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S1P受容体調節作用を持つ経口薬オザニモド 潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持に有用
S1P受容体調節作用を持つ経口薬オザニモド 潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持に有用
Ozanimod as Induction and Maintenance Therapy for Ulcerative Colitis N Engl J Med. 2021 Sep 30;385(14):1280-1291. doi: 10.1056/NEJMoa2033617. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】選択的スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーターであるオザニモドは、炎症性腸疾患の治療薬として研究されている。 【方法】我々は、中等度から重度の活動性を有する潰瘍性大腸炎患者を対象に、オザニモドの導入療法および維持療法に関する第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。10週間の導入期において、コホート1の患者には、1日1回、塩酸オザニモドを1mg(オザニモド0.92mg相当)またはプラセボとして経口投与することを二重盲検法で行い、コホート2の患者には、1日1回、同じ用量のオザニモドを非盲検法で投与しました。10週目に、いずれかのコホートでオザニモドに臨床的に反応した患者は、維持期間(52週目まで)に二重盲検法でオザニモドまたはプラセボを投与するよう、再び無作為化されました。両期間の主要評価項目は、臨床的寛解を示した患者の割合であり、Mayoスコアの3要素で評価された。主要な副次評価項目である臨床的、内視鏡的、組織学的評価項目は、順位付けされた階層的な検定を用いて評価した。また、安全性についても評価した。 【結果】導入期間では、第1コホートに645名、第2コホートに367名の患者が参加し、維持期間では457名の患者が参加した。臨床的寛解の発生率は、導入期(18.4%対6.0%、P<0.001)および維持期(37.0%対18.5%(10週目に奏効した患者)、P<0.001)のいずれにおいても、オザニモドを投与された患者の方がプラセボを投与された患者よりも有意に高かった。臨床反応の発生率も、導入期(47.8%対25.9%、P<0.001)および維持期(60.0%対41.0%、P<0.001)において、プラセボよりもオザニモドの方が有意に高かった。その他の主要な副次的評価項目は、いずれの期間においてもプラセボと比較してオザニモドにより有意に改善された。オザニモドによる感染症(重症度を問わず)の発生率は,導入期ではプラセボと同程度,維持期ではプラセボよりも高かった.重篤な感染症は、52週間の試験期間中、各群の患者の2%未満に発生しました。肝アミノトランスフェラーゼ値の上昇は、オザニモドでより多く見られました。 【結論】オザニモドは、中等度から重度の活動性を有する潰瘍性大腸炎患者の導入療法および維持療法として、プラセボよりも有効でした。(Bristol Myers Squibb社から資金提供を受けています。True North ClinicalTrials.gov番号、NCT02435992)。 第一人者の医師による解説 既存薬と機序が全く異なるオザニモドの位置づけ 市販後の十分な検討が重要 日比 紀文 北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター長・特任教授 MMJ. April 2022;18(2):44 潰瘍性大腸炎(UC)は、クローン病(CD)を含めて炎症性腸疾患(IBD)と総称される。日本でもUCの患者数は20万人を超え一般的となったが、原因が不明なため根本治療がなく、治療は炎症抑制に加え免疫異常の是正が中心であり、寛解導入療法に加えて長期の寛解維持療法が求められる(1)。近年の生物学的製剤の出現は、その目覚ましい治療効果から、難治と考えられてきたIBDや関節リウマチなど慢性炎症性疾患の治療にパラダイムシフトを起こした。しかし、生物学的製剤の多くは高分子の注射剤であり、経口分子標的薬の開発が待たれている。 本論文は、オザニモドのUCにおける寛解導入療法、維持療法としての有効性および安全性を検証した第3相臨床試験の報告である。オザニモドは選択的にリンパ球表面のスフィンゴシン -1-リン酸(S1P)受容体に働き(2)、リンパ球の炎症部位への動員を抑制するという新しい機序を有し、1日1回経口投与で寛解導入・維持を目指す画期的な薬剤である。本試験には30カ国285施設が参加し、寛解導入は 約1,000人、寛解維持は457人の患者で比較検討された。有効性の主要評価項目である「臨床的寛解」においてプラセボ群と比較し有意に高い治療効果を示し、安全性については想定される「徐脈」「肝障害」がオザニモド群でも比較的少なかったという成績で、特に帯状疱疹は少数例にしか見られず、UCの新たな治療選択肢としてのオザニモドの有用性を証明した貴重な報告である。 一方、本試験は事前に心疾患患者を除き、帯状疱疹には細心のチェックをした状態で実施されており、本剤が実臨床に導入された場合は安全性の面で細心の注意が求められる。生物学的製剤の使用は今後さらに増加すると予想されるが、無効例や長期使用で効果減弱などの問題点があること、注射剤より経口薬を好む患者が多いことなどを踏まえると、本剤への期待は大きい。 近年、日本が参加するグローバル試験も多くなったが、本試験の参加者は大多数が欧米人であり(アジア参加国は韓国のみ;5.8%)、日本人を含む東洋人(モンゴロイド)での有効性や安全性が同等であるかは不明である。日本人でも同様の成績が証明されれば臨床面で重要な薬剤になると考えられる。起こりうる副作用としての徐脈・心電図での伝道異常や肝障害は少しみられたが、日本人では異なる反応を示す可能性もある。日本でもすでに有効性と安全性が海外と同様であるかを検証する試験が終了しており、UCの治療選択肢として加えられることに期待している。さらに、既存薬と機序が全く異なる本剤の位置づけを市販後に十分検討していくことが重要となろう。 1. 日比紀文ら . 日本臨床 . 2017;75(3):364-369. 2. Scott FL, et al. Br J Pharmacol. 2016;173(11):1778-1792. 3. Sandborn WJ, et al. N Engl J Med. 2016 May 5;374(18):1754-1762.