群と、減量しない群に分けて、再燃のリスクについて検討した。主要評価項目は、ベースラインから12カ月後までの再燃である。再燃の定義は、(1)DiseaseActivityScore(DAS)が1.6を超える(2)DASが0.6以上増加する(3)腫脹関節が2カ所以上ある(4)患者と主治医の双方が臨床的に再燃したと判断した──の組み合わせとし、非劣性マージンは20%とした。減量群77人、非減量群78人が主要評価項目の解析対象とされた。両群ともに、メトトレキサート(MTX)の単剤療法が多く(減量群:経口52人、皮下注14人、非減量群:経口51人、皮下注10人)、その他スルファサラゾピリジンやヒドロキシクロロキンの併用、他のcsDMARDsの単剤あるいは併用療法が行われていた。MTX使用量は平均で19mg/週程度であった。結果、再燃は減量群の25%、非減量群の6%に認められた(リスク差18%)。有害事象は減量群で44%、非減量群で54%に発現し、主に上気道感染などの軽度の感染症であった。重篤な有害事象の発現率は減量群5%、非減量群3%で、治療中止例や死亡例はなかった。本試験は、寛解維持患者においてcsDMARDsの半量減量は、12カ月間の再燃率に関して非減量に対する非劣性を示すことができず、再燃は非減量群で有意に少なかった。このことは、寛解を維持していても、csDMARDsを半量に減量する戦略を支持しない結果となった。RA患者は臨床的寛解を導入し維持できると、治療費、副作用の懸念などから抗リウマチ薬の減量や中止を希望することが多い。当院では生物学的製剤を中止する、いわゆるバイオフリーを実践し維持しているが(2)、本研究の結果からは、csDMARDsの減量は行わない方がよいだろう。筆者は、患者には「再燃すると再び寛解に導入するのは難しいので、寝た子は起こさないようにしましょう」と説明している。 1. Smolen JS,et al.Ann Rheum Dis.2020;79(6):685-699.2. Ito S,et al.Mod Rheumatol.2021;31(4):919-923.
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.16(2022年9月8日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.16(2022年9月8日号)
長生きできる紅茶の摂取量は? 紅茶の消費と全死因死亡率および原因別死亡率およびカフェイン代謝における遺伝的変異による潜在的な効果の変化との関連性を評価することを目的に、40~69 歳までの49万8,043人を対象とした前向きコホート研究が実施された(フォローアップ期間中央値:11.2年)。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年8月30日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む より効果的な筋力トレーニングを実践するためには 筋力トレーニング(レジスタンストレーニング:RT)に対する反応の個人差に影響を与える要因については、まだ十分に解明されていない。著者らは、RTによる筋肥大に対する衛星細胞反応に骨格筋の毛細血管形成が重要であることを提唱し、有酸素運動(エアロビック コンディショニング)がRTによる適応を増強すると仮定し、検証を行った。FASEB Journal誌2022年9月号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 駆出率が維持または軽度に低下している心不全患者にもSGLT-2阻害剤は有効か~5 つのランダム化比較試験のメタ解析 駆出率が低下した心不全患者を治療するためのガイドラインでは、SGLT2阻害剤が強く推奨されているが、駆出率がある程度で維持されている場合の臨床的利点は十分に確立されていない。駆出率が維持または軽度に低下している心不全患者にもSGLT-2阻害剤は有用なのかを明らかにするため、心血管死亡率および患者サブグループにおける治療効果について、5つのランダム化比較試験の包括的なメタ解析が行われた。Lancet誌2022年9月3日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 2つのCOVID-19経口薬で入院および死亡の減少効果に違いはあるか COVID-19外来患者のリアルワールドコホートにおいて、モルヌピラビル(ラゲブリオ®)とニルマトルビル/リトナビル(パキロビッド®)の入院および死亡の減少効果を検討した。香港におけるレトロスペクティブコホート研究であり、2022年2月16日~3月31日の間に指定外来診療所に通院したCOVID-19外来患者を特定し、分析を行った。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2022年8月29日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む COVID-19後遺症に、漢方薬は効くか? COVID-19後遺症への対処法については、さまざまな議論がなされており、確立した治療方法は明らかとなっていない。果たして、COVID-19後遺症に漢方薬は有用なのであろうか。香港の公立病院から退院した150例を対象に、漢方薬治療の効果検証が行われた。Chinese Medicine氏8月22日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.15(2022年9月1日号) ゼロカロリー甘味料は、耐糖能に影響を及ぼさないのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.14(2022年8月25日号) ゼロカロリー甘味料は、耐糖能に影響を及ぼさないのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号) 運動後の摂取はゆで卵、生卵どちらの摂取が有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.12(2022年8月11日号) 慢性腰痛を軽減する最良の運動オプションとは~RCTのネットワークメタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号) サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本