「N Engl J Med」の記事一覧

ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症 血小板減少と頭蓋内出血で死亡率上昇
ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症 血小板減少と頭蓋内出血で死亡率上昇
Clinical Features of Vaccine-Induced Immune Thrombocytopenia and Thrombosis N Engl J Med. 2021 Oct 28;385(18):1680-1689. doi: 10.1056/NEJMoa2109908. Epub 2021 Aug 11. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ワクチン誘発性免疫性血小板減少症・血栓症(VITT)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2に対するChAdOx1 nCoV-19アデノウイルスベクターワクチンに関連する新しい症候群である。本疾患の臨床的特徴や予後基準に関するデータは不足している。 【方法】2021年3月22日から6月6日の間に英国内の病院を受診したVITTが疑われる患者を対象に前向きコホート研究を実施した。データは匿名化された電子フォームを使用して収集し,事前に指定した基準に従って症例を確定VITTまたはprobable VITTと同定した。患者のベースライン特性および臨床病理学的特徴、危険因子、治療、予後不良のマーカーを決定した 【結果】評価対象となった294例中、VITTの確定例170例と確率例50例を同定した。全例がnCoV-19ワクチンChAdOx1の初回接種を受けており,接種後5~48日(中央値,14日)で発症した.年齢層は18歳から79歳(中央値48歳)で,性差はなく,内科的危険因子もなかった.総死亡率は22%であった。死亡のオッズは,脳静脈洞血栓症患者では2.7倍(95%信頼区間[CI],1.4~5.2),ベースラインの血小板数が50%減少するごとに1.7倍(95% CI,1.3~2.3 ),1.3倍,1.6倍,1.8倍と増加し,脳静脈洞血栓症患者では,ベースラインの血小板数が1%減少すると,1.7倍,1.8倍と増加した.ベースラインのdダイマー値が10,000単位増加するごとに2(95%CI、1.0~1.3)、ベースラインのフィブリノゲン値が50%減少するごとに1.7(95%CI、1.1~2.5)因子増加しました。多変量解析では、ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の有無が死亡と独立して関連していることが確認されました。 【結論】VITTに伴う高い死亡率は、血小板数が少なく、頭蓋内出血のある患者で最も高くなっています。治療法はまだ不明であるが、予後マーカーの同定は効果的な管理の指針になる可能性がある。(オックスフォード大学病院NHS財団トラストより資金提供). 第一人者の医師による解説 抗血小板第4因子抗体(ELISA法)の測定が診断のキーポイント 荒岡 秀樹 虎の門病院臨床感染症科部長 MMJ. April 2022;18(2):49 本論文は、アデノウイルスベクターワクチンであるChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ社製)に関連する、ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症(vaccine-induced immune thrombocytopenia and thrombosis;VITT)の臨床像と予後悪化因子を調査した前向きコホート研究の報告である。2021年3〜6月に英国の病院を受診し、VITTが疑われた患者が対象とされた。VITTの診断基準として、以下の5項目が設定された:(1)ワクチン接種後5 ~ 30日に発症(2)血栓症の存在(3)血小板減少(15万 /μ L未満)(4)Dダイマー高値(4,000 fibrinogen-equivalent unit[FEU]*超)(5)抗血小板第4因子抗体陽性(ELISA法)。Definite VITTは5項目すべてを満たすもの、probable VITTは(4)を必須項目として残り4項目中3項目を満たす、あるいはDダイマーが2,000 ~ 4,000 FEUかつ残り4項目(1、2、3、5)を満たすものとした。 期間中、definite VITTが170人、probable VITTが50人抽出され評価された。全例がワクチンの1回目接種を受けており、97%の患者が接種後5 ~ 30日で発症していた。発症年齢は18 ~ 79歳(中央値48歳)、男女比は女性が54%であった。全死亡率は22%と高く、多変量解析では血小板数と頭蓋内出血が死亡に寄与する独立した危険因子であることが特定された。特に血小板数が3万/μL未満、かつ頭蓋内出血を認めた患者では73%が死亡していた。 VITTはthrombosis with thrombocytopenia syndrome(TTS)という名称が用いられることもあり、適切な名称については議論が残る。ヘパリン起因性血小板減少症と類似の病態として捉えられ、特にアデノウイルスベクターワクチン接種後に多いとされている。しかしながら、ワクチン接種後の血栓塞栓症や血小板減少症はmRNAワクチンでも生じるとされ、その解明と対策は重要である。 現時点では、血小板第4因子とワクチンに含まれる成分が複合体を形成し、複合体に対する抗体が血小板の活性化を惹起することが推定されており、抗血小板第4因子抗体(ELISA法)の測定が診断のキーポイントと考えられている。 本研究の潜在的な弱点は、主に診断確定のバイアスにある。しかしながら220症例ものVITTの臨床像を解析し、死亡の危険因子を抽出したことは大きな成果である。今後の治療法の確立に向けて、本病態のkey paperの1つになりうるものである。 *D ダイマーの単位については、日本では一般的にμg/mL が用いられているため、注意を要する。各測定試薬の添付文書の確認が望ましい。また、日本脳卒中学会、日本血栓止血学会から出ている「COVID-19 ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第 3 版」(2021 年 10 月)内の記述も参考になる。
重度のCovid-19患者に対するレムデシビルの慈悲深い使用。
重度のCovid-19患者に対するレムデシビルの慈悲深い使用。
Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19 N Engl J Med 2020 Jun 11;382(24):2327-2336. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】SARS-CoV-2の感染によって引き起こされる病気であるCovid-19で入院している患者に、レムデシビルを同情的に使用した。患者は,SARS-CoV-2感染が確認された者で,常用空気を吸っているときの酸素飽和度が94%以下であるか,酸素のサポートを受けている者であった。患者はレムデシビルを10日間投与され、その内訳は、1日目に200mgを静脈内投与し、その後残りの9日間は1日100mgを投与するというものでした。本報告書は、2020年1月25日から2020年3月7日までの期間にレムデシビルの投与を受け、その後の少なくとも1日分の臨床データを有する患者のデータに基づいています。 【結果】レムデシビルの投与を少なくとも1回受けた61名の患者のうち、8名のデータが解析できませんでした(治療後のデータがない7名と投与ミスの1名を含む)。データが解析された53名の患者のうち、22名は米国、22名は欧州またはカナダ、9名は日本に在住していました。ベースラインでは、30名(57%)の患者が人工呼吸を受けており、4名(8%)の患者が体外式膜酸素療法を受けていました。中央値18日の追跡期間中、36人(68%)の患者で酸素サポートクラスが改善し、そのうち機械的換気を受けていた30人(57%)の患者のうち17人が抜管された。死亡率は、人工呼吸を受けている患者では18%(34人中6人)、人工呼吸を受けていない患者では5%(19人中1人)であった。 【結論】重症のCovid-19で入院し、思いやりのある使い方をしたレムデシビルで治療を受けたこのコホートでは、53人中36人(68%)に臨床的改善が認められた。有効性の測定には、レムデシビル療法に関する継続的な無作為化プラセボ対照試験が必要である。(Gilead Sciences社より資金提供を受けています。) 第一人者の医師による解説 速報として捉える必要あるが 重症COVID-19にレムデシビルは光明となりうる 葉 季久雄 平塚市民病院救急科・救急外科部長 MMJ.August 2020;16(4) 2019年12月に中国・武漢で報告されて以来、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は今や世界的な脅威となっている。2020年2月ごろの日本のCOVID-19 治療最前線では、日日に呼吸状態が増悪していく重症COVID-19患者を我々は目の当たりにしていた。確立された治療薬がない中、数少ない論文を拠り所に、他疾患で承認済みの薬剤を臨床試用していた。そのような状況で、重症治療にあたっていた医師が求めていたものは、今、目の前で苦しんでいる患者を治すための治療薬、すなわち抗ウイルス薬であった。 レムデシビル(remdesivir)はエボラ出血熱の治療薬として開発されたウイルスRNAポリメラーゼ阻害薬である。エボラ出血熱に対してはより有効な薬剤が開発されたため、レムデシビルは全世界で未承認の薬剤であった。レムデシビルはin vitroにおいてコロナウイルスを含む1本鎖RNAウイルスに活性を示すことが知られている。中国からの報告では、in vitroにおいてSARS-CoV-2に対しても強い活性を示していたため、このパンデミック下における治療薬として再び注目された。 本論文は、人道的見地から治療目的に提供されたレムデシビルの重症COVID-19患者に対するコホート研究の報告である。対象となったのは、SARSCoV-2への感染が確認され、室内気で酸素飽和度が94%以下であるか酸素療法中の入院患者で、レムデシビルは10日間連日投与(1日目200 mg、2~10日目100mg)された。評価項目は、酸素療法必要度、転帰であった。本研究では対照群がないため、レムデシビルがCOVID-19に有効であるか否かを明らかにすることは不可能であり、本論文を解釈する際は、速報として結果を捉える必要がある。 データが解析された患者53 人のうち、中央値18日間のフォローアップ中に、68 %(36 /53) で酸素療法の状況が改善した。その一方で、15%(8 /53)は増悪した。改善の具体例としては、57%(17 /30)の患者で抜管することができ、体外式膜型人工肺(ECMO)が導入された患者4人のうち3人において離脱することができた。転帰は47 %(25 /53)が退院、13 %(7 /53)が死亡した。死亡率は人工呼吸器で管理された患者で18%(6 /34)、人工呼吸器で管理がされなかった患者で5%(1/19)であった。 本研究は、この後に続くランダム化比較試験(RCT)へのイントロダクションである。そのRCTの結果ならびに米食品医薬品局(FDA)の緊急時使用許可を踏まえて、レムデシビルは日本において重症COVID-19に対する治療薬(ベクルリー®)として特例承認された。本研究は、重症COVID-19患者に対するレムデシビルの有効性に、最初に光を当てた研究である。
血栓回収術前のアルテプラーゼ静注療法併用 血栓回収単独療法に対し優越性、非劣性とも示されず
血栓回収術前のアルテプラーゼ静注療法併用 血栓回収単独療法に対し優越性、非劣性とも示されず
A Randomized Trial of Intravenous Alteplase before Endovascular Treatment for Stroke N Engl J Med. 2021 Nov 11;385(20):1833-1844. doi: 10.1056/NEJMoa2107727. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 急性虚血性脳卒中に対する血管内治療(EVT)の前にアルテプラーゼを静注することの価値については、特にアジア以外の地域では広く研究されていません。患者は、EVTのみを行う群と、アルテプラーゼ静注後にEVTを行う群(標準治療)に、1対1の割合で無作為に割り付けられました。主要評価項目は,90 日後の修正 Rankin スケールによる機能的転帰(範囲,0[障害なし]~6[死亡])であった.アルテプラーゼ+EVTに対するEVT単独の優越性を評価するとともに、両試験群のオッズ比の95%信頼区間の下限を0.8とするマージンで非劣性を評価した。安全性の主要評価項目は,あらゆる原因による死亡と症候性脳内出血であった。 【結果】解析対象は539例であった。90日後のmodified Rankin scaleのスコアの中央値は,EVT単独群で3(四分位範囲,2~5),アルテプラーゼ+EVT群で2(四分位範囲,2~5)であった。調整後の共通オッズ比は0.84(95%信頼区間[CI],0.62~1.15,P=0.28)で,EVT単独の優越性も非劣性も認められなかった。死亡率は,EVT 単独で 20.5%,アルテプラーゼ+EVT で 15.8%であった(調整オッズ比,1.39;95%信頼区間,0.84~2.30).症候性脳内出血は,それぞれの群で5.9%と5.3%に発生した(調整オッズ比1.30,95%CI,0.60~2.81)。 【結論】ヨーロッパの患者を対象とした無作為化試験において,脳卒中発症後90日目の障害の転帰に関して,EVT単独はアルテプラーゼ静注後にEVTを行う場合と比較して優越性も非劣性もなかった。症候性脳内出血の発生率は,両群で同等であった。(Collaboration for New Treatments of Acute Stroke コンソーシアムなどの助成を受け、MR CLEAN-NO IV ISRCTN 番号、ISRCTN80619088)。 第一人者の医師による解説 アルテプラーゼ静注併用の是非は決着せず 日本の実臨床ではアルテプラーゼ静注先行が標準 鶴田 和太郎 虎の門病院脳神経血管内治療科部長 MMJ. April 2022;18(2):37 急性期脳梗塞に対する再開通療法として、アルテプラーゼ静注療法は迅速に施行可能であり、高いエビデンスを持った治療法であるが、血管径の太い近位主幹動脈に対する効果は限定的である。一方、カテーテルを用いて行う血栓回収術は、治療設備や専門医が必要であるため施行可能な施設が限定され、治療開始までに時間を要するが、再開通率は高い。これまでアルテプラーゼ静注併用を前提とした血栓回収術の有効性・安全性のエビデンスが集積されてきた。アルテプラーゼ静注の併用は、血栓回収率を上げるという報告がある一方、血栓回収術開始までの時間が長くなることや出血性合併症のリスクが高くなるといったデメリットも考えられており、現在これら併用の是非についての検証が進行中である。 本論文は欧州人を対象とした血栓回収単独とアルテプラーゼ併用のランダム化対照試験(MR CLEAN–NO IV)の報告である。対象はアルテプラーゼ静注と血栓回収の両者が適応となる近位脳主幹動脈閉塞による脳梗塞急性期の患者で、血栓回収単独群またはアルテプラーゼ併用群(アルテプラーゼ静注 +血栓回収)に割り付けられた。主要評価項目は90日後の日常生活自立度(modified Rankin Scale;mRS)、主な安全性評価項目は全死亡、症候性頭蓋内出血とされた。対象患者539人の解析において、90日後のmRSスコア中央値は、血栓回収単独群で3(四分位範囲[IQR], 2〜5)、アルテプラーゼ併用群で2(IQR, 2〜5)であり、アルテプラーゼ併用群の優越性、非劣性とも示されなかった。全死亡、症候性頭蓋内出血の発生率についても両群でおおむね同程度であった。 脳梗塞急性期の血栓回収単独とアルテプラーゼ併用のランダム化対照試験としては、これまでに日本で行われたSKIP(1)と中国で行われたDIRECTMT(2)およびDEVT(3)の結果が報告されている。SKIPでは血栓回収単独のアルテプラーゼ併用に対する非劣性は示されなかったのに対し、DIRECTMTおよびDEVTでは非劣性が示された。 血栓回収前のアルテプラーゼ静注併用の是非については、未だ決着しておらず、進行中の他の研究結果が待たれる。日本の実臨床において、脳梗塞急性期の患者が必ずしも血栓回収を実施できる施設に搬送されるとは限らず、病院間転送が必要な患者にはアルテプラーゼ静注を先行すべきである。血栓回収単独の効率的な提供には、血栓回収適応患者を適切に血栓回収対応可能な施設に搬送するための脳卒中医療のセンター化と搬送システムの構築が喫緊の課題といえる。 1. Suzuki K, et al. JAMA. 2021;325(3):244-253. 2. Yang P, et al. N Engl J Med. 2020;382(21):1981-1993. 3. Zi W, et al. JAMA. 2021;325(3):234-243.
S1P受容体調節作用を持つ経口薬オザニモド 潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持に有用
S1P受容体調節作用を持つ経口薬オザニモド 潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持に有用
Ozanimod as Induction and Maintenance Therapy for Ulcerative Colitis N Engl J Med. 2021 Sep 30;385(14):1280-1291. doi: 10.1056/NEJMoa2033617. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】選択的スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーターであるオザニモドは、炎症性腸疾患の治療薬として研究されている。 【方法】我々は、中等度から重度の活動性を有する潰瘍性大腸炎患者を対象に、オザニモドの導入療法および維持療法に関する第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。10週間の導入期において、コホート1の患者には、1日1回、塩酸オザニモドを1mg(オザニモド0.92mg相当)またはプラセボとして経口投与することを二重盲検法で行い、コホート2の患者には、1日1回、同じ用量のオザニモドを非盲検法で投与しました。10週目に、いずれかのコホートでオザニモドに臨床的に反応した患者は、維持期間(52週目まで)に二重盲検法でオザニモドまたはプラセボを投与するよう、再び無作為化されました。両期間の主要評価項目は、臨床的寛解を示した患者の割合であり、Mayoスコアの3要素で評価された。主要な副次評価項目である臨床的、内視鏡的、組織学的評価項目は、順位付けされた階層的な検定を用いて評価した。また、安全性についても評価した。 【結果】導入期間では、第1コホートに645名、第2コホートに367名の患者が参加し、維持期間では457名の患者が参加した。臨床的寛解の発生率は、導入期(18.4%対6.0%、P<0.001)および維持期(37.0%対18.5%(10週目に奏効した患者)、P<0.001)のいずれにおいても、オザニモドを投与された患者の方がプラセボを投与された患者よりも有意に高かった。臨床反応の発生率も、導入期(47.8%対25.9%、P<0.001)および維持期(60.0%対41.0%、P<0.001)において、プラセボよりもオザニモドの方が有意に高かった。その他の主要な副次的評価項目は、いずれの期間においてもプラセボと比較してオザニモドにより有意に改善された。オザニモドによる感染症(重症度を問わず)の発生率は,導入期ではプラセボと同程度,維持期ではプラセボよりも高かった.重篤な感染症は、52週間の試験期間中、各群の患者の2%未満に発生しました。肝アミノトランスフェラーゼ値の上昇は、オザニモドでより多く見られました。 【結論】オザニモドは、中等度から重度の活動性を有する潰瘍性大腸炎患者の導入療法および維持療法として、プラセボよりも有効でした。(Bristol Myers Squibb社から資金提供を受けています。True North ClinicalTrials.gov番号、NCT02435992)。 第一人者の医師による解説 既存薬と機序が全く異なるオザニモドの位置づけ 市販後の十分な検討が重要 日比 紀文 北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター長・特任教授 MMJ. April 2022;18(2):44 潰瘍性大腸炎(UC)は、クローン病(CD)を含めて炎症性腸疾患(IBD)と総称される。日本でもUCの患者数は20万人を超え一般的となったが、原因が不明なため根本治療がなく、治療は炎症抑制に加え免疫異常の是正が中心であり、寛解導入療法に加えて長期の寛解維持療法が求められる(1)。近年の生物学的製剤の出現は、その目覚ましい治療効果から、難治と考えられてきたIBDや関節リウマチなど慢性炎症性疾患の治療にパラダイムシフトを起こした。しかし、生物学的製剤の多くは高分子の注射剤であり、経口分子標的薬の開発が待たれている。 本論文は、オザニモドのUCにおける寛解導入療法、維持療法としての有効性および安全性を検証した第3相臨床試験の報告である。オザニモドは選択的にリンパ球表面のスフィンゴシン -1-リン酸(S1P)受容体に働き(2)、リンパ球の炎症部位への動員を抑制するという新しい機序を有し、1日1回経口投与で寛解導入・維持を目指す画期的な薬剤である。本試験には30カ国285施設が参加し、寛解導入は 約1,000人、寛解維持は457人の患者で比較検討された。有効性の主要評価項目である「臨床的寛解」においてプラセボ群と比較し有意に高い治療効果を示し、安全性については想定される「徐脈」「肝障害」がオザニモド群でも比較的少なかったという成績で、特に帯状疱疹は少数例にしか見られず、UCの新たな治療選択肢としてのオザニモドの有用性を証明した貴重な報告である。 一方、本試験は事前に心疾患患者を除き、帯状疱疹には細心のチェックをした状態で実施されており、本剤が実臨床に導入された場合は安全性の面で細心の注意が求められる。生物学的製剤の使用は今後さらに増加すると予想されるが、無効例や長期使用で効果減弱などの問題点があること、注射剤より経口薬を好む患者が多いことなどを踏まえると、本剤への期待は大きい。 近年、日本が参加するグローバル試験も多くなったが、本試験の参加者は大多数が欧米人であり(アジア参加国は韓国のみ;5.8%)、日本人を含む東洋人(モンゴロイド)での有効性や安全性が同等であるかは不明である。日本人でも同様の成績が証明されれば臨床面で重要な薬剤になると考えられる。起こりうる副作用としての徐脈・心電図での伝道異常や肝障害は少しみられたが、日本人では異なる反応を示す可能性もある。日本でもすでに有効性と安全性が海外と同様であるかを検証する試験が終了しており、UCの治療選択肢として加えられることに期待している。さらに、既存薬と機序が全く異なる本剤の位置づけを市販後に十分検討していくことが重要となろう。 1. 日比紀文ら . 日本臨床 . 2017;75(3):364-369. 2. Scott FL, et al. Br J Pharmacol. 2016;173(11):1778-1792. 3. Sandborn WJ, et al. N Engl J Med. 2016 May 5;374(18):1754-1762.
アトゲパントが片頭痛予防第3相試験の12週間投与期間で高い有効性を示す
アトゲパントが片頭痛予防第3相試験の12週間投与期間で高い有効性を示す
Atogepant for the Preventive Treatment of Migraine N Engl J Med. 2021 Aug 19;385(8):695-706. doi: 10.1056/NEJMoa2035908. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 アトゲパントは、片頭痛の予防治療薬として検討されている経口低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬です。 【方法】 第3相二重盲検試験において、1ヶ月に4~14日の片頭痛のある成人を1:1:1:1の割合で、アトゲパン経口投与(10mg、30mg、60mg)またはプラセボ12週間無作為に割り付けたところ、1日1回の投与で、片頭痛の予防効果が認められました。主要評価項目は、12週間にわたる1ヶ月あたりの片頭痛平均日数のベースラインからの変化としました。副次的評価項目は、1ヵ月あたりの頭痛日数、1ヵ月あたりの片頭痛日数の3ヵ月平均のベースラインからの50%以上の減少、QOL、Activity Impairment in Migraine-Diary(AIM-D)スコアなどであった。 【結果】合計2270名がスクリーニングされ、910名が登録され、873名が有効性解析に含まれた。214名がアトジェパント10mg群に、223名がアトジェパント30mg群に、222名がアトジェパント60mg群に、214名がプラセボ群に割り付けられた。ベースライン時の1ヶ月の片頭痛日数の平均は4群とも7.5日から7.9日であった。12週間のベースラインからの変化は、アトジェパント10mg群で-3.7日、アトジェパント30mg群で-3.9日、アトジェパント60mg群で-4.2日、そしてプラセボ群で-2.5日でした。ベースラインからの変化量のプラセボとの平均差は、10mgアトガパントで-1.2日(95%信頼区間[CI]、-1.8~-0.6)、30mgアトガパントで-1.4日(95%CI、-1.9~-0.8)、60mgアトガパントで-1.7日(95%CI、-2.3~-1.2)でした(すべての比較でプラセボとP<0.001)。副次的評価項目の結果は,10 mg 用量の AIM-D 日常生活動作スコアと AIM-D 身体障害スコアを除き,アトジェパントがプラセボを上回った.主な有害事象は便秘(アトジェパント投与期間中6.9~7.7%)および悪心(アトジェパント投与期間中4.4~6.1%)でした。重篤な有害事象は、アトジェパント10mg投与群で喘息と視神経炎が各1例ずつありました。有害事象は、便秘と吐き気であった。片頭痛予防のためのアトゲパントの効果と安全性を明らかにするために、より長期で大規模な試験が必要である。(アラガン社からの資金提供;ADVANCE ClinicalTrials. gov 番号、NCT03777059.). 第一人者の医師による解説 片頭痛発作予防の臨床試験で経口投与 CGRP拮抗薬アトゲパントが好結果 鈴木 則宏 湘南慶育病院院長・慶應義塾大学名誉教授 MMJ. April 2022;18(2):34 アトゲパントは低分子の経口投与カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体(CGRP)拮抗薬(1),(2)であり、本論文は、片頭痛の予防的治療薬として本剤の有効性を検討したADVANCE試験の報告である。この無作為化第3相二重盲検試験では、1カ月当たりの片頭痛日数が4 ~ 14日の成人を12週にわたりアトゲパント 10、30、または60mg、もしくはプラセボを1日1回経口投与する4群に割り付けた。主要エンドポイントは12週間における1カ月当たりの片頭痛日数の平均値のベースラインからの変化量とした。副次エンドポイントは、1カ月当たりの頭痛日数、1カ月当たりの片頭痛日数の3カ月間の平均値のベースラインから50%以上の減少、生活の質(QOL)、片頭痛活動障害・ダイアリー指標(AIM-D)スコアなどとした。スクリーニング後、参加者2,270人のうち910人が組み入れられた。 ベースライン時の1カ月当たりの片頭痛日数の平均値は4群で7.5 ~ 7.9日であった。12週間におけるベースラインからの変化量は、アトゲパント 10mg群-3.7日、30mg群-3.9日、60mg群-4.2日、プラセボ群-2.5日であった。ベースラインからの変化量におけるプラセボ群との平均差は、アトゲパント 10mg群-1.2日、30mg群-1.4日、60mg群-1.7日であった(プラセボ群とのすべての比較でP<0.001)。副次エンドポイントの結果は、アトゲパント 10mg群のAIM-Dの日常活動機能スコアと身体障害スコアを除いて、アトゲパント群の方がプラセボ群よりも良好であった。特に頻度の高かった有害事象は、便秘(6.9 ~ 7.7%[アトゲパント群] 対 0.5%[プラセボ群])と悪心(4.4 ~ 6.1%[アトゲパント群] 対1.8%[プラセボ群])であった。アトゲパント群での重篤な有害事象は10mg群における気管支喘息1人、視神経炎1人であった。以上のように、アトゲパントの1日1回経口投与は、12週間における片頭痛日数と頭痛日数の減少に有効であり、有害事象は便秘、悪心などであった。 近年、片頭痛の予防的治療として抗 CGRPモノクローナル抗体あるいは抗CGRP受容体モノクローナル抗体が開発され、日本でも2021年から3種類の製剤が臨床の場に登場し、高い有効性を示している。しかし、いずれも皮下投与製剤であり、自己注射はまだ認可されていないのが現状である。このような状況と予防効果の高さから、アトゲパントの実臨床への早期の導入が期待されるが、本剤の有効性と安全性をより明らかにするためには、より長期かつ大規模な臨床試験が必要であろう。 1. Min KC, et al. Clin Transl Sci. 2021;14(2):599-605. 2. Goadsby PJ, et al. Lancet Neurol. 2020;19(9):727-737.
PIK3CAの体細胞変異が孤発性海綿状血管腫を引き起こす
PIK3CAの体細胞変異が孤発性海綿状血管腫を引き起こす
Somatic PIK3CA Mutations in Sporadic Cerebral Cavernous Malformations N Engl J Med. 2021 Sep 9;385(11):996. doi: 10.1056/NEJMoa2100440. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】脳海綿状奇形(CCM)は、散発性および遺伝性の中枢神経系血管奇形としてよく知られている。家族性CCMはKRIT1(CCM1)、CCM2、PDCD10(CCM3)の機能喪失型変異と関連しているが、80%を占める散発性CCMの遺伝子原因はまだ不完全に理解されていない。 【方法】プロスタグランジンD2合成酵素(PGDS)プロモーターを用いて、ヒト髄膜腫で同定された変異を保有する2つのモデルマウスを開発した。患者から外科的に切除されたCCMの標的DNA配列決定を行い、液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応分析で確認した。 【結果】髄膜腫の2つの共通の遺伝的ドライバーであるPik3caH1047RまたはAKT1E17KをPGDS陽性細胞で発現するマウスでは、髄膜腫ではなく典型的なCCMのスペクトラムが発生(それぞれ22%と11%)することがわかり、88例の散発性のCCMから組織標本を解析することになった。患者の病変組織の39%と1%にそれぞれ活性化型のPIK3CAとAKT1の体細胞変異が検出された。病変の10%のみがCCM遺伝子に変異を有していた。活性化変異Pik3caH1074RとAKT1E17Kによって引き起こされる病変をマウスで解析し,PGDS発現周皮細胞を起源細胞として推定した。 【結論】散発性のCCMからの組織試料において,他のどの遺伝子における変異よりPIK3caにおける変異が大きく表れていることがわかった。家族性CCMの原因となる遺伝子の体細胞変異の寄与は比較的小さかった。(ARC対がん研究財団他より資金提供). 第一人者の医師による解説 予想外の発見を見逃さず 病態解明につなげたserendipityの重要さが伝わる論文 武内 俊樹 慶應義塾大学医学部小児科専任講師 MMJ. April 2022;18(2):51 海綿状血管腫は、比較的よく遭遇する中枢神経系の血管奇形であり、家族性あるいは孤発性に発症する。このうち、家族性海綿状血管腫は、KRIT1(CCM1)、CCM2、PDCD10(CCM3)遺伝子のいずれかの機能喪失型変異によって発症することが知られている。一方で、海綿状血管腫の80%を占める孤発性症例の原因は解明されていなかった。 本研究では、ヒト患者の髄膜腫で同定された遺伝子変異およびプロスタグランジン D2合成酵素(PGDS)プロモーターをもつ2種類の疾患モデルマウスを開発した。髄膜腫の2つの一般的なドライバー変異であるPik3caH1047RまたはAKT1E17Kのいずれかを発現するマウスにおいて、予想外に、髄膜腫ではなく海綿状血管腫が発生した(それぞれマウスの22%と11%に発生した)。これに着想を得て、孤発性海綿状血管腫患者88人の病変組織の遺伝子解析を行った。その結果、PIK3CAおよびAKT1に、機能亢進型の体細胞変異をそれぞれ39%と1%に同定した。既知の家族性海綿状血管腫の原因遺伝子に変異を認めたのは10%に過ぎなかった。さらに、Pik3caH1047RとAKT1E17K変異を有するマウスの病変部位の解析から、PGDSを発現する周皮細胞が海綿状血管腫の発生母地となっていることを突き止めた。以上の結果をまとめると、孤発性海綿状血管腫の病変組織では、PIK3CAの体細胞変異が多く認められ、他のどの遺伝子よりも大きな割合を占めていた。既知の家族性海綿状血管腫の原因遺伝子の体細胞変異によるものはむしろ少なかった。 本研究の最も重要な知見は、同じ海綿状血管腫であっても、家族性と孤発性で原因遺伝子が異なることを示した点である。一般に、家族性疾患の原因遺伝子変異が体細胞変異となった場合には、家族性疾患でみられる病変と似た病変を起こすことが多い。しかしながら、今回の研究では、孤発性海綿状血管腫は、家族性海綿状血管腫の原因遺伝子の体細胞変異によって発症しているのではなく、髄膜腫の原因として知られていたPIK3CAの体細胞変異が発症原因の多くを占めていたという驚くべき結果であった。さらに本研究で特筆すべき点は、もともと髄膜種の研究を目的に作製されたマウスにおいて、想定外の海綿状血管腫が発生したことが今回の研究成果の端緒となったことである。これらのマウスは髄膜に発現するPGDSをもつため、PGDSが海綿状血管腫の発症に関与することも突き止めることができた。予想外の発見を見逃さず当初目的としていなかった孤発性海綿状血管腫の病態解明につなげたserendipityの重要さが伝わる論文である。
認知症に起因する精神病症状に対するpimavanserinの試験
認知症に起因する精神病症状に対するpimavanserinの試験
Trial of Pimavanserin in Dementia-Related Psychosis N Engl J Med. 2021 Jul 22;385(4):309-319. doi: 10.1056/NEJMoa2034634. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】神経変性疾患による認知症を有する患者は、認知症に起因する精神病症状を併発することがある。5-HT2Aの逆作動薬および拮抗薬となる経口薬、pimavanserinが、認知症のさまざまな原因に起因する精神病症状にもたらす効果は不明である。 【方法】アルツハイマー病、パーキンソン病認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症または血管性認知症に起因する精神病症状を有する患者を対象に、第III相二重盲検無作為化プラセボ対照中止試験を実施した。患者に非盲検下でpimavanserinを12週間投与した。8週時および12週時にScale for the Assessment of Positive Symptoms-Hallucinations and Delusions(SAPS–H+D、スコアが高いほど精神症状が重い)スコアが治療前から30%以上低下し、Clinical Global Impression-Improvement(CGI-I)スコアが1(very much improved)または2(much improved)であった患者を無作為化によりpimavanserinの投与を継続するグループとプラセボを投与するグループに1対1の割合で割り付け、26週まで投与した。主要評価項目は、time-to-event解析で評価した精神病症状の再発とし、SAPS-H+Dスコア30%以上上昇かつCGI-Iスコア6(much worse)または7(very much worse)、認知症に起因する精神病症状による入院、有効性欠如による試験治療の中止または試験からの脱落、認知症に起因する精神病症状に対する抗精神病薬の使用のいずれかと定義した。 【結果】非盲検期間中、392例のうち41例が有効性の観点から試験を中止したため、管理上の理由で脱落した。残る351例のうち217例(61.8%)に効果の持続が認められ、105例をpimavanserin群、112例をプラセボ群に割り付けた。pimavanserin群95例中12例(13%)およびプラセボ群99例中28例(28%)に再発が認められた(ハザード比、0.35;95%CI、0.17~0.73;P=0.005)。二重盲検期間中、pimavanserin群105例中43例(41.0%)およびプラセボ群112例中41例(36.6%)に有害事象が発現した。pimavanserin群に、頭痛、便秘、尿路感染症および無症候性QT延長が発現した。 【結論】有効性の観点から早期に中止された試験で、認知症に起因する精神病症状を有し、pimavanserinの効果が認められた患者で、試験薬の継続により試験薬を中止した場合よりも再発のリスクが低かった。認知症に起因する精神病症状に対するpimavanserinの効果を明らかにするために、長期間にわたる大規模な試験が必要である。 第一人者の医師による解説 抗精神病薬とは異なる薬理作用 精神病症状の新しい治療選択肢として期待 稲田 健 北里大学医学部精神科学教授 MMJ. February 2022;18(1):5 認知症の原因となる、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、パーキンソン病認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症に対する根本的な治療方法はまだない。実臨床で特に問題となるのは、認知症に関連した精神病症状(認知症関連精神病症状)であり、患者本人にも家族や支援者にも多大な負担となる。このため、認知症そのものの改善がなくとも、精神病症状を改善させる治療法は強く求められている。 本論文は、認知症関連精神病症状に対して、セロトニン受容体5-HT2Aの逆アゴニストおよびアンタゴニストであるピマバンセリンの有効性と安全性を検証したHARMONY試験の報告である。本試験では無作為化前に認知症関連精神病症状を有する患者392人に非盲検下でピマバンセリンが12週間投与され、8週後と12週後に、217人が陽性症状評価尺度で30%以上改善し、臨床的全般性印象尺度(CGI)で1(非常に改善)または2(かなり改善)となった。ピマバンセリンが有効であった患者217人を実薬(ピマバンセリン継続)群とプラセボ群に無作為に割り付け、主要評価項目である再発について二重盲検下で比較した。その結果、再発率はピマバンセリン群13%、プラセボ群28%であった(ハザード比 , 0.35; 95%信頼区間 , 0.17 ~ 0.73;P=0.005)。有害事象は、ピマバンセリン群では41.0%、プラセボ群では36.6%に発生し、事象としては頭痛、便秘、尿路感染症、無症候性 QT延長などであった。 本試験の結果、ピマバンセリンに反応した認知症関連精神病症状を有する患者において、ピマバンセリンを継続した方が再発リスクは低くなることが示された。 認知症関連精神病症状に対しては、適応外使用として、抗精神病薬が使用されているのが現状である。しかし、抗精神病薬の長期使用は、認知機能の悪化、錐体外路作用、鎮静作用、転倒、代謝異常などを伴うことがあり、最小用量、最短期間の使用にとどめることが求められている(1)。ピマバンセリンは抗精神病薬とは異なる薬理作用でありながら、パーキンソン病に関連する精神病症状に対する有効性が確認されており(2)、今回の試験では認知症関連精神病症状に対する有効性が確認された。このことから、今後の認知症関連精神病症状の治療選択肢となることが期待される。 1. Reus VI, et al. Am J Psychiatry. 2016;173(5):543-546. 2. Cummings J, et al. Lancet. 2014;383(9916):533-540.
心不全のため入院した高齢患者の身体リハビリテーション
心不全のため入院した高齢患者の身体リハビリテーション
Physical Rehabilitation for Older Patients Hospitalized for Heart Failure N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):203-216. doi: 10.1056/NEJMoa2026141. Epub 2021 May 16. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】急性非代償性心不全のため入院した高齢患者は、身体的フレイル、生活の質の低下、回復の遅れおよび再入院の頻度が高い。この集団の身体的フレイルに対処する介入方法が十分に確立されていない。 【方法】多施設共同無作為化比較試験を実施し、4つの身体機能(筋力、平衡性、可動性および持久力)の強化を目的とした移行期の個別化段階的リハビリテーションによる介入を評価した。介入は、心不全による入院中または入院早期に開始し、退院後も36回の外来リハビリを実施した。主要評価項目は、3ヵ月後のShort Physical Performance Batteryスコア(総スコア0~12点、低スコアほど身体機能障害が重度であることを示す)とした。副次評価項目は、6ヵ月後の原因を問わない再入院率とした。 【結果】計349例を無作為化し、175例をリハビリテーション介入群、174例を通常治療(対照)群に割り付けた。介入前は両群の患者ともに身体機能が顕著に低下しており、97%がフレイルまたはフレイル予備軍であり、平均併存疾患数は両群ともに5疾患であった。介入群の患者継続率が82%であり、リハビリへの参加率が67%であった。介入前のShort Physical Performance Batteryスコアおよびその他の患者データを調整すると、3ヵ月後のShort Physical Performance Batteryスコアの最小二乗平均値(±SE)スコアは、介入群が8.3±0.2、対照群が6.9±0.2であった(平均群間差、1.5;95%信頼区間[CI]、0.9~2.0、P<0.001)。原因を問わない6ヵ月後の再入院率は、介入群が1.18、対照群が1.28であった(率比、0.93;95%CI、0.66~1.19)。介入群の21例(15例が心血管疾患に起因)、対照群の16例(8例が心血管疾患に起因)が死亡した。あらゆる原因による死亡率は、介入群が0.13、対照群が0.10であった(率比、1.17;95%CI、0.61~2.27)。 【結論】急性非代償性心不全のため入院したさまざまな高齢患者の集団で、多数の身体機能強化を目的とした移行期の個別化段階的リハビリテーションによる介入を早期に開始することによって、通常治療よりも身体機能が大きく改善した。 第一人者の医師による解説 死亡率と再入院率の改善には在宅医療を含めた多角的治療戦略が必要 酒向 正春 ねりま健育会病院院長 MMJ. February 2022;18(1):10 急性非代償性心不全で入院する高齢患者では、身体的フレイル、生活の質(QOL)の低下、回復の遅延、繰り返す再入院が高頻度にみられる(1)。しかし、急性心不全の高齢患者群の身体的フレイルに対するリハビリテーション(以下、リハ)治療の有効性は十分に確立されていない(2)。そこで本論文の著者らは、その有効性を検討するために米国で多施設ランダム化対照試験(REHAB-HF試験)を行った。 本試験では、入院患者27,300人のうち適格基準を満たした急性非代償性心不全の高齢患者349人が積極的リハ治療群175人(平均73.1歳)と通常ケア(対照)群174人(平均72.7歳)に無作為に割り付けられ、比較・評価された。積極的リハ治療群では、筋力強度、バランス、可動性、体力耐久性の4つの機能を強化するために、患者別のリハ介入が計画された。その介入は入院後早期に開始され、入院中継続し、退院後も外来で1回60分のセッションが週3日、12週間(計36回)継続された。主要評価項目は3カ月目のShort Physical Performance Battery(SPPB)のスコア(0から12の範囲で、スコアが低いほど重度の身体機能障害を示す)、副次評価項目は6カ月間の原因を問わない再入院率とされた。 両群は、入院時に身体機能が著しく低く、97%がフレイル状態かプレフレイル状態であり、平均5つの合併症を認めた。積極的リハ治療群の入院治療達成率は82%であり、外来を含めた治療順守率は67%であった。入院時 SPPBスコアの平均± SDは積極的リハ治療群6.0±2.8、対照群6.1±2.6であったが、3カ月の時点で積極的リハ治療群8.3±0.2、対照群6.9±0.2(群間差 , 1.5;95%信頼区間[CI], 0.9 ~ 2.0;P<0.001)となり、積極的リハ治療群で有意な改善が認められた。さらに、積極的リハ治療群では歩行バランス・速度・距離、フレイル、QOL、うつ状態が改善する傾向を示した。6カ月間の再入院件数は積極的リハ治療群194件、対照群213件(発生率比 , 0.93;95% CI, 0.66 ~ 1.19)、全死亡数は積極的リハ治療群21人(心血管系原因15人)、対照群16人(心血管系原因8人)(発生率比 , 1.17;95% CI, 0.61~2.27)であり、いずれも有意差は認められなかった。 以上より、急性非代償性心不全で入院した多様な高齢患者群に対して、入院早期から継続的に患者別に調整された積極的リハ治療を行うことにより身体機能面が大きく改善する有効性が明らかになった。死亡率と再入院率の改善には、在宅医療を含めた多角的治療戦略が必要である。 1. Warraich HJ, et al. Circ Heart Fail. 2018;11(11):e005254. 2. Mudge AM, et al. JACC Heart Fail. 2018;6(2):143-152.
アナルトリーを有する麻痺患者の発話を読み取るための神経補綴
アナルトリーを有する麻痺患者の発話を読み取るための神経補綴
Neuroprosthesis for Decoding Speech in a Paralyzed Person with Anarthria N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):217-227. doi: 10.1056/NEJMoa2027540. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】発話不能の麻痺患者のコミュニケーション能力を回復させる技術により、自律性と生活の質が向上する可能性がある。このような患者の大脳皮質活動から単語や文章を直接読み取るアプローチにより、従来のコミュニケーション補助方法から進歩を遂げる。 【方法】脳幹梗塞によりアナルトリー(明瞭に発話する能力の喪失)および痙性四肢不全麻痺を有する患者1例を対象に、発話を制御する感覚運動皮質領域の硬膜下に高密度のマルチ電極アレイを埋め込んだ。48回のセッションで、患者が50語の語彙の中から選んだ単語を個別に発話しようとする際の皮質活動を22時間分記録した。深層学習アルゴリズムを用いて、記録した皮質活動のパターンから単語を検出し、分類する計算モデルを作成した。この計算モデルに加え、先行する一連の単語から次の単語の確率を算出する自然言語モデルを用いて、患者が発話しようとしている文の完成形を解読した。 【結果】患者の皮質活動から、1分間に中央値で15.2語、リアルタイムで文章を解読し、誤り率が中央値で25.6%であった。事後解析で、患者が個々の単語を発話しようとした試みの98%を検出していた。皮質シグナルを用いて47.1%の正確性で単語を分類し、皮質シグナルは81週間の試験期間を通じて安定していた。 【結論】脳幹梗塞によるアナルトリーおよび痙性四肢不全麻痺を有する患者1例で、深層学習モデルと自然言語モデルを用いて、発話しようとする際の皮質活動から直接、単語と文章を読み取った。 第一人者の医師による解説 単語数の制限や精度の改良が必要だがリアルタイムでコミュニケーション可能な社会の実現を期待 井口 はるひ 東京大学医学部附属病院リハビリテーション科助教 MMJ. February 2022;18(1):23 近年、機械の発達により、発話でコミュニケーションが困難な患者に対してさまざまなコミュニケーション代替装置を提案できるようになってきた。しかし、四肢麻痺などの身体機能障害を有すると、機械操作が困難となるため、コミュニケーションに苦慮することがある。一方、四肢の機能が障害された患者に対して機能を代替するbrain machine interfaceが数多く開発され、商品化もされている。本論文の著者らが所属するサンフランシスコ大学で開発されたspeech neuroprosthesis(会話のための神経代替装置)は、脳に埋め込んだ電極を通じて文字変換・出力し、ディスプレイ画面に表示するbrain-computer interfaceである。 本研究では、16年前に脳幹梗塞のためにアナルトリー(anarthria)と痙性四肢麻痺を生じた男性患者に対して、皮質感覚野周辺の硬膜下に多数の高密度皮質脳波電極を外科的に埋め込み、発語課題を行った際の脳活動から単語と文章を再構築することを試みたものである。アナルトリーとは、発語障害のうち、構音の歪み(音が不明瞭化し、母語の表記方法では表現できない音になること)と語を構成する音と音のつながりに障害(「まいにち」というところを「ま、いーにっち」などになる現象)を持つ状態である(1)。81週間かけて50回のセッションを行い、データ収集することで再構築の精度を上げようとした。患者は提示された①単語と②文章を音読し、その際の脳活動を記録した。データ収集の際、著者らは深層学習モデルを使用し、脳活動から予測して発話検出および単語分類モデルを作成した。また、前の単語から次の単語を予測する自然言語モデルを作成した。その結果、脳活動から、文章をリアルタイムで1分間に中央値15.2語の頻度で読み取り、間違いの割合は自然言語モデルを使わない場合の60.5%に対し、使った場合は25.6%であった。事後解析では、単語レベルでも、発語のタイミングを98%検出でき、単語分類の予測は47.1%の精度で可能であった。 本研究の結果から、発語が困難になっても言語機能の障害がなく脳活動が維持されていれば、言語の抽出が脳波から可能であることが示された。単語については、50単語のみを使用しているため、現時点では状況を限定しての使用になる。今後、電極設置の侵襲の低下、多言語での正確性の確認などが必要と思われる。研究が進み、構音・発声障害に加え、運動機能障害でコミュニケーションが困難となっている患者がリアルタイムでコミュニケーション可能になる社会が現実化することが期待される。 1. 大槻美佳 . 臨床神経学 . 2008;48(11):853-856.
週1回皮下注持続性 GLP-1アゴニストは10〜18歳未満の肥満2型糖尿病患者の糖代謝を改善
週1回皮下注持続性 GLP-1アゴニストは10〜18歳未満の肥満2型糖尿病患者の糖代謝を改善
Once-Weekly Dulaglutide for the Treatment of Youths with Type 2 Diabetes N Engl J Med. 2022 Aug 4;387(5):433-443. doi: 10.1056/NEJMoa2204601. Epub 2022 Jun 4. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 2 型糖尿病の発生率は若者の間で増加しています。グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストであるデュラグルチドによる週1回の治療は、2型糖尿病の若者の血糖コントロールに関して有効である可能性があります.ライフスタイルの変更のみまたはメトホルミンで、基礎インスリンの有無にかかわらず、1:1:1 の比率で治療を受けている参加者 (10 歳から 18 歳未満、ボディマス指数 [BMI]、> 85 パーセンタイル) を無作為に割り当てました。週に 1 回、プラセボ、デュラグルチド 0.75 mg、またはデュラグルチド 1.5 mg の皮下注射を受けます。その後、参加者は 26 週間の非盲検延長試験に参加し、プラセボを投与されていた人が毎週 0.75 mg のデュラグルチドの投与を開始しました。主要評価項目は、26 週での糖化ヘモグロビン レベルのベースラインからの変化でした。二次エンドポイントには、7.0%未満の糖化ヘモグロビンレベルと、空腹時グルコース濃度およびBMIのベースラインからの変化が含まれていました。安全性も評価されました。 [結果] 合計 154 人の参加者が無作為化されました。 26 週の時点で、糖化ヘモグロビンの平均レベルはプラセボ群で増加し (0.6 パーセント ポイント)、デュラグルチド群で減少しました (0.75 mg 群で -0.6 パーセント ポイント、1.5 mg 群で -0.9 パーセント ポイント、プラセボに対する両方の比較で P < 0.001)。 26 週の時点で、プールされたデュラグルチド群の参加者の割合が、プラセボ群よりも高く、7.0% 未満の糖化ヘモグロビン レベルでした (51% 対 14%、P < 0.001)。空腹時血糖値はプラセボ群で増加し(1デシリットルあたり17.1mg)、プールされたデュラグルチド群で減少し(1デシリットルあたり-18.9mg、P <0.001)、BMIの変化にグループ間差はありませんでした.胃腸の有害事象の発生率は、プラセボよりもデュラグルチド療法の方が高かった.デュラグルチドの安全性プロファイルは、成人で報告されたものと一致していました。メトホルミンまたは基礎インスリンの有無にかかわらず、BMI に影響を与えずに治療を受けている。 (Eli Lilly から研究助成を受けた。AWARD-PEDS ClinicalTrials .gov 番号 NCT02963766)。 第一人者の医師による解説 消化器症状の懸念はあるが デュラグルチドは血糖管理に有効 内潟 安子 東京女子医科大学附属足立医療センター病院長 特任教授 MMJ.February 2023;19(1):18 肥満2型糖尿病患者、特に若い年代の当該患者は世界的に急増し、糖尿病性合併症の急速な進展もみられる。若い糖尿病患者に対する治療指針の根拠の1つに米国 TODAY試験が有名であるが、推奨の第1治療薬メトホルミンでは対象患者のおよそ半数が血糖管理に失敗し、膵β細胞機能の急激な悪化を阻止できなかった(1)。若い糖尿病患者は成人の糖尿病患者と比較し、その病因的背景は相等であると言われるのだが、インスリン抵抗性、膵β細胞機能不全ともに成人2型糖尿病より迅速に重症化しやすいのではないかと考えられる(2),(3)。その一方、若い糖尿病患者への薬物療法は成人2型糖尿病の薬物療法ほどには進歩していない。 本論文は、10歳~18歳未満の肥満2型糖尿病患者を対象に、成人の2型糖尿病に広く使用されているグルカゴン様ペプチド(GLP)-1アゴニストのデュラグルチドを0.75mg、1.5mg、もしくはプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付け、26週間後の経過を比較した第3相二重盲検優越性試験(AWARD-PEDS)の報告である。対象は各群約50人で、年齢分布、性別、人種構成、体格指数(BMI)(34前後)、HbA1c値(8.0%前後)、ベースライン治療(メトホルミン単独63%前後、メトホルミン+基礎インスリン併用25%前後、基礎インスリン治療単独3%前後)に関して3群間で同様であった。 26週時点の結果は以下のとおりである。平均HbA1c値はプラセボ群で0.6%上昇し、デュラグルチド 0.75mg群、1.5mg群ではそれぞれ0.6%、0.9%低下した(いずれもP<0.001)。HbA1c値が7.0%未満であった参加者の割合は、プラセボ群14%に対して、デュラグルチド 0.75mg群と1.5mg群の統合群では51%であった(P<0.001)。空腹時血糖値は、プラセボ群で17.1mg/dL上昇、デュラグルチド統合群では18.9mg/dL低下した(P<0.001)。BMIの増減に関して有意な群間差はなかった。消化器症状はデュラグルチド群に多くみられたが、デュラグルチドの安全性プロファイルは成人2型糖尿病での報告と同様であった。 今回の検討から、10代の肥満2型糖尿病患者において、メトホルミン服用の有無や基礎インスリン治療の有無に関係なく、デュラグルチドは0.75mgであれ1.5mgであれ投与26週間後に、減量効果はみられなかったが、血糖値の良好化に関してプラセボよりも有意な効果を得られることが明らかとなった。 1. TODAY Study Group. N Engl J Med. 2012;366(24):2247-2256. 2. RISE Consortium. Diabetes Care. 2018;41(8):1696-1706. 3. Utzschneider KM, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2021;178:108948.