「ワクチン」の記事一覧

ポルトガルの小児で検討したB群髄膜炎菌ワクチン接種とB群侵襲性髄膜炎菌感染症の関連
ポルトガルの小児で検討したB群髄膜炎菌ワクチン接種とB群侵襲性髄膜炎菌感染症の関連
Association of Use of a Meningococcus Group B Vaccine With Group B Invasive Meningococcal Disease Among Children in Portugal JAMA. 2020 Dec 1;324(21):2187-2194. doi: 10.1001/jama.2020.20449. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【重要性】小児のB群侵襲性髄膜炎菌感染症を予防するワクチンには多成分B群髄膜炎菌ワクチン(4CMenB)以外にないが、マッチさせた対照とワクチンの効果を比較した試験はない。 【目的】4CMenB接種とB群侵襲性髄膜炎菌感染症の関連を明らかにすること。 【デザイン、設定および参加者】発生密度対症例対照研究。2014年10月から2019年3月までの間にポルトガルの小児病院31施設を受診した患者を特定し、死亡または退院まで追跡した(最終追跡2019年6月)。検査で侵襲性髄膜炎菌感染症が確定したポルトガルに居住する小児および思春期小児を対象とした。同時期に同じ病院に無関係の病態で入院した対照(通常1例につき2例)を性別、年齢および居住地でマッチさせた。 【曝露】全国データベースから取得した4CMenBによる予防接種(年齢により2~4用量を推奨)。 【主要評価項目】主要評価項目は、対照と比較した予防接種完了者のB群侵襲性髄膜炎菌感染症とした。副次評価項目は、対照と比較した予防接種完了者の全血清型侵襲性髄膜炎菌感染症および1回以上接種した対照と比較した症例の侵襲性髄膜炎菌感染症とした。 【結果】侵襲性髄膜炎菌感染症患児117例のうち、98例が組み入れ基準を満たし、82例がB型侵襲性髄膜炎菌感染症であった。69例がワクチン接種を完了する年齢に達しており、保護されていたとみなした。この69例の月齢中央値は24(四分位範囲4.5~196)カ月、42例が男児であり、入院期間中央値は8(四分位範囲0~86)日間であった。症例69例中5例(7.2%)と対照142例中33例(23.1%)がワクチン接種を完了していた(差-16.0%[95%CI -26.3%~-5.7%]、オッズ比[OR]0.21[95%CI 0.08~0.55])。全血清型の侵襲性髄膜炎菌感染症でみると、症例85例中6例(7.1%)と対照175例中39例(22.3%)がワクチン接種を完了していた(差-15.2%[95%CI -24.3%~-6.1%]、OR 0.22[95%CI 0.09~0.53])。B群感染症では、症例82例中8例(9.8%)と対照168例中50例(29.8%)が1回以上ワクチンを接種していた(差-20.0%[95%CI -30.3%~-9.7%]、OR 0.18[95%CI 0.08~0.44])。全血清型の侵襲性髄膜炎菌感染症では、症例98例中11例(11.2%)と対照201例中61例(30.3%)が1回以上ワクチンを接種して受けていた(差-19.1%[95%CI -28.8%~-9.5%]、OR 0.23[95%CI 0.11~0.49])。 【結論および意義】ポルトガルでのワクチン接種開始から最初の5年間で、侵襲性髄膜炎菌感染症を発症した小児の方が発症しなかった対照の小児よりも4CMenBワクチンを接種した割合が低かった。この結果は、臨床現場での4CMenBワクチン使用を周知するのに有用である。 第一人者の医師による解説 国内未承認のB群髄膜炎菌ワクチン 今後の承認を期待 神谷 元 国立感染症研究所実地疫学研究センター主任研究官 MMJ. December 2021;17(6):185 本論文は、ポルトガルの小児科医療機関31施設が参加し、B群髄膜炎菌(MenB)ワクチンの有効性を年齢、性別、居住地区、受診医療機関についてマッチングした症例対照研究により検討した結果の報告である。調査期間(2014年10月~19年3月)、ポルトガルではMenBワクチンは定期接種化されておらず、国内の1歳児のMenBワクチン接種率(2回)は56.7%(2018年)であった。299人の小児が参加し、MenBによる侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)の予防効果をエンドポイントとした解析では、オッズ比が0.21(95%信頼区間[CI], 0.08?0.55)、他の血清群を含めたIMDの予防効果はオッズ比が0.22(95% CI, 0.09?0.53)となり、ワクチン効果(VE)は78~79%と一定の効果を認めた。また、調査期間におけるIMDの原因菌の内訳はB群が84%を占めていたが、MenBワクチン接種者でIMDを発症した11人のうち、8人はMenB、3人はそれ以外の血清群の菌による感染であった。11人の転帰は良好で合併症も認められなかった(未接種者では26%に合併症が認められた)。髄膜炎菌ワクチンは4つの血清群(A、C、W、Y)の莢膜多糖体を用いた4価ワクチン(MCV4ワクチン)が実用化されているが、B群がこのワクチンに含まれていない理由は、B群の莢膜多糖体がヒトの脳の糖鎖と構造が似ているため、ほかの血清群のようにワクチン成分として莢膜多糖体を利用できないことにある。しかし、近年の技術と研究の進歩により、外膜の表層蛋白を用いたMenBワクチンが開発され、米国、カナダ、オーストラリア、欧州では承認されている。このワクチンは、MenBに対する予防効果はもちろんのこと、髄膜炎菌に共通する外膜の表層蛋白を用いているため、ほかの血清群による髄膜炎菌感染症への予防効果も期待されている。日本では2021年7月時点でMenBワクチンは未承認であるが、国内のIMDサーベイランスの結果によると、一定の割合でMenBによるIMDが報告されている(1)。また、東京2020大会のような国際的なマスギャザリングが開催されると国内でそれまで検出されることが少ない髄膜炎菌が認められ、IMD発症事例も起こるため(2)、MenBワクチンの国内での承認が今後期待される。なお、ポルトガルではその後2020年に2カ月、4カ月、12カ月齢児にMenBワクチンを定期接種化している(3)。 1. 国立感染症研究所. IASR.2018;39:1-2. https://bit.ly/2W5FwwO 2. Kanai M, et al. Western Pac Surveill Response J. 2017;8(2):25-30. 3. ECD C. Vaccine S cheduler Pneumo co ccal Dis eas e:Recommended vaccinations https://bit.ly/39xLERD
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.39(2023年3月2日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.39(2023年3月2日号)
筋トレには、動物性タンパク質?植物性タンパク質は効果あり? 植物性タンパク質(ビーガン食)が、動物性タンパク質と同程度に、レジスタンストレーニングによる骨格筋のリモデリングをサポートできるかどうかは不明である。著者らは、健康な若年成人を対象に、10週間にわたる週5日の筋トレと高タンパク質(〜2g/kg/day)を雑食または非動物性由来の食事から摂取させ、筋線維断面積(CSA)・筋肉量・筋力・筋機能への影響を評価した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2023年2月21日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む ランニングシューズはやっぱり"NIKE"? 従来のランニングシューズと比較して「NIKE ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2」が長距離トレーニングのパフォーマンス、運動学的パラメーター、ランニングパワー、疲労に与える影響を分析した。European Journal of Sport Science誌オンライン版2023年2月23日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む (承認申請中)RSVワクチンの有効性と安全性 RSウイルス(RSV)は、高齢者における急性呼吸器感染症や合併症、ひいては死亡の重要な原因となりうるが、現在RSVに対するワクチンはない。著者らは、60歳以上の成人を対象とし、アジュバント添加RSVPreF3候補ワクチン単回投与の有効性と安全性を評価するため、無作為化プラセボ対照観察者盲検国際共同試験を行った。The New England Journal of Medicine誌2023年2月16日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 下剤の定期的な使用は認知症リスクを高める!? 脳-腸-腸内微生物叢相関仮説は、下剤の使用が認知症に関連していることを示唆している。そこで、認知症の病歴のない40~69歳の英国バイオバンク参加者50万2,229人を対象に、下剤の定期的な使用と認知症の発生率との関連を調査するための、大規模前向きコホート研究が実施された。Neurology誌オンライン版2023年2月22日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 2型糖尿病と消化器疾患リスクの関連 2型糖尿病および血糖特性と消化器疾患との関連性を調べるため、メンデルランダム化研究が実施された。2型糖尿病(n=231)、空腹時インスリン(n=38)、空腹時血糖(n=71)、およびヘモグロビンA1c(n=75)に関連する互いに相関のない遺伝子変異を操作変数として選択し、23種の一般的な消化器疾患との遺伝的関連性は、FinnGenおよびUK Biobankの研究、およびその他の大規模なコンソーシアムから取得した。Diabetes Care誌オンライン版2023年2月17日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.38(2023年2月23日号) 過去30年間で男性器サイズが大きく変化!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.37(2023年2月16日号) 話題の不老長寿薬NMNは、過体重/肥満の中高年の健康を取り戻すか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.36(2023年2月9日号) 低炭水化物ダイエットで、EDは改善するか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.35(2023年2月2日号) 高齢者の記憶力低下を防ぐための生活習慣とは? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.34(2023年1月26日号) 環境配慮の食事は、2型糖尿病のリスク低減にも有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.33(2023年1月19日号) 結局どんな食事が健康に良いのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.32(2023年1月12日号) 高タンパクの朝食は、昼食・夕食の食後血糖値にどのように影響するか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.31(2022年12月22日号) 抗生物質が運動のモチベーションを下げる!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.30(2022年12月15日号) 最も糖尿病リスクを軽減する野菜は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.29(2022年12月8日号) リバウンド予防に効果的な食事とは? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.28(2022年12月1日号) 妊娠で母性が宿るか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.27(2022年11月24日号) 精子数の世界的な減少 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.26(2022年11月17日号) マスクは本当に効果があるのか?:学校における検証 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.25(2022年11月10日号) キツい筋トレは筋肥大に効果があるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.24(2022年11月3日号) AIによる膵臓がん予後予測は有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.23(2022年10月27日号) 蚊を寄せ付ける体臭は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.22(2022年10月20日号) 片頭痛には有酸素運動、筋トレどちらが有効か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.21(2022年10月13日号) 妊婦の"超加工食品"摂取は子供の神経心理学的発達に影響を及ぼすか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.20(2022年10月6日号) CRPはがんのバイオマーカーになるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.19(2022年9月29日号) 免疫チェックポイント阻害剤の奏効率は、食事によって変わるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.18(2022年9月22日号) メタボを防ぐ腸内細菌に対して、最も悪影響を及ぼす食事は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.17(2022年9月15日号) セレブからも注目されているプチ断食は、ダイエットや心血管代謝に良い影響を及ぼすのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.16(2022年9月8日号) 長生きできる紅茶の摂取量は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.15(2022年9月1日号) 顔が似ていると、遺伝情報も似ている!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.14(2022年8月25日号) ゼロカロリー甘味料は、耐糖能に影響を及ぼさないのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号) 運動後の摂取はゆで卵、生卵どちらの摂取が有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.12(2022年8月11日号) 慢性腰痛を軽減する最良の運動オプションとは~RCTのネットワークメタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号) サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6?11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
COVID-19ワクチン後の心筋炎と心膜炎に関するエビデンスとレビュー
COVID-19ワクチン後の心筋炎と心膜炎に関するエビデンスとレビュー
Incidence, risk factors, natural history, and hypothesised mechanisms of myocarditis and pericarditis following covid-19 vaccination: living evidence syntheses and review BMJ. 2022 Jul 13;378:e069445. doi: 10.1136/bmj-2021-069445. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [目的] covid-19に対するmRNAワクチン接種後の心筋炎および心膜炎の発生率と危険因子、臨床症状、症例の短期および長期転帰、および提案されたメカニズムに関する証拠を統合すること。 [設計] 生きている証拠の統合とレビュー. [データ ソース] 2020 年 10 月 6 日から 2022 年 1 月 10 日まで、Medline、Embase、およびコクラン ライブラリが検索されました。参考文献リストと灰色文献 (2021 年 1 月 13 日まで)。 1 人のレビュアーがスクリーニングを完了し、別のレビュアーが除外の 50% を検証し、機械学習プログラムを使用してレコードに優先順位を付けました。 2 人目のレビュアーは、修正された Joanna Briggs Institute ツールを使用して、すべての除外を全文で検証し、データを抽出し、(発生率と危険因子については) バイアス評価のリスクを検証しました。チームのコンセンサスにより、GRADE (推奨事項、評価、開発および評価の等級付け) を使用した発生率および危険因子のエビデンス評価の確実性が決定されました。 (発生率と危険因子)covid-19 mRNAワクチン接種後に確認された心筋炎または心膜炎に関する報告。ケースシリーズ(n≧5、プレゼンテーション、短期臨床経過および長期転帰); [RESULTS] 46件の研究が含まれた(発生率に関する14件、危険因子に関する7件、特徴と短期経過に関する11件、長期転帰に関する3件、および21件の研究)。メカニズムについて)。 mRNAワクチン接種後の心筋炎の発生率は、男性の青年および男性の若年成人で最も高かった(12~17歳、100万あたり50~139例(確実性が低い);18~29歳、100万あたり28~147例(確実性が中程度))。 5~11 歳の少女と少年、および 18~29 歳の女性の場合、BNT162b2 (ファイザー/BioNTech) のワクチン接種後の心筋炎の発生率は、100 万件あたり 20 件未満である可能性があります (確実性は低い)。 mRNAワクチンの3回目の投与後の発生率は、確実性が非常に低いという証拠がありました。 18 ~ 29 歳の個人では、mRNA-1273 (モデルナ) のワクチン接種後、ファイザーよりも心筋炎の発生率がおそらく高くなります (中程度の確実性)。 12〜17歳、18〜29歳、または18〜39歳の個人では、covid-19のmRNAワクチンの2回目の投与後の心筋炎または心膜炎の発生率は、1回目の投与後30日以内と比較して、31日以上投与された場合に低くなる可能性があります(確実性は低い)。 18 ~ 29 歳の男性に固有のデータは、心筋炎または心膜炎の発生率を大幅に下げるには、投与間隔を 56 日以上に増やす必要があるかもしれないことを示しています。臨床経過と短期転帰については、5 ~ 11 歳の小さな症例シリーズ (n=8) が 1 つだけ見つかりました。青年および成人では、ほとんど(90%以上)の心筋炎症例は、2回目の投与の2~4日後に症状が発症した中央値20~30歳の男性(71~100%)でした。ほとんどの人 (≥84%) は短期間 (2 ~ 4 日) 入院しました。心膜炎については、データは限られていましたが、患者の年齢、性別、発症時期、および入院率において、心筋炎よりも多くの変動が報告されています。長期 (3 か月; n=38) の追跡調査を行った 3 つのケース シリーズでは、患者の 50% を超える患者において、進行中の症状または薬物治療の必要性または活動の制限と同様に、持続的な心エコー図の異常が示唆されました。 [結論] これらの発見は、思春期および若年成人男性がmRNAワクチン接種後に心筋炎のリスクが最も高いことを示しています。モデルナ ワクチンよりもファイザー ワクチンを使用し、投与間隔を 30 日以上空けることが、この集団に好まれる可能性があります。 5~11歳の小児における心筋炎の発生は非常にまれですが、確実性は低かった.臨床的危険因子のデータは非常に限られていました。長期追跡データは限られていましたが、mRNA 関連の心筋炎の臨床経過は良性であると思われました。適切な検査(生検や組織形態など)による前向き研究は、機序の理解を深めるでしょう。 第一人者の医師による解説 疫学や臨床経過、およびアウトカムまで示した 最新で重要な知見 小倉 翔 虎の門病院臨床感染症科 MMJ.February 2023;19(1):4 本論文では、2020年10月6日~22年1月10日に発表された合計46件の研究を対象に、COVID-19に対するmRNAワクチン接種後の心筋炎および心膜炎の①発症率②危険因子③臨床経過④症例の短期的・長期的なアウトカム、および⑤メカニズムに関するエビデンスの統合が行われた。 その結果、① mRNAワクチン 2回目接種後の心筋炎の発症率は青年男性と若年成人男性において最も高く、それぞれ12~17歳 で50~139例/100万人、18~29歳 で28~147例 /100万人であった。②18~29歳の男女および18~39歳の男性において、2回目のワクチン接種後の心筋炎の発症率はPfizer社製よりもModerna社製の方が高いと考えられた。12~39歳において2回目のmRNAワクチン接種後の心筋炎または心膜炎の発症率は、1回目接種後30日以内と比較して31日以上で接種した場合に低くなる可能性がある。18~29歳の男性に限ったデータでは、発症率を大きく低下させるために接種間隔を56日以上にする必要があるかもしれない。③心筋炎症例のほとんど(90%超)は年齢中央値を20~29歳とする男性で、最後のワクチン接種から症状発現までの期間は平均2~4日であり、ほとんど(報告により71~100%)が2回目の接種後に発症した。胸痛や胸部圧迫感、トロポニン上昇を伴い、検査では少数例(研究全体で14~29%)に左室機能障害(左室駆出率[LVEF]50%未満)が認められた。心膜炎については、報告によりばらつきがあるもののほとんどが男性であり、症状発現までの中央値は20日であり、60%が2回目の接種後に発症した。治療には非ステロイド系抗炎症薬が最も使用された。④短期的な経過はほとんどの場合が軽度でselflimitedであることが示されている。長期的な経過に関してはデータが乏しいが、50%以上の症例で心電図異常や症状の持続、治療薬や活動制限の必要性を示唆するデータもある。⑤過剰免疫や炎症反応、分子模倣やその他メカニズムによる自己免疫などさまざまな機序が提唱されているが、直接的な裏付けはほとんどない。 対象となった文献に含まれる症例は、心筋炎と心膜炎の区別が明確でなかったり診断が主観的である場合があり、また心臓 MRIや心筋生検がすべてに実施されていないことから、ほとんどがprobable程度の症例と考えられ、小児や一部の重篤な症例に関するデータは限られている。しかし、8,000例以上の心筋炎や心膜炎の報告例について症状や臨床経過、さらには長期的なアウトカムまで示した重要な知見といえる。
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.31(2022年12月22日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.31(2022年12月22日号)
抗生物質が運動のモチベーションを下げる!? 運動は、健康な生理機能のために幅広い有益な効果をもたらすが、運動のモチベーションを制御するメカニズムはよくわかっていない。我々は、身体活動中のドーパミンシグナル伝達を増強することによって運動パフォーマンスを向上させるマウスの腸脳接続の発見について報告する。Nature誌オンライン版2022年12月14日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 青少年の肥満にもセマグルチドは有用か? GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドの週1回2.4mgの皮下投与は、成人の肥満治療に使用されるが、青少年における評価は不足している。著者らは、少なくとも一つの体重関連の併存疾患を持つ12~18歳の過体重または肥満者を対象に、週1回セマグルチド皮下投与のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を行った。The New England Journal of Medicine誌2022年12月15日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む コエンザイムQ10は脂質異常症に効果あり? 以前のメタ分析では、脂質プロファイルに対するコエンザイムQ10(CoQ10)の効果については議論の余地があると示唆されている。さらに、成人の脂質プロファイルを改善するCoQ10の最適な摂取量を調査したメタ分析はない。そこで、CoQ10の摂取効果有無と最適な摂取量をを検討するため、Web of Science、PubMed/Medline、Embase、およびコクランライブラリーの4つのデータベースを用いた無作為化対照試験のメタ分析が実施された。The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌2022年12月17日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む インスリン治療を受けている2型糖尿病患者にも断食は有用かつ安全か? インスリン治療を受けている2型糖尿病患者を対象に、12週間にわたって、1週間のうち連続しない3日を断続的断食(IF:Intermittent Fasting )にあてることの安全性と実現可能性を調査した。無作為化対照試験。Diabetes Care誌オンライン版2022年12月12日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む パキロビッド®は、ワクチン接種済COVID-19患者にも有効か? EPIC-HR(Evaluation of Protease Inhibition for Covid-19 in High-Risk Patients)試験では、ニルマトレルビルとリトナビルの併用により、予防接種を受けていない初期のCOVID-19外来患者の入院または死亡が89%減少した。一方で、ワクチン接種集団におけるニルマトレルビル+リトナビルの臨床的影響は不明である。著者らは、オミクロン禍(2022年1月1日~7月17日)の期間、マサチューセッツ州とニューハンプシャー州の150万人にケアを提供した大規模ヘルスケアシステムを用いてコホート研究を行った。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年12月13日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.30(2022年12月15日号) 最も糖尿病リスクを軽減する野菜は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.29(2022年12月8日号) リバウンド予防に効果的な食事とは? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.28(2022年12月1日号) 妊娠で母性が宿るか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.27(2022年11月24日号) 精子数の世界的な減少 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.26(2022年11月17日号) マスクは本当に効果があるのか?:学校における検証 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.25(2022年11月10日号) キツい筋トレは筋肥大に効果があるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.24(2022年11月3日号) AIによる膵臓がん予後予測は有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.23(2022年10月27日号) 蚊を寄せ付ける体臭は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.22(2022年10月20日号) 片頭痛には有酸素運動、筋トレどちらが有効か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.21(2022年10月13日号) 妊婦の"超加工食品"摂取は子供の神経心理学的発達に影響を及ぼすか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.20(2022年10月6日号) CRPはがんのバイオマーカーになるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.19(2022年9月29日号) 免疫チェックポイント阻害剤の奏効率は、食事によって変わるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.18(2022年9月22日号) メタボを防ぐ腸内細菌に対して、最も悪影響を及ぼす食事は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.17(2022年9月15日号) セレブからも注目されているプチ断食は、ダイエットや心血管代謝に良い影響を及ぼすのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.16(2022年9月8日号) 長生きできる紅茶の摂取量は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.15(2022年9月1日号) 顔が似ていると、遺伝情報も似ている!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.14(2022年8月25日号) ゼロカロリー甘味料は、耐糖能に影響を及ぼさないのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号) 運動後の摂取はゆで卵、生卵どちらの摂取が有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.12(2022年8月11日号) 慢性腰痛を軽減する最良の運動オプションとは~RCTのネットワークメタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号) サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6?11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
インフルエンザ~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月11日号)
インフルエンザ~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月11日号)
過去2年間、国内での流行がなかったインフルエンザですが、今シーズンはどうなるのでしょうか。日本感染症学会からの提言においても「2022-2023年シーズンは、インフルエンザの流行の可能性が大きい」とされています。そこで今回は、インフルエンザを取り上げました。インフルエンザ流行による日本の医療リソース利用状況やワクチン接種を促す方法、ワクチン効果を高める方法など注目の論文をご紹介します。(エクスメディオ 鷹野 敦夫) 『BIBGRAPH SEARCH』では、エクスメディオが提供する文献検索サービス「Bibgraph」より、注目キーワードで検索された最新論文をまとめてご紹介しています。 日本人高齢者の季節性インフルエンザによる医療リソース利用はどの程度か~レトロスペクティブ研究 Hagiwara Y, et al. PLoS One. 2022; 17: e0272795. ≫Bibgraphを読む インフルエンザワクチン接種を繰り返すとその効果が薄れるのか~メタ分析 Jones-Gray E, et al. Lancet Respir Med. 2022 Sep 21. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む プライマリケア医がインフルエンザワクチン接種患者を増やすための効果的な方法は? Patel MS, et al. Am J Health Promot. 2022 Oct 4. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 毎日より多くの光を浴びるとインフルエンザワクチン接種の効果が高まる~認知症高齢者を対象とした研究 Munch M, et al. Brain Behav Immun Health. 2022; 26: 100515. ≫Bibgraphを読む インフルエンザ菌の抗生物質薬剤耐性~フランス急性中耳炎患者調査 Taha A, et al. J Glob Antimicrob Resist. 2022 Oct 1. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 参考:一般社団法人日本感染症学会 提言 2022-2023年シーズンのインフルエンザ対策について(医療機関の方々へ) 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号)
老化をあざむく方法は? 鳥や哺乳類と比較して、とくにカメは、加齢に伴う老化をほとんど示さない非常に長命の動物としてよく知られています。老化の進行を理解するため、非鳥類爬虫類と両生類の107個体群(77種)のデータを用いた、野生の四肢変温動物における老化率と寿命に関する研究が実施された。Science誌2022年6月24日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 遺伝子組換えブタからヒトへの心臓異種移植、その結果は 静脈動脈の体外式膜型人工肺(ECMO)に依存し、従来の同種移植片を含む標準的な治療法の候補ではなかった非虚血性心筋症の57歳の男性に、ブタの心臓を移植した。New Engrand Journal of Medicine誌オンライン版2022年6月22日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 妊婦のワクチン接種は、乳児のCovid-19による入院のリスクを下げるか 生後6ヵ月未満の乳児は、Covid-19の合併症のリスクが高いにもかかわらず、予防接種の対象ではない。母体のCovid-19ワクチン接種後のSARS-CoV-2抗体の経胎盤移行が、乳児のCovid-19保護効果に及ぼす影響について調査が行われた。New Engrand Journal of Medicine誌オンライン版2022年6月22日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む アメリカの人種間によるがん治療とサバイバーシップ、とくに格差が大きいのは… CDCの組織である国立衛生統計センター、米国国勢調査局のデータ、NCDB(National Cancer database)のデータを元に、2022年1月1日時点における、人種間のがん治療とサバイバーシップの格差を検討した。CA:A Cancer Journal for Clinicians誌オンライン版2022年6月23日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む ARDS診療ガイドライン2021改訂のポイント 日本集中治療医学会、日本呼吸器学会、日本呼吸療法医学会が合同で作成した「ARDS診療ガイドライン2021」。本ガイドラインでは、世界で初めて小児ARDSも対象に含めて改訂が行われた。Respiratory Investigation誌オンライン版2022年6月23日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症 血小板減少と頭蓋内出血で死亡率上昇
ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症 血小板減少と頭蓋内出血で死亡率上昇
Clinical Features of Vaccine-Induced Immune Thrombocytopenia and Thrombosis N Engl J Med. 2021 Oct 28;385(18):1680-1689. doi: 10.1056/NEJMoa2109908. Epub 2021 Aug 11. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ワクチン誘発性免疫性血小板減少症・血栓症(VITT)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2に対するChAdOx1 nCoV-19アデノウイルスベクターワクチンに関連する新しい症候群である。本疾患の臨床的特徴や予後基準に関するデータは不足している。 【方法】2021年3月22日から6月6日の間に英国内の病院を受診したVITTが疑われる患者を対象に前向きコホート研究を実施した。データは匿名化された電子フォームを使用して収集し,事前に指定した基準に従って症例を確定VITTまたはprobable VITTと同定した。患者のベースライン特性および臨床病理学的特徴、危険因子、治療、予後不良のマーカーを決定した 【結果】評価対象となった294例中、VITTの確定例170例と確率例50例を同定した。全例がnCoV-19ワクチンChAdOx1の初回接種を受けており,接種後5~48日(中央値,14日)で発症した.年齢層は18歳から79歳(中央値48歳)で,性差はなく,内科的危険因子もなかった.総死亡率は22%であった。死亡のオッズは,脳静脈洞血栓症患者では2.7倍(95%信頼区間[CI],1.4~5.2),ベースラインの血小板数が50%減少するごとに1.7倍(95% CI,1.3~2.3 ),1.3倍,1.6倍,1.8倍と増加し,脳静脈洞血栓症患者では,ベースラインの血小板数が1%減少すると,1.7倍,1.8倍と増加した.ベースラインのdダイマー値が10,000単位増加するごとに2(95%CI、1.0~1.3)、ベースラインのフィブリノゲン値が50%減少するごとに1.7(95%CI、1.1~2.5)因子増加しました。多変量解析では、ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の有無が死亡と独立して関連していることが確認されました。 【結論】VITTに伴う高い死亡率は、血小板数が少なく、頭蓋内出血のある患者で最も高くなっています。治療法はまだ不明であるが、予後マーカーの同定は効果的な管理の指針になる可能性がある。(オックスフォード大学病院NHS財団トラストより資金提供). 第一人者の医師による解説 抗血小板第4因子抗体(ELISA法)の測定が診断のキーポイント 荒岡 秀樹 虎の門病院臨床感染症科部長 MMJ. April 2022;18(2):49 本論文は、アデノウイルスベクターワクチンであるChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ社製)に関連する、ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症(vaccine-induced immune thrombocytopenia and thrombosis;VITT)の臨床像と予後悪化因子を調査した前向きコホート研究の報告である。2021年3〜6月に英国の病院を受診し、VITTが疑われた患者が対象とされた。VITTの診断基準として、以下の5項目が設定された:(1)ワクチン接種後5 ~ 30日に発症(2)血栓症の存在(3)血小板減少(15万 /μ L未満)(4)Dダイマー高値(4,000 fibrinogen-equivalent unit[FEU]*超)(5)抗血小板第4因子抗体陽性(ELISA法)。Definite VITTは5項目すべてを満たすもの、probable VITTは(4)を必須項目として残り4項目中3項目を満たす、あるいはDダイマーが2,000 ~ 4,000 FEUかつ残り4項目(1、2、3、5)を満たすものとした。 期間中、definite VITTが170人、probable VITTが50人抽出され評価された。全例がワクチンの1回目接種を受けており、97%の患者が接種後5 ~ 30日で発症していた。発症年齢は18 ~ 79歳(中央値48歳)、男女比は女性が54%であった。全死亡率は22%と高く、多変量解析では血小板数と頭蓋内出血が死亡に寄与する独立した危険因子であることが特定された。特に血小板数が3万/μL未満、かつ頭蓋内出血を認めた患者では73%が死亡していた。 VITTはthrombosis with thrombocytopenia syndrome(TTS)という名称が用いられることもあり、適切な名称については議論が残る。ヘパリン起因性血小板減少症と類似の病態として捉えられ、特にアデノウイルスベクターワクチン接種後に多いとされている。しかしながら、ワクチン接種後の血栓塞栓症や血小板減少症はmRNAワクチンでも生じるとされ、その解明と対策は重要である。 現時点では、血小板第4因子とワクチンに含まれる成分が複合体を形成し、複合体に対する抗体が血小板の活性化を惹起することが推定されており、抗血小板第4因子抗体(ELISA法)の測定が診断のキーポイントと考えられている。 本研究の潜在的な弱点は、主に診断確定のバイアスにある。しかしながら220症例ものVITTの臨床像を解析し、死亡の危険因子を抽出したことは大きな成果である。今後の治療法の確立に向けて、本病態のkey paperの1つになりうるものである。 *D ダイマーの単位については、日本では一般的にμg/mL が用いられているため、注意を要する。各測定試薬の添付文書の確認が望ましい。また、日本脳卒中学会、日本血栓止血学会から出ている「COVID-19 ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第 3 版」(2021 年 10 月)内の記述も参考になる。
思春期児を対象としたBNT162b2 Covid-19ワクチンの安全性、免疫原性および有効性
思春期児を対象としたBNT162b2 Covid-19ワクチンの安全性、免疫原性および有効性
Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):239-250. doi: 10.1056/NEJMoa2107456. Epub 2021 May 27. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンは、ごく最近まで16歳未満の小児への緊急使用が許可されていなかった。この集団を保護し、対面学習や人の集まりを促進し、集団免疫に貢献するため、安全かつ有効なワクチンが必要である。 【方法】この進行中の国際共同プラセボ対照観察者盲検試験では、参加者を無作為によりBNT162b2ワクチン30μgを21日間隔で2回注射するグループとプラセボを注射するグループに1対1の割合で割り付けた。12~15歳にみられるBNT162b2に対する免疫応答の16~25歳の免疫応答に対する非劣性を免疫原性の目的とした。12~15歳のコホートで安全性(反応原性および有害事象)および確定した新型コロナウイルス感染症2019罹患(Covid-19;発症、2回目接種から7日以上経過後)に対する有効性を評価した。 【結果】全体で、12~15歳の思春期児2,260例に接種した。1,131例にBNT162b2、1,129例にプラセボを投与した。他の年齢群にみられたように、BNT162b2は安全性と副反応が良好で、反応原性事象も主に一過性で軽度から中等度であった(主に注射部位疼痛[79~86%]、疲労[60~66%]、頭痛[55~65%])。ワクチンに起因する重篤な有害事象はなく、重度の有害事象も全体的に少なかった。12~15歳の参加者にみられた2回目接種後SARS-CoV-2 50%中和抗体価の16~25歳に対する幾何平均比は、1.76(95%信頼区間[CI]、1.47~2.10)であり、両側95%信頼区間の下限が0.67を超える非劣性基準を満たし、12~15歳のほうが応答が大きいことが示された。SARS-CoV-2感染歴の根拠がない参加者では、BNT162b2接種群に2回目接種から7日以上経過後のCOVID-19発症例はいなかったが、プラセボ接種群に16例認められた。観察されたワクチンの有効性は100%(95%CI、75.3~100)であった。 【結論】12~15歳の小児に接種したBNT162b2ワクチンは、安全性が良好で、若年成人よりも免疫応答が大きく、COVID-19に対する高い有効性が示された。 第一人者の医師による解説 思春期児童は接種後の血管迷走神経反射の発生率が高く 対策を取ることが重要 新井 智 国立感染症研究所感染症疫学センター第11室室長 MMJ. February 2022;18(1):4 本論文は、ファイザー・ビオンテック社製のメッセンジャー RNAワクチン(BNT162b2)を評価している第1/2/3相試験(C4591001試験)の一部として、米国内の12 ~ 15歳の思春期児童約2,300人をBNT162b2 30μg群とプラセボ(生理食塩水)群に1:1の比で無作為に割り付け安全性、免疫原性、有効性を比較し、さらに米国以外の国からも登録した16 ~ 25歳の青年集団約1,100人と免疫応答での非劣性の検証等を行った結果の報告 である。1回目接種 受けたBNT162b2群1,131人とプラセボ群1,129人、2回目接種を受けたそれぞれ1,124人と1,117人の解析結果から、BNT162b2 30μ g接種における12 ~ 15歳の思春期児童の副反応は、全体的に一過性で軽度~中等度であった。最も頻度が高かった局所反応は注射部位の疼痛で79 ~ 86%、頻度の高かった全身性反応は倦怠感(60 ~ 66%)、頭痛(55 ~ 65%)、悪寒(28 ~ 42%)、筋肉痛(24 ~ 32%)であった。局所反応の頻度は1回目接種時の方が高かったが(1回目86%、2回目79%)、全身性反応の倦怠感、頭痛、悪寒、筋肉痛のいずれも2回目接種時の方が高頻度にみられた。 また、12 ~ 15歳の思春期児童と16 ~ 25歳の青年集団におけるBNT162b2 30μg接種の比較を行ったところ、12 ~ 15歳の思春期児童の1、2回目接種時の副反応発生率は、16 ~ 25歳の青年集団とほとんど違いがなく(16 ~ 25歳の青年:倦怠感60 ~ 66%、頭痛54 ~ 61%、悪寒25 ~40%、筋肉痛27 ~ 41%)、安全性に違いは認められなかった。有効性の指標である50%中和幾何平均抗体価(GMT)は、2回目接種1カ月後の12 ~15歳の思春期児童群では1,283.0、16 ~ 25歳の青年群では730.8、両集団間の幾何平均比は1.76(95%信頼区間 , 1.47 ~ 2.10)であり、免疫応答は12 ~ 15歳の思春期児童群の方が良好であった。 BNT162b2やモデルナ製スパイクバックのメッセンジャー RNAワクチンでは、初回よりも2回目接種の方が発熱、倦怠感、頭痛、悪寒などの全身性反応の発生割合が高い(1),(2)。これらの副反応への対応に関してはアセトアミノフェンの服用も選択肢として提案されており、事前に十分な情報提供を行い安心して接種を受けられる環境の提供が重要である。思春期児童では、ワクチン接種後の血管迷走神経反射の発生割合が他の年齢群に比べ高いため、横たわって接種を受ける、あるいは接種後30分程度様子を見るなど対策を取ることも重要である。 1. Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383(27):2603-2615. 2. Baden LR, et al. N Engl J Med. 2021;384(5):403-416.
妊娠中のインフルエンザワクチン接種と小児期早期の健康転帰との関連
妊娠中のインフルエンザワクチン接種と小児期早期の健康転帰との関連
Association of Maternal Influenza Vaccination During Pregnancy With Early Childhood Health Outcomes JAMA. 2021 Jun 8;325(22):2285-2293. doi: 10.1001/jama.2021.6778. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【重要性】妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種によって、妊婦と新生児のインフルエンザによる疾患が減少する。妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種と小児期の有害な健康転帰との関連性については科学的根拠が少ない。【目的】妊娠中のインフルエンザワクチン接種と小児期早期の健康転帰との関連を評価すること。【デザイン、設定および参加者】健康管理データと紐付けた出生登録を用いた後ろ向きコホート研究。2010年10月1日から2014年3月31日までの間に記録されたカナダ・ノバスコシア州の全生児出生を2016年3月31日まで追跡した。逆確率による重み付けを用いて母体の病歴や可能性のあるその他の交絡因子を調整し、調整ハザード比(HR)と発生率比(IRR)を推定し95%CIを添えた。【曝露】妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種。【主要評価項目】免疫関連転帰(喘息、感染症)、非免疫関連転帰(悪性新生物、感覚障害)および非特異的転帰(緊急医療または入院医療の利用)を小児期の転帰とし、救急診療部門と入院のデータベースから測定した。【結果】小児28,255例(女児49%、在胎37週以降の出生92%)のうち10,227例(36.2%)が妊娠中に季節性インフルエンザワクチン接種を受けた母親から出生した。平均3.6年の追跡期間中、母親のインフルエンザワクチン接種と小児期の喘息(発生率、1,000人年当たり3.0 vs. 2.5;差0.53、95%CI ?0.15-1.21];調整済みハザード比1.22[95%CI 0.94~1.59])、悪性新生物(1,000人年当たり0.32 vs. 0.26、差0.06/人年[95%CI -0.16~0.28]、調整済みハザード比1.26[95%CI 0.57~2.78])および感覚障害(1000人年当たり0.80 vs. 0.97;差-0.17[95%CI -0.54~0.21];調整済みハザード比0.82[95%CI 0.49~1.37])との間に有意な関連は認められなかった。妊娠中の母親のインフルエンザワクチン接種と小児期早期の感染症(発生率、1,000人年当たり184.6 vs. 179.1、差5.44[95%CI 0.01~10.9];調整済み発生率比1.07[95%CI 0.99~1.15])、緊急医療または入院医療の利用(1,000人年当たり511.7 vs. 477.8/人年;差33.9/人年[95%CI 24.9~42.9];調整済み発生率比1.05[95%CI 0.99~1.16])との間に有意な関連は認められなかった。【結論および意義】平均追跡期間3.6年の住民を対象としたコホート研究で、妊娠中のインフルエンザワクチン接種に小児期早期の有害健康転帰との有意な関連は認められなかった。 第一人者の医師による解説 妊婦へのインフルエンザワクチン接種推奨 参考となる報告 三鴨 廣繁 愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学教授 MMJ. December 2021;17(6):186 妊婦が特にインフルエンザに罹患しやすいわけではないが、感染すると、重症化や合併症を起こすリスクが高く、2009年新型インフルエンザは胎児死亡や早産のリスク上昇をもたらした。妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種は母体および新生児のインフルエンザ罹患抑制に有効であるが、妊婦のインフルエンザワクチン接種が小児期の健康への悪影響と関連しているかどうかについての証拠は限られている。著者らは、妊娠中の母親のインフルエンザワクチン接種と幼児期の健康転帰との関連を評価した。2010年10月1日~14年3月31日にカナダ・ノバスコシアで出生したすべての子どもが登録され、16年3月31日まで追跡調査された。本研究は、健康管理データにリンクされた出生登録を使用した後ろ向きコホート研究である。調整ハザード率(HR)と発生率比(IRR)は母親の病歴およびその他の潜在的な交絡因子に対して補正しながら推定された。解析対象となった28,255人の子ども(49%が女性、92%が妊娠37週以上で出生)のうち、10,227人(36.2%)が妊娠中に季節性インフルエンザワクチン接種を受けた女性が出産した。平均3.6年間の追跡期間中、妊婦のインフルエンザワクチン接種と小児喘息の間に有意な関連は認められなかった(1,000人・年あたり3.0対2.5;差0.53;調整済みHR,1.22)、悪性新生物(0.32対0.26;差0.06;調整済みHR,1.26)、感覚障害(1,000人・年あたり0.80対0.97;差?0.17;調整済みHR,0.82)。妊婦のインフルエンザワクチン接種は幼児期の感染症(1,000人・年あたり184.6対179.1;差5.44;調整済みIRR,1.07)、救急や入院患者の医療サービスの利用(1,000人・年あたり511.7対477.8;差33.9;調整済みIRR,1.05)と有意に関連していなかった。したがって、著者らは、妊婦のインフルエンザワクチン接種は、幼児期の健康への悪影響のリスク上昇と有意に関連していなかった、と結論している。妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種により、母体および新生児のインフルエンザ感染を減らすことが可能である。妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種が小児期の健康へ与える影響に関する証拠は限られているが、今回のカナダでのデータベースコホート研究では、妊娠中の母体インフルエンザワクチン接種は、幼児期の健康への影響は認められなかった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期においてもインフルエンザワクチン接種の重要性が叫ばれているが、妊婦へのインフルエンザワクチン接種推奨にあたって参考となる報告と考える。
SARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチンの安全性および免疫原性 第I/II相単盲検無作為化比較試験の仮報告
SARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチンの安全性および免疫原性 第I/II相単盲検無作為化比較試験の仮報告
Safety and immunogenicity of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2: a preliminary report of a phase 1/2, single-blind, randomised controlled trial Lancet. 2020 Aug 15;396(10249):467-478. doi: 10.1016/S0140-6736(20)31604-4. Epub 2020 Jul 20. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)の世界的流行は、予防接種によって縮小できると思われる。著者らは、SARS-CoV-2のスパイク蛋白を発現するウイルスベクターコロナウイルスワクチンの安全性、反応性および免疫原性を評価した。 【方法】英国5施設で、SARS-CoV-2のスパイク蛋白を発現するチンパンジーアデノウイルスをベクターに用いたワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)を対照の髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)と比較する第I/II相単盲検無作為化比較試験を実施した。検査によるSARS-CoV-2感染確定歴やCOVID-19様症状がない18~55歳の健康成人をChAdOx1 nCoV-19群とMenACWY群に(1対1の割合で)無作為に割り付け、いずれも5×1010ウイルス粒子を筋肉内に単回投与した。5施設中2施設でプロトコールを修正し、接種前にパラセタモルを予防投与してもよいこととした。10例を非無作為化非盲検のChAdOx1 nCoV-19プライムブースト群に割り付け、2回の接種日程を設け、初回投与28日後に追加投与した。SARS-CoV-2スパイク蛋白三量体に対する標準総IgG ELISA、多重免疫アッセイ、3通りの生SARS-CoV-2中和アッセイ(50%プラーク減少中和アッセイ[PRNT50]、マイクロ中和アッセイ[MNA50、MNA80、MNA90]およびMarburg VN)を用いて、偽ウイルス中和アッセイを用いて、試験開始時および追加接種時の液性応答を評価した。体外インターフェロンγenzyme-linked immunospot(ELISPOT)アッセイを用いて、細胞性応答を評価した。主要評価項目は、ウイルス学的に確定した症候性COVID-19で測定した有効性および重度有害事象の発生率で測定した安全性とした。患者を割り付けたグループごとに解析した。ワクチン投与後28日間にわたって安全性を評価した。ここに、安全性、反応性および細胞性および液性免疫反応に関する仮の結果を報告する。この試験は進行中であり、ISRCTN(15281137)、およびClinicalTrials.gov(NCT04324606)に登録されている。 【結果】2020年4月23日から同年5月21日にかけて1077例を登録し、ChAdOx1 nCoV-19(543例)とMenACWY(534例)に割り付、そのうち10例を非無作為化ChAdOx1 nCoV-19プライムブースト群に組み入れた。ChAdOx1 nCoV-19群では局所および全身反応が対照群より多く、熱っぽさ、寒気、筋肉痛、頭痛や倦怠感など多くの症状がパラセタモルの予防投与によって改善した(いずれもP<0.05)。ChAdOx1 nCoV-19による重度の有害事象はなかった。ChAdOx1 nCoV-19群では、スパイク特異的T細胞応答が14日目にピークに達した(末梢血単核球100万個当たりのスポット形成細胞数中央値856個、IQR 493~1802、43例)。28日時までに高スパイクIgG反応が上昇し(中央値157 ELISA単位(EU)、96~317、127例)、2回目の投与後にさらに上昇した(639EU、360~792、10例)。単回投与後、MNA80で測定した35例中32例(91%)、PRNT50で測定した35例(100%)でSARS-CoV-2中和抗体反応が検出された。ブースター投与後、全例に中和活性が認められた(42日時にMNA80で測定した9例全例、56日時にMarburg VNで測定した10例全例)。中和抗体反応にELISAで測定した抗体値と強い挿管が認められた(Marburg VNによるR2=0.67、P<0.001)。 【解釈】ChAdOx1 nCoV-19は許容できる安全性を示し、同種ブースター投与によって抗体反応が増強された。この結果を液性および細胞性免疫反応の誘導を併せて考えると、このワクチン候補を進行中の第III総試験で大規模な範囲で評価する妥当性を支持するものである。 第一人者の医師による解説 第3相試験でも70%の感染防御能確認 過去の研究の積み重ねの成果 中山 哲夫 北里大学大村智記念研究所特任教授 MMJ. February 2021;17(1):10 2019年12月に中国・武漢市で発生した重症肺炎の原因がコロナウイルスと判明し、SARSCoV-2と命名された。そのスパイク蛋白を主要な感染防御抗原としてワクチン開発が進んでいる。本論文はアストラゼネカ社とオックスフォード大学の共同開発によるチンパンジーアデノウイルス(ChAd)をベクターとしてSARS-CoV-2のスパイク抗原を発現する組換えワクチン(ChAdOx1nCoV-19)を健常成人543人に接種し、対照として4価髄膜炎ワクチンを534人に接種した第1/2相試験の免疫原性と安全性に関する報告である。 SARS-CoV-2スパイク蛋白に対するIgG抗体は接種28日後までに全例陽転化し、SARS-CoV-2中和抗体は80%抑制法で1回接種後に35人中32人(91%)が陽転化し、2回接種後に全例陽転化した。細胞性免疫能(ELISPOT)は1回接種14日後には43例全例に検出された。副反応としては487人中に接種部位の疼痛が67%(328人)、圧痛が83%(403人)、全身反応として倦怠感や頭痛がそれぞれ70%(340人)と68%(331人)に認められたが軽度で第3相試験に進むこととなった。 本論文以降、4月から英国、ブラジル、南アフリカで実施された4件の第III相試験の中間統合解析による有効性、免疫原性、安全性の結果が報告された(1)。感染者は標準量ワクチン2回接種群では27/4,440(0.6%)、対照(髄膜炎菌ワクチンまたは生食)群では71/4,455(1.6%)で有効率は62.1%(95% CI, 41.0~75.7)であった。低用量で1回接種し、その28日後に標準量を接種した群では3/1,367(0.2%)、対照群では30/1,374(2.2%)でワクチン有効率は90.0%(95% CI, 67.4?97.0)、全体のワクチン有効率は70.4%(54.8~80.6)であった(1)。また、英国で実施された70歳以上の高齢者も含めた同ワクチンの第2/3相試験では、18~55歳群と比較し、70歳以上では局所反応、全身反応ともに発現率が低いことが報告されている(2)。中和抗体は2回接種2週後に高値を示した。細胞性免疫能も検出され、英国では昨年12月8日から予防接種が始まった。 COVID-19発生後1年でワクチンができたように報道されているが、オックスフォード大学グループは種痘ワクチンをベクターとしたHIVワクチンの開発からヒトアデノウイルスをベクターとするシステムの構築へと進み、そして既存抗体陽性例で免疫能が低下する問題を解決すべく今回のChAdベクターを開発した。インフルエンザ、エボラ、MERS、SARS、Zikaウイルスなどに対するワクチンを研究開発し、一部は臨床試験まで実施した。こうした研究の積み重ねが今の成果につながっていることを忘れてはいけない(3)。 1. Voysey M, et al. Lancet. 2020:S0140-6736(20)32661-1. 2. Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396(10267):1979-1993. 3. Gilbert SC, et al. Vaccine. 2017;35(35 Pt A):4461-4464.