ライブラリー 片頭痛予防薬4種類までが無効であることが証明された患者さんにおける片頭痛予防のためのFremanezumab対プラセボ(FOCUS):無作為化二重盲検プラセボ対照第3b相試験。
Fremanezumab versus placebo for migraine prevention in patients with documented failure to up to four migraine preventive medication classes (FOCUS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3b trial
Lancet 2019 Sep 21 ;394 (10203):1030 −1040.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
【背景】 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体を標的とする抗体は、片頭痛発作の予防に有効であることが示されている。我々は、2~4種類の片頭痛予防薬が効かない片頭痛患者を対象に、完全ヒト化CGRP抗体であるfremanezumabの有効性と忍容性を検討した。
【方法】無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間第3b相FOCUS試験は、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカにわたる104施設(病院、医療センター、研究機関、グループ診療クリニックなど)で行われました。過去10年間に2〜4種類の片頭痛予防薬が無効であったことが記録されている18〜70歳の片頭痛患者を登録しました。失敗の定義は、担当医師の判断により、安定した用量で少なくとも3ヶ月間治療しても臨床的に意味のある改善が見られない場合、治療に耐えられない有害事象のために中止した場合、または患者にとって片頭痛の予防治療に禁忌または適さない治療である場合とされました。参加者は,電子対話型応答技術により,フリーマネマブを四半期ごとに皮下投与(1ヶ月目は675 mg,2,3ヶ月目はプラセボ),フリーマネマブを毎月投与(1ヶ月目は片頭痛のエピソード型と慢性片頭痛の675 mg,2,3ヶ月目は両片頭痛サブグループの225 mg),またはマッチさせたプラセボの毎月投与に12週間ランダムに割り当てられた.主要評価項目は、12週間の治療期間中の月平均片頭痛日数のベースラインからの平均変化とした。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号NCT03308968、現在終了しています。
【FINDINGS】2017年11月10日から2018年7月6日の間に、エピソード性(329[39%])または慢性(509[61%])片頭痛の患者838人を、プラセボ(n=279)、四半期フレマネズマーブ(n=276)、毎月フレマネズマーブ(n=283)へランダムに割り付けました。12週間における月平均片頭痛日数のベースラインからの減少は、プラセボに対して四半期毎のフリーマネマブ投与で大きく(最小二乗平均[LSM]変化量-0-6[SE 0-3])、LSM変化量はプラセボに対して-3-1[95%CI -3-8~-2-4]; p<0-0001)、月毎のフリーマネマブで大きかった(LSM変化量 -4-1 [0-34]; LSM差 -3-5[-4-2-8];p < 0-0001 )。有害事象は、プラセボとフレマネズマブで同程度であった。重篤な有害事象は,プラセボ投与群では277例中4例(1%),フレマネズマブ投与群では276例中2例(1%未満),フレマネズマブ投与群では285例中4例(1%)で報告された。
【解釈】最大4クラスの片頭痛予防薬が効かない治療困難な片頭痛患者に対してフレマネズマブは有効かつ忍容性が高かった。
【FUNDING】Teva Pharmaceuticals.
第一人者の医師による解説
片頭痛日数半減は30% 難治性患者にはまだ残るunmet needs
柴田 護 慶應義塾大学医学部神経内科准教授
MMJ.February 2020;16(1)
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は 37個のアミノ酸からなる神経ペプチドで、三叉神経節ニューロンなどに発現し、片頭痛の病態に深く関与している。近年、CGRPおよびCGRP受容体に対するモノクローナル抗体が片頭痛予防薬として開発され、欧米では既に臨床応用されている(1)。
本論文は、欧州・北米104施設において2 ~ 4 種類の片頭痛予防薬を用いても治療が奏効しなかった患者838人を対象に抗 CGRP完全ヒト化モノクローナル抗体であるフレマネズマブ (FRN)の 片頭痛予防における有効性と安全性を評価した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第3b相 (FOCUS)試験の報告である。対象は反復性片頭痛 (月に6日以上かつ15日以下の頭痛があり、そのうち4日以上で片頭痛の特徴を認める)または慢性片 頭痛(月に15日以上の頭痛があり、そのうち8日 以上で片頭痛の特徴を認める)を有し、過去10年間に3カ月以上の片頭痛予防薬投与で臨床的に意味のある改善が得られなかった、または有害事象で治療中止に至ったなど、2 ~ 4種類の予防薬が奏効しなかった患者である。
片頭痛の内訳は慢性片頭痛 61%、反復性片頭痛39%であった。その結果、主 要評価項目である12週間(治療期間)における1カ月あたりの平均片頭痛日数のベースラインからの変化量は、プラセボ群で-0.6日、FRN 675 mg 単回投与群で-3.7(プラセボ群との差 , -3.1日)、 FRN 225 mg毎月投与群で-4.1(プラセボ群との差 , -3.5日)であり、FRN群で有意な治療効果が認められた。副次評価項目である治療期間全体あるいは治療開始後4週目で片頭痛日数が50%以上減少した患者の割合に関してもFRN群でプラセボ 群と比較し有意な効果が確認された。一方、有害事象に関してはプラセボ群とFRN群の間に有意差はなかった。
以上より、既存の予防薬に対して抵抗性を示した患者や有害事象のために治療続行が不可能であった患者においてもFRNは有効かつ忍容性の良好な治療になりうることが示された。ただし、本試験ではFRN両群ともに50%以上の片頭痛日数減少が得られた割合は、プラセボ群に比べ有意に高かったとはいえ、およそ30%にとどまっていた。これは、他の抗 CGRP抗体であるガルカネズマブの臨床試験でもほぼ同等の成績であった(2)。したがって、 抗 CGRP抗体が登場しても、難治性片頭痛患者には“unmet needs”が存在し続けることも示唆されたといえよう。
1. Edvinsson L et al. Nat Rev Neurol. 2018;14(6):338-350.
2. Ru DD, et al. Eur J Neurol. 2019 Nov 6. Doi:10.1111/ene.14114. [Epub]