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成人の反復性片頭痛に用いる急性期治療:系統的レビューとメタ解析
成人の反復性片頭痛に用いる急性期治療:系統的レビューとメタ解析
Acute Treatments for Episodic Migraine in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis JAMA. 2021 Jun 15;325(23):2357-2369. doi: 10.1001/jama.2021.7939. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【重要性】片頭痛は頻度が高く著しい病的状態を引き起こすことがあり、急性期治療に幾つか選択肢がある。【目的】成人の反復性片頭痛に用いる急性期治療の便益と害を評価すること。【データ入手元】開始時から2021年2月24日までの多数のデータベース。【試験の選択】片頭痛発作に用いる急性期治療の効果または害を評価した無作為化臨床試験と系統的レビュー。【データ抽出および統合】独立したレビュアーが試験を選択し、データを抽出した。Hartung-Knapp-Sidik-Jonkman法による分散補正およびDerSimonian-Lairdのランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、試験数が少ない場合はMantel-Haenszel法に基づく固定効果モデルを用いた。【主要評価項目】主要評価項目は、疼痛消失、疼痛緩和、疼痛消失の持続、疼痛緩和の持続、有害事象とした。科学的根拠の強さ(SOE)をAgency for Healthcare Research and Quality Methods Guide for Effectiveness and Comparative Effectiveness Reviewsを用いて各等級に分類した。【結果】系統的レビュー15報からトリプタンと非ステロイド抗炎症薬に関する科学的根拠を要約した。他の介入について、患者2万8,803例を対象とした無作為化臨床試験115件を対象とした。プラセボと比較すると、トリプタンと非ステロイド抗炎症薬を別々に使用した場合に、2時間後および翌日の疼痛軽減(中程度ないし高度のSOE)および軽度で一過性の有害事象のリスク上昇との有意な関連を認めた。プラセボと比較すると、カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬(低度ないし高度のSOE)、lasmiditan(5-HT1F受容体作動薬;高度のSOE)、dihydroergotamine(中等度ないし高度のSOE)、ergotamine+カフェイン(中等度のSOE)、アセトアミノフェン(中等度のSOE)、制吐薬(低度のSOE)、butorphanol(低度のSOE)、トラマドールとアセトアミノフェンの併用(低度のSOE)に疼痛軽減および軽度の有害事象増加との有意な関連があった。オピオイドに関する結果は、低度または不十分なSOEに基づくものであった。遠隔電気神経調節(中等度のSOE)、経頭蓋磁気刺激(低度のSOE)、外部三叉神経刺激(低度のSOE)、非侵襲的迷走神経刺激(低度のSOE)などの非薬物療法に疼痛改善との有意な関連があった。非薬物療法群とシャム群との間に有害事象の有意差は認められなかった。【結論および意義】片頭痛の急性期治療が幾つかあるが、それぞれの治療を裏付ける科学的根拠の強さにばらつきがある。トリプタン、非ステロイド抗炎症薬、アセトアミノフェン、dihydroergotamine、カルシトニン遺伝子関連ペプチド拮抗薬、lasmiditanおよび一部の非薬物療法に疼痛および機能の改善との有意な関連を認めた。オピオイドを始めとするその他多くの介入に関する科学的根拠は少なかった。 第一人者の医師による解説 ゲパント系薬剤やディタン系薬剤の国内承認で 片頭痛の急性期治療は大きな変革 北村 英二 北里大学医学部脳神経内科学講師 MMJ. December 2021;17(6):173 2016年の世界の疾病負荷研究(GlobalBurdenofDiseaseStudy)によると、世界人口のおよそ14.4%が片頭痛に罹患しており、片頭痛は障害生存年数の第2位に位置する疾患である。片頭痛診療では生活習慣や環境要因に対する生活指導に加え、急性期治療と予防療法が行われる。日本では2021年に抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体、抗CGRP受容体抗体による予防療法が承認され、片頭痛診療の大きな変革期が到来している。本論文の目的は成人の反復性片頭痛(国際頭痛分類第3版[ICHD-3]片頭痛診断基準に準じ、片頭痛日数が月に15日未満で慢性片頭痛に該当しないもの)に対する急性期治療の有益性と有害性を評価することである。トリプタンと非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に関するエビデンスについて15の系統的レビューを、その他の介入研究については115の無作為化臨床試験(患者数28,803人)を評価した。プラセボと比較して、トリプタンとNSAIDsを個別に使用した場合、それぞれ2時間後と1日後の痛みが有意に減少し(エビデンスの強さ[SOE]:中~高)、軽度・一過性有害事象のリスクが上昇した。またプラセボと比較して、CGRP受容体拮抗薬(SOE:低~高)、ラスミディタン(5-HT1F受容体作動薬)(SOE:高)、ジヒドロエルゴタミン(SOE:中~高)、エルゴタミン+カフェイン(SOE:中)、アセトアミノフェン(SOE:中)、制吐薬(SOE:低)、ブトルファノール(SOE:低)、およびトラマドールとアセトアミノフェンの併用(SOE:低)は有意に痛みを軽減し、軽度有害事象の増加を認めた。オピオイドに関してはSOEが低いか不十分であった。一方、片頭痛の非薬物療法については、ニューロモデュレーション(REN)(SOE:中)、経頭蓋磁気刺激装置(TMS)(SOE:低)、経皮的三叉神経刺激装置(e-TNS)(SOE:低)、非侵襲的迷走神経刺激装置(nVNS)(SOE:中)が有意に痛みを改善した。有害事象については、非薬物療法と偽(sham)治療で有意差はなかった。片頭痛に対していくつかの急性期治療があるが、今回の結果から、そのエビデンスの強さはさまざまであることが示された。日本でもゲパント系薬剤(CGRP受容体拮抗薬)(1),(2)、ディタン系薬剤(選択的5-HT1F受容体作動薬)(3)が承認されれば、片頭痛の予防療法のみならず急性期治療も大きな変革期を迎えることが予想される。 1. Croop R, et al. Lancet. 2021;397(10268):51-60.2. Lipton RB, et al. N Engl J Med. 2019;381(2):142-149.3. Goadsby PJ, et al. Brain. 2019;142(7):1894-1904.
アトゲパントが片頭痛予防第3相試験の12週間投与期間で高い有効性を示す
アトゲパントが片頭痛予防第3相試験の12週間投与期間で高い有効性を示す
Atogepant for the Preventive Treatment of Migraine N Engl J Med. 2021 Aug 19;385(8):695-706. doi: 10.1056/NEJMoa2035908. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 アトゲパントは、片頭痛の予防治療薬として検討されている経口低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬です。 【方法】 第3相二重盲検試験において、1ヶ月に4~14日の片頭痛のある成人を1:1:1:1の割合で、アトゲパン経口投与(10mg、30mg、60mg)またはプラセボ12週間無作為に割り付けたところ、1日1回の投与で、片頭痛の予防効果が認められました。主要評価項目は、12週間にわたる1ヶ月あたりの片頭痛平均日数のベースラインからの変化としました。副次的評価項目は、1ヵ月あたりの頭痛日数、1ヵ月あたりの片頭痛日数の3ヵ月平均のベースラインからの50%以上の減少、QOL、Activity Impairment in Migraine-Diary(AIM-D)スコアなどであった。 【結果】合計2270名がスクリーニングされ、910名が登録され、873名が有効性解析に含まれた。214名がアトジェパント10mg群に、223名がアトジェパント30mg群に、222名がアトジェパント60mg群に、214名がプラセボ群に割り付けられた。ベースライン時の1ヶ月の片頭痛日数の平均は4群とも7.5日から7.9日であった。12週間のベースラインからの変化は、アトジェパント10mg群で-3.7日、アトジェパント30mg群で-3.9日、アトジェパント60mg群で-4.2日、そしてプラセボ群で-2.5日でした。ベースラインからの変化量のプラセボとの平均差は、10mgアトガパントで-1.2日(95%信頼区間[CI]、-1.8~-0.6)、30mgアトガパントで-1.4日(95%CI、-1.9~-0.8)、60mgアトガパントで-1.7日(95%CI、-2.3~-1.2)でした(すべての比較でプラセボとP<0.001)。副次的評価項目の結果は,10 mg 用量の AIM-D 日常生活動作スコアと AIM-D 身体障害スコアを除き,アトジェパントがプラセボを上回った.主な有害事象は便秘(アトジェパント投与期間中6.9~7.7%)および悪心(アトジェパント投与期間中4.4~6.1%)でした。重篤な有害事象は、アトジェパント10mg投与群で喘息と視神経炎が各1例ずつありました。有害事象は、便秘と吐き気であった。片頭痛予防のためのアトゲパントの効果と安全性を明らかにするために、より長期で大規模な試験が必要である。(アラガン社からの資金提供;ADVANCE ClinicalTrials. gov 番号、NCT03777059.). 第一人者の医師による解説 片頭痛発作予防の臨床試験で経口投与 CGRP拮抗薬アトゲパントが好結果 鈴木 則宏 湘南慶育病院院長・慶應義塾大学名誉教授 MMJ. April 2022;18(2):34 アトゲパントは低分子の経口投与カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体(CGRP)拮抗薬(1),(2)であり、本論文は、片頭痛の予防的治療薬として本剤の有効性を検討したADVANCE試験の報告である。この無作為化第3相二重盲検試験では、1カ月当たりの片頭痛日数が4 ~ 14日の成人を12週にわたりアトゲパント 10、30、または60mg、もしくはプラセボを1日1回経口投与する4群に割り付けた。主要エンドポイントは12週間における1カ月当たりの片頭痛日数の平均値のベースラインからの変化量とした。副次エンドポイントは、1カ月当たりの頭痛日数、1カ月当たりの片頭痛日数の3カ月間の平均値のベースラインから50%以上の減少、生活の質(QOL)、片頭痛活動障害・ダイアリー指標(AIM-D)スコアなどとした。スクリーニング後、参加者2,270人のうち910人が組み入れられた。 ベースライン時の1カ月当たりの片頭痛日数の平均値は4群で7.5 ~ 7.9日であった。12週間におけるベースラインからの変化量は、アトゲパント 10mg群-3.7日、30mg群-3.9日、60mg群-4.2日、プラセボ群-2.5日であった。ベースラインからの変化量におけるプラセボ群との平均差は、アトゲパント 10mg群-1.2日、30mg群-1.4日、60mg群-1.7日であった(プラセボ群とのすべての比較でP<0.001)。副次エンドポイントの結果は、アトゲパント 10mg群のAIM-Dの日常活動機能スコアと身体障害スコアを除いて、アトゲパント群の方がプラセボ群よりも良好であった。特に頻度の高かった有害事象は、便秘(6.9 ~ 7.7%[アトゲパント群] 対 0.5%[プラセボ群])と悪心(4.4 ~ 6.1%[アトゲパント群] 対1.8%[プラセボ群])であった。アトゲパント群での重篤な有害事象は10mg群における気管支喘息1人、視神経炎1人であった。以上のように、アトゲパントの1日1回経口投与は、12週間における片頭痛日数と頭痛日数の減少に有効であり、有害事象は便秘、悪心などであった。 近年、片頭痛の予防的治療として抗 CGRPモノクローナル抗体あるいは抗CGRP受容体モノクローナル抗体が開発され、日本でも2021年から3種類の製剤が臨床の場に登場し、高い有効性を示している。しかし、いずれも皮下投与製剤であり、自己注射はまだ認可されていないのが現状である。このような状況と予防効果の高さから、アトゲパントの実臨床への早期の導入が期待されるが、本剤の有効性と安全性をより明らかにするためには、より長期かつ大規模な臨床試験が必要であろう。 1. Min KC, et al. Clin Transl Sci. 2021;14(2):599-605. 2. Goadsby PJ, et al. Lancet Neurol. 2020;19(9):727-737.
片頭痛予防薬4種類までが無効であることが証明された患者さんにおける片頭痛予防のためのFremanezumab対プラセボ(FOCUS):無作為化二重盲検プラセボ対照第3b相試験。
片頭痛予防薬4種類までが無効であることが証明された患者さんにおける片頭痛予防のためのFremanezumab対プラセボ(FOCUS):無作為化二重盲検プラセボ対照第3b相試験。
Fremanezumab versus placebo for migraine prevention in patients with documented failure to up to four migraine preventive medication classes (FOCUS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3b trial Lancet 2019 Sep 21 ;394 (10203):1030 −1040. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体を標的とする抗体は、片頭痛発作の予防に有効であることが示されている。我々は、2~4種類の片頭痛予防薬が効かない片頭痛患者を対象に、完全ヒト化CGRP抗体であるfremanezumabの有効性と忍容性を検討した。 【方法】無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間第3b相FOCUS試験は、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカにわたる104施設(病院、医療センター、研究機関、グループ診療クリニックなど)で行われました。過去10年間に2〜4種類の片頭痛予防薬が無効であったことが記録されている18〜70歳の片頭痛患者を登録しました。失敗の定義は、担当医師の判断により、安定した用量で少なくとも3ヶ月間治療しても臨床的に意味のある改善が見られない場合、治療に耐えられない有害事象のために中止した場合、または患者にとって片頭痛の予防治療に禁忌または適さない治療である場合とされました。参加者は,電子対話型応答技術により,フリーマネマブを四半期ごとに皮下投与(1ヶ月目は675 mg,2,3ヶ月目はプラセボ),フリーマネマブを毎月投与(1ヶ月目は片頭痛のエピソード型と慢性片頭痛の675 mg,2,3ヶ月目は両片頭痛サブグループの225 mg),またはマッチさせたプラセボの毎月投与に12週間ランダムに割り当てられた.主要評価項目は、12週間の治療期間中の月平均片頭痛日数のベースラインからの平均変化とした。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号NCT03308968、現在終了しています。 【FINDINGS】2017年11月10日から2018年7月6日の間に、エピソード性(329[39%])または慢性(509[61%])片頭痛の患者838人を、プラセボ(n=279)、四半期フレマネズマーブ(n=276)、毎月フレマネズマーブ(n=283)へランダムに割り付けました。12週間における月平均片頭痛日数のベースラインからの減少は、プラセボに対して四半期毎のフリーマネマブ投与で大きく(最小二乗平均[LSM]変化量-0-6[SE 0-3])、LSM変化量はプラセボに対して-3-1[95%CI -3-8~-2-4]; p<0-0001)、月毎のフリーマネマブで大きかった(LSM変化量 -4-1 [0-34]; LSM差 -3-5[-4-2-8];p < 0-0001 )。有害事象は、プラセボとフレマネズマブで同程度であった。重篤な有害事象は,プラセボ投与群では277例中4例(1%),フレマネズマブ投与群では276例中2例(1%未満),フレマネズマブ投与群では285例中4例(1%)で報告された。 【解釈】最大4クラスの片頭痛予防薬が効かない治療困難な片頭痛患者に対してフレマネズマブは有効かつ忍容性が高かった。 【FUNDING】Teva Pharmaceuticals. 第一人者の医師による解説 片頭痛日数半減は30% 難治性患者にはまだ残るunmet needs 柴田 護 慶應義塾大学医学部神経内科准教授 MMJ.February 2020;16(1) カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は 37個のアミノ酸からなる神経ペプチドで、三叉神経節ニューロンなどに発現し、片頭痛の病態に深く関与している。近年、CGRPおよびCGRP受容体に対するモノクローナル抗体が片頭痛予防薬として開発され、欧米では既に臨床応用されている(1)。 本論文は、欧州・北米104施設において2 ~ 4 種類の片頭痛予防薬を用いても治療が奏効しなかった患者838人を対象に抗 CGRP完全ヒト化モノクローナル抗体であるフレマネズマブ (FRN)の 片頭痛予防における有効性と安全性を評価した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第3b相 (FOCUS)試験の報告である。対象は反復性片頭痛 (月に6日以上かつ15日以下の頭痛があり、そのうち4日以上で片頭痛の特徴を認める)または慢性片 頭痛(月に15日以上の頭痛があり、そのうち8日 以上で片頭痛の特徴を認める)を有し、過去10年間に3カ月以上の片頭痛予防薬投与で臨床的に意味のある改善が得られなかった、または有害事象で治療中止に至ったなど、2 ~ 4種類の予防薬が奏効しなかった患者である。 片頭痛の内訳は慢性片頭痛 61%、反復性片頭痛39%であった。その結果、主 要評価項目である12週間(治療期間)における1カ月あたりの平均片頭痛日数のベースラインからの変化量は、プラセボ群で-0.6日、FRN 675 mg 単回投与群で-3.7(プラセボ群との差 , -3.1日)、 FRN 225 mg毎月投与群で-4.1(プラセボ群との差 , -3.5日)であり、FRN群で有意な治療効果が認められた。副次評価項目である治療期間全体あるいは治療開始後4週目で片頭痛日数が50%以上減少した患者の割合に関してもFRN群でプラセボ 群と比較し有意な効果が確認された。一方、有害事象に関してはプラセボ群とFRN群の間に有意差はなかった。 以上より、既存の予防薬に対して抵抗性を示した患者や有害事象のために治療続行が不可能であった患者においてもFRNは有効かつ忍容性の良好な治療になりうることが示された。ただし、本試験ではFRN両群ともに50%以上の片頭痛日数減少が得られた割合は、プラセボ群に比べ有意に高かったとはいえ、およそ30%にとどまっていた。これは、他の抗 CGRP抗体であるガルカネズマブの臨床試験でもほぼ同等の成績であった(2)。したがって、 抗 CGRP抗体が登場しても、難治性片頭痛患者には“unmet needs”が存在し続けることも示唆されたといえよう。 1. Edvinsson L et al. Nat Rev Neurol. 2018;14(6):338-350. 2. Ru DD, et al. Eur J Neurol. 2019 Nov 6. Doi:10.1111/ene.14114. [Epub]
片頭痛の急性期治療における痛みと最も煩わしい関連症状に対するウブロゲパントとプラセボの効果。ACHIEVE II Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
片頭痛の急性期治療における痛みと最も煩わしい関連症状に対するウブロゲパントとプラセボの効果。ACHIEVE II Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
Effect of Ubrogepant vs Placebo on Pain and the Most Bothersome Associated Symptom in the Acute Treatment of Migraine: The ACHIEVE II Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Nov 19;322(19):1887-1898. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】Ubrogepantは、片頭痛の急性期治療薬として検討されている経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬である。 【目的】片頭痛発作1回の急性期治療におけるubrogepantの有効性と忍容性をプラセボと比較して評価することである。 【デザイン・設定・参加者】米国で実施した第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照単発臨床試験(ACHIEVE II)(プライマリーケアおよび研究クリニック99施設、2016年8月26日~2018年2月26日)。参加者は、月に2~8回の片頭痛発作を経験している前兆のある片頭痛または前兆のない片頭痛の成人である。 【介入】中等度または重度の疼痛強度の片頭痛発作に対してウブロゲパント50mg(n=562)、ウブロゲパント25mg(n=561)またはプラセボ(n=563)である。【主要評価項目及び測定 【方法】有効性の主要評価項目は、服用後2時間における疼痛緩和及び参加者が指定した最も煩わしい片頭痛関連症状(羞明、幻覚、吐き気のうち)の消失とした。 【結果】無作為化参加者1686名のうち1465名が試験治療を受け(安全集団、平均年齢41.5歳、女性90%)、1465名のうち1355名が有効性として評価可能であった(92.5%)。2時間後の痛みの消失は、ウブロゲパント50mg群では464人中101人(21.8%)、ウブロゲパント25mg群では435人中90人(20.7%)、プラセボ群では456人中65人(14.3%)に認められました(50mg vs プラセボの絶対差、7.5%、95%CI, 2.6%-12.5%; P = .01; 25mg vs プラセボ, 6.4%; 95%CI、 1.5%-11.5%; P = .03)。2時間後に最も煩わしい関連症状がなかったと報告されたのは、ウブロゲパント50mg群463人中180人(38.9%)、ウブロゲパント25mg群434人中148人(34.1%)、そしてプラセボ群456人中125人(27.4%)であった。4%)であった(50mg対プラセボの絶対差、11.5%;95%CI、5.4-17.5%;P = .01;25mg対プラセボ、6.7%;95%CI、0.6-12.7%;P = .07)。いずれかの投与後48時間以内に最も多く見られた有害事象は、吐き気(50 mg、488人中10人[2.0%];25 mg、478人中12人[2.5%];およびプラセボ、499人中10人[2.0%])およびめまい(50 mg、488人中7人[1.4%];25 mg、478人中10人[2.1%];プラセボ、499人中8人[1.6%])であった。 【結論と妥当性】成人の片頭痛患者において、ウブロゲパントの急性期治療では、プラセボと比較して、50mgと25mgの用量で2時間後の痛みの解放率が有意に高く、50mgの用量でのみ2時間後の最も煩わしい片頭痛関連症状の欠如がみられた。ウブロゲパントの他の片頭痛急性期治療に対する有効性を評価し、非選択的患者集団におけるウブロゲパントの長期安全性を評価するために、さらなる研究が必要です。 【試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT02867709。 第一人者の医師による解説 トリプタン無効例や禁忌例の第1選択候補 反復投与での安全性検証が必要 今井 昇 静岡赤十字病院脳神経内科部長 MMJ.June 2020;16(3) 片頭痛は急性期に頭痛だけではなく随伴症状により日常生活が著しく障害される神経疾患である。 片頭痛の急性期治療にトリプタン系薬剤や非ステ ロイド系抗炎症薬(NSAID)が使用されているが、効果が不十分である、あるいは副作用や禁忌項目のために使用できない患者は多い。 多くの研究によりカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は片頭痛の病態に重要な役割を演じていることが示され、CGRPを標的とした治療薬が開発されている。すでに抗 CGRPモノクロー ナル抗体は2019年に欧米で片頭痛予防薬として上市されている。ユブロゲパントは小分子の経口 CGRP受容体拮抗薬で、片頭痛急性期治療薬として開発された。多施設ランダム化二重盲検プラセボ 対照第 IIb相試験において、ユブロゲパントの有効性が5用量(1、10、25、50、100mg)で検討され、 25、50、100mgはプラセボに比べ服薬2時間後 の頭痛消失率が有意に高かった。 本論文は、ユブロゲパント 25、50mgの有効性 と安全性を評価するために、米国99施設で実施された多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照第 III 相(ACHIEVE II)試験の報告である。18 ~ 65歳(平 均41.5歳)の前兆のない片頭痛または前兆のある 片頭痛の病歴を1年以上有し、発作に中等度以上の光過敏、音過敏、悪心のいずれかの随伴症状が認められる1,686人(女性90%)を対象に、中等度・ 重度の発作に対してユブロゲパント 25、50mg、 またはプラセボが投与された。主要評価項目は投与2時間後の頭痛消失と最も負担となる随伴症状(最 大負担随伴症状)の消失。最大負担随伴症状の内訳 は光過敏57%、音過敏26%、悪心17%。 解析の 結果、2時間後 の 頭痛消失率 は50mg群21.8%、 25mg群20.7%、プラセボ群14.3%で、50mg群、 25mg群ともにプラセボ群と比較し有意な頭痛改 善効果が示された(それぞれP=0.01、P=0.03)。 最大負担随伴症状 の 消失率 は50mg群38.9 %、 25mg群34.1%、プラセボ群27.4%で、50mg 群のみプラセボ群に対し有意な効果が認められた(P =0.01)。投与48時間以内の重篤な有害事象はなく、主な事象は悪心、めまいで各群に有意差はなかった。 本試験におけるユブロゲパント 50mgの有効性と安全性は、トリプタン系薬剤で報告されているものとおおむね同程度であることが示唆される。現在他の経口 CGRP受容体拮抗薬の開発も進んでいる。経口 CGRP受容体拮抗薬はトリプタン系薬 剤やNSAIDでみられる心血管・消化器への影響が少ないと考えられており、新しい片頭痛急性期治 療薬として期待される。ただ、以前開発された経口 CGRP受容体拮抗薬は肝機能障害のため開発中止に至った経緯を考慮すると、今後反復投与での安全性の確認が必要と思われる。
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.22(2022年10月20日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.22(2022年10月20日号)
片頭痛には有酸素運動、筋トレどちらが有効か? 様々な運動プロトコルを用いた複数の臨床試験で、片頭痛の管理における有効性が示されているが、異なる運動介入間の有効性を直接比較したものはない。そこで、毎月の片頭痛の頻度を減らす運動介入として有効性が確認された全ての臨床試験を対象に、系統的レビューとネットワークメタ解析を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2022年10月13日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 降圧薬の服用は朝か?夜か? 降圧薬の夜間投与は、朝投与よりも良好な転帰をもたらす可能性があることが研究で示唆されている。前向き、無作為化、非盲検、盲検化エンドポイント臨床試験であるThe Treatment in Morning versus Evening(TIME)試験において、高血圧患者に対する降圧薬の夜間投与が朝投与と比較して主要な心血管アウトカムを改善するかどうか、評価された。Lancet誌オンライン版2022年10月11日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む Long COVIDの発症割合と持続期間 初発の症候性SARS-CoV-2感染の後、症状が持続する人がいる(Long COVID)。本研究では、2020年3月〜2022年1月の間の22カ国120万人のSARS-CoV-2感染者を対象とし、感染から3か月後に、自己申告による3つのLong COVID症状クラスター(体の痛みや気分の落ち込みを伴う持続的疲労、認知障害、継続的呼吸障害)のうち少なくとも1つを有する個人の割合を、20歳以上の入院患者と非入院患者および20歳未満の非入院患者について男女別に推定した。JAMA誌オンライン版2022年10月10日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 薬剤耐性(AMR)の脅威 薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)は、公衆衛生と現代の医療に対する最も重大な脅威の1つです。著者らは、2019年のWHOヨーロッパ地域とその国々における、23の細菌病原体と88の病原体と薬剤の組み合わせについて、AMRに起因し関連する死亡と障害調整生命年(DALY)を推定した。The Lancet Public Health誌オンライン版2022年10月13日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む SGLT2阻害薬はCKDにも有効か? 糖尿病のない患者を対象にSGLT2阻害薬の心血管系および腎臓系における有効性と安全性を評価することを目的とし、PubMed、MEDLINE、Embase、Cochrane Libraryで2022年8月17日までの出版物を検索、無作為化プラセボ対照試験の系統的レビューとメタ解析が行なわれた。BMJ Open誌2022年10月14日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.21(2022年10月13日号) 妊婦の"超加工食品"摂取は子供の神経心理学的発達に影響を及ぼすか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.20(2022年10月6日号) CRPはがんのバイオマーカーになるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.19(2022年9月29日号) 免疫チェックポイント阻害剤の奏効率は、食事によって変わるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.18(2022年9月22日号) メタボを防ぐ腸内細菌に対して、最も悪影響を及ぼす食事は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.17(2022年9月15日号) セレブからも注目されているプチ断食は、ダイエットや心血管代謝に良い影響を及ぼすのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.16(2022年9月8日号) 長生きできる紅茶の摂取量は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.15(2022年9月1日号) 顔が似ていると、遺伝情報も似ている!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.14(2022年8月25日号) ゼロカロリー甘味料は、耐糖能に影響を及ぼさないのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号) 運動後の摂取はゆで卵、生卵どちらの摂取が有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.12(2022年8月11日号) 慢性腰痛を軽減する最良の運動オプションとは~RCTのネットワークメタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号) サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
慢性片頭痛に対するCGRP受容体拮抗薬アトゲパントの安全性と有効性
慢性片頭痛に対するCGRP受容体拮抗薬アトゲパントの安全性と有効性
Atogepant for the preventive treatment of chronic migraine (PROGRESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial Lancet. 2023 Sep 2;402(10404):775-785. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01049-8. Epub 2023 Jul 26. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】この研究では、慢性片頭痛の予防治療に対するアトゲパントの有効性、安全性、忍容性を評価することを目指しました。 【方法】私たちは、米国、英国、カナダ、中国、チェコ共和国、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、142の臨床研究サイトで、この無作為化、二重盲検プラセボ対照、第3相試験を行いました。ポーランド、ロシア、スペイン、スウェーデン、台湾。1年以上の慢性片頭痛の既往歴のある18〜80歳の成人は、1日2回経口30 mg、1日1回経口atogepant 60 mg、またはプラセボを摂取するためにランダムに割り当てられました(1:1:1)。主要エンドポイントは、12週間の治療期間にわたる平均月間片頭痛時代(MMDS)のベースラインからの変更でした。主要な分析は、治療を修正した人集団で行われ、少なくとも1回の研究介入を受けたランダムに割り当てられたすべての参加者が含まれ、電子日記(編集者)データの評価可能なベースライン期間があり、少なくとも1つの評価可能な投稿がありました。 - 二重盲検期間中の編集データのベースライン4週間(1〜4、5-8、および9-12)。安全人口は、少なくとも1回の研究介入を受けたすべての参加者で構成されていました。この試験は、ClinicalTrials.gov(NCT03855137)に登録されています。 【調査結果】2019年3月11日から2022年1月20日の間に、参加者が適格性について評価されました。711は除外され、778人の参加者が1日2回30 mg(n = 257)、1日に1回はアトゲパント60 mg(n = 262)、またはプラセボ(n = 259)にランダムに割り当てられました。安全人口の参加者は18〜74歳でした(平均42・1歳)。773人の患者のうち459人(59%)は白人、677人(88%)の患者は女性、96人(12%)が男性でした。84人の参加者は、試験中に治療を中止し、755人が治療を修正した人集団を構成しました(1日2回30 mg n = 253、1日に1回aTOGEPANT 60 mg、プラセボn = 246)。ベースラインの平均MMDの数は18・6(SE 5・1)で、アトゲパント30 mgは1日に2回、19・2(5・3)で1日1回、アトゲパント60 mg、プラセボと18・9(4・8)でした。12週間にわたる平均MMDのベースラインからの変化は-7・5(SE 0・4)で、1日2回Atogepant 30 mg、-6・9(0・4)、Atogepant 60 mg、1日1回、-5・1(0・4)プラセボで。プラセボからの最小二乗の平均差は、1日2回、アトゲパント30 mgで-2・4で-4でした(95%CI -3・5〜 -1・3;調整p <0・0001)、ATOGEPANT 60 mgで-1・8で8で-1・8日(-2・9〜 -0・8;調整されたp = 0・0009)。アトゲパントの最も一般的な有害事象は便秘でした(1日に2回30 mg [10・9%]; 1日1回26 [10%]、プラセボ8 [3%])および吐き気(1日に2回30 mg)[8%]; 60 mg 1日1回25 [10%];およびプラセボ9 [4%])。潜在的に臨床的に有意な体重減少(ベースライン後のいつでも7%以上の減少)が各治療群で観察されました(15日に2回30 mg [6%]; 15日に1回のアトゲピント60 mg [6%];およびプラセボ3 [2%])。 【解釈】1日2回30 mg、1日に1回60 mgが慢性片頭痛患者の12週間にわたってMMDの臨床的に関連する減少を示しました。両方のアトゲパント線量は忍容性が高く、atogepantの既知の安全性プロファイルと一致していました。 【資金調達】アラーガン(現在のAbbvie)。 第一人者の医師による解説 アトゲパントは難治例の慢性片頭痛にも 有効な治療手段である可能性 柴田 護 東京歯科大学市川総合病院神経内科部長・教授 MMJ.April 2024;20(1):11 アトゲパント(atogepant;ATO)は経口投与のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、反復性片頭痛に対する有効性と安全性はADVANCE試験ですでに実証されている(1)。慢性片頭痛(CM)の予防ではCGRP関連抗体薬の効果が高いとされているが、注射薬よりは経口薬を好む患者も多い。また、投与されたモノクローナル抗体の95%が代謝されるには5カ月間を要するため、治療中に妊娠した場合に薬剤曝露期間が長くなる可能性がある。一方、ATOの半減期は約11時間で、妊娠が判明した場合に中止することで曝露を短期間にとどめることが可能である。 今回報告されたPROGRESS試験は、CMに対するATOの有効性と安全性の評価を目的に、日本を含む142施設が参加した国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験である。1年以上のCM既往を有する成人患者778人がATO 30mg1日2回投与群 257 人、ATO 60 mg 1日1回投与群262人、プラセボ群259人に割り付けられた。ベースラインの1カ月あたりの平均片頭痛日数(MMD)はATO 30mg 1日2回投与群18.6±5.1(SE)日、ATO 60mg 1日1回投与群19.2±5.3日、プラセボ群18.9±4.8日であった。結果、12週間の治療期間における平均 MMDのベースラインからの変化(主要評価項目)は、ATO 30mg 1日2回投与群-7.5±0.4日、60mg 1日1回投与群-6.9±0.4日、プラセボ群-5.1±0.4日で、プラセボ群との最小二乗平均差はATO 30mg 1日2回投与群-2.4日(95%信頼区間[CI] -3.5~-1.3;補正 P<0.0001)、ATO 60mg 1日1回投与群-1.8日(95% CI, -2.9~-0.8;補正 P=0.0009)であった。安全性評価対象集団773人中、84人が試験期間中に治療を中止した。ATO群で最も頻度の高かった有害事象は便秘(ATO 30mg 1日2回投与群10.9%、ATO 60mg 1日1回投与群10%、プラセボ群3%)と悪心 (各群8%、10%、4%)であった。また、ATO群では臨床的に有意なレベルの体重減少を認める頻度もプラセボ群に比較して高かった。 以上よりATO 30mg 1日2回投与と60mg 1日1回投与はCMの予防効果を示すことが明らかとなった。忍容性については、便秘と悪心の出現に注意が必要と考えられる。なお、本試験では66%に急性期治療薬の使用過多があり、38%は2種類以上の既存予防薬で治療が奏効しなかったことがわかっているため、いわゆる難治例のCMにも有効な治療手段である可能性が示された。 1. Ailani J, et al. N Engl J Med. 2021;385(8):695-706.(MMJ 2022 年 4 月 号P34)